JP2007157630A - 膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体及び高分子電解質形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、良好な耐CO被毒特性と、良好な電極特性を得ることのできるアノードを備えた膜電極接合体を容易かつ確実に得ることのできる膜電極接合体の製造方法の提供。
【解決手段】膜電極接合体9の製造方法は、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として含むアノード1Aを有する膜電極接合体9を製造する第1工程と、アノード1Aの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位に保持する第2工程と、を含むこと、を特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】膜電極接合体9の製造方法は、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として含むアノード1Aを有する膜電極接合体9を製造する第1工程と、アノード1Aの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位に保持する第2工程と、を含むこと、を特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体及び高分子電解質形燃料電池に関する。
高分子電解質形燃料電池は、水素を含む燃料ガスと空気などの酸素を含む酸化剤ガスを電気化学的に反応させることで、化学エネルギーを電力と熱に同時に変換させるシステムである。高分子電解質形燃料電池は、エネルギー問題、地球環境問題の改善を契機にして、家庭用コジェネレーションシステムや電気自動車用の電源として技術開発が急速に進められている。特に近年は、高分子電解質形燃料電池の実用化に向けて、耐久性の向上、十分な電池性能の発揮を図ることを目的とした様々な検討が行われている。
一般的に、プロトン伝導性を有する高分子電解質を用いた従来の高分子電解質形燃料電池は、高分子電解質膜の両面に、電極触媒を導電性の炭素粉末に担持させて得られる触媒担持カーボンと、水素イオン伝導性を有する高分子電解質と、を含む触媒層を少なくとも備えている。電極触媒としては、白金または白金合金が用いられている。そして、触媒層の外面には、通気性及び電子伝導性を併せもつガス拡散層(撥水処理を施したカーボンペーパーなど)が配置されている。触媒層とガス拡散層の組み合わせによりガス拡散電極、即ち、アノードまたはカソードが構成される。
高分子電解質形燃料電池、特にコジェネレーションシステムの電源として用いられる定置用の高分子電解質形燃料電池のアノードに送られる燃料ガスには、天然ガスを脱硫処理し、水蒸気改質反応により得られる一酸化炭素と水素とを含む混合ガスが用いられている。ところで、一酸化炭素ガスが多く混入した燃料ガスがアノードに供給されると、一酸化炭素がアノードの白金触媒上に強く吸着されるため、水素が触媒に吸着しにくくなってアノードの電極特性が低下するという触媒被毒現象が発生する。
ここで、燃料ガスに一酸化炭素が混入した場合であっても、一酸化炭素によるアノードの電極特性の低下を抑制できる一酸化炭素に対する良好な耐久性を持つ触媒が要求されており、従来から、PtRu触媒を用いる技術が検討されていた(非特許文献1参照)。
これらのPtRu触媒は、通常、表面積の大きなカーボン材料に微粒子として担持したものが使用され、例えば水素雰囲気下で280℃の熱処理を行って合成される(非特許文献2参照)。
P.N.Ross,K.Kinoshita,A.J.Scarpellino and P.Stonehart,J.Electroanal.Chem 63,97(1975) Elsevier Sequoia S.A.,J.Electroanal.Chem 229(1987)395−406
P.N.Ross,K.Kinoshita,A.J.Scarpellino and P.Stonehart,J.Electroanal.Chem 63,97(1975) Elsevier Sequoia S.A.,J.Electroanal.Chem 229(1987)395−406
しかしながら、上述の従来技術における熱処理方法で形成されたPtRu触媒を含むアノード触媒層を有する高分子電解質形燃料電池であっても、高分子電解質膜の分解劣化の抑制を意図して、触媒層のカーボン量を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)の一酸化炭素に対する良好な耐久性、更には良好な発電特性を併有する高分子電解質形燃料電池を提供する観点からは未だ改善の余地があった。
具体的に説明すると、高分子電解質膜の分解劣化の原因の一つである過酸化物の生成反応がカーボン粉末上で主として進行し、特に燃料電池稼動時の電位が低いアノード極においては過酸化水素などの過酸化物がより発生しやすいため、高分子電解質膜及び膜電極接合体の耐久性に大きく影響を与えている。これに対し、高分子電解質膜の分解劣化の抑制を意図して、アノード触媒としてPtRu黒などのPtRu触媒を用いた場合、又はカーボンに担持されたPtRu粒子の担持率が高い割合の触媒においては、熱処理を行うことによって、Pt粒子同士、Ru粒子同士、またはPt粒子とRu粒子同士が結合して粒径が増大してしまい、アノード電極特性が低下することがあり、未だ改善の余地があった。
本発明は、以上の観点に鑑みてなされたものであり、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な電極特性を得ることのできるアノードを備えた膜電極接合体を容易かつ確実に得ることのできる膜電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の本発明の膜電極接合体の製造方法により形成される、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する膜電極接合体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の本発明の膜電極接合体を備えており、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する高分子電解質形燃料電池を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の本発明の膜電極接合体の製造方法により形成される、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する膜電極接合体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の本発明の膜電極接合体を備えており、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する高分子電解質形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、膜電極接合体を製造する際、膜電極接合体のアノードに以下に示す酸化処理を少なくとも施すことが、上記目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に達した。
すなわち、本発明は、
Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として含むアノードを有する膜電極接合体を製造する第1工程と、
アノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位に保持する第2工程と、を含むこと、
を特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として含むアノードを有する膜電極接合体を製造する第1工程と、
アノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位に保持する第2工程と、を含むこと、
を特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
以上のように、本発明は、第1工程において膜電極接合体を作製した後、第2工程においてアノード側の電位をPtおよびRuが溶解する電位まで上昇させる処理を行う。
このように、本発明の方法により製造された膜電極接合体においては、従来のような熱処理を行っていないため、熱処理を行うことで金属触媒の粒径が増大することを抑制することができる。しかも、本発明は、膜電極接合体を製造した後に、第2工程でアノードの触媒表面の活性化処理を行うので作業が容易にできる。更に、本発明の第2工程における操作、即ち、電気化学的な電位操作は、温度管理する熱処理よりも容易、かつ高精度で行うことができる。従って、高分子電解質の分解劣化を抑制する観点からアノード触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する膜電極接合体を容易かつ確実に実現することができる。
ここで、本発明において「Pt及びRuを構成元素として含む微粒子」とは、(i)P
t微粒子とRu微粒子との混合物からなる粒子、(ii)PtとRuとの合金からなる粒子
、及び(iii)(i)と(ii)の混合物、のうちの少なくとも一種である。なお、上記の粒
子の粒径については本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果をより確実に得る観点から10nm以下であることが好ましい。
t微粒子とRu微粒子との混合物からなる粒子、(ii)PtとRuとの合金からなる粒子
、及び(iii)(i)と(ii)の混合物、のうちの少なくとも一種である。なお、上記の粒
子の粒径については本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果をより確実に得る観点から10nm以下であることが好ましい。
上述の本発明の効果が得られる詳細なメカニズムについては、明確には解明されていないが、本発明者らは以下のように推察している。
以下に、酸化還元電位対が、RuとRu酸化物、PtとPt酸化物である標準酸化還元電位を示す。
RuO2+4H++4e-→Ru+2H2O +0.68V・・・(1)
RuO4+4H++4e-→RuO2+2H2O +1.387V・・・(2)
PtO2+2H++2e-→PtO+H2O +1.045V・・・(3)
PtO+2H++2e-→Pt+H2O +0.98V・・・(4)
RuO4+4H++4e-→RuO2+2H2O +1.387V・・・(2)
PtO2+2H++2e-→PtO+H2O +1.045V・・・(3)
PtO+2H++2e-→Pt+H2O +0.98V・・・(4)
実際の酸化還元電位は、酸化還元反応時の温度、還元体及び酸化体の濃度活量により多少変動するが、上記式(1)で示されるようにPt及びRuを構成元素として含む微粒子(触媒)の表面のRuの溶解は+0.68Vvs.SHE(「SHE」は、標準水素電極を示す)以上の電位(+側の電位)から多くなり、上記式(4)で示されるようにPt及びRuを構成元素として含む微粒子(触媒)の表面のPtの溶解は+0.98Vvs.SHE以上の電位(+側の電位)から多くなる。
従って、ポテンショスタットなどの電位掃引手段を用い、電位掃引を行うことにより、アノード電位を+0.98Vvs.SHE以上に上昇させると、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子(触媒)の表面のPtおよびRu両方の溶解を起こさせることができるようになる。アノードの高電位保持の時間と電位を最適な条件に調整すると、PtとRuを触媒表面上に再析出させることができる。ここで、PtとRuの溶解析出を行うことにより、触媒表面において、一酸化炭素の吸着がより起こりにくく、かつ良好な電極反応特性を得ることができる、PtとRuからなる良好な触媒の表面(例えばPt原子のそばにRu原子が存在するようなPtとRuの配列状態が実現できる表面)が形成されるようになると考えている。
なお、本発明における第2工程において、「アノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位」をE1とする場合、製造作業を容易とする観点から、カソードに水素ガスを流して参照電極とし、このカソード(参照電極)に対するアノードの電位を上記E1に調整しても良い。この場合、カソード(参照電極)の電位は、厳密には理論上のSHEとは完全に一致していないが、この場合であっても本発明の効果が得られることを本発明者らは確認している(後述の実施例参照)。
また、本発明は上記第2工程の後、アノードの電位を+0.68Vvs.SHE以下の電位に保持する第3工程を更に含むこと、を特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
この第3工程を更に設けることにより、第2工程で触媒表面から溶解させたPtおよびRuの触媒表面への再析出をより確実に行うことができ、先に述べた良好な触媒表面をより確実に形成できるようになる。本発明者らは、この第3工程により、触媒表面におけるPtとRuの再配列を更に確実に行わせて、より一酸化炭素の吸着が起こりにくい表面状態に変化させることができると考えている。
更に、本発明は、上記第2工程と上記第3工程を繰り返すことを特徴とする膜電極接合体の製造方法を提供する。
このように第2工程と第3工程とを繰り返すことにより、第2工程で触媒表面から溶解したPtとRuが触媒層の外(膜中やガス拡散層)へ逸散するのをより確実に予防しつつ、先に述べた良好な一酸化炭素に対する耐久性と良好な発電特性とを併有する良好な触媒表面をより確実に、かつより容易に形成することができる。
また、本発明はアノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、上述の本発明の膜電極接合体の製造方法のうちの何れかの製造方法を経て形成されること、を特徴とする膜電極接合体を提供する。
本発明の膜電極接合体は、先に述べた本発明の膜電極接合体の製造方法を経て作製されるため、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な電極特性を得ることのできるアノードを備えた膜電極接合体を容易かつ確実に得ることができる。
なお、本発明の膜電極接合体は、本発明の効果が得られるのであれば、即ち、先に述べた良好な触媒表面状態が実現できるのであれば、上述の本発明の膜電極接合体の製造方法以外の方法で製造されるものでも良い。
更に、本発明は、先に述べた本発明の膜電極接合体を具備していること、を特徴とする、高分子電解質形燃料電池を提供する。
本発明の高分子電解質形燃料電池は、先に述べた本発明の膜電極接合体を具備しているため、高分子電解質膜の分解劣化を抑制する観点から、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する構成とする場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な電極特性とを同時に得ることができる。
本発明によれば、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な電極特性を得ることのできるアノードを備えた膜電極接合体を容易かつ確実に得ることのできる膜電極接合体の製造方法を提供することができる。
また、本発明の製造方法により、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する膜電極接合体、更には該膜電極接合体を備えた、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な発電特性とを併有する高分子電解質形燃料電池を提供することができる。
また、本発明の製造方法により、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有する膜電極接合体、更には該膜電極接合体を備えた、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な発電特性とを併有する高分子電解質形燃料電池を提供することができる。
以下、本発明の実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
[第1実施形態]
図1は、本発明の膜電極接合体の第1実施形態(本発明の製造方法により製造される膜電極接合体)と、これを備えた単電池の基本構成の一例(本発明の高分子電解質形燃料電池の第1実施形態)を示す概略断面図である。
図1は、本発明の膜電極接合体の第1実施形態(本発明の製造方法により製造される膜電極接合体)と、これを備えた単電池の基本構成の一例(本発明の高分子電解質形燃料電池の第1実施形態)を示す概略断面図である。
図1に示す単電池10は、主として膜電極接合体9と、膜電極接合体9のアノード1Aの周囲に配置されるガスケット6aと、膜電極接合体9のカソード1Cの周囲に配置されるガスケット6cと、膜電極接合体9の両側に配置されるセパレーター4a及びセパレーター4cと、セパレーター4aの外側に配置される集電板7aと、セパレーター4cの外側に配置される集電板7cと、から構成されている。
まず、膜電極接合体9について説明する。図1に示すように、膜電極接合体9は、アノード1Aと、カソード1Cと、これらアノード1Aとカソード1Cとの間に配置される高分子電解質膜1と、から構成されている。
高分子電解質膜1は、固体電解質であり、水素イオンを選択的に輸送する水素イオン伝導性を有する。発電中の膜電極接合体9では、アノード1Aで生成する水素イオンは、この高分子電解質膜1中をカソード1Cに向けて移動する。
高分子電解質膜1としては、特に限定されるものではなく、通常の固体高分子形燃料電池に搭載される高分子電解質膜を使用することができる。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜(例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名)、旭硝子(株)製のFlemion(商品名)およびAciplex(商品名)、ジャパンゴアテックス(株)製のGSIIなど)を使用することができる。
高分子電解質膜1の陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、及びスルホンイミド基を有するものが好ましくあげられる。プロトン伝導性の観点から、高分子電解質膜1はスルホン酸基を有するものが特に好ましい。
スルホン酸基を有する高分子電解質膜を構成する樹脂としては、イオン交換容量が0.5〜1.5meq/g乾燥樹脂であることが好ましい。高分子電解質膜のイオン交換容量が0.5meq/g乾燥樹脂以上であると、発電時における高分子電解質膜の抵抗値の上昇をより十分に低減できるので好ましく、イオン交換容量が1.5meq/g乾燥樹脂以下であると、高分子電解質膜の含水率を適当に保ちつつ、触媒層中の良好なガス拡散特性を十分に確保しやすいため好ましい。以上と同様の観点から、イオン交換容量は0.8〜1.2meq/g乾燥樹脂が特に好ましい。
高分子電解質としては、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0または1を示し、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(5)〜(7)で表される化
合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜
3の整数を示す。
CF2=CFO(CF2)q−SO3H ・・・(5)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)r−SO3H ・・・(6)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2−SO3H ・・・(7)
合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜
3の整数を示す。
CF2=CFO(CF2)q−SO3H ・・・(5)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)r−SO3H ・・・(6)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2−SO3H ・・・(7)
また、高分子電解質膜1は、一種または複数種の高分子電解質で構成されていてもよい。
高分子電解質膜1は、十分な機械的強度を確保する観点から、内部に水素イオン伝導を確保できる状態で配置される補強体(充填材)を含んでいてもよい。このような補強体を構成する材料としては、例えばポリテトラフルオルエチレンまたはポリフルオロアルコキシエチレンが挙げられる。上記補強体としては、その内部に高分子電解質(水素イオン伝導性を有するもの)を充填可能な孔を有する多孔体またはフィブリル状の繊維からなるものなどが挙げられる。
なお、フィブリル状の繊維とは、表面に存在するフィブリル(小繊維)が毛羽立ちささくれた状態(フィブリル化した状態)となっている繊維をいい、各フィブリルの間に微細な空気溝(孔)が形成されている繊維をいう。例えば、セルロース系繊維はすべて、フィブリルが多数集まった束であり、各フィブリルの間には微細な空気溝(孔)がある。
カソード1Cは、主として、高分子電解質膜1の片側に配置されているカソード触媒層2cと、更にカソード触媒層2cの外側に配置されているカソード拡散層3cと、から構成されている。
カソード触媒層2cの構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の燃料電池に搭載されているガス拡散電極の触媒層と同様の構成を有していても良い。例えば、カソード触媒層2cの構成としては、電極触媒が担持された導電性炭素粒子と、陽イオン(水素イオン)伝導性を有する高分子電解質とを含む構成を有していてもよく、更に、ポリテトラフルオロエチレンなどの撥水材料を含む構成を有していてもよい。尚、高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜1の構成材料と同種のものを使用してもよく異なる種類のものを使用してもよい。高分子電解質としては、高分子電解質膜1の構成材料として記載したものを使用することができる。
上記のカソード電極触媒は、金属粒子(例えば貴金属からなる金属粒子)からなり、導電性炭素粒子(粉末)に担持されて用いられる。当該金属粒子は、特に限定されず種々の金属を使用することができるが、電極反応活性の観点ら、白金、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛およびスズからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、電極触媒の粒子は平均粒径1〜5nmであることがより好ましい。平均粒径1nm以上の電極触媒は工業的に調製が容易であるため好ましく、また、5nm以下であると、電極触媒質量あたりの活性をより十分に確保しやすくなるため、燃料電池のコストダウンにつながり好ましい。
上記の導電性炭素粒子は比表面積が50〜1500m2/gであることが好ましい。比表面積が50m2/g以上であると、電極触媒の担持率を上げることが容易であり、得られたカソード触媒層2cの出力特性をより十分に確保できることから好ましく、比表面積が1500m2/g以下であると、十分な大きさの細孔をより容易に確保できるようになりかつ高分子電解質による被覆がより容易となり、カソード触媒層2cの出力特性をより十分に確保できることから好ましい。上記と同様の観点から、比表面積は200〜900m2/gが特に好ましい。
また、導電性炭素粒子は、その平均粒径が0.1〜1.0μmであることが好ましい。0.1μm以上であると、カソード触媒層2c中のガス拡散性をより十分に確保し易くなり、フラッディングをより確実に防止できるようになるため好ましい。また、導電性炭素粒子の平均粒径が1.0μm以下であると、高分子電解質による電極触媒の被覆状態をより容易に良好な状態とし易くなり、高分子電解質による電極触媒の被覆面積をより十分に確保し易くなるため、十分な電極性能をより確保し易くなり好ましい。
カソードガス拡散層3cとしては、ガス透過性を持たせるために、高表面積のカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材を用いてもよい。また、十分な排水性を得る観点から、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子などをカソードガス拡散層3cの中に分散させてもよい。さらに、十分な電子伝導性を得る観点から、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料でカソードガス拡散層3cを構成してもよい。
アノード1Aは、主として、高分子電解質膜1の他方の片側に配置されているアノード触媒層2aと、更にアノード触媒層2aの外側に配置されているアノードガス拡散層3aと、から構成されている。
アノード触媒層2aは、電極触媒をカーボン粉末に担持させて得られる触媒担持カーボンと、水素イオン伝導性を有する高分子電解質とを含む構成を有している。上述のアノード電極触媒は、一酸化炭素に対する良好な耐久性を持たせるため、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を用いる。更に、アノード触媒層2aは、過酸化物による高分子電解質膜の分解劣化の抑制を意図する観点から、アノード触媒層2aに含まれるカーボン担体を低減するのが好ましく、カーボン担体が含まれない構成とするのがより好ましい。ここで、上述の図1に示すアノード触媒層2aに含まれているPt及びRuを構成元素として含む微粒子は、一酸化炭素の吸着が起こりにくい触媒表面状態(例えばPt原子のそばにRu原子が存在するようなPtとRuの配列状態)を有している。この良好な触媒表面は後述する本発明の製造方法の第1実施形態等を好ましく採用することにより形成することができる。
上述のアノード触媒層2aに含まれている「Pt及びRuを構成元素として含む微粒子」は、具体的に(i)Pt微粒子とRu微粒子との混合物からなる粒子、(ii)PtとR
uとの合金からなる粒子、及び(iii)(i)と(ii)の混合物、のうちの少なくとも一種
から構成されている。なお、上記の粒子の粒径については本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果をより確実に得る観点から10nm以下であることが好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。平均粒径1nm以上の電極触媒は工業的に調製が容易であるため好ましく、また、5nm以下であると、電極触媒質量あたりの活性をより十分に確保しやすくなるため、燃料電池のコストダウンにつながり好ましい。
uとの合金からなる粒子、及び(iii)(i)と(ii)の混合物、のうちの少なくとも一種
から構成されている。なお、上記の粒子の粒径については本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されるものではないが、本発明の効果をより確実に得る観点から10nm以下であることが好ましく、1〜5nmであることがより好ましい。平均粒径1nm以上の電極触媒は工業的に調製が容易であるため好ましく、また、5nm以下であると、電極触媒質量あたりの活性をより十分に確保しやすくなるため、燃料電池のコストダウンにつながり好ましい。
アノードガス拡散層3aの構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の燃料電池に搭載されているガス拡散電極のガス拡散層と同様の構成を有していてもよい。例えば、先に述べたカソードガス拡散層3cと同一の構成を有していても良い。
また、アノードガス拡散層3aの構成及びカソードガス拡散層3cの構成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、アノードガス拡散層3aの構成及びカソードガス拡散層3cの構成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
膜電極接合体9の外側には、膜電極接合体9を機械的に固定するための一対のセパレーター4a及びセパレーター4cが配置されている。セパレーター4aの、膜電極接合体9のガス拡散層3aに接触する内面には、燃料ガスを膜電極接合体9に供給し、かつ、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場から膜電極接合体9の外部に運び去るためのガス流路5aが形成されている。また、セパレーター4cの、膜電極接合体9のガス拡散層3cに接触する内面には、酸化剤ガスを膜電極接合体9に供給し、かつ、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場から膜電極接合体9の外部に運び去るためのガス流路5cが形成されている。
ガス流路5a、5cはセパレーター4a及びセパレーター4cとは別に設けることもできるが、図1の燃料電池10においては、セパレーター4aの内面及びセパレーター4cの内面に設けられた溝からなるガス流路5a、5cを有する構成が採用されている。
また、セパレーター4aは、膜電極接合体9と反対の側の外面に、切削加工などにより設けられた溝からなる冷却水流路(図示せず)が形成された構成を有していてもよい。更に、セパレーター4cも、膜電極接合体9と反対の側の外面に、切削加工などにより設けられた溝からなる冷却水流路(図示せず)が形成された構成を有していてもよい。
更に、図1で示したように、一対のセパレーター4a、4cの外側にそれぞれ銅に金メッキをした金属板を用い、セパレーターから集電する役割を持つ集電板7a、7cを設けることでもよい。
このように、1対のセパレーター4a及びセパレーター4cの間に膜電極接合体9を固定し、例えば、セパレーター4aのガス流路5aに燃料ガスを供給し、セパレーター4cのガス流路5cに酸化剤ガスを供給することで、数十から数百mA/cm2の実用電流密度通電時において一つの燃料電池10で0.7〜0.8V程度の起電力を発生させることができる。ただし、通常、高分子電解質形燃料電池を電源として使うときは、数ボルトから数百ボルトの電圧が必要とされるため、実際には、燃料電池10を必要とする個数だけ直列に連結し、いわゆるスタック(図示せず)として使用する。例えば、複数の燃料電池10を積層した積層体を、対向配置された2枚のエンドプレートの間に配置し、締結した状態をしたスタックとして使用する。
次に、図2を用いて、図1に示した単電池10の製造方法(本発明の膜電極接合体の製造方法の第1実施形態)について説明する。図2は、図1に示した単電池10の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として用いるアノードを有する膜電極接合体を製造する第1工程について説明する。この第1工程は、公知の薄膜製造技術を用いた膜電極接合体の製造方法を採用することができる。例えば、カソード触媒層2cは、以下に例示するカソード触媒層形成用ペーストを調製し、これを用いて形成することができる。即ち、例えばPtを50wt%担持したカーボン粒子を触媒として、これに陽イオン交換樹脂溶液、例えば高分子電解質膜1と同質のフッ素系スルホン酸高分子樹脂溶液(例えば当該樹脂の固形分10wt%をエタノール、水の混合溶液に配合した溶液)に徐々に加え、触媒の単位面積当たりの樹脂固形分が、例えば2mg/m2相当となるまでPtを担持したカーボン粒子を混合し、カソード触媒層形成用のペーストにする。
カソード触媒層形成用ペーストに含有させる陽イオン交換樹脂溶液の量は、カーボン粒子の比表面積、細孔サイズ、分散性により変化する。比表面積が大きいほど、分散性がいいほど、樹脂量は多くなる。例えば、樹脂が進入することができないほど小さな細孔によって比表面積が大きくなっている場合に最適樹脂量は少なくなる。例えば、ケッチェンブラックの場合、単位g当たりの最適樹脂量は1.4g/gである。また、使用するカーボンの種類は結晶化、グラファイト化したものであれば、カーボンの酸化を抑制することができ、より望ましい。
アノード触媒層2aは、以下に例示するアノード触媒層形成用ペーストを調整し、これを用いて形成することができる。アノード触媒層形成用ペーストは、アノード電極触媒をカーボン粉末に担持させた触媒担持カーボンを用いる場合は、上記のPtを担持したカーボン粒子の代わりに、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を担持したカーボン粒子を用いる以外は、先に述べたカソード触媒層形成用ペーストと同様の方法で調製すればよい。
また、触媒担体となるカーボン粉末を入れない構成とする場合は、上記のPtを担持したカーボン粒子の代わりに、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を用いる以外は、先に述べたカソード触媒層形成用ペーストと同様な方法を用いて調製すれば良い。
より詳しくは、電極触媒としてのPt及びRuを構成元素として含む微粒子をカーボンに担持させたもの、好ましくは触媒担体となるカーボン粉末を入れずに、Pt及びRuを構成元素として含む微粒子をアノード電極触媒とし、これに陽イオン交換樹脂溶液、例えば高分子電解質膜1と同質のフッ素系スルホン酸高分子樹脂溶液(例えば当該樹脂の固形分10wt%をエタノール、水の混合溶液に配合した溶液)に徐々に加え、調製する。
なお、アノード電極触媒をカーボン粉末に担持させた触媒担持カーボンを用いる場合は、アノード触媒層形成用ペーストに含有させる陽イオン交換樹脂溶液の量は、先に述べたカソード触媒層形成用ペーストと同様に用いればよい。
次に、先に述べた製造方法により作製されたカソード触媒層形成用ペースト、またはアノード触媒層形成用ペーストを、それぞれPPフィルムにバーコーターにより塗布した後、乾燥させる。乾燥後、所望の電極サイズにカットして、高分子電解質膜にホットプレスにより転写させ、カソード触媒層20c、及びアノード触媒層20aを形成する。触媒層形成方法はこの方法に限定されるものではなく、膜に触媒層ペーストを印刷する方法や、膜に触媒層ペーストをスプレー塗工する方法などでもよい。その時、用いられる高分子電解質膜については、特に限定はなく、先に述べたように、スルホン酸基を有する高分子電解質交換膜を用いることができる。
更に、従来公知の方法を用いて、図2に示すようにアノード触媒層20aまたはカソード触媒層20cの外側にそれぞれ、ガス拡散層3aと3cを積層させる。また、供給される燃料ガス及び酸化剤ガスの外部へのリーク防止や混合を防止するガスケット6a及びガスケット6cを、カソード1C及びアノード1Aの周囲に高分子電解質膜1を挟んで配置させる。なお、ガスケット6a及びガスケット6cは、カソード1Cまたはアノード1A及び高分子電解質膜1と予め一体化され、これらすべてを組み合わせたものを膜電極接合体9と呼ぶこともある。
次に、膜電極接合体9の外側に、図2で示したように、ガスが流れるように溝を設けた一対のセパレーター板4a、4cを配置させ、単電池10を構成する。ここで、一対のセパレーター4a、4cの外側にはそれぞれ集電板7a、7cを設ける。なお、これらの7a、7cは設けることでもよいが、なくてもよい。
次に、図2を用いて、アノード電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位(E1)に保持する第2工程の一例について説明する。
図2に示したように、第2工程においては、上述の製造方法により作製された単電池10に、ポテンショスタット30を接続させ、アノード1Aを作用極、カソード1Cを参照電極とする2極系の電気化学セルを構成する。
具体的には、単電池10のアノード1A(作用極12)に窒素ガスを流し、カソード1C(参照電極11)に水素ガスを流しながら、ポテンショスタット30を用いてカソード1Cの電位に対するアノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位E1に保持して、アノード触媒層20aの電極触媒においての表面処理を行う。このとき、上記E1での保持時間は、予備実験などにより適宜好ましく調整することができる。これは、E1をより高く、時間をより長くするほど、アノード触媒としてのPtおよびRuの溶出量は大きくなり、再析出される量も増加するが、PtおよびRuが電極表面にて再析出せずにアノード触媒層20aの外部(例えば高分子電解質膜中、またはガス拡散層中)に逸散してしまい、反応面積が減少し、電圧の低下を引き起こすことを防止する必要があるからである。
次に、アノードに水素ガス、カソードに酸化剤ガスを含むガスを供給し、通常の発電を行う。これにより、アノードの電位をアノード触媒としてのPtおよびRuの析出電位まで下げることができる。上述の電位処理により第2工程で溶解されたPtおよびRuがPtRu触媒表面上に再析出される。すなわち、先に述べた図1に示す一酸化炭素に対する良好な耐久性を有する良好なアノード触媒表面を容易に形成することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の膜電極接合体の第2実施形態、及び本発明の高分子電解質形燃料電池の第2実施形態について説明する。
次に、本発明の膜電極接合体の第2実施形態、及び本発明の高分子電解質形燃料電池の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態の膜電極接合体、及び高分子電解質形燃料電池は、後述する製造方法を用いて作製されること以外は、図1に示した単電池10と同様の構成を有している。以下、この第2実施形態の製造方法について図2を用いて説明する。
まず、第1工程については、先に述べた第1実施形態の単電池10と同様にして膜電極接合体、及び高分子電解質形燃料電池(単電池)を形成する。
次に、第1実施形態に述べた図2と同様の電気化学セルを構成した後、アノード1A(作用極12)に窒素ガスを流し、カソード1C(参照電極11)に水素ガスを流しながら、ポテンショスタット30を用いてカソード1Cの電位に対するアノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位E1に保持する第2工程を行う。
更に、第2工程の後、ポテンショスタット30を用いてカソード1Cの電位に対するアノード電位を+0.68Vvs.SHE以下の電位E2までさげる第3工程を行う。ここで、第3工程の後、ポテンショスタットを用いてカソード1Cの電位に対するアノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位E1にあげる第2工程を行うような、第2工程と第3工程とを繰り返すサイクル操作を行っても良い。
この時、設定電位、第2工程と第3工程とを繰り返す回数については、E1電位をより大きくするほど、サイクル回数が多いほどPtおよびRuの溶出量は大きくなり、再析出される量も増加する。しかし、PtおよびRuが電極表面にて再析出せずにアノード触媒層20aの外部(例えば高分子電解質膜中、またはガス拡散層中)に逸散してしまい、反応面積が減少し、電圧の低下を引き起こすことを防止する観点から、上限電位、または第2工程と第3工程とを繰り返す回数を予備実験などにより適切に設定することが好ましい。また、掃引スピードについても、PtおよびRuの溶解量、PtおよびRuの再析出状態を考慮して、予備実験などにより適切に設定することが好ましい。
本実施形態によれば、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性を有する良好なアノード触媒表面をより確実に形成することができる。更には、一酸化炭素に対する良好な耐久性と、良好な電極特性を得ることのできるアノードを備えた膜電極接合体をより容易かつより確実に得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態において、図1に示したアノードガス拡散層3aとアノード触媒層2aとの間、及び、カソードガス拡散層3cとカソード触媒層2cとの間には、撥水性高分子とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層を設けてもよい。これにより、膜電極接合体における水管理(膜電極接合体の良好な特性維持に必要な水の保持、及び、不必要な水の迅速な排水)をより容易かつより確実に行うことができる。
また、本発明の単電池10においては、セパレーター4aの外側に配置される集電板7a、セパレーター4cの外側に配置される集電板7cと、を設けなくても良い。
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、まず、集電板7a及び集電板7bを設けなかったこと以外は図1に示した高分子電解質形燃料電池の単電池と同様の構成を有する単電池を作製した。
本実施例では、まず、集電板7a及び集電板7bを設けなかったこと以外は図1に示した高分子電解質形燃料電池の単電池と同様の構成を有する単電池を作製した。
〈第1工程〉
アノード触媒(Pt及びRuを構成元素として含む微粒子)としてPtRu黒{HiSPEC6000:(株)ジョンソンマッセイフュエルセルジャパン社製、Pt/Ru=1(物質量比)、結晶子サイズ2.7nm、比表面積73m2/(PtRu黒1g) }と、陽イオン交換樹脂溶液(アルドリッチ(株)製の「Nafion」)とを用いてアノード触媒層形成用ペーストを調製した。
アノード触媒(Pt及びRuを構成元素として含む微粒子)としてPtRu黒{HiSPEC6000:(株)ジョンソンマッセイフュエルセルジャパン社製、Pt/Ru=1(物質量比)、結晶子サイズ2.7nm、比表面積73m2/(PtRu黒1g) }と、陽イオン交換樹脂溶液(アルドリッチ(株)製の「Nafion」)とを用いてアノード触媒層形成用ペーストを調製した。
次に、カソード触媒として、PtC{HiSPEC8000:(株)ジョンソンマッセイフュエルセルジャパン社製、Pt50wt%、結晶子サイズ3.7nm、比表面積60m2/(PtC1g)}と、陽イオン交換樹脂溶液(旭硝子(株)製の「Flemion」)とを用いて、カソード触媒層形成用ペーストを調製した。
次に、上記のアノード触媒層形成用ペーストをPPフィルムの一方の主面にバーコーターにより塗布した後、乾燥させた。乾燥後、このPPフィルムを60mm×60mmのサイズにカットし、高分子電解質膜(ゴア社製、商品名「ゴアセレクト」、膜厚:30μm)の一方の主面に乾燥させたペーストの層が載るようにしてホットプレスし、転写した。このようにして、高分子電解質膜の一方の主面に、アノード触媒層(Pt担持量:0.5mg/cm2)を形成した。
次に、上記のカソード触媒層形成用ペーストをPPフィルムの一方の主面にバーコーターにより塗布した後、乾燥させた。乾燥後、このPPフィルムを60mm×60mmのサイズにカットし、上記のアノード触媒層を形成した高分子電解質膜のもう一方の主面に乾燥させたペーストの層が載るようにしてホットプレスし、転写した。このようにして、高分子電解質膜の一方の主面に、カソード触媒層(Pt担持量:0.5mg/cm2)を形成した。このようにして、膜触媒層接合体を作製した。
次に、膜触媒層接合体の両側の外面にガス拡散層を配置し、以下に説明する手順で膜電極接合体を形成した。
すなわち、ガス拡散層を形成するために、寸法が16cm×20cmで厚みが250μmのカーボンペーパー(東レ(株)製のTGP−H−090)を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のND−1)に含浸した後、乾燥することで上記カーボンクロスに撥水性を付与した(撥水処理)。
続いて、撥水処理後のカーボンクロスの一方の面(全面)に撥水カーボン層を形成した。導電性カーボン粉末(電気化学工業(株)製のデンカブラック(商品名))と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を分散させた水溶液(ダイキン工業(株)製のD−1)とを混合し、撥水カーボン層形成用インクを調製した。この撥水カーボン層形成用インクを、ドクターブレード法によって、上記撥水処理後のカーボンクロスの一方の面に塗布し、撥水カーボン層を形成した。このとき、撥水カーボン層の一部は、上記カーボンクロスの中に埋めこまれていた。
その後、撥水処理および撥水カーボン層形成後のカーボンクロスを、PTFEの融点以上の温度である400℃で30分間焼成した。最後に上記カーボンクロスの中央部分を抜き型にて切断し、寸法が122.5mm×122.5mmのガス拡散層を得た。
次に、上記のようにして得たガス拡散層の撥水カーボン層の中央部分がカソード触媒層およびアノード触媒層に接するように、2枚のガス拡散層で上記膜触媒層接合体を挟み、全体をホットプレス機で熱圧着することにより、本発明の膜電極接合体を得た。
最後に、上記のようにして得た本発明の膜電極接合体を用い、図1に示したものと同様の構造を有する単電池を作製した。上記膜電極接合体を、燃料ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレーター板と、酸化剤ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレーター板とで挟持し、両セパレーター板間でカソードおよびアノードの周囲にフッ素ゴム製のガスケットを配置し、有効電極(アノードまたはカソード)面積が36cm2である単電池を得た。
〈第2工程〉
次に、先に図2を用いた説明した手法と同様の手法により第1工程で作製した単電池にポテンショスタット(北斗電工(株)製のHA−151)を接続させた。次に、アノードに窒素ガスを供給し、カソードに水素ガスを供給し、ポテンショスタットを作動させて、カソード(参照電極)に対するアノードの電位を+1.1Vで1時間保持した。
以上のようにして実施例1の単電池を得た。
次に、先に図2を用いた説明した手法と同様の手法により第1工程で作製した単電池にポテンショスタット(北斗電工(株)製のHA−151)を接続させた。次に、アノードに窒素ガスを供給し、カソードに水素ガスを供給し、ポテンショスタットを作動させて、カソード(参照電極)に対するアノードの電位を+1.1Vで1時間保持した。
以上のようにして実施例1の単電池を得た。
《比較例1》
実施例1における第2工程の処理を行わなかったこと以外は、実施例1の単電池と同様にして比較例1の単電池を作製した。
実施例1における第2工程の処理を行わなかったこと以外は、実施例1の単電池と同様にして比較例1の単電池を作製した。
《実施例2》
実施例1と同様にして膜電極接合体及び高分子電解質形燃料電池単電池を作製した。
実施例1と同様にして膜電極接合体及び高分子電解質形燃料電池単電池を作製した。
〈第1工程〉
実施例1における第1工程と同様の手順で単電池を作製した。
実施例1における第1工程と同様の手順で単電池を作製した。
〈第2工程及び第3工程を繰り返す工程〉
実施例1における第2工程と同様の手順で、第1工程で作製した単電池にポテンショスタット(北斗電工(株)製のHA−151)を接続させ、次に、アノードに窒素ガスを供給し、カソードに水素ガスを供給した。次に、ポテンショスタットを作動させて、カソード(参照電極)に対するアノードの電位を+1.1V〜+0.6Vの電位掃引幅、0.35V/sの電位掃引速度で、5回の電位掃引処理(+1.1Vから+0.6Vまでの電位掃引を行い、次いで当該+0.6Vから+1.1Vまで逆の電位方向に電位掃引を行う一連の工程を5回繰り返す処理)を行った。
以上のようにして実施例2の単電池を得た。
実施例1における第2工程と同様の手順で、第1工程で作製した単電池にポテンショスタット(北斗電工(株)製のHA−151)を接続させ、次に、アノードに窒素ガスを供給し、カソードに水素ガスを供給した。次に、ポテンショスタットを作動させて、カソード(参照電極)に対するアノードの電位を+1.1V〜+0.6Vの電位掃引幅、0.35V/sの電位掃引速度で、5回の電位掃引処理(+1.1Vから+0.6Vまでの電位掃引を行い、次いで当該+0.6Vから+1.1Vまで逆の電位方向に電位掃引を行う一連の工程を5回繰り返す処理)を行った。
以上のようにして実施例2の単電池を得た。
《比較例2》
実施例2における第2工程及び第3工程を繰り返す工程の処理を行わなかったこと以外は、実施例2の単電池と同様にして比較例1の単電池を作製した。
実施例2における第2工程及び第3工程を繰り返す工程の処理を行わなかったこと以外は、実施例2の単電池と同様にして比較例1の単電池を作製した。
[CO被毒に対する耐久性の評価試験]
以下の手順により、上述の実施例1及び実施例2、並びに、比較例1及び比較例2で得られた単電池のCO被毒に対する耐久性の評価試験を行った。
以下の手順により、上述の実施例1及び実施例2、並びに、比較例1及び比較例2で得られた単電池のCO被毒に対する耐久性の評価試験を行った。
〈活性化処理〉
上記実施例1及び2、並びに、比較例1及び2で得られた単電池を、70℃に制御し、アノード側のガス流路に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側のガス流路に空気をそれぞれ供給した。この際、水素ガス利用率を70%に設定し、空気利用率を40%に設定し、水素ガスおよび空気の露点がそれぞれ約70℃となるように加湿してから単電池に供給した。そして、電流密度0.16A・cm-2で100時間、単電池を運転して活性化処理(エージング)を行った。
上記実施例1及び2、並びに、比較例1及び2で得られた単電池を、70℃に制御し、アノード側のガス流路に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側のガス流路に空気をそれぞれ供給した。この際、水素ガス利用率を70%に設定し、空気利用率を40%に設定し、水素ガスおよび空気の露点がそれぞれ約70℃となるように加湿してから単電池に供給した。そして、電流密度0.16A・cm-2で100時間、単電池を運転して活性化処理(エージング)を行った。
〈評価試験1〜3〉
各単電池のCO被毒に対する耐久性を評価するために、電流密度を0.2mA・cm-2とし、カソードに空気を供給し、アノードに水素を主成分とする混合ガス{H2+CO2(20%)+CO(20ppm)}を供給したこと以外は、上記活性化処理と同じ条件下で各単電池を運転し、30分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験1)。その後、アノードに供給するガスをその組成がH2+N2(20%)である混合ガスに切りかえ、300分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験2)。次に、アノードに供給するガスをH2ガスに切りかえ、30分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験3)。その結果を表1に示す。
各単電池のCO被毒に対する耐久性を評価するために、電流密度を0.2mA・cm-2とし、カソードに空気を供給し、アノードに水素を主成分とする混合ガス{H2+CO2(20%)+CO(20ppm)}を供給したこと以外は、上記活性化処理と同じ条件下で各単電池を運転し、30分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験1)。その後、アノードに供給するガスをその組成がH2+N2(20%)である混合ガスに切りかえ、300分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験2)。次に、アノードに供給するガスをH2ガスに切りかえ、30分経過後の各単電池の出力電圧を記録した(評価試験3)。その結果を表1に示す。
表1に示した「ΔCO2+CO」とは、上記評価試験3(アノード供給ガス:H2、カソード供給ガス:空気)で得られる単電池の電圧と、上記評価試験1{アノード供給ガス:(H2+CO2(20%)+CO(20ppm))、カソード供給ガス:空気}で得られる単電池の電圧との電圧差である。
また、表1に示す「ΔN2」とは、上記評価試験3(アノード供給ガス:H2、カソード供給ガス:空気)で得られる単電池の電圧と、上記評価試験2{アノード供給ガス:(H2+N2(20%)、カソード供給ガス:空気Air) で得られる単電池の電圧との電圧差である。
ここで、「ΔCO2+CO」は、COによるアノード電極触媒の被毒の影響と、アノードに供給されるガス中のH2濃度が100%から80%へと減少した影響とを含む各単電池の電圧低下量を示す。
そこで、評価試験2において、評価試験1でアノードに供給される上述のCO混合ガスにおけるH2濃度と同じH2濃度となるように、N2を20%添加したH2+N2ガスを供給する試験を行うことによって、H2濃度が低下した影響のみによる各単電池の電圧低下量を測定することができる。従って、表1に示す「ΔCO2+CO−ΔN2」は、各単電池の電圧低下量のうちの、アノード電極触媒のCO被毒による電圧低下量のみを示す値となる。この「ΔCO2+CO−ΔN2」の値が小さいほどCO被毒に対する耐久性が高い単電池であると評価できることになる。
表1に示した結果(特に「ΔCO2+CO−ΔN2」の値)から明らかなように、本発明における第2工程の処理を行った実施例1の単電池は、この処理を行っていない比較例1の単電池に比較して、CO被毒に対する耐久性が約2.4倍高くなることが確認された。
また、表1に示した結果(特に「ΔCO2+CO−ΔN2」の値)から明らかなように、本発明における第2工程及び第3工程を繰り返す工程の処理を行った実施例2の単電池は、この処理を行っていない比較例2の単電池に比較して、CO被毒に対する耐久性が約3倍高くなることが確認された。
以上のように、実施例1の膜電極接合体及び単電池、又は、実施例2の膜電極接合体及び単電池は、アノードの触媒層のカーボン担体を低減する場合(特にカーボン担体を無くする場合)であっても、一酸化炭素に対する良好な耐久性と良好な発電特性とを併有していることが確認された。
本発明の製造方法により作製される高分子電解質形燃料電池は、自動車などの移動体、分散型(オンサイト型)発電システム(家庭用コジェネレーションシステム)などの主電源又は補助電源として好適に利用されることが期待される。
1・・・電解質膜、2a・・・アノード触媒層、2c・・・カソード触媒層、20a・・・電位掃引処理前のアノード触媒層、20c・・・電位掃引処理前のカソード触媒層、3a・・・アノードガス拡散層、3c・・・カソードガス拡散層、1A・・・アノード、1C・・・カソード、4a・・・アノードセパレーター板、4c・・・カソードセパレーター板、5a・・・燃料ガス流路、5c・・・酸化剤ガス流路、6a・・・アノードガスケット、6c・・・カソードガスケット、7a・・・アノード集電板、7c・・・カソード集電板、9・・・膜電極接合体、10・・・単電池、11・・・参照電極、12・・・作用極、30・・・ポテンショスタット。
Claims (5)
- Pt及びRuを構成元素として含む微粒子を電極触媒として含むアノードを有する膜電極接合体を製造する第1工程と、
前記アノードの電位を+0.98Vvs.SHE以上の電位に保持する第2工程と、
を含むこと、
を特徴とする膜電極接合体の製造方法。 - 前記第2工程の後、前記アノードの電位を+0.68Vvs.SHE以下の電位に保持する第3工程を更に含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第2工程と前記第3工程を繰り返すこと、
を特徴とする請求項2又は3に記載の膜電極接合体の製造方法。 - アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置される高分子電解質膜と、を有する膜電極接合体であって、
請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の製造方法を経て形成されること、
を特徴とする膜電極接合体。 - 請求項4に記載の膜電極接合体を具備していること、
を特徴とする高分子電解質形燃料電池。
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JP2005354781A Pending JP2007157630A (ja) | 2005-12-08 | 2005-12-08 | 膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体及び高分子電解質形燃料電池 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014006978A (ja) * | 2012-06-21 | 2014-01-16 | Toho Gas Co Ltd | 固体酸化物形燃料電池の製造方法及び固体酸化物形燃料電池 |
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2005
- 2005-12-08 JP JP2005354781A patent/JP2007157630A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014006978A (ja) * | 2012-06-21 | 2014-01-16 | Toho Gas Co Ltd | 固体酸化物形燃料電池の製造方法及び固体酸化物形燃料電池 |
CN112673543A (zh) * | 2020-05-15 | 2021-04-16 | 华为技术有限公司 | 不间断电源系统及其驱动方法 |
CN112673543B (zh) * | 2020-05-15 | 2023-12-29 | 华为数字能源技术有限公司 | 不间断电源系统及其驱动方法 |
US12126214B2 (en) | 2020-05-15 | 2024-10-22 | Huawei Technologies Co., Ltd. | Uninterruptible power system and driving method for uninterruptible power system |
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