JP2007160009A - 車両用シートリクライニング装置 - Google Patents

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幸史 山田
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Abstract

【課題】部品点数及び製造工数の増大を抑制しつつ、両側のロック機構の解除タイミングのずれを抑制することができる車両用シートリクライニング装置を提供する。
【解決手段】カム31の回転によりシートクッションに対するシートバックの回動を規制又は規制解除するロック機構20が、シートの両側に配設されている。両ロック機構のカムにそれぞれ形成された互いに同一形状の嵌合孔(第1嵌合孔及び第2嵌合孔)31cと、第1嵌合孔とクリアランスを有して嵌合する第1嵌合部34bを有する第1シャフト34と、第2嵌合孔と嵌合する第2嵌合部35a、及び、第1シャフトに連結される連結部35bを有する第2シャフト35とを備え、第2シャフトは、連結部において、両ロック機構による規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整されて、第1シャフトに接合されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両用シートリクライニング装置に関するものである。
従来、シートクッションに対してシートバックを傾斜させるための車両用シートリクライニング装置として種々のものが提案されている。こうした車両用シートリクライニング装置は、シートの左右両側にシートクッションに対するシートバックの回動を規制又は規制解除(許容)するロック機構が配設されており、これらロック機構の作動(ロック・アンロック)を切り替えることで、シートバックを乗員着座等に好適な所要の傾斜角度に調整・保持することができる。
例えば、特許文献1では、左右各側のロック機構に、シートバックの回転軸を中心に回動するカム(5)を設け、各カムの回転によりポール(4)を径方向に移動(進退)させてその歯部(41a)とアッパプレート(3)の歯部(34)とを噛合又は解除することで、ロック機構の作動(ロック・アンロック)を切り替えている。
なお、左右両側のロック機構は、1本のシャフト(6)で直結されており、両カムは、その嵌合孔(53)と該シャフトの両端部に形成された嵌合部(6a)とがそれぞれ嵌合されることで一体で回転駆動される。つまり、シャフトの一方の端部(嵌合部)には操作レバーが併せて結合されており、該操作レバーに操作力が伝達されることで、シャフトを介して左右両側のカムが回転駆動される。
特開2002−112849号公報
ところで、シャフトの嵌合部とカムの嵌合孔との間には、回転方向に所定のクリアランスが設定されており、以下の理由で左右両側のロック機構の解除タイミングにずれが生じることがある。
(1)シートクッション又はシートバックへの組付け誤差による左右両側のロック機構のねじれ
(2)アッパプレートの歯部又はポールの歯部の歯形精度、ポール及びカムの接触押圧部の寸法精度により生じる左右両側のカム間の回転角の差
一方、上記した左右両側のロック機構の解除タイミングのずれを抑制するため、各カムが係合される嵌合部を有するシャフトを左右両側に配設したものも提案されている。すなわち、図7に示したように、左右両側のロック機構90には、カム91の嵌合孔91aと嵌合する嵌合部92aを有するシャフト92が配設されている。そして、両シャフト92には、互いの対向側の軸方向に突設された略円柱状の軸部92bがそれぞれ形成されている。これらシャフト92は、シートの骨格構造を組み上げた後、左右両側のロック機構90の解除タイミングが一致するように配置される。この状態で、両シャフト92は、軸部92bが挿入される1本の円筒状の連結棒93にて連結され、更に溶接等で連結棒93とともに一体に結合される。
つまり、左右両側のロック機構90は、互いの解除タイミングが一致した状態で一体化される。これにより、一方のシャフト92に操作力を伝達することで、連結棒93を介して他方のシャフト92に同時に操作力が伝達され、左右両側のロック機構90が同時に解除される。
しかしながら、このような構成を採用した場合には、部品点数の増大に加え、溶接による接合点も多いことなどから製造工数の増大を余儀なくされる。
本発明の目的は、部品点数及び製造工数の増大を抑制しつつ、両側のロック機構の解除タイミングのずれを抑制することができる車両用シートリクライニング装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シートクッションに対するシートバックの回転軸を中心に回転するカムを有し該カムの回転により前記シートクッションに対する前記シートバックの回動を規制又は規制解除するロック機構が、シートの両側に配設されてなる車両用シートリクライニング装置において、前記両ロック機構のカムにそれぞれ形成された互いに同一形状の第1嵌合孔及び第2嵌合孔と、前記第1嵌合孔とクリアランスを有して嵌合する第1嵌合部を有する第1シャフトと、前記第1嵌合部の外形と同一形状の外形を有して前記第2嵌合孔と嵌合する第2嵌合部、及び、前記第1シャフトに連結される連結部を有する第2シャフトとを備え、前記第2シャフトは、前記連結部において、前記両ロック機構による前記規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整されて、前記第1シャフトに接合されてなることを要旨とする。
同構成によれば、前記第2シャフトは、例えばシートの骨格構造を組み上げた後、前記連結部において、前記両ロック機構による前記規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整された後に、前記第1シャフトに接合されることで、前記第1及び第2シャフトは、前記両ロック機構による前記規制解除のタイミングが一致する状態で一体に結合される。従って、前記第1及び第2シャフトのいずれか一方に操作力を伝達することで、他方に同時に操作力が伝達され、前記両ロック機構が同時に解除される。この場合、前記両ロック機構は、前記第1及び第2シャフトの2部品で結合されており、且つ、接合点も該第1及び第2シャフト間の1箇所でよいことから、部品点数及び製造工数の増大が抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記第2シャフトは、筒状に形成されてなり、前記第2嵌合部の外形は、つぶし加工にて成形されていることを要旨とする。
同構成によれば、前記第2嵌合部の外形は、筒状に形成された第2シャフトをつぶし加工することで、簡易に成形される。また、前記第1シャフトに、前記第2シャフトの内径と同等の外形を有する軸部を成形すれば、前記連結部として該第2シャフトに特別な加工を施す必要がなくなり、製造工数の増大が抑制される。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記第1シャフトが係合される一方の前記ロック機構の軸方向一側において、該第1シャフトに接合される操作レバーを備え、前記第1シャフトは、該第1シャフトが係合される一方の前記ロック機構の軸方向他側に配置されるフランジを有し、該フランジ及び前記操作レバーにより該ロック機構に対し軸方向に抜け止めされてなることを要旨とする。
同構成によれば、前記第1シャフトは、前記フランジ及び前記操作レバーにより前記ロック機構に対し軸方向に抜け止めされることで、当該ロック機構からの脱落が抑制される。また、前記第1シャフトに接合される前記第2シャフトは、該第1シャフトに一体化されることで該第2シャフトが係合される他方の前記ロック機構からの脱落が抑制される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記各ロック機構は、前記カムの回転軸周りに巻回されるとともに一端及び他端がそれぞれ前記シートバック及び前記シートクッションのいずれか一方の側及び前記カムに係止され、前記カムを前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングは、前記カムが前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向で、前記第1嵌合孔及び第1嵌合部又は前記第2嵌合孔及び第2嵌合部の嵌合のクリアランス分の遊びを解消するように前記第1シャフト又は第2シャフトを押圧する押圧部を有することを要旨とする。
同構成によれば、前記第1嵌合孔及び第1嵌合部又は前記第2嵌合孔及び第2嵌合部の嵌合のクリアランス分の遊びは、前記スプリングの押圧部が前記第1シャフト又は第2シャフトを押圧することで、前記カムが前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向で、解消される。従って、前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制解除すべく、前記第1シャフト又は第2シャフトに操作力を入力する場合には、上記クリアランス分の遊びが解消されていることで、好適な操作感が得られる。すなわち、操作の初期は、前記スプリングの押圧部による押圧力に抗して前記第1シャフト又は第2シャフトを回転させるための操作力が必要とされ、その後は、前記スプリングの付勢力に抗して前記カムとともに前記第1シャフト又は第2シャフトを回転させるための操作力が必要とされることになり、操作期間を通じて節度感のある操作感が得られる。また、前記押圧部は、前記カムを前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向に付勢する前記スプリングを利用して形成されているため、部品点数の増大が抑制される。
請求項1乃至4に記載の発明では、部品点数及び製造工数の増大を抑制しつつ、両側のロック機構の解除タイミングのずれを抑制することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面に従って説明する。
図1及び図2は、自動車などの車両に搭載される車両用シートリクライニング装置を示す分解斜視図及び断面図である。同図に示されるように、この車両用シートリクライニング装置は、シートクッションの骨格をなす金属板からなるシートクッションフレーム11を、車両シートの幅方向で一対で備えるとともに、各シートクッションフレーム11には、シートバックの骨格をなす金属板からなるシートバックフレーム12が、ロック機構20を介して回転軸Oを中心に回動可能に連結されている。なお、上記各ロック機構20は、シートクッションフレーム11に対するシートバックフレーム12の回動を規制する状態と規制解除(許容)する状態とを切り替えるためのもので、基本的にシートクッションフレーム11に対するシートバックフレーム12の回動規制状態を保持する。
次に、上記ロック機構20について図3の分解斜視図を併せ参照して説明する。なお、車両シートの幅方向両側(左右両側)に配設されるロック機構20は互いに同一構造を有しており、以下の説明は、各側に配置されるロック機構20に共通のものとして、右側に配置されるロック機構20を代表して説明する。
前記シートクッションフレーム11の内側面に溶接にて固着されるロアプレート21は、金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、図3に示したように、中央部に貫通孔21aを有するリング状に形成されている。なお、上記ロアプレート21には、貫通孔21aに連続してその径方向外側に凹設された係止孔21bが形成されている。
また、上記ロアプレート21には、シートクッションフレーム11の反対側において円形に凹設された凹部22が形成されている。そして、この凹部22には、その底壁から突出する複数(3つ)の凸部23が所定角度ごとに形成されている。なお、各凸部23は、周方向に2分される2つの成形部23a,23bからなるとともに、隣接する凸部23との間で平行になるように径方向に平坦に伸びる側面23cを有している。そして、上記ロアプレート21は、各隣接する側面23c間において径方向に伸びるガイド溝24を形成している。
図2及び図3に示したように、前記シートバックフレーム12の内側面に溶接にて固着されるアッパプレート26は、金属板の半抜きにより成形されたもので、前記凹部22の内径と同等の外径を有するとともに中央部に軸挿通孔26aを有するリング状に形成されている。このアッパプレート26は、その外周面が前記凹部22の内周面と摺接するように装着されている。すなわち、アッパプレート26は、ロアプレート21に軸支されている。これにより、前記シートバックフレーム12は、ロアプレート21及びアッパプレート26(ロック機構20)を介してシートクッションフレーム11に対し回動可能に連結されている。
図2に示したように、上記アッパプレート26には、シートバックフレーム12の反対側(ロアプレート21側)において円形に凹設された第1凹部27が形成されている。そして、この第1凹部27の内周面には内歯27aが形成されている。アッパプレート26がロアプレート21に装着された状態では、前記ガイド溝24の径方向に内歯27aが対向する。また、上記第1凹部27には、その内径よりも縮小された内径を有して同心で更に円形に凹設された第2凹部28が形成されている。
アッパプレート26がロアプレート21に装着された状態において、これらの外周部には、金属板からなるリング状のホルダ29が装着されており、ロアプレート21及びアッパプレート26は、このホルダ29により相対回動が許容された状態で軸方向に抜け止めされている。
アッパプレート26がロアプレート21に装着された状態において、前記凹部22と第1及び第2凹部27,28とで形成される内部空間には、金属板の半抜きにより成形されたカム31が回転軸Oを中心に回転可能に収容されている。図3に示したように、このカム31は、所定角度ごとに径方向に伸びる複数(3つ)のカム部31aを有するとともに、各カム部31aには、軸方向と平行にアッパプレート26側に突出するピン状の突起31bが形成されている。また、上記カム31には、その中央部を軸方向に貫通する断面扁平円形状(小判形状)の嵌合孔31cが形成されている。さらに、図2に示したように、上記カム31には、軸方向と平行にロアプレート21側に突出するピン状の突設部31dが形成されている。なお、カム31がロアプレート21及びアッパプレート26間(内部空間)に収容された状態では、上記突設部31dは、径方向で前記貫通孔21a及び嵌合孔31cの中間部の位置であり、且つ、同貫通孔21a(及び係止孔21b)の軸方向の位置と一致するように配置されている。
図3に示したように、前記各ガイド溝24には、その周方向の幅よりも若干小さい幅を有して矩形の板状に形成されたポール32が配置されるとともに、各ポール32は、前記凸部23の側面23cと摺接することで径方向の移動が案内されている。また、各ポール32の先端部には、前記アッパプレート26の内歯27a(図2参照)と噛み合う外歯32aが形成されるとともに、各ポール32の基端部には、厚さ方向に貫通するカム穴32bが形成されている。このカム穴32bは回転軸Oを中心とする周方向に対して傾斜しており、ポール32はカム穴32bに前記カム31の突起31bが挿入されることでこれと係合する。
さらに、図2に示したように、各ポール32には、外歯32aとカム穴32bとの間において軸方向の段差部が設定されるとともに、この段差部の径方向に対向する端面はポールカム面32cを形成している。このポールカム面32cは、ポール32の側面を横切るように、且つ、外歯32aのピッチ円に対して傾斜角を持つように伸びている。ポール32は、ポールカム面32cに前記カム部31aの先端面が当接することでこれと係合する。
すなわち、ロアプレート21及びアッパプレート26間(内部空間)にカム31及びポール32が収容された状態においてカム31が一側(図3において時計回転方向)に回動するとき、ポール32はカム穴32bがカム31の突起31bに押圧されることでガイド溝24に沿って径方向に引き込むように移動する。このとき、ポール32の外歯32aとアッパプレート26の内歯27aとの噛み合いが解除されることで、同アッパプレート26はロアプレート21に対して回動可能になる。そして、ロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制の解除状態が設定される。
一方、カム31が他側(図3において反時計回転方向)に回動するとき、ポール32はカム穴32bがカム31の突起31bに押圧され、且つ、ポールカム面32cがカム部31aの先端面に押圧されることでガイド溝24に沿って径方向に飛び出すように移動する。このとき、ポール32の外歯32aとアッパプレート26の内歯27aとが噛み合い、同アッパプレート26はロアプレート21に対して回動不能になる。そして、ロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制状態が設定される。
前記ロアプレート21の中央部、即ち前記貫通孔21aの内周側には、略四角形の一定断面を有する線材を渦巻き状に曲成してなるスプリング33が収容されるとともに、その一端33a及び他端33bがそれぞれ前記ロアプレート21の係止孔21b及び前記カム31の突設部31dに係止されている。なお、上記スプリング33は、前記嵌合孔31cを軸方向に開放するようにカム31の回転軸O周りに巻回されている。このスプリング33は、ロアプレート21に対してカム31が他側(図3において反時計回転方向)に回動するように、即ちロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制状態が設定される側に付勢する。
従って、上記カム31は、スプリング33の付勢力により、基本的にロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制状態を保持し、シートクッションフレーム11に対するシートバックフレーム12の回動規制状態を保持する。そして、カム31は、スプリング33に抗してロアプレート21に対し図示時計方向に回動するときに、ロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制の解除状態へと切り替える。
なお、両側に配設される前記カム31は、嵌合孔31cも含めて互いに同一構造をなすことはいうまでもない。ただし、以下では、説明の便宜上、右側に配置されるカム31の嵌合孔31cを第1嵌合孔(31c)とし、左側に配置されるカム31の嵌合孔31cを第2嵌合孔(31c)として区別して表すことがある。
右側に配置されるロック機構20において、内側から前記シートバックフレーム12、アッパプレート26の軸挿通孔26a、カム31の第1嵌合孔(31c)、スプリング33の収容されたロアプレート21の貫通孔21a及びシートクッションフレーム11に順次、挿通される金属棒からなる第1シャフト34は、外側に延出するフランジ34aを有するとともに、このフランジ34aから軸方向一側(シートクッションフレーム11側)に突設され前記第1嵌合孔(31c)に回転方向のクリアランスを有して嵌合する断面扁平円形状(小判形状)の第1嵌合部34bと、同第1嵌合部34bに連続して軸方向一側に更に突設された取付部34cと、前記フランジ34aから軸方向他側(左側のロック機構20に対向する側)に突設された円柱状の軸部34dとを一体的に備える。
なお、上記第1シャフト34には、シートクッションフレーム11から突出する取付部34cが挿通されて当該第1シャフト34と一体回転するように溶接にて固着された略L字形状(図1参照)の板材からなる操作レバー36が設けられている。この操作レバー36は、第1シャフト34等を介して両側のカム31を、スプリング33に抗してロアプレート21に対し図3において時計方向に回動させるための操作力、即ちロアプレート21に対するアッパプレート26の回動許容状態へと切り替えるための操作力を入力するためのものである。上記第1シャフト34は、この操作レバー36が取着されることで、前記シートバックフレーム12に近接するフランジ34aとの間で軸方向に位置決め(抜け止め)されている。このとき、上記第1嵌合部34bは、前記第1嵌合孔(31c)の軸方向の位置に合わせて配置され(図2参照)、カム31と一体回転するように連結されている。また、前記スプリング33は、前記カム31及び前記第1シャフト34の嵌合する軸方向の位置に合わせて配置されている。
一方、左側に配置されるロック機構20において、内側から前記シートバックフレーム12、アッパプレート26の軸挿通孔26a、カム31の第2嵌合孔(31c)、スプリング33の収容されたロアプレート21の貫通孔21a及びシートクッションフレーム11に順次、挿通される筒状の金属棒からなる第2シャフト35は、前記軸部34dの外径と同等の内径を有するとともに、その一側端部には、前記第2嵌合孔(31c)に回転方向のクリアランスを有して嵌合する断面扁平円形状(小判形状)の第2嵌合部35aが形成されている。この第2嵌合部35aは、筒状をなす金属棒(第2シャフト35)の一側端部をつぶし加工することで成形されており、その外形(外周面)は、前記第1シャフト34の第1嵌合部34bの外形(外周面)と同一形状を有している。つまり、上記第2シャフト35の第2嵌合部35a及び第2嵌合孔(31c)は、上記第1シャフト34の第1嵌合部34b及び第1嵌合孔(31c)と同一の状態で嵌合している。
なお、第2シャフト35の他側端部は、前記第1シャフト34の軸部34dが挿入されて同第1シャフト34に回転自在に連結される連結部35bを形成する。この連結部35bは、筒状の第2シャフト35に特別な加工を施すことなく形成されていることはいうまでもない。第2シャフト35は、例えばシートの骨格構造を組み上げた後、前記軸部34dに挿入される連結部35bにおいて、前記両ロック機構20による前記規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整されて、前記第1シャフト34に溶接にて接合されている。例えば、第1及び第2シャフト34は、これらに連結された左右のカム31をそれぞれロック方向に最大限回転させた位置に調整した状態で接合されている。従って、このように一体に連結された第1及び第2シャフト34,35が連動して回転することで、第1及び第2嵌合部34b,35aと第1及び第2嵌合孔(31c)とにおいてそれぞれ嵌合する両側のカム31も一体回転し、両ロック機構20が同時に規制解除される。ちなみに、前記両カム31を一体回転させる第1及び第2シャフト34,35を、回転方向にクリアランスを有してカム31に嵌合させるのは、両側のロック機構20間での当該方向の組付け誤差を吸収するためである。
ここで、本実施形態のスプリング33について更に説明する。図4は、右側に配置されるロック機構20を示す正面図である。同図に示したように、スプリング33は内周側から外周側に向かって図示反時計回転方向に巻回されている。そして、外周側に配置されたその一端33aは、径方向外側に屈曲して前記係止孔21bに挿通・係止されるとともに、内周側に配置されたその他端33bは、径方向外側に屈曲して前記突設部31dに対し回転軸O側から圧接してこれに係止される。また、上記スプリング33は、上記突設部31dの反時計回転方向の側の近傍で、小判形状をなす前記第1嵌合部34bの角部を弾性的に押圧する押圧部としての曲成部33cを有する。この曲成部33cは、回転軸Oから偏心量eだけオフセットする態様で第1嵌合部34bを押圧する。従って、第1シャフト34には、回転軸Oから偏心量eだけオフセットする押圧力が加えられることで回転トルクが付与され、第1シャフト34は、カム31に対し図示反時計回転方向に付勢される。
既述のように、前記カム31(嵌合孔31c)及び第1シャフト34(第1嵌合部34b)の間には、回転方向の嵌合のクリアランスを有しており、これらの間に回転軸Oを中心とする遊び角θ(図4参照)が存在する。上記曲成部33cは、上記クリアランス分の遊び角θを解消するように図示反時計回転方向、即ちカム31がアッパプレート26のロアプレート21に対する回動を規制する側の回転方向で、同第1シャフト34を押圧する。前記曲成部33cが、前記カム31及び前記第1シャフト34の嵌合する軸方向の位置に対し、該軸方向に隣接した位置で、第1シャフト34を押圧していることはいうまでもない。
一方、左側に配置されるロック機構20についても、同様に前記カム31(嵌合孔31c)及び第2シャフト35(第2嵌合部35a)の間の回転方向の嵌合のクリアランス分の遊び角θが解消されている(図示省略)。
このような構造において、アッパプレート26のロアプレート21に対する回動規制を解除すべく、前記操作レバー36を操作して第1及び第2シャフト34,35に操作力を入力する場合には、上記クリアランス分の遊び角θが解消されていることで、好適な操作感が得られる。すなわち、操作の初期は、前記スプリング33の曲成部33cによる押圧力に抗して前記第1及び第2シャフト34,35を回転させるための操作力が必要とされ、その後は、前記スプリング33の付勢力に抗して前記カム31とともに第1及び第2シャフト34,35を回転させるための操作力が必要とされることになり、操作期間を通じて節度感のある操作感が得られる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記第2シャフト35は、例えばシートの骨格構造を組み上げた後、前記連結部35bにおいて、前記両ロック機構20による前記規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整された後に、前記第1シャフト34に接合されることで、前記第1及び第2シャフト34,35は、前記両ロック機構20による前記規制解除のタイミングが一致する状態で一体に結合される。従って、操作レバー36により前記第1シャフト34に操作力を伝達することで、前記第2シャフト35に同時に操作力が伝達され、前記両ロック機構20が同時に解除される。この場合、前記両ロック機構20は、前記第1及び第2シャフト34,35の2部品で結合されており、且つ、溶接による接合点も同第1及び第2シャフト34,35間の1箇所でよいことから、部品点数及び製造工数の増大を抑制することができる。そして、ひいてはコストの削減を図ることができる。
(2)本実施形態では、前記第2嵌合部35aの外形は、筒状に形成された第2シャフト35をつぶし加工することで、簡易に成形することができる。また、前記第1シャフト34に、前記第2シャフト35の内径と同等の外形を有する軸部34dを成形したことで、前記連結部35bとして同第2シャフト35に特別な加工を施す必要がなくなり、製造工数の増大を抑制することができる。さらに、前記第2シャフト35の素材として汎用のパイプを採用することで、製造工数の増大を更に抑制することができる。
(3)本実施形態では、前記第1シャフト34は、前記フランジ34a及び前記操作レバー36により前記シートクッションフレーム11及びシートバックフレーム12に挟まれたロック機構20に対し軸方向に抜け止めされることで、当該ロック機構20からの脱落を抑制することができる。また、前記第1シャフト34に接合される前記第2シャフト35は、同第1シャフト34に一体化されることで同第2シャフト35が係合される他方の前記ロック機構20からの脱落を抑制することができる。
(4)本実施形態では、前記第1嵌合孔(31c)及び第1嵌合部34b、並びに、前記第2嵌合孔(31c)及び第2嵌合部35aの嵌合のクリアランス分の遊び(遊び角θ)は、前記スプリング33の曲成部33cが前記第1シャフト34又は第2シャフト35を押圧することで、前記カム31が前記シートバック(アッパプレート26)の前記シートクッション(ロアプレート21)に対する回動を規制する側の回転方向で、解消される。従って、上記回動規制を解除すべく、前記第1シャフト34に操作力を入力する場合には、上記クリアランス分の遊びが解消されていることで、好適な操作感を得ることができる。また、前記曲成部33cは、前記カム31を前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向に付勢する前記スプリング33を利用して形成されているため、部品点数の増大を抑制することができる。
さらに、上記クリアランス分の遊びが解消されていることで、例えば車両走行時などにおいて、操作レバー36が第1シャフト34とともにカム31に対しがたついて異音を発生したりすることを抑制することができる。
(5)本実施形態では、前記曲成部33cは、前記カム31及び前記第1、第2シャフト34,35の嵌合する軸方向の位置に対し、該軸方向に隣接した位置で、第1、第2シャフト34,35を押圧することで、例えば前記カム31及び前記第1、第2シャフト34,35の嵌合する軸方向の位置からずれて第1、第2シャフト34,35を押圧する場合に比べ、前記第1、第2シャフト34,35の軸線をより安定化させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、カム及び第1、第2シャフトの嵌合のクリアランス分の遊びの解消態様は以下のように変更してもよい。すなわち、図5及び図6に、右側に配置されるロック機構40の正面図及び断面図をそれぞれ示したように、上記ロック機構40において、ロアプレート21及びアッパプレート26間(内部空間)には、金属製のカム41が回転軸Oを中心に回転可能に収容されている。このカム41は、前記貫通孔21aの内径よりも小さい外径を有して軸方向一側(ロアプレート21側)に円柱状に突設された突壁部41aを備えるとともに、この突壁部41aともどもその中央部を軸方向に貫通する断面扁平円形状(小判形状)の嵌合孔(第1嵌合孔)41bが形成されている。この嵌合孔41bには、前記第1シャフト34の第1嵌合部34bが回転方向のクリアランスを有して嵌合する。
また、上記突壁部41aには、回転軸Oから偏心量eだけオフセットする態様で径方向と並行に伸びて嵌合孔41b側に開口する溝部41cが形成されている。なお、図6に示したように、カム41がロアプレート21及びアッパプレート26間(内部空間)に収容された状態では、上記溝部41c(突壁部41a)は、前記貫通孔21a(及び係止孔21b)の軸方向の位置と一致するように配置されている。
図5に示したように、前記ロアプレート21の中央部、即ち前記貫通孔21aの内周側には、略四角形の一定断面を有する線材を渦巻き状に曲成してなるスプリング42が収容されるとともに、その一端42a及び他端42bがそれぞれ前記ロアプレート21の係止孔21b及び前記カム41の溝部41cに係止されている。なお、上記スプリング42は、前記嵌合孔41bを軸方向に開放するようにカム41の回転軸O周り、即ち突壁部41aの外周側に巻回されている。このスプリング42は、ロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制状態が設定される側に付勢する。
従って、上記カム41は、スプリング42の付勢力により、基本的にロアプレート21に対するアッパプレート26の回動規制状態を保持し、シートクッションフレーム11に対するシートバックフレーム12の回動規制状態を保持する。そして、カム41は、スプリング42に抗して回動するときに、ロアプレート21に対するアッパプレート26の回動許容状態へと切り替える。
また、図5に示したように、スプリング42は、内周側から外周側に向かって図示反時計回転方向に巻回されており、外周側に配置されたその一端42aは、径方向外側に屈曲して前記係止孔21bに挿通・係止され、内周側に配置されたその他端42bは、径方向内側に屈曲して前記溝部41cに挿通・係止される。
このとき、溝部41cを介して前記嵌合孔41b側に導入された他端42bは、同嵌合孔41b側に突出して、小判形状をなす前記第1嵌合部34bの角部を弾性的に押圧する押圧部としての先端部42cを有する。従って、第1シャフト34には、回転軸Oから偏心量eだけオフセットする押圧力が加えられることで回転トルクが付与され、第1シャフト34は、カム41に対し回転方向に付勢される。既述のように、前記カム41(嵌合孔41b)及び第1シャフト34(第1嵌合部34b)の間には、回転方向の嵌合のクリアランスを有しており、これらの間に回転軸Oを中心とする遊び角が存在する。上記先端部42cは、上記クリアランス分の遊び角を解消するように、カム41がアッパプレート26のロアプレート21に対する回動を規制する側の回転方向で、同第1シャフト34を押圧する。前記先端部42cが、前記カム41及び前記第1シャフト34の嵌合する軸方向の位置で、第1シャフト34を押圧していることはいうまでもない。
一方、左側に配置されるロック機構40についても、同様に前記カム41(嵌合孔41b)及び第2シャフト35(第2嵌合部35a)の間の回転方向の嵌合のクリアランス分の遊び角が解消されている(図示省略)。
このように変形することで、前記実施形態における(1)〜(4)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。すなわち、前記先端部42cは、前記カム41及び前記第1、第2シャフト34,35の嵌合する軸方向の位置で、第1、第2シャフト34,35を押圧することで、例えば前記カム41及び前記第1、第2シャフト34,35の嵌合する軸方向の位置からずれて第1、第2シャフト34,35を押圧する場合に比べ、前記第1、第2シャフト34,35の軸線をより安定化させることができる。
・前記実施形態において、前記嵌合のクリアランス分の遊びの解消は、曲成部33c又は先端部42cにより第1シャフト34(第1嵌合部34b)及び第2シャフト35(第2嵌合部35a)のいずれか一方のみを押圧して行ってもよい。
・前記実施形態において、第1、第2シャフト34,35への操作力の入力は、例えば電動モータの回転力にて行ってもよい。
・前記実施形態において、嵌合孔(第1、第2嵌合孔)31c,41b及び第1、第2嵌合部34b,35aの断面は、小判形状に限らず、D字形状又は多角形状であってもよい。また、扁平円形状には、楕円形状なども含まれる。
・前記実施形態においては、ロアプレート21及びアッパプレート26をそれぞれシートクッション側及びシートバック側に保持するようにしたが、これらの関係は逆であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項4に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記カムは、前記スプリングの他端が係止されて該スプリングからの押圧力を受ける突設部を有し、
前記押圧部は、前記スプリングの他端が係止される前記突設部の位置とは異なる位置で、前記第1シャフト又は第2シャフトに押圧力を付与する曲成部であることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
(ロ)請求項4に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記カムは、前記第1嵌合孔又は第2嵌合孔を有して軸方向に突設された突壁部を備え、該突壁部には、前記第1嵌合孔又は第2嵌合孔側に開口するとともに前記スプリングの他端が係止される溝部が形成され、
前記押圧部は、前記溝部に係止される前記スプリングの他端が、前記第1嵌合孔又は第2嵌合孔側に導入されて前記第1シャフト又は第2シャフトを押圧する先端部であることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図。 同実施形態を示す断面図。 ロック機構を示す分解斜視図。 ロック機構を示す正面図。 本発明の変形形態を示す正面図。 同変形形態を示す断面図。 従来形態を示す断面図。
符号の説明
O…回転軸、11…シートクッションフレーム、12…シートバックフレーム、20,40…ロック機構、21…ロアプレート、21b…係止孔、26…アッパプレート、31,41…カム、31a…カム部、31c,41b…嵌合孔(第1、第2嵌合孔)、31d…突設部、32…ポール、33,42…スプリング、33a,42a…一端、33b,42b…他端、33c…押圧部としての曲成部、34…第1シャフト、34a…フランジ、34b…第1嵌合部、35…第2シャフト、35a…第2嵌合部、35b…連結部、36…操作レバー、41a…突壁部、41c…溝部、42c…押圧部としての先端部。

Claims (4)

  1. シートクッションに対するシートバックの回転軸を中心に回転するカムを有し該カムの回転により前記シートクッションに対する前記シートバックの回動を規制又は規制解除するロック機構が、シートの両側に配設されてなる車両用シートリクライニング装置において、
    前記両ロック機構のカムにそれぞれ形成された互いに同一形状の第1嵌合孔及び第2嵌合孔と、
    前記第1嵌合孔とクリアランスを有して嵌合する第1嵌合部を有する第1シャフトと、
    前記第1嵌合部の外形と同一形状の外形を有して前記第2嵌合孔と嵌合する第2嵌合部、及び、前記第1シャフトに連結される連結部を有する第2シャフトとを備え、
    前記第2シャフトは、前記連結部において、前記両ロック機構による前記規制解除のタイミングが一致する回転位置に調整されて、前記第1シャフトに接合されてなることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
  2. 請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、
    前記第2シャフトは、筒状に形成されてなり、前記第2嵌合部の外形は、つぶし加工にて成形されていることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
  3. 請求項1又は2に記載の車両用シートリクライニング装置において、
    前記第1シャフトが係合される一方の前記ロック機構の軸方向一側において、該第1シャフトに接合される操作レバーを備え、
    前記第1シャフトは、該第1シャフトが係合される一方の前記ロック機構の軸方向他側に配置されるフランジを有し、該フランジ及び前記操作レバーにより該ロック機構に対し軸方向に抜け止めされてなることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートリクライニング装置において、
    前記各ロック機構は、前記カムの回転軸周りに巻回されるとともに一端及び他端がそれぞれ前記シートバック及び前記シートクッションのいずれか一方の側及び前記カムに係止され、前記カムを前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向に付勢するスプリングを備え、
    前記スプリングは、前記カムが前記シートバックの前記シートクッションに対する回動を規制する側の回転方向で、前記第1嵌合孔及び第1嵌合部又は前記第2嵌合孔及び第2嵌合部の嵌合のクリアランス分の遊びを解消するように前記第1シャフト又は第2シャフトを押圧する押圧部を有することを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
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