JP2008221433A - 研削装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ワークの周面に形成されたみぞの軸方向の位置にずれがあっても砥石負けが発生しにくい研削装置を提供する。
【解決手段】 制御型アキシアル磁気軸受6および制御型ラジアル磁気軸受7,8によりケーシング4に対し非接触支持されて電動機10により回転させられる砥石軸5に、外周面に中高研削面Sが形成された研削砥石Gが取り付けられている。被加工物に対してケーシング4を相対的に移動させることにより、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する。ケーシング4を軸方向に位置決めした後、ケーシング4を径方向に移動させて、みぞの研削を行う。ケーシング4が径方向に移動して砥石Gが被加工物に接触する前は、アキシアル磁気軸受6の剛性値を通常値より低くしておき、砥石Gの研削面Sが被加工物のみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始したことを検知し、みぞ全体の研削開始検知後に、アキシアル磁気軸受6の剛性値を通常値に戻すようになされている。
【選択図】 図4

Description

この発明は、外周面に中高研削面が形成された研削砥石により、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する研削装置に関する。
玉軸受の外輪の内周面に形成された軌道みぞを仕上げ研削する研削装置として、内面研削盤が知られている。
従来の内面研削盤では、研削砥石が装着される砥石軸をスピンドル装置のケーシングに回転支持するための軸受として、接触型の転がり軸受が使用されていた(たとえば特許文献1、2参照)。
特開2001−159421号公報 特開昭57−27660号公報
玉軸受の外輪の内周面に形成されたみぞを仕上げ研削する従来の内面研削盤では、上記のように、砥石軸の回転支持に転がり軸受が使用されているため、外輪の軌道みぞを研削するときに、次のような問題があった。
内面研削盤を用いて外輪の軌道みぞを仕上げ研削する場合、前工程において内周面にみぞが形成されたワーク(被加工物)をチャックなどの適当な把持装置で把持した状態で回転させ、ケーシングを砥石軸の軸方向に位置決めした後、ケーシングを径方向に移動させ、砥石をワークに接触させて、みぞを研削する。
このとき、前工程においてワークの内周面に形成されたみぞの軸方向の位置に誤差がなければ、問題はないが、誤差が生じて、みぞの軸方向の位置が正しい位置から軸方向にずれていると、砥石の研削面の一部が極端に摩耗する、いわゆる砥石負けが発生し、砥石寿命が短くなる。
たとえば、図7(a)のように、ワーク(W)のみぞ(R)の位置が正しければ、ケーシングを径方向に移動させたときに、研削砥石(G)の研削面(S)がみぞ(R)全体にほぼ同時に接触するため、研削面(S)が局部的に摩耗することはない。これに対し、図7(b)のように、みぞ(R)の位置が軸方向に図の左側にずれていると、ケーシングを径方向に移動させたときに、最初にみぞ(R)の右側のエッジだけが砥石研削面(S)に接触して、このエッジの部分だけが研削される。このため、みぞ(R)の右側のエッジに接触する砥石研削面(S)の部分だけが局部的に摩耗する。図7(c)のように、みぞ(R)の位置が軸方向に図の右側にずれている場合も、同様に、みぞ(R)の左側のエッジに接触する砥石研削面(S)の部分だけが局部的に摩耗する。
外輪内周面の軌道みぞの仕上げ研削以外にも、ワークの円筒状周面(内周面または外周面)に形成されたみぞを研削する場合には、同様の問題がある。
この発明の目的は、上記の問題を解決し、ワークの周面に形成されたみぞの軸方向の位置にずれがあっても砥石負けが発生しにくい研削装置を提供することにある。
第1の発明による研削装置は、制御型アキシアル磁気軸受および制御型ラジアル磁気軸受によりケーシングに対し軸方向および径方向に非接触支持されて電動機により回転させられる砥石軸に、外周面に中高研削面が形成された研削砥石が取り付けられ、被加工物に対してケーシングを相対的に移動させることにより、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する研削装置であって、ケーシングを軸方向に位置決めした後、ケーシングを径方向に移動させて、みぞの研削を行うようになされた研削装置において、ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触する前は、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値より低くしておき、砥石の研削面が被加工物のみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始したことを検知し、みぞ全体の研削開始検知後に、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値に戻すようになされていることを特徴とするものである。
研削砥石の中高研削面の断面形状および被加工物のみぞの断面形状は、全体として曲線状である。
研削砥石の研削面および被加工物のみぞの断面形状について、断面とは、研削砥石すなわち砥石軸の軸線およびみぞが形成された円筒状周面の軸線を通る平面における断面(縦断面)をいう。みぞの研削を行う際、砥石軸の軸線とみぞが形成された被加工物の円筒状周面の軸線とは、互いに平行になる。
砥石の研削面が被加工物のみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始したことは、たとえば、ラジアル磁気軸受の電磁石に供給する励磁電流の変化により検知される。
図7(a)のように、前加工によりみぞ(R)が正しい位置に形成されていて、みぞ(R)と研削砥石(G)の軸方向の位置が一致している場合は、ケーシングを径方向に移動させて、砥石(G)をワーク(W)に接近させたときに、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体にほぼ同時に接触する。そして、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体に接触してみぞ(R)全体の研削を開始したことが検知された後に、アキシアル磁気軸受の剛性値が通常値に戻される。ケーシングを径方向に移動させたときに、砥石研削面(S)がみぞ(G)全体にほぼ同時に接触するため、研削面(S)が局部的に摩耗することはない。
図7(b)のように、前加工によるみぞ(R)の位置が軸方向に図の左側にずれている場合は、ケーシングを径方向に移動させて、砥石(G)をワーク(W)に接近させたときに、最初にみぞ(R)の右側のエッジだけが砥石研削面(S)に接触するが、これにより、砥石軸が左向きの力を受け、このとき、アキシアル磁気軸受の剛性値が通常値より低いので、砥石軸は左側に逃げ、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体に接触する。そして、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体に接触してみぞ(R)全体の研削を開始したことが検知された後に、アキシアル磁気軸受の剛性値が通常値に戻される。砥石研削面(S)が最初にみぞ(R)の右側のエッジの部分に接触したときに、砥石(G)が逃げるため、みぞ(R)のエッジの部分だけが研削されることがなく、したがって、研削面(S)が局部的に摩耗することはない。
図7(c)のように、前加工によるみぞの位置が軸方向に図の右側にずれている場合も同様である。
砥石研削面がみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始すると、砥石軸に対する切込み方向後向きの反力が大きくなり、ラジアル磁気軸受の切込み方向前側の電磁石に供給される励磁電流が大きくなる。したがって、ラジアル磁気軸受の電磁石の励磁電流により、砥石研削面がみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始してことを検知することができる。
第2の発明による研削装置は、制御型アキシアル磁気軸受および制御型ラジアル磁気軸受によりケーシングに対し軸方向および径方向に非接触支持されて電動機により回転させられる砥石軸に、外周面に中高研削面が形成された研削砥石が取り付けられ、被加工物に対してケーシングを相対的に移動させることにより、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する研削装置であって、ケーシングを軸方向に位置決めした後、ケーシングを径方向に移動させて、みぞの研削を行うようになされた研削装置において、ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触したときに、そのときのケーシングに対する砥石軸の軸方向の移動方向を検知して、砥石軸の軸方向の浮上目標位置を通常目標位置から上記移動方向に変更し、砥石が被加工物に接触したときに砥石軸がケーシングに対して軸方向に移動しなくなった後に、砥石軸の軸方向の浮上目標位置を通常目標位置に戻すようになされていることを特徴とするものである。
図7(a)のように、前加工によりみぞ(R)が正しい位置に形成されていて、みぞ(R)と研削砥石(G)の軸方向の位置が一致している場合は、ケーシングを径方向に移動させて、砥石(G)をワーク(W)に接近させたときに、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体にほぼ同時に接触する。このため、砥石(G)がワーク(W)に接触したときに、ケーシングに対して砥石軸が軸方向に移動することがなく、砥石軸が通常目標位置に支持されたまま、研削が行われる。そして、砥石(G)がワーク(W)に接触するときに、砥石研削面(S)がみぞ(R)全体にほぼ同時に接触するため、研削面(S)が局部的に摩耗することはない。
図7(b)のように、前加工によるみぞ(R)の位置が軸方向に図の左側にずれている場合は、ケーシングを径方向に移動させて、砥石(G)をワーク(W)に接近させたときに、最初にみぞ(R)の右側のエッジだけが砥石研削面(S)に接触するが、これにより、砥石軸が左向きの力を受けて、左向きに移動するため、砥石軸の軸方向の浮上目標位置が通常目標位置から左側に変更される。そして、砥石(G)がワーク(W)に接触したときにケーシングが砥石軸に対して軸方向に移動しなくなった後に、砥石軸の軸方向の浮上目標位置が通常目標位置に戻される。このため、みぞ(R)のエッジの部分だけが研削されることがなく、したがって、研削面(S)が局部的に摩耗することはない。
図7(c)のように、前加工によるみぞ(R)の位置が軸方向に図の右側にずれている場合も同様である。
第3の発明は、第2の発明において、ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触する前は、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値より低くしておき、砥石が被加工物に接触したときに砥石軸がケーシングに対して軸方向に移動しなくなった後に、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値に戻すようにされていることを特徴とするものである。
この場合、前加工によるみぞ(R)の位置が軸方向にずれていて、みぞ(R)のエッジだけが砥石研削面(S)に接触しても、第1発明の場合と同様に、砥石軸が逃げるため、みぞ(S)のエッジによる砥石研削面(S)の局部的な摩耗がより効果的に防止される。
この発明の研削装置によれば、上記のように、ワークの周面に形成されたみぞの軸方向の位置にずれがあっても、砥石負けが発生しにくく、砥石の局部的な摩耗の発生を防止することができる。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
図1は研削装置の主要部である磁気軸受スピンドルユニットの部分を示す側面図、図2はその拡大断面図、図3は図2のIII−III線の断面図、図4はスピンドルユニットの電気的構成の主要部を示すブロック図である。
以下の説明において、図1および図2の上下を上下とし、同図の左側を前、右側を後とし、後から前を見たときの左右を左右とする。したがって、図3の左右が左右となる。
詳細な図示は省略したが、スピンドルユニット(1)は、前後方向駆動装置(2)により前後方向に、上下方向駆動装置(3)により上下方向に別個に移動させられ、所望の位置に位置決めされる。スピンドルユニット(1)の前後方向および上下方向の移動および位置決めは、たとえば、図示しない公知の数値制御装置により制御される。
スピンドルユニット(1)は、水平なケーシング(4)の内側で水平な砥石軸(5)が回転する横型のものであり、砥石軸(5)の向きが前後方向となるように配置されている。
砥石軸(5)の軸方向(アキシアル方向)すなわち前後方向の制御軸(アキシアル制御軸)をZ軸、Z軸と直交するとともに互いに直交する2つの径方向(ラジアル方向)の制御軸(ラジアル制御軸)のうち、上下方向の制御軸をX軸、左右方向の制御軸をY軸とする。また、Z軸の正側を前側、X軸の正側を上側、Y軸の正側を左側とする。
スピンドルユニット(1)には、砥石軸(5)を軸方向に非接触支持する1組の制御型アキシアル磁気軸受(6)、砥石軸(5)を径方向に非接触支持する前後2組の制御型ラジアル磁気軸受(7)(8)、砥石軸(5)の軸方向および径方向の変位を検出するための変位検出部(9)、砥石軸(5)を高速回転させるためのビルトイン型電動機(10)、砥石軸(5)の回転数を検出するための回転センサ(11)、ならびに砥石軸(5)の軸方向および径方向の可動範囲を規制して砥石軸(5)を磁気軸受(6)(7)(8)で支持していないときに砥石軸(5)を機械的に支持する前後2組のタッチダウン用の保護軸受(12)(13)が設けられている。
スピンドルユニット(1)には、磁気軸受(6)(7)(8)および電動機(10)を制御するためのコントローラ(14)がケーブルを介して電気的に接続されており、スピンドルユニット(1)とコントローラ(14)により、ケーシング(4)に対して砥石軸(5)を非接触支持して回転させる磁気軸受装置が構成されている。
コントローラ(14)には、センサ回路(15)(16)、電磁石駆動回路(17)、インバータ(18)およびDSPボード(19)が設けられ、DSPボード(19)には、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段としてのDSP(20)、ROM(21)、不揮発性メモリとしてのRAM(22)、AD変換器(23)(24)およびDA変換器(25)(26)が設けられている。
変位検出部(9)は、砥石軸(5)の軸方向の変位を検出するための1個のアキシアル変位センサ(27)、および砥石軸(5)の径方向の変位を検出するための前後2組のラジアル変位センサユニット(28)(29)を備えている。
アキシアル磁気軸受(6)は、砥石軸(5)の中間部に一体に形成されたフランジ部(5a)をZ軸方向の両側から挟むように配置された前後1対のアキシアル電磁石(30a)(30b)を備えている。アキシアル磁気軸受は、符号(30)で総称する。
アキシアル変位センサ(27)は、砥石軸(5)の後端面にZ軸方向の後側から対向するように配置され、該後端面との距離(空隙)に比例する距離信号を出力する。
前側のラジアル磁気軸受(7)はアキシアル磁気軸受(6)の前側の接近した位置に、後側のラジアル磁気軸受(8)はアキシアル磁気軸受(6)の後側の離れた位置に配置されている。前側のラジアル磁気軸受(7)は、砥石軸(5)をX軸方向の両側から挟むように配置された上下1対のラジアル電磁石(31a)(31b)、および砥石軸(5)をY軸方向の両側から挟むように配置された左右1対のラジアル電磁石(31c)(31d)を備えている。これらのラジアル電磁石は、符号(31)で総称する。同様に、後側のラジアル磁気軸受(8)も、2対のラジアル電磁石(32a)(32b)(32c)(32d)を備えている。これらのラジアル電磁石も、符号(32)で総称する。
前側のラジアル変位センサユニット(28)は、前側のラジアル磁気軸受(7)のすぐ前側に配置されており、X軸方向の電磁石(31a)(31b)の近傍においてX軸方向の両側から砥石軸(5)を挟むように配置された上下1対のラジアル変位センサ(33a)(33b)、およびY軸方向の電磁石(31c)(31d)の近傍においてY軸方向の両側から砥石軸(5)を挟むように配置された左右1対のラジアル変位センサ(33c)(33d)を備えている。これらのラジアル変位センサは、符号(33)で総称する。後側のラジアル変位センサユニット(29)は、後側のラジアル磁気軸受(8)のすぐ後側に配置されており、同様に、2対のラジアル変位センサ(34a)(34b)(34c)(34d)を備えている。これらのラジアル変位センサも、符号(34)で総称する。各ラジアル変位センサ(33)(34)は、砥石軸(5)の外周面との距離に比例する距離信号を出力する。
電動機(10)は、アキシアル磁気軸受(6)と後側のラジアル磁気軸受(8)との間に配置されており、ケーシング(4)側のステータ(10a)と、砥石軸(5)側のロータ(10b)とから構成されている。
電磁石(30)(31)(32)、変位センサ(27)(33)(34)および電動機(10)のステータ(10a)は、ケーシング(4)に固定されている。
保護軸受(12)(13)はアンギュラ玉軸受などの転がり軸受よりなり、各保護軸受(12)(13)の外輪がケーシング(4)に固定され、内輪が砥石軸(5)の周囲に所定の隙間をあけて配置されている。2組の保護軸受(12)(13)はいずれも径方向の支持が可能なものであり、少なくとも1組は軸方向の支持も可能なものである。
センサ回路(15)は、変位検出部(9)の各変位センサ(27)(33)(34)を駆動し、各変位センサの出力信号をAD変換器(23)を介してDSP(20)に出力する。
センサ回路(16)は、回転センサ(11)を駆動し、回転センサ(11)の出力を砥石軸(5)の回転数に対応する回転数信号に変換し、これをAD変換器(24)を介してDSP(20)に出力する。
DSP(20)は、AD変換器(23)を介して入力する各変位センサ(27)(33)(34)の出力信号に基づいて、各磁気軸受(6)(7)(8)の各電磁石(30)(31)(32)に対する制御電流値を求め、一定の定常電流値に制御電流値を加えた励磁電流信号をDA変換器(25)を介して電磁石駆動回路(17)に出力する。そして、駆動回路(17)は、DSP(20)からの励磁電流信号に基づいて励磁電流を対応する磁気軸受(6)(7)(8)の電磁石(30)(31)(32)に供給し、これにより、砥石軸(5)が所定の浮上目標位置に非接触支持される。DSP(20)は、また、回転センサ(11)からの回転数信号に基づいて、電動機(10)に対する回転数指令信号をDA変換器(26)を介してインバータ(18)に出力し、インバータ(18)は、この信号に基づいて、電動機(10)の回転数を制御する。そして、その結果、砥石軸(5)が、磁気軸受(6)(7)(8)により目標位置に非接触支持された状態で、電動機(10)により高速回転させられる。
アキシアル磁気軸受(6)について、その剛性値および浮上目標位置を所定の範囲内において任意に変更できるようになっている。
砥石軸(5)の前部はケーシング(4)から前方に突出し、その前端部に研削砥石(G)が固定されるようになっている。
玉軸受の外輪内周面の軌道みぞなど、ワーク(W)の内周面に形成されたみぞ(R)を研削する場合、砥石軸(5)には、外周面に断面が曲線の中高研削面(S)が形成された研削砥石(G)が取り付けられる。
上記の研削装置によって、図1のようなワーク(W)の内周面に形成されたみぞ(R)を研削する場合、ケーシング(4)をZ軸方向に移動させて、砥石研削面(S)がみぞ(R)に対向する位置に位置決めし、その後、ケーシング(4)を所定の切込み速度でもってX軸正方向(切込み方向)に移動させる。
このとき、いわゆる砥石負けが発生しないように、主としてアキシアル磁気軸受(6)の制御が行われる。この制御方法の2つの例について、説明する。
第1の制御方法は、ケーシング(4)がX軸正方向に移動して砥石(G)がワーク(W)に接触する前は、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値より低くしておき、砥石研削面(S)がワーク(W)のみぞ(R)全体に接触してみぞ(R)全体の研削を開始したことを検知し、みぞ(R)全体の研削開始検知後に、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値に戻すものである。
次に、図5のフローチャートを参照して、第1の制御方法について、詳細に説明する。
図5において、まず、ケーシング(4)のZ軸方向の位置決めを行い(S11)、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値より低くし(S12)、ケーシング(4)をZ軸正方向に移動させて、切込みを開始する(S13)。そして、砥石研削面(S)がワーク(W)のみぞ(R)全体に接触してみぞ(R)全体の研削を開始したかどうかを判断する(S14)。みぞ(R)全体の研削を開始したことは、ラジアル磁気軸受(7)(8)のX軸方向の各1対の電磁石(31a)(31b)に供給する励磁電流の変化により、検知することができる。S14において、みぞ(R)全体の研削が開始していなければ、S13に戻って、切込みを続ける。S14において、みぞ(R)全体の研削が開始していれば、S15に進んで、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を元の通常値に戻し、そのまま、切込みを続けて、研削を続行する(S16)。
X軸正方向への切込みを開始してから、みぞ(R)全体の研削が開始したことが検知されるまでは、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値より低くした状態で、切込みが続けられる。砥石研削面(S)とみぞ(R)のZ軸方向の位置が一致していない場合、切込み中に、研削面(S)がみぞ(R)の一方のエッジに接触するが、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値が通常値より低くなっているので、砥石軸(5)は、研削面(S)とみぞ(R)のZ軸方向の位置が一致する方向に逃げる。このため、みぞ(R)のエッジの部分だけが研削されることがなく、したがって、研削面(S)が局部的に摩耗するいわゆる砥石負けが発生することがない。
第2の制御方法は、ケーシング(4)がX軸正方向に移動して砥石(G)がワーク(W)に接触する前は、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値より低くしておき、ケーシング(4)がX軸正方向に移動して砥石(G)がワーク(W)に接触したときに、そのときのケーシング(4)に対する砥石軸(5)のZ軸方向の移動方向を検知して、砥石軸(5)のZ軸方向の浮上目標位置を通常目標位置から上記移動方向に変更し、砥石(G)がワーク(W)に接触したときに砥石軸(5)がケーシング(4)に対してZ軸方向に移動しなくなった後に、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値に戻し、砥石軸(5)のZ軸方向の浮上目標位置を通常目標位置に戻すものである。浮上目標位置の変更量は、最大で10μm程度、たとえば約5μmである。
次に、図6のフローチャートを参照して、第2の制御方法について、詳細に説明する。
図6において、まず、ケーシング(4)のZ軸方向の位置決めを行い(S21)、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を通常値より低くし(S22)、ケーシング(4)をZ軸正方向に移動させて、切込みを開始する(S23)。そして、砥石(G)がワーク(W)に接触したかどうかを判断する(S24)。砥石(G)がワーク(W)に接触したことは、ラジアル磁気軸受(7)(8)のX軸方向の各1対の電磁石(31a)(31b)に供給する励磁電流の変化により、検知することができる。S24において、砥石(G)がワーク(W)に接触してなければ、S23に戻って、切込みを続ける。S24において、砥石(G)がワーク(W)に接触していれば、S25に進んで、砥石軸(5)のZ軸方向の移動方向を検知する。この移動方向は、アキシアル磁気軸受(6)の電磁石(30)に供給する励磁電流の変化によって検知することができる。次に、砥石軸(5)がZ軸方向に移動したかどうかを判断し(S26)、移動していれば、砥石軸(5)のZ軸方向の浮上目標位置を通常目標位置から上記移動方向に変更し(S27)、S23に進んで、切込みを続ける。S26において、砥石軸(5)がZ軸方向に移動していなければ、S28に進み、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を元の通常値に戻して、砥石軸(5)のZ軸方向の浮上目標位置を通常目標位置に戻し、そのまま、切込みを続けて、研削を続行する(S29)。
砥石研削面(S)とみぞ(R)のZ軸方向の位置が一致していない場合、切込み中に、研削面(S)がみぞ(R)の一方のエッジに接触するが、これにより、砥石軸(5)は、研削面(S)とみぞ(R)のZ軸方向の位置が一致する方向に移動し、その方向に、砥石軸(5)の浮上目標位置が変更される。このため、みぞ(R)のエッジの部分だけが研削されることがなく、したがって、研削面(S)が局部的に摩耗するいわゆる砥石負けが発生することがない。さらに、砥石(G)がワーク(W)に接触したときに砥石軸(5)がケーシング(4)に対してZ軸方向に移動しなくなるまでは、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値が通常値より低くなっているので、切込み中に、みぞ(R)のエッジだけが砥石研削面(S)に接触しても、第1の制御方法の場合と同様に、砥石軸(5)が逃げるため、みぞ(S)のエッジによる砥石研削面(S)の局部的な摩耗がより効果的に防止される。
S27における浮上目標位置の変更は、切込みを続けた状態で行われてもよいし、切込みを一旦停止した状態で、浮上目標位置の変更を行い、その後に切込みを再開するようにしてもよい。
図6の例では、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値を変更するようになっているが、アキシアル磁気軸受(6)の剛性値は通常値に固定されていてもよい。
研削装置およびそれを構成する磁気軸受装置の全体構成あるいは各部の構成は、上記実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
図1は、この発明の実施形態を示す研削装置の主要部の側面図である。 図2は、図1の研削装置を同じ方向から見た拡大縦断面図である。 図3は、図2のIII−III線に沿う拡大断面図(横断面図)である。 図4は、図2の研削装置の電気的構成の主要部を示すブロック図である。 図5は、研削装置の制御方法の1例を示すフローチャートである。 図6は、研削装置の制御方法の他の1例を示すフローチャートである。 図7は、研削砥石によるワークのみぞの加工の様子を示す説明図である。
符号の説明
(4) ケーシング
(5) 砥石軸
(6) アキシアル磁気軸受
(7)(8) ラジアル磁気軸受
(10) 電動機

Claims (3)

  1. 制御型アキシアル磁気軸受および制御型ラジアル磁気軸受によりケーシングに対し軸方向および径方向に非接触支持されて電動機により回転させられる砥石軸に、外周面に中高研削面が形成された研削砥石が取り付けられ、被加工物に対してケーシングを相対的に移動させることにより、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する研削装置であって、ケーシングを軸方向に位置決めした後、ケーシングを径方向に移動させて、みぞの研削を行うようになされた研削装置において、
    ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触する前は、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値より低くしておき、砥石の研削面が被加工物のみぞ全体に接触してみぞ全体の研削を開始したことを検知し、みぞ全体の研削開始検知後に、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値に戻すようになされていることを特徴とする研削装置。
  2. 制御型アキシアル磁気軸受および制御型ラジアル磁気軸受によりケーシングに対し軸方向および径方向に非接触支持されて電動機により回転させられる砥石軸に、外周面に中高研削面が形成された研削砥石が取り付けられ、被加工物に対してケーシングを相対的に移動させることにより、被加工物の円筒面状周面に形成されたみぞを研削する研削装置であって、ケーシングを軸方向に位置決めした後、ケーシングを径方向に移動させて、みぞの研削を行うようになされた研削装置において、
    ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触したときに、そのときのケーシングに対する砥石軸の軸方向の移動方向を検知して、砥石軸の軸方向の浮上目標位置を通常目標位置から上記移動方向に変更し、砥石が被加工物に接触したときに砥石軸がケーシングに対して軸方向に移動しなくなった後に、砥石軸の軸方向の浮上目標位置を通常目標位置に戻すようになされていることを特徴とする研削装置。
  3. ケーシングが径方向に移動して砥石が被加工物に接触する前は、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値より低くしておき、砥石が被加工物に接触したときに砥石軸がケーシングに対して軸方向に移動しなくなった後に、アキシアル磁気軸受の剛性値を通常値に戻すようにされていることを特徴とする請求項2の研削装置。
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