上記特許文献1に開示されているように乗員用シートの前後位置を調整するためには、乗員用シートを車体の前後方向に沿ってスライド自在に支持するスライドレールと、このスライドレール等に沿って乗員用シートのシートクッションを車体の前後方向に移動させるように駆動するシート位置調整手段とを設ける必要がある。そして、このシート位置調整手段を構成する駆動モータ等を車体側に配設するとともに、その回転力を、トルクケーブル等からなる伝達ケーブルを介して乗員用シートの作動部に伝達することにより、乗員用シートを自動的に前後移動させるように構成した場合には、上記駆動モータと乗員用シートの作動部との間に設置された伝達ケーブルの撓み量が乗員用シートの前後移動に応じて変化することになる。
このため、上記のように乗員用シートの前後移動に応じて撓み量が変化する伝達ケーブルを車室内に露出させた状態で配設した場合には、見栄えが悪くなるという問題がある。また、上記伝達ケーブルをフロアパネル上に設置した場合には、この伝達ケーブルが乗員に踏まれたとしても、その撓み変位が阻害されることがないように、上記伝達ケーブルの設置部位を補強する補強部材等を設けてその強度を確保する必要があり、部品点数が増大するとともに、車体重量が増大する等の問題がある。
また、上記乗員用シートの前後移動に連動させて可動フロア(フロア床板部)を駆動するために、乗員用シートに設けられたシート位置調整手段の駆動力を、伝達ケーブルにより上記可動フロアに伝達することも考えられるが、この場合においても、上記伝達ケーブルの撓み量が乗員用シートの前後移動に応じて変化するために、同様の問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、乗員用シートの前後移動に応じた乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整することができる自動車の着座姿勢調整装置を提供することを目的としている。
請求項1に係る発明は、乗員用シートの前後位置を調整するシート位置調整手段を備えた自動車の着座姿勢調整装置であって、上記シート位置調整手段の駆動モータを車体側に配設するとともに、この駆動モータの回転力を乗員用シートに設けられた作動部に伝達する伝達ケーブルを車室のフロアパネルから起立した縦壁に沿って車体の前後方向に延設し、この縦壁との間に上記伝達ケーブルの直径よりも大きい間隙をもって伝達ケーブルの設置部を覆う被覆部材を車室内に配設したものである。
請求項2に係る発明は、乗員用シートの前後位置を調整するシート位置調整手段を備えた自動車の着座姿勢調整装置であって、上記シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に連動して乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整部を、上記シート位置調整手段の設置部から離間した車体側部位に配設するとともに、このシート位置調整手段と着座姿勢調整部との間で駆動力の伝達を行う伝達ケーブルを車室のフロアパネルから起立した縦壁に沿って車体の前後方向に延設し、この縦壁との間に上記伝達ケーブルの直径よりも大きい間隙をもって伝達ケーブルの設置部を覆う被覆部材を車室内に配設したものである。
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、シート位置調整手段の駆動モータを車体側に配設するとともに、この駆動モータの回転力をシート位置調整手段の作動部に伝達する伝達ケーブルを上記縦壁と被覆部材との間に形成された間隙内に配設したものである。
請求項4に係る発明は、上記請求項2または3に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記着座姿勢調整部は、乗員用シートの前方に設けられた可動フロアと、この可動フロアを駆動してその設置位置を調整する駆動部とを備えたものである。
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記シート位置調整手段は、乗員用シートの前後位置を調整する前後位置調整機構と、この前後位置調整機構に連動して乗員用シートの上下位置を調整する上下位置調整機構とを備えたものである。
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記伝達ケーブルを車体の上方側または下方側に湾曲させた状態で上記縦壁に沿って配設したものである。
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記縦壁は、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の前後方向に延びるサイドシルの側壁であり、上記被覆部材は、サイドシルを上方から被覆するサイドシルカバーであるものである。
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜6の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記縦壁は、フロアパネルの中央部に沿って車体の前後方向に延びるトンネル部の側壁であり、上記被覆部材は、トンネル部を上方から被覆するセンターコンソールであるものである。
請求項9に係る発明は、上記請求項1、3、4の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記縦壁は、フロアパネルの中央部に沿って車体の前後方向に延びるトンネル部の側壁であるとともに、上記被覆部材は、トンネル部を上方から被覆するセンターコンソールであり、このセンターコンソールに設けられたコンソールボックスの下方側にシート位置調整手段の駆動モータが配設されたものである。
請求項10に係る発明は、上記請求項1〜9の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、車幅方向に延びるクロスメンバを乗員用シートの下方側に配設するとともに、このクロスメンバに、上記縦壁と被覆部材との間に形成された間隙に向けて伝達ケーブルをガイドするガイド部を形成したものである。
請求項11に係る発明は、上記請求項10に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、上記クロスメンバに、車体の略前後方向に向かって延設されたビード部を有するガイド部を設けたものである。
請求項12に係る発明は、上記請求項1〜11の何れか1項に記載の自動車の着座姿勢調整装置において、一端部がシート位置調整手段に接続された伝達ケーブルが前後移動するのを規制する規制部を、上記間隙部分における伝達ケーブルの他端部側に設けたものである。
請求項1に係る発明によれば、車体側に配設された駆動モータの回転力を乗員用シートに設けられた作動部に伝達する伝達ケーブルを、フロアパネルから起立した縦壁に沿って車体の前後方向に延設するとともに、この縦壁との間に伝達ケーブルの直径よりも大きい間隙をもって伝達ケーブルの設置部を覆う被覆部材を設けたため、上記シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に応じて伝達ケーブルを上記間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収することができる。したがって、乗員用シートの前後移動に応じて撓み量が変化する伝達ケーブルを車室内に露出させた状態で配設した場合のように、見栄えが悪くなったり、上記伝達ケーブルが乗員に踏まれてその撓み変位が阻害されたりする等の弊害を生じることなく、車体側に配設された駆動モータの回転力を乗員用シート側の作動部に伝達して乗員用シートを前後移動させることにより、乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整することができる。
請求項2に係る発明によれば、上記シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に応じ、その回転力を車体側に設けられた着座姿勢調整部に伝達する伝達ケーブルを、上記車体の縦壁と、伝達ケーブルの設置部を覆う被覆部材との間に形成された間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した上記伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収することができる。したがって、乗員用シートの前後移動に応じて撓み量が変化する上記伝達ケーブルを車室内に露出させた状態で配設した場合のように、見栄えが悪くなったり、上記伝達ケーブルが乗員に踏まれてその撓み変位が阻害されたりする等の弊害を生じることなく、乗員用シート側に配設されたシート位置調整手段の回転力を上記着座姿勢調整部に伝達して乗員の着座姿勢を変化させることができるという利点がある。
請求項3に係る発明によれば、車体側に配設された駆動モータの回転力をシート位置調整手段の作動部に伝達する伝達ケーブルを、フロアパネルから起立した縦壁と被覆部材との間に形成された間隙内に配設したため、上記シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に応じ、駆動モータの回転力をシート位置調整手段の作動部に伝達する伝達ケーブルと、このシート位置調整手段の回転力を上記着座姿勢調整部に伝達する伝達ケーブルとの両方を上記間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した上記両伝達ケーブルの設置長さの変化をそれぞれ吸収できるという利点がある。
請求項4に係る発明によれば、シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に応じ、その回転力を乗員用シートの前方に設けられた可動フロアからなる着座姿勢調整部に伝達する伝達ケーブルを、上記車体の縦壁と、伝達ケーブルの設置部を覆う被覆部材との間に形成された間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した上記伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収することができる。
請求項5に係る発明によれば、乗員用シートの前後位置を調整する前後位置調整機構と、この前後位置調整機構に連動して乗員用シートの上下位置を調整する上下位置調整機構とを上記シート位置調整手段に設けたため、乗員用シートに着座した乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整することができるとともに、この着座姿勢の調整動作に応じて上記伝達ケーブルを、上記縦壁と被覆部材との間に形成された間隙内で撓み変位させることにより、上記着座姿勢の調整動作に対応した伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収できるという利点がある。
請求項6に係る発明によれば、上記伝達ケーブルを車体の上方側または下方側に湾曲させた状態でフロアパネルから起立した縦壁に沿って配設したため、上記シート位置調整手段によるシート位置の調整動作に応じて上記間隙内における伝達ケーブルの湾曲度合を変化させるだけで、乗員用シートの前後移動に対応した上記伝達ケーブルの設置長さの変化を容易に吸収できるという利点がある。
請求項7に係る発明によれば、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の前後方向に延びるサイドシルの側壁からなる縦壁に沿って上記伝達ケーブルを車体の前後方向に延設するとともに、上記サイドシルの側壁と、このサイドシルを上方から被覆するサイドシルカバーとの間に形成された間隙内に上記伝達ケーブルを配設したため、この伝達ケーブルを上記間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収できるという利点がある。
請求項8に係る発明によれば、フロアパネルの中央部に沿って車体の前後方向に延びるトンネル部の側壁からなる縦壁に沿って上記伝達ケーブルを車体の前後方向に延設するとともに、上記トンネル部の側壁と、このトンネル部を上方から被覆するセンターコンソールとの間に形成された間隙内に上記伝達ケーブルを配設したため、この伝達ケーブルを上記間隙内で撓み変位させることにより、乗員用シートの前後移動に対応した伝達ケーブルの設置長さの変化を吸収できるという利点がある。
請求項9に係る発明によれば、上記トンネル部の側壁からなる縦壁に沿って伝達ケーブルを車体の前後方向に延設するとともに、トンネル部を上方から被覆するセンターコンソールとの間に形成された間隙内に伝達ケーブルを配設し、かつ上記センターコンソールに設けられたコンソールボックスの下方側にシート位置調整手段の駆動モータを配設したため、上記コンソールボックスの下方に形成された空間部を有効に利用して上記駆動モータおよび伝達ケーブルを配設することにより、この駆動モータ等が車室内に露出することに起因した見栄えの悪化等を防止できる等の利点がある。
請求項10に係る発明によれば、車幅方向に延びるクロスメンバを乗員用シートの下方側に配設するとともに、このクロスメンバに、上記縦壁と被覆部材との間に形成された間隙に向けて伝達ケーブルをガイドするガイド部を設けた場合ため、部品点数を増大させることなく、伝達ケーブルを上記間隙に向けてスムーズにガイドすることができる。したがって、乗員用シートの前後移動時に、上記伝達ケーブルの一部に過大な屈曲が発生するのを防止して伝達ケーブルに作用する負荷を効果的に低減できるという利点がある。
請求項11に係る発明によれば、車体の略前後方向に向かって延設されたビード部を有するガイド部を上記クロスメンバに設けたため、車体の前後方向におけるクロスメンバの剛性を効果的に向上させることができる等の利点がある。
請求項12に係る発明によれば、一端部がシート位置調整手段に接続された上記伝達ケーブルが前後移動するのを規制する規制部を、上記間隙内における伝達ケーブルの他端部側に設けたため、乗員用シートの前後移動に対応した上記伝達ケーブルの撓み変形を上記間隙内に留めることにより、他端部側に過大な屈曲が発生するのを防止しつつ、見栄えの向上を図ることができるという利点がある。
図1および図2は、本発明の実施形態に係る自動車の着座姿勢調整装置を備えた車室形成部の概略構成を示している。この車室形成部の床面を構成するフロアパネル1上には、シートクッション2とシートバック3とを備えた運転席および助手席等からなる乗員用シート4と、この乗員用シート4を車体の前後方向に移動可能に支持する左右一対のスライドレール5と、このスライドレール5に沿ってシートクッション2をスライド変位させることにより乗員用シート4の前後位置等を調整するシート位置調整手段6と、乗員用シート4に着座した乗員の足が載置される可動フロア7を駆動して乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整部8とが配設されている。
上記スライドレール5は、シートクッション2の両側辺部下方に設置されたスライドプレート9をそれぞれスライド自在に支持するC型鋼等からなり、フロアパネル1上に設置された前後一対のクロスメンバ10,11の上面に、例えば15°程度の仰角で前上がりに傾斜した状態で取付ブラケットを介して取り付けられている。また、上記スライドレール5の側壁面には、図3に示すように、車体の前後方向に延びるラックギア12が固着されるとともに、シート位置調整手段6の作動部となる転動ギア13が上記ラックギア12に歯合するように配設されている。
上記スライドプレート9の前部には、シートクッション2のフレーム材(図示せず)に固着される前部ブラケット14の枢支部を貫通する支持軸15が、左右のスライドプレート9を互いに連結するように設置されている。また、上記スライドプレート9の側壁面中央部には、上記転動ギア13と一体に回転する回転軸16が枢支されるとともに、転動ギア13に歯合する中間ギア17が回転自在に支持され、その後方部内面側(スライドプレート9の内面側)には、シートクッション2の後端部を上下動させる駆動レバー18の基端部が枢支されている。
また、上記回転軸16には、後述する駆動モータの回転力を伝達する第1伝達ケーブル19の先端部が接続されるとともに、上記中間ギア17には、その回転駆動力を上記可動フロア7に伝達する第2伝達ケーブル20の一端部が連結されている。また、上記スライドプレート9の内方側には、中間ギア17と一体に回転することにより上記駆動レバー18を駆動して揺動変位させる駆動ギア22が設置されている。この駆動ギア22は、その直径が上記中間ギア17よりも小さく形成されることにより、その歯数が中間ギア17よりも少なく設定されるとともに、上記駆動レバー18の基端部に形成されたセクタギア18aに歯合するように構成されている。
また、上記駆動レバー18の先端部は、リンクプレート23を介してシートクッション2の後部ブラケット24に連結されている。そして、上記リンクプレート23、駆動レバー18、駆動ギア22および中間ギア17により、後述する前後位置調整機構による乗員用シート4の前後位置の調整動作に連動してシートクッション2の上下位置を調整する上下位置調整機構25が構成されている。すなわち、上記第1伝達ケーブル19から転動ギア13を介して中間ギア17に伝達された回転力に応じ、駆動ギア22が回転駆動されるとともに、この駆動ギア22により上記駆動レバー18が駆動されて揺動変位し、これに対応して上記前部ブラケット14に枢支された支持軸15を支点にシートクッション2の
後端部が昇降駆動されるように構成されている。
上記第1,第2伝達ケーブル19,20は、それぞれ可撓性を有する外筒体および軸心体とからなり、この軸心体が外筒体に支持されつつ回転して所定の作動部に回転力を伝達するように構成されている。そして、第1,第2伝達ケーブル19,20は、上記回転軸16および中間ギア17に対する接続部から車体の中央部側に突設されるとともに、その内側端部に設けられた屈曲部を介して車体の前方側に導出され、この導出部が、図4および図5に示すように、上記クロスメンバ10に設けられたガイド部26によってスライド自在に支持されている。
上記ガイド部26は、スライドレール7の下方部に位置するクロスメンバ10の上壁に形成された凹部26aと、この凹部26aの上面を覆うように設置されてボルト止めされる閉止板26bとにより構成されている。そして、上記凹部26aは、略前後方向に向かって延設されたビード部からなり、第1,第2伝達ケーブル19,20をトンネル部27の側壁27aからなる縦壁側に向けてガイドするために斜め前方側を向くように傾斜した傾斜部を有している。さらに、ガイド部26により上記縦壁側に向けてガイドされた第1,第2伝達ケーブル19,20は、この縦壁に沿って車体の前後方向に延設されるとともに、その前方部分が係止具28を介してトンネル部27の側壁27aに係止され、これにより第1,第2伝達ケーブル19,20の前後移動が規制されるようになっている。
上記フロアパネル1の中央部には、図6に示すように、トンネル部27を上方から覆うようにセンターコンソール29が設置されるとともに、このセンターコンソール29の下方部とトンネル部27の側壁27aとの間にフロアマット30が導入されている。そして、上記縦壁とセンターコンソール29との間に形成された間隙31内に第1,第2伝達ケーブル19,20が配設されることにより、上記間隙31に対する導入位置と上記係止具28による係止位置との間において、第1,第2伝達ケーブル19,20が車体の上方側または下方側に湾曲し、かつその撓み変位が可能な状態で設置されている。すなわち、上記センターコンソール29の上壁および側壁と、トンネル部27の側壁27aと、上記フロアマット30の上端部との間に形成された間隙31の寸法が、第1,第2伝達ケーブル19,20の直径よりも大きい値に設定されることにより、上記間隙31内における第1,第2伝達ケーブル19,20の上下動が、図6の仮想線で示すように許容されるようになっている。
上記第1伝達ケーブル19は、係止具28による係止位置から車体の後方側に折り返されることによりトンネル部27の上壁に沿って後方側に延設され、その後端部が、図7に示すように、センターコンソール29に設けられたコンソールボックス29aの下方空間内に配設された駆動モータ32の出力軸にカップリング32aを介して連結されている。この駆動モータ32、第1伝達ケーブル19、転動ギア13およびラックギア12により、乗員用シート4のシートクッション2を上記スライドレール5に沿って前後移動させる前後位置調整機構33が構成されている。具体的には、上記駆動モータ32の回転力が第1伝達ケーブル19を介して上記転動ギア13に伝達され、この転動ギア13が回転駆動されてラックギア12上を転動することにより、上記シートクッション2の下面に取り付けられたスライドプレート9が上記スライドレール5に沿って前後移動し、乗員用シート4の前後位置が調整されるようになっている。
上記のように駆動モータ32から第1伝達ケーブル19を介して転動ギア13に伝達された回転力に応じ、この転動ギア13を回転駆動して乗員用シート4を前後移動させる上記前後位置調整機構33と、この前後位置調整機構33と連動して乗員用シート4の上下位置を調整するように駆動レバー18を揺動変位させる上記上下位置調整機構25とにより、乗員の体格等に応じて乗員用シート4の設置位置を調整するシート位置調整手段6が構成されている。
一方、上記第2伝達ケーブル20は、図8に示すように、係止具28による係止位置から、さらに車体の前方側に延出され、その前端部が、上記着座姿勢調整部8を構成するウォームギア35に接続されるとともに、上記可動フロア7の側方部においてウォームギア35の前後移動を規制する係止具34によりフロアパネル1に係止されている。そして、上記回転軸16から第2伝達ケーブル20の一端部に入力された回転力が、この第2伝達ケーブル20の他端部側に伝達されることにより、上記ウォームギア35が回転駆動されるように構成されている。
上記可動フロア7は、図1、図2および図8に示すように、ダッシュパネル36の下方部に設けられた支持軸37を支点にして揺動可能に支持された第1パネル7aと、この第1パネル7aの後端部にヒンジ結合された第2パネル7bとを有している。上記第1パネル7aの下方には、軸受38により回転自在に支持された回転軸39が配設され、この回転軸39には、その一側端部に上記ウォームギア35により回転駆動されるウォームホイール40が取り付けられるとともに、上記可動フロア7の第1パネル7aを昇降駆動する左右一対の駆動部41が設けられている。
上記駆動部41は、回転軸39に固定された左右一対の揺動アーム42と、両揺動アーム42の先端部間に配設された駆動ローラ43とを有し、この駆動ローラ43により第1パネル7aの下面中央部を上方に押動して第1パネル7aを揺動変位させるように構成されている。すなわち、上記可動フロア7と、駆動部41が設けられた回転軸39と、その側端部に固定されたウォームホイール40と、このウォームホイール40に歯合する上記ウォームギア35とにより、上記可動フロア7を駆動して乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整部8が構成されている。また、この着座姿勢調整部8は、上記前後位置調整機構33と上下位置調整機構25とを有するシート位置調整手段6の設置部から離れた車両側部位、つまり乗員用シート4の設置部よりも所定距離だけ前方側に位置するダッシュパネル36の下方部近傍に配設されている。
上記構成において、図示を省略したシート位置の調整スイッチを操作して上記前後位置調整機構33の駆動モータ32を作動させると、その回転力が上記第1伝達ケーブル19を介して転動ギア13に伝達され、この転動ギア13が回転駆動されて上記ラックギア12上を転動することにより、乗員用シート4のシートクッション2が、図9の実線で示す前方位置と、仮想線で示す後方位置との間を前後移動することになる。
そして、上記転動ギア13を図3の矢印aに示すように、乗員用シート4を車体の前方側に移動させる方向に回転駆動した場合には、この転動ギア13の回転方向aと逆方向bに上下位置調整機構25の中間ギア17および駆動ギア22が回転駆動され、この駆動ギア22によりセクタギア18aが矢印cに示すように回転駆動されることにより、上記駆動レバー19の先端部が上昇する方向dに揺動変位してシートクッション2が水平状態に近い状態となる。一方、上記乗員用シート4を車体の後方側に移動させる場合には、転動ギア13、中間ギア17および駆動ギア22が、それぞれ上記前方移動時と逆方向に回転駆動することにより、上記駆動レバー19の先端部が下降する方向に揺動変位してシートクッション2が後下がりの傾斜状態となる。
また、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に応じ、中間ギア17の回転力が上記第2伝達ケーブル20を介して上記着座姿勢調整部8に伝達されることにより、乗員の足が載置される可動フロア7の第1パネル7aが駆動部41を介して昇降駆動される。そして、上記乗員用シート4のシートクッション2が前方位置に移動した場合には、この乗員用シート4に略直立状態で着座した乗員が適正に足を乗せることができるように、図9の実線で示すように第1パネル7aの後端部が上昇して略水平状態となる。一方、乗員用シート4のシートクッション2が後方位置に移動した場合には、このシートクッション4に後下がりの傾斜状態で着座した乗員が適正に足を乗せることができるように、図9の仮想線で示すように第1パネル7aの後端部が下降して後下がりの傾斜状態となる。
また、上記シート位置調整手段6により乗員用シート4の前後位置等が調整されるのに応じ、上記転動ギア13および中間ギア17に対する第1,第2伝達ケーブル19,20の接続端部が乗員用シート4に連動して車体の前後方向に移動するとともに、上記第1,第2伝達ケーブル19,20の前方部分が係止具28によりトンネル部27の側壁27aに係止されてその前後移動が規制されつつ、第1,第2伝達ケーブル19,20が上記ガイド部26内をスライド変位する。この結果、上記トンネル部27の側壁からなる縦壁とセンターコンソール29との間の間隙31内における第1,第2伝達ケーブル19,20の全長が変化することにより、上記間隙31に対する導入位置と上記係止具28による係止位置との間で、車体の上方側または下方側に湾曲した状態で設置された上記第1,第2伝達ケーブル19,20の撓み量、つまり車体の上方側または下方側への湾曲量が変化することになる。
例えば、上記乗員用シート4が車体の前方側に移動すると、これに対応して間隙31内における第1,第2伝達ケーブル19,20の全長が長くなってその撓み量が増大する。また、上記乗員用シート4が車体の後方側に移動すると、これに対応して間隙31内における第1,第2伝達ケーブル19,20の全長が短くなってその撓み量が減少する。これにより、上記乗員用シート4の前後移動に対応した第1,第2伝達ケーブル19,20の設置長さの変化が吸収されるとともに、上記間隙31外で第1,第2伝達ケーブル19,20の撓みが変化するという事態の発生が防止されることになる。
上記のように乗員用シート4の前後位置を調整するシート位置調整手段6を備えた自動車の着座姿勢調整装置において、上記シート位置調整手段6の駆動モータ32を車体側に配設するとともに、この駆動モータ32の回転力を乗員用シート4に設けられた転動ギア13からなる作動部に伝達する第1伝達ケーブル19を、車室のフロアパネル1から起立した縦壁(トンネル部27の側壁27a)に沿って車体の前後方向に延設し、この縦壁との間に上記第1伝達ケーブル19の直径よりも大きい間隙31をもって第1伝達ケーブル9の設置部を覆う被覆部材、つまりセンターコンソール29を車室内に配設したため、乗員用シート4の前後移動に応じて乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整できるという利点がある。
すなわち、上記シート位置調整手段6の駆動モータ32を車体側に配設した場合には、この駆動モータ32の設置位置と、乗員用シート4側に設けられた転動ギア13からなる作動部の設置位置との間隔が、乗員用シート4の前後移動に応じて変化するとともに、これに対応して上記駆動モータ32の回転力を転動ギア13に伝達する第1伝達ケーブル19の設置長さが変化することが避けられない。しかし、上記のように駆動モータの回転力を転動ギア13に伝達する第1伝達ケーブル19を、トンネル部27の側壁からなる縦壁に沿って車体の前後方向に延設するとともに、上記縦壁とセンターコンソール29との間に第1伝達ケーブル19の直径よりも大きい間隙31を形成した場合には、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に応じて第1伝達ケーブル19を上記間隙31内で撓み変位させることにより、この間隙31外において第1伝達ケーブル19に撓み変位が生じるのを防止しつつ、上記乗員用シート4の前後移動に対応した第1伝達ケーブル19の設置長さの変化を吸収することができる。
したがって、乗員用シート4の前後移動に応じて撓み量が変化する第1伝達ケーブル19を車室内に露出させた状態で配設した場合のように、見栄えが悪くなったり、上記第1伝達ケーブル19をフロアパネル1上に設置した場合のように、第1伝達ケーブル19が乗員に踏まれてその撓み変位が阻害されたりする等の弊害を生じることなく、車体側に配設された駆動モータ32の回転力を乗員用シート4側の転動ギア13に伝達して乗員用シート4を前後移動させることにより、乗員用シートの前後移動に応じた乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整することができる。
また、上記のように乗員用シート4の前後位置を調整するシート位置調整手段6を備えた自動車の着座姿勢調整装置において、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に連動させて可動フロア7を駆動することにより乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整部8を、上記シート位置調整手段6の設置部から離間した車体側部位に配設するとともに、このシート位置調整手段6と着座姿勢調整部8との間で駆動力の伝達を行う第2伝達ケーブル20を車室のフロアパネル1から起立したトンネル部27の側壁27aからなる縦壁に沿って車体の前後方向に延設し、この縦壁との間に上記第2伝達ケーブル20の直径よりも大きい間隙31をもって第2伝達ケーブル20の設置部を覆うセンターコンソール29からなる被覆部材を車室内に配設した場合には、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に応じて第2伝達ケーブル20を上記間隙31内で撓み変位させることにより、この間隙31外において第2伝達ケーブル20に撓み変位が生じるのを防止しつつ、上記乗員用シート4の前後移動に対応した第2伝達ケーブル20の設置長さの変化を吸収することができる。
したがって、乗員用シート4の前後移動に応じて撓み量が変化する上記第2伝達ケーブル20を車室内に露出させた状態で配設した場合のように、車室内における見栄えが悪化したり、この第2伝達ケーブル20が乗員に踏まれてその撓み変位が阻害されたりする等の弊害を生じることなく、乗員用シート4側に配設された中間ギア17の回転力を可動フロア7側のウォームギア35に伝達して可動フロア7を上下動させることにより乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調節できるという利点がある。
上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に連動して乗員の着座姿勢を調整する可動フロア7からなる着座姿勢調整部を設ける場合において、上記シート位置調整手段6の駆動モータ32を乗員用シート4側に配設した構造とすることも可能である。しかし、上記実施形態に示すように、シート位置調整手段6の駆動モータ32を車体側に配設するとともに、この駆動モータ32の回転力をシート位置調整手段6の作動部(転動ギア13)に伝達する第1伝達ケーブル19を上記縦壁と被覆部材との間に形成された間隙31内に配設した場合には、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に応じて上記第1,第2伝達ケーブル19,20の両方を上記間隙31内で撓み変位させることにより、乗員用シート4の前後移動に対応した第1,第2伝達ケーブル19,20の設置長さの変化をそれぞれ吸収できるという利点がある。
なお、上記乗員用シート4の前方側においてダッシュパネル36の下方部近傍に設けられた可動フロア7と、この可動フロア7を駆動してその設置位置を調整する駆動部41とを備えた上記着座姿勢調整部8に代え、あるいはこれとともに、運転席に着座した乗員により操作されるアクセルペダルおよびブレーキペダル、またはステアリングハンドルと、これらの位置を調整する駆動部を備えた着座姿勢調整部を設けた構造としてもよい。
また、上記実施形態では、乗員用シート4の前後位置を調整する前後位置調整機構33と、この前後位置調整機構33と連動して乗員用シート4の上下位置を調整する上下位置調整機構25とを上記シート位置調整手段6に設けたため、乗員用シート4に着座した乗員の体格等に応じて乗員用シート4の前後位置および上下位置の両方を同時に調節することにより、乗員の着座姿勢を容易かつ適正に調整することができるとともに、この着座姿勢の調整動作に応じて第1,第2伝達ケーブル19,20を上記間隙31内で撓み変位させることにより、上記着座姿勢の調整動作に対応した第1,第2伝達ケーブル19,20の設置長さの変化を吸収することができる。
特に、上記実施形態では、第1,第2伝達ケーブル19,20を車体の上方側または下方側に湾曲させた状態で上記縦壁に沿って配設したため、上記シート位置調整手段6によるシート位置の調整動作に応じて上記間隙31内における第1,第2伝達ケーブル19,20の上方側または下方側への湾曲度合を変位させるだけで、上記乗員用シート4の前後移動に対応した第1,第2伝達ケーブル19,20の設置長さの変化を容易に吸収できるという利点がある。
なお、上記実施形態では、フロアパネル1の中央部に沿って車体の前後方向に延びるトンネル部27の側壁27aからなる縦壁に沿って上記第1,第2伝達ケーブル19,20を車体の前後方向に延設するとともに、上記トンネル部27の側壁27aと、このトンネル部27を上方から被覆するセンターコンソール29との間に形成された間隙31内に第1,第2伝達ケーブル19,20を配設した例について説明したが、これに限らず種々の変形が可能である。例えば、図10に示すように、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の前後方向に延びるサイドシル44の側壁(サイドシルインナパネルの内側壁)44aからなる縦壁に沿って第1伝達ケーブル19を車体の前後方向に延設するとともに、上記サイドシル44の側壁44aと、このサイドシル44を上方から被覆するサイドシルカバー45との間に形成された間隙46内に第1,第2伝達ケーブル19,20を配設し、この間隙46内で第1,第2伝達ケーブル19,20を撓み変位させることにより、上記乗員用シート4の前後移動に対応した第1,第2伝達ケーブル19,20の設置長さの変化を吸収するように構成してもよい。図10において、47は、フロアマットの表皮材であり、48はフロアマットのパッド材である。
また、上記実施形態に示すように、フロアパネル1の中央部に沿って車体の前後方向に延びるトンネル部27の側壁からなる縦壁に沿って第1,第2伝達ケーブル19,20を車体の前後方向に延設するとともに、トンネル部27を上方から被覆するセンターコンソール29との間に形成された間隙31内に第1,第2伝達ケーブル19,20を配設し、かつ上記センターコンソール29に設けられたコンソールボックス29aの下方側にシート位置調整手段6の駆動モータ32を配設した場合には、上記コンソールボックス29aの下方に形成された空間部を有効に利用して上記駆動モータ32および第1,第2伝達ケーブル19,20を配設することにより、この駆動モータ32等が車室内に露出することに起因した見栄えの悪化等を防止できる等の利点がある。
さらに、上記実施形態に示すように、車幅方向に延びるクロスメンバ10を乗員用シート4の下方側に配設するとともに、このクロスメンバ10に、上記トンネル部27の側壁27aからなる縦壁とセンターコンソール29からなる被覆部材との間に形成された間隙31に向けて第1伝達ケーブル19をガイドするガイド部26を設けた場合には、部品点数を増大させることなく、第1,第2伝達ケーブル19,20を上記間隙31に向けてスムーズにガイドすることができる。したがって、乗員用シート4の前後移動時に、上記第1,第2伝達ケーブル19,20の一部に過大な屈曲が発生するのを防止して第1,第2伝達ケーブル19,20に作用する負荷を効果的に低減することができる。しかも、上記のようにガイド部26に、車体の略前後方向に向かって延設されたビード部を構成する凹部26aを設けるとともに、この凹部26aを閉塞する閉止板26bを上記クロスメンバ10に設けた場合には、車体の前後方向におけるクロスメンバ10の剛性を効果的に向上させることができる。
なお、図10に示すように、上記サイドシル44の側壁44aからなる縦壁に沿って第1,第2伝達ケーブル19,20を車体の前後方向に延設するとともに、上記サイドシル44の側壁44aと、このサイドシル44を上方から被覆するサイドシルカバー45との間に形成された間隙46内に第1,第2伝達ケーブル19,20を配設した場合には、上記サイドシル44の側壁44aからなる縦壁と、サイドシルカバー45からなる被覆部材との間に形成された間隙46に向けて第1伝達ケーブル19をガイドするガイド部を上記クロスメンバ10に設けた構造とすることにより、部品点数を増大させることなく、上記第1,第2伝達ケーブル19,20を上記間隙31に向けてスムーズにガイドすることができる。
また、上記実施形態では、一端部(後端部)がシート位置調整手段6に接続された第1,第2伝達ケーブル19,20が前後移動するのを規制する係止具28からなる規制部を、上記間隙31,46の設置部分における第1,第2伝達ケーブル19,20の他端部(前端部)側に設けたため、乗員用シート4の前後移動に対応した上記第1,第2伝達ケーブル19,20の撓み変形を上記間隙31,46内に留めることにより、他端部側に過大な屈曲が発生するのを防止しつつ、車室内の見栄えを向上させることができるという利点がある。