JP2011077325A - Iii族窒化物半導体基板の製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物半導体基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることが可能であると共に、反りを抑制することが可能なIII族窒化物半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体基板の製造方法は、III族窒化物半導体のインゴット5をワイヤ7によりスライスし、III族窒化物半導体基板を得るスライス工程を備え、スライス工程において、インゴット5を{0001}面から<1−100>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{20−21}面となるようにIII族窒化物半導体基板を得る、もしくは、インゴット5を{0001}面から<11−20>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{22−43}面又は{11−21}面となるようにIII族窒化物半導体基板を得る。
【選択図】図4

Description

本発明は、III族窒化物半導体基板の製造方法に関する。
近年、化合物半導体を始めとする半導体は、その種々の特性を活かして応用範囲が更に広がっている。例えば、化合物半導体は、エピタキシャル層を積層するための下地基板として有用であり、LEDやLD等の半導体デバイスに用いられている。化合物半導体基板の製造方法としては、主面が特定の面方位(例えばGaNの{0001}面)を有する化合物半導体インゴットを主面と平行又は数度傾けてスライスする方法が知られている。インゴットから切り出された半導体基板は、主面に研削や研磨が施された後、半導体デバイスの半導体基板として使用される。
特許文献1には、c軸方向に成長させたGaNバルク結晶をスライス又は研磨して、無極性又は半極性の主面を形成する方法が開示されている。特許文献1では、無極性の主面として(11−20)面、(10−10)面が得られ、半極性面として(10−1−1)面、(10−1−3)面、(10−11)面、(10−13)面及び(11−22)面が得られている。
特許文献2には、主面がC面であるGaNインゴットをワイヤソーによりスライスする方法が開示されている。また、特許文献2には、加工によるクラックの発生を抑制するため、ワイヤの走行方向を劈開方向から3度以上傾けてスライスすることが開示されている。
特許文献3には、非極性面を有するIII―V族窒化物半導体結晶の製造方法が開示されている。特許文献3には、C面を主面とするIII―V族窒化物半導体結晶を形成した後、非極性面が現れるように結晶をスライスする方法が開示されている。
特開2008−91598号公報 特開2006−190909号公報 特開2008−308401号公報
Japanese Journal of Applied Physics vol.39(2000)pp.413 Journal of Applied Physics vol.91 No.12(2002)pp.9904
ところで、近年、III族窒化物半導体基板を用いた半導体デバイスの発光波長を広い波長範囲で変更する観点から、半導体基板の主面上に形成されるエピタキシャル層(活性層)には、インジウムを含むIII族窒化物半導体(例えばInGaN)が用いられている。発光波長の変更は、エピタキシャル層におけるインジウム組成を調整することにより行うことができる。
しかし、極性面であるC面を主面に有する半導体基板を用いて、当該主面上にエピタキシャル層を成長させた場合には、大きなピエゾ電界が生じ、優れたインジウムの取り込み性能を示さない場合がある。また、非極性面であるA面やM面をGaN基板の主面とすると、GaN基板とエピタキシャル層との格子不整合が大きくなり転位密度が増加してしまう傾向がある。そのため、インジウムの取り込み性能に優れたエピタキシャル層を積層することが可能な半導体基板が望まれている。
また、例えばC面を主面とするGaNインゴットでは、一方の主面(表面)はGa面となり、他方の主面(裏面)はN面となる傾向がある。この場合、Ga面の硬度はN面の硬度よりも硬いため、切り出された半導体基板のGa面が凸状となるように反りが生じてしまう傾向がある。また、剛性の小さい(細い)ワイヤをインゴットのスライスに用いると、Ga面とN面との硬度差に起因してGa面が凸状となるように半導体基板が切り出されてしまう傾向がある。このような反りが生じた半導体基板上にエピタキシャル層を形成した場合には、歩留まりを十分に向上させることができないため、反りを抑制することが可能な半導体基板が望まれている。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることが可能であると共に、反りを抑制することが可能なIII族窒化物半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の末に、III族窒化物半導体のインゴットを{0001}面から特定方向に傾斜した軸方向にスライスし、III族窒化物半導体基板の主面を特定の面方位を有する半極性面とすることで、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることが可能であると共に、反りを抑制することが可能なIII族窒化物半導体基板が得られることを見出した。
すなわち、本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法は、III族窒化物半導体のインゴットをスライスし、III族窒化物半導体基板を得るスライス工程を備えたIII族窒化物半導体基板の製造方法であって、スライス工程において、インゴットを{0001}面から<1−100>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{20−21}面となるようにIII族窒化物半導体基板を得る、もしくは、インゴットを{0001}面から<11−20>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{22−43}面又は{11−21}面となるようにIII族窒化物半導体基板を得る。
本発明のIII族窒化物半導体基板の製造方法では、III族窒化物半導体のインゴットを{0001}面から特定方向に傾斜した軸方向にスライスすることにより、主面が上記特定の面方位を有するIII族窒化物半導体基板を容易かつ確実に得ることができる。また、主面が上記特定の面方位を有する半極性面となるようにIII族窒化物半導体基板を得ることで、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることができると共に、反りを抑制することができる。本発明者らは、このような反りの抑制の要因について、半導体基板の表面及び裏面の硬度差が緩和されていることに起因するものと推測している。
また、スライス工程の前に、面加工によりインゴットの{000−1}面の転位密度を1.0×1010個/cm以下とする面加工工程を備えることが好ましい。この場合、半導体基板の主面の面方位精度を向上させることができるため、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を更に向上させることができる。更に、インゴットのスライス時におけるクラックの発生を抑制することができるため、歩留まりを向上させることも可能である。
また、スライス工程の後に、III族窒化物半導体基板の主面をドライエッチングし、該主面の反対側の主面をウェットエッチングするエッチング工程を備えることが好ましい。この場合、インゴットのスライス時に半導体基板の主面に生じる加工変質層を主面の性状に応じて効率よく低コストで除去することができる。
また、スライス工程の後に、III族窒化物半導体基板の主面、及び、該主面の反対側の主面をドライエッチングするエッチング工程を備えることが好ましい。この場合、インゴットのスライス時に半導体基板の主面に生じる加工変質層を短時間で確実に除去することができる。
また、スライス工程において、インゴットをワイヤソーによりスライスし、III族窒化物半導体基板の主面におけるワイヤ走行方向に平行な方向の表面粗さRaを10〜500nmとし、ワイヤ走行方向に垂直な方向の表面粗さRaを60〜800nmとすることが好ましい。この場合、主面の平坦化工程を短縮化又は不要化し、半導体基板の主面の加工時間を短縮することができる。
本発明によれば、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることが可能であると共に、反りを抑制することが可能なIII族窒化物半導体基板の製造方法が提供される。エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を向上させることで、半導体デバイスの発光特性を向上させることができる。III族窒化物半導体基板の反りを抑制することで、半導体デバイス等の歩留まりを向上させることができる。
III族窒化物半導体基板を用いたエピタキシャル基板を示す概略断面図である。 六方晶の結晶構造を示す斜視図である。 III族窒化物半導体基板の製造方法の工程フローを示す図である。 III族窒化物半導体基板の製造方法に用いるインゴット及びそのスライス方法を示す図である。 III族窒化物半導体基板の製造方法に用いるインゴット及びそのスライス方法を示す図である。 III族窒化物半導体基板の主面における表面粗さの測定結果を示す図である。 GaN基板の主面におけるc軸からのオフ角とエピタキシャル層のインジウム組成との関係を示す図である。 ピエゾ電界に関する計算結果を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るIII族窒化物半導体基板の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、III族窒化物半導体基板1を用いたエピタキシャル基板10を示す概略断面図である。エピタキシャル基板10は、ベース基板としてのIII族窒化物半導体基板1(以下、「窒化物基板1」という)と、エピタキシャル層3とを備える。窒化物基板1は、表面(主面)1aと、表面1aの反対側の裏面(主面)1bとを有している。
窒化物基板1は、例えばGaN、AlN、InN等の六方晶ウルツ鉱型結晶構造のIII族窒化物半導体により形成されている。ここで、図2を用いて六方晶の結晶構造を説明する。図2は、六方晶の結晶構造を示す斜視図である。六方晶の結晶は、底面が正六角形の六角柱をなしている。六角柱の高さ方向に向かう軸はc軸[0001]であり、c軸に垂直な面はC面{0001}である。六角形の底面の中心から頂点に向かう軸はa軸[11−20]であり、a軸に垂直な面はA面{11−20}である。a軸に垂直な軸はm軸[1−100]であり、m軸に垂直な面はM面{1−100}である。a軸及びm軸はc軸に垂直である。
窒化物基板1の表面1aの面方位は、{20−21}面、{22−43}面又は{11−21}面であり、中でも{20−21}面が好ましい。なお、{20−21}面の法線とc軸とのオフ角は75°であり、{22−43}面の法線とc軸とのオフ角は65°であり、{11−21}面の法線とc軸とのオフ角は73°である。
窒化物基板1の表面1aの転位密度は、1×10個/cm〜1×10個/cmであることが好ましく、1×10個/cm〜1×10個/cmであることがより好ましい。転位密度が上記範囲であると、発光デバイスの寿命等の信頼性を向上させることができる。転位密度は、表面の10μm角の範囲をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察してその範囲内の転位の数から算出することができる。
エピタキシャル層3は、InGaN、InAlGaN等のようにインジウムを含むIII族窒化物半導体により形成されている。エピタキシャル層3は、HVPE法、MOCVD法、MOC法、MBE法、昇華法等の気相成長法により形成することができる。
エピタキシャル層3は、窒化物基板1の表面1a上に配置されている。エピタキシャル層3は、500〜550nmである発光波長を生成するように設けられていることが好ましい。このような発光波長において十分な発光強度を得るためには、エピタキシャル層3がインジウムを十分に取り込む必要がある。本実施形態では、上記特定の面方位を有する表面1a上にエピタキシャル層3が形成されており、エピタキシャル層3のインジウムの取り込み効率に優れるため、500〜550nmの発光波長においても十分な発光強度を得ることができる。
次に、図3〜5を参照して窒化物基板1の製造方法を説明する。図3は、III族窒化物半導体基板の製造方法の工程フローを示す図である。図4,5は、III族窒化物半導体基板の製造方法に用いるインゴット及びそのスライス方法を示す図である。
まず、GaAs基板等の下地基板を準備する(工程S100)。次に、下地基板の一方面上にIII族窒化物半導体のバルク結晶を例えばc軸方向に成長させる(工程S102)。下地基板がGaAs基板である場合には、例えばGaAs基板の(111)面上にバルク結晶を形成する。GaN、AlN、InN等のバルク結晶は、HVPE法等により形成することができる。
III族窒化物半導体のバルク結晶は、酸素(O)、ケイ素(Si)等がドープされたn型半導体であることが好ましい。n型半導体を有するバルク結晶から得られる半導体基板を用いることにより、デバイス製造時の制約を少なくすることができる。
GaNバルク結晶を下地基板上にc軸方向に成長させた場合には、GaNバルク結晶の表面はGa面となる傾向があり、裏面はN面となる傾向がある。なお、GaNバルク結晶は、Ga面及びN面がバルク結晶の表裏に区別されて配置される構成に限定されるものではなく、同一面上にGa面及びN面がランダム状、ストライプ状又はドット状に並んだ構成であってもよい。このように同一面上にGa面及びN面が並んだ構成においても、バルク結晶の表裏のGa原子及びN原子の構成比率によっては反りが生じる。
バルク結晶を成長させた後、バルク結晶から下地基板を除去して(工程S104)、III族窒化物半導体のインゴットを得る。下地基板は、王水により溶解除去、研磨により研削除去、又は、剥離により分離除去することができる。
次に、インゴットに外形加工を施す(工程S106〜S110)。下地基板と接触していたインゴットの厚み方向の下部(インゴット下部)は、転位密度の高い結晶領域となる傾向があり、応力が集中しているためインゴットのスライス時にクラックの起点となり易い。そのため、下地基板を除去した後、インゴットのスライス工程の前に、面加工によりインゴット下部の転位密度を所定値以下とする面加工工程を行うことが好ましい(工程S106)。面加工としては、インゴット下部の研削除去が好ましい。インゴット下部の研削除去では、インゴットの裏面({000−1}面)の転位密度を1×1010個/cm以下とすることが好ましく、1×107個/cm以下とすることがより好ましい。インゴット下部の研削除去では、インゴットの底部から例えば厚み100〜1500μmを除去する。
インゴット下部を面加工した後、インゴット下部の平坦性を高める観点から、インゴット下部をエッチングする(工程S108)。エッチングは、濃度1〜8Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて温度範囲50〜100℃で行う。
次に、インゴットの外周加工を行う(工程S110)。インゴットの外周は、例えば円形や矩形に加工される。図4(a)は、インゴット5の外周を円形に加工した場合の斜視図であり、図4(b)はインゴット5を上から見たときの平面図である。インゴット5の外周を円形に加工した場合には、M面及びA面等の面方位が判別できるように、インゴット5の外周面に、インゴット5の劈開方向を示す第1オリエンテーションフラット(OF)面5a及び該第1OF面5aよりも小さい第2OF(インデックスフラット:IF)面5bを形成する。本実施形態では、インゴット5の主面5cがC面({0001)面)となるように加工し、第1OF面5aがM面及び第2OF面5bがA面、あるいは、第1OF面5aがA面及び第2OF面5bがM面となるように加工する。インゴットの外周を矩形に加工した場合には、インゴットの側面がM面及びA面となるように加工する。インゴットの外周加工の後、必要に応じて、インゴットの表裏の主面を更に加工、エッチングしてもよい。
外周加工においてM面及びA面の面方位精度は、いずれも5°以下であることが好ましい。面方位精度が5°以下であると、エピタキシャル層のインジウムの取り込み効率を更に向上させることができると共に、反りを更に抑制することができる。なお、M面やA面等の面方位は、X線回折装置を用いて測定することができる。
次に、インゴット5をスライスし、窒化物基板1を得るスライス工程を行う。スライス工程では、インゴット5を{0001}面から所定の方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{20−21}面、{22−43}面又は{11−21}面となるように窒化物基板1を得る(工程S112)。インゴット5のスライスには、ワイヤソー、内周刃、外周刃、ワイヤ放電加工、レーザを用いることが可能である。これらの中でも、量産性・基板の品質・コストに優れる観点からワイヤソーを用いることが好ましい。
主面が{20−21}面である窒化物基板1を作製する場合、第1OF面5aがM面であり第2OF面5bがA面であるインゴット5を用いる。図4(b)に示すように、{0001}面から<1−100>方向(m軸方向)にC面からの傾斜角度Xが75°となるように傾斜させた軸方向にインゴット5をスライスする。インゴット5をスライスする際には、インゴット5の第1OF面(M面)5aからワイヤ7を往復走行させながら切りこむ。
主面が{22−43}面又は{11−21}面である窒化物基板1を作製する場合、第1OF面5aがA面であり第2OF面5bがM面であるインゴット5を用いる。主面が{22−43}面である窒化物基板1を作製する場合、{0001}面から<11−20>方向(a軸方向)にC面からの傾斜角度Xが65°となるように傾斜させた軸方向にインゴット5をスライスする。主面が{11−21}面である窒化物基板1を作製する場合、{0001}面から<11−20>方向にC面からの傾斜角度Xが73°となるように傾斜させた軸方向にインゴット5をスライスする。インゴット5をスライスする際には、インゴット5の第1OF面(A面)5aからワイヤ7を往復走行させながら切りこむ。
インゴット5のスライスには、図5に示すように、マルチワイヤソー20を用いて複数のインゴット5を同時にスライスしてもよい。マルチワイヤソー20は、ワーク支持台22、ガイドローラ24a〜24c、スラリーノズル26、及びワイヤ列28を備える。なお、マルチワイヤソー20が備えるこれらの構成要素は、図示しない筐体によってそれぞれ支持されている。
ワーク支持台22は、加工対象物(ワーク)である複数のインゴット5を支持するための構成要素である。ワーク支持台22は、例えばステンレス製とすることができる。ワーク支持台22は、他の構成要素(ガイドローラ24a〜24c、スラリーノズル26、及びワイヤ列28)に対して下方に配置している。ワーク支持台22上には複数のインゴット5のそれぞれに固着されたカーボン製の複数の支持材30が固定されており、複数のインゴット5は、それぞれ支持材30を介してワーク支持台22の上方に固定されている。ワーク支持台22は図示しない移動テーブル上に載置されており、この移動テーブルが鉛直上方に移動することによってインゴット5が鉛直上方(図中の矢印A)へ送られる。
ガイドローラ24a〜24cは、略円柱状の回転体であり、それぞれの回転軸方向が鉛直方向(矢印A)と直交し且つ互いに平行となるように配置されている。ガイドローラ24a及び24bは、ワーク支持台22を通る鉛直線の左右に互いに離れて配置されている。ガイドローラ24cは、ガイドローラ24a及び24bの上方且つワーク支持台22を通る鉛直線上に配置されている。
ガイドローラ24a〜24cの外周面は、例えば樹脂によって形成されている。ガイドローラ24a〜24cの外周面には、複数本の溝が等間隔で形成されている。そして、ガイドローラ24a〜24cの複数本の溝に一本のワイヤ32が螺旋状に掛け回されることにより、ワイヤ列28が構成されている。ワイヤ32は、ガイドローラ24a〜24cが正回転及び逆回転を交互に繰り返すことによって二方向に往復走行する。ガイドローラ24a〜24cに掛け回されたワイヤ32のうち、ガイドローラ24a及び24bの下端側を走行する部分は、ワーク支持台22の移動によって上方に送られてくるインゴット5と交差する位置を走行する。
スラリーノズル26は、ラッピングオイルに遊離砥粒が混入されてなる砥液(スラリー)をワイヤ32及びインゴット5に向けて噴射するための砥液供給手段である。
複数のインゴット5は、マルチワイヤソー20を用いて以下のようにしてスライスされる。まず、複数のインゴット5を、互いの面が対向するように(或いは接するように)その中心軸方向に沿って並んで配置した上で、該中心軸方向が鉛直方向(送り方向A)と直行し、且つ、ワイヤ32の延伸方向Bとインゴット5の主面5cとが図4(b)に示す傾斜角度Xをなすようにワーク支持台22に取り付ける。また、このとき、第1OF面5aが送り方向Aを向くように(第1OF面5aと送り方向Aとが略直交するように)複数のインゴット5を取り付ける。
続いて、インゴット5の切削を開始する。ガイドローラ24a〜24cを正方向及び逆方向に交互に回転させ、ワイヤ32の往復走行を開始する。そして、インゴット5が取り付けられたワーク支持台22を上方に移動させ、インゴット5をワイヤ32(ワイヤ列28)へ送る。このとき、スラリーノズル26からの砥液の噴射を開始する。
インゴット5がワイヤ32に接すると、インゴット5とワイヤ32との間に浸入した砥液の作用によってインゴット5が切削され始める。そして、砥液を供給しながらインゴット5を略一定速度で送り方向Aへ送る。以上により、インゴット5は、ワイヤ列28のワイヤ間隔に応じた厚さの板状に切断され、表面1aが上記所定の面方位を有する窒化物基板1が切り出される。なお、窒化物基板1を切り出した後、窒化物基板1の表面1a及び裏面1bを平坦化するためにグラインディング加工(研削)やラッピング加工を行ってもよい。
上記のようにインゴット5をワイヤソーによりスライスする場合には、窒化物基板1の表面1aにおけるワイヤ走行方向に平行な方向の表面粗さRaを10〜500nmとし、ワイヤ走行方向に垂直な方向(ワイヤの切り込み方向)の表面粗さRaを60〜800nmとすることが好ましい。また、同様に、窒化物基板1の裏面1bにおける表面粗さを上記範囲とすることが好ましい。インゴット5のスライス時におけるスラリーの砥粒の粒子径やワイヤ径及びワイヤの走行条件等を適宜調整することにより上記の表面粗さを得ることができる。表面粗さRaは、例えば触針式表面粗さ測定機(東京精密社製、商品名:サーフコム)を用いて、ワイヤ走行方向に平行及び垂直な方向にそれぞれ例えば10mmの測定長で測定することができる。
表面粗さを上記範囲に調整することで、表面1a及び裏面1bの平坦化工程を短縮化又は不要化し、窒化物基板1の加工時間を短縮することができる。また、窒化物基板1の裏面1bの表面粗さを上記範囲とすることで、裏面1bの加工を要することなく、表面1a上にエピタキシャル層3を形成することができる。
また、上記のようにインゴット5をワイヤソーによりスライスした場合には、窒化物基板1の表面1a及び裏面1bの表面粗さは異方性を有していてもよい。すなわち、表面1a及び裏面1bの表面粗さは、ワイヤ走行方向に平行な方向では粗さ曲面の起伏が小さく、ワイヤ走行方向に垂直な方向(ワイヤの切り込み方向)では粗さ曲面の起伏は大きいものとなる傾向がある。このような表面粗さの異方性を有すると、結晶の面方位を識別できるため、オリエンテーションフラット(OF)を無くすことができる。
切り出された窒化物基板1の表面1a及び裏面1bには、結晶格子が乱れた加工変質層が存在する。加工変質層は、窒化物基板1のクラックの発生やエピタキシャル層成長時の不良の発生の原因となるため、除去しておくことが好ましい。加工変質層の厚さは、通常5μm程度である。加工変質層の厚さは、スライス時の加工条件にもよるが、基板表面の表面粗さと相関があり、基板表面の表面粗さが粗いほど加工変質層が厚くなる傾向がある。加工変質層は、SEMやTEM、CL(カソードルミネセンスセンス)を用いて断面観察することで評価することができる。
インゴット5から窒化物基板1を切り出した後、加工変質層を除去するため、窒化物基板1の表面1a及び裏面1bをエッチングするエッチング工程を行う(工程S114)。エッチングとしては、薬液を用いるウェットエッチング等の液相でのエッチングや、HClやCl等を使用するベーパーエッチング、ドライエッチング等の気相でのエッチングが挙げられる。ウェットエッチングで用いる薬液としては、KOHやNaOH等の強アルカリ、リン酸等が挙げられる。
C面を主面に有するGaN基板の場合、表面(C面)はGa面となる傾向がある。この場合、表面(Ga面)は化学的に非常に安定であるため、液相でのエッチングを行うことは困難である。そのため、表面(Ga面)のエッチングには、気相でのエッチングを用いる必要がある。一方、{20−21}面、{22−43}面及び{11−21}面は、N原子よりも多くのGa原子により終端された主面となる傾向があるものの、液相でのエッチングを行うことが可能であり、コストを低減することができる。また、所要時間を短縮する観点では、気相でのエッチングを行うことが好ましく、ドライエッチングを行うことがより好ましい。
表面1aが{20−21}面、{22−43}面及び{11−21}面である場合、裏面1bは、Ga原子よりも多くのN原子により終端された主面となる傾向があり、液相でのエッチングが可能である。この場合、所要時間を短縮すると共に確実にエッチングする観点では、気相でのエッチングを行うことが好ましく、ドライエッチングを行うことがより好ましい。
以上の工程S100〜S114により、表面1aが{20−21}面、{22−43}面又は{11−21}面である窒化物基板1が得られる。このような窒化物基板1の表面1a上にエピタキシャル層3が形成されることにより、エピタキシャル基板10が得られる。
本実施形態では、III族窒化物半導体のインゴットを{0001}面から特定方向に傾斜した軸方向にスライスすることにより、表面1aが{20−21}面、{22−43}面又は{11−21}面の面方位を有する窒化物基板1を容易かつ確実に得ることができる。また、表面1aが上記特定の面方位を有する半極性面となるように窒化物基板1を得ることで、エピタキシャル層3のインジウムの取り込み効率を向上させることができると共に、窒化物基板1の反りを抑制することができる。
本実施形態では、エピタキシャル層3のインジウムの取り込み効率を向上させることで、半導体デバイスの発光特性を向上させることができる。このような効果の要因については、表面1aが上記特定の面方位を有する半極性面であると、ピエゾ電界の発生が抑制され、エピタキシャル層3に注入した電子と正孔とが引き離されることが抑制されるため、発光遷移確率が向上するためと推測される。
本実施形態では、窒化物基板1の反りを抑制することで、窒化物基板1の加工時間を短縮できると共に、窒化物基板1、エピタキシャル基板10、及びこれらを用いた半導体デバイスの歩留まりを向上させることができる。このような効果の要因については、窒化物基板1の表面1a及び裏面1bの硬度差が緩和されていることに起因するものと推測される。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。上記の説明に記載された{20−21}面、{22−43}面、{11−21}面、M面、A面といった面方位は、その記載自体により特定されるものだけでなく、結晶学的に等価な面及び方位を含む。例えば、{20−21}面とは、(02−21)面、(0−221)面、(2−201)面、(−2021)面、(−2201)面のように結晶学的に等価な面も含む。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[インゴットの作製]
下地基板としてGaAs基板を準備した。GaAs基板の(111)面上にHVPE法によりGaN単結晶(ドーパント:酸素)をc軸方向へ成長させた。下地基板を除去して、GaN単結晶のインゴットを得た。
[インゴット下部の除去効果]
インゴット下部の転位密度の測定を行った。転位密度の評価は、GaNインゴットの底面からc軸方向に沿った所定の位置の転位密度に基づき行った。転位密度は、表面の10μm角の範囲をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察してその範囲内の転位の数から算出した。転位密度の測定結果を表1に示す。
Figure 2011077325
インゴット下部をインゴット底面から所定の位置まで除去し、下記の切削条件でインゴットをスライスした際のクラック発生率を評価した。なお、切り出される基板の表面の面方位が{20−21}面となるようにGaNインゴットをスライスした。クラック発生率の評価結果を表2に示す。
(インゴット)
インゴット:GaN単結晶
インゴット主面:(0001)面
インゴット外形:直径50.8mm、厚み10mm
(切削条件)
砥粒材料:単結晶ダイヤモンド
砥粒の粒径:5〜20μm
砥液における砥粒の濃度:1リットルあたり50g
潤滑材:鉱物油
設備:マルチワイヤソー
送り速度(切断速度):1〜5mm/h(切り位置による可変速)
ワイヤ走行速度:300〜600m/min(切り位置による可変速)
ワイヤ直径:0.16mm
ワイヤ付加張力:20N
Figure 2011077325
表1,2に示されるように、インゴット底面から100μmまでは転位密度が1×1010個/cm以上であることから、100μm未満の除去量では、クラック発生率は5%を超えることが確認された。一方、100μm以上の除去量では、クラック発生率を5%以下に抑制することができた。
[インゴットのスライス]
GaNインゴットの下部をインゴット底面から100μmの位置まで除去した後、上記と同様の切削条件でインゴットをスライスした。表面が{20−21}面、{22−43}面、{11−21}面、C面、A面又はM面となるように切断面とC面との傾斜角度を調整し、GaNインゴットをスライスしてGaN基板を得た。
[表面粗さの評価]
触針式表面粗さ測定機(東京精密社製、サーフコム)を用いて、表面が{20−21}面であるGaN基板の表面粗さを測定した。ワイヤ走行方向に平行な方向(<1−100>方向)、及び、垂直な方向(<11−20>方向、ワイヤの切り込み方向)にそれぞれ10mmの測定長で測定した。表面粗さの測定結果を表3及び図6に示す。なお、図6(a)は、ワイヤ走行方向に垂直な方向(ワイヤの切り込み方向)における表面粗さの測定結果であり、図6(b)は、ワイヤ走行方向に平行な方向における表面粗さの測定結果である。
Figure 2011077325
[エッチング評価]
各GaN基板の表面及び裏面の加工変質層の厚みを透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認したところ、最大5μmであった。次に、各GaN基板の表面(Ga面)及び裏面(N面)に対し、ドライエッチング及びウェットエッチングをそれぞれ行い、エッチングレートの測定を行った。エッチングは、下記の条件により行った。また、ドライエッチング及びウェットエッチングのエッチングレートについて、以下の基準で評価を行った。エッチングレートの測定結果を表4,5に示す。なお、表面がC面であるGaN基板では、表面はウェットエッチングによりエッチングされず、エッチングレートは測定不能であった。
(ドライエッチング条件)
設備:高密度プラズマエッチング装置(ICP)
ガス:塩素ガス
ガス流量:100sccm
圧力:1Pa
アンテナ出力:100W
バイアス出力:50W
(ウェットエッチング条件)
方法:基板の表面及び裏面を薬液に一定時間浸漬した。
薬液:濃度8Nの水酸化カリウム水溶液
温度:60℃
(エッチングレートの評価基準)
A:エッチングレートが特に優れている。
B:エッチングレートが優れている。
C:エッチングレートが低い、又は、エッチングされない。
Figure 2011077325
Figure 2011077325
表4,5より、ドライエッチングであれば、表面がいずれの面方位であってもエッチングを行えることが確認された。また、表面が{20−21}面、{22−43}面、{11−21}面であるGaN基板であれば、表面及び裏面のいずれにもウェットエッチングを適用可能であることが確認された。
[反りの評価]
ドライエッチングにより表面及び裏面の加工変質層を除去した後に、各GaN基板の反りの評価を行った。各GaN基板は、表面が凸型に反ることが確認された。反りの量は、触針式表面粗さ測定機(東京精密社製、サーフコム)を用いて、平面上にGaN基板を載置した時の平面からGaN基板の裏面までの距離(単位:μm)を測定した。測定長は50mmであり、ワイヤ走行方向に垂直な方向(ワイヤの切り込み方向)に沿って測定した。反りの測定結果を表6に示す。
Figure 2011077325
表面が半極性面((20−21)面、(22−43)面、(11−21)面)であるGaN基板では、表面がC面又はM面であるGaN基板と比較して反りが低減していることが確認された。これにより、表面が上記半極性面であるGaN基板は極性が小さくなり、表面と裏面との硬度差が小さいことが推定される。
[インジウムの取り込み効率の評価]
c軸から<1−100>方向(m軸方向)又は<11−20>方向(a軸方向)に傾斜させる角度を変更させてGaNインゴットをスライスし、表面におけるc軸からのオフ角が異なる複数のGaN基板を作製した。GaNのスライスは、傾斜角度を変化させたことを除き、上記と同様の切削条件で行った。これらのGaN基板の表面上にInGaNをエピタキシャル成長させた。InGaNのインジウム(In)組成を2結晶X線回折装置を用いて測定した。
図7は、GaN基板の表面におけるc軸からのオフ角とエピタキシャル層のIn組成との関係を示す図である。図7において、実線はc軸からm軸方向へのオフ角に対するln組成を示し、破線はc軸からa軸方向へのオフ角に対するln組成を示す。
図7に示されるように、c軸からm軸方向へのオフ角が0度(C面)から約36度までの範囲では、ln組成はオフ角の増加に伴い減少した。一方、c軸からm軸方向へのオフ角が更に増加すると、ln組成はオフ角の増加に伴い増加した。約58〜80度の範囲では、優れたインジウムの取り込みが確認され、{20−21}面(c軸からのオフ角:75度)では特に優れたインジウムの取り込みが確認された。
また、c軸からa軸方向へのオフ角が0度(C面)から約36度までの範囲では、ln組成はオフ角の増加に伴い減少した。一方、c軸からa軸方向へのオフ角が更に増加すると、ln組成はオフ角の増加に伴い増加した。約50〜79度の範囲では、優れたインジウムの取り込みが確認された。{22−43}面(c軸からのオフ角:65度)及び{11−21}面(c軸からのオフ角:73度)においても、優れたインジウムの取り込みが確認された。
GaN基板の表面が{20−21}面、{22−43}面、{11−21}面であると、インジウムの取り込み効率に優れることが確認された。これにより、これらの半極性面では、ピエゾ電界の影響が小さいことが推測される。図8は、非特許文献1,2に示されたピエゾ電界の計算結果を示す図である。c軸からの傾きが40〜90度の領域では、ピエゾ電界の影響が小さくなることが確認される。これにより、{20−21}面、{22−43}面及び{11−21}面では、ピエゾ電界の影響が小さいことが推測される。
1…窒化物基板(III族窒化物半導体基板)、1a…表面(主面)、1b…裏面(反対側の主面)、5…インゴット、7…ワイヤ。

Claims (5)

  1. III族窒化物半導体のインゴットをスライスし、III族窒化物半導体基板を得るスライス工程を備えたIII族窒化物半導体基板の製造方法であって、
    前記スライス工程において、前記インゴットを{0001}面から<1−100>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{20−21}面となるように前記III族窒化物半導体基板を得る、もしくは、前記インゴットを{0001}面から<11−20>方向に傾斜した軸方向にスライスし、主面が{22−43}面又は{11−21}面となるように前記III族窒化物半導体基板を得る、III族窒化物半導体基板の製造方法。
  2. 前記スライス工程の前に、面加工により前記インゴットの{000−1}面の転位密度を1.0×1010個/cm以下とする面加工工程を備える、請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
  3. 前記スライス工程の後に、前記III族窒化物半導体基板の前記主面をドライエッチングし、該主面の反対側の主面をウェットエッチングするエッチング工程を備える、請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
  4. 前記スライス工程の後に、前記III族窒化物半導体基板の前記主面、及び、該主面の反対側の主面をドライエッチングするエッチング工程を備える、請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
  5. 前記スライス工程において、前記インゴットをワイヤソーによりスライスし、前記III族窒化物半導体基板の前記主面におけるワイヤ走行方向に平行な方向の表面粗さRaを10〜500nmとし、ワイヤ走行方向に垂直な方向の表面粗さRaを60〜800nmとする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
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