液晶表示装置や有機EL表示装置は、低消費電力でフルカラー化が容易である等の特徴を有することから薄型ディスプレイの中で有望視されている。特に、近年では、これらの装置の表示画面の大型化に関する開発が活発である。
特に、各画素毎にα−SiTFT又はp−SiTFTをスイッチング素子としてマトリックス状に配列し、各画素を駆動するアクティブマトリックス方式が広く利用され、開発も活発である。この方式を液晶表示装置に用いたアクティブマトリックス方式液晶平面ディスプレイは、800×600画素以上の高精細化を行っても、コントラスト比が劣化せず、高性能カラー表示ディスプレイとして注目されている。
このようなアクティブマトリックス方式液晶平面ディスプレイでは、画素電極として、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極を用い、トランジスタ(FET)のソース電極としては、Al系合金薄膜を用いることが多い。この理由は、ITOはシート抵抗が低く且つ透過率が高いこと、及び、Alは容易にパターニングでき且つ低抵抗で密着性が高いこと、である。
図1には、Al金属配線を備えた透明導電膜積層回路基板を作成している途中の様子を示す断面図が示されている。この図1自体は、本発明の図でもあると共に従来技術の図でもある。
この図1は、液晶平面ディスプレイの製造工程において、画素電極のパターン形成が終了した段階のα−SiTFT近傍の断面を示したものである。従来の液晶ディスプレイも画素電極の素材を除いて、基本的構造は同様であるので、この図1を用いて従来技術の説明を行う。
この図1においては、透光性ガラス基板1上にゲート電極パターン2を形成し、次にプラズマCVD法を用いて、SiNゲート絶縁膜3、α−Si:H(i)膜4、チャンネル保護膜5及びα−Si:H(n)膜6を連続的に形成し、所望の形状にパターン化する。さらに、Alを主体とする金属膜を真空蒸着法或いはスパッタ法により堆積し、フォトリソグラフィ技術により所定のパターンのソース電極7及び所定のパターンのドレイン電極8を形成し、α−SiTFT素子部分が完成する。この上に、ITO膜をスパッタリング法にて堆積し、フォトリソグラフィ技術によりソース電極7と電気的に接続した画素電極パターン9を形成する。
ITO膜をAl膜の後に堆積する理由は、α−Si:H膜とソース及びドレイン電極との電気的なコンタクト特性を劣化させないためである。また、Alは安価で比抵抗が低く、ゲート及びソース・ドレイン電極配線の抵抗増大による液晶ディスプレイの表示性能の低下を防ぐ意味で優れた材料の一つである。
上記の製造工程において、Alを主体とするソース・ドレイン電極パターンを形成した後、ITO画素電極パターンをHCl−HNO3−H2O系エッチング液で加工すると、しばしば、加工終了時点でAlパターンが溶出してしまうという現象が観察された。
これは、本来、AlもITOエッチング液であるHCl−HNO3−H2O系エッチング液に溶解する性質を持っていることに起因するものと考えられる。エッチング液中のHNO3はAl表面に薄いAl酸化膜を形成し、Alの溶出を防止する意味で添加されている。しかし、実際には、ITO膜のエッチング時間が長かったり、Alを堆積している最中にAl膜中に混入した不純物、異物などの欠陥部分が存在すると、局部電池反応により、上記のAlの酸化効果が十分に作用しない場合があると考えられる。
このようなAlの溶出を防止するために、ITO膜を非晶質にすることで、HCl−HNO3−H2O系エッチング液に対するITO/Alエッチングレート比を大きくする技術が下記特許文献1に記載されている。なお、エッチングレートとは、エッチングの速度である。すなわち、エッチングレート比とは、エッチングする速度の比を意味する。
しかしながら、ITO膜を非晶質にしてもHCl−HNO3−H2O系エッチング液を用いるため、Alの溶出は完全には防止されておらず、高精細な液晶ディスプレイを実現することは困難な場合もあった。
このような問題に鑑み、例えば下記特許文献2においては、Alゲート、ソース・ドレイン電極パターン上での透明電極、画素電極のパターン化を蓚酸系のエッチング液を用いたエッチングによって実行し、パターン化を容易にすることが開示されている。また、この特許文献2においては、高精細な液晶ディスプレイの製造方法を提供することを目的とし、酸化インジウム−酸化亜鉛から成る組成の透明電極を用いることが提案されている。
そして、この特許文献2に記載されているような構成では、Alゲート線/透明電極、Alソース・ドレイン電極/画素電極との間で発生する接触抵抗が無視できない大きさになることが知られている。そのため、通常は、Al線をTi、Cr、Moなどのバリヤーメタルで覆う手法が採用されている。このような手法は、下記特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載されている。
このように、従来の改良された技術においては、Al配線を利用する場合、バリヤーメタルを使用せざるを得ないことからそのバリヤーメタルの成膜、エッチングが必要であり、製造工程を複雑にしていた。
また、Alに各種金属を添加した合金が報告されているが、上記接触抵抗を小さくすることは非常に困難であると考えられる。これは、Al自体表面に酸化皮膜を形成し、この酸化皮膜は絶縁体であり、この絶縁体が接触抵抗を大きくしていると考えられるためである。このように、Alに各種金属を添加した合金は、下記特許文献7、特許文献8、特許文献9等に記載されている。
この酸化皮膜による接触抵抗を低減するために、Al薄膜上にIn、Znなどの金属の薄膜を設置する方法等が考案されている。このような手法によれば、接触抵抗は小さくなるが、これらの薄膜を成膜する必要があり、さらに、画素電極の透過率が低下するなどの問題が見られた。このような金属皮膜については、下記特許文献10に記載されている。
一方、Alに特殊な金属成分を添加することにより、ITOとの接触抵抗が低減できると報告があるが、Alに特殊な金属成分を添加することにより、Al合金とITOとの間で電池反応が起きやすくなり、画素の黒化や、配線の腐食や線細りの問題が出ている。このような問題は下記特許文献11に記載されている。
これは、Alの起電力と、ITOとの間の起電力に差が生じ、この差による起電力(電池反応)によって、Alがさらに溶解しやすくなる現象として知られている。
FPD International 2004(2004年10月20日〜22日、於パシフィコ横浜、主催日経BP社)においては、TMAH(2.38%)中でのAg/AgCl標準電極に対する起電力の計測結果が発表されている。その一部を下に引用する。
Al : −1.93V
Al−2at%Nd : −1.88V
Al−NiAlloy : −1.31V
IZO(登録商標) : −0.57V
p−ITO(多結晶Indium Tin Oxide): −0.19V
α−ITO(非結晶Indium Tin Oxide): −0.17V
これらの値から、Al/IZO間には、−1.36Vの起電力が発生することが理解される(ここでat%は原子%である)。同様にして、
Al−2at%Nd/IZO間には、−1.31Vの起電力
Al−NiAlloy/IZO間には、−0.74Vの起電力
Al/p−ITO間には、−1.74Vの起電力
Al−2at%Nd/p−ITO間には、−1.69Vの起電力
Al−NiAlloy/p−ITO間には、−1.12Vの起電力
がそれぞれの物質間で発生することが理解されよう。
このように、ITOよりIZOの方が起電力が小さく、電池反応を抑制することが期待できるが、このIZOは、最低でも−0.74Vの起電力を発生してしまうので、完全に電池反応を抑制することは困難である。完全に電池反応を抑制するには、これらのAl/透明電極間の起電力を−0.5V未満に抑えることが必要である。ここで、透明電極とは、IZOやITOを意味する。
特開昭63−184726号公報
特開平11−264995号公報
特開平10−65174号公報
特開平11−184195号公報
特開平11−258625号公報
特開平11−253976号公報
特開平7−45555号公報
特開平7−301705号公報
特開平1−289140号公報
特開2003−017706号公開公報(特願2001−200710)
特開2004−214606号公報
以上述べたように、従来のAl配線を備えた透明導電膜積層基板においては、大別して、以下のような問題点があった。
・Al配線と透明導電膜とを直接接合すると接触抵抗が大きくなるので、上述したようなバリヤーメタルを設ける必要があり、製造工程が増えるという問題がある。
・Al配線と透明導電膜との間の電池反応によって、エッチング等の際にAl配線が線細りや断線を生じる恐れがあった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、以下の通りである。
本願発明者らは、このような背景の下、Alと透明電極との間に生じる起電力を小さな値にすることができる透明電極の材料を鋭意開発した。すなわち、本発明の目的の一つは、このような透明材料を提案することである。
より具体的には、本発明は、特定の酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする酸化物より成る透明導電材料を、画素電極又は透明電極に使用することによって、TFT基板の製造方法を簡略化することを目的とする。
主成分とは、主要な成分を言い、概ねその成分が重量的又は体積的、又は原子の数比的にに50パーセント以上あるものを意味する。例えば、酸化亜鉛−酸化スズが主成分であるとは、概ねこれらの組成比率の合計が50%以上であることを言う。
また、本発明は、Alゲート/透明電極、Alソース・ドレイン/画素電極を直接接触させてもその間の接触抵抗の値を従来より小さく抑えることができる透明電極・画素電極の材料を提供することも目的とする。
また、本発明は、TMAH水溶液の中でも電池反応を十分に抑制することができる金属酸化物透明導電膜(の材料)を提供することも目的とする。
また、本発明は、上記金属酸化物透明導電膜を透明電極・画素電極として利用したTFT基板(薄膜トランジスタ基板)を提供することを目的とする。このTFT基板は、液晶表示装置における液晶を駆動する基板として利用することが可能である。なお、このTFT基板は、金属配線・透明導電膜積層回路基板と呼ばれる基板の一種である。特に、金属配線がAl配線の場合は、Al配線を備えた透明導電膜積層回路基板とも呼ばれる。
また、このTFT基板は、液晶表示装置や有機EL表示装置にも利用可能である。すなわち、上記金属酸化物透明導電膜を透明電極・画素電極として利用した上記TFT基板(薄膜トランジスタ基板)を用いることによって、製造方法を簡略化して製造コストを抑制し、液晶表示装置や有機EL表示装置を安価に提供することをも本発明の目的である。
本発明によれば、特定の組成の酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする透明導電材料を、画素電極又は透明電極に使用したので、て、TFT基板の製造方法を簡略化することができる。
また、本発明によれば、Alゲートと透明電極とを直接接触させてもその間の接触抵抗の値を従来より小さく抑えることができる透明電極の材料を提供することができる。同様に、Alソース・ドレインと画素電極とを直接接触させてもその間の接触抵抗の値を従来より小さく抑えることができる画素電極の材料を提供することができる。
なお、透明電極のうち、液晶等を駆動して画素を構成する電極を画素電極と呼ぶが、単なる場所の相違に過ぎず、画素電極と透明電極とは実質的に同様のものである。
また、本発明の金属酸化物透明導電膜によれば、TMAH水溶液の中でも電池反応を十分に抑制することができるので、製造工程での電池反応を抑制することが可能である。
このように、本発明によれば、製造工程を簡略化することができるので、TFT基板を安価に製造することができる。その結果、本発明によれば、安価に液晶表示装置や有機EL表示装置を提供することができる。
また、本発明は、上記金属酸化物透明導電膜を透明電極・画素電極として利用したTFT基板(薄膜トランジスタ基板)を提供することができる。このTFT基板は、液晶表示装置における液晶を駆動する基板として利用することが可能である。なお、このTFT基板は、金属配線・透明導電膜積層回路基板と呼ばれる基板の一種である。
また、上記金属酸化物透明導電膜を透明電極・画素電極として利用した上記TFT基板(薄膜トランジスタ基板)を用いることによって、製造方法を簡略化して製造コストを抑制し、安価に液晶表示装置や有機EL表示装置を提供することができる。
本発明の前記目的は、画素電極として、酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする非晶質導電性酸化物から成る透明導電膜を用いることによって達成される。
また、上記目的は、該透明導電膜のTMAH中の起電力を−0.6V未満に抑え、且つ、蓚酸水溶液をエッチング液として用いたエッチングを行ってパターン化することによって達成される。
具体的には、本発明は、以下の手段を採用する。
A.Al配線を備えた透明導電膜の積層回路基板に関する発明
(1)本発明は、上記課題を解決するために、酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする酸化物であって、30℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)2.4%水溶液中のAg/AgCl標準電極を基準とした起電力が−0.6V以下であることを特徴とする非晶質酸化物透明導電膜材料である。
このような組成の透明導電膜材料を用いて作成した透明導電膜は、直接Al配線に接合させても、接触抵抗を従来より低い値にすることができる。また、このような組成の透明導電膜によれば、Al配線との間の電池反応を効果的に抑止することができる。
このように、本発明の(1)では、透明導電膜材料の、30℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)2.4%水溶液中のAg/AgCl標準電極を基準とした起電力が−0.6V以下であることが非常に重要なポイントである。
導電膜材料(を用いて作成した導電膜)の起電力が−0.6Vより大きな値の場合は、既に説明したように、Al配線との起電力の関係から電池反応が発生しやすくなる。
導電膜材料(を用いて作成した導電膜)の起電力の下限値は特に存在しないし、特段の制約も存在しないが、Al配線の起電力より小さくする必要はない。
具体的には、導電性酸化物の起電力が「Al配線の標準起電力+0.7V」以下の範囲であれば、電池反応が生じる場合でもその電池反応の速度は遅くなる。そして、さらに低い値である「Al配線の標準起電力+0.5V」以下の範囲であれば十分実用的な意味で、電池反応を抑制することができることが本願発明者らの実験から判明した。
(2)また、本発明は、前記酸化物の組成を表す[Zn]/([Zn]+[Sn])が0.5〜0.9、の範囲にあることを特徴とする(1)記載の非晶質酸化物透明導電膜材料である。ここで、[Zn]は、亜鉛原子の数を表し、[Sn]は、スズ原子の数を表す。
酸化物の組成がこのような数値範囲にあることによって、本発明の目的が十分に達成することができる。
上記式の値が0.5未満では、TMAH中における電池反応を抑制する効果が十分に発揮できない場合や、蓚酸水溶液によるエッチングが困難になる場合があるからである。
一方、上記式の値が0.9を超える場合は、電池反応は抑制できるが、その後のエッチング処理中に電極が溶解し、電極細りや断線を引き起こす場合がある。
また、一般的に、上記範囲以外の場合は、透明導電膜自体の抵抗値が大きくなってしまうことや、透明導電膜が非晶質ではなく結晶化してしまうことが生じる恐れがある。
このように、[Zn]/([Zn]+[Sn])が0.5〜0.9、の範囲以外の場合は、電極細りや断線の可能性がある。また、透明電極のエッジ部分にいわゆるアンダーカットが生じる場合があり、問題となる可能性がある。
この式の値は、好ましくは0.67〜0.8であり、より好ましくは0.7〜0.8である。
また、透明導電膜は非晶質であることが重要である。結晶質になってしまった場合はエッチング特性で不良が発生する場合がある。
なお、[Zn]は、亜鉛原子の単位質量、単位体積あたりの原子の数を表し、[Sn]は、亜鉛原子の単位質量、単位体積あたりの原子の数を表す。
この透明導電膜の移動度は、10cm2/V・sec以上であることが好ましい。より好ましくは20cm2/V・sec以上である。
TFT駆動LCDの場合、10cm2/V・sec未満の移動度では、応答速度が遅くなる恐れがあり、液晶の画質を低下させる場合がある。また、比抵抗の値は、低い方が望ましいが、TFT駆動の場合、TFT素子からLCD駆動電極端部までの距離は非常に短いので10−2Ωcm台であればほとんど問題は生じない(表示性能は悪化しない)。
また、移動度に影響を与えない範囲で、第三金属を添加することができる。ここで、第三金属としたのは、亜鉛、スズに続く3番目の金属という意味で「第三金属」と呼んでおり、単なる「他の金属」の意味でこの言葉を用いている。
この第三金属の種類としては、透過率を向上させる目的で、屈折率の小さな金属酸化物を添加することが考えられる。このような用途に用いる金属酸化物の代表例としては、MgO、B2O3、Ga2O3、GeO2などが挙げられる。
また、比抵抗を下げる目的として、それ自体の比抵抗が小さな金属酸化物を添加することもできる。このような目的に用いる金属酸化物の代表例としては、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、等が挙げられる。ただし、これら重金属酸化物は着色する可能性があり、添加する量には注意が必要であり、透過率に影響しない範囲で添加することを十分に考慮すべきである。
B.Al配線を備えた透明導電膜積層回路基板に関する発明
(3)本発明は、透明基板と、前記透明基板上に設けられた配線であって、Al若しくはAl合金から成るAl配線と、酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする導電性酸化物からなり、前記Al配線に直接接合する透明導電膜と、を含むことを特徴とするAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板である。
このような組成の透明導電膜によれば、直接Al配線に接合させても、接触抵抗を従来より低い値にすることができる。また、このような組成の透明導電膜によれば、Al配線との間の電池反応を効果的に抑止することができる。
なお、Al配線としてAl合金を用いる場合は、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択された一種以上の金属を含むことができる。この場合、Al合金中の、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択された一種以上の金属の含有量は、0.05wt%〜10wt%の範囲が好ましい。0.05wt%未満では、添加の効果が少なく透明導電膜との接触抵抗の値が大きくなる場合があるためである。また、電池反応が現れてくる場合もあるからである。一方、10wt%超の場合は、Al配線自体の抵抗の値が大きくなり、液晶表示装置や有機EL装置に用いた場合、信号遅延等の問題が発生する恐れがある。これらの添加金属の含有量は、より好ましくは0.1wt%〜5wt%の範囲であり、より一層好ましくは、1〜3wt%の範囲である。
また、金属配線側第三金属として、周期率表のIIIaからVIIIaの重金属若しくはランタノイド系金属を含んでいてもよい。
なお、金属配線側第三金属とは、第三番目の金属という意味である。すなわち、Alを第1番目の金属である。そして、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択された一種以上の金属が第2番目の金属である。これら以外の第三番目の金属という意味で「金属配線側第三金属」の語を用いており、要するに「他の金属」という意味である。
上で述べた周期率表のIIIaからVIIIaの重金属若しくはランタノイド系金属としては、例えば、Au、Ag、Zn、Cu、Sr、Sm等が好適に用いられる。その含有量は、求められるAl配線の性能にもよるが、0.01〜5wt%の範囲がよい。より好ましくは0.5〜3.0wt%である。含有量が0.01wt%未満では添加効果がほとんどなく、Al配線上にヒロック等の突起が発生する恐れもある。一方、5wt%を超える含有量の場合は、Al配線の抵抗値が大きくなる恐れがある。
このように、本発明(3)の特定の組成の酸化亜鉛−酸化スズは、当然のことながら少なくともこの2種の物質、酸化亜鉛、酸化スズを全て含有していることが非常に重要なポイントである。いずれか一種の成分が欠ける場合は、製造時にTMAH中における起電力が大きくなってしまい、Al配線との間の電池反応を十分に抑制することが困難になってしまう場合がある。
(4)また、本発明は、前記酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする導電性酸化物の、30℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)2.4%水溶液中のAg/AgCl標準電極を基準とした起電力が−0.6V以下であることを特徴とする(3)記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板である。
導電性酸化物の起電力が−0.6Vより大きな値の場合は、既に説明したように、Al配線との起電力の関係で電池反応が発生しやすくなる。一方、、導電性酸化物の起電力の下限値は特に存在しないし、特段の制約も存在しないが、Al配線の起電力より小さくする必要はない。
本発明(4)の特徴は、基本的に上記(1)で述べた事項と同様である。
(5)また、本発明は、前記酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする導電性酸化物の組成が、[Zn]/([Zn]+[Sn])が0.5〜0.9、の範囲にあることを特徴とする(3)又は(4)記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板である。ここで、[Zn]は、亜鉛原子の数を表し、[Sn]は、スズ原子の数を表す。
酸化物の組成がこのような数値範囲にあることによって、本発明の目的が十分に達成することができる。上記式の値が0.5未満では、TMAH中における電池反応を抑制する効果が十分に発揮できない場合や、蓚酸水溶液によるエッチングが困難になる場合があるからである。
本発明(4)の作用は、基本的に上記(2)の発明と同様であるので、上記(2)の記述を参照されたい。
(6)また、本発明は、前記Al合金が、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択される一種以上の金属を含むことを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板である。
(7)また、本発明は、前記Al合金中の、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択される一種以上の金属の含有量が、0.05〜10wt%であることを特徴とする(6)記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板である。
既に説明したように、Al若しくはAl合金から成るAl配線と導電性酸化物との間の起電力の差が−0.5V以下であることが本発明においては大変重要である。そして、起電力の差は、基本的には、Al若しくはAl合金から成るAl配線中の、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNd等の金属の含有量や、導電性酸化物の組成によって決まる。結局、実用上問題となるような電池反応を抑制するには、それぞれの物質の起電力の「差」を小さくすることが目的を実現するために必要である。
この際、特に、本発明(7)のように、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択される一種以上の金属の含有量を0.05wt%〜10wt%の範囲に置けば、起電力の差を−0.5V以下に抑えることが容易となることが本願発明者らの実験により判明した。すなわち、本発明(6)によれば、起電力の差を−0.5V以下に設定することがより容易になる。
例えば、Ndを2%含有するAl配線(Ag/AgCl標準電極に対する起電力は−1.88V)を用いた場合、−1.38V以下の起電力を有する酸化物透明導電膜を用いれば、その差は−0.5Vであり電池反応を十分に低く抑えることができると考えられる。
C.透明導電膜積層回路基板の製造方法に関する発明
(7)本発明は、(3)〜(6)のいずれかに記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板の製造方法において、酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする前記透明導電膜を所望の形状にパターニングするパターニング工程、を備え、前記パターニング工程は、前記透明導電膜上に塗布されたレジストを、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液をレジスト現像液として用いて現像する現像工程と、エッチング液として蓚酸の濃度が1wt%〜10wt%である水溶液を用い、このエッチング液の温度を20〜50℃の範囲に設定して前記透明導電膜をエッチングするエッチング工程と、を含み、酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする前記酸化物の組成が、[Zn]/([Zn]+[Sn])が0.5〜0.9、の範囲にあり、前記Al配線はNiを含むAl合金から成ることを特徴とするAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板の製造方法である。ここで、[Zn]は、亜鉛原子の数を表し、[Sn]は、スズ原子の数を表す。
このような構成によって、上記(3)−(6)の透明導電膜積層基板を効率よく製造することができる。
レジスト現像液
レジスト現像液として用いるTMAH水溶液中のTMAHの濃度は、0.5〜8wt%が好ましい。また、より好ましい範囲は1〜5wt%である。
TMAHの濃度が0.5wt%未満では現像能力が劣ってしまう場合や、現像液の寿命が短くなってしまう場合があるのである。一方、TMAHの濃度が8wt%超の場合は、現像能力が高すぎ、制御が困難になる場合があるのである。現像能力が高すぎて制御不能になってしまうと、パターンずれや、パターン剥がれ等の問題が発生する場合がある。
これに対してTMAH以外のアルカリ性水溶液によって現像を行えばよいのではないかと考えられるかもしれない。しかし、TMAH以外の現像液の場合は、上述した電池反応を十分に抑制することができず、Al配線の腐食や断線の問題が発生する可能性が大である。
エッチング液
エッチング液としては、蓚酸水溶液を用いる。その濃度は、0.5wt%〜10wt%から適宜選択するべきである。しかし、好ましくは、1wt%〜5wt%の範囲から選択することがよい。蓚酸の濃度が0.5wt%未満の場合は、エッチング速度が遅くなってしまう場合や、エッチング液の寿命が短くなってしまう場合があるのである。一方、蓚酸の濃度が10wt%を超える場合は、水溶液の溶解性に基づいて、蓚酸亜鉛や蓚酸スズが析出してしまう場合がある。この結果、エッチング不良を生じる恐れがある。また、基板上に上記蓚酸亜鉛等が析出すると、それは「異物」であるので、液晶パネルや有機ELパネルを製造する際の歩留まりを低下させる要因となる。
また、本発明では上述のように、エッチング液の温度は20℃から50℃に設定される。20℃未満とする場合は、エッチング液をその20℃未満の温度にまで冷却する必要が出てくるので、実用的ではない。一方、50℃を超える温度とする場合は、特別な加熱装置が必要となってしまう場合があり、結局実用上問題がある。特に50度を超える温度の場合は、水分蒸発に伴う溶液濃度の管理が必要となってくるので、管理の手間が煩雑なものとなりがちである。なお、より好ましい温度範囲は、25℃から45℃の範囲である。
(8)また、本発明は、前記パターニング工程において、前記酸化亜鉛−酸化スズを主成分とする酸化物から成る前記透明導電膜の端部のテーパー角が35〜89度となるようにパターニングが行われることを特徴とする(7)記載のAl配線を備えた透明導電膜積層回路基板の製造方法である。
テーパー角が35度より小さい場合、透明導電膜エッジ部分の距離が長くなってしまる。つまり、テーパー角度が35度より小さい基板を用いて液晶や有機ELを駆動させた場合、画素周辺部と画素の内部でコントラストが大きく違ってしまうことがある。
また、テーパー角が89度を超えると、透明導電膜エッジ部分の電極割れや剥離が生じる恐れがある。特に液晶を駆動する場合には配向膜の不良を生じる場合もあり、また、有機ELを駆動する場合には対向電極の断線を引き起こしてしまう可能性もある。
なお、透明導電膜の成膜方法としては、従来から知られている種々の方法を採用することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、スプレー法、デップ法が好適に用いられる。この中でもスパッタ法が特に好適に用いられる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
実施の形態1
本実施の形態では、種々の構成に係るスパッタリングターゲットを作成し、その特性及びそれを用いて製造した透明導電膜の特性を検査した。
『実施例1』
平均粒径が1μm以下の酸化亜鉛粉末、及び平均粒径が1μm以下の酸化スズ粉末を、 [Zn]/([Zn]+[Sn])=0.79の割合となるように調合して、樹脂製ポットに入れ、さらに純水を加えて、硬質ZrO2ボールミルを用いた湿式ボールミル混合を行った。混合時間は20時間とした。得られた混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥及び造粒を行った。得られた造粒物を、294MPa(3t/cm2 )の圧力を掛けて冷間静水圧プレスで成形した。
次に成形体を以下のように焼結した。まず、焼結炉内に、炉内容積0.1m3当たり5L/minの割合で、酸素を導入する雰囲気で、1500℃で5時間焼結した。この際、1000℃までを1℃/min、1000〜1500℃を3℃/minの昇温した。その後、酸素導入を止め、1500℃〜1300℃を10℃/minで降温した。そして、炉内容積0.1m3当たり10L/minの割合でアルゴンガスを導入する雰囲気で、1300℃を3時間保持した後、放冷した。これにより、相対密度90%以上の酸化亜鉛・酸化スズ含有焼結体が得られた。
次に、このようにして得られた焼結体ターゲットのスパッタ面とする面をカップ砥石で磨き、直径100mm、厚み5mmに加工し、インジウム系合金を用いてバッキングプレートを貼り合わせて、スパッタリングターゲットaを構成した。このときの、スパッタリングターゲットaの密度は5.72g/cm 3 であった。
酸化スズが、分散していること、特に、酸化亜鉛の亜鉛サイトに置換固溶していることが好ましい。すなわち、前記スズがターゲット内に含まれる形態は、SnO2、SnOなどの酸化スズの形で、酸化亜鉛焼結体中に分散している形態でもよいが、ZnSnO3、Zn2SnO4などの酸化亜鉛−酸化スズ間の複合酸化物の形で、酸化亜鉛焼結体中に分散している形態でもよい。このように分散させることによって、EPMA(Electron Probe Micro-Analyzer:電子線プローブマイクロアナライザー)のSn原子のマッピング画像処理によって求めた結晶粒子の平均直径は3.87μmであった。
好ましくは、スズ原子が酸化亜鉛の亜鉛サイトに置換固溶することにより、スズが酸化亜鉛焼結体中に原子レベルで分散している方が、スパッタリングにおいて放電が安定し、得られる透明導電性薄膜を低抵抗にするためには有効である。これにより、スパッタリングターゲットaのバルク抵抗は、360Ωcmとなり、安定したRFスパッタリングが可能となると考えられる。
得られた上記スパッタリングターゲットaをスパッタリング装置に装着し、到達真空度:5×10−4Pa、成膜圧力:0.1Paにて、基板温度を200℃にセットして、成膜を行った。結果が表1、表2に示されている。表1は、用いたスパッタリングターゲットの性状を示す表であり、表2は、得られた透明導電膜の物理的計測結果を示す表である。
スパッタリングの結果、得られた透明導電性薄膜の比抵抗(表1)及び移動度は、ホール測定にて求めた。また、光透過率は自記分光光度計にて測定した。Ag/AgCl標準電極電位は、エッチング液である蓚酸3.5wt%水溶液、現像液であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)の2.8wt%水溶液、剥離液としてジエタノールアミン水溶液(40wt%)にて測定した。これらの測定結果が表2に示されている。なお、表2においては、参考のためにAl薄膜の標準電極電位も示されている。
蓚酸の水溶液濃度・温度を変化させた場合のエッチング速度がそれぞれ表3に示されている。また、得られたパターンのテーパー角をSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)観察より求めた。この結果も表3に示されている。
なお、各表1、表2、表3には、実施例1だけでなく実施例2、実施例3、実施例4、実施例5についても記載されている。
このように、実施例1によれば、透明導電膜(透明電極)の比抵抗の値を小さくすることができると共に、Ag/AgCl標準電極電位の値をAl薄膜のそれに近い値にすることができた。
したがって、本実施例1における透明導電膜は、Al薄膜との電極電位差が小さい。これは、蓚酸水溶液、TMAH、上記剥離液の全ての溶液中で言えることである。したがって、局部電池反応が生じてしまうことを効果的に防止することができ、Alの溶出を効果的に防止することができる。
さらに、光透過率の値も従来と比較して高い値を実現したので、より明るい表示画面の表示装置を実現できると考えられる。
なお、このような作用・効果は、以下の実施例2〜実施例5においても同様である。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、105,000Å/min(30℃)、220,000Å/min(40℃)、 180,000Å/min(35℃)となり、良好なエッチング特性が観察された(表3)。さらに、エッチングの結果、テーパー角は86度となった(表3)。極端に小さい値や大きな値ではないので、耐久性に優れた透明電極を形成できると考えられる。
また、TCP(Tape Carrier Package)の接続安定性を検証するために、ACF(異方性導電フィルム:Anisotoropic Conductive Film)によってTCP接続を行い、60℃、90%RH(相対湿度:Relative Humidity)の環境下に保存して、接続抵抗の変化を観察した。結果が表4に示されている。
この表4に示すように、接続直後のTCP接続抵抗は、4.2Ωであり、240時間経過後は5.6Ωとなり、480時間経過後は6.2Ωとなり、96時間経過後は、6.5Ωとなった。この結果、時間経過による接触抵抗の増大の程度は微少な値であり、表示装置に用いた場合でも抵抗増大による性能の劣化は非常に小さいものと考えられる。すなわち、本実施例1の透明導電膜を用いた基板を利用すれば耐久性に富む表示装置が構成できると考えられる。
『実施例2、実施例3、実施例4、実施例5』
平均粒径が1μm以下の酸化亜鉛粉末、及び平均粒径が1μm以下の酸化スズ粉末を原料粉末とした。酸化亜鉛粉末と酸化スズ粉末を所定の割合で樹脂製ポットに調合して入れ、湿式ボールミルで混合した。その際、硬質ZrO2ボールを用い、混合時間を20時間とした。混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥、造粒した。造粒物を円形の型に充填し、冷間静水圧プレスを用い、3ton/cm2の圧力を掛けて円盤状に成形した。
次に、成形体を雰囲気調整炉に入れ、焼結した。焼結に際して、炉内容積0.1m3当たり5リットル/分の割合で炉内に酸素を導入しつつ、1500℃で5時間焼結した。この際、1000℃まで1℃/分、1000℃から1500℃までを3℃/分の昇温速度で昇温した。焼結終了後、酸素の導入を停止し、1500℃から1300℃までを10℃/分の割合で降温した。そして、炉内容積0.1m3当たり10リットル/分の割合でArを炉内に導入しつつ、1300℃で3時間保持した後、放冷した。これにより密度90%以上の焼結体ターゲットb、c、d、eを得た(表1)。このときの、各ターゲットの密度を、表1に示した。実施例2は、焼結体ターゲットbを用いた実施例であり、実施例3は焼結体ターゲットcを用いた実施例であり、実施例4は、焼結体ターゲットdを用いた実施例であり、実施例5は焼結体ターゲットeを用いた実施例である。
次に、得た焼結体(ターゲットb〜e)のスパッタ面とする面をカップ砥石で磨き、直径152mm、厚み5mmに加工してそれぞれスパッタリングターゲットを得た。
実施例1と同様に、実施例2〜5においても、酸化スズが、分散していること、特に、酸化亜鉛の亜鉛サイトに置換固溶していることが好ましい。すなわち、前記スズがターゲット内に含まれる形態は、SnO2、SnOなどの酸化スズの形で、酸化亜鉛焼結体中に分散している形態でもよいが、ZnSnO3、Zn2SnO4などの酸化亜鉛−酸化スズ間の複合酸化物の形で、酸化亜鉛焼結体中に分散している形態でもよい。このように分散させた結果、結晶粒子の平均直径が表1に示すようになった。実施例1と同様に、実施例2〜5においても、結晶粒子の平均直径を画像処理(EPMAのSn原子のマッピング画像処理)によって求め、その結果を表1に示した。
好ましくは、スズ原子が酸化亜鉛の亜鉛サイトに置換固溶することにより、スズが酸化亜鉛焼結体中に原子レベルで分散している方が、スパッタリングにおいて放電が安定し、得られる透明導電性薄膜を低抵抗にするためには有効である。これにより、ターゲットのバルク抵抗は、全て500Ωcm未満となり、安定したスパッタリングが可能となる。この測定値は、表1に示されている。
また、TCP(Tape Carrier Package)の接続安定性を検証するために、ACF(異方性導電フィルム:Anisotoropic Conductive Film)によってTCP接続を行い、60℃、90%RH(相対湿度:Relative Humidity)の環境下に保存して、接続抵抗の変化を観察した。結果が表4に示されている。
実施例2
実施例2においては、これらの表に示されているように、[Zn]/([Zn]+[Sn])の値は、0.75である。ターゲット密度は5.86g/cm
3であり、平均粒径は3.82μmであった。また、比抵抗は、350Ωcmであった(表1)。
このスパッタリングターゲットbを用いて成膜した透明導電膜の比抵抗は0.04Ωcmであり、移動度は、45cm2/V・secであった。光透過率は、86.3%(波長550nm)であり、Ag/AgCl標準電極電位は、−0.78Vであった(表2)。
このように、比抵抗の値はいずれも十分に低く、且つ、透明度も表示装置に用いるのに十分な値を示した。また、Ag/AgCl標準電極電位は、Al薄膜の電位に比べて+0.18Vであり、その差は非常に小さな値であり、電池反応が十分に抑制される。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、65,000Å/min(30℃)、132,000Å/min(40℃)、96,000Å/min(35℃)となり、良好なエッチング特性が観察された(表3)。さらに、エッチングの結果、テーパー角は75度となった(表3)。極端に小さい値や大きな値ではないので、耐久性に優れた透明電極を形成できると考えられる。
また表4に示すように、実施例2においては、接続直後のTCP接続抵抗は、4.3Ωであり、240時間経過後は5.0Ωとなり、480時間経過後は5.4Ωとなり、960時間経過後は、5.4Ωとなった。この結果、時間経過による接触抵抗の増大の程度は非常に微少な値であり、表示装置に用いた場合でも抵抗増大による性能の劣化は非常に小さいものと考えられる。すなわち、本実施例2の透明導電膜を用いた基板を利用すれば耐久性に富む表示装置が構成できると考えられる。
実施例3
実施例3においては、これらの表に示されているように、[Zn]/([Zn]+[Sn])の値は、0.70である。ターゲット密度は5.83g/cm3であり、平均粒径は3.4μmであった。また、比抵抗は、370Ωcmであった(表1)。
このスパッタリングターゲットcを用いて成膜した透明導電膜の比抵抗は0.009Ωcmであり、移動度は、48cm2/V・secであった。光透過率は、86.5%(波長550nm)であり、Ag/AgCl標準電極電位は、−0.72Vであった(表2)。
このように、比抵抗の値はいずれも十分に低く、且つ、透明度も表示装置に用いるのに十分な値を示した。また、Ag/AgCl標準電極電位は、Al薄膜の電位に比べて+0.24Vであり、その差は非常に小さな値であり、電池反応が十分に抑制される。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、500Å/min(30℃)、1,100Å/min(40℃)、 950Å/min(35℃)となり、良好なエッチング特性が観察された(表3)。さらに、エッチングの結果、テーパー角は48度となった(表3)。極端に小さい値や大きな値ではないので、耐久性に優れた透明電極を形成できると考えられる。
また表4に示すように、実施例3においては、接続直後のTCP接続抵抗は、4.5Ωであり、240時間経過後は4.9Ωとなり、480時間経過後は5.3Ωとなり、960時間経過後は、5.3Ωとなった。この結果、時間経過による接触抵抗の増大の程度は非常に微少な値であり、表示装置に用いた場合でも抵抗増大による性能の劣化は非常に小さいものと考えられる。すなわち、本実施例3の透明導電膜を用いた基板を利用すれば耐久性に富む表示装置が構成できると考えられる。
実施例4
実施例4においては、これらの表に示されているように、[Zn]/([Zn]+[Sn])の値は、0.67である。ターゲット密度は5.92g/cm3であり、平均粒径は3.5μmであった。また、比抵抗は、420Ωcmであった(表1)。
このスパッタリングターゲットdを用いて成膜した透明導電膜の比抵抗は0.006Ωcmであり、移動度は、46cm2/V・secであった。光透過率は、86.3%(波長550nm)であり、Ag/AgCl標準電極電位は、−0.68Vであった(表2)。
このように、比抵抗の値はいずれも十分に低く、且つ、透明度も表示装置に用いるのに十分な値を示した。また、Ag/AgCl標準電極電位は、Al薄膜の電位に比べて+0.28Vであり、その差は非常に小さな値であり、電池反応が十分に抑制される。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、30Å/min(30℃)、71Å/min(40℃)、55Å/min(35℃)となり、良好なエッチング特性が観察された(表3)。さらに、エッチングの結果、テーパー角は42度となった(表3)。極端に小さい値や大きな値ではないので、耐久性に優れた透明電極を形成できると考えられる。
また表4に示すように、実施例4においては、接続直後のTCP接続抵抗は、4.8Ωであり、240時間経過後は5.3Ωとなり、480時間経過後は5.5Ωとなり、960時間経過後は、5.7Ωとなった。この結果、時間経過による接触抵抗の増大の程度は非常に微少な値であり、表示装置に用いた場合でも抵抗増大による性能の劣化は非常に小さいものと考えられる。すなわち、本実施例4の透明導電膜を用いた基板を利用すれば耐久性に富む表示装置が構成できると考えられる。
実施例5
実施例5においては、これらの表に示されているように、[Zn]/([Zn]+[Sn])の値は、0.55である。ターゲット密度は6.10g/cm3であり、平均粒径は測定不能であった。また、比抵抗は、480Ωcmであった(表1)。
このスパッタリングターゲットdを用いて成膜した透明導電膜の比抵抗は0.03Ωcmであり、移動度は、35cm2/V・secであった。光透過率は、85.9%(波長550nm)であり、Ag/AgCl標準電極電位は、−0.61Vであった(表2)。
このように、比抵抗の値はいずれも十分に低く、且つ、透明度も表示装置に用いるのに十分な値を示した。また、Ag/AgCl標準電極電位は、Al薄膜の電位に比べて+0.35Vであり、その差は非常に小さな値であり、電池反応が十分に抑制される。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、10Å/min(30℃)、25Å/min(40℃)、22Å/min(35℃)となり、良好なエッチング特性が観察された(表3)。さらに、エッチングの結果、テーパー角は38度となった(表3)。極端に小さい値や大きな値ではないので、耐久性に優れた透明電極を形成できると考えられる。
また表4に示すように、実施例4においては、接続直後のTCP接続抵抗は、4.8Ωであり、240時間経過後は5.3Ωとなり、480時間経過後は5.5Ωとなり、960時間経過後は、5.7Ωとなった。この結果、時間経過による接触抵抗の増大の程度は非常に微少な値であり、表示装置に用いた場合でも抵抗増大による性能の劣化は非常に小さいものと考えられる。すなわち、本実施例4の透明導電膜を用いた基板を利用すれば耐久性に富む表示装置が構成できると考えられる。
また、以上述べたような実施例1〜実施例5における透明導電膜は、Alとの接触抵抗を従来に比べて小さくすることができるため、液晶等を駆動する能力に優れている。その結果、液晶等を駆動する画素電極として用いた場合、中間調を良好に表示することができる表示装置を構成することができる。
『比較例1、比較例2』
上記実施例1−5と、組成が異なる例を比較例1、2として挙げる。この比較例1、2の結果も表1、表2、表3、表4に示されている。
比較例1
比較例1は、亜鉛の原子数の組成比率[Zn]/([Zn]+[Sn])の値が0.97の場合である。この比較例1の測定値は表1〜4に示す通りである。この表に示すように、ターゲットの比抵抗は280Ωcmと低い値を示すが、成膜した透明導電膜の比抵抗は0.86Ωcmと上記実施例1〜5のいずれよりも高い値となっている。Ag/AgCl標準電極電位は、−0.98Vであり、Al薄膜と近い値を示している。しかし、移動度は15cm2/V・secと低い値であり、光透過率も79.8%(波長:550nm)と低い値を示しており、表示装置に用いた場合の性能は、上記実施例1−5に比べて劣ると考えられる。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチング速度は、実施例1−5より高い値を示したが、その結果、テーパー角は134度となってしまい、得られた透明電極に線細りや断線等が生じる恐れがある。
比較例2
比較例2は、亜鉛の原子数の組成比率[Zn]/([Zn]+[Sn])の値が0.40の場合である。この比較例2の測定値は表1〜4に示す通りである。この表に示すように、ターゲットの比抵抗は4400Ωcmであり、成膜した透明導電膜の比抵抗は0.08Ωcmであった。また、Ag/AgCl標準電極電位は、−0.25Vであり、Al薄膜のその値に比べて−0.71Vとなり差が非常に大きい。この結果、電池反応はほとんど抑制することができず、Alの溶出を防止することは困難であると考えられる。
また、移動度は8cm2/V・secと低い値であり、光透過率も79.8%(波長:550nm)と低い値を示しており、表示装置に用いた場合の性能は、上記実施例1−5に比べて劣ると考えられる。
また、3.5wt%蓚酸水溶液によるエッチングは不可能であった。
実施の形態2(実施例6a、実施例6b)
以下、Ni、W、Mo、Nb、Zr及びNdから成る群から選択された一種以上の金属を含むAl薄膜のTMAH中の安定度(表5参照)、及び、Al若しくはAl合金と透明導電膜を積層した場合の電池反応(表6参照)、に関する実施例6を説明する。
実施例6a(Al薄膜のTMAH中の安定度)
純Alスパッタリングターゲットをスパッタ装置に装着し、スパッタリングターゲット上に所定の金属のワイヤーを載置した場合、及び、何も載置しない場合のそれぞれについて、スパッタリングを行った。それぞれの場合を詳述すれば以下の通りである。
(a)Niワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(b)Wワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(c)Moワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(d)Nbワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(e)Zrワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(f)Ndワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(g)Niワイヤー(1φ×10mm長)を20本、Wワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(h)Niワイヤー(1φ×10mm長)を20本、Moワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(i)Niワイヤー(1φ×10mm長)を20本、Nbワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(j)Niワイヤー(1φ×10mm長)を20本、Zrワイヤー(1φ×10mm長)を20本載置した場合
(k)何も置かない。すなわち純Alのみ。
スパッタリングターゲットをこのように設置し、いずれも到達真空度:5×10−4Pa、成膜圧力:0.1Paにて、基板温度を室温にセットしてスパッタリングを行い。Al若しくはAl合金の薄膜を所定のスライドガラス上に成膜した。
スライドガラスは、上記(a)〜(k)の各種類毎に作製し。合計11種のスライドガラスを作製した。このようにして得られた薄膜の組成が表5に示されている。この組成は、元素分析により実行した。得られた11種のスライドガラスを、TMAH2.4wt%の水溶液20℃中に5分間浸漬し、Al膜の溶解を観察した。この結果が表5に示されている。
・純Alの場合変化は観察されなかった。
・1.6wt%Ni−Al合金の場合、1.1wt%W−Al合金の場合は、それぞれNi−Al層、W−Al層が完全に溶解した。
・また、1.2wt%Mo−Al合金の場合、1.7wt%Nb−Al合金の場合、1.2wt%Zr−Al合金の場合、いずれも変化は見られなかった。
・また、1.0wt%Nd−Al合金の場合、1.6wt%Ni−1.1wt%W−Al合金の場合、それぞれNd−Al層、Ni−W−Al層がいずれも完全に溶解した。
・また、1.6wt%Ni−1.2wt%Mo−Al合金の場合、1.6wt%Ni−1.7wt%Nb−Al合金の場合、1.6wt%Ni−1.2wt%Zr−Al合金の場合、いずれも変化は観察されなかった。
実施例6b(Al若しくはAl合金と透明導電膜を積層した場合の電池反応)
次に、電池反応について実験を行った。まず、上記実施例6aと同様にして11種のスライドガラスを作製する。条件は、上述したように(a)〜(k)の11種の条件であり、まったく同様にしてAl膜が成膜された11枚のスライドガラスを作製した。
次に、作製した11枚の各スライドガラスの面積の1割をカプトンテープにてシールした。
シールをした11個のスライドガラスに対して、透明導電膜を積層するためにスパッタリングを行う。具体的には、上記実施例3のターゲット用いてスパッタリングを行った。このスパッタリングは、厚み100nmになるようにスパッタリングを行った。温度は室温で行った。
その後、カプトンテープを剥がして、得られた11種の積層膜付スライドガラスを、TMAH2.38%の水溶液20℃中に5分間浸漬し、Al膜の溶解を観察した。この結果が表6に示されている。
表6に示されているように、いずれも目視による変化は見られなかった。
このように、本実施例6bによれば、所定の金属を添加したAl若しくはAl合金から成る薄膜と、実施例3の透明導電膜を積層したので、TMAHによるエッチング中に電池反応が生じることなく、円滑に積層回路基板の製造を行えることが理解されよう。
実施の形態3 ※追加しました
図2には、本実施の形態3によるAl配線透明導電膜積層回路基板の製造工程の概略を示す説明図が示されている。この説明図においては、上記実施例1〜5に係る非晶質透明導電膜を利用したAl配線透明導電膜積層回路基板の製造工程の一部が示されている。
具体的には、図2(1)は、ガラス基板1上にNi含有Al配線28が設けられ、さらに、Ni含有Al配線28上に非晶質透明導電膜29が堆積された様子が示されている。この非晶質透明導電膜29は、上記実施例1〜5に係る非晶質透明導電膜である。
そして、この図2(1)の状態から、この非晶質透明導電膜29を所望の形状・パターンにエッチングが行われる。このエッチング処理は所定の形状・パターンの電極を作成する処理であるので、パターニングとも呼ばれる。なお、図2(1)におけるガラス基板1は、請求の範囲の透明基板の好適な一例に相当する。
エッチング処理においては、まず、図2(1)の状態から所定のレジストの塗布が行われる。次に、所定のマスクを重畳し紫外線等による露光が行われる。そして、露光後、現像を行って不要なレジストを除去する。現像液としては、TMAHアルカリ性水溶液が用いられる。本実施の形態においては、TMAH水溶液中におけるNi含有Al配線29と非晶質透明導電膜29の起電力の差が小さいので、現像処理中の電池反応を抑制することが可能である。この現像処理によって所望の電極形状以外の部分のレジストが除去される。
次に、蓚酸系エッチャントを用いたエッチングが行われる。これによって、電極としての所望形状以外の部分が除去され、残存した部分が所望の形状の透明電極29aを形成するのである。最後に、残ったレジストを剥離液を用いて除去する。剥離液としては、ジエタノールアミン水溶液(40wt%)を用いる。
以上のような処理によって図2(2)に示されているような所望の形状の透明電極29aを形成することが可能である。
特に、上記実施例1〜5に示した組成の非晶質透明導電膜を、濃度が1wt%〜10wt%であって、水温が20℃〜50℃の蓚酸水溶液を用いてエッチングすることによって、形成する透明電極29aの端部のテーパー角を35度〜89度にすることができる。具体的なテーパー角は、表3で示した通りである。このようなテーパー角を実現することによって、耐久性に富む積層基板を作成することができる。
なお、図2(1)(2)に示すように、本実施の形態では、非晶質透明導電膜29とNi含有Al配線28とが直接接合しているが、上述したように実施例1〜5の組成の非晶質透明導電膜29を使用することによって、接触抵抗を非常に小さな値にすることができる。
ところで、非晶質透明導電膜29とNi含有Al配線28とが直接接合させる場合でも、回路構成の都合上、層間絶縁膜30が両者の間に設けられることが多い。この場合の様子が図2(3)に示されている。このように層間絶縁膜30が設けられる場合は、電気的に接続する部分にコンタクトホール30aを設けて直接接合させることになる。
以上述べたように本実施の形態によれば、Al配線にNiを含有させた合金を用いたNi含有Al配線を利用し、特定の組成の非晶質透明導電膜を利用したので、Al配線と透明導電膜とを直接接合させることができ、製造工程においてAlが溶出することがない。また、Al配線と透明導電膜とを直接接合させても接触抵抗を小さな値に抑えることができるという効果を奏する。
なお、本実施の形態では、Niを含有させたAl配線の例を示したが、W、Mo、Nb、Zr、Ndの場合も同様の結果となった。また、これらの金属を2種以上含有していてもよい。
実施の形態4
本実施の形態4においては、本発明に係るTFT基板の製造の様子を図1に基づき説明する。
まず、透光性のガラス基板1上に金属Al(98%Al,2%Nd)を高周波スパッタにより膜厚1500オングストロームに堆積する。ここで2%とは、2at%(原子%)を意味する。これを燐酸−酢酸−硝酸系水溶液をエッチング液として用いたホトエッチング法により所望の形状のゲート電極2及びゲート電極配線とする。
なお、ガラス基板1は、請求の範囲の透明基板の好適な一例に相当する。
次にグロー放電CVD法により、窒化シリコン(SiN)膜となるゲート絶縁膜3を膜厚3000オングストローム堆積する。続いてα−Si:H(i)膜4を膜厚3500オングストローム、さらにチャンネル保護層となる窒化シリコン(SiN)膜5を3000オングストローム堆積する。この時、放電ガスとして、SiN膜3と5はSiN4−NH3−N2系混合ガスを用い、α−Si:H(i)膜4は、SiH4−N2系の混合ガスをそれぞれ用いる。このSiN膜5はCHFガスを用いたドライエッチングにより所望のチャンネル保護層を形成した。続いてα−Si:H(n)膜6をSiH4−H2−PH3系の混合ガスを用いて膜厚3000オングストローム堆積する。
次にこの上に、Cr/Al二層膜を膜厚0.1μmのCr、0.3μmのAlの順に真空蒸着法、或いはスパッタリング法により堆積する。この二層をAlはH3PO4−CH3COOH−HNO3−H2O系エッチング液、Crは硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を用いてホトエッチング法を用いてエッチングする。この結果、所望のソース電極7のパターン及びドレイン電極8のパターンを形成し、ソース電極7及びドレイン電極8が形成される。
なお、このCr/Al二層膜に用いるAl合金は、Niを0.1wt%〜10wt%含有するAl合金である。
なお、Crは、図1に示すように、ソース電極7やドレイン電極8の下面に設けられており、非晶質透明導電膜9と接する面には設けられていない。すなわち、後述するように、ソース電極7やドレイン電極8を構成するAl部分が、直接に非晶質透明導電膜9に接合している。
さらにα−Si:H膜をCHFガスを用いたドライエッチング及びヒドラジン(NH2NH2・H2O)水溶液を用いたウェットエッチングを併用することにより、所望のパターンのα−Si:H(i)膜4のパターン、α−Si:H(n)膜6のパターンを形成する。これによって、α−Si:H(i)膜4及びα−Si:H(n)膜6が形成される。以上のようなプロセスでα−SiTFT部分が完成する。
次に、グロー放電CVD法により、窒化シリコン(SiN)膜となる絶縁膜10を所定の膜厚で堆積する。そして、この後、CHFガスを用いたドライエッチング法にて、ソース及びドレイン電極間と透明電極、画素電極とのコンタクトホールを形成する。
この金属 Alから成るソース電極7及びドレイン電極8のパターンが形成された基板上に、実施例1で得られた酸化亜鉛と酸化スズを主成分とする非晶質透明導電膜9をスパッタリング法で堆積する。
この非晶質透明導電膜9は、コンタクトホールを通じて、ソース電極7等と接続する(図1参照)。
非晶質透明導電膜9の成膜時に用いる放電ガスは、純アルゴン又は1vol%程度の微量のO2ガスを混入させたArガスを用いる方法で非晶質透明導電膜9を膜厚1200オングストローム堆積した。このIn2O3−ZnO−WO3膜はX線回析法で分析するとピークは観察されず非晶質膜であることが確認できた。
また、この非晶質透明導電膜9の比抵抗は表2に示すように2500×10−4 Ω・cm程度であり、十分電極として使用できる膜である。この非晶質透明導電膜9を蓚酸3.5重量%の水溶液をエッチャントに用いてホトエッチング法により、所望の電極パターンとなるようにエッチングした。この電極パターンは、少なくともソース電極7のパターンと電気的に接続するような「画素電極パターン」である。この時、Alから成るソース電極7及びドレイン電極8がエッチング液で溶出することはなかった。なお、図1に示すように、また、ゲート線12、ソース・ドレイン線の電極取り出し部も非晶質透明導電膜9と同様の導電膜から成る透明電極で覆われている。
このように電極パターンを形成した後、遮光膜パターンをこの上に形成して、α−SiTFTアクティブマトリックス基板が完成する。この基板を用いてTFT−LCD方式平面ディスプレイを製造した。このTFT−LCD方式平面ディスプレイは、中間調の表示(階調表示)も良好に行うことができた。
以上述べたように、本実施の形態によれば、バリヤーメタル等を設ける工程が必要なく簡易な製造方法でいわゆるTFT基板を製造することが可能である。また、係るTFT基板は、透明導電膜とAl配線との間に大きな接触抵抗が生じない。また、本実施の形態では、TFT基板の例を示したが、本発明は、Al配線を備えた透明導電膜が設けられている基板であればどのような基板でも応用できることは言うまでもない。
なお、本実施の形態では、Niを0.1wt%〜10wt%含有するAl合金であったが、W、Mo、Nb、Zr、Ndを用いても同様である。これらの金属は2種以上含有しても同様である。