JP2009072161A - 果実乳酸発酵組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】果実処理物に乳酸菌を添加して乳酸発酵を行い果実乳酸発酵組成物を得る方法において、該乳酸菌の添加量を増大させることなく、乳酸発酵組成物の粘度を増大させ、そして滑らかな食感を有する、ヨーグルト状の果実乳酸発酵組成物を容易に得る。
【解決手段】バナナピューレ又はマンゴーピューレ等の果実処理物に果実以外の原料を加えることなく、乳酸菌を添加し発酵を行い、次いでこれを0〜10℃で2時間〜14日冷蔵する。
【選択図】なし

Description

本発明は、バナナピューレ、マンゴーピューレ、パイナップルピューレ及びリンゴピューレ等の果実処理物に乳酸菌を添加し発酵することにより得られる果実乳酸発酵組成物の改良に関し、果実処理物に、前記乳酸菌を高濃度添加することなく、乳酸発酵組成物の粘度を増大させ、そして滑らかな食感を有する、ヨーグルト状の果実乳酸発酵組成物を容易に得る方法に関する。
従来、マンゴーの破砕処理物に乳酸菌を接種し、発酵を行い、これを濾過して、多くの食品、化粧品、医薬品、医薬部外品の原料として利用することができる発酵物を得る方法(特許文献1参照)が知られている。また、バナナの磨砕処理物に乳酸菌を接種し、発酵を行い、乳酸含有果物ジュースを得る方法(特許文献2参照)が知られている。
しかし、これらの方法で得られた乳酸発酵組成物は粘度が低く、このままではヨーグルト状の食品として十分満足することができないという欠点を有している。
特開2006−296387号公報 特開昭49−36848号公報
本発明は、乳酸菌の添加量を増大させることなく、乳酸発酵組成物の粘度を増大させ、そして滑らかな食感を有する、ヨーグルト状の果実乳酸発酵組成物を得ることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、果実処理物に乳酸菌を添加し、発酵を行ったのち、この発酵物を0〜10℃で2時間〜14日冷蔵するときは、乳酸菌が保有するデキストランスクラーゼによりデキストランの代謝生産を促進して、当該発酵物のゲル化を進行させて、発酵終了後の発酵物粘度を更に約1,000〜6,000 mPa・s増大させことが可能となりヨーグルト状の組成物が得られることを知った。
また、上記乳酸菌として、多糖生産能を有する乳酸菌、特にロイコノストック属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属又はラクトコッカス属に属する乳酸菌を利用するときは、速やかに、そして更に高い粘度の発酵物を製造でき、好ましいことを知った。そしてまた上記果実処理物としては、バナナピューレ、マンゴーピューレ、パイナップルピューレ又はリンゴピューレが好ましいことを知った。
また、上記果実処理物に糖類を添加するときは、さらに高い粘度の発酵物を得ることができることを知った。
本発明は上記知見に基づいて完成したものであって以下に示す果実乳酸発酵組成物である。
(1)果実処理物に、乳酸菌を添加し発酵を行い、次いでこれを0〜10℃で2時間〜14日冷蔵して得られる果実乳酸発酵組成物。
(2)果実処理物に、糖類3〜10%(w/w)を加え、乳酸菌を添加し発酵を行い、次いでこれを0〜10℃で2時間〜14日冷蔵して得られる果実乳酸発酵組成物。
(3)乳酸菌が、多糖生産能を有する乳酸菌である上記(1)又は(2)に記載の果実乳酸発酵組成物。
(4)乳酸菌が、ロイコノストック属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属及びラクトコッカス属に属する乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の果実乳酸発酵組成物。
(5)ロイコノストック属に属する乳酸菌が、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカムである上記(4)に記載の果実乳酸発酵組成物。
(6)ロイコノストック属に属する乳酸菌が、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539である上記(4)に記載の果実乳酸発酵組成物。
(7)果実処理物が、バナナピューレ、マンゴーピューレ、パイナップルピューレ又はリンゴピューレである上記(1)〜(6)のいずれか記載の果実乳酸発酵組成物。
本発明は、果実乳酸発酵組成物の製造に利用する乳酸菌の添加量を増大させることなく、該乳酸発酵組成物の粘度を増大させ、そして滑らかな食感を有する、ヨーグルト状の果実乳酸発酵組成物を容易に得ることができる。また本発明は果実処理物そのものを原料に用いているため、牛乳などの獣乳を原料とする通常のヨーグルトと比較して食物繊維、各種ビタミン類を豊富に含み、また、低カロリーであり、健康維持効果が高い果実乳酸発酵組成物を得ることができる。
本発明で用いる果実としては、リンゴ、梨、枇杷、マルメロ及びカリン等の仁果類、温州ミカン、早生温州、ポンカン、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、福原オレンジ、日向夏、三宝甘、ハッサク、夏ミカン、伊予甘、ブンタン、スダチ、柚子、グレープフルーツ及びレモン等の柑橘類、モモ、アンズ、スモモ、ウメ及びサクランボ等の核果類、ブドウ、イチジク及びイチゴ等の漿果類、パイナップル、バナナ、スイカ、メロン、パパイヤ、マンゴー、パッションフルーツ、ライチー、クランベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、エルダーベリー、ラズベリー、柿、キウイフルーツ、ザクロ及びイチジク等が挙げられる。このうちバナナ、マンゴー、パイナップル及びリンゴが特に好ましい。
果実処理物としては、上記果実の破砕物、磨砕物、搾汁液、これらの膜処理物、酵素処理物、濃縮物又は水希釈物等が挙げられる。
破砕物、磨砕物及び搾汁液は、上記果実を洗浄しブランチングした後、スライサー、ダイサー、クラッシャー、コミトロール、マスコロイダー、パルパーフィニッシャー、フィルタープレス等で処理して調製する。
搾汁液の膜処理物は、上記搾汁液を、精密濾過(micro filtration)や限外濾過(ultra filtration)して調製する。
また酵素処理物は、上記破砕物、磨砕物、搾汁液又はこれらの膜処理物にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等の植物細胞崩壊酵素を添加し、酵素分解して調製する。また濃縮物は、減圧濃縮や凍結濃縮等によって脱水することにより、また水希釈物は、上記破砕物、磨砕物、搾汁液、又はこれらの膜処理物を水で希釈して調製する。
乳酸菌としては、果実処理物に乳酸菌を添加し発酵させたとき、多糖生産能を有する公知乳酸菌が挙げられるが、例えばロイコノストック属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属及びラクトコッカス属に属する乳酸菌が挙げられる。そのうち特にロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカムが果実特有の風味を損なうことなく高粘性の果実乳酸発酵組成物を得ることができる好ましい。
このような性質を有する乳酸菌としては例えば、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539が挙げられる。
なお、上記NRICとは、東京農業大学応用生物科学部菌株保存室が保存する菌株を意味する。
果実処理物に添加する糖類としては、スクロース、転化糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖等が挙げられる。これらは単独又は併用いずれでもよい。
添加量は、最終濃度3〜10%(w/w)が好ましく、4〜7%(w/w)がより好ましい。
本発明において、この糖類の添加は重要であってこのように糖類を添加することにより高粘度の果実乳酸発酵組成物を容易に得ることができるので好ましい。
果実処理物のpHは、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いることが好ましい。そして、果実処理物のpHを5.0〜8.0とすることが好ましく、5.5〜7.0に調整することがより好ましい。
果実処理物に対して乳酸菌の添加は、直接添加よりも、乳酸菌を予め前培養して得られたもの(本発明では、乳酸菌スターターと言うことがある)を添加する方が、より安定して乳酸発酵を行うことができるので好ましい。
乳酸発酵は、15〜40℃の品温で、10〜48時間発酵することが好ましい。
なお、乳酸菌スターターは、予め90〜121℃、10〜20分間の通常の殺菌処理を行なった乳酸菌の増殖に適した培地に、乳酸菌の凍結乾燥菌体または凍結保存菌液等を接種して上記乳酸発酵と同じ条件で培養したものを利用することができる。
乳酸菌スターターは、本培養液と同じ果実を含んでいる前培養液で乳酸菌スターターを作成すると、果実処理物中での乳酸菌がより好適に増殖するため好ましい。
このようにして得られる乳酸菌スターターは、乳酸菌を10〜10cfu/ml含有しており、この乳酸菌スターターを本培養液に初発菌数が10〜10cfu/ml程度となるように接種する。
また、本発明での果実処理物の発酵温度は、15〜40℃が好ましく、20〜35℃がより好ましい。そして、発酵時間は、果実処理物の種類やその発酵条件に応じて適宜決定し、6〜48時間が好ましい。そして、果実乳酸発酵組成物のpHが4〜5付近で発酵を停止する。
また、発酵終了後に該発酵物を2時間〜14日、0〜10℃の冷蔵する。
本発明において、このことは極めて重要であって、このように冷蔵すると、乳酸菌が保有するデキストランスクラーゼにより発酵物内でデキストランの代謝生産を促進して、当該果実乳酸発酵組成物のゲル化を進行させて、乳酸発酵後の粘度を更に1,000〜5,000 mPa・s増大することが可能となる。
なお、本発明の果実乳酸発酵組成物の粘度は、B型回転粘度計(VISCOMETER TV−10 東機産業社製)を用いて、品温4℃、ローターM4、回転数12rpmの条件で、測定開始後2分後の示度で示す。
(果実乳酸発酵組成物の製造例)
(1)乳酸菌スターターの調製
−85℃でグリセロール保存しておいたロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539株をMRS培地に1白金耳接種して、25℃で24時間培養して乳酸菌スターターとした。
(2)果実処理物
1)バナナピューレ(Brix21.9、N&Nフーズ社製)
2)マンゴーピューレ(Brix15.9、デルモンテフィリピンプロフード社製)
上記ピューレをpH調整剤でpH6.0に調整したものと、上記ピューレにスクロース5%(w/w)を添加溶解して、pH調整剤でpH6.0に調整したものとを、500ml容デュランビンに300gずつ分注し、105℃で1分間の加熱条件でオートクレーブ殺菌して、本培養液とした。
(3)発酵
上記NRIC 1539株の乳酸菌スターターを上記果実処理物の本培養液に、上記果実処理物の2%(v/w)に当たる600μl接種して、25℃で24時間発酵して、発酵物を得た。
次いで、該発酵物を4℃の冷蔵庫で24時間冷蔵して、滑らかな食感を有する、ヨーグルト状の、本発明の果実乳酸発酵組成物を得た。
(4)果実乳酸発酵組成物の評価
上記の方法において、発酵前の本培養液(表1ではこれを「発酵前」と表示する)、24時間発酵後の発酵物(表1では「発酵直後」と表示する)及び、この発酵物を4℃の冷蔵庫で24時間冷蔵して得られた本発明の果実乳酸発酵組成物(表1では「発酵後24時間冷蔵」と表示する)を、それぞれB型粘度計で測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2009072161
表1より、果実処理物に乳酸菌を添加し、発酵を行ったのち、この発酵物を4℃で24時間冷蔵するときは、当該発酵物のゲル化を進行させて、発酵物の粘度を更に増大できることが判る。また果実処理物に糖類を添加するときは、バナナピューレを原料とした場合は1,260〜4,610mPa.sも高い粘度の発酵物を得ることができることが判る。
(ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539、による果実乳酸発酵組成物の製造例2)
(1)乳酸菌スターターの調製
−85℃でグリセロールストック、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539株を、バナナピューレ(Brix21.9、N&Nフーズ社製)、マンゴーピューレ(Brix15.9、デルモンテフィリピンプロフード社製)1/2水希釈液に1白金耳接種した。
その液を25℃で24時間培養して乳酸菌スターターを調製した。
(2)果実処理物の調製
1)バナナピューレ(スクロース5%添加):バナナピューレ(Brix21.9)にスクロースをその最終濃度が5%(w/w)となるように添加して果実処理物を調製した。
2)バナナピューレ75%(スクロース5%添加):バナナピューレ(Brix21.9)に水の最終濃度が20%となるように水を添加し、またスクロースの最終濃度が5%(w/w)となるようにスクロースを添加して果実処理物を調製した。
3)バナナピューレ50%(スクロース5%添加):バナナピューレ(Brix21.9)に水の最終濃度が45%となるように水を添加し、またスクロースの最終濃度が5%(w/w)となるようにスクロースを添加して果実処理物を調製した。
4)マンゴーピューレ(スクロース5%添加):マンゴーピューレ(Brix15.9)にスクロースをその最終濃度が5%(w/w)となるように添加して果実処理物を調製した。
5)マンゴーピューレ75%(スクロース5%添加):マンゴーピューレ(Brix15.9)に水の最終濃度が20%となるように水を添加し、またスクロースの最終濃度が5%(w/w)となるようにスクロースを添加して果実処理物を調製した。
調製した上記それぞれのピューレをpH6.0に調整して、500ml容デュランビンに300gずつ分注し、105℃で1分間の加熱条件でオートクレーブ殺菌して、本培養液とした。
(3)発酵
上記果実処理物の本培養液に、上記NRIC 1539株の乳酸菌スターターを2%(v/w)(600μl)添加して、25℃で24時間培養した。
(4)乳酸発酵物の評価
実施例1と同一の方法にて、果実乳酸発酵組成物の評価をした。
結果を表2に示す。
Figure 2009072161
表2の結果より、バナナピューレ又はマンゴーピューレに乳酸菌を添加し、発酵を行ったのち、この発酵物を0〜10℃で2時間〜14日冷蔵するときは、当該発酵物のゲル化を進行させて、発酵物の粘度を更に増大できることが判る。また、バナナ及びマンゴーピューレを水希釈しても、同様に発酵物のゲル化を進行させて、発酵物の粘度を更に増大できることが判る。

Claims (7)

  1. 果実処理物に、乳酸菌を添加し発酵を行い、次いでこれを0〜10℃で2時間〜14日冷蔵して得られる果実乳酸発酵組成物。
  2. 果実処理物に、糖類3〜10%(w/w)を加え、乳酸菌を添加し発酵を行い、次いでこれを0〜10℃で2時間〜14日冷蔵して得られる果実乳酸発酵組成物。
  3. 乳酸菌が、多糖生産能を有する乳酸菌である請求項1又は2に記載の果実乳酸発酵組成物。
  4. 乳酸菌が、ロイコノストック属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属及びラクトコッカス属に属する乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の果実乳酸発酵組成物。
  5. ロイコノストック属に属する乳酸菌が、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカムである請求項4に記載の果実乳酸発酵組成物。
  6. ロイコノストック属に属する乳酸菌が、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・デキストラニカム NRIC 1539である請求項4に記載の果実乳酸発酵組成物。
  7. 果実処理物が、バナナピューレ、マンゴーピューレ、パイナップルピューレ又はリンゴピューレである請求項1〜6のいずれか記載の果実乳酸発酵組成物。
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