JP2008082403A - 転がり軸受、これを有するプーリ装置及びその転がり軸受の製造方法 - Google Patents

転がり軸受、これを有するプーリ装置及びその転がり軸受の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】過大荷重の発生を使用者に警告することができる転がり軸受、これを有するプーリ装置及びその転がり軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】内周面に外輪軌道10を有する外輪4と、この外輪4と同心で且つ外周面に内輪軌道11を有する内輪5と、内外輪軌道10,11間に転動自在に設けられた複数の転動体6とを備えている。前記外輪軌道10及び内輪軌道11のいずれか一方が、適正荷重が負荷される正常状態で前記転動体6が転走する第1軌道面10aと、前記適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体6が転走する第2軌道面10bとを有し、この第2軌道面10bは前記転動体6との接触で異音が発生する形状12aに形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、転がり軸受、これを有するプーリ装置及びその転がり軸受の製造方法に関する。
従来、オルタネータやエアコン等のエンジン補機は、エンジンのクランクとつながれたベルトによって駆動されており、このベルトの張力やレイアウトを自在にするためにアイドラプーリが用いられている。このアイドラプーリとして、外周面にベルトが掛けられるプーリ本体と、このプーリ本体の内周に圧入された2列の転がり軸受とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−337383号公報
しかしながら、前記アイドラプーリに、ベルトの張り過ぎ等で適正荷重を超える過大荷重が負荷された場合には、この過大荷重が原因でプーリ本体の疲労が促進されたり、その内周に装着された転がり軸受が早期寿命に至る場合があった。また、ベルトの張り過ぎは他の補機部品にも悪影響を与える恐れがあった。
そこで本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、過大荷重の発生を使用者に警告することができる転がり軸受、これを有するプーリ装置及びその転がり軸受の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための本発明の転がり軸受は、内周面に外輪軌道を有する外輪と、この外輪と同心で且つ外周面に内輪軌道を有する内輪と、内外輪軌道間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備えた転がり軸受であって、
前記外輪軌道及び内輪軌道のいずれか一方が、適正荷重が負荷される正常状態で前記転動体が転走する第1軌道面と、前記適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体が転走する第2軌道面とを有し、この第2軌道面は前記転動体との接触で異音が発生する形状に形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、転がり軸受に異常な荷重がかかると、転動体が第2軌道面に接触することで異音を発生する。この異音により使用者は異常な荷重の発生を認識することができるので、転がり軸受が破損するのを防ぐことができる。
上記転がり軸受において、前記異音が発生する形状をうねりの山とすることができる。
本発明のプーリ装置は、その外周にベルトが掛けられるプーリ本体と、
このプーリ本体の内周に圧入される転がり軸受とを備えたプーリ装置であって、
前記転がり軸受が上記の転がり軸受であることを特徴としている。
このプーリ装置には上記転がり軸受が用いられているので、プーリ装置に異常な荷重がかかると、転がり軸受から異音が発生する。これにより使用者は異常な荷重の発生を認識することができるので、プーリ本体及び転がり軸受が破損するのを防ぐことができる。
本発明の転がり軸受の製造方法は、内周面に外輪軌道を有する外輪と、この外輪と同心で且つ外周面に内輪軌道を有する内輪と、内外輪軌道間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備えた転がり軸受の製造方法において、
前記外輪又は内輪の軌道面を、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体が転走して異音が発生する形状に形成し、
その後に、適正荷重が負荷される正常状態で前記転動体が転走する面を形成することにより、前記外輪軌道又は内輪軌道を得ることを特徴としている。
上記製造工程を逆の順序で行うと、最後に超仕上げをして第1転動面を形成する必要があり、3工程となるが、この製造方法では、先に形状精度の悪い軌道面を形成してから超仕上げを行うことで第1転動面を形成することができ、超仕上げされずに残った面が第2軌道面となるため2工程で軌道を得ることができる。よって、この製造方法によれば、外輪軌道又は内輪軌道の製造に手間がかからないため、異常な荷重の発生を使用者に異音で警告することができる転がり軸受を少ない手間で得ることができる。
上記転がり軸受の製造方法において、前記異音が発生する形状は、回転砥石と外輪又は内輪との回転速度比が整数となるように両者の回転速度を設定して研削加工を行うことにより形成されることが好ましい。
この場合、軌道面にうねりの山が形成されるため、異常な荷重がかかると転動体がうねりの山を通過するときに振動し、これにより異音を発生させることができる。
本発明によれば、異常な荷重の発生を異音によって使用者に警告することができ、これにより転がり軸受及びこれを有するプーリ装置の破損を防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のプーリ装置の1つの実施形態を示す断面図であり、図2は、図1のプーリ装置の転がり軸受部分の要部拡大断面図であり、図3は、図2のIII−III方向から見た拡大断面図である。以下の説明において、左右とは図1の左右というものとする。
図1に示すプーリ装置1は、プーリ本体2と左右2列の転がり軸受(玉軸受)3とが一体化されて形成されており、自動車エンジン用のアイドラとして使用されるものである。
プーリ本体2は、鋼板プレス製であり、その外周面にベルトが掛けられる大径円筒部2aと、この大径円筒部2aの一端部である左端部から径方向内向きに屈曲した第1フランジ部2bと、前記大径円筒部2aと同心となるように当該第1フランジ部2bの内周部から軸方向に延びる小径円筒部2cと、この小径円筒部2cの一端部である右端部から径方向内向きに屈曲した第2フランジ部2dとから構成されている。
左右の玉軸受3は同じ形状とされており、それぞれ、プーリ本体2の小径円筒部2cの内周面に圧入された外輪4と、この外輪4と同心の内輪5と、これら内外輪4,5間に転動自在に設けられた転動体としての複数の玉6と、この玉6を転動自在に保持する保持器7と、内外輪4,5間を密封空間とするための一対のシール部材8,9とを備えている。外輪4は、その内周面に外輪軌道10を有しており、内輪5は、この外輪4と同心で且つ外周面に内輪軌道11を有している。左右の玉軸受3は、小径円筒部2cの内周面に左方から圧入され、右側の玉軸受3の外輪4の右端面が内側フランジ部2dの内側面である左面に当接することにより、プーリ本体2に対する玉軸受3の軸方向位置が位置決めされている。
図2及び図3に示すように、各玉軸受3の外輪4の外輪軌道10は、適正荷重が負荷される正常状態で前記玉6が転走する第1軌道面10aと、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記玉6が転走する第2軌道面10bとを有している。そして、この第2軌道面10bは、前記玉6との接触で異音が発生する形状に形成されている。ここでは、この異音が発生する形状がうねりの山12aとされている。なお、図3においては、玉の数が8個、うねりの山12aの数を8個とした玉軸受3を記載しているが、これらの数はあくまでも例示である。また、図3においては、外輪軌道10のうねりを誇張して記載しているが、実際のうねりの山12aの高さは約1μm程度である。
玉6は適正荷重で使用される正常状態では第1軌道面10aを転走するが、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態では第2軌道面10bを転走する。この第2軌道面10bはうねりの山12aを有しているため、玉6が通過する際に振動することにより異音を発生する。ここで、第2軌道面10bは、モーメント(オフセット荷重)が発生したときに玉6が接触して異音が発生する面10b1,10b2と、ラジアル荷重が過大であるときに玉6が接触して異音を発生する面10b3とから構成されている。
次に、外輪4の内周面に外輪軌道10を形成する方法を説明する。
外輪軌道10は、外輪4の軌道面を、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で玉6が転走して異音が発生する形状に形成する第1工程と、適正荷重が負荷される正常状態で玉6が転走する面を形成する第2工程により得ることができる。
第1工程では、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で玉6が転走して異音が発生する形状に形成された一次軌道面12を形成する。ここでは、前記異音が発生する形状は、回転砥石20と外輪4との回転速度比が整数となるように両者20,4の回転速度を設定して研削加工を行うことにより形成され、これにより、うねりの山12aを有する一次軌道面12が形成される。
この研削加工は、例えば、心無研削盤を用いて行われる。心無研削盤は、回転砥石20と図示しない回転支持装置とを備えており、この回転支持装置により外輪4を支持し、この外輪4の内周側に上記回転砥石20を挿入し、この回転砥石20の研削面を上記外輪4の内周面に押し付けた状態で、これら回転砥石20と外輪とを互いに回転速度を異ならせて同方向に回転させる。この結果、上記外輪4の内周面が上記回転砥石20の外周面に順次接触することにより、この外輪4の内周面が研削される。
ここで、回転砥石20の回転速度nwと外輪4の回転速度niとの回転速度比Z=nw/niが整数となるように回転砥石20と外輪4の回転速度を設定する。すなわち、上記心無研削盤は、回転砥石20の不可避的なアンバランスにより、研削加工時にこの回転砥石20の振れ回りが発生する。この回転砥石20の振れ回りは軌道に転写され、軌道にうねりを発生させるが、特に回転速度比Z=nw/niを整数とした場合に、軌道一円周当たりZ個のうねりの山12aを有する一次軌道面12が形成されるのである。
図4及び図5は、外輪4の一次軌道面12の形成過程を示す説明図である。上記回転速度比Zが整数になると、回転砥石20の回転中心20aからの半径が小さいところの作業面で削られる外輪4の内周面は、図4のように山形になり、上記半径が大きいところの作業面で削られる外輪4の内周面は、図5のように谷形になる。その結果、前記回転速度比Zを8という整数に設定すると、外輪4の内周面の断面形状は、全体としてその整数の8に等しい8角形となり、8個のうねりの山12aができる。外輪軌道10にこのようなうねりの山12aが存在すると、運転時に外輪軌道10と玉6とが勢いよく衝突することで振動が生じ、この振動が原因となって異音が発生するのである。なお、図4及び図5では、外輪軌道10のうねりを誇張して記載している。
次に、第2工程において、適正荷重が負荷される正常状態で玉6が転走する面(第1転動面)10aを形成する。ここでは、異常な荷重が負荷されると前記玉6がうねりの山12aを有する一次軌道面12を通過するように、前記うねりの山12aを残して超仕上げを行う。その結果、超仕上げした面が前記第1転動面10aとなり、超仕上げされずに残った研磨目(うねりの山12a)の部分が第2転動面10bとなる。
また、内輪5の内輪軌道11は通常の軌道形成方法によって形成される。
第1工程と第2工程とを逆の順序で行うと、最後に超仕上げをして第1転動面10aを形成する必要があり、3工程となるが、この製造方法では、先に形状精度の悪い軌道面(一次軌道面)12を形成してから超仕上げを行うことで第1転動面10aを形成することができ、超仕上げされずに残った面が第2軌道面10bとなるため2工程で軌道を得ることができる。よって、この製造方法によれば、外輪軌道10の製造に手間がかからないため、異常な荷重の発生を使用者に異音で警告することができる転がり軸受(玉軸受)3を少ない手間で得ることができる。
なお、第2軌道面10bは、外輪軌道10又は内輪軌道11のいずれか一方に形成されていればよいので、内輪軌道11に形成することも可能である。この場合、内輪5の回転速度と内輪研削用の回転砥石の回転速度との回転速度比が整数になるように研削を行えばよい。
上記プーリ装置1によれば、プーリ装置1に異常な荷重がかかると、転がり軸受(玉軸受)3の転動体である玉6が第2軌道面10bのうねりの山12aを通過するときに振動することで転がり軸受(玉軸受)3から異音が発生する。これにより使用者は異常な荷重の発生を認識することができるので、プーリ本体2及び転がり軸受(玉軸受)3が破損するのを防ぐことができる。
なお、本発明のプーリ装置1は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、本発明のプーリ装置1は、アイドラプーリとしてだけでなく、エンジン補機プーリ、テンションプーリ等とすることができる。プーリ装置1の転がり軸受として、上記実施の形態では玉軸受3を左右2列に並べて使用しているが、玉軸受3は単列でもかまわない。また、上記の実施形態では左右の玉軸受3の両外輪4に第2軌道面10bを設けているが、必ずしも両方の外輪4に設ける必要はなく、いずれか一方の外輪4に設ければよい。第2軌道面10bを内輪5に設けることも可能であり、この場合も少なくとも左右いずれか一方の内輪5に設ければよい。また、第2軌道面10bに形成される形状は、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体(玉)6が転走して異音が発生する形状であればよく、上記実施形態のようなうねりの山12aに限定されるものではない。
転がり軸受(玉軸受)3はプーリ装置2に組み込まれる場合に限られず、単独で使用することもできる。この場合、転がり軸受3に異常な荷重がかかると、転動体である玉6が第2軌道面10bに接触することで異音を発生する。この異音により使用者は異常な荷重の発生を認識することができるので、転がり軸受3が破損するのを防ぐことができる。
本発明のプーリ装置の1つの実施形態を示す断面図である。 図1のプーリ装置の転がり軸受部分の要部拡大断面図である。 図2のIII−III方向から見た拡大断面図である。 外輪の一次軌道面の形成過程を示す説明図である。 同じく外輪の一次軌道面の形成過程を示す説明図である。
符号の説明
1 プーリ装置
2 プーリ本体
2a 大径円筒部
3 玉軸受(転がり軸受)
4 外輪
5 内輪
6 玉(転動体)
10 外輪軌道
10a 第1軌道面
10b 第2軌道面
12 一次軌道面
12a うねりの山

Claims (5)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、この外輪と同心で且つ外周面に内輪軌道を有する内輪と、内外輪軌道間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備えた転がり軸受であって、
    前記外輪軌道及び内輪軌道のいずれか一方が、適正荷重が負荷される正常状態で前記転動体が転走する第1軌道面と、前記適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体が転走する第2軌道面とを有し、この第2軌道面は前記転動体との接触で異音が発生する形状に形成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記異音が発生する形状がうねりの山である請求項1に記載の転がり軸受。
  3. その外周にベルトが掛けられるプーリ本体と、
    このプーリ本体の内周に圧入される転がり軸受とを備えたプーリ装置であって、
    前記転がり軸受が請求項1又は2に記載の転がり軸受であることを特徴とするプーリ装置。
  4. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、この外輪と同心で且つ外周面に内輪軌道を有する内輪と、内外輪軌道間に転動自在に設けられた複数の転動体とを備えた転がり軸受の製造方法において、
    前記外輪又は内輪の軌道面を、適正荷重以外の荷重が負荷される異常状態で前記転動体が転走して異音が発生する形状に形成し、
    その後に、適正荷重が負荷される正常状態で前記転動体が転走する面を形成することにより、前記外輪軌道又は内輪軌道を得ることを特徴とする転がり軸受の製造方法。
  5. 前記異音が発生する形状は、回転砥石と前記外輪又は内輪との回転速度比が整数となるように両者の回転速度を設定して研削加工を行うことにより形成される請求項4に記載の転がり軸受の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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