JP2009217218A - プロジェクタ - Google Patents
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Abstract
【課題】偏光状態の乱れの影響を低減することができ、投射画像のコントラストを向上させることができるプロジェクタを提供すること。
【解決手段】マイクロレンズアレイ72aと液晶層71との間に偏光層72bを設けることにより、照明光がマイクロレンズアレイ72aを通過することによる偏光状態の乱れの影響をなくすことができる。つまり、マイクロレンズアレイでの回折による照明光の偏光状態の乱れを低減することができる。これにより、液晶層71の視野角依存性を精度よく補償できるので、プロジェクタ10の投射画像の高コントラスト化を達成することができる。特に、視野角補償が略可能である垂直配向型(VA)液晶において効果が期待される。
【選択図】図2
【解決手段】マイクロレンズアレイ72aと液晶層71との間に偏光層72bを設けることにより、照明光がマイクロレンズアレイ72aを通過することによる偏光状態の乱れの影響をなくすことができる。つまり、マイクロレンズアレイでの回折による照明光の偏光状態の乱れを低減することができる。これにより、液晶層71の視野角依存性を精度よく補償できるので、プロジェクタ10の投射画像の高コントラスト化を達成することができる。特に、視野角補償が略可能である垂直配向型(VA)液晶において効果が期待される。
【選択図】図2
Description
本発明は、画像形成用の液晶表示装置を組み込んだプロジェクタに関し、特にマイクロレンズアレイを備えた液晶パネルを組み込んだプロジェクタに関する。
従来のプロジェクタとして、液晶表示装置にマイクロレンズアレイを備えたものが存在する(例えば、特許文献1参照)。
このようなプロジェクタにおいて、液晶表示装置に入射した光は、入射側から第1偏光板、マイクロレンズアレイ、液晶層、補償素子、第2偏光板の順で通過する。このうち補償素子において液晶層によって乱れた偏光状態を補償することによって液晶の視野角を補償している。
特開2000−75259号公報
しかしながら、上記のようなプロジェクタでは、視野角特性劣化の原因となる液晶中での偏光状態の乱れの他に、マイクロレンズアレイ、画素構造等による回折が原因と考えられる偏光状態の乱れも生じる。通常、この種の偏光状態の乱れは補償素子によって補償することができず、プロジェクタの投射画像のコントラスト低下の原因となっている。従来のツイストネマティック型(TN)液晶パネル等では視野角に関連する偏光状態の乱れによる影響の方がはるかに大きく、実際に問題となっていなかったが、原理的により完璧な視野角補償が可能である垂直配向型(VA)液晶パネルでは、上記回折による影響が無視できず問題となっている。
そこで、本発明は、偏光状態の乱れの影響を低減することができ、投射画像のコントラストを向上させることができるプロジェクタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクタは、光源光を均一化して照明光を形成する照明光学系と、照明光を変調する光変調装置と、光変調装置を経た像光を投射する投射光学系と、を備えるプロジェクタであって、光変調装置は、マイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイの後段に配置される液晶層と、マイクロレンズアレイ及び液晶層の間に設けられるとともに、偏光特性を有する偏光層とを有する液晶パネルを備える。
上記プロジェクタでは、液晶素子のマイクロレンズアレイと液晶層との間に偏光層を設けることにより、偏光層を経た照明光を液晶層に直接入射させることができ、照明光がマイクロレンズアレイを通過することによる偏光状態の乱れを回避することができる。つまり、マイクロレンズアレイでの回折による照明光の偏光状態の乱れの影響を排除することができ、光変調装置によって形成される画質を良好なものとできるので、プロジェクタによる投射画像を高品位とすることができる。
また、本発明の具体的な態様又は観点によれば、偏光層は、特定の偏光を反射する反射型の偏光素子である。この場合、熱の発生が少ない反射型の偏光層を用いるので、液晶パネルの加熱を抑えることができる。また、発熱が少ない分だけ偏光度(消光比)の高い偏光層を採用することができ、光変調装置の照明光入射側の偏光板を不要にすることができる。
また、本発明の別の態様によれば、偏光層は、ワイヤグリッドで構成される。この場合、耐久性を備え、適切な反射・透過特性を有する偏光層とすることがでる。
また、本発明のさらに別の態様によれば、偏光層は、多層膜で構成される。この場合、例えばフォトニック結晶等の多層膜により、所望の光学特性を実現でき、品質劣化の少ない反射・透過特性を有する偏光層とすることができる。
また、本発明のさらに別の態様によれば、偏光層は、特定の偏光を吸収する吸収型の偏光素子である。この場合、吸収型の偏光素子は、安価で使いやすく、また、偏光特性に優れ入射角依存性や波長依存性が比較的小さいため、偏光状態を効率よく調整することができる。なお、吸収型の偏光素子を用いる場合、発熱を低減するために、液晶パネルの照明光入射側に補助的な偏光フィルタを設けることが望ましい。
また、本発明のさらに別の態様によれば、偏光層は、ポリビニールアルコールで形成される薄膜である。
また、本発明のさらに別の態様によれば、マイクロレンズアレイと偏光層とは、隣接し接着剤で接合される。この場合、接着剤に例えば、高屈折率樹脂を用いることにより、マイクロレンズアレイによる集光を効率よく行うことができる。
また、本発明のさらに別の態様によれば、液晶層は、偏光層の基板上に形成される。この場合、偏光層を液晶層に近接して配置することができ、所望の偏光状態の光束を液晶層に入射させることができる。
また、本発明のさらに別の態様によれば、光学変調装置は、液晶パネルを光学的に補償するための光学補償板をさらに備える。この場合、液晶の視野角特性を光学補償板によって改善することができ、プロジェクタの投射画像の高コントラスト化を達成することができる。
また、本発明のさらに別の態様によれば、液晶パネルの後段に配置される射出側の偏光板をさらに備える。この場合、液晶パネルから射出される照明光の偏光方向を適切な方向に調整することができる。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの光学系の構成を説明する概念図である。
本プロジェクタ10は、光源光を射出する光源装置21と、光源装置21からの光源光を赤緑青の3色に分離する色分離光学系23と、色分離光学系23から射出された各色の照明光によって照明される光変調部25と、光変調部25からの各色の画像光を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27を経た画像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射レンズ29とを備える。
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの光学系の構成を説明する概念図である。
本プロジェクタ10は、光源光を射出する光源装置21と、光源装置21からの光源光を赤緑青の3色に分離する色分離光学系23と、色分離光学系23から射出された各色の照明光によって照明される光変調部25と、光変調部25からの各色の画像光を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27を経た画像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射レンズ29とを備える。
以上のプロジェクタ10において、光源装置21は、光源ランプユニット21aと、凹レンズ21bと、第1レンズアレイ21dと、第2レンズアレイ21eと、偏光変換部材21gと、重畳レンズ21iとを備える。このうち、第1及び第2レンズアレイ21d,21eと、重畳レンズ21iとは、後述する液晶ライトバルブの画像形成領域での面内照度が均一化された照明光を形成するための均一化光学系として機能する。光源装置21において、光源ランプユニット21aは、例えば高圧水銀ランプからなり、光源光を回収して前方に射出させる凹面鏡を備える。凹レンズ21bは、光源ランプユニット21aからの光源光を平行化する役割を有するが、省略することもできる。第1及び第2レンズアレイ21d,21eは、マトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって凹レンズ21bを経た光源ランプユニット21aからの光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材21gは、第2レンズアレイ21eから射出した光源光を例えば図1の紙面に垂直なS偏光成分のみに変換して次段光学系に供給する。重畳レンズ21iは、偏光変換部材21gを経た照明光を全体として適宜収束させることにより、光変調部25に設けた各色の液晶表示装置に対する重畳照明を可能にする。つまり、両レンズアレイ21d,21eと重畳レンズ21iとを経た照明光は、以下に詳述する色分離光学系23を経て、光変調部25に設けられた各色の液晶パネル25a,25b,25cを均一に重畳照明する。
色分離光学系23は、第1及び第2ダイクロイックミラー23a,23bと、補正光学系である3つのフィールドレンズ23f,23g,23hと、反射ミラー23j,23m,23n,23oとを備え、光源装置21とともに照明光学系である照明装置を構成する。ここで、第1ダイクロイックミラー23aは、赤緑青の3色のうち例えば赤色光及び緑色光を反射し青色光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー23bは、入射した赤及び緑の2色のうち例えば緑色光を反射し赤色光を透過させる。この色分離光学系23において、光源装置21からの略白色の光源光は、反射ミラー23jで光路を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー23aに入射する。第1ダイクロイックミラー23aを通過した青色光は、例えばS偏光のまま、反射ミラー23mを経て入射角度を調節するためのフィールドレンズ23fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー23aで反射されて第2ダイクロイックミラー23bでさらに反射された緑色光は、例えばS偏光のままフィールドレンズ23gに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー23bを通過した赤色光は、例えばS偏光のまま、レンズLL1,LL2及び反射ミラー23n,23oを経て、フィールドレンズ23hに入射する。レンズLL1,LL2及びフィールドレンズ23hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介してほぼそのままフィールドレンズ23hに伝達する機能を備えている。
光変調装置である光変調部25は、3つの液晶パネル25a,25b,25cと、各液晶パネル25a,25b,25cを挟むように配置される3組の偏光フィルタ25e,25f,25gとを備える。ここで、第1光路OP1に配置された青色用の液晶パネル25aと、これを挟む一対の偏光フィルタ25e,25eとは、青色光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色用の液晶ライトバルブを構成する。同様に、第2光路OP2に配置された緑色用の液晶パネル25bと、対応する偏光フィルタ25f,25fも、緑色用の液晶ライトバルブを構成し、第3光路OP3に配置された赤色用の液晶パネル25cと、偏光フィルタ25g,25gも、赤色用の液晶ライトバルブを構成する。
青色用の第1液晶パネル25aの被照明領域には、色分離光学系23の第1ダイクロイックミラー23aを透過することによって分岐された青色光が、フィールドレンズ23fを介して入射する。緑色用の第2液晶パネル25bの被照明領域には、色分離光学系23の第2ダイクロイックミラー23bで反射されることによって分岐された緑色光が、フィールドレンズ23gを介して入射する。赤色用の第3液晶パネル25cの被照明領域には、第2ダイクロイックミラー23bを透過することによって分岐された赤色光が、フィールドレンズ23hを介して入射する。各液晶パネル25a〜25cは、入射した照明光の偏光状態の空間的分布を画素単位で変調するための非発光型の液晶表示デバイスであり、各液晶パネル25a〜25cにそれぞれ入射した3色の光は、各液晶パネル25a〜25cに電気的信号として入力された駆動信号或いは画像信号に応じて変調される。その際、偏光フィルタ25e,25f,25gによって、各液晶パネル25a〜25cに入射する照明光の偏光方向が調整されるとともに、各液晶パネル25a〜25cから射出される変調光から所定の偏光方向の成分光が画像光として取り出される。
クロスダイクロイックプリズム27は、光合成部材であり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜27a,27bが形成されている。一方の第1誘電体多層膜27aは青色光を反射し、他方の第2誘電体多層膜27bは赤色光を反射する。このクロスダイクロイックプリズム27は、液晶パネル25aからの青色光を第1誘電体多層膜27aで反射して進行方向右側に射出させ、液晶パネル25bからの緑色光を第1及び第2誘電体多層膜27a,27bを介して直進・射出させ、液晶パネル25cからの赤色光を第2誘電体多層膜27bで反射して進行方向左側に射出させる。
投射レンズ29は、クロスダイクロイックプリズム27で合成されたカラーの画像光を、所望の倍率でスクリーン(不図示)上に投射する。つまり、各液晶パネル25a〜25cに入力された駆動信号或いは画像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画がスクリーン上に投射される。
以下、図2を用いて光変調部25の一例について説明する。なお、以下では、青色光に対応する液晶ライトバルブ31について説明するが、他色光に対応する液晶ライトバルブも同様の構造を有し、同様に動作するので説明を省略する。
図2は、図1に示すプロジェクタ10の光変調部25を構成する青色用の液晶ライトバルブの構造を説明する拡大断面図である。上述のように、この液晶ライトバルブ31は、図1の例えば第1光路OP1に配置されている青色用の液晶パネル25aに相当する液晶パネル31aと、液晶パネル25aを挟む一対の偏光フィルタ25e,25eに相当する偏光フィルタ31b,31cと、液晶パネル25aの液晶中での位相の乱れを光学的に補償する光学補償板OCとによって構成される。
図示の液晶ライトバルブ31において、入射側の偏光素子である第1偏光フィルタ31bと、射出側の偏光素子である第2偏光フィルタ31cとは、入出射面の法線がそれぞれシステム光軸SAすなわちZ軸に平行になっており、クロスニコルを構成するように配置されている。具体的には、第1偏光フィルタ31bは、S偏光を透過させ、第2偏光フィルタ31cは、P偏光を透過させる。これら第1及び第2偏光フィルタ31b,31cの間に挟まれた液晶パネル31aは、第1偏光フィルタ31b側から入射した入射光LIの偏光方向を入力信号に応じて画素単位で2次元的に変化させ、変化後の変調光を射出光LOとして第2偏光フィルタ31c側に射出する。この液晶パネル31aと射出側の第2偏光フィルタ31cとの間には、光学補償板OCが配置されている。この光学補償板OCは、平板状の外形を有する光学補償部材であり、この例では入出射面の法線がシステム光軸SAすなわちZ軸に平行になるように配置されている。
液晶パネル31aは、例えば垂直配向モードで動作する光透過型変調デバイス(すなわち垂直配向型の光透過型液晶パネル)であり、液晶層71を挟んで、入射側に透明な第1基板72と、射出側に透明な第2基板73とを備える。これらの基板72,73は、ともに平板状であり、入出射面の法線がシステム光軸SAすなわちZ軸に平行になるように配置されている。なお、入射光LIが入射する第1基板72は、XY面に平行な面に沿って延びるマイクロレンズアレイ72aと、マイクロレンズアレイ72aの内側に接着剤72cを挟んで配置される偏光層72bとを備える。このマイクロレンズアレイ72aは、後述する透明画素電極77すなわち画素部分PPに対応する所定パターンで2次元的に配列された多数の要素レンズELを有する。
液晶パネル31aにおいて、第1基板72の液晶層71側の面上には、透明な共通電極75が設けられており、その上には、例えば配向膜76が形成されている。一方、第2基板73の液晶層71側の面上には、マトリクス状に配置された複数の透明画素電極77と、各透明画素電極77に電気的に接続されている薄膜トランジスタ(不図示)とが設けられており、その上には、例えば配向膜78が形成されている。ここで、第1及び第2基板72,73と、これらに挟まれた液晶層71と、電極75,77とは、入射光の位相状態、すなわち偏光状態を変化させるための液晶セルとなっている。また、この液晶パネル31aを構成する各画素部分PPは、1つの透明画素電極77と、共通電極75の一部と、両配向膜76,78の一部と、液晶層71の一部とを含む。各画素部分PPには、入射側の第1基板72に設けた各マイクロレンズアレイ72aによって、入射光LIの光束を絞ってこの光束を選択的に入射させることができるようになっている。なお、第1基板72と共通電極75との間には、各画素部分PPを区分するように格子状のブラックマトリクス79が設けられている。このブラックマトリクス79はマイクロレンズアレイ72aの光入射側に配置される場合もある。
ここで、配向膜76,78は、液晶層71を構成する液晶性化合物を必要な方向に配列させるためのものであり、液晶層71に電圧が印加されないオフ状態において、液晶性化合物の光学軸を第1基板72の法線に対して大きくないが一様な傾きとなるように配向させる役割を有し、液晶層71に電圧が印加されたオン状態において、液晶性化合物の光学軸が第1基板72の法線に対して垂直な特定の方向(具体的にはX軸方向)に配向することを許容する。これにより、液晶層71に対して電圧を印加しないオフ状態において、最大遮光状態(最低輝度状態)を確保することができ、液晶層71に対して電圧を印加したオン状態において、最大透過状態(最高輝度状態)を確保することができる。
第1基板72は、マイクロレンズアレイ72aと偏光層72bとを組み込んだ構造を有している。偏光層72bは、透明なガラス基板b1の表面上に微細なストライプ状の導体アレイb2を形成したワイヤグリッド偏光子(反射素子)であり、例えば導体アレイb2が紙面に垂直なY軸方向に延びる場合、第1偏光フィルタ31bで除去されなかった特定の偏光であるP偏光を略完全に反射し特定の偏光でないS偏光を透過する。偏光層72bは、例えば無機の反射型偏光板であり、広い波長帯域に亘って少ないロスで偏光分離行うことができる。ここで、偏光層72bは、マイクロレンズアレイ72aと液晶層71とに挟まれてXY面に沿って層状に延びている。以上の偏光層72bの後段の液晶層71側に射出される照明光は、殆ど偏光方向に乱れのないものとなっている。
液晶パネル31aの外側に配置される第1及び第2偏光フィルタ31b,31cは、偏光部材であり、一定方向に振動する直線偏光、具体的にはP偏光のみを通過させるためのもので、例えばPVA(ポリビニールアルコール)膜に染料を吸着させて特定方向に延伸させることによって形成される。
図3(A)〜3(C)は、液晶パネル31aと第2偏光フィルタ31cとの間に設けられた光学補償板OCによるプレチルトの補償を概念的に説明する斜視図である。なお、これらの図3(A)〜3(C)に関する説明は、液晶ライトバルブ31への垂直入射光についてのものである。
図3(A)に示すように、電界が印可されていないオフ状態の液晶層71の平均的なプレチルトは、システム光軸SAに平行なZ軸に対して極角φ03だけ傾いており、この傾きの配向方向は、例えばX軸方向やY軸方向の中間方向になっている。すなわち、このようなプレチルトの屈折率楕円体RIE03は、その光学軸OA03がZ軸に対して極角φ03だけ傾いた状態となっており、光学軸OA03が45°の方位角方向に配向している。
図3(B)に示すように、光学補償板OCを構成する例えばサファイアの屈折率楕円体RIE3は、負の一軸性に相当するものであり、その光学軸OA3がZ軸に対して極角φ3だけ傾いた状態となっており、光学軸OA3が45°の方位角方向に配向している。なお、光学補償板OCは、例えばサファイアを一枚の平板状のガラス板で支持した構造とすることもできるが、平板状のサファイア板単体とすることもできる。
図3(C)は、光学補償板OCによる補償の効果を概念的に説明する図である。電圧非印加のオフ状態で、液晶層71の平均的なプレチルトと、光学補償板OCを構成するサファイアの屈折率異方性とを合成した屈折率楕円体RIEcは、その光学軸OAcがZ軸に平行な略球状の屈折率特性を有している。この屈折率楕円体RIEcは、Z方向から見たXY面内の屈折率が等しく円形であるので、液晶層71に対する垂直入射光に関して、液晶層71のプレチルトによる液晶リタデーションを補償したものとなっている。
以上の説明は、液晶ライトバルブ31に垂直入射する照明光についてのものであり、実際の入射光LIは、照明光の入射角度範囲に対応する広がりを有する。よって、傾斜入射光も配慮したシミュレーション等を用いて光学補償板OCの厚みや光学軸OA3の方向が適切なものとなるように仕様を決定することになる。
以下、液晶ライトバルブ31の作製方法について説明する。
まず、対向基板となるガラス基板81に第1基板72を構成するマイクロレンズアレイ72aを形成する。マイクロレンズアレイ72aは、例えばドライエッチ法によって形成する。
まず、対向基板となるガラス基板81に第1基板72を構成するマイクロレンズアレイ72aを形成する。マイクロレンズアレイ72aは、例えばドライエッチ法によって形成する。
図4は、ドライエッチ法による第1基板72の作製方法について説明する概念図である。図4(A)に示すように、ガラス基板81にレジスト82を塗布し、露光処理、現像処理によって画素に対応するマスク領域をパターニングする。次に、図4(B)に示すように、高温ポストベークを行い、パターニングしたレジスト82を溶解し、半球状にする。ポストベーク後、図4(C)に示すように、ドライエッチングを行い、レジスト82とともにガラス基板81をエッチングする。エッチング後、ガラス基板81の片面は、半球状のマイクロレンズアレイ72aが形成されている状態となっている。なお、図4(C)の破線部分は、エッチング前の状態を示す。次に、図4(D)に示すように、ガラス基板81に形成したマイクロレンズアレイ72aの凸面側に、接着剤72cで偏光層72bを接着する。この偏光層72bは、図4(D)の工程前に別途準備したものであり、光透過性の平板であるガラス基板b1上に1層以上の金属薄膜を成膜し、パターニングされたレジスト層をマスクとしてエッチングを行うことにより、周期ストライプパターンの導体アレイb2を形成したものである。図4(D)の工程では、マイクロレンズアレイ72aと偏光層72bとの間に生じる凹凸を接着剤72cで埋めることとなる。接着剤72cには、例えば高屈折率樹脂が用いられる。その後、図4(E)に示すように、第1基板72の偏光層72b上にブラックマトリクス79及び共通電極75を順に形成し、第1基板72を所望の大きさにダイシングする。ここで、ブラックマトリクス79は、Cr等で形成され遮光性を有し、共通電極75は、ITO膜等で形成され光透過性を有する。最後に共通電極75の上に配向膜76を形成し、液晶層71の入射側の基板を作製する。一方で、別途、第2基板73の上に不図示の薄膜トランジスタ(TFT素子)、透明画素電極77、及び配向膜78を順に形成し、液晶層71の射出側の基板を作製する(図2参照)。なお、透明画素電極77は、ITO膜を成膜して形成し、パターニングによって画素電極とする。最後に、液晶層71を入射側の基板及び射出側の基板の配向膜76,78を液晶層71側にして挟み、さらに、両基板の外側に防塵ガラス84,85を貼り合わせる。以上により、図2に示す構造を有する液晶パネル31aが完成する。
以上説明したプロジェクタ10では、マイクロレンズアレイ72aと液晶層71との間に偏光層72bを設けることにより、照明光がマイクロレンズアレイ72aを通過することによる偏光状態の乱れの影響をなくすことができる。つまり、マイクロレンズアレイでの回折による照明光の偏光状態の乱れを低減することができる。これにより、液晶層71の視野角依存性を精度よく補償できるので、プロジェクタ10の投射画像の高コントラスト化を達成することができる。特に、視野角補償が略可能である垂直配向型(VA)液晶において効果が期待される。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
第1基板72の作製方法は上記実施例に限らず、図5に示すようにウェットエッチング法を用いてもよい。ウェットエッチング法では、対向基板であるガラス基板81を凹型にし、マイクロレンズアレイ172aを作製する。
具体的には、図5(A)、5(B)に示すように、ガラス基板81外周全体に保護膜86、例えばポリシリコン膜を形成し、露光処理、現像処理によって画素をパターニングする。次に、図5(C)に示すように、ウェットエッチングを行う。エッチング後ポリシリコン膜を除去すると、図5(D)に示すように、ガラス基板81は、凹型のマイクロレンズアレイ172aが形成されている状態となっている。次に、図5(E)に示すように、ガラス基板81に形成したマイクロレンズアレイ172a上に、接着剤72cでマイクロレンズアレイ172aの凹面側に偏光層72bを接着する。その後、図5(F)に示すように、第1基板72の偏光層72b上にブラックマトリクス79及び共通電極75を順に形成し、第1基板72を所望の大きさにダイシングする。最後に、共通電極75の上に配向膜76を形成し、液晶層71の入射側の基板の作製を完了する。なお、射出側の第2基板73の作製や、第1基板72と第2基板73との間に液晶層71を挟んで液晶パネル31aを完成する工程は、既に説明したものと同様であり、ここでは説明を省略する。
また、図6に示すように、フォトポリマー法を用いてマイクロレンズアレイ272aをガラス基板81の上に形成してもよい。具体的には、図6(A)に示すように、ガラス基板81と凹型の成形型87との間にUV硬化樹脂88を注入する。次に、図6(B)に示すように、紫外線Vを照射して、UV硬化樹脂88を硬化させる。UV硬化樹脂88の硬化後、図6(C)に示すように、成形型87からガラス基板81に接着したUV硬化樹脂88を離型する。次に、図6(D)に示すように、ガラス基板81に形成したマイクロレンズアレイ272a上に、接着剤72cでマイクロレンズアレイ272aの凸面側に偏光層72bを接着する。その後、図6(E)に示すように、第1基板72の偏光層72b上にブラックマトリクス79及び共通電極75を順に形成し、第1基板72を所望の大きさにダイシングする。最後に、共通電極75の上に配向膜76を形成し、液晶層71の入射側の基板の作製を完了する。
また、上記実施形態において、マイクロレンズアレイ72a,172a,272aと偏光層72bとの間の空間を適当な屈折率の接着剤72cで埋めているが、マイクロレンズアレイ72a,172a,272aと偏光層72bとの間に空間を残すこともできる。この場合、マイクロレンズアレイ72a,172a,272aを支持するガラス基板81の外縁と偏光層72bの外縁とを接着すれば足り、空間充填用の接着剤72cは不要となる。
また、上記実施形態において、液晶ライトバルブ31を構成する液晶パネル31aが垂直配向型であるものとしたが、液晶ライトバルブ31を構成する液晶パネル31aがツイストネマティック型であっても図2に示す構造と同様のものとなる。ただし、液晶層71の特性が異なるものに置き換わることに対応して配向膜76,78の状態が変更される。また、ツイストネマティック型の場合、液晶ライトバルブ31は、通常ノーマリホワイトモードで動作することになり、電圧非印加のオフ状態で最大透過状態(光オン状態)となる。
また、上記実施形態において、偏光層72bは、ワイヤグリッド偏光子であるとしていたが、ワイヤグリッド偏光子以外の反射型偏光素子を用いることができる。偏光層72bとして、例えばフォトニック結晶型の偏光素子や、吸収型の偏光素子の層を組み込むことができる。ここで、フォトニック結晶は、光透過性の基板上に屈折率の異なる2種以上の無機材料からなる多層膜を形成したものであり、このような膜に周期的な凹凸構造を持たせることによって偏光透過率に選択性を持たせたものである。また、特定の偏光を吸収し特定の偏光でない偏光を透過する吸収型の偏光素子は、上述のポリビニールアルコール等で形成される有機材料の薄膜に限らず、例えばガラス中に金属微粒子を分散させた特殊な材料で形成される。なお、偏光層72bをポリビニールアルコールで形成する場合、ポリビニールアルコールに染料を吸着させて延伸した一様な厚みの有機偏光膜を、図4(D)に示すガラス基板b1と同様のガラス基板上に光透過性の接着剤72cで貼り付ける。このようにして得た偏光層72bは、図4(D)に示す工程と同様に、別途作製されたガラス基板81に形成したマイクロレンズアレイ72aの凸面側に上記ポリビニールアルコール製の偏光膜を向けて配置されるとともに、接着剤72cを介して当該ガラス基板81に接合される。
また、上記実施形態において、液晶パネル31aの射出側に設けた光学補償板OCは、単一の複屈折材料とする必要はなく、複数枚の複屈折材料で構成することができる。また、光学補償板OCの材料、厚み、配置箇所、光学軸の配向方向及び極角、異方性材料の構成枚数等に関する記載は、単なる例示であり、これらの条件は、用途等に応じて適宜変更である。
また、上記実施形態のプロジェクタ10では、光源装置21を、光源ランプユニット21a、一対のレンズアレイ21d,21e、偏光変換部材21g、及び重畳レンズ21iで構成したが、レンズアレイ21d,21e、偏光変換部材21g等については省略することができ、光源ランプユニット21aも、LED等の別光源に置き換えることができる。
また、上記実施形態では、色分離光学系23を用いて照明光の色分離を行って、光変調部25において各色の変調を行った後に、クロスダイクロイックプリズム27において各色の像の合成を行っているが、単一の液晶パネルすなわち液晶ライトバルブ31によって画像を形成することもできる。
上記実施形態では、3つの液晶パネル25a〜25cを用いたプロジェクタ10の例のみを挙げたが、本発明は、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、或いは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
上記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行なうフロントタイプのプロジェクタの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行なうリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
10…プロジェクタ、 21…光源装置、 21a…光源ランプユニット、 21d,21e…レンズアレイ、 21g…偏光変換部材、 21i…重畳レンズ、 23…色分離光学系、 23a,23b…ダイクロイックミラー、 23f,23g,23h…フィールドレンズ、 25…光変調部、 25a,25b,25c,31a…液晶パネル、 25e,25f,25g,31b,31c…偏光フィルタ、 27…クロスダイクロイックプリズム、 29…投射レンズ、 31…液晶ライトバルブ、 71…液晶層、 72,73…基板、 72a,172a,272a…マイクロレンズアレイ、 72b…偏光層、 72c…接着剤、 75…共通電極、 76,78…配向膜、 77…透明画素電極、 79…ブラックマトリクス、 LI…入射光、 LO…射出光、 OC…光学補償板
Claims (10)
- 光源光を均一化して照明光を形成する照明光学系と、
前記照明光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置を経た像光を投射する投射光学系と、
を備えるプロジェクタであって、
前記光変調装置は、マイクロレンズアレイと、前記マイクロレンズアレイの後段に配置される液晶層と、前記マイクロレンズアレイ及び前記液晶層の間に設けられるとともに、偏光特性を有する偏光層とを有する液晶パネルを備える、プロジェクタ。 - 前記偏光層は、特定の偏光を反射する反射型の偏光素子である、請求項1記載のプロジェクタ。
- 前記偏光層は、ワイヤグリッドで構成される、請求項2記載のプロジェクタ。
- 前記偏光層は、多層膜で構成される、請求項2記載のプロジェクタ。
- 前記偏光層は、特定の偏光を吸収する吸収型の偏光素子である、請求項1記載のプロジェクタ。
- 前記偏光層は、ポリビニールアルコールで形成される薄膜である、請求項5記載のプロジェクタ。
- 前記マイクロレンズアレイと前記偏光層とは、隣接し接着剤で接合される、請求項1から請求項6までのいずれか一項記載のプロジェクタ。
- 前記液晶層は、前記偏光層の基板上に形成される、請求項1から請求項7までのいずれか一項記載のプロジェクタ。
- 前記光学変調装置は、前記液晶パネルを光学的に補償するための光学補償板をさらに備える、請求項1から請求項8までのいずれか一項記載のプロジェクタ。
- 前記液晶パネルの後段に配置される射出側の偏光板をさらに備える、請求項1から請求項9までのいずれか一項記載のプロジェクタ。
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