JP2008280920A - 可変容量圧縮機用制御弁 - Google Patents

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Shinji Saeki
真司 佐伯
Iku Kobayashi
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Abstract

【課題】デューティ制御の制御弁において、振動時の共振により弁体に加わる共振加速度を抑制しつつ、制御特性のヒステリシスの増加をも抑制する。
【解決手段】可変容量圧縮機用制御弁1の共振によって各弁体の振動の振幅が所定の微少振幅範囲を超えると、共振抑制部材50が各弁体に対して摺動抵抗を付与するため、各弁体に加わる共振加速度を抑制できる。一方、ソレノイド3に供給するパルス電流のデューティ制御が行われるため、可変容量圧縮機用制御弁1の通常の制御状態においては各弁体を上記微少振幅範囲よりも小さい振幅で微少振動させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は可変容量圧縮機用制御弁に関し、特に自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機の吐出容量を制御するのに好適な可変容量圧縮機用制御弁に関する。
自動車用空調装置の冷凍サイクルには、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機が用いられている。この可変容量圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力は、可変容量圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられたソレノイド駆動の可変容量圧縮機用制御弁(以下、単に「制御弁」ともいう)により制御される。
このような制御弁は、ソレノイドの電磁コイルに設定容量に対応した値の電流が供給され、そのとき発生したソレノイド力により弁体が動作することによって弁部の開度を調整する。その弁開度特性のヒステリシスを低減するために、400Hz程度のパルス電流を供給するとともに、制御弁の制御状態における可動部の固有振動数をこれに近づけて容量制御を行うものもある(例えば特許文献1参照)。
このような制御弁は、デューティ比に応じたソレノイドへの平均電流値によって弁体に作用するセット荷重が設定され、可変容量圧縮機から吐出される冷媒の容量を制御する。例えばソレノイドの非通電時に開弁状態となる常開型の制御弁を用いる場合、可変容量圧縮機を最少容量で運転したいときには、デューティ比を最小にして弁体のリフト量を最大にし、吐出室からクランク室へ流れる冷媒の流量を最大に制御する。逆に可変容量圧縮機を最大容量で運転したいときには、デューティ比を最大にしてリフト量を最小(閉弁状態)にし、吐出室からクランク室へ流れる冷媒の流量をゼロにする。
特開2005−171908号公報〔段落[0026]等〕
しかしながら、このような制御弁の可動部の固有振動数が、エンジンの駆動状態における車両振動時の周波数に一致した場合、弁体を含む可動部が共振し、その共振加速度が大きくなって容量制御の信頼性が低下するといった問題があった。すなわち、弁体やプランジャといった可動部の位置によってこれらを付勢するスプリングの剛性も変わり得るため、上述した制御状態での固有振動数よりも低い周波数にて共振が発生する場合がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、デューティ制御の制御弁において、振動時の共振により弁体に加わる共振加速度を抑制しつつ、制御特性のヒステリシスの増加をも抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の可変容量圧縮機用制御弁は、ソレノイドをパルス電流にて駆動して弁体を動作させ、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量、およびクランク室から吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して可変容量圧縮機の吐出容量を変化させるものである。この可変容量圧縮機用制御弁は、弁部の開閉方向に振動する弁体に対し、ソレノイド内にて得た摺動抵抗を伝達可能な共振抑制部材と、共振抑制部材が得た摺動抵抗にかかわらず、弁体の振動を所定の微少振幅範囲内で許容する抑制解除構造と、を備える。
ここでいう「所定の微少振幅範囲」は、少なくとも可変容量圧縮機用制御弁の非共振時において、ヒステリシス抑制のための弁体の微少振動の振幅を許容できる範囲として設定してよい。
この態様によれば、可変容量圧縮機用制御弁の被設置対象との共振によって弁体の振動の振幅が所定の微少振幅範囲を超えると、共振抑制部材が弁体に対して摺動抵抗を伝達するため、弁体に加わる共振加速度を抑制できる。一方、ソレノイドに供給するパルス電流のデューティ制御が行われるため、可変容量圧縮機用制御弁の通常の制御状態においては、弁体を上記微少振幅範囲内で上記摺動抵抗を実質的に受けることなく微少振動させることができる。それにより、制御特性のヒステリシスの増加をも抑制できる。
本発明によれば、デューティ制御の制御弁において、振動時の共振により弁体に加わる共振加速度を抑制しつつ、制御特性のヒステリシスの増加をも抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。 可変容量圧縮機用制御弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機に組み込まれる。この冷凍サイクルは、冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する可変容量圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備える。冷媒には例えば代替フロン(HFC−134a)などが使用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いてもよい。その場合には、凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器を配置してよい。
可変容量圧縮機用制御弁1は、可変容量圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒の流量と、クランク室から吸入室へ注気する冷媒の流量とを連動して制御する三方弁の構造を有し、吸入圧力Psを設定圧力に保つように容量制御を行ういわゆるPs感知弁として構成されている。可変容量圧縮機用制御弁1は、内部に弁部を備えた弁本体2と、その弁本体2に一体に組み付けられて弁部を開閉させるソレノイド3とを含んで構成される。 弁本体2は、内部に冷媒通路が形成された段付円筒状のボディ5を備える。ボディ5の上端開口部には、図示しない可変容量圧縮機の吐出室に連通して吐出圧力Pdを導入するポート6が設けられている。また、ボディ5の側部には、上から順に、可変容量圧縮機のクランク室に連通して制御された圧力(「クランク圧力」という)Pcを導出入するポート7,8、吸入室に連通して吸入圧力Psを導入するポート9が形成されている。
ポート6とポート7とはボディ5の内部で連通しており、両ポートをつなぐ冷媒通路に第1の弁部が設けられている。吐出室からポート6を介して導入された冷媒は、第1の弁部およびポート7を介してクランク室へ導出される。一方、ポート8とポート9とはボディ5の内部で連通しており、両ポートをつなぐ冷媒通路に第2の弁部が設けられている。クランク室からポート8を介して導入された冷媒は、第2の弁部およびポート9を介して吸入室へ導出される。すなわち、可変容量圧縮機においては、クランク圧力Pc1をクランク室へ導入する冷媒通路と、クランク圧力Pc2をクランク室から導出する冷媒通路とが分離されることにより、クランク室に導入出されるオイルの循環を良好に保っている。
ポート6とポート7とを連通する冷媒通路には弁孔11が設けられている。弁孔11のポート6側の開口端部には、弁座12がボディ5に一体に形成されている。また、その弁座12に吐出室側から対向するようにボール状の弁体13(第1の弁体)が配設されている。弁体13は、弁座12とともに第1の弁部を構成する。さらに、ボディ5の軸線に沿って弁孔11に対向するようにガイド孔15が形成され、そのガイド孔15に長尺状の作動ロッド16が摺動可能に挿通されている。作動ロッド16の上端部に設けられた縮径部の先端により弁体13が支持されている。弁体13は、作動ロッド16に連動してその軸線方向に沿って弁座12に接離自在に動作し得る。
ボディ5の上端開口部にはばね受け部材17が螺着されており、そのばね受け部材17と弁体13との間には、弁体13を閉弁方向に付勢する付勢手段としてのスプリング18が介装されている。スプリング18の荷重は、ばね受け部材17のボディ5への螺入量により調整可能となっている。ボディ5の上端部には、その上端開口部を覆うようにストレーナ19が嵌着され、外部からのゴミ等の流入を防止している。
また、ポート8とポート9とを連通する冷媒通路には弁孔21が設けられている。弁孔21のポート9側の開口端部には、弁座22がボディ5に一体に形成されている。作動ロッド16の下端部は弁孔21を貫通しており、その弁孔21の近傍位置がやや拡径されて段付円柱状の弁体23(第2の弁体)が形成されている。弁体23は、弁座22に吸入室側から対向するように配設され、弁座22とともに第2の弁部を構成する。作動ロッド16の下端部に設けられた拡径部とボディ5との間には、作動ロッド16を下方(第2の弁部の開弁方向)に付勢するスプリング24が介装されている。ボディ5の下端開口部には、ポート9に連通して吸入圧力Psが導入される圧力室が形成されている。
ソレノイド3は、ヨークとしても機能するケース30と、ケース30内に配設された段付円筒状のボビン31と、ボビン31に巻回された電磁コイル32と、ボビン31の上半部に挿通された円筒状のスリーブ33と、ボビン31の下半部に内挿されて固定されたコア34と、スリーブ33に挿通されるとともにコア34と軸線方向に対向配置されたプランジャ35とを含んで構成されている。
ケース30は、その上端部が加締められてボディ5に固定され、下端部にはソレノイド3の内部を下方から封止するように樹脂製の取っ手36が設けられている。取っ手36には、磁性材料からなるリング状のプレート37がモールドされている。このプレート37は、ケース30とともに磁気回路を形成する。さらに、取っ手36を貫通するように設けられた孔に、シール用のゴムブッシュ38を介してハーネス39が挿通されている。ハーネス39は、一方で電磁コイル32に接続されるとともに、他方で図示しない外部電源に接続される。外部電源からは400Hz程度のパルス電流が所定のデューティ比で出力され、ハーネス39を介して電磁コイル32に供給される。
スリーブ33は、非磁性材料からなり、その内面がプランジャ35の摺動面(「内部摺動面」に該当する)を形成する。ボディ5とケース30との間には、両者の内部を仕切るようにダイヤフラム40が介装されている。ダイヤフラム40は、可撓性を有する感圧部材であり、ポリイミドフィルムを複数枚重ねて構成されている。ダイヤフラム40の存在により、吸入圧力Psはソレノイド3の内部には導入されない。なお、ダイヤフラム40は、例えばベリリウム銅やステンレス鋼等の金属薄板により構成されてもよい。
プランジャ35は、コア34の中心を軸線方向に延びるシャフト43の一端に圧入されている。シャフト43の他端は、取っ手36に内挿配置された軸受部材44によって支持されている。シャフト43の途中には止輪45が嵌合され、その止輪45によって上方への移動が規制されるようにばね受け46が設けられている。ばね受け46と軸受部材44との間には、プランジャ35をシャフト43を介してコア34から離れる方向へ付勢するスプリング48が介装されている。このスプリング48の荷重は、取っ手36に対する軸受部材44の螺入量を変えることによって調整することができる。プランジャ35は、ダイヤフラム40を介して作動ロッド16に一体に接続される。
プランジャ35の軸線方向略中央の外周部には凹部55が設けられ、その凹部55にリング状の共振抑制部材50が配設されている。この共振抑制部材50は、同心状に重畳配置された滑動部材51およびスプリング52(「付勢部材」に該当する)を含んで構成され、スリーブ33の内部摺動面を内方から押圧し、その反力によって摺動抵抗を得るものであるが、その詳細については後述する。
図2は、共振抑制部材を構成する滑動部材の構成を表す図である。(A)はその平面図を表し、(B)はその正面図を表している。図3は、共振抑制部材を構成するスプリングの構成を表す図である。(A)はその平面図を表し、(B)はその正面図を表している。さらに、図4は、共振抑制部材の取り付け後のプランジャを表す断面図である。同図は、プランジャ35をソレノイド3内に組み付ける前の状態を表している。
図2に示すように、滑動部材51は、所定の高さ(軸線方向の長さ)を有する略円形状のリングにおいて周方向の1カ所が開放されたいわゆるCリングの構成を有し、その開放部53においてやや外側に広がっているが、半径方向内向きに撓ませることができる。滑動部材51は、ステンレス等の金属部材よりも摩擦係数が小さい樹脂部材からなり、スリーブ33の内部摺動面に当接したときの摺動抵抗を適度に緩和する。この樹脂部材としては、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂を採用することができるが、このような樹脂によるコーティングなどの表面処理が施されたものでもよい。
図3に示すように、スプリング52は、ステンレス等の金属薄板を円形に曲げ加工して形成されたCリングの構成を有する。スプリング52は、その開放部54においてやや外側に広がっているが、半径方向内向きに撓ませることができる。共振抑制部材50は、スプリング52を滑動部材51の内側に嵌合させることにより2重のリングとして構成される。スプリング52は、滑動部材51とほぼ同じ高さを有し、滑動部材51を内側から外方に付勢する。つまり、スプリング52は、滑動部材51の外方への弾性復帰力を補うように機能する。本実施の形態において、滑動部材51およびスプリング52が弾性部材として機能する。
図4に示すように、滑動部材51とスプリング52とが重畳された共振抑制部材50は、プランジャ35の外周面に形成された凹部55に嵌合される。凹部55は、プランジャ35の周囲にわたって形成されており、滑動部材51およびスプリング52の各半径方向の厚みを合わせた程度の深さを有する。図示のように、共振抑制部材50の弾性力により、その外周面(つまり滑動部材51の外周面)は、プランジャ35の側面から所定量突出する。共振抑制部材50が内方に弾性変形された状態でソレノイド3の内部に組み込まれると、その反力の作用により滑動部材51の外周面がスリーブ33の内部摺動面を押圧するように当接する。一方、滑動部材51の外周面の摩擦係数が比較的小さくされているため、共振抑制部材50は適度な摺動抵抗を得られるようになっている。
また、共振抑制部材50の高さhは、凹部55の幅wよりも所定量小さく形成されており、両者の間にはその軸線方向に所定の大きさのクリアランスclが形成されるようになっている。プランジャ35は、クリアランスclの範囲で共振抑制部材50に相対的に変位できる。すなわち、共振抑制部材50が得た摺動抵抗の影響を実質的に受けることなく、プランジャ35ひいては各弁体の微少振動が許容される。このように、クリアランスclにより各弁体の振動を所定の微少振幅範囲で許容する抑制解除構造が形成される。このクリアランスclは、可変容量圧縮機用制御弁1の非共振時における各弁体の振動の振幅よりも大きく設定されているため、その非共振時において各弁体の動きを阻害することはない。一方、可変容量圧縮機用制御弁1の被設置対象(この場合は可変容量圧縮機ひいては車両)の振動との共振によって各弁体の振動の振幅がクリアランスclの大きさを超えると、共振抑制部材50を介して各弁体に摺動抵抗に基づく振動抑制力が作用するため、各弁体に加わる共振加速度を抑制できる。
以上のように構成された可変容量圧縮機用制御弁1において、ソレノイド3がオンにされて電磁コイル32に最大の電流が供給されると、プランジャ35がコア34に吸引され、弁体13がスプリング18の付勢力等によって弁座12に着座する。このため、第1の弁部が全閉状態となる。一方、弁体13とともに作動ロッド16が下方へ変位するため、弁体23が弁座22から離間して第2の弁部が全開状態となる。これにより、クランク室側から吸入室側への注気が促進されるため、可変容量圧縮機は速やかに最大容量運転へ移行する。
ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態においては、スプリング48の付勢力により弁体13が弁座12からリフトして第1の弁部を所定量開弁させる。弁体13のリフト量は、ソレノイド3によるソレノイド力によって設定されるが、そのソレノイド力は、電磁コイル32へ供給するパルス電流をデューティ制御することによって外部から設定変更可能となっている。すなわち、パルス電流のデューティ比を大きくしてその平均電流値を増やすと、プランジャ35とコア34との間の吸引力が大きくなってリフト量が小さくなり、逆にデューティ比を小さくしてその平均電流値を減らすとリフト量は大きくなる。
ここで、吸入圧力Psが低くなると、ダイヤフラム40が上方へ変位して弁体13を開弁方向に動作させる。これにより、クランク室に供給される冷媒流量が増えてクランク圧力Pcが高くなり、吐出容量が低減されて吸入圧力Psが高くなるように変化する。逆に、吸入圧力Psが高くなると、ダイヤフラム40が下方へ変位して弁体13を閉弁方向に動作させる。これにより、クランク室に供給される冷媒流量が減少してクランク圧力Pcが低くなり、吐出容量が増加されて吸入圧力Psが低くなるように変化する。つまり、弁体13は、吸入圧力Psが設定圧力となるように自律的に動作する。
この可変容量圧縮機用制御弁1において、ソレノイド3のオン・オフ状態にかかわらず、その可動部の共振によって各弁体の振動の振幅がクリアランスclの大きさを超えると、共振抑制部材50が受ける摺動抵抗によりプランジャ35ひいては各弁体の振動が抑制される。
以上に説明したように、本実施の形態においては、可変容量圧縮機用制御弁1の共振によって各弁体の振動の振幅が所定の微少振幅範囲を超えると、共振抑制部材50が各弁体に対して摺動抵抗を伝達するため、各弁体に加わる共振加速度を抑制できる。これにより、例えば弁体が弁座近傍の位置で制御されているときに弁座に衝突して跳ね上がり、その制御特性を不安定にするといった現象も回避できる。一方、ソレノイド3に供給するパルス電流のデューティ制御が行われるため、可変容量圧縮機用制御弁1の通常の制御状態においては各弁体を上記微少振幅範囲内で微少振動させることができる。それにより、制御特性のヒステリシスの増加をも抑制できる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁は、容量制御の方式が第1の実施の形態と異なるが、同様の共振抑制部材を備える点において共通する。以下においては、第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。
図5は、第2の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。 可変容量圧縮機用制御弁201は、可変容量圧縮機の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)を設定差圧に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPd−Ps差圧弁として構成されている。弁本体202のボディ205の側部には、弁部にて制御されたクランク圧力Pcを導出するポート7が設けられているが、クランク圧力Pcを導入するポートは設けられていない。
ボディ205の上部においてポート6とポート7とを連通する冷媒通路には、段付円筒状の弁座形成部材210が圧入されており、その内部通路により弁孔11が形成されている。弁座形成部材210のクランク室側の端面により弁座12が形成されている。弁座12にクランク室側から対向して、長尺状の作動ロッド216の一端部からなる弁体13が接離自在に配置されている。
ボディ205の中央部にはガイド孔20が形成され、作動ロッド216は、ガイド孔20に摺動可能に軸支されている。弁体13は、弁孔11の下流側でクランク室に連通する圧力室に配置され、その先端面の外周縁が弁座12に着脱することにより弁孔11を開閉する。作動ロッド216の下端部に固定された止輪217とボディ205の下端面との間には、作動ロッド216をソレノイド203側、つまり開弁方向に付勢するスプリング24が介装されている。
ボディ205とソレノイド203とにより囲まれた内部空間は、ポート9に連通して吸入圧力Psが導入される圧力室を形成する。吸入圧力Psは、ソレノイド203の内部にも導入される。
一方、ソレノイド203は、軸線方向に並設されたコア234、プランジャ235の位置関係が第1の実施の形態と逆になっており、コア234の下方にプランジャ235が配設されている。
コア234の中央には、シャフト243が軸線方向に貫通している。コア234の上端開口部にはリング状の軸受部材244が圧入されており、シャフト243の上端部を摺動可能に支持している。軸受部材244には、ポート9を介して導入された吸入圧力Psをソレノイド203の内部に導く図示しない連通孔が設けられている。
コア234には、スリーブ233が外挿されている。スリーブ233内においては、プランジャ235がコア234の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。スリーブ233は、非磁性材料からなり、その内面がプランジャ235の摺動面(内部摺動面)を形成する。
プランジャ235は、その上部がシャフト243の下半部に圧入されている。プランジャ235とコア234との間には、プランジャ235をコア234から離間させる方向に付勢するスプリング245が介装されている。また、プランジャ235と軸受部材44との間には、プランジャ235を閉弁方向に付勢するスプリング48が介装されている。
以上の構成において、作動ロッド216の径は弁孔11の内径よりもやや大きいものの、ほぼ同じ大きさを有するため、開弁時においてはポート7から導入されたクランク圧力Pcがほぼキャンセルされる。このため、弁体13には、ほぼ弁孔11の大きさの受圧面積に対して吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が実質的に作用する。弁体13は、差圧(Pd−Ps)がソレノイド203に供給された制御電流にて設定された設定差圧に保持されるように動作する。この制御電流は、第1の実施の形態と同様に外部からパルス電流として供給される。
本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の共振抑制部材50がプランジャ235の下端近傍の外周面に設けられている。すなわち、プランジャ235にも図4にて示したような凹部55が形成され、共振抑制部材50が軸線方向に所定のクリアランスを形成しつつ嵌合している。したがって、制御方式は異なるものの、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記各実施の形態では、共振抑制部材50を滑動部材51およびスプリング52を重畳して構成した例を示した。変形例においては、適度な摺動抵抗が得られる限り、滑動部材51およびスプリング52のいずれか一方により共振抑制部材を構成してもよい。
上記各実施の形態では、リング状の共振抑制部材50をソレノイドのプランジャの外周部に設けた例を示した。変形例においては、プランジャ以外の可動部、つまり弁体と一体に動作する部材の少なくともいずれかに同様の共振抑制部材を設けるようにしてもよい。また、共振抑制部材は、リング状に形成される必要はなく、弁体に対して直接または間接的に軸線方向の摺動抵抗を伝達できるものであればよい。
上記各実施の形態では、滑動部材51とスプリング52の高さを等しくしたが、互いに異なる高さに構成してもよい。その場合、高い側の部材と凹部55との間に軸線方向のクリアランスclを確保するとよい。
第1の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。 共振抑制部材を構成する滑動部材の構成を表す図である。 共振抑制部材を構成するスプリングの構成を表す図である。 共振抑制部材の取り付け後のプランジャを表す断面図である。 第2の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 可変容量圧縮機用制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 11 弁孔、 12 弁座、 13 弁体、 16 作動ロッド、 21 弁孔、 22 弁座、 23 弁体、 32 電磁コイル、 33 スリーブ、 34 コア、 35 プランジャ、 40 ダイヤフラム、 43 シャフト、 50 共振抑制部材、 51 滑動部材、 52 スプリング、 53 開放部、 54 開放部、 55 凹部、 201 可変容量圧縮機用制御弁、 202 弁本体、 203 ソレノイド、 205 ボディ、 210 弁座形成部材、 216 作動ロッド、 233 スリーブ、 234 コア、 235 プランジャ、 243 シャフト。

Claims (7)

  1. ソレノイドをパルス電流にて駆動して弁体を動作させ、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量、および前記クランク室から吸入室へ導出する冷媒流量の少なくとも一方を制御して可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁において、
    弁部の開閉方向に振動する前記弁体に対し、前記ソレノイド内にて得た摺動抵抗を伝達可能な共振抑制部材と、
    前記共振抑制部材が得た摺動抵抗にかかわらず、前記弁体の振動を所定の微少振幅範囲内で許容する抑制解除構造と、
    を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
  2. 前記ソレノイドは、内部に固定されたコアと、前記コアに軸線方向に対向配置されて変位し、前記弁体に対してソレノイド力を伝達するプランジャと、前記パルス電流の供給により前記コアと前記プランジャとの間に前記ソレノイド力を発生させる電磁コイルとを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
  3. 前記共振抑制部材は、前記プランジャの外周部に設けられて前記ソレノイドの内部摺動面を内方から押圧し、その反力によって前記摺動抵抗を得るように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
  4. 前記共振抑制部材は、内方に弾性変形された状態で前記ソレノイドの内部に組み込まれることにより、その反力によって前記内部摺動面を押圧する弾性部材を含んで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
  5. 前記共振抑制部材は、前記弾性部材として、前記内部摺動面との摺動抵抗を緩和して滑動する滑動部材と、その滑動部材の内側からこれを前記内部摺動面へ向けて付勢する付勢部材とを含んで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
  6. 前記弾性部材は、前記プランジャの外周面に形成された凹部に嵌合され、
    前記弾性部材と前記凹部との軸線方向のクリアランスにより前記抑制解除構造が形成されていること、
    を特徴とする請求項4に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
  7. 前記クリアランスが、当該可変容量圧縮機用制御弁の非共振時における前記弁体の振動の振幅よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項6に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
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