JP2008106176A - 粘着組成物 - Google Patents

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Yasuko Suzuki
康子 鈴木
Sachiko Ito
祥子 伊藤
Hajime Yuyama
元 湯山
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Abstract

【課題】塗工性が良く、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にマイグレーションがない粘着組成物を提供する。
【解決手段】(I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)アクリル重合体とを含む粘着組成物であって、(I)共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含有するブロック共重合体であり、(II)重合体は、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含み、重量平均分子量が1000〜10000の低分子量重合体であり、(I)共重合体と(II)重合体の合計を100重量部として、(I)共重合体の重量が70重量部以下である粘着組成物である。該粘着組成物は、ホットメルト型粘着剤として好適に用いられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル系の粘着組成物に関するものであり、更には、その粘着組成物が用いられた粘着テープ及びラベル等に代表される粘着製品に関するものである。
アクリル系粘着剤は、その優れた耐熱性及び耐候性等の特徴をいかし、粘着テープ及び粘着シート等の粘着製品に広く利用されている。一般にアクリル系粘着剤は、その形態に基づいて、主として溶液型粘着剤、エマルジョン型粘着剤及びホットメルト型粘着剤に分類される。特にホットメルト型アクリル系粘着剤には、耐熱性を改良するため、アクリル系ブロック共重合体を含有させることが知られている。
特許文献1は、アクリルブロックコポリマー(アクリル系ブロック共重合体)が約50重量%より少ない量で接着剤組成物中に存在するホットメルト接着剤組成物を開示し、更に、該ホットメルト接着剤組成物は工業用テープ及び転写フィルム等に使用されることを開示する。
特許文献2は、メタアクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロックを含有し、数平均分子量(Mn)50000〜300000のアクリル系ブロック共重合体を50質量%以上含有する粘着組成物を開示する。更に、該粘着組成物は、ホットメルト型として用いられ、また、粘着テープ及び粘着シート等に使用されることを開示する。
特許文献3は、アクリル系ジブロック共重合体を含有する粘着剤組成物を開示する。また、特許文献4は、トリブロック構造を有するブロック共重合体とジブロック共重合体とを含有するアクリル系ブロック共重合体組成物を開示し、更に、それをベースとする粘着剤組成物を開示する。特許文献3及び4は、各々それらの粘着組成物は、粘着テープ及び粘着フィルム等に使用されることを開示する。
このように、アクリル系ブロック共重合体を有する粘着組成物が、テープ、フィルム等の基材に塗布されて、粘着製品が得られることは知られているが、更に、より高い性能を有する粘着製品が求められている。アクリル系ブロック共重合体を添加した粘着剤は、耐熱性により優れるので、それをテープ及びフィルム等の基材に塗工すると、耐熱性により優れた粘着製品を得ることができる。しかし、近年は、更に高レベルの粘着性が要求されている。特に低温下で粘着製品を被着体から剥がしたとき、被着体が破壊せず、被着体に粘着層を残さないで粘着組成物が剥離する(即ち、界面剥離する)ような粘着組成物の開発が急務である。粘着性だけではなく、テープ等に粘着組成物を塗工する際、粘着剤の粘度が高くなり過ぎると塗工しにくくなるので、粘着組成物の塗工性も重要である。
特開2004−204231号公報 特開2003−105300号公報 特開2004−2736号公報 特開2005−307063号公報
本発明は、これらの課題を達成するためになされたものであり、塗工性が良く、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にマイグレーションがない粘着組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題について鋭意検討を行った結果、アクリル系ブロック共重合体と、特定のアクリル重合体とを配合すると、塗工性が良く、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にマイグレーションがない粘着組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の一の要旨において、本発明は、
(I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)アクリル重合体とを含む粘着組成物であって、
(I)アクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含有するブロック共重合体であり、
(II)アクリル重合体は、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含み、重量平均分子量が1000〜10000の低分子量重合体であり、
(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体の合計を100重量部として、(I)アクリル系ブロック共重合体の重量が70重量部以下である粘着組成物を提供する。
本発明に係る粘着組成物は、ホットメルト型粘着剤として好適に用いることができる。
本発明の一の態様において、
(I)アクリル系ブロック共重合体は、式(1):
A−B1−A (1)
で示されるトリブロック共重合体を含んで成る粘着組成物を提供する。
更に本発明の他の態様において、
(I)アクリル系ブロック共重合体は、重量平均分子量が10000〜200000である粘着組成物を提供する。
また、本発明の好ましい態様において、
重合体ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(2):
CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜12である]
で示される化合物であり、
重合体(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3):
CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜8である)]
で示される化合物である粘着組成物を提供する。
更にまた、本発明の好ましい態様において、粘着組成物全体の重量の合計を100重量%として、20.0〜80.0重量%の(II)アクリル重合体を含む粘着組成物を提供する。
更に、本発明の他の要旨において、本発明に係る粘着組成物が塗工された粘着製品を提供する。
本明細書において「・・・に由来する」とは、「・・・に基づいて得られる」ことを意味し、より具体的には「・・・が反応して得られる又は出発物質として・・・から誘導される」ことを意味する。従って、例えば、「メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック」とは、「メタクリル酸誘導体に基づいて得られる重合体ブロック」を意味し、その重合体ブロックはメタクリル酸誘導体に基づく重合単位を有する。「アクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック」とは、「アクリル酸誘導体に基づいて得られる重合体ブロック」を意味し、その重合体ブロックは、アクリル酸誘導体に基づく重合単位を有する。「アクリル酸誘導体に由来する重合体」とは、「アクリル酸誘導体に基づいて得られる重合体」を意味し、その重合体は、アクリル酸誘導体に基づく重合単位を有する。
本明細書において「粘着組成物」とは、粘着性を有する組成物をいう。「粘着性」とは、高粘度液体に一般的にみられる現象であるが、「粘着テープ」等に使用する観点からは、特に、水、溶剤、熱等を利用することなく、手で軽く貼り合わせると直ちに実用に耐え得る接着力を発揮することをいう。この性質は、「感圧タック」若しくは単に「タック」と呼ばれる。「粘着剤」には、「粘着性」を発揮するため、被着体に濡れる「流動性」と、接着後の剥離に抵抗する「凝集力」という、相反する二つの特性が要求される。
また、本明細書において、「ホットメルト型粘着剤」とは、ホットメルトタイプの粘着剤をいい、一般的には、熱可塑性の粘着剤であって、加熱することで溶融する粘着剤をいう。
更に本発明において、「粘着製品」とは、一般に粘着製品とされるものをいうが、そのようなものとして、例えば医療用テープ、工業用テープ、カイロ、貼布剤、シート、シール、ラベル、ネームプレート及び再閉鎖可能なファスナー等を例示できる。
本発明に係る粘着組成物は、
(I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)アクリル重合体とを含む粘着組成物であって、
(I)アクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含有するブロック共重合体であり、
(II)アクリル重合体は、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含み、重量平均分子量が1000〜10000の低分子量重合体であり、
(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体の合計を100重量部として、(I)アクリル系ブロック共重合体の重量が70重量部以下であるから、
塗工性が良く、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にマイグレーションがない粘着組成物を提供することができる。
(I)アクリル系ブロック共重合体が、式(1):
A−B1−A (1)
で示されるトリブロック共重合体を含んで成る場合、
粘着組成物のゴム弾性がより良好となり、粘着組成物が凝集破壊する可能性をより減ずることができる。
(I)アクリル系ブロック共重合体は、重量平均分子量が10000〜200000である場合、粘着組成物の耐熱性と塗工適性とのバランスがより良好になる。
重合体ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(2):
CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜12である]
で示される化合物であり、
重合体(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3):
CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜8である)]
で示される化合物である場合、
成分(I)と(II)の相溶性がより向上し、粘着組成物の塗工性も向上し得る。
本発明に係る粘着組成物をホットメルト型粘着剤として使用すると、溶剤系粘着剤を使用するより、環境負荷が低減され、作業性も向上する。また、エマルジョン型粘着剤を用いる場合と比較すると、本発明に係る粘着組成物をホットメルト型粘着剤として用いると、作業性、接着耐久性が向上する。
粘着組成物全体の重量の合計を100重量%として、20.0〜80.0重量%の(II)アクリル重合体を含む場合、粘着付与剤及び酸化防止剤等の添加剤の配合量を減らすことができ、粘着組成物の低温剥離性を向上させることができる。ここで、「低温剥離性の向上」とは、低温で被着体に粘着層を残すことなく、粘着製品をよりきれいに界面剥離できるようになることをいう。
本発明に係る粘着組成物が塗工された粘着製品は、低温でも粘着性に優れ、被着体に粘着層を残さないで界面剥離でき、更にマイグレーションがないという特徴を有する。
発明を実施するための形態
本発明において、「(I)アクリル系ブロック共重合体」とは、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含んで成るブロック共重合体をいう。「(I)アクリル系ブロック共重合体」は、目的とする粘着組成物を得られる限り、他の重合体ブロック、重合部分、重合単位等を含んで成ってよく、特に制限されるものではないが、他の重合体ブロック、重合部分、重合単位等を含まない方が好ましい。尚、(I)アクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)を必須の特徴として含むので、(II)アクリル重合体を含まない。
「重合体ブロック(A)」とは、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロックをいい、目的とする粘着組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
ここで、「メタクリル酸誘導体」とは、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいう。「メタクリル酸エステル」とは、式(4):
CH=C(CH)−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
で示される化合物をいう。
メタクリル酸誘導体は、メタクリル酸エステルであることが好ましく、メタクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。
そのような「メタクリル酸誘導体」として、下記の化合物を例示することができる:
メタクリル酸;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが望ましい。
また「重合体ブロック(B1)」とは、アクリル酸に由来する重合体ブロックをいい、目的とする粘着組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
ここで、「アクリル酸誘導体」とは、アクリル酸及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいう。「アクリル酸エステル」とは、式(2):
CH=CH−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、4〜8であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
で示される化合物をいう。
アクリル酸誘導体は、アクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。
そのような「アクリル酸誘導体」として、下記化合物を例示することができる:
アクリル酸;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、i−オクチルアクリレート、デシルメチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、トリフルオロメチルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート等のアクリル酸エステル。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では、重合体ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、上記式(2)の化合物であって、Rが、1〜12の炭素原子を含むアクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、特にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルアクリレートが好ましい。この中でもn−ブチルアクリレートが最も望ましい。
本発明に係るアクリル系ブロック共重合体(I)は、目的とする粘着組成物を得られる限り、形状によって特に制限されるものではないが、線状又は分岐状(星状)の形状を有して良く、線状及び分岐状ブロック共重合体から選択される少なくとも1種のブロック共重合体であってよい。
「線状ブロック共重合体」は、目的とする粘着組成物を得られる限り、そのブロック形式によって特に制限されるものではないが、組成物の物性の点から、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれらの両方を含有することができる。それらのブロック共重合体を主成分とすることがさらに好ましい。ジブロック共重合体、トリブロック共重合体以外のブロック共重合体の構造としては、例えば、マルチブロック共重合体を例示できる。
(I)アクリル系ブロック共重合体として、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、トリブロック共重合体とジブロック共重合体の混合物、トリブロック共重合体とマルチブロック共重合体の混合物、あるいはジブロック共重合体とトリブロック共重合体とマルチブロック共重合体の混合物を例示できるが、それらの中でもトリブロック共重合体を主成分として含むことがさらに好ましい。
これらの場合、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)、アクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を用いて、(I)アクリル系ブロック共重合体の構造を示すと、ジブロック共重合体の場合、A−B1型であり、トリブロック共重合体の場合、A−B1−A型又はB1−A−B1型であり、マルチブロック共重合体は、nを1以上の整数として、A−(B1−A)n−B1型、A−B1−(A−B1)n−A型、B−(A−B1)n−A−B1型である。これらの中でも凝集力の点から、トリブロック共重合体はA−B1−A型であることが好ましく、マルチブロック共重合体はA−(B1−A)n−B型またはA−B1−(A−B1)n−A型であることが好ましい。
分岐状(星状)ブロック共重合体は、いずれの構造のものであってもかまわないが、組成物の物性の点から、前記線状ブロック共重合体を基本単位とするブロック共重合体であることが好ましい。
(I)アクリル系ブロック共重合体は、A−B1−Aで示されるトリブロック共重合体であることが好ましい。特に、重合体ブロックAがポリメチルメタクリレート、重合体ブロックB1がポリn−ブチルアクリレートであることが望ましい。
(I)アクリル系ブロック共重合体」の重量平均分子量は、10000〜200000が好ましい。(I)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される。より具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定された値をいう。GPC装置は、ウォーターズ(Waters)社製の600Eを用い、検出器として、RI(Waters410)を用いた。GPCカラムとして、ショーデックス(Shodex)社製のLF−804 2本を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を1.0ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求めた。
(I)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が10000より低い場合、凝集力が低くなり、好ましい粘着特性、例えば、耐熱性、低温剥離性等が発現されない場合がある。一方、(I)アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が200000よりも大きいと、粘度が高くなりすぎ、塗工適性が低下し得、(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体との粘度差が大きくなりすぎて、両者が均一に混ざり難くなる。
(I)アクリル系ブロック共重合体は、この分野において既知の方法で、製造することができる。本発明の実施において使用するブロックコポリマーは、例えば、特開平11−30222617号に記載されているアニオン重合により、P. Mancinelli、「Materiaux et Techniques」、March−April 1990、pp. 41−46に記載されている遊離基重合により、例えば、米国特許第5,679,762号に記載されている多官能性連鎖移動剤により、EP 0 349 270号(B1)に記載されているイニファーター (iniferter) 重合によりおよび/または同時出願中の普通に譲渡された米国特許出願第10/045881号に記載されている遊離基戻り沈殿(free radical retrograde precipitation)により製造することができる。アニオン重合により製造された(I)アクリル系ブロック共重合体は特に好ましい。
(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体の合計を100重量部として、(I)は70重量部以下であり、5〜70重量部であることが好ましく、40〜70重量部であることがより好ましい。(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体の合計100重量部に対し、(I)が70重量部を超えると、塗工適性が低下しはじめる。
本発明において「(II)アクリル重合体」とは、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含んで成り、重量平均分子量が1000〜10000の低分子量重合体をいい、目的とする粘着組成物を得られる限り、特に制限されるものではない。
(II)アクリル重合体は、他の重合部分、重合単位等を含んで成ってよく、特に制限されるものではないが、他の重合体ブロック、重合部分、重合単位等を含まない方が好ましい。尚、(II)アクリル重合体は、メタクリル誘導体に由来する重合体ブロック(A)を含まないので、(I)アクリル系ブロック共重合体に含まれない。
(II)アクリル重合体の重量平均分子量も、(I)アクリル系ブロック重合体の重量平均分子量と同様、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される。尚、(II)アクリル重合体の重量平均分子量が、1000未満であったり、10000を超える場合、塗工適性が低下しはじめ、得られる粘着組成物の低温剥離性が乏しくなるという問題を生じ得る。
ここで、重合体(B2)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」は、アクリル酸及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも一種をいい、上述のブロック重合体(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体と同様であり、式(3):
CH=CH(CH)−COO−R
[ただし、Rの有する炭素原子数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、4〜8であることが特に好ましい。Rは、分枝を有してよく、更に、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子に割り込まれていてもよい。]
で示される化合物をいう。
アクリル酸誘導体は、アクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートであることが最も好ましい。
重合体(B2)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」として、(I)アクリル系ブロック共重合体で記載したブロック重合体(B1)を得るために使用される「アクリル酸誘導体」を例示できる。即ち、重合体(B2)は、(I)アクリル酸系ブロック共重合体の(B1)に例示したものと重複し得る。(B1)と(B2)とは実質的に同一でも異なっていても構わないが、本発明では(B1)と(B2)とが実質的に同一の組成を有することがより好ましい。両者が同一の組成を有することによって、(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体との相溶性が更に向上し、粘着剤の塗工性がより向上するからである。
(II)アクリル重合体は、水性媒体中での懸濁重合や乳化重合、有機溶剤中での溶液重合、或いは塊状重合など通常のラジカル重合(又は付加重合)方法で製造することができる。有機溶剤としては、通常用いられるものが使用でき、例えば、下記のものを例示できる:
テトラヒドロフランおよびジオキサン等の環状エーテル類;
ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素化合物;
酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;
メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール類等。
これら具体例の中から、1種を又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
上記重合に用いるラジカル発生型重合開始剤として、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびジターシャリーブチルパーオキサイド等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物を使用できる。また、連鎖移動剤は耐候性の低下につながるため、使用しないことが好ましい。
上記重合は、重合温度が20〜300℃、圧力が常圧〜10MPaで行い、加圧の場合は耐圧オートクレーブを用いて5分〜20時間の反応時間で行うことができる。重合方法はバッチ重合、セミバッチ重合、或いは連続重合でもよい。
本発明における(II)アクリル重合体のガラス転移温度は10℃以下であり、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。ガラス転移温度が10℃より高いと、低温における作業性が悪くなる。
これまでの記載を踏まえると、本発明に係る粘着組成物は、(I)アクリル系ブロック共重合体として、ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B1)−ポリメチルメタクリレート(A)のトリブロック共重合体と、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート(B2)を含んで成る(II)アクリル重合体とが配合されたもので差し支えないが、その最も好ましい実施形態は、(I)アクリル系ブロック共重合体として、ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B1)−ポリメチルメタクリレート(A)のトリブロック共重合体と、ポリn−ブチルアクリレート(B2)を含んで成る(II)アクリル重合体とが配合されたものである。
本発明では、粘着組成物全体の重量の合計を100重量%として、粘着組成物は、(II)アクリル重合体を、20.0〜80.0重量%含むことが好ましく、20.0〜65.0重量%含むことがより好ましく、20.0〜50.0重量%含むことが特に好ましい。粘着組成物が、(II)アクリル重合体を、20.0〜80.0重量%含む場合、得られる粘着組成物の塗工性及び剥離性をより向上することができる。
本発明に係る粘着組成物には、(I)及び(II)として、これら二成分を得るために用いた単量体と共重合可能な単量体を共重合したものを使用することや、(I)及び(II)にそのようなものを添加することも可能である。
単量体の具体例としては、
メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類;
アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;
クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;
スチレン、−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンモノマー;
エチレン、プロピレン等のオレフィン;
ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のモノマーに由来する構造単位等が挙げられる。
本発明に係る粘着組成物は、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤等を含むことが好ましい。ブロックコポリマー、粘着付与剤および可塑剤は、意図する最終用途に要求される必要な特性が得られるのに有効な量が配合される。
粘着付与剤としては、炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジンエステル、天然テルペン等が挙げられる。さらに詳細な具体例を以下に挙げる。
任意の相溶性樹脂またはそれらの混合物、例えば、天然ロジンおよび変性ロジン、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジンおよび重合ロジン;
天然および変性ロジンのグリセロールおよびペンタエリトリトールエステル、例えば、淡色ウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリトリトールエステルおよびロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステル;
天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー、例えば、スチレン/テルペンおよびα−メチルスチレン/テルペン;
ASTM法E28−58Tによる測定で、約80℃〜150℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂;
フェノール変性テルペン樹脂およびそれらの水素化誘導体、例えば、二環式テルペンおよびフェノールの、酸性媒質中の、縮合反応から生ずる樹脂生成物;
約70℃〜135℃の環球軟化点を有する脂肪族石油炭化水素樹脂;
芳香族石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体;
並びに脂環族石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体;
環式または非環式C5樹脂および芳香族変性非環式または環式樹脂も包含される。
これら粘着付与樹脂は、単独で用いられても良いし、2種以上が混合されても良い。
また、種々の可塑剤または希釈剤は粘着組成物の約50質量%までの量で、好ましく約10〜約45質量%の量で組成物中に存在することができる。希釈剤は、DSCにより測定して、室温より低いガラス転移温度(Tg)を有する液状または半固体状の物質である。これらは可塑化油または増量油および液状粘着付与剤を包含する。液状粘着付与剤は、ロジン誘導体、例えば、ロジンアルコール、ロジンのメチルエステルおよびジエチレングリコールをロジンでエステル化することによって製造されたロジンエステルを包含する。他の例は、低分子量炭化水素樹脂、例えば、Wingtack 10 (Goodyearから入手可能である) およびEsorez 2520 (Exxon Chemicalから入手可能である) である。
適当な可塑剤または増量油は、オレフィンオリゴマーおよび低分子量ポリマー並びに植物油および動物油およびそれらの誘導体を包含する。使用できる石油由来油は、小比率のみの芳香族炭化水素 (油に基づいて好ましくは30質量%より少ない、より好ましくは15質量%より少ない) を含有する、比較的高沸点の物質である。選択的に、油は完全に非芳香族であることができる。適当なオリゴマーは、約350〜約10,000の平均分子量を有するポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン等を包含する。本発明において使用するために適当な油の例は、LUMINOL T350およびKAYDOL OIL (両方はWitco Corporationから入手可能である) である。ナフテン系油、例えば、Calsol 5550 (Calumetから入手可能である) も有用である。
他の適当な希釈剤は、脂肪族エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステルおよびアゼライン酸エステル、パラフィン、例えば、塩素化パラフィンおよびポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール並びにそれらのランダムまたはブロックコポリマーを包含する。フタル酸エステル、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−デシル、フタル酸ビス−2−エチルヘキシルおよびフタル酸ジイソデシル、ポリプロピレングリコールおよびアジピン酸ジトリデシルは本発明の実施において使用するために特に好ましい希釈剤である。
本発明に係る粘着組成物に、酸化防止剤又は安定剤を、約3重量%までの量で添加することが好ましく、約0.5重量%までの量で添加することがより好ましい。
安定剤または酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール単独物、または一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との混合物がある。一次酸化防止剤としてはヒンダードフェノールが挙げられ、二次酸化防止剤としてはジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(「DLTDP」)が例示される。
代表的酸化防止剤は下記のものを包含する:1,3,5−トリメチル2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリトリチルテトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、4,4’−メチレンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、6−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,4−ビス(n−オクチル−チオ)−1,3,5−トリアジン、ジ−n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエートおよびソルビトールヘキサ[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]。IRGAFOS 168 (Chibaから入手可能である二次酸化防止剤) およびIRGANOX 1010 (Chiba−Geigyから入手可能であるヒンダードフェノール一次酸化防止剤) は好ましい。他の酸化防止剤は、ETHANOX 330 (Albermarleからのヒンダードフェノール)、SANTOVAR (Monsantoからの2,5−ジt−アミルヒドロキノン)およびNAUAGARD P (Uniroyalからのトリス (p−ノニル) ホスファイト) を包含する。
また、異なる性質を満足しかつ特定の適用必要条件を満足するため、他の添加剤を、本発明の粘着組成物に添加することができる。このような添加剤は、例えば、充填剤、顔料、流れ調整剤、染料を包含し、これらは目的に依存して接着剤配合物に少量または大量に混入することができる。
本発明に係る粘着組成物は、公知技術によって製造することができる。典型的には、(I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)アクリル重合体とが均質にブレンドされるまで、一般に約2時間、約100〜200 ℃の温度で両成分を溶融配合することにより、粘着組成物が製造される。配合法は特に限定されるものではなく、粘着付与樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の各種添加剤は、(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体とを配合するときに一緒に配合するのが好ましいが、(I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体とが均一に配合されてから後添加しても差し支えない。
粘着組成物は、ホットメルト型粘着剤として好適である。ホットメルト型粘着剤は、例えば、医療用途、工業的用途、位置決め接着剤及びびんラベル貼り接着剤について使用される。
本発明の粘着組成物は、テープ、フィルム、シート等の基材に塗工され、粘着製品の製造に利用される。基材の材質としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、エチレン酢酸ビニル、アセタール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、金属箔等を例示できる。
本発明に係る粘着組成物から製造される粘着製品としては、医療用テープ、工業用テープ、シート、カイロ、貼布剤、シール、ラベル、ネームプレート、再閉鎖可能なファスナーを例示できる。
粘着製品の一態様である「医療用テープ」とは、薬剤を含有する経皮吸収品、薬剤を含有しない単なるテープの双方を含む。この場合、粘着製品が貼り付けられる被着体は、人肌となる。
本明細書において、「工業用テープ」とは、いわゆるシーリングテープや養生テープをいう。金属、プラスチック、無機材料等の被着体に多く利用される。
粘着製品が「カイロ」の場合、基材はポリエステル等のフィルムや不織布であり、被着体は、綿、毛、シルク、レーヨン、ポリエステル等を素材とする衣類となる。
粘着製品が「ラベル」の場合、被着体は、瓶(ガラス)、缶(金属)、プラスチックとなり、ラベルはこれらの被着体に貼り付けられて飲料用途に適用され得る。
このように、本発明に係る粘着製品には種々の態様があるが、いずれも被着体から剥離させたとき、粘着層が被着体に残らず、界面剥離するように、設計される。
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
本発明の粘着組成物は、好ましくはホットメルト型であり、この場合、(I)アクリル系ブロック共重合体及び(II)アクリル重合体成分、必要に応じて、更に粘着付与剤及び酸化防止剤等を配合し、加熱溶融して混合することで製造される。具体的には、上記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することで製造することができる。
(1)以下に記載した方法で粘着組成物を製造した。詳細を以下に示す。
〈実施例1〉
成分(I)アクリル系ブロック共重合体として、(ポリメチルメタクリレート(A)−ポリn−ブチルアクリレート(B1)−ポリメチルメタクリレート(A))で表されるトリブロック共重合体[クラレ社製の商品名「LA2140e」(重合平均分子量Mw=約80000、重合ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(2)のRの炭素数が4であるブチルアクリレート)](以下、「(I)−1」ともいう)と、成分(II)アクリル重合体として、(ポリn−ブチルアクリレート(B2))で表されるアクリル重合体[東亜合成社製の商品名「ARUFON UP」(重合平均分子量Mw=約2000、重合体(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3)のRの炭素数が4のブチルアクリレート)](以下、「(II)−1」ともいう)を下記の表1に示す配合割合で配合し、さらに粘着付与剤として、フェノール変性テルペン樹脂[ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスター TH130」](以下、「(TA)−1」ともいう)9.1重量部及びロジンエステル[荒川化学社製商品名「スーパーエステル A−75」](以下、「(TA)−2」ともいう)25.9重量部(従って、粘着付与樹脂は、総重量が35重量部)と、酸化防止剤として、一次酸化防止剤であるヒンダードフェノール[エーピーアイコーポレーション社製商品名「トミノックス TT」](以下、「(AN)−1」ともいう)0.2重量部及び硫黄系二次酸化防止剤[住友化学工業社製「スミライザー TPS」](以下、「(AN)−2」ともいう)0.2重量部(従って、酸化防止剤は、総重量が0.4重量部)を配合して、約150℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、粘着組成物を調製した。
〈実施例2〜5、比較例1及び比較例5〉
アクリル系ブロック共重合体(I)−1とアクリル重合体(II)−1の配合割合を下記の表1及び2に示す重量部に変えて、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈実施例6〉
実施例1に記載のアクリル重合体成分(II)−1を、(ポリn−ブチルアクリレート(B2))で表されるアクリル重合体[東亜合成社製商品名「ARUFON UP」(重合平均分子量Mw=約3000、(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3)のRの炭素数が4のブチルアクリレート)](以下、「(II)−2」ともいう)に変更し、また、(I)−1と(II)−2の配合割合を下記の表1に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈実施例7〉
実施例1に記載のアクリル重合体成分(II)−1を、(ポリ2−エチルヘキシルアクリレート(B2))で表されるアクリル重合体[綜研化学社製商品名「アクトフロー UT」(重合平均分子量Mw=約3500、重合体(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3)のRの炭素数が8の2−エチルヘキシルアクリレート)](以下、「(II)−3」ともいう)に変更し、また、(I)−1と(II)−3の配合割合を下記の表1に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈比較例2〉
実施例1に記載のアクリル系ブロック共重合体成分(I)−1を、(ポリメチルメタクリレート(A)/ポリn-ブチルアクリレート(B1))で表されるアクリル系ランダム共重合体[三菱レーヨン社製商品名「Dianal BR106」](以下、「(I)’−1」ともいう)に変更し、また、(I)’−1と(II)−1の配合割合を下記の表2に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈比較例3〉
実施例1に記載のアクリル重合体成分(II)−1を、(ポリメチルアクリレート)で表されるアクリル重合体[綜研化学社製 「アクトフロー UMM」(重量平均分子量Mw=約950)](以下、「(II)’−1」ともいう)に変えて、また、(I)−1と(II)’−1の配合割合を下記の表2に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈比較例4〉
実施例1に記載のアクリル重合体成分(II)−1を、(ポリn−ブチルアクリレート)で表されるアクリル重合体[東亜合成社製商品名「ARUFON UH」(重量平均分子量Mw=約11000)](以下、「(II)’−2」ともいう)に変えて、また、(I)−1と(II)’−2の配合割合を下記の表2に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
〈比較例6〉
実施例1に記載のアクリル重合体成分(II)−1を、アジピン酸系可塑剤[和光純薬工業製アジピン酸ジオクチル](以下、「(II)’−3」ともいう)に変えて、また、(I)−1と(II)’−3の配合割合を下記の表2に示す重量部で、実施例1と同様にして粘着組成物を調製した。
(2)上述の(1)で調製した粘着組成物について、溶融粘度及び180°剥離強度(対ステンレス板、対標準ダンボール、対ポリエチレン板、対ポリスチレン板)を下記の方法を用いて測定した。
溶融粘度及び塗工適性
溶融粘度は粘着組成物を加熱溶融し、160℃において溶融状態の粘着組成物の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定した。
また、160℃における溶融粘度に基づいて塗工適性を評価した。塗工適性の評価は、下記の通りである。
「500〜7000mPa・s」 (◎)
「100〜500mPa・s」 (○)
「100mPa・sより低い」又は「7000〜20000mPa・s」 (△)
「20000mPa・sより高い」 (×)
適度な溶融粘度を有することは、塗工性が良好であるとの目安となる。
180°剥離強度及び剥離状態
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに20μmの厚さとなるように粘着組成物を塗布した。塗布したPETフィルムを25mm幅に切断して試験体とした。試験体を各被着体(ステンレス板、標準ダンボール、ポリエチレン板、ポリスチレン板)に20℃の雰囲気下、2kgローラーを用いて貼り合せた後、各測定温度(0℃又は20℃)雰囲気下で2時間養生した。その後、300mm/minの速度で剥離したときの強度を測定した。
また、剥離後の被着体の剥離状態を目視で観察した。剥離状態の評価は以下の通りである。
「界面剥離」 (◎)
「一部ジッピング」又は「一部凝集破壊」 (○)
「ジッピング」、「層間剥離」又は「凝集破壊」 (×)
「養生中被着体から剥がれたため測定不可」 (−)
尚、剥離状態は下記の用語で示す。
「界面剥離」とは、被着体に対する粘着剤の付着が無いことを意味する。本発明において、剥離性が良好であるとは、界面剥離を生じさせることとしている。即ち、被着体から界面剥離を促す粘着組成物は、性能が良好であることを意味する。
「一部ジッピング」又は「一部凝集破壊」とは、全体的には界面剥離であるが、貼り合せ面積の5%以下でジッピング又は凝集破壊があることを意味する。
「ジッピング」とは、剥離速度にムラがあり、剥離強度が小刻みに変動することを意味する。
「層間剥離」とは、基材(ポリエスエルフィルム)上の粘着剤が被着体側へ転写されることを意味する。
「凝集破壊」とは、基材(ポリエステルフィルム)上と被着体の両方に粘着剤が付着することを意味する。
(3)上述の(1)で調製した粘着組成物について、厚さが50μmのポリエステルフィルムに20μmの厚さとなるように粘着組成物を塗布した。粘着組成物を塗布したポリエステルフィルムを25mm幅に切断して試験体とした。試験体を被着体(標準ダンボール)に20℃雰囲気下、2kgローラーを用いて貼り合せた後、40℃雰囲気下で24時間養生した。その後被着体の表面を目視で観察した。評価を以下の二つに大別した。
「マイグレーションがない」 (○)
「マイグレーションがある」 (×)
「マイグレーション」とは、粘着組成物に配合された可塑剤、酸化防止剤等が被着体表面に移行することを意味する。マイグレーションがないことは、被着体に対し良好な粘着組成物であるとの目安となる。
実施例、比較例の粘着組成物について上記評価を行い、その結果を表1〜3に示した。
Figure 2008106176
Figure 2008106176
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表1に示されるように、実施例1〜7の粘着組成物は、常温(20℃)剥離強度について良好な接着力を示した。更に、特に低温(0℃)時の剥離強度についても良好な接着力を示した。その上、表1に記載のどの被着体(ステンレス板、標準ダンボール、ポリエチレン板、ポリスチレン板)に対しても、剥離後の被着体の状態は、基本的に界面剥離であり、接着力と被着体からの剥離のバランスに優れている。さらに、溶融塗工に適した溶融粘度を有しており、実施例4〜6はより好ましい塗工適性を有する。
また、表1の結果(特に実施例4〜7の結果)から、本発明の粘着組成物において、成分(I)アクリル系ブロック共重合体を50重量部以上含んで成る場合、実施例3よりも標準ダンボールに対する剥離が、より界面剥離であり、剥離について、更に優れることがわかる。
さらに、実施例5及び7の結果を比較すると、成分(I)アクリル系ブロック共重合体に含有される重合体ブロック(B1)と成分(II)アクリル重合体に含有される重合体(B2)の関係が、(B1)=(B2)である実施例5の方が、(B1)≠(B2)である実施例7より、ポリエチレン板及びポリスチレン板に対する剥離について優れることがわかる。
一方、表2の比較例1〜4に示す粘着組成物は、低温剥離強度が低い。また、たとえ剥離強度が良好であっても、表2に記載のどの被着体(ステンレス板、標準ダンボール、ポリエチレン板、ポリスチレン板)に対しても、剥離後の被着体の状態はジッピング、層間剥離や凝集破壊であり、接着力と被着体からの剥離のバランスに問題がある。さらに、比較例1及び4は溶融粘度が高く、溶融塗工が困難である。
比較例5は、成分(I)の含有量が多く、成分(II)の含有量が低く、溶融粘度が高いので、塗工適性が低下している。
また、上記の表3の比較例6は特許文献4に記載された発明に対応するものであるが、被着体(標準ダンボール)に対するマイグレーション性に問題があり、粘着組成物のしみだしなどを引き起こすと考えられる。

Claims (7)

  1. (I)アクリル系ブロック共重合体と、(II)アクリル重合体とを含む粘着組成物であって、
    (I)アクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(A)及びアクリル酸誘導体に由来する重合体ブロック(B1)を含有するブロック共重合体であり、
    (II)アクリル重合体は、アクリル酸誘導体に由来する重合体(B2)を含み、重量平均分子量が1000〜10000の低分子量重合体であり、
    (I)アクリル系ブロック共重合体と(II)アクリル重合体の合計を100重量部として、(I)アクリル系ブロック共重合体の重量が70重量部以下である粘着組成物。
  2. (I)アクリル系ブロック共重合体は、式(1):
    A−B1−A (1)
    で示されるトリブロック共重合体を含んで成る請求項1に記載の粘着組成物。
  3. (I)アクリル系ブロック共重合体は、重量平均分子量が10000〜200000である請求項1又は2に記載の粘着組成物。
  4. 重合体ブロック(B1)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(2):
    CH=CH−COO−R
    [ただし、Rの有する炭素原子数は1〜12である]
    で示される化合物であり、
    重合体(B2)を得るために使用されるアクリル酸誘導体は、式(3):
    CH=CH−COO−R
    [ただし、Rの有する炭素原子数は1〜8である)]
    で示される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着組成物。
  5. ホットメルト型粘着剤として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の粘着組成物。
  6. 粘着組成物全体の重量の合計を100重量%として、20.0〜80.0重量%の(II)アクリル重合体を含む請求項1〜5のいずれかに記載の粘着組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載された粘着組成物が塗工された粘着製品。
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