JP2008227321A - 熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換モジュール - Google Patents

熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】ハーフホイスラー化合物を主相とする材料において、高いゼーベック係数と低い抵抗率とを維持しつつ熱伝導率を十分に低減して、無次元性能指数ZTの大きな熱電変換材料、およびこれを用いた熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】組成式(TiPZrQHfR)XNiY(Sn1-SSbS)1-X-Y(P+Q+R=1、0.3≦P≦0.7、0<Q<1、0<R<1、0.003<S<0.01、0.30≦X≦0.35、0.30≦Y≦0.35)にて表され、かつMgAgAs型結晶構造を有する相が主相であるようにして熱電変換材料を構成し、さらに前記熱電変換材料から前記熱電変換モジュールを得る。
【選択図】図2

Description

本発明は熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換モジュールに関する。
近年、地球環境問題に対する意識の高揚から、フロンレス冷却機器であるペルチェ効果を利用した熱電変換モジュールに関する関心が高まっている。また、同様に、二酸化炭素排出量を削減するために、未利用廃熱エネルギーを使った発電システムを提供する、ゼーベック効果を利用した熱電変換装置に関する関心が高まっている。これら熱電変換装置はいずれもp型熱電変換材料とn型熱電変換材料とを交互に直列接続した熱電変換モジュールを具備する。
ペルチェ効果やゼーベック効果を利用した熱電変換モジュールは、一般的にp型の熱電変換材料を含むp型材料とn型の熱電変換材料を含むn型材料とを交互に直列に接続して形成されている。現在、室温付近で利用されている熱電変換材料は、効率の高さから、Seを含有するBi−Te系の単結晶または多結晶体を使用したものが多い。また、室温より高温で使用される熱電変換材料には、やはり効率の高さから、Pb−Te系が用いられている。
しかしながら、これらの熱電変換モジュールに用いられている、Se(セレン)、Pb(鉛)は人体にとって有毒有害であり、また地球環境問題の観点からも好ましくない。さらにTe(テルル)は地球上の埋蔵量が非常に少なく、資源として供給上の困難がある。このため、Bi−Te系、Pb−Te系材料に代わる無害な材料の検討がなされている。このような点に対して、MgAgAs型結晶構造を有する相(以下、MgAgAs型結晶相と記す)を主相とする材料(以下、ハーフホイスラー材料と呼ぶ)が注目されている。
ハーフホイスラー化合物は、化学式ABXで表わされ、立方晶系のMgAgAs型結晶構造の金属間化合物であり、AXのNaCl型結晶格子にB原子が挿入された構造である。こうした構造を有する化合物は室温で高いゼーベック係数を有し、例えばTiNiSnは−142μV/K、ZrNiSnは−176μV/K、また、HfNiSnは−124μV/Kと報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、熱電変換材料の変換効率を示すパラメータとして性能指数Zがあり、下記数式(1)式で表される。
Z=α/(ρ・κ) …(1)
上記数式(1)中、αは熱電変換材料のゼーベック係数、ρは熱電変換材料の電気抵抗率であり、κは熱電変換材料の熱伝導率である。数式(1)中のα/ρはパワーファクターと呼ばれる。
Zは温度の逆数の次元を有し、この性能指数Zに絶対温度Tを乗ずると無次元の値となる。この値ZTは、無次元性能指数と呼ばれ、熱電変換材料の熱電変換効率に相関関係を有しており、ZTの大きな材料ほど熱電変換効率は大きくなる。上記した(1)式から分かるように、高いZT値を持つ熱電変換材料を実現するためには、より高いゼーベック係数α、より低い電気抵抗率ρ、より低い熱伝導率κを有する熱電変換材料が求められる。
上述したハーフホイスラー材料の中でも、(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系材料は高い熱電特性が得られており、熱電変換材料として有望である。例えばSnの一部をSbで置換した(Ti0.50Zr0.25Hf0.25)Ni(Sn0.990Sb0.010)では、無次元性能指数は1.22と報告されている。これはBi−Te系の無次元性能指数1.0を上回っている(特許文献1)。しかし、さらに大きなZTを有する熱電変換材料の開発が望まれている。
J.Phys.:Condens.Matter 11,1697−1709(1999) 特開2004-356607号公報
本発明は(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系ハーフホイスラー材料において、従来の(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系ハーフホイスラー材料より無次元性能指数ZTの大きな熱電変換材料、およびこれを用いた熱電変換モジュールを提供することにある。
本発明の一態様に係る熱電変換材料は、
組成式(TiPZrQHfR)XNiY(Sn1-SSbS)1-X-Y(P+Q+R=1、0.3≦P≦0.7、0<Q<1、0<R<1、0.003<S<0.01、0.30≦X≦0.35、0.30≦Y≦0.35)にて表され、かつMgAgAs型結晶構造を有する相(MgAgAs型結晶相)を主相であること特徴としている。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系ハーフホイスラー材料に対してSbを添加するとともに、その含有量を特定の範囲、すなわち0.003原子%を超え0.01原子%を超えない範囲に設定し、かつその他の構成元素の含有量を調節し、全体の結晶構造がMgAgAs型結晶相となるようにすることによって、極めて高いゼーベック係数を呈し、その結果極めて高い無次元性能指数ZTが得られることが判明した。したがって、このような材料から熱電変換材料を構成することにより、無次元性能指数ZTの大きな熱電変換材料、およびこれを用いた熱電変換モジュールを提供することができる。
また、本発明の一態様に係る熱電変換モジュールは、上記熱電変換材料をp型熱電変換材料及びn型熱電変換材料から構成することを特徴としており、具体的には、第1の電極と、一端が前記第1の電極に接続されたp型熱電変換材料と、前記p型熱電変換材料の他端に接続された第2の電極と、一端が前記第2の電極に接続されたn型熱電変換材料と、前記n型熱電変換材料の他端に接続された第3の電極とを具備する熱電変換モジュールにおいて、前記p型熱電変換材料および前記n型熱電変換材料の少なくとも一方を上記熱電変換材料から構成することを特徴とする。
以上、本発明によれば、(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系ハーフホイスラー材料において、従来の(Ti,Hf,Zr)-Ni-Sn系ハーフホイスラー材料より無次元性能指数ZTの大きな熱電変換材料、およびこれを用いた熱電変換モジュールを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(熱電変換材料)
本発明の一実施形態による熱電変換材料は、
組成式:(TiPZrQHfR)XNiY(Sn1-SSbS)1-X-Y …(2)
(式中、P+Q+R=1、0.3≦P≦0.7、0<Q<1、0<R<1、0.003<S<0.01、0.30≦X≦0.35、0.30≦Y≦0.35)にて表され、かつMgAgAs型結晶構造を有する相(MgAgAs型結晶相)を主相としている。
図1は、立方晶系、MgAgAs型構造を有するハーフホイスラー化合物ABXの結晶構造を示したものである。図1中、参照符号1,2,3は、それぞれAサイト元素、Bサイト元素及びXサイト元素を表し、参照符号4は空孔サイトを表す。MgAgAs型結晶構造はAサイト原子とXサイト原子によるNaCl型結晶格子にBサイト原子が挿入された結晶構造を有する。Bサイト原子としてNiを用いたNi系ハーフホイスラー化合物は、ゼーベック係数の増大により熱電特性の向上を図るために1原子当りの価電子数を6に近い値に調整する必要がある。Niの価電子数は10である。そのためAサイト原子には価電子数4のTi,Zr,Hfを用いる。また、Xサイト原子としてSnを用いる。
次に、本発明の実施形態にかかる熱電変換材料(Ni系ハーフホイスラー材料)について詳述する。この実施形態の熱電変換材料において、MgAgAs型結晶相(ハーフホイスラー相)は熱電特性を担う相であり、これを主相としている。ここで、主相とは熱電変換材料を構成する全ての結晶相および非晶質相の総量に対して最も体積占有率が大きい相を指すものである。ハーフホイスラー相の体積含有率が50%以上の場合には高い熱電特性を得ることができ、より好ましくは90%以上である。
なお、体積占有率は、例えば熱電変換材料の表面を鏡面研磨した後、電子顕微鏡を用い、電子線回折およびエネルギー分散型X線分析を用いハーフホイスラー相を同定し、面積占有率から求めるとより厳密に判るが、簡便には、焼結体を粉末化し、粉末X線回折に供して生成相を同定しハーフホイスラー相に由来する回折線強度が他の結晶相に由来する回折線強度より大きいことで判定できる。
ハーフホイスラー相を主相とするNi系ハーフホイスラー材料を実現する上で、(2)式のXおよびYの値はいずれも0.30〜0.35の範囲とする。(2)式において、Xで表される(Ti,Zr,Hf)の総量およびYで表されるNi量が上記した範囲を逸脱すると、ハーフホイスラー相以外の相の析出量が多くなり、熱電特性とりわけゼーベック係数αが劣化する。XおよびYの値は0.33〜0.34の範囲とすることがさらに好ましい。
Ni系ハーフホイスラー材料の熱電変換特性を大きくするにあたって、Ti、Zr、Hfの比率を適正化することが重要となる。この実施形態の熱電変換材料においては、Ti量を表す(2)式でのPの値は0.3以上0.7以下の範囲(0.3≦P≦0.7)としている。この範囲内でNi系ハーフホイスラー材料の熱電特性、とりわけゼーベック係数αが増大し、熱伝導率κが低下する。Ti量Pが0.3より小さい場合、または、Ti量Pが0.7より大きい場合はゼーベック係数αが低下し無次元性能指数ZTが小さくなり好ましくない。
また、Zr量及びHf量は、その含有割合Q及びRがそれぞれ0<Q<1、0<R<1を満足することが必要であるが、好ましくは0.1≦Q≦0.6及び0.1≦R≦0.6とする。
Ni系ハーフホイスラー材料の熱電変換特性を大きくするにあたって、図1でXサイトを占有するSnの一部をSbで置換することが重要となる。この実施形態の熱電変換材料においては、Sb量を表す(2)式でのSの値は0.003を越え0.010を超えない範囲(0.003<S<0.010)としている。これは以下の理由による。
Snの一部をSbで置換していないNi系ハーフホイスラー材料の組成は以下の式で表される。
組成式:(TiPZrQHfR)XNiYSn1-X-Y …(3)
(式中、P+Q+R=1、0≦P≦1、0≦Q≦1、0≦R≦1、0.30≦X≦0.35、0.30≦Y≦0.35)
(3)式で表されるSnの一部をSbで置換していないNi系ハーフホイスラー材料は、フェルミ面近傍で価電子バンドと伝導バンドの間にバンドギャップが存在する。そのため抵抗率ρは大きく、(1)式から判るように無次元性能指数ZTはあまり大きくならない。前述したようにSnの価数は4価である。一方Sbの価数は5価である。(2)式で表されるようにSnの一部をSbで置換すると、価数の違う元素で置換されるため導電キャリアが生成し抵抗率が下がる。(2)式でSが大きくなるほど抵抗率は低下する。
しかし、キャリア濃度とゼーベック係数αには(4)式の関係がある。
Z=(kB/e) (A + ln2(2pm*kBT)1.5/h3n) …(4)
ここに、kB、e、A、m*、T、h、nは、各々、ボルツマン定数、電子電荷、散乱に関する項、有効質量、温度、プランク定数、キャリア濃度である。(4)式から判るようにキャリア濃度nが大きくなるほどゼーベック係数αは小さくなる。
ゼーベック係数αの二乗を抵抗率で除した値をパワーファクターという(以下PFと記す)。(1)式は以下のように記載できる。
Z=PF/κ …(5)
キャリア濃度nが大きくなるほど、抵抗率ρ、ゼーベック係数α両者とも低下する。しかしρとαのnに対する依存性が線形的ではないため、パワーファクターはあるキャリア濃度で最大値を有する。本発明者らの検討の結果、(2)式において、Sの値は0.003を越え0.010を超えない範囲(0.003<S<0.010)で、従来のNi系ハーフホイスラー材料に比較して大きなパワーファクターが得られ、無次元性能指数が従来のNi系ハーフホイスラー材料に比較して大きな熱電変換材料が得られることを見いだした。一例として、図2に(Ti0.4Zr0.3Hf0.3)Ni(Sn1-SSbS)の無次元性能指数ZTのSb量S依存性を示す。
なお、図2などからも明らかなように、Sb量は好ましくはその含有割合Sが0.004≦S≦0.008となるようにする。
(熱電変換材料の製造方法)
本発明の熱電変換材料は、例えば以下のような方法により製造することができる。
まず、所定量の各元素を含有する合金を、アーク溶解や高周波溶解などによって作製する。合金の作製に当たっては、単ロール法、双ロール法、回転ディスク法、ガスアトマイズ法などの液体急冷法、あるいはメカニカルアロイング法などの固相反応を利用した方法などを採用することもできる。液体急冷法やメカニカルアロイング法といった方法は、合金を構成する結晶相を微細化する、結晶相内への元素の固溶域を拡大するなどの点で有利である。このため、熱伝導率を大幅に低減することができる。
作製された合金は、必要に応じて熱処理が施してもよい。この熱処理によって合金が単相化され、結晶粒子径も制御されるので、熱電特性をさらに高めることができる。溶解、液体急冷、メカニカルアロイングおよび熱処理などの工程は、合金の酸化を防止するという観点から、例えばArなどの不活性雰囲気中で行なわれることが好ましい。
次に、合金をボールミル、ブラウンミル、またはスタンプミルなどにより粉砕して合金粉末を得、合金粉末を常圧焼結法、ホットプレス焼結法、またはSPS法などによって焼結する。合金の酸化を防止するという観点から、焼結は、例えばArなどの不活性雰囲気中で行なわれることが好ましい。
次いで、得られた焼結体を所望の寸法に加工することによって、本発明の実施形態にかかる熱電変換材料が得られる。本発明の実施形態にかかる熱電変換材料の形状や寸法は適宜選択することができる。例えば、外形0.5〜10mmφ、厚み1〜30mmの円柱状や、(0.5〜10mm)×(0.5〜10mm)×厚み(1〜30mm)程度の直方体状などとすることができる。
(熱電変換モジュール)
次に、本発明の一実施形態における熱電変換モジュールについて説明する。前記熱電変換モジュールにおいては、上述した熱電変換材料を、p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料の少なくとも一方として用いる。
図3は、上記熱電変換モジュールの発電原理を説明するための概略断面図である。図3に示される熱電変換モジュールにおいては、本発明の実施形態にかかるn型半導体の熱電変換材料9と、p型半導体の熱電変換材料8が並列に配置されている。n型熱電変換材料9およびp型熱電変換材料8のそれぞれの上面には、電極10aおよび10bがそれぞれ配置され、その外側に上側絶縁性基板11aが接続される。n型熱電変換材料9およびp型熱電変換材料8の下面は、下側絶縁性基板11bに支持された電極10cによって接続されている。
上下の絶縁性基板11aと11bとの間に温度差を与えて上部側を低温度に、下部側を高温度にした場合、p型半導体熱電変換材料8内部においては、正の電荷を持ったホール14が低温度側(上側)に移動し、電極10bは電極10cより高電位となる。一方、n型半導体熱電変換材料9内部では、負の電荷を持った電子15が低温度側(上側)に移動して、電極10cは電極10aより高電位となる。その結果、電極10aと電極10bとの間に電位差が生じる。図3に示したように、上部側を低温度として下部側を高温度にした場合、電極10bは正極となり、電極10aは負極となる。
なお、特に図示しないが、電極10a及び10bと電極10cとの位置を入れ替え、絶縁性基板11aを高温度にし、絶縁性基板11bを低温度にした場合においても、上記同様のホール及び電子の移動が生じ、電極10a及び10b間に電位差が生じるようになる。
図4は、本発明の一実施形態に基づく熱電変換モジュールの一例を示す概略構成図である。図4に示すように、本態様の熱電変換モジュール16においては、複数のp型熱電変換材料8とn型熱電変換材料9とを交互に直列に接続し、図3に示すような熱電変換モジュールユニットを複数含むような構造を呈している。この場合、図4から明らかなように、電極10a及び10bは隣接するユニット間で共有するような構造を呈している。
図4に示す熱電変換モジュール16については、図3に示すようなユニットが直列に接続されたような構成を呈しているので、熱電変換モジュール16からの発電量は図3に示すユニットが生成する発電量に対して、前記ユニットの数を乗じたものとなる。したがって、図3に示した構造よりも高い電圧を得て、より大きな電力を確保することができる。
(熱電変換モジュールの応用)
上述した熱電変換モジュール16は、熱電池に適用することができる。図5は、前記熱電池の一例を概略的に示す断面構成図である。図5に示すように、熱電変換モジュール16の上部側を低温度にして、下部側を高温度にすると、熱電変換モジュール16の終端電極19a及び19bに電位差が生じる。電極19aと電極19bとに負荷20を接続すると、図示する矢印方向に電流21が流れて熱電池として機能する。
なお、上述した熱電変換モジュールは熱を電力に変換する発電用途に限らず、電気を熱に変換する加熱もしくは冷却用途に使用することも可能である。図6は、前記熱電変換モジュールを用いた加熱冷却装置の一例を示す断面構成図である。図示するように、熱電変換モジュール16の終端電極19に直流電源22を用いて図中の矢印方向に直流電流23を流す。その結果、熱電変換モジュール16の上部側は放熱が起こり、一方の下部側は吸熱が起こる。従って、放熱側に被処理体を配置することによって、被処理体を加熱することができる。あるいは、吸熱側に被処理体を配置することによって、被処理体から熱を奪って冷却することができる。
本発明の熱電変換材料について、実施例を示して以下に詳細に説明する。
(実施例1)
純度99.9%のTi、純度99.9%のZr、純度99.9%のHf、純度99.99%のNi、および純度99.99%のSnを原料として用意し、これを組成式(Ti0.4Zr0.3Hf0.3)Ni(Sn0.994Sb0.006)になるように秤量した。秤量された原料を混合し、ア−ク炉内の水冷されている銅製のハ−スに装填して、2×10-3Paの真空度まで真空引きした。その後、純度99.99%の高純度Arを−40kPaまで導入して減圧Ar雰囲気として、ア−ク溶解した。
得られた金属塊を粉砕し、内径20mmの金型を用いて圧力50MPaで成形した。得られた成形体を内径20mmのカーボン製モールドに充填し、Ar雰囲気中、80MPa、1200℃で1時間加圧焼結して、直径20mm円盤状の焼結体を得た。
この焼結体を粉末X線回折法にて調べたところ、主にMgAgAs型結晶相(ハーフホイスラー相)に由来する回折線のみが観測された。この焼結体の表面を鏡面研磨した後、電子顕微鏡を用い、電子線回折およびエネルギー分散型X線分析を用い、面積占有率から求めた結果、ハーフホイスラー相の体積占有率は99%以上であった。
また、得られた焼結体の組成をICP発光分光法で分析した所、所定の組成であることが確認された。なお、得られた焼結体は以下の方法によって熱電特性を評価した。
(1)抵抗率ρ
焼結体を1mm×0.5mm×18mmに切断し、電極を形成し直流4端子法で測定した。
(2)ゼーベック係数α
焼結体を4mm×1mm×0.5mmに切断し、この両端に2℃の温度差を付け起電力を測定し、ゼーベック係数αを求めた。
(3)熱伝導率κ
焼結体をφ10mm×t2.0mmに切断し、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した。これとは別にDSC測定により比熱を求めた。アルキメデス法により焼結体の密度を求め、これらの結果から熱伝導率κを算出した。
こうして得られた抵抗率ρ、ゼーベック係数α、及び熱伝導率κの値を用い、前述の数式(1)により無次元性能指数ZTを求めた。293K及び713Kにおける抵抗率ρ、ゼーベック係数α、格子熱伝導率κ、及び無次元性能指数ZTは、以下のとおりである。
293K:抵抗率1.08×10−3Ωcm
ゼーベック係数-216μV/K
熱伝導率3.28W/mK
ZT=0.38
713K:抵抗率 1.25×10−3Ωcm
ゼーベック係数 -291μV/K
熱伝導率 3.17W/mK
ZT=1.52
このように、実施例1で作製された熱電変換材料は、最大で1.52の無次元性能指数ZTが得られた。すでに説明したように、既存のNi系ハーフホイスラー材料についての無次元性能指数ZTの最大値は1.22である。本実施例ではこれを大きく上回る高性能の熱電変換材料が得られた。
(比較例1)
純度99.9%のTi、純度99.9%のZr、純度99.9%のHf、純度99.99%のNi、純度99.99%のSnを原料として用意し、これを組成式(Ti0.4Zr0.3Hf0.3)Ni(Sn0.990Sb0.010)になるように秤量した。秤量された原料粉末を用いて、実施例1と同様の手法により焼結体を作製した。この焼結体を粉末X線回折法にて調べたところ、主にMgAgAs型結晶相に由来する回折線のみが観測された。また、得られた焼結体の組成をICP発光分光法で分析した所、所定の組成であることが確認された。実施例1と同様の手法により、293K及び713Kにおける抵抗率ρ、ゼーベック係数α、熱伝導率κ、から無次元性能指数を求めた。
293K:抵抗率0.57×10−3Ωcm
ゼーベック係数-150μV/K
熱伝導率4.20W/mK
ZT=0.28
713K:抵抗率 0.96×10−3Ωcm
ゼーベック係数 -230μV/K
熱伝導率 3.30W/mK
ZT=1.19
このように比較例1で作製された熱電変換材料の無次元性能指数ZTの最大値は1.19にとどまっていることがわかる。
(実施例2〜60、比較例2〜44)
組成式(TiPZrQHfR)Ni(Sn1-SSbS)で表される種々の組成の熱電変換材料を、前述の実施例1と同様の手法により作成した。これら焼結体を粉末X線回折法にて調べた結果、全ての組成において、主にMgAgAs型結晶相に由来する回折線のみが観測された。また、得られた焼結体の組成をICP発光分光法で分析した所、所定の組成であることが確認された。各熱電変換材料について、実施例1と同様の手法により、抵抗率ρ、ゼーベック係数α、熱伝導率κから713Kにおける無次元性能指数ZTを求めた。得られた結果を下記表1及び表2にまとめる。なお、表1及び表2には、前述の実施例1および比較例1の結果も併せて示した。
Figure 2008227321
Figure 2008227321
表1から明らかなように、実施例1〜60のTi量Pが0.3〜0.7の範囲にありSb量Sが0.003を越え0.0010を越えない範囲、特にSb含有量Sが0.004≦S≦0.008である各熱電変換材料は、713Kでの無次元性能指数ZTが1.20以上あり熱電変換特性が優れている、一方、比較例2〜4および44に示したように、Ti量Pが0.3〜0.7の範囲以外にある熱電変換材料は、Sb量Sが0.003を越え0.0010を越えない範囲にあっても713Kでの無次元性能指数ZTが1.20以下と小さい。また、比較例1および5〜43に示したように、Ti量Pが0.3〜0.7の範囲以内にあっても、Sb量Sが0.003以下または0.0010以上の熱電変換材料は、713Kでの無次元性能指数ZTが1.20以下と小さいことが判る。
(実施例61)
p型熱電変換材料としてCo系熱電変換材料((TI,Zr,Hf)Co(Sb,Sn))を使用し、n型熱電変換材料としては、組成式(Ti0.4Zr0.3Hf0.3)Ni(Sn0.994Sb0.006)で表わされる組成の熱電変換材料を使用して、図5に示すような熱電変換モジュールを作製した。なお、前記n型熱電変換材料は、実施例1に相当する。
p型およびn型の各熱電変換材料とも2.7mm角、高さ3.0mmに切り出し、各72個、全144個を12列×12行になるようp,n交互に並べ、全144個を銅電極板で直列に接続した。さらに、銅電極板の他方の面、すなわち熱電変換モジュールを接合した面の反対面には窒化珪素焼結体板を接合し、終端電極に電流リード線を接合して熱電変換モジュールを作製した。
得られた熱電変換モジュールについて、高温度側を603℃、低温度側を43℃にして発電特性を評価した。この温度条件における内部抵抗は、1.59Ωであった。負荷として、この熱電変換モジュールの内部抵抗と同じ1.59Ωの負荷を繋ぐ、整合負荷条件で発電特性を測定した。その結果、発生した電圧は7.24Vであり、4.56Aの電流が流れ、33.0Wの電力が得られ、熱電池として良好な発電特性を有することが確認された。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
ハーフホイスラーABXの構造を表わす模式図である。 (Ti0.4Zr0.3Hf0.3)Ni(Sn1-SSbS)なる組成の熱電変換材料の無次元性能指数ZTのSb量S依存性を示すグラフである。 熱電変換モジュールの発電原理を説明するための概略断面図である。 本発明の一実施形態に基づく熱電変換モジュールの一例を示す概略構成図である。 本発明の一実施形態に基づく熱電変換モジュールを適用した熱電池の一例を概略的に示す断面構成図である。 本発明の一実施形態に基づく熱電変換モジュールを適用した加熱冷却装置の一例を概略的に示す断面構成図である。
符号の説明
1…A元素,2…B元素,3…X元素,4…空孔,8…p型熱電変換材料,9…n型熱電変換材料,10,19…電極,11…絶縁性基板,14…ホール,15…電子,16…熱電変換モジュール,20…負荷,21…電流,22…直流電源,23…電流。

Claims (5)

  1. 組成式(TiPZrQHfR)XNiY(Sn1-SSbS)1-X-Y(P+Q+R=1、0.3≦P≦0.7、0<Q<1、0<R<1、0.003<S<0.01、0.30≦X≦0.35、0.30≦Y≦0.35)にて表され、かつMgAgAs型結晶構造を有する相が主相であること特徴とする、熱電変換材料。
  2. 前記組成式において、Sb含有量Sが0.004≦S≦0.008であることを特徴とする、請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. 前記組成式において、Zr含有量Qが0.1≦Q≦0.6であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱電変換材料。
  4. 前記組成式において、Hf含有量Rが0.1≦R≦0.6であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の熱電変換材料。
  5. 第1の電極と、一端が前記第1の電極に接続されたp型熱電変換材料と、前記p型熱電変換材料の他端に接続された第2の電極と、一端が前記第2の電極に接続されたn型熱電変換材料と、前記n型熱電変換材料の他端に接続された第3の電極とを具備する熱電変換モジュールにおいて、
    前記n型熱電変換材料は、請求項1〜4のいずれか一に記載の熱電変換材料からなることを特徴とする、熱電変換モジュール。
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