JP2006193695A - 研磨用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガラス基板を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の研磨用組成物は、二酸化ケイ素粒子と、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸ポリマー及びそれらの塩、並びにポリ酢酸ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体化合物と、水とを含有し、ガラス基板を研磨する用途に用いられる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ガラス基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物に関する。
情報記録媒体用のガラス基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物に要求される主な性能としては、(1)研磨後のガラス基板の表面粗さが小さいこと、(2)研磨後のガラス基板にスクラッチや凹み等の表面欠陥が少ないこと、(3)洗浄性がよいこと、すなわち洗浄により簡単に研磨後のガラス基板から除去されること、(4)高い研磨能率でガラス基板を研磨することが挙げられる。
特許文献1,2には、ガラス基板を研磨する用途に用いられる従来の研磨用組成物が開示されている。特許文献1の研磨用組成物は、酸化セリウムのような希土類酸化物を主体とする研磨材を含有する。特許文献2の研磨用組成物は、鉄含有酸化物及び鉄含有塩基性化合物の少なくともいずれか一方からなる研磨材を含有する。しかしながら、特許文献1,2の研磨用組成物は、上記四つの要求性能のうちでも特に(1)〜(3)に関して十分に満足するものではなく、改良の余地を残している。
特開2001−89748号公報 特開2000−144112号公報
本発明の目的は、ガラス基板を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガラス基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物であって、二酸化ケイ素粒子と、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸ポリマー及びそれらの塩、並びにポリ酢酸ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体化合物と、水とを含有する研磨用組成物を提供する。
請求項2に記載の発明は、研磨促進剤をさらに含有する請求項1に記載の研磨用組成物を提供する。
請求項3に記載の発明は、前記研磨促進剤が、ポリスチレンスルホン酸及びポリカルボン酸ポリマー以外の酸、並びにポリスチレンスルホン酸塩及びポリカルボン酸ポリマー塩以外の酸性化合物である塩の少なくともいずれか一方を含む請求項2に記載の研磨用組成物を提供する。
本発明によれば、ガラス基板を研磨する用途においてより好適に使用可能な研磨用組成物が提供される。
以下、本発明の一実施形態を説明する。
磁気ディスクのような情報記録媒体には、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、結晶化ガラスなどのガラス製の基板が使用されることがある。これらのガラス基板は通常、表面を鏡面に仕上げるべく、化学機械研磨(CMP)プロセスに供される。ガラス基板の化学機械研磨は多くの場合、複数の研磨工程に分けて行なわれる。本実施形態に係る研磨用組成物は、ガラス基板を研磨する用途に用いられ、好ましくはガラス基板の表面を仕上げ研磨する用途、すなわちガラス基板の化学機械研磨において実施される複数の研磨工程のうちの最終の研磨工程で用いられる。
本実施形態に係る研磨用組成物は、研磨材と分散剤と研磨促進剤と水から実質的になる。
前記研磨材は二酸化ケイ素粒子(シリカ粒子)を含有する。シリカ粒子は、本実施形態に係る研磨用組成物の研磨対象物であるガラス基板を機械的に研磨する役割を担う。シリカ粒子は、好ましくはコロイダルシリカ又はフュームドシリカであり、より好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカ又はフュームドシリカを用いた場合には、他のシリカ粒子を用いた場合に比べて、研磨用組成物を用いて研磨された後のガラス基板の表面粗さがより減少し、その中でもコロイダルシリカを用いた場合には研磨後のガラス基板の表面粗さが大きく減少する。
研磨用組成物中のシリカ粒子の含有量が0.1質量%よりも少ない場合、さらに言えば1質量%よりも少ない場合、もっと言えば3質量%よりも少ない場合には、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がやや低下したり研磨抵抗がやや増大したりする虞がある。従って、シリカ粒子の含有量が少なすぎることによる研磨能率の低下や研磨抵抗の増大を防止するためには、シリカ粒子の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、最も好ましくは3質量%以上である。一方、シリカ粒子の含有量が50質量%よりも多い場合、さらに言えば40質量%よりも多い場合、もっと言えば30質量%よりも多い場合には、研磨用組成物の粘度が増大する虞があり、その結果、研磨用組成物がゲル化しやすくなったり取り扱いにくくなったりする虞がある。従って、シリカ粒子の含有量が多すぎることによる研磨用組成物の粘度の増大を防止するためには、シリカ粒子の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。
研磨用組成物中のコロイダルシリカの、BET法により測定される比表面積から求められる平均粒子径DSAが5nmよりも小さい場合には、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がやや低下する虞がある。従って、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが小さすぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、コロイダルシリカの平均粒子径DSAは、好ましくは5nm以上である。一方、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが300nmよりも大きい場合、さらに言えば200nmよりも大きい場合、もっと言えば120nmよりも大きい場合には、研磨後のガラス基板の表面粗さがやや増大したり研磨後のガラス基板の表面に観察されるスクラッチがやや増加したりする虞がある。従って、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが大きすぎることによる研磨後のガラス基板の表面特性の低下を防止するためには、コロイダルシリカの平均粒子径DSAは、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、最も好ましくは120nm以下である。
研磨用組成物中のコロイダルシリカの、レーザー回析散乱法により測定される平均粒子径DN4が5nmよりも小さい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが小さすぎる場合と同様、研磨能率がやや低下する虞がある。従って、コロイダルシリカの平均粒子径DN4が小さすぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、コロイダルシリカの平均粒子径DN4は、好ましくは5nm以上である。一方、コロイダルシリカの平均粒子径DN4が300nmよりも大きい場合、さらに言えば200nmよりも大きい場合、もっと言えば150nmよりも大きい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが大きすぎる場合と同様、表面粗さがやや増大したりスクラッチがやや増加したりする虞がある。従って、コロイダルシリカの平均粒子径DN4が大きすぎることによる研磨後のガラス基板の表面特性の低下を防止するためには、コロイダルシリカの平均粒子径DN4は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、最も好ましくは150nm以下である。
研磨用組成物中のフュームドシリカの平均粒子径DSAが10nmよりも小さい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが小さすぎる場合と同様、研磨能率がやや低下する虞がある。従って、フュームドシリカの平均粒子径DSAが小さすぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、フュームドシリカの平均粒子径DSAは、好ましくは10nm以上である。一方、フュームドシリカの平均粒子径DSAが300nmよりも大きい場合、さらに言えば200nmよりも大きい場合、もっと言えば120nmよりも大きい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが大きすぎる場合と同様、表面粗さがやや増大したりスクラッチがやや増加したり虞がある。従って、フュームドシリカの平均粒子径DSAが大きすぎることによる研磨後のガラス基板の表面特性の低下を防止するためには、フュームドシリカの平均粒子径DSAは、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、最も好ましくは120nm以下である。
研磨用組成物中のフュームドシリカの平均粒子径DN4が30nmよりも小さい場合、さらに言えば40nmよりも小さい場合、もっと言えば50nmよりも小さい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが小さすぎる場合と同様、研磨能率がやや低下する虞がある。従って、フュームドシリカの平均粒子径DN4が小さすぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、フュームドシリカの平均粒子径DN4は、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、最も好ましくは50nm以上である。一方、フュームドシリカの平均粒子径DN4が500nmよりも大きい場合、さらに言えば400nmよりも大きい場合、もっと言えば300nmよりも大きい場合にも、コロイダルシリカの平均粒子径DSAが大きすぎる場合と同様、表面粗さがやや増大したりスクラッチがやや増加したりする虞がある。従って、フュームドシリカの平均粒子径DN4が大きすぎることによる研磨後のガラス基板の表面特性の低下を防止するためには、フュームドシリカの平均粒子径DN4は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下である。
前記分散剤は、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸ポリマー(例えばポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸など)及びそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など)、並びにポリ酢酸ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体化合物を含有する。重合体化合物は、研磨用組成物中のシリカ粒子の表面に作用してシリカ粒子が帯びる負電荷を増加させる作用を有する。重合体化合物は、好ましくはポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸又はそれらの塩であり、より好ましくはポリスチレンスルホン酸塩又はポリアクリル酸塩であり、最も好ましくはポリスチレンスルホン酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウムである。ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸又はそれらの塩を用いた場合には、他の重合体化合物を用いた場合に比べて、研磨後のガラス基板の表面特性(表面粗さ及び表面欠陥)及び研磨用組成物の洗浄性がより向上する。中でもポリスチレンスルホン酸塩又はポリアクリル酸塩を用いた場合、特にポリスチレンスルホン酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウムを用いた場合には、重合体化合物の溶解性が良好なこともあって研磨後のガラス基板の表面特性及び研磨用組成物の洗浄性が大きく向上する。
研磨用組成物中の重合体化合物の含有量が0.001質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.002質量%よりも少ない場合、もっと言えば0.003質量%よりも少ない場合には、研磨後のガラス基板の表面粗さがやや増大したり研磨用組成物の洗浄性がやや低下したりする虞がある。従って、重合体化合物の含有量が少なすぎることによる表面粗さの増大や洗浄性の低下を防止するためには、重合体化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、最も好ましくは0.003質量%以上である。一方、重合体化合物の含有量が5質量%よりも多い場合、さらに言えば1質量%よりも多い場合、もっと言えば0.5質量%よりも多い場合には、研磨能率がやや低下する虞がある。従って、重合体化合物の含有量が多すぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、研磨用組成物中の分散剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
研磨用組成物中の重合体化合物の分子量が1000よりも小さい場合には、研磨後のガラス基板の表面特性及び研磨用組成物の洗浄性がやや低下する虞がある。従って、重合体化合物の分子量が小さすぎることによる研磨後のガラス基板の表面特性及び研磨用組成物の洗浄性の低下を防止するためには、重合体化合物の分子量は、好ましくは1000以上である。一方、重合体化合物の分子量が50万よりも大きい場合には、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がやや低下する虞がある。従って、重合体化合物の分子量が大きすぎることによる研磨能率の低下を防止するためには、重合体化合物の分子量は、好ましくは50万以下である。
前記研磨促進剤は、酸(ただし、ポリスチレンスルホン酸及びポリカルボン酸ポリマーを除く。)及び酸性化合物である塩(ただし、ポリスチレンスルホン酸塩及びポリカルボン酸ポリマー塩を除く。)の少なくともいずれか一方を含有する。酸及び酸性化合物である塩は、研磨用組成物中のシリカ粒子の表面に作用して該表面を活性化することにより、シリカ粒子によるガラス基板の機械的研磨を促進する作用を有する。酸及び酸性化合物である塩はまた、ガラス基板の表面を腐食又はエッチングすることにより、ガラス基板を化学的に研磨する作用も有する。
酸は、無機酸及び有機酸のいずれであってもよく、好ましくは塩酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、硝酸、ホスフィン酸、ホウ酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、マロン酸、酢酸、ギ酸、グリコール酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、イタコン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、マンデル酸、グルオキシル酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(略称HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(略称NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(略称PBTC)、アラニン及びグリシンから選ばれる第1の酸であり、より好ましくは塩酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、硝酸、ホスフィン酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、マロン酸、酢酸、ギ酸、グリコール酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、イタコン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、マンデル酸、グルオキシル酸、HEDP、NTMP及びPBTCから選ばれる第2の酸であり、最も好ましくは塩酸、リン酸、ホスホン酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸及びマロン酸から選ばれる第3の酸である。第1の酸を用いた場合には、他の酸を用いた場合に比べて、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がより向上し、その中でも第2の酸、特に第3の酸を用いた場合には、研磨能率が大きく向上する。
酸性化合物である塩は、無機酸塩及び有機酸塩のいずれであってもよく、好ましくは硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硝酸鉄、硫酸四アンモニウムセリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、酒石酸水素カリウム、塩化鉄、硫酸セリウム、クエン酸二水素アンモニウム及びクエン酸鉄から選ばれる第1の塩であり、より好ましくは硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硝酸鉄、硫酸四アンモニウムセリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、クエン酸二水素アンモニウム及びクエン酸鉄から選ばれる第2の塩である。第1の塩を用いた場合には、他の塩を用いた場合に比べて、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がより向上し、その中でも第2の塩を用いた場合には、研磨能率が大きく向上する。
研磨用組成物中の酸及び酸性化合物である塩の含有量が0.05質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.1質量%よりも少ない場合、もっと言えば0.3質量%よりも少ない場合には、研磨能率があまり向上しない虞がある。従って、研磨能率をよく向上させるためには、酸及び酸性化合物である塩の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上である。一方、酸及び酸性化合物である塩の含有量が12質量%よりも多い場合、さらに言えば8質量%よりも多い場合、もっと言えば5質量%よりも多い場合には、研磨用組成物の粘度が増大して研磨用組成物がゲル化しやすくなる虞がある。また、酸及び酸性化合物である塩のエッチング作用が強まるせいで研磨後のガラス基板に軽度の面荒れが発生する虞もある。従って、酸及び酸性化合物である塩の含有量が多すぎることによる弊害を避けるためには、酸及び酸性化合物である塩の含有量は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
前記水は、研磨用組成物中の水以外の成分を分散又は溶解する媒質としての役割を担う。水は、不純物をできるだけ含有しないことが好ましい。
本実施形態は、以下の利点を有する。
・ 本実施形態に係る研磨用組成物は、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸ポリマー及びそれらの塩、並びにポリ酢酸ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体化合物を含有し、この重合体化合物は、研磨用組成物中のシリカ粒子の表面に作用してシリカ粒子が帯びる負電荷を増加させる作用を有する。シリカ粒子の負電荷が増加すると、同じく負電荷を帯びるガラス基板に対するシリカ粒子の電気的反発が強まるため、研磨後のガラス基板の表面に対してシリカ粒子が付着しにくくなる。従って、本実施形態の研磨用組成物は、洗浄により簡単に研磨後のガラス基板から除去されうる良好な洗浄性を有する。また、シリカ粒子の負電荷が増加すると、シリカ粒子同士の間の電気的反発も強まるため、研磨用組成物中においてシリカ粒子が凝集することなく均一に分散する。そのため、本実施形態に係る研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨した場合には、ガラス基板の表面全体が均一に研磨され、その結果、研磨後のガラス基板の表面粗さが減少される。また、凝集したシリカ粒子によりガラス基板に生じる表面欠陥も低減される。
・ 本実施形態に係る研磨用組成物は、酸及び酸性化合物である塩の少なくともいずれか一方を含有し、この酸及び酸性化合物である塩は、シリカ粒子によるガラス基板の機械的研磨を促進する作用及びガラス基板を化学的に研磨する作用を有する。従って、本実施形態に係る研磨用組成物によれば高い研磨能率でガラス基板を研磨することができる。なお、シリカ粒子には酸又は酸性化合物の塩の添加によって凝集する性質があるが、本実施形態に係る研磨用組成物には酸及び酸性化合物の塩だけでなく、シリカ粒子の凝集を抑制する作用を有する重合体化合物も同時に添加されているため、酸又は酸性化合物の塩の添加によるシリカ粒子の凝集を抑制することができる。
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・ 研磨用組成物は、酸及び酸性化合物である塩の代わりに、アルカリ化合物を研磨促進剤として含有してもよい。アルカリ化合物は、酸及び酸性化合物である塩と同様、研磨用組成物中のシリカ粒子の表面に作用して該表面を活性化することにより、シリカ粒子によるガラス基板の機械的研磨を促進する作用と、ガラス基板の表面を腐食又はエッチングすることにより、ガラス基板を化学的に研磨する作用とを有する。
アルカリ化合物は、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩であってもよく、好ましくは水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸水素アンモニウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム、臭素酸カリウム、ソルビン酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸カルシウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化アンモニウム、過ヨウ素酸カリウム、フェリシアン化カリウム、酢酸アンモニウム及び水酸化テトラメチルアンモニウム(略称TMAH)から選ばれる第1のアルカリ化合物であり、より好ましくは水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム及びリン酸水素アンモニウムから選ばれる第2のアルカリ化合物である。第1のアルカリ化合物を用いた場合には、他のアルカリ化合物を用いた場合に比べて、研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨したときの研磨能率がより向上し、その中でも第2のアルカリ化合物を用いた場合には、研磨能率が大きく向上する。
研磨用組成物中のアルカリ化合物の含有量が0.05質量%よりも少ない場合、さらに言えば0.1質量%よりも少ない場合、もっと言えば0.3質量%よりも少ない場合には、研磨能率があまり向上しない虞がある。従って、研磨能率をよく向上させるためには、アルカリ化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上である。一方、アルカリ化合物の含有量が12質量%よりも多い場合、さらに言えば8質量%よりも多い場合、もっと言えば5質量%よりも多い場合には、研磨用組成物の粘度が増大して研磨用組成物がゲル化しやすくなる虞がある。また、アルカリ化合物のエッチング作用が強まるせいで研磨後のガラス基板に軽度の面荒れが発生する虞もある。従って、アルカリ化合物の含有量が多すぎることによる弊害を避けるためには、アルカリ化合物の含有量は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
・ 研磨用組成物は、酸化剤、防腐剤等をさらに含有してもよい。酸化剤は、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過ヨウ素酸カリウムのいずれであってもよい。
・ 研磨用組成物は水で希釈してから研磨に使用されてもよい。希釈して用いる場合、希釈倍率は、好ましくは50倍以下、より好ましくは20倍以下、最も好ましくは10倍以下である。
・ ガラス基板の化学機械研磨は、複数の研磨工程に分けて行われる代わりに、本実施形態に係る研磨用組成物を用いた単一の研磨工程で行われてもよい。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
実施例1〜55においては、研磨材と重合体化合物を水に混合し、必要に応じて研磨促進剤をさらに加えて研磨用組成物を調製した。比較例1〜15においては、研磨材を水に混合し、必要に応じて重合体化合物及び研磨促進剤をさらに加えて研磨用組成物を調製した。実施例1〜55及び比較例1〜15に係る各研磨用組成物中の研磨材、重合体化合物及び研磨促進剤の詳細は表1〜3に示すとおりである。
実施例1〜55及び比較例1〜15に係る各研磨用組成物を用いて表4に示す研磨条件でガラス基板を研磨した。研磨後のガラス基板を純水によるスクラブ洗浄及びメガソニック洗浄に供し、さらにスピン乾燥に供した。その後、ガラス基板の表面粗さRaをDigital Instruments社製の原子間力顕微鏡“NanoScope IIIa Dimension 3000”を用いて測定した。そして表面粗さRaに基づいて、優(◎)、良(○)、可(△)、不良(×)の四段階で各研磨用組成物を評価した。具体的には、表面粗さRaが2Å未満の場合には優、2Å以上2.5Å未満の場合には良、2.5Å以上3.0Å未満の場合には可、3.0Å以上の場合には不良と評価した。この評価の結果を表1〜3の“表面粗さ”欄に示す。
実施例1〜55及び比較例1〜15に係る各研磨用組成物を用いて表4に示す研磨条件でガラス基板を研磨したとき、研磨前後のガラス基板の重量の差、すなわち研磨によるガラス基板の重量減少量から下記式に基づいて研磨能率を求めた。そして研磨能率に基づいて、優(◎)、良(○)、可(△)、不良(×)の四段階で各研磨用組成物を評価した。具体的には、研磨速度が0.12μm/分以上の場合には優、0.08μm/分以上0.12μm/分未満の場合には良、0.05μm/分以上0.08μm/分未満の場合には可、0.05μm/分未満の場合には不良と評価した。この評価の結果を表1〜3の“研磨能率”欄に示す。
式: 研磨能率[μm/分]=研磨前後のガラス基板の重量の差[g]/(ガラス基板の研磨した面の面積[cm2]×ガラス基板の密度[g/cm3])×104[μm/cm])/研磨時間[分]
なお、上記式中、ガラス基板の研磨した面の面積は30.02625cm2であり、ガラス基板の密度は2.52g/cm3である。
スピン乾燥後のガラス基板上の表面欠陥の個数をVISION PSYTEC社製の微小欠陥検出装置“MicroMax VMX2100”を用いて測定した。そして表面欠陥の個数に基づいて、優(◎)、良(○)、可(△)、不良(×)の四段階で各研磨用組成物を評価した。具体的には、付着物の個数がゼロの場合には優、1〜10個の場合には良、11〜30個の場合には可、31個以上の場合には不良と評価した。この評価の結果を表1〜3の“表面欠陥”欄に示す。
スピン乾燥後のガラス基板上の付着物の個数を原子間力顕微鏡“NanoScope IIIa Dimension 3000”を用いて測定した。そして付着物の個数に基づいて、優(◎)、良(○)、やや不良(△)、不良(×)の四段階で各研磨用組成物を評価した。具体的には、付着物の個数がゼロの場合には優、1〜2個の場合には良、3〜5個の場合には可、6個以上の場合には不良と評価した。この評価の結果を表1〜3の“洗浄性”欄に示す。
以上の表面粗さ、研磨能率、表面欠陥及び洗浄性の4つの項目に関する評価に基づいて、優(◎)、良(○)、やや不良(△)、不良(×)の四段階で各研磨用組成物を評価した。具体的には、優を5点、良を3点、やや不良を1点、不良を0点としたときに、4つの項目に関する評価の点数の合計が20点の場合には優、16〜19点の場合には良、10〜15点の場合にはやや不良、9点以下の場合には不良と評価した。この評価の結果を表1〜3の“総合評価”欄に示す。
Figure 2006193695
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Figure 2006193695
Figure 2006193695
表1〜3の“研磨材”欄において、“コロイダルシリカ”は、平均粒子径DSAと平均粒子径DN4がいずれも80nmのコロイダルシリカを表す。“フュームドシリカ”は平均粒子径DSAが30nmで平均粒子径DN4が90nmのフュームドシリカを表す。“CeO2”は、平均粒子径D50が0.45μmの酸化セリウムを表す。“Al23”は、平均粒子径D50が0.45μmの酸化アルミニウムを表す。“Fe23”は、平均粒子径D50が0.45μmの酸化鉄を表す。酸化セリウム、酸化アルミニウム及び酸化鉄の平均粒子径D50は、COULTER社製のCoulter Multisizer IIで測定した。
表1〜3の“重合体化合物”欄において、“ポリスチレンスルホン酸Na”は、分子量1万〜3万のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを表す。“ポリスチレンスルホン酸NH4”は、分子量1万〜3万のポリスチレンスルホン酸アンモニウムを表す。“ポリスチレンスルホン酸K”は、分子量1万〜3万のポリスチレンスルホン酸カリウムを表す。“ポリアクリル酸Na”は、分子量1万〜3万のポリアクリル酸ナトリウムを表す。“ポリ酢酸ビニル”は、分子量1万〜3万のポリ酢酸ビニルを表す。“PEO”は、分子量30万のポリエチレンオキサイドを表す。“PEG”は、分子量3万のポリエチレングリコールを表す。
表1〜3に示す結果を以下にまとめる。
・ 実施例1〜55においては、いずれの項目に関する評価も不良ではなく、総合評価は優又は良と良好である。この結果から、実施例1〜55に係る各研磨用組成物がガラス基板を研磨する用途での使用に好適であることがわかる。
・ 研磨材としてコロイダルシリカを含む実施例4に係る研磨用組成物の表面粗さRaに関する評価は、研磨材としてフュームドシリカを含む実施例17に係る研磨用組成物の表面粗さRaに関する評価に比べて高い。この結果から、フュームドシリカを用いた場合に比べて、コロイダルシリカを用いた場合には、研磨後のガラス基板の表面粗さが減少することがわかる。
・ 重合体化合物(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)の含有量が0.1〜0.005質量%である実施例3〜6及び10〜13に係る各研磨用組成物の研磨能率に関する評価は、重合体化合物の含有量が上記範囲外である実施例1,2,7〜9及び14に係る各研磨用組成物の研磨能率に関する評価に比べて高い。この結果から、重合体化合物の含有量を0.1〜0.005質量%に設定することで、研磨能率が向上することがわかる。
・ 研磨促進剤を含有する実施例50〜54に係る各研磨用組成物の研磨能率に関する評価は、研磨促進剤を含有しない実施例55に係る研磨用組成物の研磨能率に関する評価に比べて高い。この結果から、研磨促進剤の添加によって研磨能率が向上することがわかる。
・ 重合体化合物を含有する実施例1〜7に係る各研磨用組成物の洗浄性に関する評価は、重合体化合物を含有しない比較例3に係る研磨用組成物の洗浄性に関する評価に比べて高い。この結果から、重合体化合物の添加によって洗浄性が向上することがわかる。
前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 研磨用組成物中の二酸化ケイ素粒子の含有量が0.1〜50質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記二酸化ケイ素粒子はコロイダルシリカを含み、BET法により測定される比表面積から求められる該コロイダルシリカの平均粒子径は5〜300nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記二酸化ケイ素粒子はコロイダルシリカを含み、レーザー回析散乱法により測定される該コロイダルシリカの平均粒子径は5〜300nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記二酸化ケイ素粒子はフュームドシリカを含み、BET法により測定される比表面積から求められる該フュームドシリカの平均粒子径は10〜300nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記二酸化ケイ素粒子はフュームドシリカを含み、レーザー回析散乱法により測定される該フュームドシリカの平均粒子径は30〜500nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記重合体化合物が、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸及びそれらの塩よりなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記重合体化合物がポリスチレンスルホン酸塩及びポリアクリル酸塩の少なくともいずれか一方を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記重合体化合物がポリスチレンスルホン酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムの少なくともいずれか一方を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 研磨用組成物中の前記重合体化合物の含有量が0.001〜5質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 研磨用組成物中の前記重合体化合物の分子量が1000〜50万である請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
・ 前記研磨促進剤が、塩酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、硝酸、ホスフィン酸、ホウ酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、マロン酸、酢酸、ギ酸、グリコール酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、イタコン酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、マンデル酸、グルオキシル酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、アラニン及びグリシンよりなる群から選ばれる少なくとも一つの酸、又は、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硝酸鉄、硫酸四アンモニウムセリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、酒石酸水素カリウム、塩化鉄、硫酸セリウム、クエン酸二水素アンモニウム及びクエン酸鉄よりなる群から選ばれる少なくとも一つの塩を含む請求項3に記載の研磨用組成物。
・ 研磨用組成物中のポリスチレンスルホン酸及びポリカルボン酸ポリマー以外の酸並びにポリスチレンスルホン酸塩及びポリカルボン酸ポリマー塩以外の塩の含有量の合計が0.05〜12質量%である請求項3に記載の研磨用組成物。
・ 前記研磨促進剤がアルカリ化合物を含む請求項2に記載の研磨用組成物。
・ 前記研磨促進剤がアルカリ化合物を含み、研磨用組成物中のアルカリ化合物の含有量が0.05〜12質量%である請求項2に記載の研磨用組成物。
・ 請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨する研磨方法。
・ 請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いてガラス基板を研磨する工程を経て得られる研磨製品。

Claims (3)

  1. ガラス基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物であって、
    二酸化ケイ素粒子と、
    ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸ポリマー及びそれらの塩、並びにポリ酢酸ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体化合物と、
    水と
    を含有する研磨用組成物。
  2. 研磨促進剤をさらに含有する請求項1に記載の研磨用組成物。
  3. 前記研磨促進剤が、ポリスチレンスルホン酸及びポリカルボン酸ポリマー以外の酸、並びにポリスチレンスルホン酸塩及びポリカルボン酸ポリマー塩以外の酸性化合物である塩の少なくともいずれか一方を含む請求項2に記載の研磨用組成物。
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