JP2009067952A - 防錆用塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装した場合に、金属部への付着性が良好で防錆性にも優れる塗膜を形成し得る防錆用塗料組成物を提供すること。
【解決手段】アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いた防錆用塗料組成物であって、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である防錆用塗料組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いた防錆用塗料組成物であって、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である防錆用塗料組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は防錆用塗料組成物に関し、特に、金属付着性、防錆性、耐水性に優れた塗膜を形成し得る防錆用塗料組成物に関する。
従来、自動車のシャーシやその他の金属部品、タンク、橋梁、水道管、機械等の金属性構築物、建造物、家具、家電の筐体の防錆には有機溶剤系のフタル酸アルキド塗料、ウレタン系塗料やエポキシ樹脂塗料が用いられてきたが、地球環境の問題や省エネルギー、火災の危険性等の面より、有機溶剤系塗料から水系樹脂塗料への移行が求められている。特に、作業性や取り扱いの利便性への考慮から、一液の水系樹脂塗料の利用が求められているが、従来の水系樹脂塗料は、防錆性、金属付着性、上塗り塗料付着性、耐水性、耐アルカリ性等の諸性能が有機溶剤系塗料に比較して劣ることから、有機溶剤系塗料の代替としては不十分であった。
上記のような背景のなかで、水系樹脂塗料の上記の欠点を克服するための種々の試みが実施されてきた。例えば、反応型乳化剤の存在下、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸及びグリシジル基を有する不飽和単量体の乳化共重合によって得られる防錆塗料用水分散性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、従来の溶剤系塗料に代わるほどの防錆性、金属付着性は得られなかった。また、分子量、ガラス転移温度を規定したエマルションに工業ガソリン、ミネラルスピリット等の有機溶剤を混合して塗膜の造膜性を上げ、防錆性を改善する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、防錆性の持続性といった面で課題があった。
特開平5−1244号号公報
特開2006−52247号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を背景になされたものであり、一般的な多段乳化重合法によって得られ、乳化重合時に凝集物が発生せず、貯蔵安定性が良好で塗料化が極めて容易である異相構造粒子含有エマルションを用いた防錆用塗料組成物であって、塗装した場合に、金属部への付着性が良好で防錆性にも優れる塗膜を形成し得る防錆用塗料組成物を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、アニオン性界面活性剤を用いた多段乳化重合でカチオン性官能基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体をそれぞれ別の段階で乳化重合させ、即ち、それらの単量体を混合状態では乳化重合させず、それらの単量体をそれぞれその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体と併用して多段階に乳化重合させる多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションであって、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である特定の異相構造粒子含有エマルションを用いて防錆用塗料組成物とすることにより、上記の目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の防錆用塗料組成物は、アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いた防錆用塗料組成物であって、 該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、
該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、
更に、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である、
ことを特徴とする。
該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、
更に、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である、
ことを特徴とする。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションは、その乳化重合時に凝集物が発生せず、貯蔵安定性が良好で塗料化が極めて容易であり、塗料とした本発明の防錆用塗料組成物は優れた金属付着性、防錆性を発現する水系塗料である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションは、アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られ、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されている。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションは、アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られ、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されている。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションの製造に採用される多段乳化重合法は、水中に上記の何れか一方の単量体の組合せ(例えば、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体との組合せ)、アニオン性界面活性剤及び重合開始剤、更に必要に応じて連鎖移動剤や、乳化安定剤等を含有する水性乳濁液を形成し、従来から公知の乳化重合法で、通常60〜90℃の加温下で乳化重合させ、次いで他方の単量体の組合せ(例えば、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体との組合せ)を添加し、従来から公知の乳化重合法で、通常60〜90℃の加温下で乳化重合させ、このような乳化重合を2段階以上、通常は2〜5段階繰り返し実施して、乳化共重合体が異相構造、即ち、特性の異なる最外相と一相以上の内部相からなる粒子を形成させる多段乳化重合法である。
上記のカチオン性官能基含有単量体の例示として、ジメチルジアリルアンモニウム塩、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩メタクリレート等を挙げることができる。
上記のカルボキシル基含有単量体の例示として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができる。
上記のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、アリルアクリレート、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸ソーダ、トリメチロールプロパンアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールメタクリレート、1,3−ブチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体を挙げることができる。
更に、上記のアクリル系単量体類に加えて、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基を持つα,β−エチレン性不飽和単量体やアクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のビニル単量体を共重合成分として用いることができる。
異相構造粒子含有エマルションの製造においては、乳化剤として塗料原料との混和性を得るためにアニオン性界面活性剤を使用する。アニオン性界面活性剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、更には、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性不飽和基を分子中に有する、いわゆる反応性界面活性剤等を挙げることができる。また、アニオン性界面活性剤と共にノニオン性界面活性剤を併用することもできる。ノニオン性界面活性剤を併用すると塗料の機械的安定性、凍結−融解安定性が向上する。
上記の重合開始剤として、従来から一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能であるが、中でも水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライドや 、4,4'−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2'−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用できる。
上記の連鎖移動剤として、例えば、n−ドデシルメルカプタン等の長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。また、上記の乳化安定剤として、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
異相構造粒子含有エマルションの製造に採用される多段乳化重合の各段において、単量体混合物を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体混合物を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体混合物と水とアニオン性界面活性剤とを予め混合乳化しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組み合わせる方法等を採用することができる。
本発明において、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満であることが必要であり、好ましくは2〜9質量%であり、より好ましくは3〜8質量%である。異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が上記の範囲よりも多い場合には、得られる防錆用塗料組成物から形成される塗膜の耐水性の低下を招き、結果として防錆性(耐塩水噴霧性)の低下へと繋がる。また、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が少なすぎる場合には目的とする効果が不十分となる傾向がある。
本発明においては、防錆用塗料組成物で形成される塗膜の付着性及び防錆性の両方を同時に良好に満足する点で、異相構造粒子中の「カチオン性官能基含有単量体単位」:「カルボキシル基含有単量体単位」の質量比が0.5〜5:1であることが好ましく、1〜4:1であることがより好ましく、1.5〜3:1であることが更に好ましい。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションに含まれる異相構造粒子において、その最外相がアニオン性界面活性剤の存在下でカチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されている場合には、そのような異相構造粒子含有エマルションを用いた本発明の防錆用塗料組成物の安定性が増し、そのような防錆用塗料組成物を塗装することにより基材との密着性も向上するので、そのような最外相とすることが好ましい。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションに含まれる異相構造粒子においては、異相構造粒子を構成する各相の少なくとも一相が内部架橋構造を有する乳化共重合体で形成されていてもよい。このような内部架橋構造を有する乳化共重合体粒子は、内部架橋構造を有する相を形成させるための多段乳化重合の所定の段階で加える単量体混合物の一部としてジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体を使用して乳化重合させる方法、乳化重合反応時の温度で相互に反応する官能基含有単量体の組合せ、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組合せの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法、加水分解縮合反応の生じる(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリル基を持つエチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用して乳化重合させる方法、等の方法により製造することができる。
本発明の防錆用塗料組成物で用いる異相構造粒子含有エマルションにアンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類を添加してpH6〜10に調整しておくと、凍結−融解安定性や貯蔵安定性が更に良くなる。
なお、カチオン性官能基を持たない単量体から得られる通常のアクリルエマルションを用いた塗料では十分な防錆効果が得られない。また、カルボキシル基を持たない単量体から得られるエマルションの場合には、重合安定性、物理的安定性、化学的安定性等各種安定性が悪くなり、カルボキシル基含有単量体とカチオン性官能基含有単量体とを同時に共重合した場合には、重合安定性が著しく悪化する。
本発明の防錆用塗料組成物は、以上に説明した多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いたものであるが、塗料としての各種機能を付与するために、必要に応じて、消泡剤や防腐剤、防カビ剤、増粘剤、凍結安定剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤等の公知の添加剤等を配合しても良い。
本発明の防錆用塗料組成物は、上記の着色顔料、体質顔料の他に、更に、Ca、Al、Mg、Zn、Feのリン酸塩、モリブデン酸塩からなる防錆顔料を、防錆用塗料組成物の固形分100質量部あたり10〜120質量部の量で用いることで、更に防錆性に優れる塗料を構成することが可能となる。
本発明の防錆用塗料組成物は、無機系、金属系、木材系、プラスチック系等の各種基材に適用できる。特に、防錆性、金属密着性、耐水性に優れることから、軽防食用塗料、建築用塗料として好適である。
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
実施例1〜3
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水260部及び非反応性アニオン界面活性剤「ハイテノールNF−13」(第一工業製薬株式会社製)(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、エチレンオキシド平均付加モル数13モル)2部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温させた。
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水260部及び非反応性アニオン界面活性剤「ハイテノールNF−13」(第一工業製薬株式会社製)(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、エチレンオキシド平均付加モル数13モル)2部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温させた。
次いで、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を加え、予め別容器で撹拌混合しておいた第1表に示す組成の乳化物(A)(数値は部を示す、以下同じ)を、実施例1及び3については2時間かけて、実施例2については2.5時間かけて連続滴下し、続いて1段目と同様に予め撹拌混合しておいた第1表に示す組成の乳化物(B)を2時間かけて連続滴下した。滴下終了後、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、50%ジメチルエタノールアミンにてpH9.0に調整し、2相からなる異相構造粒子含有エマルションを得た。
実施例4
イオン交換水260部に実施例1〜3で配合した非反応性アニオン界面活性剤2部の代わりに反応性アニオン界面活性剤「アクアロンKH−10」(第一工業製薬株式会社製)〔α−スルホナト−ω−(1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシ)ポリオキシエチレンのアンモニウム塩、エチレンオキシド平均付加モル数10モル〕2部を使用し、第1表に示す組成の乳化物(A)及び乳化物(B)を使用して、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。
イオン交換水260部に実施例1〜3で配合した非反応性アニオン界面活性剤2部の代わりに反応性アニオン界面活性剤「アクアロンKH−10」(第一工業製薬株式会社製)〔α−スルホナト−ω−(1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシ)ポリオキシエチレンのアンモニウム塩、エチレンオキシド平均付加モル数10モル〕2部を使用し、第1表に示す組成の乳化物(A)及び乳化物(B)を使用して、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。
実施例5
イオン交換水260部に配合した非反応性アニオン界面活性剤「ハイテノールNF−13」2部の他に更にノニオン界面活性剤「ノイゲンEA−187」(第一工業製薬株式会社製)(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、HLB17)2部を使用し、第1表に示す組成の乳化物(A)及び乳化物(B)を使用して、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。
イオン交換水260部に配合した非反応性アニオン界面活性剤「ハイテノールNF−13」2部の他に更にノニオン界面活性剤「ノイゲンEA−187」(第一工業製薬株式会社製)(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、HLB17)2部を使用し、第1表に示す組成の乳化物(A)及び乳化物(B)を使用して、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。
比較例1
カチオン性官能基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体の両方を含む第1表に示す組成の乳化物(A)を4時間かけて滴下した以外は、実施例1と同様の操作でエマルションを得た。得られたエマルションは異相構造粒子含有エマルションではない。
カチオン性官能基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体の両方を含む第1表に示す組成の乳化物(A)を4時間かけて滴下した以外は、実施例1と同様の操作でエマルションを得た。得られたエマルションは異相構造粒子含有エマルションではない。
比較例2
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。得られた異相構造粒子含有エマルションの異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量は異相構造粒子の全単量体単位の10質量%を超えている。
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。得られた異相構造粒子含有エマルションの異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量は異相構造粒子の全単量体単位の10質量%を超えている。
比較例3
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。乳化物(A)及び(B)にはカチオン性官能基含有単量体は含まれていない。
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。乳化物(A)及び(B)にはカチオン性官能基含有単量体は含まれていない。
比較例4
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。乳化物(A)及び(B)にはカルボキシル基含有単量体は含まれていない。
第1表に示す組成の乳化物(A)及び(B)を用いて、実施例1と同様の操作で異相構造粒子含有エマルションを得た。乳化物(A)及び(B)にはカルボキシル基含有単量体は含まれていない。
実施例1〜5及び比較例1〜4で得たエマルションの乳化重合時の重合安定性を下記の基準で目視で評価した。それらの結果は第1表に示す通りであった。
<重合安定性>
◎:重合時にほとんど凝集物が発生せず、安定なエマルションが得られた、
○:重合時に若干の凝集物を生じたが、安定なエマルションが得られた、
△:重合安定性が悪く、多量の凝集物が生じた、
×:重合安定性が極めて悪く、反応の遂行が困難であった。
<重合安定性>
◎:重合時にほとんど凝集物が発生せず、安定なエマルションが得られた、
○:重合時に若干の凝集物を生じたが、安定なエマルションが得られた、
△:重合安定性が悪く、多量の凝集物が生じた、
×:重合安定性が極めて悪く、反応の遂行が困難であった。
実施例1〜5及び比較例1〜4で得たエマルションを用いて下記のように調製した防錆用塗料組成物について、下記のようにして防錆塗料としての性能評価試験を行った。それらの結果は第1表に示す通りであった。
(1)塗料配合
実施例1〜5及び比較例1〜4の何れかで得たエマルション65.0部を、下記の原料と下記の量で混合し、さらにMFTが0℃以下になるように必要に応じてテキサノールを添加して防錆性試験用塗料を製造した。
ナトラゾール250HR 0.3部
(ハーキュレス株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)
脱イオン水 13.0部
アンモニア水(28%水溶液) 0.2部
Disperbyk−190 0.2部
(ビックケミージャパン株式会社製、界面活性剤)
サーフィノール104E(エアープロダクト社製、湿潤剤) 0.4部
プライマルRM−8W(ローム・アンド・ハース株式会社製、増粘剤) 2.0部
SNデフォーマー1312(サンノプコ株式会社製、消泡剤) 0.4部
酸化チタンCR−50(石原産業株式会社製、酸化チタン) 5.5部
ベイフェロックス130M(ベンガラ) 5.0部
マイクロマイカ 4.0部
マイクロタルク 4.0部
実施例1〜5及び比較例1〜4の何れかで得たエマルション65.0部を、下記の原料と下記の量で混合し、さらにMFTが0℃以下になるように必要に応じてテキサノールを添加して防錆性試験用塗料を製造した。
ナトラゾール250HR 0.3部
(ハーキュレス株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)
脱イオン水 13.0部
アンモニア水(28%水溶液) 0.2部
Disperbyk−190 0.2部
(ビックケミージャパン株式会社製、界面活性剤)
サーフィノール104E(エアープロダクト社製、湿潤剤) 0.4部
プライマルRM−8W(ローム・アンド・ハース株式会社製、増粘剤) 2.0部
SNデフォーマー1312(サンノプコ株式会社製、消泡剤) 0.4部
酸化チタンCR−50(石原産業株式会社製、酸化チタン) 5.5部
ベイフェロックス130M(ベンガラ) 5.0部
マイクロマイカ 4.0部
マイクロタルク 4.0部
(2)塗装乾燥条件
冷間圧延鋼板ブライト(SPCC B 70mm×150mm×0.8mm)の表面上に乾燥塗膜厚が30μmとなるように、上記で得られた塗料を口径2mmのスプレーガンを用いて吹き付け圧3Kg/cm2(294kPa)で塗装し、90℃で5分間乾燥後、25℃で7日間放置して試験片を作成し、以下に示す試験をそれぞれ実施した。
冷間圧延鋼板ブライト(SPCC B 70mm×150mm×0.8mm)の表面上に乾燥塗膜厚が30μmとなるように、上記で得られた塗料を口径2mmのスプレーガンを用いて吹き付け圧3Kg/cm2(294kPa)で塗装し、90℃で5分間乾燥後、25℃で7日間放置して試験片を作成し、以下に示す試験をそれぞれ実施した。
(3)試験条件及び評価基準
<防錆性>
JIS K−5400に準じた耐塩水噴霧性試験(200時間)を行い、下記の基準で防錆性を評価した。
◎:錆び幅1mm以下、
○:錆び幅1〜3mm、
△:錆び幅3mm、
×:全面錆び。
<防錆性>
JIS K−5400に準じた耐塩水噴霧性試験(200時間)を行い、下記の基準で防錆性を評価した。
◎:錆び幅1mm以下、
○:錆び幅1〜3mm、
△:錆び幅3mm、
×:全面錆び。
<付着性>
JIS K−5400に準じた碁盤目試験を行い、下記の基準で金属への付着性を評価した。
◎:100/100、
○:80〜99/100、
△:50〜79/100、
×:50未満/100。
JIS K−5400に準じた碁盤目試験を行い、下記の基準で金属への付着性を評価した。
◎:100/100、
○:80〜99/100、
△:50〜79/100、
×:50未満/100。
<耐水二次密着性>
上記のように作製した試験板を、水道水に168時間浸漬し、浸漬後、23℃の恒温室中で24時間乾燥させた。乾燥後、付着性試験と同様の試験を行い、耐水二次密着性試験とした。
(判定基準)
○:剥がれが全く見られない、
△:カット部の交点でやや剥がれが見受けられる、
×:セロハン粘着テープ接着部の全面剥離が見られる。
上記のように作製した試験板を、水道水に168時間浸漬し、浸漬後、23℃の恒温室中で24時間乾燥させた。乾燥後、付着性試験と同様の試験を行い、耐水二次密着性試験とした。
(判定基準)
○:剥がれが全く見られない、
△:カット部の交点でやや剥がれが見受けられる、
×:セロハン粘着テープ接着部の全面剥離が見られる。
上記で作製した塗料の貯蔵安定性を下記の基準で目視評価した。それらの結果は第1表に示す通りであった。
<塗料安定性>
◎:良好に塗料化でき、貯蔵安定性も良好である、
○:問題なく塗料化できる、
△:塗料化できるが貯蔵安定性に問題がある、
×:塗料化が困難である。
<塗料安定性>
◎:良好に塗料化でき、貯蔵安定性も良好である、
○:問題なく塗料化できる、
△:塗料化できるが貯蔵安定性に問題がある、
×:塗料化が困難である。
なお、第1表中の略号の化合物は次の通りである。
ST:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
GMA:グリシジルメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
DE:ジメチルアミノエチルメタクリレート
KH−10:アクアロンKH−10
NF−13:ハイテノールNF−13
EA−187:ノイゲンEA−187
ST:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
GMA:グリシジルメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
DE:ジメチルアミノエチルメタクリレート
KH−10:アクアロンKH−10
NF−13:ハイテノールNF−13
EA−187:ノイゲンEA−187
第1表に示すデータから明らかなように、本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションは重合安定性に優れており、また、本発明の防錆用塗料組成物は塗料安定性、防錆性、付着性、二次密着性ともに優れている。一方、カチオン性官能基含有単量体とカルボキシル基含有単量体とを混合物として同時に滴下した比較例1の場合には重合安定性が極めて悪く、安定なエマルションが得られなかった。得られた異相構造粒子含有エマルションの異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量は異相構造粒子の全単量体単位の10質量%を超えている比較例2の場合及び乳化物(A)及び(B)の何れにもカチオン性官能基含有単量体が含まれていない比較例3の場合には重合安定性、塗料安定性に優れた異相構造粒子含有エマルションが得られたものの、防錆性、付着性が好ましくなかった。また、乳化物(A)及び(B)の何れにもカルボキシル基含有単量体が含まれていない比較例4の場合には塗料化時の機械的安定性、化学的安定性に欠け、安定な塗料が得られなかった。
これらの結果から、本発明で用いる異相構造粒子含有エマルションは異相構造粒子表面がアニオン性の界面活性剤で覆われていることから良好な安定性が得られ、カチオン性官能基とカルボキシル基が膜形成時に強固な膜を形成して、防錆性、付着性、耐水性の良好な塗膜を形成し得る。
Claims (4)
- アニオン性界面活性剤の存在下での多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いた防錆用塗料組成物であって、
該異相構造粒子の少なくとも1相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、
該異相構造粒子の少なくとも1相が、カルボキシル基含有単量体と、カチオン性官能基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されており、
更に、異相構造粒子中のカチオン性官能基含有単量体単位とカルボキシル基含有単量体単位との合計量が異相構造粒子の全単量体単位の10質量%未満である、
ことを特徴とする防錆用塗料組成物。 - 異相構造粒子の最外相が、カチオン性官能基含有単量体と、カルボキシル基含有単量体以外のその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体とを乳化重合させて得られる共重合体で形成されていることを特徴とする請求項1記載の防錆用塗料組成物。
- 異相構造粒子を構成する各相の少なくとも1相の共重合体が内部架橋構造を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の防錆用塗料組成物。
- 異相構造粒子中の「カチオン性官能基含有単量体単位」:「カルボキシル基含有単量体単位」の質量比が1〜4:1であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の防錆用塗料組成物。
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