JP2010220306A - モータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンバータによってインバータの直流側電圧を可変制御可能に構成されたモータの制御装置において、トルク制御性および効率をバランスさせるように矩形波電圧制御におけるコンバータの動作状態を適切に制御する。
【解決手段】矩形波電圧制御によって要求される電圧位相φvが、昇圧判定位相よりも大きくなるとコンバータに対して昇圧要求が発せされる。モータの必要トルクが大きいときには、昇圧判定位相が低く(φ0)設定されるので、インバータの直流側電圧を早期に昇圧することにより高トルクの確保が容易となることによって、トルク制御性が向上される。一方、モータの必要トルクが小さいときには、昇圧判定位相が高く(φ1)されるので、コンバータをスイッチング損失が低い非昇圧モードで長期間動作させることができる。
【選択図】図9
【解決手段】矩形波電圧制御によって要求される電圧位相φvが、昇圧判定位相よりも大きくなるとコンバータに対して昇圧要求が発せされる。モータの必要トルクが大きいときには、昇圧判定位相が低く(φ0)設定されるので、インバータの直流側電圧を早期に昇圧することにより高トルクの確保が容易となることによって、トルク制御性が向上される。一方、モータの必要トルクが小さいときには、昇圧判定位相が高く(φ1)されるので、コンバータをスイッチング損失が低い非昇圧モードで長期間動作させることができる。
【選択図】図9
Description
この発明は、モータの制御装置に関し、より特定的には、直流電圧をインバータにより矩形波電圧に変換して交流モータへ印加するモータの制御装置に関する。
直流電圧を、インバータによって交流電圧に変換して交流モータを駆動制御するモータ駆動システムが一般的に用いられている。たとえば、特開2004−187407号公報(特許文献1)には、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御によるモータ制御を複雑な演算を必要とせずに実現するために、電圧振幅については基本的に一定に保った上で、検出した相電流の電流位相に対する電圧位相が一定の位相差となるように、インバータからモータへ印加される相電圧を制御する構成が記載されている。
また、特開2008−11619号公報(特許文献2)には、主駆動輪を駆動するエンジンと、副駆動輪を駆動するモータとを備えた四輪駆動車において、モータの駆動力をインバータによって制御する構成が記載されている。特に特許文献2では、インバータが矩形波駆動され、かつ、モータ印加電圧位相がインバータによって制御される制御モードを設けることが記載されている。
さらに、特開2007−318981号公報(特許文献3)には、直流電源の電圧を昇圧コンバータで昇圧して電源ラインにシステム電圧を発生させ、このシステム電圧によりインバータを介して交流モータを駆動する電気自動車の制御装置が記載されている。特に特許文献3では、交流モータのトルクが変動しないように、交流モータに流れる電流を電力制御ライン(定トルク曲線)に沿って変化させるトレース制御を実行することで、不快なトルク変動を防止することが記載されている。
特許文献2に記載されるような矩形波電圧制御では、交流モータの印加電圧の基本波成分の振幅を高めることができるため、高出力への対応が容易である。また、一般的なPWM制御と比較して、インバータでの電力用半導体スイッチング素子のオンオフ回数が減少するため、エネルギ効率向上、特に電動車両に搭載された場合には燃費向上に寄与することが知られている。
その一方で、矩形波電圧制御では、電圧振幅が固定されて電圧位相のみが操作量となるので、トルク制御性は相対的にPWM制御よりも低下する。特に、インバータの直流側電圧がそのままモータ印加電圧の振幅となるので、この電圧に対するトルク変化が直接的に現われる。
したがって、特許文献3に記載されたような、コンバータによってインバータの直流側電圧を可変制御可能に構成された構成では、コンバータによる昇圧要否について矩形波電圧制御との関連から適切に制御することが好ましい。また、コンバータでのスイッチング損失が昇圧動作の実行有無によって変化することについても、モータ駆動効率の面からは考慮に入れることが好ましい。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、コンバータによってインバータの直流側電圧を可変制御可能に構成されたモータの制御装置において、トルク制御性および効率をバランスさせるように矩形波電圧制御におけるコンバータの動作状態を適切に制御することである。
この発明によるモータの制御装置は、コンバータと、インバータと、演算手段と、設定手段と、判定手段とを備える。コンバータは、直流電源の出力電圧を昇圧せずに出力する第1の動作モードおよび、直流電源の出力電圧を昇圧して出力する第2の動作モードを有するように制御される。インバータは、コンバータからの直流電圧を、交流モータを駆動するための交流電圧に変換するように構成される。演算手段は、交流モータがトルク指令値に従ったトルクを出力するように、インバータから交流モータへ印加される矩形波電圧の電圧位相を演算する。設定手段は、コンバータでの昇圧要否を判定するための判定位相を、交流電動機の動作状態に応じて可変に設定する。判定手段は、演算された電圧位相と判定位相との比較に基づいて、コンバータを第1および第2のモードのいずれで動作させるかを判定する。
本発明によれば、コンバータによってインバータの直流側電圧を可変制御可能に構成されたモータの制御装置において、トルク制御性および効率をバランスさせるように矩形波電圧制御におけるコンバータの動作状態を適切に制御することである。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に従うモータの制御装置により制御されるモータ駆動システムの全体構成図である。
図1は、本発明の実施の形態に従うモータの制御装置により制御されるモータ駆動システムの全体構成図である。
図1を参照して、モータ駆動システム100は、直流電圧発生部10♯と、平滑コンデンサC0と、インバータ14と、交流モータM1とを備える。
交流モータM1は、たとえば、ハイブリッド自動車または電気自動車等の電動車両の駆動輪を駆動するためのトルクを発生する駆動用電動機である。すなわち、本実施の形態では、電動車両は、エンジンを搭載しない電気自動車を含め、車輪駆動力発生用の電動機を搭載する車両全般を含むものである。なお、交流モータM1は、一般的には、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成される。また、この交流モータM1は、ハイブリッド自動車では、エンジンにて駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよい。さらに、交流モータM1は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。
直流電圧発生部10♯は、直流電源Bと、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1と、コンバータ12とを含む。
直流電源Bは、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池、燃料電池や電気二重層キャパシタ、あるいは、これらの組合せから成る。システムリレーSR1は、直流電源Bの正極端子および電力線6との間に接続され、システムリレーSR2は、直流電源Bの負極端子およびアース線5の間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによりオン/オフされる。
平滑コンデンサC1は、電力線6およびアース線5の間に接続される。電圧センサ10は、平滑コンデンサC1の両端の電圧、すなわち電力線6の直流電圧VLを検出し、検出した電圧を制御装置30へ出力する。
コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。
電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線7およびアース線5の間に直列に接続される。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1およびS2によって制御される。
この発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電力線6の間に接
続される。また、平滑コンデンサC0は、電力線7およびアース線5の間に接続される。
続される。また、平滑コンデンサC0は、電力線7およびアース線5の間に接続される。
インバータ14は、電力線7およびアース線5の間に並列に設けられる、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とから成る。各相アームは、電力線7およびアース線5の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。
各相アームの中間点は、交流モータM1の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、交流モータM1は、3相の永久磁石モータであり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中点に共通接続されて構成される。さらに、各相コイルの他端は、各相アーム15〜17のスイッチング素子の中間点と接続されている。
コンバータ12は、昇圧動作時(昇圧モード)には、直流電源Bからの直流電圧VLを昇圧した直流電圧(インバータ14への入力電圧に相当するこの直流電圧を、以下「システム電圧」とも称する)をインバータ14へ供給する。あるいは、コンバータ12は、双方向に電圧変換可能であり、VH>VLの状態とした上で、平滑コンデンサC0を介してインバータ14から供給された直流電圧(システム電圧)を降圧して直流電源Bを充電することも可能である。昇圧モードでは、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1,S2にそれぞれ応答して制御される。
また、スイッチング素子Q1をオン固定し、スイッチング素子Q2をオフ固定した非昇圧動作モードでは、電源ライン6および7が電気的に接続されて、VH=VLとされる。この際には、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフが固定されるので、オンオフに伴うスイッチング損失の発生が回避されることによって、コンバータ12を高効率で動作させることができる。
平滑コンデンサC0は、コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ14へ供給する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧、すなわちシステム電圧VHを検出し、検出した電圧を制御装置30へ出力する。
インバータ14は、交流モータM1のトルク指令値が正(Tqcom>0)の場合には、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により、平滑コンデンサC0から供給される直流電圧VHを適切なモータ印加電圧(交流電圧)に変換して正のトルクを出力するように交流モータM1を駆動する。また、インバータ14は、交流モータM1のトルク指令値が零の場合(Tqcom=0)には、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、直流電圧VHを適切なモータ印加電圧(交流電圧)に変換してトルクが零になるように交流モータM1を駆動する。これにより、交流モータM1は、トルク指令値Tqcomによって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
さらに、モータ駆動システム100が搭載された電動車両の回生制動時には、交流モータM1のトルク指令値Tqcomは負に設定される(Tqcom<0)。この場合には、インバータ14は、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、交流モータM1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧)を、平滑コンデンサC0を介してコンバータ12へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
電流センサ24は、交流モータM1に流れるモータ電流を検出し、その検出したモータ電流を制御装置30へ出力する。なお、三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24は2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置すれば足りる。
回転角センサ(レゾルバ)25は、交流モータM1のロータ回転角θを検出し、その検出した回転角θを制御装置30へ送出する。制御装置30では、回転角θに基づき交流モータM1の回転数を算出する。なお、回転数は、単位時間当たりの回転数(代表的にはrpm)を意味する。
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU)により構成され、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサによる検出値を用いた演算処理を行なう。制御装置30は、このような演算処理により、交流モータM1が上位ECUからの動作指令に従って運転されるように、モータ駆動システム100の動作を制御する。なお、制御装置30の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
具体的には、制御装置30は、トルク指令値Tqcom、電圧センサ10によって検出された直流電圧VL、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VHおよび電流センサ24からのモータ電流iv,iw、回転角センサ25からの回転角θに基づいて、後述する方法により交流モータM1がトルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するように、コンバータ12およびインバータ14の動作を制御する。すなわち、コンバータ12およびインバータ14を上記のように制御するためのスイッチング制御信号S1〜S8を生成して、コンバータ12およびインバータ14へ出力する。
コンバータ12の昇圧動作時には、制御装置30は、平滑コンデンサC0の出力電圧VHをフィードバック制御し、出力電圧VHが電圧指令値となるようにスイッチング制御信号S1,S2を生成する。
また、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを上位ECUから受けると、交流モータM1で発電された交流電圧を直流電圧に変換するようにスイッチング制御信号S3〜S8を生成してインバータ14へ出力する。これにより、インバータ14は、交流モータM1で発電された交流電圧を直流電圧に変換してコンバータ12へ供給する。
さらに、制御装置30は、電動車両が回生制動モードに入ったことを示す信号RGEを外部ECUから受けると、インバータ14から供給された直流電圧を降圧するようにスイッチング制御信号S1,S2を生成し、コンバータ12へ出力する。これにより、交流モータM1が発電した交流電圧は、直流電圧に変換され、降圧されて直流電源Bに供給される。
さらに、制御装置30は、システムリレーSR1,SR2をオン/オフするための信号SEを生成してシステムリレーSR1,SR2へ出力する。
(制御構成)
次に、制御装置30によって制御される、インバータ14における電力変換について詳細に説明する。
次に、制御装置30によって制御される、インバータ14における電力変換について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明の実施の形態によるモータ駆動システム100では、インバータ14における電力変換について3つの制御モードを切換えて使用する。
正弦波PWM制御は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相アームにおけるスイッチング素子のオンオフを、正弦波状の電圧指令値と搬送波(代表的には三角波)との電圧比較に従って制御する。この結果、ハイレベル期間およびローレベル期間の集合について、一定期間内でその基本波成分が正弦波となるようにデューティ比が制御される。周知のように、正弦波PWM制御では、交流モータM1に印加される線間電圧の基本波成分(実効値)をインバータ入力電圧の0.61倍程度までしか高めることができない。以下、本明細書では、インバータ14の直流側電圧(すなわち、システム電圧VH)に対する交流モータM1の線間電圧の基本波成分(実効値)の比を「変調率」と称することとする。
一方、矩形波電圧制御では、上記一定期間内で、ハイレベル期間およびローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流モータM1に印加する。これにより、変調率は0.78まで高められる。
過変調PWM制御は、電圧指令の振幅が搬送波振幅より大きい範囲で上記正弦波PWM制御と同様のPWM制御を行なうものである。特に、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませることによって基本波成分を高めることができ、変調率を正弦波PWM制御モードでの最高変調率から0.78の範囲まで高めることができる。
交流モータM1では、回転速度や出力トルクが増加すると誘起電圧が高くなるため、必要となる駆動電圧(モータ必要電圧)が高くなる。コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHはこのモータ必要電圧よりも高く設定する必要がある。その一方で、コンバータ12による昇圧電圧すなわち、システム電圧VHには限界値(VH最大電圧)が存在する。
したがって、交流モータM1の動作状態に応じて、モータ電流のフィードバックによってモータ印加電圧(交流)の振幅および位相を制御する、正弦波PWM制御または過変調PWM制御によるPWM制御モード、および、矩形波電圧制御モードのいずれかが選択的に適用される。なお、矩形波電圧制御では、モータ印加電圧の振幅が固定されるため、トルク実績値とトルク指令値との偏差に基づく、矩形波電圧パルスの位相制御によってトルク制御が実行される。
図2に示した制御モードのいずれを用いるかについては、基本的には、実現可能な変調率の範囲内で決定されるが、インバータでの効率改善の観点から、必要な変調率が低い動作範囲においても矩形波電圧制御モードを積極的に適用することも可能である。
図3に示すように、矩形波電圧制御時には矩形波電圧の電圧位相φvを変化させることによって、交流モータM1の出力トルクが制御される。すなわち、力行動作(正トルク出力)時には、電圧位相を進める(大きくする)ことによって力行トルクを増大することができ、回生動作(負トルク出力)時には、電圧位相φvを遅らせる(小さくする)ことによって回生トルクを増大することができる。
したがって、トルク指令値に対するトルク偏差に応じて電圧位相を調整するフィードバック制御および/または事前に求めた電圧位相−出力トルク特性に従ってトルク指令値に対応する電圧位相を求めるフィードフォワード制御によって、矩形波電圧制御が可能であることが理解される。
図4を参照して、交流モータM1の出力トルクは、電圧位相φvのみならず、システム電圧VH(すなわち矩形波電圧の振幅)によっても変化する。具体的には、同一の電圧位相φvに対して、システム電圧VHの上昇に従って出力トルクの絶対値が増加する特性を示す。したがって、高トルクの要求時には、コンバータ12による昇圧動作によって、システム電圧VHを昇圧することにより、同一の電圧位相制御範囲に対する出力トルクを確保することができる。
一方、上述のように、コンバータ12では、非昇圧モード(VH=VLの動作モード)では、スイッチング損失が低減するため効率が高くなる。これに対して、コンバータ12を昇圧動作(VH>VL)させると、スイッチング素子Q1,Q2でのスイッチング損失によって、コンバータ12の効率が相対的に低下する。
システム電圧VHについては、少なくとも交流モータM1の誘起電圧よりも高電圧に設定する必要がある。一方で、交流モータM1の誘起電圧が低くても、出力トルクを確保するために、システム電圧VHを上昇させる必要が生じることがある。したがって、最終的には、交流モータM1の誘起電圧から要求される電圧と、トルク制御から要求される電圧とのうちの最高電圧に従って、システム電圧VHの指令値が設定される。
このため、上述のように、電動車両の燃費向上の観点から、モータ駆動効率向上のために、交流モータM1を高速域以外でも矩形波電圧制御によって駆動制御するケースでは、交流モータM1の誘起電圧が低くなるため、交流モータM1のトルク制御状況に対応させて、コンバータ12を昇圧モード(VH>VL)および非昇圧モード(VH=VL)のいずれで動作させるかを選択することが好ましい。
図5には、制御装置30によって実行される、本実施の形態による矩形波電圧制御の制御処理手順を説明するフローチャートが示される。図5に示した各ステップの処理は、制御装置30によるハードウェアおよび/またはハードウェア処理によって実現されるものとする。
図5を参照して、制御装置30は、ステップS100では、トルク指令値Tqcomを取得するとともに、ステップS110により、モータ状態を示すセンサ値を取得する。このセンサ値は、代表的には、図1に示された電流センサ24および回転角センサ25の出力信号である。
さらに、制御装置30は、ステップS120では、ステップS110で取得されたセンサ値およびステップS100で取得されたトルク指令値Tqcomに基づいて、交流モータM1の出力トルクがトルク指令値Tqcomに従ったものとなるように、矩形波電圧の電圧位相φvを演算する。電圧位相φvの演算は、交流モータM1の出力トルク(推定値/測定値)とトルク指令値Tqcomとの偏差に基づくフィードバック制御および/またはトルク指令値Tqcomの変化に対応させたフィードフォワード制御によって実現することができる。すなわち、制御装置30によるステップS120の処理は「演算手段」に対応する。
制御装置30は、ステップS130では、コンバータ12での昇圧要否を判定するための昇圧判定位相φnを可変に設定する。すなわち、制御装置30によるステップS130の処理は「設定手段」に対応する。ここで、図6および図7を用いて、昇圧判定位相φnの設定について説明する。
図6を参照して、本実施の形態による矩形波電圧制御では、昇圧判定位相φnは、一定値に固定されるのではなく、交流モータM1の動作状態に応じて可変に設定される。たとえば、必要トルクの大きさに応じて昇圧判定位相φnが可変に設定される。以下では、一例として、目標トルク(トルク指令値Tqcom)の変更時におけるトルク偏差ΔTによって必要トルクの大小を判断するものとする。
図6の例では、トルク偏差ΔT<T1の場合には、φn=φ1に設定される一方で、ΔT>T2の場合にはφn=φ0に設定される。また、T1<ΔT<T2の場合には、位相φ1およびφ2の間を線形補間するように昇圧判定位相φnが設定される。
ここで、φ1>φ0であるので、トルク偏差が大きいほど、昇圧判定位相φnを相対的に低く設定できる。すなわち、出力トルクが低い電圧位相側に、昇圧判定位相φnを設定できる。
たとえば図7に示したフローチャートに従って、図6に示した昇圧判定位相の設定が実現される。
図7は、図5のステップS130での処理を詳細に説明するフローチャートである。
図7を参照して、制御装置30は、ステップS132では、トルク偏差ΔT<T1であるかどうかを判定する。そして、ΔT<T1のときには、ステップS134により、ΔT>T2であるかどうかがさらに判定される。
図7を参照して、制御装置30は、ステップS132では、トルク偏差ΔT<T1であるかどうかを判定する。そして、ΔT<T1のときには、ステップS134により、ΔT>T2であるかどうかがさらに判定される。
制御装置30は、ΔT<T1のとき(S132のYES判定時)には、ステップS135により、φn=φ1に設定する一方で、ΔT>T2のとき(ステップS134のYES判定時)には、ステップS137により、φn=φ0に設定する。さらに、制御装置30は、ステップS134のNO判定時、すなわちT1≦ΔT≦T2のときには、ステップS136により、φ0〜φ1の間で線形補間するようにφnを設定する。
再び図5を参照して、制御装置30は、ステップS140では、ステップS120で演算された電圧位相φvと、ステップS130で設定された昇圧判定位相φnとを比較する。そして、電圧位相φvが昇圧判定位相φnよりも大きいとき、すなわち昇圧判定位相よりも、出力トルクが大きい領域の電圧位相が要求されている場合には、制御装置30は、ステップS150に処理を進めて、コンバータ12に対してVH昇圧要求を生成する。
VH昇圧要求の発生時には、システム電圧VHの電圧指令値が上昇されることによって、非昇圧モード(VH=VL)で動作しているコンバータ12が、昇圧モード(VH>VL)に切換えられる。あるいは、既に昇圧モードで動作しているコンバータ12に対しては、システム電圧VHの電圧指令値がさらに上昇される。
その一方で、φv≦φnのとき(S140のNO判定時)には、制御装置30は、ステップS140の処理をスキップする。すなわち、ステップS150によるVH昇圧要求は生成されない。したがって、コンバータ12が非昇圧モードで動作している場合には、スイッチング損失の少ない当該非昇圧モードが維持される。コンバータ12が昇圧モードで動作しているときには、その電圧指令値VHが現在値に維持されるか、または、非昇圧モードへの切換えが指示される。すなわち、制御装置30によるステップS140,S150の処理は、「判定手段」に対応する。
さらに、制御装置30は、ステップS160では、ステップS120で演算された電圧位相φvに従ってインバータ制御(矩形波電圧制御)を実行し、ステップS170では、ステップS150でのVH昇圧要求の生成有無を反映して、コンバータ12を昇圧モードおよび非昇圧モードのいずれかで制御する。
次に図8を用いて、比較例および本実施の形態でのトルク制御動作の違いを説明する。
図8を参照して、特性線500は、コンバータ12を非昇圧モードで動作させたときにシステム電圧VH(VH=VL)における電圧位相φv−トルク特性を示す。同様に、特性線510には、VH昇圧要求生成に応答したシステム電圧VHの上昇後における電圧位相−トルク特性が示される。
図8を参照して、特性線500は、コンバータ12を非昇圧モードで動作させたときにシステム電圧VH(VH=VL)における電圧位相φv−トルク特性を示す。同様に、特性線510には、VH昇圧要求生成に応答したシステム電圧VHの上昇後における電圧位相−トルク特性が示される。
図8では、出力トルク=Taの状態からトルクをΔT増加させるようにトルク指令値が設定されたケースが示される。この際に、昇圧判定位相φn=φ1に固定した比較例による矩形波電圧制御では、トルク軌跡550に示されるように、トルク偏差に応じて電圧位相φvが制御周期毎に大きく設定されていく中で、φv≦φ1の間はコンバータ12が非昇圧モードで動作され、φv>φ1になるとコンバータ12が昇圧モードで動作される。
すなわち比較例では、トルク偏差ΔTが大きいにもかかわらず、コンバータ12が非昇圧モードで動作される期間が長いため、システム電圧VHの上昇によるトルク確保が間に合わず、電圧位相φvが上限値φlimに達してしまった後にトルク指令値に従ったトルク偏差ΔTが解消されるようにトルクが制御される。このため、制御応答性に問題が残る。
これに対して、トルク軌跡560は、本実施の形態に従って、トルク偏差ΔTが大きい場合には昇圧判定位相φnを低く設定したときの制御動作を示す。これによれば、電圧位相φvが比較的小さい状態からコンバータ12に昇圧要求を発生するため、早期にシステム電圧を上昇させてトルクを確保することが可能となる。この結果、電圧位相φvが上限値φlimに達することなく、円滑にトルク偏差ΔTを解消するためのトルク制御が可能となることが理解される。
図9には、本実施の形態による昇圧判定位相を可変設定する矩形波電圧制御におけるトルク偏差の違いによるトルク制御動作の違いが示される。
図9を参照して、トルク軌跡600は、出力トルクTaからTcまで上昇させる際のトルク制御を示すものであり、図8のトルク軌跡560と同様に、トルク偏差ΔTが大きいとき(図6の例では、ΔT>T2)のときの制御動作に対応する。
このときには、必要トルクが大きいと判断されることから、昇圧判定位相φnが低く(φn=φ0)設定されるので、電圧位相φvが小さい領域からコンバータ12に対してVH昇圧要求が発生される。この結果、電圧位相φvを上限値φlimの近傍まで大きくさせることなく、トルク制御を円滑に行なうことができる。
その一方で、トルク軌跡610は、出力トルクTaからTbまで上昇させる際のトルク制御を示すものであり、トルク軌跡600とは異なり、必要トルクが比較的小さい(図6の例では、ΔT<T1)のときの制御動作に対応する。このときには、昇圧判定位相φnが相対的に高く(φn=φ1)設定されるので、コンバータ12の非昇圧モードでの動作範囲が広くなる。これにより、トルク確保のための昇圧が不要であることに対応させて、
スイッチング損失が低減されるようにコンバータ12を制御できる。この結果、モータ駆動システム100の効率上昇、ひいてはモータ駆動システム100を搭載する電動車両の燃費向上を図ることが可能となる。
スイッチング損失が低減されるようにコンバータ12を制御できる。この結果、モータ駆動システム100の効率上昇、ひいてはモータ駆動システム100を搭載する電動車両の燃費向上を図ることが可能となる。
このように、本実施の形態による交流モータの矩形波電圧制御では、コンバータ12に対して昇圧要求を発生するか否かを判定する昇圧判定位相を交流モータM1の動作状態、好ましくは必要トルクに応じて可変に設定することとしたので、トルク制御性および効率をバランスさせるように矩形波電圧制御におけるコンバータの昇圧モード/非昇圧モードを適切に選択することができる。
なお、以上の説明では、目標トルク(トルク指令値Tqcom)の変更時におけるトルク偏差ΔTによって必要トルクの大小を判断したが、この他の定義に従って必要トルクを評価してもよい。あるいは、直接的に交流モータM1のトルク制御状態を評価するのではなく、交流モータM1への出力要求に係るパラメータ、たとえば、交流モータM1を車両駆動力発生用モータとして搭載する電動車両でのアクセル操作量等に応じて、昇圧判定位相φnを可変に設定してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
5 アース線、6,7 電力線、10,13 電圧センサ、10♯ 直流電圧発生部、12 コンバータ、14 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、24 電流センサ、25 回転角センサ、30 制御装置(ECU)、100 モータ駆動システム、500 特性線(昇圧前)、510 特性線(昇圧後)、550,560,600,610 トルク軌跡、B 直流電源、C0,C1 平滑コンデンサ、D1〜D8 逆並列ダイオード、iu,iv,iw 三相電流(モータ電流)、L1 リアクトル、M1 交流モータ、Q1〜Q8 電力用半導体スイッチング素子、S1〜S8 スイッチング制御信号、SR1,SR2 システムリレー、Tqcom トルク指令値、VH 直流電圧(システム電圧)、VL 直流電圧、ΔT トルク偏差、θ ロータ回転角、φlim 電圧位相上限値、φn 昇圧判定位相、φv 電圧位相。
Claims (1)
- 直流電源の出力電圧を昇圧せずに出力する第1の動作モードおよび、前記直流電源の出力電圧を昇圧して出力する第2の動作モードを有するように制御されるコンバータと
前記コンバータからの直流電圧を、交流モータを駆動するための交流電圧に変換するように構成されたインバータと、
前記交流モータがトルク指令値に従ったトルクを出力するように、前記インバータから前記交流モータへ印加される矩形波電圧の電圧位相を演算するための演算手段と、
前記コンバータでの昇圧要否を判定するための判定位相を、前記交流電動機の動作状態に応じて可変に設定するための設定手段と、
演算された前記電圧位相と前記判定位相との比較に基づいて、前記コンバータを前記第1および前記第2のモードのいずれで動作させるかを判定するための判定手段とを備える、モータの制御装置。
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JP2012080703A (ja) * | 2010-10-05 | 2012-04-19 | Denso Corp | 電力変換装置 |
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CN103812422A (zh) * | 2012-11-07 | 2014-05-21 | 丰田自动车株式会社 | Ac电动机的控制系统 |
-
2009
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