JP2009256185A - 建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法 - Google Patents

建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】建築物のあらゆる部位に使用しても熱割れの心配がなく、安全でかつ表裏の色調差による装飾性を具備する間仕切り材等に好適な建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】建築用結晶化ガラス物品10は、実質的に気泡を含まず、β−石英又はβ−スポジュメンの固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下の結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体11と、同様の物性を有する結晶化ガラスよりなり、第一板状体11とは色調が異なる第二板状体12とを樹脂層13を介して一体化されてなる。また、一方の板状体の全面に亘って樹脂を配置し、樹脂上に、他方の板状体を配置して積層体を形成し、加熱又は光照射により第一及び第二板状体を一体化することにより製造される。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築物の外装材や内装材及び装飾材に用いることができる建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法に関し、特に、耐火性、安全性を必要とする装飾用間仕切り材として好適な建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法に関するものである。
近年、建築物の形状や装飾の多様化に伴って、機能性やデザインの面から建築物に種々のガラス物品が使用されるようになっている。建築物に使用される物品の中には、有色不透明な板ガラスがある。この種の有色板ガラスには、結晶化ガラス、膜付ガラス、色ガラス等があり、建物の内外装に使用すると、ガラスのもつ質感と光沢で特有の外観を呈することになり、意匠性が要求される用途に好適となる。
例えば、特許文献1には、イオン交換処理により強化された主結晶としてフォルステライト又はガーナイトを析出する結晶化板ガラスを使用した建材用の外壁材物品が開示されている。
また、特許文献2、3には、低膨張係数の透明結晶化板ガラスを使用した透明耐火壁が開示されている。さらに特許文献4には、低膨張係数の透明結晶化板ガラスの間に樹脂フィルムを介して合わせガラスとした遮熱性の防火ガラス物品が開示されている。
特開2006−62929号公報 特開平3−286057号公報 特開平3−286058号公報 特開2001−97747号公報
従来、このような有色ガラス建材は、窓ガラス等の無色透明な板ガラスに比べて熱吸収率が高く、熱割れが発生する可能性のある建築物の部位には使用が制限されている。特許文献1に記載の外壁材は、主結晶としてフォルステライトやガーナイトを析出する結晶化板ガラスの線膨張係数が40〜80×10−7/Kであるので、直射日光や厨房などの熱線を吸収して温度が上昇する建築物の部位には使用することが困難である。
また、特許文献2〜4に記載の透明耐火壁は、線膨張係数が−3×10−7/Kであるが、透明であるので内部が透けて見え、プライバシー保護性に劣る点などで壁材には適さないという問題がある。
また、透明や半透明で単色の低膨張係数の結晶化板ガラスは、装飾性に欠けるため、装飾用間仕切り材等の用途には不向きである。
本発明は、建築物のあらゆる部位に使用しても熱割れの心配がなく、安全で且つ優れた装飾性を具備する有色の建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明に係る建築用結晶化ガラス物品は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体とが樹脂層を介して貼り合わされ一体化されてなることを特徴とする。
本発明において、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体としては、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体の結晶粒径が可視光波長に比べて同等以下で半透明なもの、結晶粒径が可視光波長に比べて大きく不透視のものであれば使用可能である。また、本発明において、実質的に気泡を含まないとは、結晶性ガラス小体を焼き固める集積法等の製造方法により作成されて気泡が内在するようなものではないことを意味している。
また、本発明において、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体としては、第一板状体に対して、コントラストが出るような色調を有するものであれば使用可能である。例えば、第一板状体が白であれば、第二板状体は黒、透明など色調が異なるものである。
さらに、本発明において、第一及び第二板状体を貼り合わせて一体化する樹脂層としては、熱可塑性樹脂、熱重合性樹脂、光重合性樹脂、熱可塑性樹脂フィルム等が使用可能である。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体が透明又は有色不透視であることを特徴とする。
本発明において、第二板状体が透明であるとは、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体の結晶粒径が可視光波長に比べて十分小さく、透明なものであることを意味している。また、第二板状体が有色不透視であるとは、結晶粒径が可視光波長に比べて大きく不透視のものであることを意味している。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%のガラス組成を有し、透明又は白色不透視であることを特徴とする。
本発明において、各成分の含有量を限定した理由を以下に述べる。
SiOはガラスのネットワークフォーマーであるとともに結晶を構成する成分である。SiOの含有量が60%より少ないと熱膨張係数が高くなるとともに機械的強度が低くなり、70%より多いとガラスの溶解が困難となって泡や失透物等の欠陥が発生する。本発明ではSiOの含有量は64〜66%が好適である。
Alは結晶を構成する成分である。Alの含有量が17%より少ないとガラスの失透性が強くなるとともに化学耐久性が低下し、27%より多いとガラスの粘性が高くなりすぎて均一なガラスが得られなくなる。本発明ではAlの含有量は21〜23%が好適である。
LiOは結晶を構成する成分である。LiOの含有量が3%より少ないと所望の結晶が析出し難くなるとともに溶解性が悪くなる。一方、5%より多いとガラスの失透性が強くなり、成型が困難になる。本発明ではLiOの含有量は3〜5%が好適である。
MgOは溶解性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する成分である。MgOの含有量が0.1%より少ないとその効果がなく、泡が発生し易くなる。一方、MgOが0.9%より多いと熱膨張係数が大きくなって熱的特性が低下する。また透明結晶化ガラスの場合、TiOの存在によってガラスが僅かに着色することがあるが、MgOの含有量が上記範囲を超えるとこの着色が濃くなって透明性が損なわれる。本発明ではMgOの含有量は0.4〜0.6%が好適である。
TiOは核形成剤として作用する成分である。TiOの含有量が1.3%より少ないと結晶化を促進する効果が得られず、所望の結晶が得られなくなる。一方、3%より多いと液相温度が高くなり、成型作業が困難になる。また透明結晶化ガラスの場合、ガラスが濃褐色に着色して透明性が損なわれる。本発明ではTiOの含有量は1.3〜3%が好適である。
ZrOは核形成剤として作用する成分である。ZrOの含有量が1%より少ないと結晶化が安定して起こらない。また結晶が粗大になる結果、透明な結晶化ガラスが得られなくなる。一方、3%より多いとジルコニアの未溶解物が生じ、ガラス中に失透物が発生する。
なおTiOとZrOの合量は、2.6〜5%の範囲にあることが望ましい。これらの合量が2.6%より少ないと十分な結晶化促進効果が得られず、結晶量が少なくなって機械的強度が低下し易くなる。一方、これら成分の合量が5%より多いと失透性が強まり、均一な結晶化ガラスが得難くなる。
は、核形成剤として含有されるZrOの難溶解性を改善する効果がある成分である。Pの含有量が0.05%より少ないとその効果がなく、2%より多いと分相し易くなって均一なガラスが得られない。また結晶量が多くなって透明な結晶化が得難くなる。本発明ではPの含有量は、1〜2%であることが好適である。
NaOはガラスの溶解性を向上させる効果がある成分である。NaOの含有量が0.05%より少ないとその効果がなく、1%より多いとガラスの熱膨張係数及び誘電損失が大きくなる。本発明ではNaOの含有量は、0.4〜0.6%であることが好適である。
Oはガラスの溶解性を向上させる効果がある成分である。KOの含有量が0.1%より少ないとその効果がなく、1%を超えると熱膨張係数及び誘電損失が大きくなる。本発明ではKOの含有量は、0.2〜0.4%であることが好適である。
なお、NaOとKOの合量は0.5〜2%であることが好ましい。これら成分の合量が0.5%未満の場合はガラスの溶解性が悪化し易くなり、2%を超えると結晶化ガラスの強度や耐熱性が低下し易くなる。
更に、本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、上記成分以外にもCaO、PbO、F、Cl又はCeO等の任意成分を各々3%以下含有させることが可能である。
また清澄剤としてAsやSbを合量で2%以下含有させることによってガラスの溶解性、作業性、均一性を向上させることができる。しかし、Asを使用する場合、0.1%未満では清澄効果が低下するので、0.2〜0.4%が適量ではあるが、1%を超える使用は環境上好ましくない。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が93.0以上の白色不透視であることを特徴とする。
本発明において、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が93.0以上の白色不透視である第二板状体としては、青味、黄色味等の白色以外の色味が殆ど感じ取れない白色度を有し、透明性のないものであることを意味している。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が1.0以下の黒色であることを特徴とする。
本発明において、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が1.0以下の黒色である第一板状体としては、一見して不透視で黒色度の高いものであることを意味しており、暗い赤色等の長波長の光を僅かに透過する半透明なものでもよい。
また、本発明において第一板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%、V 0.08〜1.2%のガラス組成を有し、黒色であることを特徴とする。
また、本発明において、先記で既に説明した成分以外のVは、着色剤として作用する成分であり、本発明ではVの含有量は、0.08〜1.2%であることが好適である。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体及び/又は第二板状体は、裏面が火造り面であることを特徴とする。
本発明において、裏面が火造り面である第一板状体及び/又は第二板状体としては、溶融ガラスからロールアウト成形、ダウンドロー成形等により板状体を得る方法、あるいは加工された板状体を加熱処理する方法等により得られるものがある。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体及び/又は第二板状体の意匠面に、高低差が0.05〜2mm、大きさが円径換算で0.5〜10mmΦの凹凸模様を有し、かつ該意匠面が火造り面であることを特徴とする。
本発明において、凹凸模様の高低差が0.05mm未満であると、模様として認識し辛く、一方、高低差が2mmを超えると破損が生じ易く、かつ汚れが付着し易くなる虞がある。また、凹凸模様の大きさが円径換算で0.5mmΦ未満であると、模様として認識し辛いものとなる。一方、凹凸模様の円径換算の大きさが10mmΦを超えると、成形時に裏面が平坦にならない虞がある。凹凸模様が形成されている意匠面が火造り面でないと、意匠面のうち、特に凹凸模様の部位にクラック等の多くの表面欠陥が内在することが多く、機械的強度が低下し、さらに粗面部位を有する場合には、汚れが付着し易くなる虞がある。そこで、意匠面を火造り面とすることで、表面欠陥を少なくして機械的強度を向上させ、かつ汚れが付着し難い建築用結晶化ガラス物品となる。凹凸模様が形成されている意匠面が火造り面である板状体は、ロールアウト成形法により製板する際に、一方のローラーの表面に、凹凸模様が形成されているものを使用し、凹凸模様を転写することにより、意匠面に高低差が0.05〜2mm、大きさが円径換算で0.5〜10mmΦの所望の形状をした凹凸模様を形成したものが使用可能である。また、裏面に高い平坦性が要求される場合には、凹凸模様の円径換算の大きさを5mmΦ以下とすることが好ましい。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、樹脂層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、光硬化性樹脂よりなるものであるか、又は鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂よりなるものであり、該樹脂層の厚みが0.2mm以上で2mm以下であることを特徴とする。
本発明の建築用結晶化ガラス物品において、樹脂層に使用する樹脂が、PVB、EVA、PET、PC、アクリル、可視光線や紫外線に感度を有する光硬化性樹脂等のフッ素樹脂に比べて燃焼しやすいものであっても、合わせガラスの少なくとも下方に配置される端面から、その両側のコーナー部を含む側面の下側部分に到る耐熱板ガラスの合わせ面開口部が耐熱性シール材で封止されていれば、非加熱側に火炎が貫通する可能性が小さくなる。
さらに、本発明の建築用結晶化ガラス物品において、樹脂層に使用する樹脂が、鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂からなるものであるとは、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびビニリデンフルオライドのモノマー等の共重合体から形成されてなるものであり、樹脂フィルムを構成するモノマーとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ビニリデンフルオライド(VDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)等が使用可能であるが、特にテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドのモノマーの共重合体からなるフッ素樹脂が、融点が低いため好適である。このような鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂は、炭素−フッ素間の強固な原子間結合と、フッ素原子が炭素骨格を取り囲むことによるバリアー効果によって難燃性であり、空気中では燃えないという特性を有している。またこのフッ素樹脂は、重合度が高く、他の分子構造のフッ素樹脂に比べて複雑に絡み合った構造を有するため、伸びと引っ張り強度が大きく、これをガラス板に接着すると、衝撃吸収性に富み、耐貫通性、飛散防止性に優れた材料が得られる。また、鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂が、鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂であることが、高い難燃性及び強度を発揮させる上で好ましい。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品において、樹脂層の厚みが0.2mm以上で2mm以下であるとは、樹脂層の厚みが0.2mm未満では所望の耐衝撃性を得ることが困難である。他方、樹脂層の厚みが2mmを超えると、建築用結晶化ガラス物品を製造する際の経済性及び組み立て時の作業性も共に損なわれる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、樹脂層が、樹脂フィルムであることを特徴とする。
本発明において、樹脂層が、樹脂フィルムであるとは、樹脂層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、光線硬化性樹脂よりなる厚みが0.2mm〜2mmの樹脂フィルムであるか、又は鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂よりなる樹脂フィルムであることを意味している。また、これらの樹脂の重合度や、添加剤等を調整することにより、フィルムにされたものである。また、樹脂フィルムの厚みが0.2〜2mmであると、平常時の破損に対してガラスの飛散防止や耐貫通性に効果的である。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体が有色半透明及び/又は第二板状体が透明であり、樹脂フィルムは、着色及び/又は模様を施されてなることを特徴とする。
本発明において、着色及び/又は模様を施されてなる樹脂フィルムとしては、ポリビニルブチラールからなる透明な通常中間膜、装飾用中間膜又は遮熱中間膜等、耐熱性樹脂フィルムとしては、THV(フッ素樹脂)フィルム等で、使用場所に応じた透光性の着色フィルムや、建物の使用目的に応じたデザインの模様付き樹脂フィルム、プライバシー保護性能を発揮するような着色や模様付きの樹脂フィルム等を用いることを意味している。例えば、着色フィルムとして紫外線の遮蔽性能に加えて中赤外線を大幅に遮蔽し、日射熱を低減する機能を持つ樹脂フィルムの使用や、模様付きの樹脂フィルムとして服飾関係ビル内等で求められる意匠性を高める装飾が施された樹脂フィルムを使用することも可能であり、商品のバリエーションを増やすことができる。
本発明に係る建築用結晶化ガラス物品の製造方法は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体と同様な寸法を有し第一板状体とは色調が異なる第二板状体のうち、一方の板状体の全面に亘って熱可塑性樹脂を配置し、該熱可塑性樹脂上に、外周を揃え他方の板状体を配置して積層体を形成し、該積層体の周囲に真空用パッキンを装着し、オートクレーブ装置を使用して積層体内を減圧に維持しつつ加熱・加圧することで、第一及び第二板状体同士を熱圧着することを特徴とする。
また、本発明の製造方法で積層体の周囲に装着する真空用パッキンとしては、材質がシリコーン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等であり、形状は板状、溝状等が使用可能である。この真空用パッキンには、積層体の内部を減圧するための排気用接続パイプが設けられており、オートクレーブ装置内に設けた排気口に接続して真空ポンプ等を用いた排気装置により減圧するようになっている。
また、本発明の製造方法で積層体を処理するオートクレーブ装置の加熱・加圧条件としては、180℃以下、15kgf/cm以下であればよい。
また、建築用結晶化ガラス物品の製造方法は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体と同様な寸法を有し第一板状体とは色調が異なる第二板状体が透明であり、一方の板状体の全面に亘って光硬化性樹脂を塗布し、該光硬化性樹脂上に、外周を揃えて他方の板状体を配置して積層体を形成し、次いで第二板状体側から光照射装置を使用して積層体内の光硬化性樹脂を光照射により硬化させて合わせガラスを形成することを特徴とする。
本発明の建築用結晶化ガラス物品の製造方法で、使用する光硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等があり、アクリレートを主成分とする可視光から紫外線まで感度を有する光硬化性樹脂が好ましい。また、第二板状体が350nmの紫外線に対して十分な透過率を有するものであれば、建材用として実績のあるエポキシアクリレートを主成分とする紫外線硬化性樹脂を使用してもよい。
上記本発明の建築用結晶化ガラス物品は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体とが樹脂層を介して貼り合わされて一体化されてなるので、建築物のあらゆる部位に使用しても熱割れの心配がなく、安全でかつ表裏の色調差による装飾性を具備する間仕切り材等に好適な建築用材料を提供することができる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体が、透明又は有色不透視であるので、透明板同士を合わせた場合と違い、装飾性や意匠性に優れる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%のガラス組成を有し、透明又は白色不透視であるので、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、透明又は白色不透視の第二板状体が得られ、所望の建築用結晶化ガラス物品となる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第二板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が93.0以上の白色不透視であるので、白色度が高い意匠面を有する所望の建築用結晶化ガラス物品となる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が1.0以下の黒色であるので、黒色度が高い意匠面を有する所望の建築用結晶化ガラス物品となる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%、V 0.08〜1.2%のガラス組成を有し、黒色であるので、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、黒色の第一板状体が得られ、所望の建築用結晶化ガラス物品となる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体及び/又は第二板状体は、裏面が火造り面であるので、高い機械的強度を容易に維持することができる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体及び/又は第二板状体の何れかの意匠面に、高低差が0.05〜2mm、大きさが円径換算で0.5〜10mmΦの凹凸模様を有し、かつ該意匠面が火造り面であるので、上記の機械的強度に加えて、意匠性に優れ、さらに汚れても簡単にふき取り等が可能な建築用結晶化ガラス物品を提供することができる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、樹脂層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、光硬化性樹脂よりなるものであるか、又は鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂よりなるものであると、特にフッ素樹脂層が高温時には難燃性で空気中では燃え難く、高い耐火性能を発揮することができる。また、使用する樹脂層の厚みが0.2mm〜2mmであると、十分な接着強度を確保した上で、ガラス物品を製造する際の経済性及び作業性を損うことがない。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、樹脂層が、樹脂フィルムであると、建築用結晶化ガラス物品を容易に製造することができ、平常時の破損に対してガラスの飛散防止や耐貫通性に効果を発揮する。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品は、第一板状体が有色半透明及び/又は第二板状体が透明であり、樹脂フィルムは、着色及び/又は模様を施されてなるので、奥行きのある多様な意匠表現が可能となり、意匠設計の自由度を大きく広げることができ、住宅用のみでなく商業施設等への施工にも好適なものとなる。
本発明の建築用結晶化ガラス物品の製造方法は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体のうち、一方の板状体の全面に亘って熱可塑性樹脂を配置し、該熱可塑性樹脂上に、外周や辺を揃えて他方の板状体を配置して積層体を形成し、該積層体の周囲に真空用パッキンを装着し、オートクレーブ装置を使用して積層体内を減圧に維持しつつ加熱・加圧することで、第一及び第二板状体同士を熱圧着するので、上記本発明の建築用結晶化ガラス物品を効率よく、かつ容易に製造することが可能となる。
また、本発明の建築用結晶化ガラス物品の製造方法は、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体が透明であり、一方の板状体の全面に亘って光硬化性樹脂を塗布し、該光硬化性樹脂上に、外周や辺を揃えて他方の板状体を配置して積層体を形成し、次いで第二板状体側から光照射して積層体内の光硬化性樹脂を硬化させて合わせガラスを形成するものであると、光硬化性樹脂を使用する場合には、室温条件で光線照射により硬化を行うことが可能であり、線膨張係数の異なる第一及び第二板状体を貼り合せても、反りや破損が生じないため、組み合わせのバリエーションが増え好ましい。また、温度が高くなり過ぎないので、合わせガラス形成工程の時間が短縮され、生産効率が向上する。
(A)は本発明の建築用結晶化ガラス物品の側面写真、(B)は一方の意匠面の写真、(C)は他方の意匠面の写真。 本発明の建築用結晶化ガラス物品を製造する工程の説明図であって、(A)は第一板状体の上に素樹脂フィルムを配置する説明図、(B)は樹脂フィルム付第一板状体上に、第二板状体を配置する説明図、(C)は第一及び第二板状体の積層体の周囲に真空用パッキンを装着し、オートクレーブ装置で熱圧着処理を行う説明図、(D)は完成した建築用結晶化ガラス物品の断面図。 (A)は本発明の他の建築用結晶化ガラス物品の側面写真、(B)は一方の意匠面の写真、(C)は他方の意匠面の写真。 (A)は本発明の他の建築用結晶化ガラス物品の側面写真、(B)は一方の意匠面の写真、(C)は他方の意匠面の写真。 (A)は本発明の他の建築用結晶化ガラス物品の意匠面の写真、(B)は(A)の断面図。
以下、本発明の建築用結晶化ガラス物品及びその製造方法の実施形態について、図を参照して説明する。
図1は本発明の実施例1の建築用結晶化ガラス物品の説明図、図2は実施例1の建築用結晶化ガラス物品の製造工程を示す説明図、図3は他の実施例の説明図である。図中、10、20、30は建築用結晶化ガラス物品、11、21、31は第一板状体、12、22、32は第二板状体、13、23、33は樹脂フィルムをそれぞれ示している。
実施例1の第一板状体11は、質量百分率表示でSiO 66%、Al 22%、MgO 0.5%、LiO 4%、NaO 0.5%、KO 0.3%、ZrO 2%、TiO 1.9%、As 1.3%、P 1.4%、V 0.1%のガラス組成を有している。この第一板状体11の製造は、溶融ガラスをロールアウト法により厚みが3〜8mmの例えば4mmの板ガラスに成形し、得られた板ガラスを600mm×900mmの寸法に切断して、900〜950℃で1時間保持する熱処理を施すことにより、主結晶としてβ−石英固溶体を析出させ、30〜380℃における平均線膨張係数が−1×10−7/Kであり、厚みが5mmにおける380〜780nmでの平均可視光透過率が0.01%の結晶化ガラスからなり、図1に示すような板状体としたものである。この板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面11aのL*a*b*表色系色度における明度L*値が0.8であり、高い黒色度を有するものである。平板の板状体の片面を研磨仕上げし、端面11cを面取り加工することで、表面粗さのRa値が160nmであり、表面うねりのWa値(カットオフ長8mm、80mm測定)が1.5μmである意匠面11aを有する板状体とし、ロールアウト成形による火造り面である裏面11bを有する第一板状体11を作製した。
また、第二板状体12は、質量百分率表示でSiO 66%、Al 22%、MgO 0.5%、LiO 4%、NaO 0.5%、KO 0.3%、ZrO 2%、TiO 2%、As 1.3%、P 1.4%のガラス組成を有している。この第二板状体12の製造は、溶融ガラスをロールアウト成形した厚みが3〜8mmの例えば4mmの板ガラスを600mm×900mmの寸法に切断し、1130〜1170℃で1時間保持する熱処理を施すことにより、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出させ、30〜380℃における平均線膨張係数が11×10−7/Kであり、厚みが5mmにおける380〜780nmでの平均可視光透過率が0.06%の結晶化ガラスからなる板状体としたものである。この板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が93.6であり、高い白色度を示すものである。板状体の表面粗さのRa値が160nmであり、表面うねりのWa値(カットオフ長8mm、80mm測定)が1.5μmである意匠面12aを有する板状体に仕上げ、ロールアウト成形及び熱処理により火造り面である裏面12bを有する第二板状体12を作製した。
図1に示す本実施例1の建築用結晶化ガラス物品10を作製するには、まず、テトラフルオロエチレン(TFE)40重量%、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)20重量%、ビニリデンフルオライド(VDF)40重量%の共重合体からなり、厚さ0.5mmの鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルム13と600mm×900mm×4mmと900mm×1800mm×4mmの寸法を有する第一板状体11、第二板状体12を準備した。
次に、図2(A)に示すように、600mm×900mm×4mmの第一板状体11の裏面11bの全面に亘ってフッ素樹脂フィルム13を配置した後に、図2(B)に示すように、第一板状体11のフッ素樹脂フィルム13上に、第二板状体12を、先の図1(A)に示したように、揃えて載置して覆うことで図2(C)に示すような積層体14とした。この積層体14の周囲に真空用パッキン15を装着して積層体14の端面を真空用パッキン15の溝部に嵌め込む。この真空用パッキン15付きの積層体14をオートクレーブ装置16に入れ、真空用パッキン15の図示しない接続パイプを減圧ポンプにつながれたオートクレーブ装置16内の図示しない接続部に接続し、減圧して第一板状体11、第二板状体12の端部に発生する気泡を取り除きつつ、140℃、12kgf/cmの環境下で15分保持して熱圧着処理を行った。その後、オートクレーブ装置16から積層体14を取り出して、図2(D)に示すような建築用結晶化ガラス物品10を得た。
このように作製した建築用結晶化ガラス物品10は、図1に示すように、第一板状体11の意匠面11aは平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、黒色度の高い不透明な黒色板であり、第二板状体12の意匠面12aは平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、白色度の高い不透視の板である合わせガラスからなる結晶化ガラス建材になった。
実施例2の第一板状体21は、先記の第一板状体11と同じものを使用した。また、第二板状体22は、質量百分率表示でSiO 66%、Al 22%、MgO 0.5%、LiO 4%、NaO 0.5%、KO 0.3%、ZrO 2%、TiO 2%、As 1.3%、P 1.4%のガラス組成を有している。この第二板状体22の製造は、溶融ガラスをロールアウト成形した厚みが3〜8mmの例えば4mmの板ガラスを600mm×900mmの寸法に切断し、900〜950℃で1時間保持する熱処理を施すことにより、主結晶としてβ−スポジュメン固溶体を析出させ、30〜380℃における平均線膨張係数が−5×10−7/Kであり、厚みが5mmにおける380〜780nmでの平均可視光透過率が87.8%の僅かに薄くベージュがかった結晶化ガラスからなる板状体としたものである。板状体の表面粗さのRa値が160nmであり、単純湾曲面の曲率中心線と平行な方向の表面うねりのWa値(カットオフ長8mm、80mm測定)が1.5μmである意匠面を有する板状体に仕上げ、ロールアウト成形及び熱処理により火造り面である裏面を有する第二板状体22を作製した。
上記の建築用結晶化ガラス物品10と同様にして作製した建築用結晶化ガラス物品20は、図3に示すように、第一板状体21の意匠面は平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、黒色度の高い不透明な黒色板であり、第二板状体22の意匠面は平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、薄くベージュがかった透明である合わせガラスからなる結晶化ガラス建材であった。
実施例3の第一板状体31には、先記の第二板状体22と同じものを使用した。また、第二板状体32には、先記の第二板状体12と同じものを使用した。
上記の建築用結晶化ガラス物品10と同様にして作製した建築用結晶化ガラス物品30は、図4に示すように、第一板状体31の意匠面は平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、薄くベージュがかった透明である板であり、第二板状体32の意匠面は平滑性が高く、ガラスに特有の質感と光沢をもち、白色度の高い不透視の板である合わせガラスからなる結晶化ガラス建材であった。
図5(A)、(B)に示すように、実施例4の建築用結晶化ガラス物品40は、その第一板状体41の意匠面41aが火造り面であり、大きさdが1.5mmΦ、高低差hが0.1mmの丸形状をした凹凸模様41bを有するものを使用した。また、第二板状体42には、先記の第二板状体12と同じものを使用した。
上記の建築用結晶化ガラス物品10と同様にして作製した建築用結晶化ガラス物品40は、第一板状体41の意匠面41aが凹凸模様41bを有し、高い耐熱性能、機械的強度に加えてデザイン性に優れた合わせガラスからなる結晶化ガラス建材であった。
第一板状体41は、板状体をロールアウト成形法により製板する際に、一方のローラーの表面に、凹凸模様41bに対応する凹凸模様が形成されているものを使用し、凹凸模様を転写し、その後、熱処理して結晶化することにより、意匠面41aに高低差が0.1mm、大きさが1.5mmΦの丸形状をした凹凸模様41bを形成した火造り面で表面欠陥が少ないものになる。
実施例5の建築用結晶化ガラス物品(図示省略)は、第一板状体として、実施例1の第一板状体11と同じものを使用し、また、第二板状体として、実施例2の第二板状体22と同じものを使用した。この建築用結晶化ガラス物品は、アクリレートを主成分とする可視光から紫外線まで感度を有する光硬化性樹脂からなる樹脂層を介して第一、第二板状体が互いに接着された合わせガラスからなるものである。
実施例5の建築用結晶化ガラス物品を製造する場合、まず、第一板状体表面の全面に亘ってアクリレートを主成分とする光硬化性樹脂を塗布し、この光硬化性樹脂上に第二板状体を配置して積層体を形成する。次いで、青色の可視光か、又は紫外線の照射装置を使用して常温下で光を照射することにより、積層体内の光硬化性樹脂を硬化させて合わせガラスを形成する。実施例5の建築用結晶化ガラス物品は、従来の製品に比べて線膨張係数の異なる第一及び第二板状体を貼り合せても、反りや破損が生じず、組み合わせのバリエーションが増え、また、合わせガラス作製工程の生産性を向上させることができるという特徴がある。
上記の平均線膨張係数はブルカー・エイエックスエス株式会社製 ディラトメータにて測定した。波長380〜780nmの範囲における平均透過率は、光学研磨された20×20×5mmの試料を作製し、株式会社島津製作所製 分光光度計 UV2500PCで測定した。析出結晶量は、株式会社リガク製 薄膜X線回折装置を用いて3回積算測定によるX線回折強度によって決定した。また、有色板ガラス建材の明度L*値、a*値及びb*値はJUKI株式会社製 測色計 JP7200Fにて求めた。
本発明によれば、従来よりも色彩のバリエーションに富み、かつ外観として高級感のある新規な建築用結晶化ガラス物品とその製造方法を提供することができる。
10、20、30、40 建築用結晶化ガラス物品
11、21、31、41 第一板状体
11a、12a、41a 意匠面
11b、12b 裏面
12、22、32 第二板状体
13、23、33 樹脂フィルム
14 積層体
15 真空用パッキン
16 オートクレーブ装置
41b 凹凸模様
d 直径
h 高低差

Claims (13)

  1. 実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体とは色調が異なる第二板状体とが樹脂層を介して貼り合わされ一体化されてなる建築用結晶化ガラス物品。
  2. 第二板状体が、透明又は有色不透視であることを特徴とする建築用結晶化ガラス物品。
  3. 第二板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%のガラス組成を有し、透明又は白色不透視であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築用結晶化ガラス物品。
  4. 第二板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が93.0以上の白色不透視であることを特徴とする請求項3に記載の建築用結晶化ガラス物品。
  5. 第一板状体は、標準光D65で10度視野の測定条件による意匠面のL*a*b*表色系色度における明度L*値が1.0以下の黒色であることを特徴とする請求項1に記載の建築用結晶化ガラス物品。
  6. 第一板状体は、質量%でSiO 64〜66%、Al 21〜23%、MgO 0.4〜0.6%、LiO 3〜5%、NaO 0.4〜0.6%、KO 0.2〜0.4%、ZrO 1〜3%、TiO 1〜3%、As 0〜2%、P 1〜2%、V 0.08〜1.2%のガラス組成を有し、黒色であることを特徴とする請求項に5記載の建築用結晶化ガラス物品。
  7. 第一板状体及び/又は第二板状体は、裏面が火造り面であることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の建築用結晶化ガラス物品。
  8. 第一板状体及び/又は第二板状体の意匠面に、高低差が0.05〜2mm、大きさが円径換算で0.5〜10mmΦの凹凸模様を有し、かつ該意匠面が火造り面であることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の建築用結晶化ガラス物品。
  9. 樹脂層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、光硬化性樹脂よりなるものであるか、又は鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂よりなるものであり、該樹脂層の厚みが0.2mm以上で2mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の建築用結晶化ガラス物品。
  10. 樹脂層が、樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の建築用結晶化ガラス物品。
  11. 第一板状体が有色半透明及び/又は第二板状体が透明であり、樹脂フィルムは、着色及び/又は模様を施されてなることを特徴とする請求項10に記載の建築用結晶化ガラス物品。
  12. 実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体と同様な寸法を有し第一板状体とは色調が異なる第二板状体のうち、一方の板状体の全面に亘って熱可塑性樹脂を配置し、該熱可塑性樹脂上に、他方の板状体を配置して積層体を形成し、該積層体の周囲に真空用パッキンを装着し、オートクレーブ装置を使用して積層体内を減圧に維持しつつ加熱・加圧することで、第一及び第二板状体同士を熱圧着することを特徴とする建築用結晶化ガラス物品の製造方法。
  13. 実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、有色半透明又は有色不透視の第一板状体と、実質的に気泡を含まず、β−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体を主結晶とし、30〜380℃における平均線膨張係数が20×10−7/K以下である結晶化ガラスよりなり、第一板状体と同様な寸法を有し第一板状体とは色調が異なる第二板状体が透明であり、一方の板状体の全面に亘って光硬化性樹脂を塗布し、該光硬化性樹脂上に、他方の板状体を配置して積層体を形成し、次いで第二板状体側から光照射して積層体内の光硬化性樹脂を硬化させて合わせガラスを形成することを特徴とする建築用結晶化ガラス物品の製造方法。
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