JP2008183580A - 鋳型用樹脂組成物、鋳型用粘結剤および鋳型の製造方法 - Google Patents

鋳型用樹脂組成物、鋳型用粘結剤および鋳型の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂を含有する樹脂組成物中のアルデヒド類の含有量が低減され、前記樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際、鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減できる鋳型用樹脂組成物を提供する。さらに、前記鋳型用樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際に、鋳型の熱間強度が大きく低下して実用上支障を来さないようにする、好ましくは鋳型の熱間強度が向上することができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂、ならびにアルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物を配合することにより得られる鋳型用樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋳造用の鋳型や中子等を製造する際に使用されるベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂を含有する樹脂組成物、および前記樹脂組成物を含有する粘結剤に関するものである。また、前記樹脂組成物を用いた鋳型の製造方法に関するものである。
従来、鋳型用樹脂組成物や鋳型用粘結剤として、フェノール樹脂やフラン樹脂等を含有する様々な樹脂組成物や粘結剤が知られている。フェノール樹脂やフラン樹脂においては、樹脂組成物中に原料であるアルデヒド類が残留することが避けられない。樹脂組成物中にアルデヒド類が残留していると、鋳型造型時にアルデヒド類が揮発し、臭気が発生しやすくなる。そのため、鋳型造型時の作業改善のため、樹脂組成物や粘結剤からのアルデヒド類の発生(揮発)を抑制することが求められている。また、樹脂組成物そのものの有害性を低減するためにも、樹脂組成物中のアルデヒド類含有量の低減が求められている。
上述した問題を解決するため、例えば、特許文献1には、レゾール型フェノール樹脂に、尿素、アニリンおよびメラミンからなる群から選ばれた含窒素化合物を加えた樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、特定のノボラック樹脂と特定の固形レゾールとの配合樹脂に、尿素および/または尿素誘導体を特定量配合してなる樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、ホルムアルデヒド、尿素およびフルフリルアルコールを特定比率で反応させて得られた樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、尿素含有量が1重量%〜10重量%であり、pH(25℃)が7〜10であるフラン樹脂組成物が開示されている。
特開昭56−109134号公報 特開2002−102999号公報 特開昭39−1543号公報 特開2006−70247号公報
特許文献1で用いられている樹脂はレゾール型フェノール樹脂である。レゾール型フェノール樹脂は水との親和性が高いため、水との親和性が低いベンジリックエーテル型フェノール樹脂に、特許文献1に開示されている技術をそのまま適用することは難しい。特許文献2で用いられている樹脂はノボラック型フェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂は、一般に、フェノール類がアルデヒド類よりも過剰当量配合されており、樹脂組成物中のアルデヒド類含有量の低減は強く求められていない。特許文献3に開示された樹脂組成物は、樹脂組成物中での尿素の溶解性や安定性が悪く、樹脂組成物に濁りや沈殿が生じるため、安定した品質のフラン樹脂を製造することが困難である。特許文献4に開示された樹脂組成物は、pH調整をする必要があり、特定の硬化促進剤を用いなければ鋳型強度が大きく低下する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂組成物中のアルデヒド類の含有量が低減されたベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂を含有する鋳型用樹脂組成物を提供することにある。好ましくは、前記鋳型用樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際、鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減できる鋳型用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、本発明の樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際に、鋳型の熱間強度が大きく低下して実用上支障を来さないようにする、好ましくは鋳型の熱間強度が向上することができる樹脂組成物を提供することにある。特に、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物では、硬化剤としてポリイソシアネートを用いた場合、得られる鋳型の熱間強度が若干弱くなりやすい。従って、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際に、鋳型の熱間強度を向上することができる樹脂組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、前記鋳型用樹脂組成物を用いた鋳型用粘結剤を提供することにある。また、前記鋳型用樹脂組成物を用いた鋳型の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することができた本発明の鋳型用樹脂組成物とは、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂、ならびにアルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物を配合することにより得られるところに特徴を有する。前記構成によれば、樹脂組成物中のアルデヒド類の含有量が低減され、前記鋳型用樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際、鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減され、作業環境が改善される。さらに、前記鋳型用樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際、鋳型の熱間強度が大きく低下しない。
前記尿素化合物は、樹脂組成物中に残存するアルデヒド類と反応することにより、樹脂組成物中のアルデヒド類濃度を低減できると考えられる。また、前記尿素化合物は、鋳型造型時にベンジリックエーテル型フェノール樹脂やフラン樹脂に含まれる水酸基等と反応することにより、樹脂を架橋し、鋳型の熱間強度を向上させる、または大きく低下させないと考えられる。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度が0.1質量%未満であることが好ましい。前記構成によれば、樹脂組成物を取り扱う際の作業環境が改善され、樹脂組成物の有害性が低減され、人体への安全性の面から樹脂組成物の取り扱いが容易になる。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、前記尿素化合物の配合量が、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂100質量部に対して0.3質量部〜4.0質量部であることが好ましい。所定量の尿素化合物を配合することによって、樹脂組成物中のアルデヒド類濃度が効率的に低減され、樹脂組成物の有害性が低減される。また、樹脂組成物の粘度の過度な上昇を防ぐことができ、樹脂組成物の取扱性や骨材との混合時の作業性が良好となり、鋳型の熱間強度が大きく損なわれることを防ぐことができる。
本発明の鋳型用粘結剤とは、本発明の鋳型用樹脂組成物と硬化剤とを含有するところに特徴を有する。前記構成によれば、アルデヒド類の含有量が低減され、前記鋳型用粘結剤を用いて鋳型を造型した際、鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減され、作業環境が改善される。さらに、前記鋳型用粘結剤を用いて鋳型を造型した際、鋳型の熱間強度が大きく低下しない。
本発明の鋳型の製造方法とは、本発明の鋳型用樹脂組成物と硬化剤と骨材とを混合し、硬化させるところに特徴を有する。前記構成によれば、鋳型造型時に鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減でき、作業環境が改善される。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、アルデヒド類の含有量が低い。前記鋳型用樹脂組成物を用いて鋳型を造型した際、鋳型からのアルデヒド類の発生による臭気が低減され、作業環境が改善される。さらに、鋳型の熱間強度が大きく低下せず、実用上十分なものとなる。
まず、本発明の鋳型用樹脂組成物について説明する。本発明の鋳型用樹脂組成物は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂、ならびにアルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物を配合することにより得られるところに特徴を有する。
本発明で用いられるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを、触媒の存在下、重縮合させることにより得られるものが好ましい。
本発明で用いられるベンジリックエーテル型フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ジエチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ビスフェノール、ピロガロールが示される。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示のフェノール類のうち、フェノールがより好ましく用いられる。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂の製造に用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、アセタール、グリオキザール、ベンズアルデヒド、フルフラールが示される。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示のアルデヒド類のうち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドがより好ましく用いられる。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂の製造に用いられる前記触媒としては、二価金属と酸基からなる二価金属触媒が挙げられ、例えば、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等が用いられる。
上記のように、本発明で用いられるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを、二価金属触媒の存在下、重縮合させることにより得られるものが好ましいが、フェノール類とアルデヒド類の好ましい組み合わせとしては、フェノールとホルムアルデヒド、フェノールとパラホルムアルデヒドが挙げられる。さらに、本発明で用いられるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、分子内にジメチレンエーテル結合を有するフェノール樹脂であることが好ましく、下記式(1)で表されるフェノール樹脂であることがより好ましく、その製造方法は、例えば特公昭47−50873号公報に記載される。
Figure 2008183580
(式中Rは水素原子またはフェノール性水酸基に対しメタ位のフェノール性置換基を表し、mおよびnはその和が少なくとも2で、m対n比が少なくとも1になる数、Xは水素原子またはメチロール基の末端基を表す。末端基のメチロール基対水素原子のモル比は少なくとも1であることが好ましい。)
また、本発明で用いられるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、必要に応じて、濃度が30質量%〜80質量%となるように有機溶媒に溶解して使用されてもよい。
本発明で用いられるフラン樹脂は、例えば「第4版鋳型造型法」(社団法人日本鋳造技術協会発刊)第135頁に記載されるように、フルフリルアルコール、アルデヒド類、尿素を重縮合させて得られるものが好ましい。フルフリルアルコール、アルデヒド類、尿素を重縮合させると、各成分の配合割合にもよるが、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルキロール尿素との重縮合物、尿素とアルデヒド類との縮合物、各縮合物が更に重縮合した重縮合物、各成分の未反応物、水等の混合物が得られる。
フラン樹脂の製造に用いられるアルデヒド類としては、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂の製造に用いられるアルデヒド類として例示されたアルデヒド化合物が用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示のアルデヒド類のうち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドがより好ましく用いられる。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂やフラン樹脂は、原料としてアルデヒド類を用いるため、樹脂中に未反応のアルデヒド類が残存することが避けられない。そこで、樹脂中に残存するアルデヒド類の含有量を低減するために、アルキレン尿素、アルキル尿素シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物が樹脂組成物に配合される。
前記尿素化合物は、樹脂組成物中に残存するアルデヒド類と反応することにより、樹脂組成物中のアルデヒド類濃度を低減できると考えられる。また、前記尿素化合物は、鋳型造型時にベンジリックエーテル型フェノール樹脂やフラン樹脂に含まれる水酸基等と反応することにより、樹脂を架橋し、鋳型の熱間強度を向上させる、または大きく低下させないと考えられる。
本発明で用いられる尿素化合物としては、エチレン尿素(2−イミダゾリジノン)、プロピレン尿素、ブチレン尿素等のアルキレン尿素;N−メチル尿素、N,N’−ジメチル尿素、N,N−ジメチル尿素等のアルキル尿素;N−シクロヘキシル尿素、N,N’−ジシクロヘキシル尿素等のシクロアルキル尿素;N−フェニル尿素、N,N’−ジフェニル尿素、N,N−ジフェニル尿素等のアリール尿素等が例示され、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
樹脂組成物中のアルデヒド類濃度を効率的に低減し、鋳型造型時に鋳型の熱間強度を効率的に改善するためには、前記尿素化合物が樹脂組成物に溶解していることが好ましい。また、樹脂組成物中に尿素化合物が溶解しきれずに固形物として残存した場合、樹脂組成物に濁りが生じたり、樹脂組成物の品質が不安定となったり、鋳型製造時に鋳型性状に不均一性が生じる可能性があることも懸念される。従って、本発明の樹脂組成物としては、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂と尿素化合物とを配合した後、尿素化合物を樹脂組成物中に溶解することにより、得られるものが好ましい。尿素化合物を樹脂組成物中に溶解する方法は特に制限はなく、尿素化合物が添加された樹脂組成物を撹拌する等の方法が示される。特に、アルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂との相溶性が良いため、本発明の樹脂組成物を得るのに好適に用いられる。
アルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂やフラン樹脂との相溶性が良いことと相まって、樹脂組成物中のアルデヒド類含有量を効率的に低減することができるため、本発明の樹脂組成物を得るのに好適に用いられる。また、アルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物が配合された樹脂組成物を用いて鋳型を造型した場合、尿素化合物を配合しない樹脂を用いて鋳型を造型した場合と比較して鋳型の熱間強度が大きく低下しないため、アルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素は、本発明の樹脂組成物を得るのに好適に用いられる。特に、樹脂組成物としてベンジリックエーテル型フェノール樹脂を用いて鋳型を造型した場合は、アルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物が樹脂組成物に配合されることにより、鋳型の熱間強度が向上することが好ましい。
本発明で用いられる尿素化合物の配合量は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましく、0.9質量部以上であることがさらに好ましい。本発明で用いられる尿素化合物の配合量は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂100質量部に対して、4.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましい。尿素化合物の配合量が0.3質量部以上であれば、樹脂組成物中のアルデヒド類濃度、特にホルムアルデヒド濃度を効率的に低減でき、樹脂組成物を取り扱う際の作業環境を改善することができる。尿素化合物の配合量が4.0質量部以下であれば、樹脂組成物中のアルデヒド類濃度の低減に寄与しない尿素化合物の過剰な配合を防止でき、効率的に本発明の樹脂組成物を作製することができる。尿素化合物の配合量が多くなりすぎると、樹脂組成物の粘度が高くなることにより樹脂組成物の取扱性や骨材との混合時の作業性が悪くなるおそれがあり、また、本発明の樹脂組成物を用いて作製した鋳型の熱間強度が大きく低下するおそれがある。従って、尿素化合物の配合量が4.0質量%以下であれば、樹脂組成物の取扱性を損なわないとともに、鋳型の熱間強度が大きく低下しない。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、ホルムアルデヒド濃度が0.1質量%未満であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度が0.1質量%未満であれば、樹脂組成物を取り扱う際の作業環境が改善され、樹脂組成物の有害性が低減され、安全面から樹脂組成物の取り扱いが容易になる。
樹脂組成物中のアルデヒド類濃度はガスクロマトグラフ分析により測定される。ガスクロマトグラフ分析では、検出器として熱伝導度検出器(TCD)を用い、JIS K 0114に従って行う。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、樹脂組成物の低粘度化、硬化剤との相溶性向上、鋳型用樹脂組成物や鋳型用粘結剤の骨材との混合性向上、鋳型物性向上等の観点から、必要に応じて、さらに有機溶媒で希釈されてもよい。
次に、本発明の鋳型用粘結剤について説明する。本発明の鋳型用粘結剤は、本発明の鋳型用樹脂組成物と硬化剤とを含有するものであることが好ましい。
本発明の鋳型用粘結剤は、例えば、鋳型用粘結剤を使用する直前に鋳型用樹脂組成物と硬化剤とが骨材に配合されるように用いられる。
本発明の鋳型用樹脂組成物がベンジリックエーテル型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物(以下、「ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物」と称する場合がある)である場合、前記硬化剤はポリイソシアネートであることが好ましい。前記硬化剤がポリイソシアネートである場合、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を含有する鋳型用粘結剤は、塩基性有機化合物触媒の存在下、常温硬化性を有するようになり、鋳型の製造が容易になる。なお、常温硬化性とは、特に積極的に加熱操作を行わなくても常温で硬化することを意味し、硬化温度としては−5℃〜50℃が例示される。
前記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を分子内に2個以上有するものであれば限定されず、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネートの単量体;ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー等が示される。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
ポリイソシアネートは、必要に応じて、濃度が50質量%〜90質量%となるように有機溶媒に溶解して使用されてもよい。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を含有する鋳型用粘結剤の場合、鋳型用樹脂組成物と硬化剤との配合比率は、鋳型用樹脂組成物100質量部に対して、硬化剤50質量部以上、150質量部以下であることが好ましい。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を含有する鋳型用粘結剤は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂と硬化剤に加えて、さらに塩基性有機化合物触媒が配合されてもよい。この場合、鋳型用粘結剤は自硬性を有するようになり、当該鋳型用粘結剤と骨材とを混合して得られる樹脂被覆骨材を型枠に充填し、放置することで、樹脂被覆骨材が硬化して、鋳型が造型される。
本発明の鋳型用樹脂組成物がフラン樹脂を含有する樹脂組成物(以下、「フラン樹脂組成物」と称する場合がある)である場合、前記硬化剤は酸化合物であることが好ましい。前記硬化剤が酸化合物である場合、フラン樹脂組成物を含有する鋳型用粘結剤は常温硬化性を有するようになり、鋳型の製造が容易になる。なお、常温硬化性とは、特に積極的に加熱操作を行わなくても常温で硬化することを意味し、硬化温度としては−5℃〜50℃が例示される。
前記酸化合物はリン酸化合物および/または硫酸化合物であることが好ましい。前記リン酸化合物としては、オルトリン酸;ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸等の縮合リン酸;リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸水素塩等が示され、これらから選ばれる1種または2種以上が用いられる。前記硫酸化合物としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;硫酸等が示され、これらから選ばれる1種または2種以上が用いられる。
フラン樹脂組成物を含有する鋳型用粘結剤の場合、鋳型用樹脂組成物と硬化剤との配合比率は、鋳型用樹脂組成物100質量部に対して、硬化剤10質量部以上、70質量部以下であることが好ましい。
前記鋳型用粘結剤は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂と硬化剤に加えて、さらに、公知の適当な硬化促進剤、硬化遅延剤、離型剤、強度劣化防止剤、乾燥防止剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
前記鋳型用粘結剤は、粘結剤の低粘度化、鋳型用粘結剤の骨材との混合性向上、鋳型物性向上等の観点から、必要に応じて、さらに有機溶媒で希釈されてもよい。
次に、本発明の鋳型の製造方法について説明する。本発明の鋳型の製造方法は、本発明の鋳型用樹脂組成物と硬化剤と骨材とを混合し、硬化させる方法が好ましい。また、本発明の鋳型の製造方法は、本発明の鋳型用樹脂組成物と硬化剤と骨材とを混合して樹脂被覆骨材を得る工程、前記樹脂被覆骨材を型枠に充填し、型枠に充填された前記樹脂被覆骨材を硬化させる工程を有することが好ましい。
前記骨材としては、従来より鋳型用として用いられている耐火性のものであれば特に限定されるものではなく、天然砂や人工砂等が示される。具体的には、例えば、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコン砂、クロマイト砂、アルミナ砂、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ、ムライト系人工粒子、中空アルミナビーズ、ガラスビーズ、およびこれらの再生砂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
前記鋳型用樹脂組成物、前記硬化剤、前記骨材の配合比率は、骨材100質量部に対して、鋳型用樹脂組成物と硬化剤が各々0.01質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を用いる場合は、自硬性鋳型を製造する方法と、ガス硬化性鋳型を製造する方法が例示される。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を用いてガス硬化性の鋳型を製造する方法は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物とポリイソシアネートと骨材とを混合して樹脂被覆骨材を得る工程、前記樹脂被覆骨材を型枠に充填し、型枠に充填された樹脂被覆骨材に塩基性有機化合物触媒を通気させる工程を有することが好ましい。この方法を用いる場合、前記塩基性有機化合物触媒としては第三級アミンが好ましく用いられ、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ピリジンまたはその誘導体、キノリンまたはその誘導体、イミダゾールまたはその誘導体等が例示される。ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を用いてガス硬化性の鋳型を製造する場合は、前記塩基性有機化合物触媒はガス状で用いられることが好ましい。
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を用いて自硬性の鋳型を製造する方法は、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物とポリイソシアネートと塩基性有機化合物触媒と骨材とを混合して樹脂被覆骨材を得る工程、前記樹脂被覆骨材を型枠に充填し、型枠に充填された前記樹脂被覆骨材を放置して硬化させる工程を有することが好ましい。この方法を用いる場合、前記塩基性有機化合物触媒としては、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物のガス硬化性の鋳型を製造する場合に用いられる前記第三級アミンとともに、アシュランド法において通常使用される塩基、金属イオン等が示される。
フラン樹脂組成物を用いて鋳型を製造する方法は、フラン樹脂組成物と酸化合物と骨材とを混合して樹脂被覆骨材を得る工程、前記樹脂被覆骨材を型枠に充填し、型枠に充填された前記樹脂被覆骨材を放置して硬化させる工程を有することが好ましい。前記酸化合物は、本発明の鋳型用粘結剤で用いられる酸化合物として例示された化合物が用いられる。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
<樹脂組成物の合成>
[実験例1]
還流器、撹拌機および温度計を備えた四ツ口フラスコに、フェノール470質量部、92質量%パラホルムアルデヒド水溶液212質量部、ナフテン鉛3.7質量部とを仕込み、撹拌しながら還流温度で120分間加熱した後、減圧下(0.02MPa)、液温110℃で180分間蒸留して、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂を得た。得られたベンジリックエーテル型フェノール樹脂100質量部に、溶媒としてソルベッソ100(ExxonMobil社製)70質量部とイソホロン30質量部を加え、さらにエチレン尿素を0.50質量部加え、混合することで、樹脂組成物1を得た。
[実験例2〜11]
実験例1で得られたベンジリックエーテル型フェノール樹脂100質量部に、表1で示された尿素化合物を、表1で示された量を加え、樹脂組成物2〜10を得た。また、実験例1で得られたベンジリックエーテル型フェノール樹脂を樹脂組成物11とした。
[実験例12]
還流器、撹拌機および温度計を備えた四ツ口フラスコに、フルフリルアルコール369質量部、92質量%パラホルムアルデヒド水溶液123質量部、p−トルエンスルホン酸1.5質量部とを仕込み、撹拌しながら液温100℃で180分間加熱した後、尿素18.5質量を加え、液温100℃で30分間加熱して、フラン樹脂を得た。得られたフラン樹脂100質量部に、フルフリルアルコール50質量部をコールドブレンドし、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン1.0質量部を加え、さらにエチレン尿素0.38質量部を加え、混合することで、樹脂組成物12を得た。
[実験例13〜20]
実験例12で得られたフラン樹脂100質量部に、表1で示された尿素化合物を、表1で示された量を加え、樹脂組成物を13〜19を得た。また、実験例12で得られたフラン樹脂を樹脂組成物20とした。
<鋳型テストピースの作製>
[樹脂組成物1〜4、11を用いた鋳型テストピースの作製方法]
三河6号ケイ砂100質量部に、樹脂組成物0.8質量部、ポリイソイソシアネート溶液(ジフェニルメタンジイソシアネート/ソルベッソ100(質量比)=3/1)0.8質量部を加え、撹拌機で1分間混合し、樹脂被覆骨材を得た。前記樹脂被覆骨材を、試験金型(直径28.575mm、高さ50mmの円柱形)にブロー圧0.3MPaで充填し、そこにトリエチルアミンガスを0.1MPaで2秒間通気(ガッシング)させ、さらに空気を0.2MPaで10秒間通気させることで、鋳型テストピースを作製した。
[樹脂組成物12〜15、20を用いた鋳型テストピースの作製方法]
三河6号ケイ砂100質量部に、樹脂組成物0.8質量部、キシレンスルホン酸0.32質量部を加え、撹拌機で1分間混合し、樹脂被覆骨材を得た。前記樹脂被覆骨材を、試験金型(直径28.575mm、高さ50mmの円柱形)に手込め充填し、常温で24時間放置することで、鋳型テストピースを作製した。
<分析方法>
[樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度の測定方法]
樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度はガスクロマトグラフにより測定した。ガスクロマトグラフ装置は、株式会社島津製作所製GC−7Aを用いた。カラムはポラパック−N(株式会社島津製作所製)を、検出器は熱伝導度検出器(TCD)を、キャリアガスはヘリウムを用い、インジェクション温度150℃、カラム温度150℃、ディテクタ温度150℃、キャリアガス流量60mL/分の条件で分析を行った。ガスクロマトグラフ分析は、JIS K 0114に従った。
[樹脂組成物の粘度の測定方法]
樹脂組成物の粘度は、温度25℃で、東機産業株式会社製E型粘度計RE80Lを用いて測定した。
[鋳型テストピースの熱間強度の測定方法]
高温鋳物砂試験機(株式会社東京衡機製造所製)により鋳型テストピースの圧縮強度を測定した。測定に用いた高温鋳物砂試験機は、アムスラー型万能試験機に電気炉が備わった構成を有している。電気炉は、上面と底面に直径80mmの穴が同一軸となるように開いており、底面の穴からはテストピースを載せるためのロッド(円柱形の支持台)が、上面の穴からはテストピースに荷重(圧縮力)をかけるためのロッドが挿入されている。電気炉には熱電対が備わっており、熱電対により電気炉内の温度が計測され、その計測値が電気炉制御盤にフィードバックされることで、ヒーターの作動が制御され、電気炉内の温度が設定値に保たれる。熱間強度の測定では、電気炉底面から挿入されたロッド上に円柱形のテストピースが縦方向に配置され、テストピースの上下方向から荷重(圧縮力)がかけられる。
鋳型テストピースの熱間強度の測定では、鋳型テストピースをアルミ箔に包み、それを200℃、400℃、600℃、または800℃に保たれた電気炉内に配置し、同温度のもと3分間保持した。引き続き同温度で保持した状態で、テストピースに上下方向に圧縮力を加えて、破壊強度を測定した。
なお、表2には常温での圧縮強度の測定結果も示されているが、常温での測定は、上記熱間強度の測定方法において、電気炉のヒーターを作動せずに測定を行った。
<分析結果>
樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度の測定結果を表1に、樹脂組成物の粘度と鋳型テストピースの熱間強度の測定結果を表2に示す。表1で、ホルムアルデヒド濃度の欄に「不溶」と表記されているのは、尿素化合物が樹脂組成物に溶解せず、ホルムアルデヒド濃度を測定しなかったことを意味する。樹脂組成物1〜8、12〜18は本発明の実施例に相当し、それ以外は比較例に相当する。
Figure 2008183580
Figure 2008183580
[樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度]
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物では、尿素化合物が配合されていない樹脂組成物11のホルムアルデヒド濃度は0.14質量%であり、フラン樹脂組成物では、尿素化合物が配合されていない樹脂組成物20のホルムアルデヒド濃度は0.13質量%であった。エチレン尿素、ジメチル尿素、フェニル尿素、またはシクロヘキシル尿素が配合されることで、いずれの樹脂組成物でも、ホルムアルデヒド濃度が低減した。なお、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物に尿素またはエチレンチオ尿素が配合された場合は、尿素またはエチレンチオ尿素は樹脂組成物に溶解せず、固形物として残存した。
[樹脂組成物の粘度]
エチレン尿素の配合量が多くなるほど、樹脂組成物の粘度は増加する傾向を示した。しかし、粘度の増加の程度は大きくなく、樹脂組成物の取り扱いや骨材との混合作業に支障を来す程度ではなかった。
[鋳型テストピースの熱間強度]
ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物では、エチレン尿素が配合されることで、いずれの温度でも熱間強度が高くなり、鋳型強度が改善された。フラン樹脂組成物では、エチレン尿素が配合されることで、熱間強度が高くなる場合と低くなる場合が見られた。熱間強度が低下する場合でも、エチレン尿素が配合されない場合を基準として、ほとんどのテストピースで10%以内の低下にとどまった。フラン樹脂は、もともと熱間強度が比較的高い樹脂であるため、この程度の熱間強度の低下は問題とはならない。
なお、鋳型テストピース作製時、エチレン尿素が配合されていない樹脂組成物11、20ではホルムアルデヒドの臭いがわずかに確認されたが、エチレン尿素が配合された樹脂組成物1〜4、12〜15では、ホルムアルデヒドの臭いは確認されなかった。
本発明の鋳型用樹脂組成物は、鋳造用の鋳型や中子等を製造する際に用いることができる。

Claims (8)

  1. ベンジリックエーテル型フェノール樹脂、ならびにアルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物を配合することにより得られる鋳型用樹脂組成物。
  2. フラン樹脂、ならびにアルキレン尿素、アルキル尿素、シクロアルキル尿素およびアリール尿素よりなる群から選ばれる1種または2種以上の尿素化合物を配合することにより得られる鋳型用樹脂組成物。
  3. 樹脂組成物中のホルムアルデヒド濃度が0.1質量%未満である請求項1または2に記載の鋳型用樹脂組成物。
  4. 前記尿素化合物の配合量が、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂またはフラン樹脂100質量部に対して0.3質量部〜4.0質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳型用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳型用樹脂組成物と硬化剤とを含有する鋳型用粘結剤。
  6. 請求項1,3,4のいずれか1項に記載の鋳型用樹脂組成物とポリイソシアネートとを含有する鋳型用粘結剤。
  7. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の鋳型用樹脂組成物と酸化合物とを含有する鋳型用粘結剤。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳型用樹脂組成物と硬化剤と骨材とを混合し、硬化させることを特徴とする鋳型の製造方法。
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