JP2007305453A - リチウムイオンポリマー電池 - Google Patents

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Abstract


【課題】 高密度充填された電極へのプレゲル溶液の含浸性を向上させ、電極とゲル電解質との接触面積を増加させハイレート特性を改善し、充放電サイクルに伴うセル厚みの増加を抑制したリチウムイオンポリマー電池を提供する。
【解決手段】 電極活物質表面をカップリング剤により表面処理を行うことで、高密度充填された正極11および負極12のうち少なくとも負極12への、十分なポリマー濃度を有したプレゲル溶液の高い含浸性を確保し、さらに、カップリング剤を介して電極活物質とゲル電解質のポリマーを結合させることにより、電極とゲル電解質の密着性を高める。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウムイオンポリマー電池に関し、さらに詳しくは電極活物質層を表面処理したリチウムイオンポリマー電池に関する。
近年種々の携帯機器は小型化が進み、それに伴い、電源となる電池に対し高容量化、高出力化、形状の多様化が求められている。また、携帯機器においては、安全性が高いことも求められている。現在多くの携帯機器には、リチウムイオン電池が用いられているが、リチウムイオン電池は、アルミ缶ケースに封入されるものが多く設計の自由度が低いという欠点があった。
リチウムイオンポリマー電池は、電解液の代わりにゲル電解質を用い、耐漏液性が向上することから、外装体として生産性の簡便なラミネート外装体を用いるラミネート外装が可能となり、形状選択の自由度が高いという特徴を有する。また、なんらかの不具合で電池の内圧が上昇した際に、ラミネート外装は、缶ケースよりも低い圧力で外装体が破壊されるため、周辺に及ぼす影響が少ない。また、漏液しないゲル電解質を用いることで、万一外装体が破壊された場合でも、可燃性の液体が外部へ漏れ出さないという利点があり、安全性が高い電池として開発が進んでいる。
リチウムイオンポリマー電池の作製方法としては、大きく分けて2通りの方法がある。
まず、特許文献1や特許文献2に記載されるように、正極や負極またはセパレータにゲル電解質形成可能な溶液(プレゲル溶液)を塗布し、紫外線などの活性光線、電子線や、熱によりゲル電解質層またはポリマー層を形成した後、電極(正極および負極)を積層または巻回して電池を形成し、外装を施す手法(塗布−硬化型)がある。この場合、電極やセパレータ上にプレゲル溶液を塗布する工程と、それを硬化させる工程とを有するため、製造工程が煩雑となる。また、塗布工程においてプレゲル溶液が大気にさらされるため、塗布・硬化条件において電解液が揮発しない条件が必要となる。つまり、電解液が揮発することを防ぐため、揮発性の高いジエチルカーボネート(DEC)やメチルエチルカーボネート(MEC)などの低沸点溶媒を使用できず、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの高沸点溶媒の使用を余儀なくされる。したがって、プレゲル溶液の粘度が高くなり、電極やセパレータへの含浸が困難となる問題があった。
次に、特許文献3に記載されるように、セパレータを介し正極と負極を対向させ、外装体へ封入した後、ゲル電解質形成可能な溶液(プレゲル溶液)を注入して封止し熱によりゲル電解質を形成する手法(後注液型)がある。この場合、製造工程は電池内に注入されたプレゲル溶液を熱によりゲル化する工程のみが必要となる。プレゲル溶液は、大気にさらされないため、溶媒の選択性も広がり、低沸点溶媒を使うことができる。しかし、プレゲル溶液の粘度は、ポリマー成分を添加するため、通常の電解液よりも大きくなる傾向にある。したがって、含浸性が低くなるため、電解液を使用したリチウムイオン電池と比較して容量やレート特性が低下する傾向にある。
また、低温での正極と電解液とのぬれ性を改善する方法として、特許文献4には、有機反応基としてエポキシ基またはアミノ基を有するシランカップリング剤を添加した正極スラリーを塗布する記載がある。
特開2000−67866号公報 特開平10−74526号公報 特開平11−283673号公報
リチウムイオンポリマー電池においては、プレゲル溶液を電極へ含浸する工程が必要となる。その際、電極へのプレゲル溶液の含浸性は非常に重要となる。たとえば、電極とプレゲル溶液がなじみやすい場合や粘度が低い場合は真空含浸により電極内部までプレゲル溶液が含浸される。しかしながら、プレゲル溶液の粘度が低い場合でも、高密度充填された電極への含浸は容易ではない。含浸性が悪い場合、電極細孔内において、電極活物質とゲル電解質が接触できない部分が生じ容量が低下、または接触が十分でない場合、イオン伝導のパスが細いためハイレート特性が低下する。特に高容量化に設計されたリチウムイオンポリマー電池では負極の電極密度を高めてあるため、負極における電解液の含浸性が非常に問題となる。
さらにプレゲル溶液のポリマー濃度を下げることで、粘度を下げることができるが、その場合、プレゲル溶液が電極内でゲル化しなくなる恐れがあり、アクリルモノマーが電池内に残存すると電池特性の低下を招く恐れがある。
また、電極へプレゲル溶液を塗布する塗布−硬化型は、ゲル電解質層を形成した後に電極とセパレータを積層または巻回するため、ゲル電解質層と電極およびセパレータとの密着性が高いのに対し、プレゲル溶液を注液し硬化する後注液型では、巻回した電極巻回体(以降J/Rと記載)の平坦部分と折り曲げ部分での密着性を均一にすることが困難である。したがって充放電サイクルに伴い電荷の偏りが生じ電極が膨潤することがある。
シランカップリング剤を添加した正極スラリーを塗布する場合には、シランカップリング剤処理を施した正極と電解液との作用により、低温での含浸性を向上させたものであるが、カップリング剤層を形成するのみでは層が抵抗成分となり、低温特性またはレート特性を向上させることはできない。また、含浸性が重要となるのは負極であり、ゲル電解質を用いる場合には、正極に表面処理を施しても充分な含浸性が得られない。
本発明は、高密度充填された電極への、十分なポリマー濃度を有したプレゲル溶液の高い含浸性を確保し、さらに電極とゲル電解質の密着性を高めることにより、レート特性に優れ、電池の抵抗増加とセル厚みの増加を抑制したリチウムポリマー電池を提供するものである。
本発明は、表面処理剤により改質された正極および負極、または負極の電極活物質を用いることにより、さらに詳しくは、(1)集電体上に塗布、乾燥した電極を所定のpH濃度に調整したカップリング剤からなる表面処理剤溶液に浸漬含浸させた後所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極、もしくは(2)集電体上に塗布、乾燥した電極に所定のpH濃度に調整したカップリング剤溶液を塗布した後、所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極、もしくは(3)粉末の電極活物質を所定のpH濃度に調整したカップリング剤からなる表面処理剤溶液に浸漬含浸または噴霧した後、所定の温度で電極活物質とカップリング剤との縮合反応をさせることにより表面処理を行った電極活物質からなる電極、もしくは(4)カップリング剤溶液を添加した電極スラリーを集電体上に塗布、乾燥した後、所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極を用い、アクリレート系のプレゲル溶液を(A)塗布−硬化型、もしくは(B)後注液型によりリチウムイオンポリマー電池を得ることにより上記課題を解決することを見出したものである。
すなわち、本発明のリチウムイオンポリマー電池は、正極、負極、セパレータおよびゲル電解質を有するリチウムイオンポリマー電池において、前記正極および前記負極のうち少なくとも負極の電極活物質層が表面処理剤により改質されたことを特徴とする。
また、前記表面処理剤が、シラン系カップリング剤、アルミ系カップリング剤、チタニウム系カップリング剤から選択される少なくとも一種を含むとよい。さらに、前記ゲル電解質が、少なくとも1種以上のアクリレートモノマーを重合してなるとよい。そして、前記電極活物質が、前記表面処理剤の含浸により処理されてもよいし、塗布により処理されてもよいし、前記電極活物質のスラリー中に表面処理剤を混合することにより形成されてもよい。また、これらのカップリング剤の有機官能基としては、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基などが挙げられ、アクリレートと重合反応が可能な有機反応基を有するものとする。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る酸化物、例えば、LiCoO、LiNi1−xCo、LiMn、LiNiMn2−x(ここで0<X≦1)など金属酸化物正極材料が使用できる。負極活物質としては、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなど、あるいはこれらの複合物や金属リチウムが使用できる。
本発明によれば、電極活物質が表面処理剤により改質され、プレゲル溶液が電極活物質に含浸し、電極とゲル電解質の密着性が向上することにより、充放電サイクルに伴う電池の抵抗増加やセル厚みの増加を抑制しつつ、レート特性を改善することができる。すなわち電極細孔内の活物質表面にカップリング剤により表面処理を行うことで、ゲル電解質の電極細孔内への含浸性が向上し、イオン伝導のパスが十分形成されることにより、ハイレート特性が向上する。また、図2に本発明のカップリング剤を介した電極活物質表面とゲル電解質との結合の様子を模式図で示したように、電極活物質24の表面にカップリング剤23を介したゲル電解質中のポリマー22との結合が形成されるため、電極活物質24とゲル電解質中のポリマー22との密着力が高まり、サイクルに伴うセル厚みの増加を抑制できる。
本発明において、表面処理剤のカップリング剤は、所定のpH濃度に調整した溶液中では、メトキシ基が水酸基となり基材上に存在する水酸基と水素結合し、加熱することで縮合反応を起こし、基材上にカップリング剤が結合する。さらに、本発明のゲル電解質がアクリレート系の場合には、基材に結合したカップリング剤の有機官能基が重合基の場合、プレゲル溶液中のアクリレートと反応し、ゲル電解質と基材が結合する。また、基材である電極活物質層の細孔中にカップリング剤が存在するため、プレゲル溶液とのなじみ性が向上し、プレゲル溶液の含浸性が向上する。そのため、十分なポリマー濃度のプレゲル溶液を用いることができ、ゲル電解質のゲル化が十分進行し、アクリルモノマーが残存することがない。
本発明により、負極として用いる黒鉛や非晶質炭素などの炭素材料表面に微量存在する水酸基や、カルボニル基などの表面官能基にカップリング剤が縮合反応により結合することで、プレゲル溶液の含浸性が向上し、電極活物質とゲル電解質との接触が十分にできるため、容量低下を防ぎ、ハイレート特性が向上する。また、電極活物質とゲル電解質が直接結合するため、密着性が向上し、充放電サイクルに伴う膨潤、収縮に対しゲル電解質が追従できるため、電極活物質とゲル電解質界面の剥離を防ぎ抵抗増加を抑制できる。また、電極活物質に結合したゲル電解質により電極の膨れを抑制できるため、充放電サイクルに伴うセル厚みの増加を抑制できる。
正極として用いるコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなど金属酸化物表面に対しても、カップリング剤を縮合反応により結合させることができる。よって、プレゲル溶液の含浸性が向上し、電極活物質とゲル電解質との接触が十分にできるため、容量低下を防ぎ、ハイレート特性が向上する。また、電極活物質とゲル電解質が直接結合するため、密着性が向上し、充放電サイクルに伴う膨潤、収縮に対しゲル電解質が追従できるため、電極活物質とゲル電解質界面の剥離を防ぎ抵抗増加を抑制できる。また、電極活物質に結合したゲル電解質により電極の膨れを抑制できるため、充放電サイクルに伴うセル厚みの増加を抑制できる。
なお、本発明は、電極へプレゲル溶液を塗布する(塗布−硬化型)工程を有するリチウムイオンポリマー電池へも、後注液によりプレゲル溶液を注液する(後注液型)工程を有するリチウムイオンポリマー電池へも適用できる。
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明のリチウムイオンポリマー電池の電極の構造を示す斜視図である。図1に示すように、アルミニウム等からなる正極タブ17が引き出されたアルミニウム箔等からなる正極集電体14の両面に形成したリチウムイオンを吸蔵、放出し得る酸化物正極活物質を含有する正極11と、ニッケル等からなる負極タブ18が引き出された銅箔等からなる負極集電体15の両面に形成したリチウムイオンを吸蔵、放出する炭素材料または酸化物、リチウムと合金を形成する金属、リチウム金属自身のいずれかもしくはこれらの混合物からなる負極活物質を含有する負極12とをゲル電解質16、およびこれを含むセパレータ13を介して積層、巻回して構成されており、正極および負極、または負極の電極活物質層は、カップリング剤からなる表面処理剤により表面処理されている。
表面処理方法は、(1)集電体上に塗布、乾燥した電極を所定のpH濃度に調整したカップリング剤溶液に浸漬含浸させた後所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極、もしくは(2)集電体上に塗布、乾燥した電極に所定のpH濃度に調整したカップリング剤溶液を塗布させた後、所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極、もしくは(3)粉末の電極活物質を所定のpH濃度に調整したカップリング剤からなる表面処理剤溶液に浸漬含浸または噴霧した後、所定の温度で電極活物質とカップリング剤との縮合反応をさせることにより表面処理を行った電極活物質からなる電極、もしくは(4)カップリング剤溶液を添加した電極スラリーを集電体上に塗布、乾燥した後、所定の温度で電極基材とカップリング剤との縮合反応をさせることにより、表面処理を行った電極を用い、アクリレート系のプレゲル溶液を(A)塗布−硬化型、もしくは(B)後注液型によりリチウムイオンポリマー電池を得ることができるが、(A)は製造工程が煩雑となるため、(B)が好ましい。
本発明において、カップリング剤は、シラン系カップリング剤、アルミ系カップリング剤、チタニウム系カップリング剤が挙げられる。また、これらのカップリング剤の有機官能基としては、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基などが挙げられ、アクリレートと重合反応が可能な有機反応基を有するものとする。
本発明において使用するカップリング剤溶液は、pHが4〜7に調製された酢酸水溶液に、上記カップリング剤を0.1〜5質量%含有したものが使用できるが、粘度を低下させるために、メチルアルコールやエチルアルコールを添加してもよい。
本発明において、セパレータは、不織布、ポリオレフィン微多孔膜など一般的にリチウムポリマー電池で使用されるものであれば特に限定はされるものではない。材質はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンなど、多孔質を有するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、ポリエチレン製の微多孔膜で膜厚が5〜25μm、さらに好ましくは7〜16μmである。
本発明において、ゲル電解質に含まれるゲル化成分として、たとえば熱重合可能な重合基を一分子あたり2個以上有するモノマー、またはオリゴマー、共重合オリゴマーなどが挙げられる。
上記ゲル化成分としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、トリプロピレンジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの2官能アクリレート、また、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの3官能アクリレート、また、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの4官能アクリレート、および、上記メタクリレートモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記ゲル成分の他に、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートなどのモノマー、これらの共重合体オリゴマーやアクリロニトリルとの共重合体オリゴマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記ゲル成分としては、記載されたモノマー、オリゴマー、またはポリマーに限定されるものではなく、ゲル化可能なものであれば、使用できる。また、ゲル化には一種類のモノマー、オリゴマーまたはポリマーに限定されるものではなく、必要に応じて複数種のゲル化成分を混合しても使用できる。
本発明において、ゲル電解質に含まれる可塑剤として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、γ―ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタンなどの一般的にリチウムイオン電池に用いられる有機溶媒を一種又は二種以上を混合して使用できるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、ゲル電解質に含まれる電解質は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22など一般的にリチウムイオン電池に用いられる電解質が使用できるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、必要に応じて、熱重合開始剤としてベンゾイン類、パーオキサイド類などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、必要に応じて電極皮膜形成能を有する添加剤、たとえば、スルホニル基を有する化合物あるいはビニレンカーボネート化合物を加えることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る酸化物、例えば、LiCoO2、LiNi1-xCoxO2、LiMn24,LiNixMn2-x4(ここで0<x≦1)など金属酸化物正極材料が使用できるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、負極活物質として、例えば、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなど、あるいはこれらの複合物や金属リチウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ラミネート外装のため安全性を考慮すると前者が望ましい。
実施例1について、図1を参照して説明する。正極11は次のように作製した。LiMn24を85質量%、導電補助材としてアセチレンブラックを7質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン8質量%とを混合したものに、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して正極スラリーを作製した。これを厚さ20μmのAl箔からなる正極集電体14の両面にロールプレス処理後の厚さが160μmになるように塗布した。正極は、長さ185mm、幅42mmとし、さらに塗布部に接続した未塗布部を作り、超音波溶接によりアルミニウムからなる正極タブ17を取り付けた。
負極12は、黒鉛90質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン10質量%とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して負極スラリーを作製した。これを厚さ10μmのCu箔からなる負極集電体15の両面にカレンダー処理後の厚さが120μmになるように塗布した。負極は、長さ187mm、幅44mmとし、さらに塗布部に接続した未塗布部を作り、超音波溶接によりニッケルからなる負極タブ18を取り付けた。
カップリング剤溶液は、酢酸によりpH4に調製した水50質量%とメタノール50質量%の溶液に対し、信越化学株式会社製のKBM503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を0.3質量%添加したものシランカップリング溶液として使用した。
カップリング剤表面処理は、正極および負極をそれぞれシランカップリング剤溶液に浸漬し、2分間真空含浸を行った後、余分なシランカップリング溶液を除去し、125℃にて2時間加熱処理により行った。
セパレータ13は、膜厚12μm、気孔率35%のポリエチレン製の微多孔膜でのものを使用した。
正極11をセパレータ13で挟み、負極12を対向させて図1に示したJ/Rを作製した。
プレゲル溶液は、エチレンカーボネート(EC)30質量%とジエチルカーボネート(DEC)58質量%に、リチウム塩としてLiPF12質量%を含む電解液に対して、ゲル化材としてトリエチレングリコールジアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートをそれぞれ3.4質量%、0.6質量%を加え、よく混合した後に、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシピバレートを0.5質量%混合することで作製した。
続いて、J/Rをエンボス加工したラミネートへ収容し、エンボス加工ラミネート外装体の一辺を折り返し、プレゲル溶液注液用の部分を残して熱融着を行った。
次に、プレゲル溶液を注液部分から注液し真空含浸を行い、その後、減圧下で残りの部分を熱融着し、ラミネート封止した電池を80℃で2時間おくことでゲル化させ、実施例1のリチウムイオンポリマー電池を得た。
本実施例2における電極のカップリング剤表面処理は、電極塗布後にカップリング剤溶液を正極、負極それぞれに噴霧した後、125℃で2時間加熱処理により行ったこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオンポリマー電池を作製した。
本実施例3は、負極12のみにカップリング剤表面処理を行った以外は、実施例1と同様にリチウムイオンポリマー電池を作製した。
本実施例4は、1kgの負極活物質となる黒鉛の粉末に実施例1と同様に作製したカップリング剤溶液を500gの割合で混合した後、125℃で一晩乾燥を行うことで負極活物質の表面処理を行った。正極および負極をそれぞれシランカップリング剤溶液に浸漬しないことを除いては実施例1と同様に負極および正極を作製し、J/Rを作製しリチウムイオンポリマー電池を得た。
本実施例5における負極12は次のように作製した。黒鉛90質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン10質量%とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して負極スラリーを作製し、これに実施例1と同様に調製したカップリング剤溶液をスラリーに対して10質量%添加した。これを厚さ10μmのCu箔からなる負極集電体15の両面にカレンダー処理後の厚さが120μmになるように塗布し、125℃で乾燥し、表面処理を行った。電極は、長さ187mm、幅44mmとし、さらに塗布部に接続した未塗布部を作り、超音波溶接によりニッケルからなる負極タブ18を取り付けた。そのほかは実施例1と同様にリチウムイオンポリマー電池を作製した。
本実施例6は、カップリング剤としてエポキシ基を有する信越化学株式会社製のKBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を用いた以外は、実施例1と同様にリチウムイオンポリマー電池を作製した。
(比較例1)
本比較例1は、カップリング剤による表面処理を行わない正極、負極を用いた以外は、実施例1と同様にポリマー電池を作製した。
表1に、本実施例1〜6と比較例1について、20℃における0.2C放電容量と、0.2C放電容量に対する1C放電容量維持率(レート特性)と、20℃における1Cでの200サイクル後の放電容量維持率とセル厚み変化率を示す。ここで、放電容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する比で、セル厚み変化率は、サイクル前のセル厚みに対する200サイクル後のセル厚みの比とする。
Figure 2007305453
図3に、本実施例1〜6と比較例1について、1C放電容量維持率のサイクル特性を示した。
実施例1は、容量が312mAhと大きく、レート特性も97%と優れていた。また200サイクル後の容量維持率は92.1%であり、セル厚みの増加も抑制された。これは、電極細孔内までカップリング剤が浸透し、電極活物質表面にカップリング剤を介したゲル電解質との結合(図2参照)が形成されたためである。つまり、ゲル電解質との接触面積が増加し、ハイレートにおいて対するイオン伝導のパスが十分形成されたためレート特性が向上し、電極活物質とゲル電解質の密着力が高まり、サイクルに伴う電極の膨張を抑制できた。
実施例2は、噴霧により処理を行なったため、実施例1に比較してカップリング剤の浸透が少なかったためか容量は少し小さくなった。実施例3、4、5は負極にカップリング剤処理を行ったが、負極のみに処理を施した場合にも大きな効果が得られた。実施例6は、ゲル電解質のポリマー成分とカップリング剤との結合力が実施例1よりも低いため、サイクルに伴う電極の膨張抑制が十分でなく、実施例1より容量低下とセル厚みの増加が大きかった。いずれも比較例1に対し、良好な結果が得られた。
本発明のリチウムイオンポリマー電池の電極の構造を示す斜視図。 本発明のカップリング剤(シランカップリング剤)を介した電極活物質表面とゲル電解質との結合の模式図。 本発明の実施例1〜6と比較例1の1C放電容量維持率のサイクル特性を示す図。
符号の説明
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 正極集電体
15 負極集電体
16 ゲル電解質
17 正極タブ
18 負極タブ
21 (ゲル電解質中の)電解液
22 (ゲル電解質中の)ポリマー
23 電極活物質とゲル電解質のポリマーに結合したカップリング剤
24 電極活物質

Claims (10)

  1. 正極、負極、セパレータおよびゲル電解質を有するリチウムイオンポリマー電池において、前記正極および前記負極のうち、少なくとも負極の電極活物質層が表面処理剤により改質されたことを特徴とするリチウムイオンポリマー電池。
  2. 前記表面処理剤が、シラン系カップリング剤、アルミ系カップリング剤、チタニウム系カップリング剤から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1記載のリチウムイオンポリマー電池。
  3. 前記表面処理剤となるカップリング剤の有機官能基が、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオンポリマー電池。
  4. 前記正極の電極活物質が、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
  5. 前記正極の電極活物質が、LiCoO2、LiNi1-xCox2、LiMn24、LiNixMn2-x4(ここで0<x≦1)から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
  6. 前記負極の電極活物質が、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、あるいは金属リチウムから選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
  7. 前記ゲル電解質が、少なくとも1種以上のアクリレートモノマーを重合してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
  8. 前記電極活物質、前記正極または前記負極から選択される少なくともひとつが、前記表面処理剤の含浸により処理されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載リチウムイオンポリマー電池。
  9. 前記電極活物質、前記正極または前記負極から選択される少なくともひとつが、前記表面処理剤の塗布により処理されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
  10. 前記電極活物質が、前記電極活物質のスラリー中に表面処理剤を混合することにより形成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオンポリマー電池。
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