JP2010049998A - コンセント及び電源供給切替装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】待機電力の削減に有効な新たな技術を提供する。
【解決手段】コンセント100に、電気配線1から供給された電力を電気機器に供給するための出力端子2と、光を受けて発電する太陽電池3と、電気配線1と出力端子2との導通/不導通を切り替えるスイッチ4とを設け、さらに、スイッチ4が太陽電池3で発電された電力により導通するようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池を備えたコンセント及び電源供給切替装置に関するものである。
特許文献1において、電化製品の待機電力を削減するために太陽電池を備えたスイッチ装置が提案されている。このスイッチ装置は、太陽電池に光が照射されていないときには不導通となっているが、太陽電池に光が照射されると当該太陽電池が発電した電力により導通となるものである。特許文献1記載の技術では、これを電化製品に適用することにより電化製品への電力供給を制御し、待機電力の削減を図っている。
特開2007−20292号公報
特許文献1ではスイッチ装置を商用電源と電化製品の電力消費部との間の電源入力ラインに設ける旨が記載されていたが、電源入力ラインのどこに配設することが適切であるかは検討されていない。このため、汎用性などの観点から、更なる改善が求められていた。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、待機電力の削減に有効な新たな技術を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、電気配線から供給された電力を電気機器に供給するための出力端子を有するコンセントに、光を受けて発電する太陽電池と、前記電気配線と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを設けることが、待機電力の削減に有効であることを見出した。また、コンセントに接続されて前記コンセントから電力を供給される電源プラグ部と、該電源プラグ部に供給される電力を電気機器に供給するための出力端子とを備える電源供給切替装置に、光を受けて発電する太陽電池と、前記電源プラグ部と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを設けることも、待機電力の削減に有効であることを見出した。本発明者は、上記の知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、電気配線から供給された電力を電気機器に供給するための出力端子と、光を受けて発電する太陽電池と、前記電気配線と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを備えることを特徴とするコンセントに存する(請求項1)。
本発明の別の要旨は、コンセントに接続されて前記コンセントから電力を供給される電源プラグ部と、該電源プラグ部に供給される電力を電気機器に供給するための出力端子と、光を受けて発電する太陽電池と、前記電源プラグ部と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを備えることを特徴とする電源供給切替装置に存する(請求項5)。
このとき、該太陽電池が、可視領域の光を受けて発電する第一太陽電池と、可視領域外の光を受けて所定量以上の電力を発電し、可視領域の光を受けても前記所定量以上の電力を発電しない第二太陽電池とを備え、該スイッチが、該第一太陽電池から電力を供給され、且つ、該第二太陽電池から前記所定量以上の電力を供給されていないときに、前記の供給された電力により導通するようになっていることが好ましい(請求項2,6)。
また、該太陽電池が、可視領域の光を受けて第一発電量の電力を発電し、前記可視領域外の光を受けて第二発電量の電力を発電するようになっており、該スイッチが、供給される電力量がゼロより大きく第一電力量及び第二電力量の合計よりも小さいときに、前記の供給された電力により導通するようになっていても好ましい(請求項3,7)。
さらに、前記可視領域外の光が赤外光であることがより好ましい(請求項4,8)。
本発明のコンセント及び電源供給切替装置によれば、電気機器の待機電力の削減が可能である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[第一実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第一実施形態としてのコンセントについて説明する。図1は本実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図であり、図2は本実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態のコンセント100は、電気配線1から供給された電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子2と、光を受けて発電する太陽電池3と、電気配線1と出力端子2との導通/不導通を切り替えるスイッチ4とを備えている。
出力端子2は電気機器に電力を供給するための端子であり、通電ラインLにより電気配線1に接続されている。また、電気配線1は商用電源等の外部電源に接続されていて、前記の外部電源から供給される電力が電気配線1から出力端子2へと供給されるようになっている。
出力端子2は、通常は、図2に示すようにコンセントボックス5に設けられた差込口6の奥に設けられている。そして、差込口6に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子2に接触することにより、出力端子2から電気機器に電力が供給されるようになっている。
太陽電池3は、光を受けて発電する太陽電池であり、通常は図2に示すように、コンセントボックス5の表面に露出して設けられる。この際、太陽電池3はコンセント100に接続される電気機器の電源プラグの影に入らないように、差込口6よりも鉛直上側に設けることが好ましい。ただし、太陽電池3と差込口6との位置関係は本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものでは無い。
スイッチ4は、太陽電池3で発電された電力を供給されたときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図1に示すように、スイッチ4は太陽電池3に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー7を備えている。
常時OFFリレー7は、通電ラインLを導通する常時OFF接点7Aと、常時OFF接点7Aを動作させる駆動コイル7Bとを備えていて、駆動コイル7Bには太陽電池3から電力を供給されるようになっている。また、常時OFF接点7Aは基本的には不導通となっているが、太陽電池3が電力量P以上の電力を発電すると、その電力により駆動コイル7Bが動作し、常時OFF接点7Aが導通してスイッチの役割を果たすようになっている。即ち、電力量Pは駆動コイル7Bに動作電流を流すために要求される動作電力量であり、この電力量Pの大きさに応じて光に対するスイッチ4の感度が決定される。したがって、電力量Pの大きさは、スイッチ4に要求される光への感度に応じて設定すればよく、例えば、コンセント100の使用環境、使用する太陽電池3の種類などに応じて適切に設定すればよい。
本実施形態のコンセント100は上記のように構成されているため、このコンセント100に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー7が不導通となっているため、スイッチ4は不導通となっており、通電ラインLには通電できず、出力端子2から電気機器へ電力を供給しない。
これに対し、コンセント100に光が照射されると、太陽電池3が光を受けて電力量P以上で発電し、この電力が駆動コイル7Bに供給されて、供給された電力により常時OFF接点7Aが導通する。これによりスイッチ常時OFFリレー7が導通するため、スイッチ4は導通し、通電ラインLに通電でき、出力端子2から電気機器に電力を供給できる。
なお、電力量Pを高く設定しておけば、何らかの理由により太陽電池3が受ける光が弱くなり太陽電池3の発電量が電力量Pに満たない場合もありえる。この場合、太陽電池3に光が照射されていない場合と同様に、スイッチ4は不導通となる。本実施形態のスイッチ4はこれを利用して、太陽電池3が光を受けたか否かではなく、太陽電池3が受ける光の強度に応じて導通/不導通を切り替えるスイッチとして機能させることも可能である。
このように、本実施形態のコンセント100によれば、商用電源等の外部電源からの電力供給を必要とせず、自らの発電電力で動作する発電スイッチ4により導通と不導通とを切り替えることができる。このため、コンセント100に電源プラグが接続されている状態であっても、部屋の照明が点灯したこと等により光を照射されるまでコンセント100から電気機器に電力が供給されないため、電化製品が不要な電力を消費しないようにできる。
さらに、コンセント100にスイッチ4を設けるようにしたため、電気機器それぞれに特許文献1記載のスイッチ装置を設ける必要がなく、コスト及び取り扱い性などに優れる。
本実施形態のコンセント100は上記のような利点を有するため、例えば、人が滞在しているときのみ照明を点灯させることが多い環境で使用することが好ましい。具体例を挙げると、洗面所やトイレなどに設置される換気扇やハンドドライヤーなどであれば、部屋の照明の点灯による明かりによりスイッチ4が導通することにより、換気扇やハンドドライヤーなどに電力を供給して使用可能状態もしくは運転状態にすることができる。また、部屋の照明が消灯するとスイッチ4は不導通になり、換気扇やハンドドライヤーなどの電化製品への供給電力を停止することができる。これにより、換気扇やハンドドライヤーなどの電化製品を利用したいときに自動的に電力を供給し、使用しないときは停止するような電力供給の制御を行うことができる。
ところで、太陽電池3が受ける光の強さにより、それらの発電量は変動するものと考えられる。このため、上述したとおり、本実施形態のスイッチ4を、太陽電池3が受ける光の強度に応じて導通/不導通を切り替えるスイッチとして機能させることも可能である。したがって、駆動コイル7Bの動作電力量である電力量Pは、スイッチ4に要求される光の感度に応じて設定しておくことが好ましい。例えば室内で照明の明かりを感知するのにスイッチ4を使用するのであれば、通常は照明が発する人工光の強度はある程度の範囲に収まるため、人工光の強度の範囲に合わせて電力量Pを設定しておけばよい。例えば前記の電化製品の待機電力を抑制する用途にコンセント100を用いるのであれば、待機電力を確実になくす観点からは電力量Pは高く設定することが好ましく、また、導通を確実に行う観点からは電力量Pは低く設定することが好ましい。
なお、本実施形態のコンセント100は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
例えば、図2では1つのコンセントボックス5に一対の差込口6が設けられた例を示したが、差込口6を2対以上設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では2穴タイプのコンセントを例示したが、例えば3穴タイプなど他のタイプのコンセントであっても本実施形態を適用できる。
また、例えば、スイッチ手段としてリレー7に代えて半導体リレー、サイリスタ、トランジスタ、トライアック、フォカプラなどの半導体スイッチを用いるようにすれば、スイッチ4を小型化及び長寿命化させることができる。さらに、これらの半導体スイッチ以外の機器を用いるようにしてもよい。
さらに、スイッチ4の構成は上述した実施形態のものに限定されず、太陽電池3の発電により導通と不導通とを切り替えるものであれば任意である。例えば、リレーの数を2以上に増やしても良い。この場合、対応する太陽電池の数及び種類を調整すれば、更に複雑なスイッチング制御が可能となる。
[第二実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第二実施形態としての電源供給切替装置について説明する。図3は本実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図であり、図4は本実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、本実施形態の電源供給切替装置200は、コンセントに接続される電源プラグ部8と、電源プラグ部8に供給される電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子9と、光を受けて発電する太陽電池10と、電源プラグ部8と出力端子9との導通/不導通を切り替えるスイッチ11とを備えている。
電源プラグ部8は商用電源等の外部電源に接続されたコンセント(図示せず)に接続され、コンセントから電力を供給されるものである。通常、電源プラグ部8は図4に示すように、ハウジング12から引き出された電源コード13の先端に設けられていているが、ハウジング12に直接設けられたタイプのものでもよい。
出力端子9は電気機器に電力を供給するための端子であり、図3に示すように、通電ラインLにより電源プラグ8に接続されている。
出力端子9は、通常は、図4に示すようにハウジング12に設けられた差込口14の奥に設けられている。そして、差込口14に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子9に接触することにより、出力端子9から電気機器に電力が供給されるようになっている。
太陽電池10は、第一実施形態の太陽電池3と同様に、光を受けて発電する太陽電池であり、通常は図4に示すように、ハウジング12の表面に露出して設けられる。
スイッチ11は、太陽電池10で発電された電力を供給されたときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図3に示すように、スイッチ11は太陽電池10に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー15を備えている。
常時OFFリレー15は、第一実施形態の常時OFF接点7A及び駆動コイル7Bと同様の常時OFF接点15A及び駆動コイル15Bを備えていて、第一実施形態の常時OFFリレー7と同様に動作するようになっている。
本実施形態の電源供給切替装置200は上記のように構成されているため、第一実施形態のコンセント100と同様の要領で、電気機器への電力の供給と停止を切り替えることができる。
即ち、電源プラグ部8をコンセント(図示せず)に接続した場合であっても、例えば電源供給切替装置200に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー15が不導通となっているため、出力端子9から電気機器に電力を供給しない。
これに対し、電源供給切替装置200に光が照射されると、太陽電池10が発電した電力が駆動コイル15Bに供給されて、供給された電力により常時OFF接点15Aが導通し、出力端子9から電気機器に電力を供給できる。
このように、本実施形態の電源供給切替装置200によれば、第一実施形態のコンセント100と同様の利点を得ることができる。
これに加え、電源供給切替装置200はコンセントに対して着脱可能であるため、取り扱い性に優れ、また、既存の電源設備に適用できるため、好ましい。
さらに、本実施形態の電源供給切替装置200は、第一実施形態のコンセント100と同様の用途に用いることができる。
また、本実施形態の電源供給切替装置200は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
例えば、図4では1つのハウジング12に一対の差込口14が設けられた例を示したが、差込口14を2対以上設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では差込口14が2穴タイプのものを例示したが、例えば3穴タイプなど他のタイプのものであっても本実施形態を適用できる。
さらに、第一実施形態と同様に変更して実施することも可能である。
[第三実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第三実施形態としてのコンセントについて説明する。図5は本実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図であり、図6は本実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。
図5に示すように、本実施形態のコンセント300は、電気配線16から供給された電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子17と、第一太陽電池としての可視光吸収太陽電池18と、第二太陽電池としての赤外吸収太陽電池19と、電気配線16と出力端子17との導通/不導通を切り替えるスイッチ20とを備えている。
出力端子17は第一実施形態の出力端子2と同様であり、本実施形態でも図6に示すようにコンセントボックス21に設けられた差込口22の奥に設けられ、差込口22に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子17に接触することにより、出力端子17から電気機器に電力が供給されるようになっている。
可視光吸収太陽電池18は、可視領域(所定の波長領域)の光(即ち、可視光)を受けて所定の電力量Pv以上で発電する太陽電池である。この可視光吸収太陽電池18は、可視領域以外の光を受けても可視光を受けたときほどの発電量では発電しないもの、即ち、所定の電力量Pv以上の電力を発電しないものが好ましい。この可視光吸収太陽電池18の例を挙げると、アモルファスシリコン系太陽電池が挙げられる。
可視光吸収太陽電池18は、通常は図6に示すように、コンセントボックス21の表面に露出して設けられる。この際、可視光吸収太陽電池18はコンセント300に接続される電気機器の電源プラグの影に入らないように、差込口22よりも鉛直上側に設けることが好ましい。ただし、可視光吸収太陽電池18と差込口22との位置関係は本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものでは無い。
赤外吸収太陽電池19は、赤外領域(所定の波長領域外の波長領域)の光(即ち、赤外光)を受けて所定の電力量Pi以上で発電する太陽電池である。ただし、赤外吸収太陽電池19としては、可視光を受けても赤外光を受けたときほどの発電量では発電しないもの、即ち、所定の電力量Pi以上の電力を発電しないものを用いる。この赤外吸収太陽電池19の例を挙げると、ガリウム−砒素系太陽電池が挙げられる。
赤外吸収太陽電池19は、通常は図6に示すように、コンセントボックス21の表面に露出して設けられる。この際、赤外吸収太陽電池19はコンセント300に接続される電気機器の電源プラグの影に入らないように、差込口22よりも鉛直上側に設けることが好ましい。ただし、赤外吸収太陽電池19と差込口22との位置関係は本発明の効果を著しく損なわない限り、これに限定されるものでは無い。
スイッチ20は、可視光吸収太陽電池18から電力量Pv以上の電力を供給され、且つ、赤外吸収太陽電池19から電力量Pi以上の電力を供給されていないときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図5に示すように、スイッチ20は可視光吸収太陽電池18に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー23と赤外吸収太陽電池19に対応したスイッチ手段としての常時ONリレー24とを備えている。
常時OFFリレー23は、通電ラインLを導通する常時OFF接点23Aと、常時OFF接点23を動作させる駆動コイル23Bとを備えていて、駆動コイル23Bには可視光吸収太陽電池18から電力を供給されるようになっている。また、常時OFF接点23Aは基本的には不導通となっているが、可視光吸収太陽電池18が電力量Pv以上の電力を発電すると、その電力により駆動コイル23Bが動作し、常時OFF接点23Aが導通してスイッチの役割を果たすようになっている。即ち、電力量Pvは駆動コイル23Bに動作電流を流すために要求される動作電力量であり、この電力量Pvの大きさに応じて可視光に対するスイッチ20の感度が決定される。したがって、電力量Pvの大きさは、スイッチ20に要求される可視光への感度に応じて設定すればよく、例えば、コンセント300の使用環境、使用する可視光吸収太陽電池18の種類などに応じて適切に設定すればよい。
また、常時ONリレー24は通電ラインLを導通する常時ON接点24Aと常時ON接点24Aを動作させる駆動コイル24Bとを備えていて、駆動コイル24Bには赤外吸収太陽電池19から電力を供給されるようになっている。また、常時ON接点24Aは基本的には導通しているが、赤外吸収太陽電池19が電力量Pi以上の電力を発電すると、その電力により駆動コイル24Bが動作し、常時ON接点24Aが不導通となってスイッチの役割を果たすようになっている。即ち、電力量Piは駆動コイル24Bに動作電流を流すために要求される動作電力量であり、この電力量Piの大きさに応じて赤外光に対するスイッチ20の感度が決定される。したがって、電力量Piの大きさは、スイッチ20に要求される赤外光への感度に応じて設定すればよく、例えば、コンセント300の使用環境、使用する赤外吸収太陽電池19の種類などに応じて適切に設定すればよい。
本実施形態のコンセント300は上記のように構成されているため、このコンセント300に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー23が不導通となっているため、スイッチ20は不導通となっており、通電ラインLには通電できず、出力端子17から電気機器へ電力を供給しない。
これに対し、コンセント300に光が照射されると、照射された光が有する波長成分に応じてスイッチ20の導通と不導通が切り替わる。
例えば、コンセント300に蛍光灯やLED等から可視光のみが照射されると、可視光吸収太陽電池18が可視光を受けて電力量Pv以上で発電し、この電力が駆動コイル23Bに供給されて、供給された電力により常時OFF接点23Aが導通する。一方で、赤外吸収太陽電池19は可視光を受けても電力量Piほどは発電しないため、常時ON接点24Aは導通したままとなる。これによりスイッチ20は導通し、通電ラインLに通電でき、出力端子17から電気機器に電力を供給できる。
また、例えばコンセント300に可視光及び赤外光の両方の成分を含む太陽光が照射されると、可視光吸収太陽電池18が太陽光に含まれる可視光成分を受けて電力量Pv以上で発電し、この電力が駆動コイル23Bに供給されて、供給された電力により常時OFF接点23Aが導通する。一方で、赤外吸収太陽電池19は太陽光に含まれる赤外光成分を受けて電力量Pi以上で発電し、この電力が駆動コイル24Bに供給されて、供給された電力により常時ON接点24Aは不導通となる。これにより、スイッチ20は不導通のままとなり、通電ラインLには通電できず、出力端子17から電気機器へ電力を供給しない。
また、例えばコンセント300に赤外光のみが照射されると、(i)可視光吸収太陽電池18が赤外光を受けて電力量Pv以上で発電できるものであれば、可視光吸収太陽電池18が発電した電力が駆動コイル23Bに供給されて、供給された電力により常時OFF接点23Aが導通する。逆に、(ii)可視光吸収太陽電池18が赤外光を受けても電力量Pv以上の電力を発電しないものであれば、可視光吸収太陽電池18は電力量Pvほどは発電しないことになるため、常時OFF接点23Aは不導通のままとなる。しかし、いずれにしろ赤外吸収太陽電池19は赤外光を受けて電力量Pi以上で発電し、この電力が駆動コイル24Bに供給されて、供給された電力により常時ON接点24Aは不導通となる。したがって、スイッチ20は不導通のままとなり、通電ラインLは通電せず、出力端子17から電気機器へ電力を供給しない。
このように、本実施形態のコンセント300によれば、商用電源等の外部電源からの電力供給を必要とせず、自らの発電電力で動作する発電スイッチ20により導通と不導通とを切り替えることができる。さらにスイッチ20は、可視光成分と赤外光成分とを含む太陽光や、可視光成分を有さない赤外光を照射しても導通せず、可視光成分を有するが赤外光成分を有しない光を照射すると、その光を感知して導通するようになっている。したがって、コンセント300は、例えば蛍光灯やLEDなどの照明装置から発せられる人工光(これらの人工光は、通常は可視光を含むが赤外光を含まない)を感知して電気機器に電力を供給するが、光が照射されていなかったり太陽光(太陽光は赤外光を含む)を照射されたりしても電気機器に電力を供給しないようにできる。
さらに、コンセント300にスイッチ20を設けるようにしたため、電気機器それぞれに特許文献1記載のスイッチ装置を設ける必要がなく、コスト及び取り扱い性などに優れる。
したがって、本実施形態のコンセント300は、第一実施形態のコンセント100と同様、電化製品を利用したいときに自動的に電力を供給し、使用しないときは停止するような電力供給の制御を行うことができる。
さらに、本実施形態のコンセント300によれば、電化製品への電力供給を、受ける光の波長(具体的には、可視領域と赤外領域の光の組み合わせ)に応じて制御できるため、不要な電力消費を抑制できる。例えば、特許文献1記載の従来技術では、昼間に使用者が不在であっても太陽光を受けたスイッチ装置が導通して不要な電力を消費することになっていたが、本実施形態のコンセント300は太陽光を受けても導通しないため、使用者不在時に太陽光によって意図せず不要な電力を消費することを防止できる。
本実施形態のコンセント300は上記のような利点を有するため、例えば、第一実施形態のコンセント100と同様の用途に用いることができる。
ところで、可視光吸収太陽電池18及び赤外吸収太陽電池19が受ける光の強さにより、それらの発電量は変動するものと考えられる。したがって、駆動コイル23B,24Bの動作電力量である電力量Pv及びPiは、スイッチ20に要求される光の感度に応じて設定しておくことが好ましい。例えば室内で照明の明かりを感知するのであれば、通常は照明が発する人工光の強度はある程度の範囲に収まるため、人工光の強度の範囲に合わせて電力量Pv及びPiを設定しておけばよい。例えば前記の電化製品の待機電力を抑制する用途にコンセント300を用いるのであれば、待機電力を確実になくす観点からは電力量Pvは高く設定することが好ましく、電力量Piは低く設定することが好ましい。また、導通を確実に行う観点からは電力量Pvは低く設定することが好ましく、電力量Piは高く設定することが好ましい。
なお、本実施形態のコンセント300は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
例えば、本実施形態では人工の可視光と太陽光とを区別して導通及び不導通を切り替えるスイッチの例を示して説明したが、区別する光はこれ以外の組合せでもよく、例えば、赤外光、可視光、紫外光、太陽光、人工光など、波長や光源の種類などにより様々な光を区別したスイッチングが可能である。この場合、太陽電池の種類、数、並びにスイッチの構成をその光に応じて変更すればよい。
また、例えば、一つの通電ラインに2以上のスイッチ20を設けることも可能である。
さらに、例えば第一実施形態と同様に変更して実施することもできる。
[第四実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第四実施形態としての電源供給切替装置について説明する。図7は本実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図であり、図8は本実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、本実施形態の電源供給切替装置400は、コンセントに接続される電源プラグ部25と、電源プラグ部25に供給される電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子26と、第一太陽電池としての可視光吸収太陽電池27と、第二太陽電池としての赤外吸収太陽電池28と、電源プラグ部25と出力端子26との導通/不導通を切り替えるスイッチ29とを備えている。
電源プラグ部25は商用電源等の外部電源に接続されたコンセント(図示せず)に接続され、コンセントから電力を供給されるものであり、例えば図8に示すようにハウジング30から引き出された電源コード31の先端に設けられたものなど、第二実施形態と同様のものが挙げられる。
出力端子26は電気機器に電力を供給するための端子であり、図7に示すように、通電ラインLにより電源プラグ25に接続されている。
出力端子26は、第二実施形態と同様に、通常は、図8に示すようにハウジング30に設けられた差込口32の奥に設けられている。そして、差込口32に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子26に接触することにより、出力端子26から電気機器に電力が供給されるようになっている。
可視光吸収太陽電池27は、第三実施形態の可視光吸収太陽電池18と同様に、可視光を受けて所定の電力量Pv以上で発電する太陽電池であり、通常は図8に示すように、ハウジング30の表面に露出して設けられる。
赤外光吸収太陽電池28は、第三実施形態の赤外吸収太陽電池19と同様に、赤外光を受けて所定の電力量Pi以上で発電し、可視光を受けても所定の電力量Pi以上の電力を発電しない太陽電池であり、通常は図8に示すように、ハウジング30の表面に露出して設けられる。
スイッチ29は、可視光吸収太陽電池27から電力量Pv以上の電力を供給され、且つ、赤外吸収太陽電池28から電力量Pi以上の電力を供給されていないときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図7に示すように、スイッチ29は可視光吸収太陽電池27に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー33と赤外吸収太陽電池28に対応したスイッチ手段としての常時ONリレー34とを備えている。
常時OFFリレー33は、第三実施形態の常時OFF接点23A及び駆動コイル23Bと同様の常時OFF接点33A及び駆動コイル33Bを備えていて、第三実施形態の常時OFFリレー23と同様に動作するようになっている。
また、常時ONリレー34は、第三実施形態の常時ON接点24A及び駆動コイル24Bと同様の常時ON接点34A及び駆動コイル34Bを備えていて、第三実施形態の常時ONリレー24と同様に動作するようになっている。
本実施形態の電源供給切替装置400は上記のように構成されているため、第三実施形態のコンセント300と同様の要領で、電気機器への電力の供給と停止を切り替えることができる。
即ち、電源プラグ部25をコンセント(図示せず)に接続した場合であっても、例えば電源供給切替装置400に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー33が不導通となっているため、出力端子26から電気機器に電力を供給しない。
これに対し、電源供給切替装置400に光が照射されると、第三実施形態と同様にして、照射された光が有する波長成分に応じてスイッチ29の導通と不導通が切り替わる。
例えば、電源供給切替装置400に可視光のみが照射されると、スイッチ29は導通し、通電ラインLに通電でき、出力端子26から電気機器に電力を供給できる。
また、例えば電源供給切替装置400に可視光及び赤外光の両方の成分を含む太陽光が照射されると、スイッチ29は不導通のままとなり、通電ラインLには通電できず、出力端子26から電気機器へ電力を供給しない。
また、例えば電源供給切替装置400に赤外光のみが照射されると、スイッチ29は不導通のままとなり、通電ラインLは通電せず、出力端子26から電気機器へ電力を供給しない。
このように、本実施形態の電源供給切替装置400によれば、第三実施形態のコンセント300と同様の利点を得ることができる。
これに加え、電源供給切替装置400はコンセントに対して着脱可能であるため、取り扱い性に優れ、また、既存の電源設備に適用できるため、好ましい。
さらに、本実施形態の電源供給切替装置400は、第三実施形態のコンセント300と同様の用途に用いることができる。
また、本実施形態の電源供給切替装置400は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
さらに、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態と同様に変更して実施することも可能である。
[第五実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第五実施形態としてのコンセントについて説明する。図9は本実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図であり、図10は本実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。
図9に示すように、本実施形態のコンセント500は、電気配線35から供給された電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子36と、光を受けて発電する太陽電池37と、電気配線35と出力端子36との導通/不導通を切り替えるスイッチ38とを備えている。
出力端子36は第一実施形態の出力端子2と同様であり、本実施形態でも図10に示すようにコンセントボックス39に設けられた差込口40の奥に設けられ、差込口40に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子36に接触することにより、出力端子36から電気機器に電力が供給されるようになっている。
太陽電池37は、可視光を受けて第一発電量Pvの電力を発電し、赤外光を受けて第二発電量Piの電力を発電する太陽電池である。この太陽電池37の例を挙げると、アモルファスシリコン系太陽電池とガリウム−砒素系太陽電池とを直列に接続して構成したタンデム型太陽電池が挙げられる。
太陽電池37は、通常は図10に示すように、第一実施形態と同様にコンセントボックス39の表面に露出して設けられる。
スイッチ38は、太陽電池37で発電された電力を供給され、供給される電力量がゼロより大きく第一電力量Pv及び第二電力量Piの合計(即ち、Pv+Pi)よりも小さいときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図9に示すように、スイッチ38は可視光による発電に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー41と、赤外光による発電に対応したスイッチ手段としての常時ONリレー42とを備えている。
常時OFFリレー41は、通電ラインLを導通する常時OFF接点41Aと、常時OFF接点41Aを動作させる駆動コイル41Bとを備えていて、駆動コイル41Bには太陽電池37から電力を供給されるようになっている。また、常時OFF接点41Aは基本的には不導通となっているが、太陽電池37が発電すると、その電力により駆動コイル41Bが動作し、常時OFF接点41Aが導通してスイッチの役割を果たすようになっている。
また、常時ONリレー42は通電ラインLを導通する常時ON接点42Aと、常時ON接点42Aを動作させる駆動コイル42Bとを備えていて、駆動コイル42Bには太陽電池37から電力を供給されるようになっている。また、常時ON接点42Aは基本的には導通しているが、太陽電池37が発電すると、その電力により駆動コイル42Bが動作し、常時ON接点42Aが不導通となってスイッチの役割を果たすようになっている。
ただし、本実施形態の駆動コイル41B,42Bは第三実施形態の駆動コイル23B,24Bとは異なり、常時OFFリレー41の駆動コイル41Bと常時ONリレー42の駆動コイル42Bとは直列に接続されている。ここで、駆動コイル42Bを動作させるために要求される電流量(動作電流量)I42Bは駆動コイル41Bを動作させるために要求される電流量(動作電流量)I41Bよりも高く設定される。具体的には、太陽電池37で電力量Pv及び電力量Piの合計量Pv+Piの発電があり、この合計量Pv+Piの電力が供給された場合に初めて動作電流量I42Bの電流が流れるようになっている。即ち、駆動コイル41Bの動作電流量I41Bの電流を流れさせる電力量の大きさに応じて可視光に対するスイッチ38の感度が決定されるようになっており、また、駆動コイル42Bの動作電流量I42Bの電流を流れさせる電力量の大きさに応じて赤外光に対するスイッチ38の感度が決定されるようになっている。この際、駆動コイル41Bの動作電流量I41Bの電流を発生させる電力量の大きさは小さいほど高感度となるので好ましいが、通常は可視光を受けて太陽電池37が発電する発電量Pvである。一方、駆動コイル42Bの動作電流量I42Bの電流を発生させる電力量の大きさは、電力量Pv及び電力量Piの合計量Pv+Pi以下とするが、通常は電力量Pv及び電力量Piの合計量Pv+Piである。したがって、電力量Pv,Piの大きさは、スイッチ38に要求される可視光及び赤外光への感度に応じて設定すればよく、例えば、コンセント500の使用環境、使用する太陽電池37の種類などに応じて適切に設定すればよい。
本実施形態のコンセント500は上記のように構成されているため、このコンセント500に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー41が不導通となっているため、スイッチ38は不導通となっており、通電ラインLには通電できず、出力端子36から電気機器へ電力を供給しない。
これに対し、コンセント500に光が照射されると、照射された光が有する波長成分に応じて導通と不導通が切り替わる。
例えば、コンセント500に蛍光灯やLED等から可視光のみが照射されると、太陽電池37が可視光を受けて電力量Pv以上で発電し、この電力が駆動コイル41B及び駆動コイル42Bに供給されて、駆動コイル41B及び駆動コイル42Bには電流が流れる。この電流は駆動コイル41Bの動作電流量I41B以上であるため常時OFF接点41Aは導通する。一方で、電力量Pv程度では駆動コイル42Bに流れる電流量は、その動作電流量I42Bに満たないため、常時ON接点42Aは導通したままとなる。これによりスイッチ38は導通し、通電ラインLに通電でき、出力端子36から電気機器に電力を供給できる。
また、例えばコンセント500に可視光及び赤外光の両方の成分を含む太陽光が照射されると、太陽電池37が太陽光に含まれる可視光成分及び赤外光成分を受けて電力量Pv+Pi以上で発電し、この電力が駆動コイル41B及び駆動コイル42Bに供給されて、駆動コイル41B及び駆動コイル42Bには電流が流れる。この電流は駆動コイル41Bの動作電流量I41B以上であり、且つ、駆動コイル42の動作電流量I42B以上である。このため、常時OFF接点41Aは導通し、一方で、常時ON接点42Aは不導通となる。これによりスイッチ38は不導通のままとなり、通電ラインLは通電できず、出力端子36から電気機器へ電力を供給しない。
また、例えばコンセント500に赤外光のみが照射されると、太陽電池37が赤外光を受けて電力量Pi以上で発電し、この電力が駆動コイル41B及び駆動コイル42Bに供給されて、駆動コイル41B及び駆動コイル42Bには電流が流れる。この際、駆動コイル41B及び駆動コイル42Bに流れる電流が動作電流量I41B以上であり且つ動作電流量I42B以下であればスイッチ38は導通するが、その他の場合は不導通となる。したがって、コンセント500に赤外光のみが照射された場合については、駆動コイル41B,42Bの駆動電流I41B,I42Bをどのように設定するかにより異なる。
このように、本実施形態のコンセント500によれば、商用電源等の外部電源からの電力供給を必要とせず、自らの発電電力で動作する発電スイッチ装置を実現できる。さらにスイッチ38は、可視光成分と赤外光成分とを含む太陽光を照射しても導通せず、可視光成分を有するが赤外光成分を有しない光を照射すると、その光を感知して導通するようになっている。また、駆動電流量I41B,I42Bの設定によっては可視光成分を有さない赤外光を照射した場合に導通させるようにしたり不導通とさせたりすることができる。したがって、コンセント500は、例えば蛍光灯やLEDなどの照明装置から発せされる人工光(これらの人工光は、通常は可視光を含むが赤外光を含まない)を感知して電気機器に電力を供給するが、光が照射されていなかったり太陽光(太陽光は赤外光を含む)を照射されたりしても電気機器に電力を供給しないようにできる。
さらに、コンセント500にスイッチ38を設けるようにしたため、電気機器それぞれに特許文献1記載のスイッチ装置を設ける必要がなく、コスト及び取り扱い性などに優れる。
したがって、本実施形態のコンセント500は、第一実施形態のコンセント100と同様、電化製品を利用したいときに自動的に電力を供給し、使用しないときは停止するような電力供給の制御を行うことができる。
さらに、本実施形態のコンセント500によれば、第三実施形態のコンセント300と同様、電化製品への電力供給を、受ける光の波長(具体的には、可視領域と赤外領域の光の組み合わせ)に応じて制御できるため、不要な電力消費を抑制できる。
本実施形態のコンセント500は上記のような利点を有するため、例えば、第一実施形態及び第三実施形態のコンセント100と同様の用途に用いることができる。
ところで、太陽電池37が受ける光の強さにより、発電量は変動するものと考えられる。したがって、前記の動作電流量I41B,I42Bは、スイッチ38に要求される光の感度に応じて設定しておくことが好ましい。例えば室内で照明の明かりを感知するのであれば、通常は照明が発する人工光の強度はある程度の範囲に収まるため、人工光の強度の範囲に合わせて動作電流量I41B,I42Bを設定しておけばよい。例えば前記の電化製品の待機電力を抑制する用途にコンセント500を用いるのであれば、待機電力を確実になくす観点からは動作電流量I41Bは高く設定することが好ましく、動作電流量I42Bは低く設定することが好ましい。また、導通を確実に行う観点からは電力量I41Bは低く設定することが好ましく、動作電流量I42Bは高く設定することが好ましい。
本実施形態のコンセント500は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
例えば第一実施形態及び第三実施形態と同様に変更して実施することもできる。
[第六実施形態]
以下、図面を用いて本発明の第六実施形態としての電源供給切替装置について説明する。図11は本実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図であり、図12は本実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。
図11に示すように、本実施形態の電源供給切替装置600は、コンセントに接続される電源プラグ部43と、電源プラグ部43に供給される電力を電気機器(図示せず)に供給するための出力端子44と、光を受けて発電する太陽電池45と、電源プラグ部43と出力端子44との導通/不導通を切り替えるスイッチ46とを備えている。
電源プラグ部43は商用電源等の外部電源に接続されたコンセント(図示せず)に接続され、コンセントから電力を供給されるものであり、例えば図12に示すようにハウジング47から引き出された電源コード48の先端に設けられたものなど、第二実施形態と同様のものが挙げられる。
出力端子44は電気機器に電力を供給するための端子であり、図11に示すように、通電ラインLにより電源プラグ43に接続されている。
出力端子44は、第二実施形態と同様に、通常は、図12に示すようにハウジング47に設けられた差込口49の奥に設けられている。そして、差込口49に差し込まれる電気機器のプラグ(図示せず)が出力端子44に接触することにより、出力端子44から電気機器に電力が供給されるようになっている。
太陽電池45は、第五実施形態の太陽電池37と同様に、可視光を受けて第一発電量Pvの電力を発電し、赤外光を受けて第二発電量Piの電力を発電する太陽電池であり、通常は図12に示すように、ハウジング47の表面に露出して設けられる。
スイッチ46は、太陽電池45で発電された電力を供給され、供給される電力量がゼロより大きく第一電力量Pv及び第二電力量Piの合計(即ち、Pv+Pi)よりも小さいときに、前記の供給された電力により導通するものである。本実施形態では、図11に示すように、スイッチ46は可視光による発電に対応したスイッチ手段としての常時OFFリレー50と、赤外光による発電に対応したスイッチ手段としての常時ONリレー51とを備えている。
常時OFFリレー50は、第五実施形態の常時OFF接点41A及び駆動コイル41Bと同様の常時OFF接点50A及び駆動コイル50Bを備えていて、第五実施形態の常時OFFリレー41と同様に動作するようになっている。
また、常時ONリレー51は、第五実施形態の常時ON接点42A及び駆動コイル42Bと同様の常時ON接点51A及び駆動コイル51Bを備えていて、第五実施形態の常時ONリレー42と同様に動作するようになっている。
本実施形態の電源供給切替装置600は上記のように構成されているため、第五実施形態のコンセント500と同様の要領で、電気機器への電力の供給と停止を切り替えることができる。
即ち、電源プラグ部43をコンセント(図示せず)に接続した場合であっても、例えば電源供給切替装置600に光が照射されていない状態では、常時OFFリレー50が不導通となっているため、出力端子44から電気機器に電力を供給しない。
これに対し、電源供給切替装置600に光が照射されると、第五実施形態と同様にして、照射された光が有する波長成分に応じてスイッチ46の導通と不導通が切り替わる。
例えば、電源供給切替装置600に可視光のみが照射されると、スイッチ46は導通し、通電ラインLに通電でき、出力端子44から電気機器に電力を供給できる。
また、例えば電源供給切替装置600に可視光及び赤外光の両方の成分を含む太陽光が照射されると、スイッチ46は不導通のままとなり、通電ラインLには通電できず、出力端子44から電気機器へ電力を供給しない。
また、例えば電源供給切替装置600に赤外光のみが照射されると、駆動コイル50B,51Bの駆動電流I50B,I51Bの設定により、スイッチ46が導通となったり不導通となったりする。
このように、本実施形態の電源供給切替装置600によれば、第五実施形態のコンセント500と同様の利点を得ることができる。
これに加え、電源供給切替装置600はコンセントに対して着脱可能であるため、取り扱い性に優れ、また、既存の電源設備に適用できるため、好ましい。
さらに、本実施形態の電源供給切替装置600は、第五実施形態のコンセント500と同様の用途に用いることができる。
また、本実施形態の電源供給切替装置600は、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施してもよい。
さらに、第一実施形態、第二実施形態、第五実施形態と同様に変更して実施することも可能である。
[太陽電池]
本発明のスイッチ装置に備えさせる太陽電池は本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意であるが、通常は、太陽電池の耐久性、発電効率、コスト等に鑑み、以下に説明する薄膜太陽電池を用いることが好ましい。
図13は薄膜太陽電池の構成の一実施形態を模式的に示す断面図である。図13に示すように、薄膜太陽電池700は、耐候性保護フィルム701と、紫外線カットフィルム702と、ガスバリアフィルム703と、ゲッター材フィルム704と、封止材705と、太陽電池素子706と、封止材707と、ゲッター材フィルム708と、ガスバリアフィルム709と、バックシート710とをこの順に備え、更に、耐候性保護フィルム701とバックシート710の縁部をシールするシール材711を備えている。そして、耐候性保護フィルム701が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子706が発電するようになっている。なお、後述するバックシート710としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム708及び/又はガスバリアフィルム709を用いなくてもよい。
・耐候性保護フィルム701
耐候性保護フィルム701は天候変化から太陽電池素子706を保護するフィルムである。
太陽電池素子706の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光、風雨による侵食などにより劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム701で太陽電池素子706を覆うことにより、太陽電池素子706等を天候変化などから保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム701は、薄膜太陽電池700の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性、機械強度などの、薄膜太陽電池700の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム701は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%である。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム701も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム701の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池700の使用時に耐候性保護フィルム701が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム701を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子706を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム701は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、耐候性保護フィルム701は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム701の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また耐候性保護フィルム701には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム701は、薄膜太陽電池700においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池700の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
・紫外線カットフィルム702
紫外線カットフィルム702は紫外線の透過を防止するフィルムである。
薄膜太陽電池700の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム703,709などは種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム702を薄膜太陽電池700の受光部分に設け、紫外線カットフィルム702で太陽電池素子706の受光面706aを覆うことにより、太陽電池素子706及び必要に応じてガスバリアフィルム703,709等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム702に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。
また、紫外線カットフィルム702は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%以上である。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム702も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム702の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池700の使用時に紫外線カットフィルム702が融解する可能性がある。
また、紫外線カットフィルム702は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム702を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルムなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾル系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物などが挙げられる。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の例を挙げると、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾフェノン)メタンなどが挙げられる。
また、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の例を挙げると、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法などが挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系などの各種合成樹脂などが挙げられる。また、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体などの天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液なども溶剤として用いることができる。
さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解または分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類などが挙げられる。
なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物などの付着による凹み、乾燥工程でのハジキなどの発生が抑制される。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましい。その具体例を挙げると、シリコン系界面活性剤としては、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン等のシラン化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン等のシロキサン化合物;などが挙げられる。一方、フッ素系界面活性剤としては、例えば4フッ化エチレン;パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド等のパーフルオロアルキル化合物などが挙げられる。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥など、公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム702の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)などが挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム702は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、紫外線カットフィルム702は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム702の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
紫外線カットフィルム702は、太陽電池素子706の受光面706aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子706の受光面706aの全てを覆う位置に設ける。
ただし、太陽電池素子706の受光面706aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム702が設けられていてもよい。
・ガスバリアフィルム703
ガスバリアフィルム703は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
太陽電池素子706は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム703で太陽電池素子706を被覆することにより、太陽電池素子706を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム703に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子706の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子706が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。また、太陽電池素子706が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子706及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム703に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子706の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子706が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。また、例えば、太陽電池素子706が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子706及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の酸化による劣化が抑えられる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム703の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム703を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池700の実施が容易となる。
また、ガスバリアフィルム703は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム703も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム703の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池700の使用時にガスバリアフィルム703が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム703の具体的な構成は、太陽電池素子706を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム703を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム703の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム703の構成として好ましいものは2例が挙げられる。
一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成しても良いが、2単位以上形成しても良い。例えば2〜5単位、積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム703に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム703の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
これら樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)、同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。
なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂の1種類以上とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などが挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウムまたは酸化珪素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化珪素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合には前記xの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合には前記xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウムおよび酸化珪素を含むことが望ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウムおよび酸化珪素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは2/8以下である。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などで行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
前記ポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材への吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)、ポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能、多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るために、前記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。
また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー、カルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー、多官能性オリゴマーなどが挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
前記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布または蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱;赤外線、マイクロ波等の放射加熱;などにより重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプおよび日光による照射光などを用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。
塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下である。
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
中でも好適なガスバリアフィルム703としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルムなどが挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム703は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ガスバリアフィルム703は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム703の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム703は、太陽電池素子706を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子706の正面(受光面側の面。図13では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図13では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池700においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム703が太陽電池素子706の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム709が太陽電池素子706の背面を覆うようになっている。そして、ガスバリアフィルム703,709の縁部をシール材711でシールし、ガスバリアフィルム703,709及びシール材711で囲まれた空間内に太陽電池素子706を納めることにより、太陽電池素子706を湿気及び酸素から保護できるようになっている。なお、後述するバックシート710としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム708及び/又はガスバリアフィルム709を用いなくてもよい。
・ゲッター材フィルム704
ゲッター材フィルム704は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子706の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム704で太陽電池素子706を覆うことにより、太陽電池素子706等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム704は前記のようなガスバリアフィルム703とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム703等で太陽電池素子706を被覆した場合に、ガスバリアフィルム703,709及びシール材711で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム704が捕捉して水分による太陽電池素子706への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム704の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上、好ましくは0.5mg/cm以上、より好ましくは1mg/cm以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子706の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。
また、ゲッター材フィルム704が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム703,709等で太陽電池素子706を被覆した場合に、ガスバリアフィルム703,709及びシール材711で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム704が捕捉して酸素による太陽電池素子706への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム704は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム704も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム704の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池700の使用時にゲッター材フィルム704が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム704を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル等の硫酸塩、アルミニウム金属錯体、アルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物などが挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO、BaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOや、アルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム、酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム704は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ゲッター材フィルム704は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム704の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム704は、ガスバリアフィルム703,709及びシール材711で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子706の正面(受光面側の面。図13では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図13では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池700においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム704はガスバリアフィルム703と太陽電池素子706との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム704が太陽電池素子706の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム708が太陽電池素子706の背面を覆い、ゲッター材フィルム704,708がそれぞれ太陽電池素子706とガスバリアフィルム703,709との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート710としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム708及び/又はガスバリアフィルム709を用いなくてもよい。
ゲッター材フィルム704は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等で塗布する方法などを用いることができる。また真空蒸着法、スパッタリング法などの成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフイルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
・封止材705
封止材705は、太陽電池素子706を補強するフィルムである。太陽電池素子706は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材705により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材705は、薄膜太陽電池700の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。
具体的強度については、封止材705以外の耐候性保護フィルム701やバックシート710の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池700全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材705は、太陽電池素子706の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せられることが多いため、封止材705も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材705の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池700の使用時に封止材705が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材705の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池700全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材705を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)などを用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルパーオキサイド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノンなどを含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池700の生産速度および生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子706に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。そこで、封止材705としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下。
なお、成分1および成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材705のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材705の耐熱性、透明性および柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池700に好適である。
以下、成分1及び成分2について詳しく説明する。
〔成分1〕
成分1はプロピレン系重合体であり、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体;などが挙げられる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。中でも、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位の存在割合は、ポリプロピレン中に通常35モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
成分1は、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.05g/10分以上であり、通常1000g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
成分1の示差走査熱量計で観測される融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上であり、また、通常160℃以下、好ましくは150℃以下である。
成分1はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるが、アイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また、成分1としては必要に応じて複数のプロピレン系重合体を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
〔成分2〕
成分2は軟質プロピレン系共重合体であり、例えば、プロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
また、成分2は、ショアーA硬度が、通常30以上、好ましくは35以上であり、また、通常80以下、好ましくは70以下である。
さらに、成分2の示差走査熱量計DSCで観測される融点は、100℃未満か、または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。
成分2において、コモノマーとして用いられるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンが好ましい。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
成分2は、プロピレン由来の単位を通常45モル%以上、好ましくは56モル%以上、また、通常92モル%以下、好ましくは90モル%以下含み、コモノマーとして用いられるα−オレフィン由来の単位を通常8モル%以上、好ましくは10モル%以上、また、通常55モル%以下、好ましくは44モル%以下含む。
成分2は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.05g/10分以上であり、また、通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下である。
成分2は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで、23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が、通常4MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。軟質プロピレン系共重合体がこのような範囲にあると柔軟性、透明性、ゴム弾性に優れる。
成分2は、X線回折で測定した結晶化度が、通常20%以下、好ましくは15%以下であり、また、通常0%以上である。
また、成分2は単一のガラス転移温度Tgを有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−10℃以下、好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。成分2のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
成分2のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
また、成分2は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3(プロピレン)含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)の関係において以下の関係式が成り立つことが好ましい。
ΔH<345Ln(C3含量mol%)−1492、
(ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90)
成分2の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度、太陽電池封止性および透明性が良好な封止材705が得られる。ここで、太陽電池封止性とは、良好な柔軟性により、太陽電池素子706を充填する際の素子の割れ率を低減できることをいう。
プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレン由来の構成単位を通常45モル%以上、好ましくは56モル%以上、より好ましくは61モル%以上、また、通常92モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは86モル%以下含み、さらにエチレン由来の構成単位を通常5モル%以上、好ましくは8モル%以上、また、通常25モル%以下、好ましくは14モル%以下、より好ましくは14モル%以下含み、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を通常3モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは6モル%以上、また、通常30モル%以下、好ましくは25モル%以下含むものが好ましい。α−オレフィンに関しては、1−ブテンが特に好ましい。
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(成分2)は、プロピレン系重合体(成分1)との相溶性が良好となり、得られる封止材705は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮する。
上記の成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。
成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上である。また通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。
また成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。
この封止材705においては、上記成分1および成分2に、プラスチックなどに対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、当該熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラス、プラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
有機過酸化物としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、などが挙げられる。なお、有機過酸化物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、封止材705としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分Aおよび成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
(A)成分A(エチレン系樹脂)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂の例としては、いわゆるラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・フッ化ビニル共重合体などが挙げられる。また、イオン重合法で製造される、いわゆる線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどエチレンを主成分とする重合体または共重合体も挙げられる。中でも好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高圧法低密度ポリエチレンである。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体である場合、下記の性状を有するものが好適である。
(i)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン・酢酸ビニル共重合体のJIS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで、成分Bとブレンドした際の透明性が高まる傾向があり、MFRを低くする事で、成形が容易となる傾向がある。
(ii)酢酸ビニル含量
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、通常3重量%以上、好ましくは4重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、また、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。酢酸ビニル含量を多くすることでヒートシール性が高まる傾向にあり、酢酸ビニル含量を少なくすることで封止材705のべたつきを抑えることができる。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂が高圧法低密度ポリエチレンである場合は、下記の性状を有するものが好適である。
(i)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンのJIS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで押出が容易となる傾向にあり、MFRを低くすることで柔らかくなりすぎず垂れなどが起こりにくく成形性が高まる。
(ii)密度
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンのJIS K7112による密度は、通常0.915g/cm以上、好ましくは0.916g/cm以上、より好ましくは0.917g/cm以上であり、また、通常0.93g/cm以下、好ましくは0.925g/cm以下、より好ましくは0.923g/cm以下である。密度を高くすることで封止材705のべたつきが抑制される傾向にあり、密度を低くすることでヒートシール性が高まる傾向にある。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンは、市販品の中から上記物性を示すものを適宜選択して使用することが出来る。
(B)成分B(エチレン・α−オレフィン共重合体)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bは、上記成分A以外のエチレン・α−オレフィン共重合体である。成分Bは、下記の性状を有するものが好ましい。
(i)密度
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bとしてのエチレン・α−オレフィン共重合体のJlS K7112による密度は、通常0.86g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上、より好ましくは0.88g/cm以上であり、また、通常0.935g/cm以下、好ましくは0.915g/cm以下、より好ましくは0.91g/cm以下である。密度を高くすることでフィルムとしたときのべたつきが抑制される傾向にあり、密度を低くすることでヒートシール性が高まる傾向にある。
(ii)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bとしてのエチレン・α−オレフィン共重合体のJlS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで押出が容易となる傾向にあり、MFRを低くすることで柔らかくなりすぎず垂れなどが起こりにくく成形性が高まる。
ここでα−オレフィンとしては、炭素数4〜40のα−オレフィンが好ましい。中でも、α−オレフィンの中でも、炭素数が通常4以上、好ましくは6以上であり、通常12以下、好ましくは10以下のものが望ましい。その例を挙げると、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−へプテン、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等が挙げられる。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
α−オレフィンとエチレンとの比率は、α−オレフィンを通常2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、また、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下とし、エチレンを通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、また、通常98重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下とすることが望ましい。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池700の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材705において、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材705は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子706への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)および透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時および薄膜太陽電池700の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池700のリサイクルも容易となる。
なお、封止材705は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止材705は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
封止材705の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材705を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子706を挟み込むように設ける。太陽電池素子706を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子706の正面及び背面にそれぞれ封止材705及び封止材707を設けるようにしている。
・太陽電池素子706
太陽電池素子706は、光を受けて発電する素子である。太陽電池素子706の種類に制限はなく、吸収させようとする光の強度、波長成分などに応じて適切なものを選択して使用できる。例えば薄膜多結晶シリコン系太陽電池素子、アモルファスシリコン系太陽電池素子、化合物半導体系太陽電池素子、有機太陽電池素子などを用いることができる。
しかし、薄膜多結晶シリコン系太陽電池素子は間接光学遷移を利用したタイプの太陽電池素子である。このため、薄膜多結晶シリコン系太陽電池素子では基板又は表面に凸凹構造を形成する等、十分な光閉じ込め構造を設けて光吸収を増加させることが要求される。さらに、薄膜多結晶シリコン系太陽電池素子においては、例えば並板ガラス、高分子薄膜等の低コストの基板上への薄膜成長を可能とするためには、高品質薄膜作製プロセスを低温化させることも要求される。このため、薄膜多結晶シリコン系太陽電池素子はコスト面等において実用化に向けて改善の余地がある。
一方、アモルファスシリコン系太陽電池素子は、結晶シリコンにおける間接光学遷移が構造乱れのために直接遷移となったものであり、可視域での光学吸収係数が大きく、厚さ1μm程度の薄膜でも太陽光を十分に吸収できる長所を有する。このため、太陽電池素子706としてアモルファスシリコン系太陽電池素子を用いれば、軽量の太陽電池パネルを実現することができる。また、アモルファスシリコンは非結晶質の材料であるため、変形にも耐性を有する。
しかし、アモルファスシリコン系太陽電池素子は光吸収により発生した電子、正孔等のキャリアの移動度が構造乱れのために低い。また、シリコンの未結合手はキャリアの再結合中心となるが、アモルファスシリコン系太陽電池素子では未結合手欠陥の密度が高いため、キャリアの寿命が短い。さらに、アモルファスシリコン系太陽電池素子は長期間の光照射により劣化する可能性がある。具体的には、アモルファスシリコン系太陽電池素子は光照射により前記欠陥の密度がさらに増加する現象(即ち、光劣化現象)を示すため、初期光電変換効率が10%程度と単結晶シリコン太陽電池の効率を下回るとともに、光照射により(飽和はするものの)光電変換効率が8%程度まで低下する傾向がある。
そこで、本実施形態の薄膜太陽電池700においては、この太陽電池素子706として化合物半導体系太陽電池素子又は有機太陽電池素子を用いることが好ましい。さらに、化合物半導体系太陽電池素子のうちでも、例えばS、Se、Teなどカルコゲン元素を含むカルコゲナイド系太陽電池素子が好ましく、なかでもI−III−VI族半導体系(カルコパイライト系)太陽電池素子が好ましく、特にI族元素としてCuを用いたCu−III−VI族半導体系太陽電池素子が、Si結晶型太陽電池より理論的に高い光電変換効率を有し好ましい。
〔Cu−III−VI族半導体系太陽電池素子〕
Cu−III−VI族半導体系太陽電池素子は、構成材料としてCu−III−VI族半導体を有する太陽電池素子をいう。Cu−III−VI族半導体とは、CuとIII族元素とVI族元素が1:1:2の割合で含まれる化合物からなる半導体を言い、例えばCuInSe、CuGaSe、Cu(In1−xGa)Se、CuInS、CuGaS、Cu(In1−xGa)S、CuInTe、CuGaTe、Cu(In1−xGa)Teが挙げられる。これらの2種以上の混合物であってもよい。中でも特に、CIS系太陽電池素子及びCIGS系太陽電池素子が好ましい。
CIS系太陽電池素子とは、構成材料としてCIS系半導体を有する太陽電池をいい、CIS系半導体とは、CuIn(Se1−yのことをいう。なお、yは0以上1以下の数を表す。すなわち、CuInSe、CuInS、又はこれらが混合状態にあるもののことをいう。Seに代えてSを用いると安全性が高まり好ましい。
また、CIGS系太陽電池素子とは、構成材料としてCIGS系半導体を有する太陽電池をいう。ここでCIGS系半導体とは、Cu(In1−xGa)(Se1−yのことをいう。なお、xは0より大きく1未満の数を、yは0以上1以下の数をそれぞれ表す。またCu(In1−xGa)Seは、通常、CuInSeとCuGaSeとの混晶となっている。尚、xの範囲は、通常は0より大きく、好ましくは0.05より大きく、より好ましくは0.1より大きく、また、通常0.8未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満である。
前記のCu−III−VI族半導体は通常はp型半導体として機能する。ここでp型及びn型の半導体について説明する。半導体においては、電荷を輸送するキャリアは電子と正孔の2種類存在し、その密度の大きいほうが多数キャリアと呼ばれる。多数キャリアは、通常は半導体の種類やドーピング状態によって決定される。また、半導体のタイプとしては、多数キャリアが、電子であるものはn型、正孔であるものはp型、つり合っているものはi型と呼ばれる。
ただし、p型、n型は半導体の種類により絶対的に決まるものではない。例えば、同じ型の半導体を組み合わせても、そのエネルギー準位(HOMO準位、LUMO準位、フェルミ準位)やドーピング状態の関係で、一方がp型、もう一方がn型として動作することもある。
半導体が示す半導体特性の程度は、キャリア移動度の値では、通常10−7cm/Vs以上、好ましくは10−5cm/Vs以上である。電気伝導度はキャリア移動度×キャリア密度で定義されるため、ある程度の大きさのキャリア移動度を有する材料であれば、例えば熱、ドーピング、電極からの注入などによりキャリアが当該材料内に存在すれば、その材料は電荷を輸送することができるのである。なお、半導体のキャリア移動度は大きいほど望ましい。
前記のCu−III−VI族半導体は、通常、太陽電池素子706を構成する層のうちの少なくとも1つに含有され、太陽電池素子706は当該半導体を含有する層で光を吸収して電気が発生するようになっている。具体的な太陽電池素子706の構成を以下に例を挙げて説明する。ただし、太陽電池素子706は以下に説明する例に限定されるものではない。
例えば、Cu−III−VI族半導体系太陽電池素子は、少なくとも、一対の電極間に光吸収層とバッファ層とを備えて構成される。このような構成の太陽電池素子では、光吸収層において光が吸収されて電気が発生し、発生した電気が電極から取り出されるようになっている。
・・電極
電極は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、太陽電池素子706において、電極は少なくとも一対(2個)設けられる。この際、一対の電極のうち、少なくとも受光面側の電極は、発電のために光を透過させるため透明であるようにすることが好ましい。但し、発電層の面積に比べて電極の面積が小さいなど、電極が透明でなくても発電性能に著しく悪影響を与えない場合は必ずしも透明でなくてもよい。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、太陽電池素子706の発電効率を考慮すると、80%以上が好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、電極には、正孔及び電子を捕集するのに適した電極材料を用いることが好ましい。正孔の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Au、ITO等の高い仕事関数を有する材料が挙げられる。一方、電子の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Alのような低い仕事関数を有する材料が挙げられる。
なお、電極の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
・・光吸収層
光吸収層は、上述したCu−III−VI族半導体を含有する層である。通常、Cu−III−VI族半導体はp型半導体として機能するため、後述するバッファ層をn型半導体で形成することにより、光を吸収して電気を発生させることが可能となっている。なお、Cu−III−VI族半導体はそれぞれ1種で形成してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、CIS系半導体とCIGS系半導体とを組み合わせても良い。
通常は光吸収層はCu−III−VI族半導体のみにより形成するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含有していても良い。例えば、Ag等の添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は1種を含んでいてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含んでいても良い。
光吸収層の形成方法に制限は無い。例えば、真空蒸着、スパッタ等により形成することができる。
さらに、光吸収層は通常1層のみを形成するが、2層以上積層してもよい。
・・バッファ層
バッファ層は、光吸収層と接するように積層される層であり、光吸収層が有する半導体がp型であればn型半導体により形成され、光吸収層が有する半導体がn型であればp型半導体により形成される。通常、Cu−III−VI族半導体はp型半導体であるので、Cu−III−VI族半導体系太陽電池素子においてバッファ層はn型半導体により形成される。
バッファ層を形成する半導体の具体例を挙げると、CdS、Zn1−xMgO(0<x<0.8)、ZnS(O,OH)、InSなどが挙げられる。また、前述のCuInSは作製条件により化学量論比からずれた組成とすることでn型半導体層としても形成可能であるため、これをバッファ層としてもよい。なお、バッファ層を形成する半導体は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
バッファ層の形成方法に制限は無い。例えば、真空蒸着、スパッタ等により形成することができる。
さらに、バッファ層は通常1層のみを形成するが、2層以上積層してもよい。
〔有機太陽電池素子〕
有機太陽電池素子とは、構成材料として有機半導体を有する太陽電池素子をいう。ここで有機半導体とは、例えば、ナフタレン(或いはペリレン)テトラカルボン酸ジイミド、フラーレン(C60)およびその誘導体等が挙げられる。
また、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の共役高分子;アルキル置換されたオリゴチオフェン等の高分子半導体も挙げられる。これらは、有機溶媒に可溶な半導体であり、有機太陽電池素子の製造プロセスにおいて塗布法を使用できるため、好ましい。
さらに、例えば、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、テトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属塩等の大環状化合物なども挙げられる。
その他、国際公開第2007/126102号パンフレットに記載のものも使用できる。
有機半導体は種類や使用状態に応じてp型、n型、i型のいずれかとして機能する。
また、有機半導体が示す半導体特性の程度は、Cu−III−VI族半導体と同じ程度であることが好ましい。
前記の有機半導体は、通常、太陽電池素子706を構成する層のうちの少なくとも1つに含有され、太陽電池素子706は当該半導体を含有する層で光を吸収して電気が発生するようになっている。具体的な太陽電池素子706の構成を以下に例を挙げて説明する。ただし、太陽電池素子706は以下に説明する例に限定されるものではない。
例えば、有機太陽電池素子は、少なくとも、一対の電極間に活性層を備えて構成される。このような構成の太陽電池素子では、活性層において光が吸収されて電気が発生し、発生した電気が電極から取り出されるようになっている。
・・電極
有機太陽電池素子においても、電極はCu−III−VI族半導体系太陽電池素子と同様である。
・・活性層
活性層は、半導体を含有する層であり、光を吸収して電荷を分離する層である。この活性層は、単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていても良い。有機太陽電池素子においては、前記の半導体のうち少なくとも1種、好ましくは全てとして有機半導体を用いる。
少なくともp型の半導体及びn型の半導体が含有されていれば、活性層の具体的な構成は任意である。例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の膜に含有させるようにしても良く、n型の半導体とp型の半導体とを同じ膜に含有させても良い。また、n型の半導体及びp型の半導体は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、有機半導体は、通常、粒子状、ファイバー状等の凝集状態で存在する。この際、半導体の粒径は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。有機太陽電池素子においてはこのような小粒径の粒子を活性層内で良好に分散させることが可能であり、特に、国際公開第2007/126102号パンフレット等に記載されたように、潜在顔料を用いて製造した有機太陽電池素子においては特に良好に分散させることが可能である。
潜在顔料とは、顔料の化学構造の異なる前駆体のことをいう。潜在顔料に対して例えば加熱や光照射等の外的な刺激を与えることにより、潜在顔料の化学構造は変化し、顔料に変換されるものである。
また、潜在顔料は、成膜性に優れるものが好ましい。成膜性が良好でない顔料であっても、潜在顔料の状態で成膜してから顔料に変換することにより、成膜時のコストを抑制することができるからである。特に、塗布プロセスを適用できるようにするためには、当該潜在顔料自体が液状で塗布可能であるか、当該潜在顔料が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲を挙げると、潜在顔料の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
さらに、潜在顔料は、容易に顔料に変換できることが好ましい。潜在顔料から顔料への変換工程において、どのような外的な刺激を潜在顔料に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光照射などを行なう。
また、潜在顔料は、変換工程を経て、高い収率で顔料に変換されることが好ましい。この際、潜在顔料から変換して得られる顔料の収率は有機光電変換素子の性能を著しく損なわない限り任意である。収率の好適な範囲を挙げると、潜在顔料から得られる顔料の収率は高いほど好ましく、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
潜在顔料を変換して得られる有機半導体は、一般的な溶媒への溶解度は小さい化合物である。ここで、一般的な溶媒への溶解度が小さいとは、例えば、トルエンに対する溶解度が、通常1%以下、好ましくは0.1%以下であることをいう。
活性層においては、p型半導体とn型半導体とが相分離して、活性層が相分離構造を有していることが好ましい。活性層が相分離構造を有している場合には、光照射によりキャリア分離が起こり、正孔と電子とが生じた後で、それらが再結合することなく電極にたどりつく確率を高くすることが期待できるからである。このような相分離構造は、半導体として有機半導体と無機半導体とを組み合わせて用いた場合に好適に実現できる。
なお、相分離構造とは、相を構成する材料(例えば、半導体等)が分子レベルで均一に混合しておらず、それぞれの材料が凝集状態をとっている構造であり、その凝集状態の間に界面を有するものである。この相分離構造は、光学顕微鏡、あるいは電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等の局所的な構造を調べる手法で観察したり、X線回折で、凝集部分に由来する回折を観察したりして確認することができる。
活性層の具体的な構成は、その有機太陽電池素子のタイプにより様々である。活性層の構成の例を挙げると、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型などが挙げられる。
バルクヘテロ接合型は、単一の活性層内に、p型の半導体とn型の半導体とを含んで構成されている。そして、p型の半導体とn型の半導体とが相分離した相分離構造となっていて、当該相の界面でキャリア分離が起こり、各相において正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが分離、輸送されるものである。
バルクヘテロ接合型の活性層において、その相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の解離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程などに対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。
積層型(ヘテロpn接合型)は、活性層が2以上の膜から構成されていて、少なくとも一つの膜がp型の半導体を含有して形成され、他の膜がn型の半導体を含有して形成されているものである。そして、当該p型の半導体を含有する膜とn型の半導体を含有する膜との境界にはp型の半導体とn型の半導体との相界面が形成されて、当該相界面でキャリア分離が起こるようになっている。
また、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせることも可能である。例えば、活性層を2以上の膜から構成すると共に、それらの膜の少なくとも一つにp型及びn型の両方の半導体を含有させるとともに、p型の半導体とn型の半導体とが相分離するように構成するのである。この場合、積層した膜間に形成される相界面、及び、p型及びn型の両方の半導体を含有した膜内におけるp型の半導体とn型の半導体との相界面の両方でキャリア分離が生じるようになっている。或いは、この場合、例えば積層した膜間において一方のキャリアをブロックして、電気取り出し効率を向上させることも期待されている。
ショットキー型は、電極近傍にショットキー障壁が形成され、この部分の内部電場でキャリア分離を行なうものである。電極としてショットキー障壁を形成するものを用いればその活性層の構成に制限は無い。ショットキー型における活性層の具体的な構成は、前記のバルクヘテロ接合型、積層型及び両者を組み合わせた型のいずれを採用することも可能であり、特に高い特性(例えば、変換効率など)が期待できる。
なお有機太陽電池素子においては、活性層に少なくとも1種の有機半導体を用いるが、この他に無機物質を含んでいてもよい(以下、これをハイブリッド型と称する)。
ハイブリッド型は、活性層が無機物質及び有機物質を共に含有して形成されるものである。この際、少なくとも1種の有機半導体を含有する以外は、ハイブリッド型の活性層が含有する無機物質及び有機物質は半導体特性を有していないものでもよいが、半導体特性を有しているもの(即ち、無機半導体及び有機半導体)を使用することが好ましい。例えば、ハイブリッド型に用いる有機半導体としてはペリレン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、ポルフィリン顔料等が挙げられ、無機半導体としてはチタニア、酸化亜鉛等が挙げられる。
ハイブリッド型の活性層の層構成の具体例を挙げると、バルクヘテロ接合型の活性層において、p型及びn型の半導体の一方として無機物質を使用すると共に他方として有機物質を使用した場合、p型及びn型の半導体の一方又は両方として無機物質及び有機物質を使用した場合などが挙げられる。これにより、活性層は、無機半導体と有機半導体との混合膜として構成され、有機太陽電池素子の高効率化が期待できる。
〔その他の事項〕
・・その他の層
上記の例に示したCu−III−VI族半導体系太陽電池素子、並びに有機太陽電池素子は、上述した電極、光吸収層、バッファ層及び活性層以外にその他の層を備えていても良い。なお、その他の層を形成する位置は太陽電池素子706の発電を阻害しない限り任意である。そのような層の例を挙げると、電極界面層が挙げられる。
電極界面層は、光吸収層、バッファ層又は活性層と電極との間に、電気特性の改良のために設けられる層である。通常は、正孔を捕集する電極と光吸収層、バッファ層又は活性層との間には電子をブロックして正孔のみ伝導する層(p型半導体層)を形成し、電子を捕集する電極と光吸収層、バッファ層又は活性層との間には正孔をブロックして電子のみ伝導する層(n型半導体層)を形成する。
p型半導体層の材料(p型半導体)としては、生成した正孔を効率よく正極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、p型半導体は、正孔移動度が高いこと、導電率が高いこと、正極との間の正孔注入障壁が小さいこと、光吸収層、バッファ層又は活性層からp型半導体層への正孔注入障壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、p型半導体層を通して光吸収層又は活性層に光を取り込む場合には、p型半導体として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を光吸収層又は活性層に取り込むことになるため、透明なp型半導体としては、当該p型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてp型半導体層を形成すればよい。
さらに、太陽電池素子706の製造コストの抑制、大面積化などを実現するためには、p型半導体として有機半導体を用い、p型半導体層をp型有機半導体層として形成することが好ましい。
このような観点から、p型半導体の好適な例を挙げると、ポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は、中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。その具体例を挙げると、29H,31H−フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;などが挙げられる。
また、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン化合物以外の好ましいp型半導体の例としては、正孔輸送性高分子にドーパントを混合した系が挙げられる。この場合、正孔輸送性高分子の例としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。一方、ドーパントの例としては、ヨウ素;ポリ(スチレンスルホン酸)、カンファースルホン酸等の酸;PF、AsF、FeCl等のルイス酸;などが挙げられる。なお、p型半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ここで例示した半導体は、光吸収層、バッファ層又は活性層に含有させることも可能である。
p型半導体層の厚みに制限はないが、例えば有機太陽電池素子では、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。p型半導体層を厚くすることで膜の均一性が高まる傾向にあり、p型半導体層を薄くすることで透過率が向上しまた直列抵抗が低下する傾向にある。
また、例えばCu−III−VI族半導体系太陽電池素子では、通常0.5μm以上、中でも1μm以上、また、通常10μm以下、中でも5μm以下とすることが好ましい。p型半導体層を薄くすると発電効率が低下する傾向にあり、厚くすること曲げた時に亀裂が入りやすくなったり、Mo層と乖離が生じ易くなる。
一方、n型半導体層に求められる役割は、光吸収層又は活性層から分離された正孔をブロックし、電子のみを負極に輸送するものである。n型半導体層の材料(n型半導体)としては、生成した電子を効率よく負極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、n型半導体は、電子移動度が高いこと、導電率が高いこと、負極との間の電子注入障壁が小さいこと、光吸収層、バッファ層又は活性層からn型半導体への電子注入壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、n型半導体層を通して光吸収層又は活性層に光を取り込む場合には、n型半導体として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を光吸収層又は活性層に取り込むことになるため、透明なn型半導体としては、当該n型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてn型半導体層を形成すればよい。
また、n型半導体層に求められる役割は、光吸収層又は活性層で光を吸収して生成する励起子(エキシトン)が負極により消光されるのを防ぐことにもある。そのためには、電子供与体及び電子受容体が有する光学的ギャップより大きい光学的ギャップを、n型半導体が有することが好ましい。
このような観点から、n型半導体の好適な例を挙げると、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体等の電子輸送性を示す有機化合物;TiO等の無機半導体などが挙げられる。なお、n型半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ここで例示した半導体は、光吸収層、バッファ層又は活性層に含有させることも可能である。
n型半導体層の厚みに制限はないが、例えば有機太陽電池素子では、通常2nm以上、中でも5nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。n型半導体層をこのような範囲の厚みに形成することにより、正極より入射した光が光吸収層又は活性層で吸収されずに透過した場合、負極で反射されて再び光吸収層又は活性層に戻ることによる光干渉効果を活用することが可能である。
・・太陽電池素子同士の接続
太陽電池素子706は、薄膜太陽電池700の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子706を設ける。具体的な太陽電池素子706の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子706を複数設ける場合、太陽電池素子706はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子706を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子706同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子706から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように太陽電池素子706同士を接続する場合には、太陽電池素子706間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子706と太陽電池素子706との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子706の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池700の発電量を増加させるためである。
・封止材707
封止材707は、上述した封止材705と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材707と同様のものを同様に用いることができる。
また、太陽電池素子706よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
・ゲッター材フィルム708
ゲッター材フィルム708は、上述したゲッター材フィルム704と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム704と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子706よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。また使用する水分あるいは酸素吸収剤をゲッター材フィルム704よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO、Zr−Al−BaO、酸素の吸収剤として活性炭、モレキュラーシーブなどが挙げられる。
・ガスバリアフィルム709
ガスバリアフィルム709は、上述したガスバリアフィルム703と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム709と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子706よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
・バックシート710
バックシート710は、上述した耐候性保護フィルム701と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム701と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート710が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート710をガスバリア層として機能させることも可能である。
また、太陽電池素子706よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。このため、バックシート710としては、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート710としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。これらの樹脂のシートの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ii)バックシート710としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止したアルミニウム金属箔、ステンレス製薄膜などが挙げられる。なお、前記の金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iii)バックシート710としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フイルムを接着した防水性の高いシートを用いても良い。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー,デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iv)バックシート710としては、例えば、基材フィルムの片面あるは両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れたバックシート710として使用できる。
・・基材フィルム
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、または、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。更に、このフッ素系樹脂のフィルムの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF);テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体、シクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。
基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
・・無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiO(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlO(x=0.5〜1.5)を用いることができる。
なお、使用する金属及び無機酸化物の種類は1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上、好ましくは100Å以上であり、また、通常4000Å以下、好ましくは1000Å以下である。
蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体例を挙げると、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
・ポリプロピレン系樹脂フィルム
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体;プロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃〜170℃であり、比重は通常0.90〜0.91であり、分子量は通常10万〜20万である。
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
・・接着剤
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよい。また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができる。そのコーティング量としては、乾燥状態で0.1g/m〜10g/mが望ましい。
・シール材711
シール材711は、上述した耐候性保護フィルム701、紫外線カットフィルム702、ガスバリアフィルム703、ゲッター材フィルム704、封止材705、封止材707、ゲッター材フィルム708、ガスバリアフィルム709及びバックシート710の縁部をシールして、これらのフィルムで被覆された空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにシールする部材である。
シール材711に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましい。従来はこのように高い防湿能力を有するシール材711の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなシール材711を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした薄膜太陽電池700の実施が容易となる。
さらに、薄膜太陽電池700は光を受けて熱せされることが多いため、シール材711も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、シール材711の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池700の使用時にシール材711が融解する可能性がある。
シール材711を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂等のポリマーが挙げられる。
なお、シール材711は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。
シール材711は、少なくともガスバリアフィルム703,709の縁部をシールできる位置に設ける。これにより、少なくともガスバリアフィルム703,709及びシール材711で囲まれた空間を密閉し、この空間内に湿気及び酸素が侵入しないようにすることができる。
このシール材711を形成する方法に制限は無いが、例えば、材料を耐候性保護フィルム701とバックシート710との間に注入することにより形成できる。形成方法の具体例を挙げると、以下の方法が挙げられる。
即ち、例えば封止材705の硬化が進行する途中で、半硬化状態の薄膜太陽電池700を前記ラミネート装置から取り出し、太陽電池素子706の外周部であって耐候性保護シート1とバックシート710との間の部分に液状のポリマーを注入し、このポリマーを封止材705と共に硬化させればよい。また、封止材705の硬化が終了した後にラミネート装置から取り出して単独で硬化させてもよい。なお、前記のポリマーを架橋・硬化させるための温度範囲は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。
・寸法等
本実施形態の薄膜太陽電池700は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池700を形成することにより、薄膜太陽電池700を建材、自動車、インテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池700は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管など流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池700の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上であり、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
・製造方法
本実施形態の薄膜太陽電池700の製造方法に制限は無いが、例えば、耐候性保護フィルム701とバックシート710との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子706を直列または並列接続したものを、紫外線カットフィルム702、ガスバリアフィルム703,709、ゲッター材フィルム704,708及び封止材705,707と共に一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。この際、加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。また、加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材705,707がはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
・利点
本実施形態の薄膜太陽電池700は上述したように構成されているため、その受光面に光を照射されると、その光を吸収した太陽電池素子706が発電するようになっている。
この際、本実施形態の薄膜太陽電池700は、ガスバリアフィルム703,709及びシール材711により太陽電池素子706を湿気から保護できるため、湿度が高い環境においても使用できる。また、この太陽電池は、紫外線カットフィルム702を備えているため、紫外線によりガスバリアフィルム703,709及び太陽電池素子706等が劣化せず、長期間にわたって高い効率で発電が可能である。このように、本例によれば湿気及び紫外線に対して耐性のある実用的な太陽電池を実現することができる。
また、本実施形態の薄膜太陽電池700は、太陽電池素子706としてCu−III−VI族半導体などの化合物半導体形太陽電池素子、及び/又は、有機太陽電池素子を備えていれば、高い発電効率で発電ができる。
さらに、本実施形態の薄膜太陽電池700はゲッター材フィルム704,708を備えているため、太陽電池素子706を湿気及び酸素からより確実に保護できる。
また、本実施形態の薄膜太陽電池700は耐候性保護フィルム701及びバックシート710を備えているため、天候の変化に対しても耐性を有し、より長期間にわたって安定して発電できる。
さらに、本実施形態の薄膜太陽電池700は封止材705,707を備えているため、強度が高く取り扱い性が良好である。
さらに、本実施形態の薄膜太陽電池700は、長期間、外部に曝しても十分発電量の確保が可能になり、また十分な柔軟性や強度を有することで、設置できなかったような曲面への設置が可能である。
[その他]
以上、本発明のスイッチ装置及び電源供給切替装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更して実施できる。
例えば、上述した第一実施形態〜第六実施形態の各構成要素は、必要に応じて、任意に組み合わせて実施するようにしても良い。
また、例えば第三実施形態から第六実施形態において、第一実施形態で説明したように、各実施形態のスイッチ20,29,38,46を、太陽電池18,19,27,28,37,45が受ける光の強度に応じて導通/不導通を切り替えるスイッチとして構成することも可能である。
本発明は、電気機器への電力供給用のコンセントに用いて好適である。
本発明の第一実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第一実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。 本発明の第二実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第二実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。 本発明の第三実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第三実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。 本発明の第四実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第四実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。 本発明の第五実施形態のコンセントの機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第五実施形態のコンセントを模式的に示す平面図である。 本発明の第六実施形態の電源供給切替装置の機能構成を模式的に示す図である。 本発明の第六実施形態の電源供給切替装置を模式的に示す斜視図である。 薄膜太陽電池の構成の一実施形態を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1,16,35 電気配線
2,9,17,26,36,44 出力端子
3,10,37,45 太陽電池
4,11,20,29,38,46 スイッチ
5,21,39 コンセントボックス
6,14,22,32,40,49 差込口
7,15,23,33,41,50 常時OFFリレー
7A,15A,23A,33A,41A,50A 常時OFF接点
7B,15B,23B,33B,41B,50B 駆動コイル
8,25,43 電源プラグ部
12,30,47 ハウジング
13,31,48 電源コード
18,27 可視光吸収太陽電池
19,28 赤外吸収太陽電池
24,34,42,51 常時ONリレー
24A,34A,42A,51A 常時ON接点
24B,34B,42B,51B 駆動コイル
100,300,500 コンセント
200,400,600 電源供給切替装置

Claims (8)

  1. 電気配線から供給された電力を電気機器に供給するための出力端子と、
    光を受けて発電する太陽電池と、
    前記電気配線と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを備える
    ことを特徴とするコンセント。
  2. 該太陽電池として、可視領域の光を受けて発電する第一太陽電池と、可視領域外の光を受けて所定量以上の電力を発電し、可視領域の光を受けても前記所定量以上の電力を発電しない第二太陽電池とを備え
    該スイッチが、該第一太陽電池から電力を供給され、且つ、該第二太陽電池から前記所定量以上の電力を供給されていないときに、前記の供給された電力により導通するようになっている
    ことを特徴とする請求項1記載のコンセント。
  3. 該太陽電池が、可視領域の光を受けて第一発電量の電力を発電し、前記可視領域外の光を受けて第二発電量の電力を発電するようになっており、
    該スイッチが、供給される電力量がゼロより大きく第一電力量及び第二電力量の合計よりも小さいときに、前記の供給された電力により導通するようになっている
    ことを特徴とする請求項1記載のコンセント。
  4. 前記可視領域外の光が赤外光であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のコンセント。
  5. コンセントに接続されて前記コンセントから電力を供給される電源プラグ部と、
    該電源プラグ部に供給される電力を電気機器に供給するための出力端子と、
    光を受けて発電する太陽電池と、
    前記電源プラグ部と該出力端子との導通/不導通を切り替えるスイッチであって、該太陽電池で発電された電力により導通するスイッチとを備える
    ことを特徴とする電源供給切替装置。
  6. 該太陽電池として、可視領域の光を受けて発電する第一太陽電池と、可視領域外の光を受けて所定量以上の電力を発電し、可視領域の光を受けても前記所定量以上の電力を発電しない第二太陽電池とを備え
    該スイッチが、該第一太陽電池から電力を供給され、且つ、該第二太陽電池から前記所定量以上の電力を供給されていないときに、前記の供給された電力により導通するようになっている
    ことを特徴とする請求項5記載の電源供給切替装置。
  7. 該太陽電池が、可視領域の光を受けて第一発電量の電力を発電し、前記可視領域外の光を受けて第二発電量の電力を発電するようになっており、
    該スイッチが、供給される電力量がゼロより大きく第一電力量及び第二電力量の合計よりも小さいときに、前記の供給された電力により導通するようになっている
    ことを特徴とする請求項5記載の電源供給切替装置。
  8. 前記可視領域外の光が赤外光であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電源供給切替装置。
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WO2018192593A1 (es) * 2017-04-21 2018-10-25 Corporacion Universidad De La Costa Cuc Dispositivo eliminador de voltaje pasivo o standby

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