JP2006145519A - 糖鎖構造解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)目的糖鎖について特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、(b)該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、得られた特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、(c)該CIDエネルギー依存曲線と、構造既知の参照糖鎖から得られた、上記フラグメントイオンと同一のm/zのフラグメントイオンをCID−MS/MS測定することにより得られた、上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線とを比較する糖鎖構造解析方法が提供される。
【選択図】図1
Description
(1) (a)目的糖鎖について特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、(b)該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、得られた特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、(c)該CIDエネルギー依存曲線と、構造既知の参照糖鎖から得られた、上記フラグメントイオンと同一のm/zのフラグメントイオンをCID−MS/MS測定することにより得られた、上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線とを比較することを特徴とする糖鎖構造解析方法。
(3) 参照糖鎖が3糖からなることを特徴とする(2)に記載のライブラリー。
(5) 構造既知の複数の参照糖鎖の解裂イオンパラメータが、特定のm/zの娘イオンのイオン強度の最大値を該娘イオンの総イオンカウント数の相対数としてあらわした相対値、前記相対値が50%となるCIDエネルギー値、CIDエネルギー依存曲線の変曲点での傾き、から選ばれる少なくとも1つのパラメータであることを特徴とする、(4)に記載のライブラリー。
(6) 参照糖鎖が3糖からなることを特徴とする(4)または(5)に記載のライブラリー。
以下の説明において、「CID−MSn測定」とは、CID(Collision induced dissociation:衝突誘起解離)による多段マススペクトロメトリーの取得を行うことを示し、「フラグメントイオン」とは、上記CID−MSn測定や物理化学的分解等により得られる各m/zを有するイオンを示し、「m/z」とは、質量数(m)と電荷(z)の比を示し、「娘イオン」とは、フラグメントイオンを上記CID−MSn測定することにより得られる各m/zを有するフラグメントイオンを示し、「総イオンカウント数」とは、各m/zを有するすべてのフラグメントイオンのイオン強度の総和を示し、また、「CIDエネルギー」とは、CIDを起こすときに加えるエネルギーを一般的に示し、実際にはイオンを振動させるためのある周波数の電場の電圧を示す。さらに、「構造解析方法」とは、構造決定方法および/または構造推定方法を意味する。
(1)構造解析方法の概略(図1)
本発明は、構造未知の糖鎖(本明細書中では、これを「目的糖鎖」と称することがある)を特定のm/zのフラグメントイオン(以下、これを「親イオン」又は「親フラグメントイオン」と称することがある)が得られるまでCID−MSn測定を行い(フローA1)、得られた親フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行う(フローB1)。ここで、得られた特定のm/zを有する娘イオンについて総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、必要に応じて該曲線の各特長をパラメータ化した解裂イオンパラメータを作成する(フローB1)。一方、参照データとして、構造既知の糖鎖(本明細書中では、これを「参照糖鎖」と称することがある)またはそのライブラリーについて、特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い(フローA2)、得られたフラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行う(フローB2)。ここで、得られた特定の娘イオンについて総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、必要に応じて該曲線の各特長をパラメータ化した解裂イオンパラメータを作成する(フローB2)。本明細書中では、これら参照糖鎖のCIDエネルギー依存曲線および解裂イオンパラメータをあわせて「参照データ」と称することがある。なお、フローA1に先立って、目的糖鎖についてCID−MSn測定による糖鎖構造異性体の混入検定を行ってもよい(フローD)。
本発明に用いられる目的糖鎖は、以下に説明する方法により分解するなどしてCID−MSn測定を行い得るものであればいかなるものであってもよい。また、構造解析を目的として本発明の方法に供するものであるので、その全部または一部の構造が未知のものが好ましい。目的糖鎖は、生体組織又は細胞等から得られたものでもよいし、合成されたタンパク質に結合したものから得られたものでもよく、またそれを酸加水分解又は酵素分解したり、さらにHPLC等で分離精製したもの等を用いることができる。また、化学合成された糖鎖を用いることもできる。
上記で得られた目的親フラグメントイオンは、これをCID−MSn測定する(CID−MSn測定により得られた目的親フラグメントの場合は、これをCID−MS/MS測定する)。
参照データを取得する目的で、参照糖鎖について上記(2)と同様に親フラグメントイオンを調製する。参照糖鎖は、目的糖鎖の全部または一部の構造を本発明の方法を用いて決定し得るものであればいかなるものであってもよい。具体的には、目的糖鎖またはその一部と構造が一致する可能性があり、構造が明らかであるものが用いられる。このような参照糖鎖は、天然のものでも合成されたものでもよく、また置換基がついていてもよい。糖鎖の長さは、1〜13個の糖が連結したものが用いられる。
上記(4)で取得された参照親フラグメントイオンは、これを目的親フラグメントイオンと同様にCID−MSn測定する(CID−MSn測定により取得された参照親フラグメントの場合は、これをCID−MS/MS測定する)。イオン化法、溶媒、糖鎖の調製、測定装置などは全て目的糖鎖および親フラグメントイオンと同様のものを用いることができる。該測定により得られたプロットから、特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成する(前述の式1)。このうち、特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数を、該娘イオンの総イオンカウント数と、該娘イオンの総イオンカウント数と上記親イオンの総イオンカウント数の和との比で表すことも好ましい(前述の式2)。この比で娘イオン強度を表すことにより、微弱なその他のイオンカウント数に影響を受けず、正確なCIDエネルギー依存曲線を作成することができる。特定のm/zの娘イオンとは、参照親フラグメントイオンから解離する何れの娘イオンでもよいし、その全てでもよい。さらに、参照糖鎖が、ライブラリーであった場合、該ライブラリーの全ての構成要素から得られる参照親フラグメントイオンについて得られる全ての娘イオンであることが網羅的、組織的解析を行なう上で好ましい。
本発明においては、上記(3)で得られた目的糖鎖の特定のm/zの親フラグメントイオンから得られた特定のm/zの娘イオン(以下、これを「目的娘イオン」と称することがある)のCIDエネルギー依存曲線について、目的親フラグメントイオンと同一のm/zを有する参照親フラグメントイオンから得られた、目的娘イオンと同一のm/zの娘イオン(以下、これを「参照娘イオン」と称することがある)のCIDエネルギー依存曲線を選択し、これを比較する。また、これらのCIDエネルギー依存曲線から得られた解裂イオンパラメータを比較してもよい。
上記(6)で比較したCIDエネルギー依存曲線または解裂イオンパラメータが一致しなかった場合は、解裂イオンパラメータを比較し、目的糖鎖の構造を推定することができる。具体的には、目的娘イオンのCIDエネルギー依存曲線から解裂イオンパラメータを作成し、参照娘イオンのCIDエネルギー依存曲線から作成した解裂イオンパラメータと比較することにより、目的糖鎖の構造を推定すればよい。統計的解析により比較するのが好ましく、また参照糖鎖として、前述の糖鎖ライブラリーを用いるのが好ましい。また、解裂イオンパラメータとして、例えば、CIDエネルギー依存曲線をイオンカウント数の相対数としての基底値(Bottom=0)と最大値(Top=100)、その50%にあたるCIDエネルギー(V50)、およびCIDエネルギー依存曲線の変曲点での傾き(Slope)を指標として前述の式3により計算した値を、挙げることができる。
前述のように、糖鎖の構造異性体毎にCID−MSn測定結果は相違する(図10)。すなわち、同一質量数であっても構造が異なる糖鎖異性体はこれを形成する結合の解裂反応の様子が異なる。この理由は構造異性を形成する化学結合エネルギーに差異が存在し、このため、異なる結合が各々CID条件下で解裂することによるためである。これを利用し、CID−MSn測定で親イオンが消失しない程度に衝突誘起解離を行い、この残存する親イオンをn+1段目で再度衝突誘起解離を行うこと(CID−MSn+1測定)により、糖鎖の構造異性体の純度検定を行うことができる。検体が純品ならばCID−MSnとCID−MSn+1の段数で得られるマススペクトル、あるいは、エネルギー依存曲線は一致する。検体が同一質量数の物質からなる混合物である(構造異性体混合物)ならば、CID−MSnとCID−MSn+1の各段の親イオンの組成比が異なることとなるので、得られる質量分析結果、特に、各シグナル強度、あるいは、エネルギー依存曲線が異なる。上記の純度検定の概略を図5に示す。
実施例1 CID−MS n 測定の定量性の確認
(1)CID−MS/MS測定値の定量性
立体異性体や結合位置異性体からなる糖鎖のCID−MS/MS測定を行い、得られたCID−エネルギー依存曲線を比較して上記糖鎖の化学構造を決定するためには、取得したデータの定量性が問題となるためこれを確認した。Fucα(1−3)Galβ−Octyl(WO2005/000861号明細書に記載の方法で合成した)をH2O/メタノール(1:1)溶液に最終濃度10ng/μlとなるように溶解し、これをCID−MSn測定装置(esquire 3000 plus:ブルカーダルトニクス社製)のニードルにシリンジポンプを用いたインフュージョン法(流速を2μl/分)で注入し、熱キャピラリー温度250℃、キャピラリー電圧4.0kV、CIDエネルギーが0.5〜1.5V、ポジティブモードで測定を行った。
本発明においては、同一のフラグメントイオンについて、CID−MS/MSとMS/MS/MS測定またはそれ以上の各CID−MSn測定で得られたCIDエネルギー依存曲線が同一でないと、参照データとの比較ができないので、これを確認した。
(1)天然糖鎖と合成オリゴ糖鎖におけるCIDエネルギー依存曲線の同一性
本発明は、参照糖鎖(ライブラリー)のCIDエネルギー依存曲線と構造未知の天然の糖鎖のCIDエネルギー依存曲線を比較することにより目的糖鎖の構造解析を行う方法である。ここで、構造は同じであるが異なる置換基を有している合成糖鎖と天然糖鎖について、CID−MS/MS測定で同一のm/zを有する親イオンを取得し、これをさらにCID−MS/MS測定した場合、得られた娘イオンのCIDエネルギー依存曲線が同一であることを確認した。
本発明の方法は、目的糖鎖(参照データの親フラグメントイオンとは異なる構造を有する)を参照データの親イオンと同一の構造を有するフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、これをさらにCID−MS/MS測定することにより得られたCIDエネルギー依存曲線を参照データと比較することにより糖鎖の構造解析を行う方法である。そこで、異なる構造を有する2種の糖鎖について同一のフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、得られたフラグメントイオンをさらにCID−MS/MS測定し、得られた娘イオンのCIDエネルギー依存曲線が同一であることを確認した。
同一の構造を有するが立体異性のフラグメントイオンについて、これを本発明の方法で識別することができることを確認した。Fucα/β(1−6)Galα/β(1−6)Glcα/β−Octyl(図10A)の3つのグリコシド結合がそれぞれ異なる8種のアノマーを化学合成し、HPLCで分離精製を行なった後、これらを実施例1と同様にCID−MS/MS測定を行った。このときのFucα(1−6)Galα(1−6)Glcβ−OctylのMS/MSを異なるCIDエネルギー(B:0.82V、C:0.96V)で測定したスペクトルの1例を図10B、Cに示した。図から明らかなように、m/z=623.3の親イオンは、CIDエネルギーが0.82Vではm/z=477.2のフラグメントイオンを生じ、さらに0.96Vでは、該親イオンはm/z=477.2と331.1の2つのフラグメントイオンを生じた。
本発明において、目的糖鎖の特定のm/zのフラグメントイオンの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線が、参照データと一致した場合、この段数では一致していても、構造が異なることが考えられる。そこで、該CID−MSn測定で得られるその他の娘イオンについても参照データの同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線と比較すると、さらに正確な構造解析を行うことができる。この場合の例を以下に示す。
最初にアノマー異性体、および、結合位置異性体の判定をおこなうことの可能性に関して、単一の単糖の特定の結合のみからなるオリゴ糖を用いて検討した。マルトオリゴ糖はグルコースのみがα(1−4)、セロオリゴ糖はβ(1−4)結合それぞれした構造体でありであり、アノマー異性体の比較に適している。また、イソマルトオリゴ糖はα(1−6)の結合から成っており、マルトオリゴ糖との比較において結合位置異性の判別に重要な位置を占める。
実施例1(2)においてマルトオリゴ糖のCID−MS/MSとMS/MS/MS(CID−MSnとCID−MSn+1)測定のCIDエネルギー依存曲線が良い一致を示すことを示した。ここで得られたエネルギー依存曲線をシグモイドカーブフィットし、得られたパラメータ(Top、Slope、V50)について3D散布図を作成、この2D展開図を作成した。同時に結合位置はマルトオリゴ糖と同じでアノマー立体配置のみが異なるセロオリゴ糖に関して同様にプロットした(図12)。この結果、CID−MSn測定の2段目と3段目においてプレカーサーイオンが同一であればパラメータが良い一致を示し、特に、V50が1.40〜1.45Vの範囲に集中することが分かった。一方、セロオリゴ糖においてはV50値が1.5V付近にあり、これは、アノマー立体配置の相違による結合の解裂状況をパラメータで判別できることを示す結果である。
実施例3(1)のマルトースの結果に対しα(1−6)の結合から成っているイソマルトオリゴ糖の衝突エネルギーマップから各パラメータを取得し、マルトースのそれらと共にグラフとした(図13)。この結果、V50値が結合位置異性の指標として使用できることが示された。
(1)3糖ライブラリーの合成およびそのCID−MSn測定
3糖ライブラリーの一部であるフコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、および、グルコース(Glc)で構成される3糖Fucα/β(1−6)Galα/β(1−2/3/4/6)Glcα/β−Octylをアノマー混合物として合成しHPLCを用いて単離した各々の3糖についてCID−MSn測定を行い、得られたライブラリー化合物からの構造情報を用いて構造未定化合物の構造予測をおこなった。情報源となる化合物は本来計32種(23×4)であるが、単離可能であった計23化合物についてライブラリー構造データとしてあつかった。全てのサンプルにおいてCID−MS/MS測定はm/z=623[M+Na]+、CID−MS/MS/MS測定はm/z=477[M−Fuc+Na]+に関しておこなった。
実施例1に記載の方法でCID−MS/MS測定をそれぞれのサンプルに関して行ってデータを取得した(図14)。その後カーブフィット(ボルツマンのシグモイド式)をおこない、各パラメータ(Top、Slope、V50)を算出した(図15)。3糖ライブラリーの23化合物のうち、Fucα/β(1−6)Galα/β(1−6)Glcβ−Octylの例を図14および15に示す。
CID−MS/MS/MS測定においてもCID−MS/MS測定時のFucの脱離に関するプロットと同様にGalが脱離したm/z=315に関するデータは、2極化の傾向がある (図17)。この結果はV50のみがアノマー異性体を反映する結果である。
(1)各プロットと各平均との距離によるプロットの範囲
CID−MSn測定により得られるシグモイドカーブのグラフから、α配置およびβ配置(本実施例においてはフコースとガラクトースの場合について説明)はそれぞれある範囲を持ち収束していることがわかる。未知糖鎖のアノマー解析を行う際、この範囲に入っているか否かによりアノマーの推定が可能である。
V50−α全体のV50の平均 = 0.00597、
Slope−α全体のSlopeの平均 = 0.000229
である。この値からの距離をもとめ、この距離を半径とする円をFucαの範囲とした(図18)。Fucαに関するライブラリーから得た数値を表1に示す。
実施例2で、糖鎖ライブラリーをなす化合物のCID解析から得られる部分構造体のエネルギー依存曲線と未知物質の部分構造体のエネルギー依存カーブの比較から、カーブが完全一致すれば部分構造を推定できることを示した。これは異なった元の構造から得られた同一のフラグメントをライブラリーデータと参照することで可能としている。この場合トラップされたイオンは同一分子量であるため、部分構造の完全一致が可能となる。しかし質量分析において、親イオンの分子量(分子の大きさ)は結果に影響する重要な因子であり、本研究においても分子量の差異によりカーブおよびパラメータ(V50、Slope等)が異なる結果が得られているため、分子量の影響を考慮した糖鎖構造解析が必要となる。以下、得られた結果の補正法を提供する(図20)。
V50の補正値 = 脱Fucαライブラリー(m/z=477)のV50平均 / Lewis aのV50
Slopeの補正値=脱Fucαライブラリー(m/z=477)のSlope平均 / Lewis a のSlope
質量分析計を用いた構造解析を行うにあたり問題視されるのは、機器間のデータの差異である。これを上記の方法を用いて補正を行った。まず、共通のサンプルとしてFucα(1−6)Galα(1−6)Glcβ−Octylを補正サンプルとして用いた。比較に用いた機器は同一会社ではあるがブルカーQITMSを用いることで「個体差」の補正をおこなった。エネルギー依存曲線データを比べるとX軸(AmplおよびV50)に差異が見られる(図22)。次に、このサンプルを補正サンプルとしてFucβ(1−6)Galβ(1−6)Glcα−Octylの補正を段落番号0098の補正と同様の方法で行ったところ、差異が少なくなり補正可能であることが示唆された。補正用検体数を増やすことにより補正の精度を改善できる。
(1)検体の調製および質量分析
以下の4種類の検体を調製し、それぞれを実施例1の方法に従い測定した。すなわち、検体の質量分析計への注入はインフュージョン法で、流速120μl/hで行い、用いているイオン源(エレクトロスプレーイオン化法:ESI)は1μl/min〜1ml/minの範囲で使用した。また、on lineあるいはoff line nanoESIを用いることにより、nl/minスケールでの分析が可能であった。検出機として質量分析計はブルカーダルトニクス esquire 3000plus(QIT−MSn)を用いた。分析条件を以下に示す。1)熱キャピラリー温度:205℃、2)キャピラリー電圧:4.0kV、3)Dry Gas:4.0l/min。ポジティブイオンモードで測定。ここで、CID−MSn測定の条件であるIsolation widthは同位体を含まない0.8 msで行った。
純品B Galα(1−3)Galβ−OMe(7 nmol)
混合物C 純品A:純品B=1:1
混合物D 純品A:純品B=1:9
純品AのCID−MS/MS測定及びCID−MS/MS/MS測定のAmpl Voltage毎の各フラグメント強度と各々の差を図23に示した。CID−MS/MS測定及びCID−MS/MS/MS測定では結果に差異が見られなかった。純品Bも同様の結果であった(図24)。
混合物Cおよび混合物DのCID−MS/MS測定及びCID−MS/MS/MS測定のAmpl Voltage毎の各フラグメント強度と各々の差を図25および図26にそれぞれ示した。それぞれの混合物に関して、純品に比べ大きな差異が見られた。この差異から混合物/非混合物の判定が可能であった。
Claims (14)
- (a)目的糖鎖について特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、(b)該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、得られた特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、(c)該CIDエネルギー依存曲線と、構造既知の参照糖鎖から得られた、上記フラグメントイオンと同一のm/zのフラグメントイオンをCID−MS/MS測定することにより得られた、上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線とを比較することを特徴とする糖鎖構造解析方法。
- 構造既知の複数の参照糖鎖をCID−MSn測定することにより得られる複数の特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線からなるCIDエネルギー依存曲線ライブラリー。
- 参照糖鎖が3糖からなることを特徴とする請求項2に記載のライブラリー。
- 請求項2に記載のCIDエネルギー依存曲線から作成された、構造既知の複数の参照糖鎖の解裂イオンパラメータからなる解裂イオンパラメータライブラリー。
- 構造既知の複数の参照糖鎖の解裂イオンパラメータが、特定のm/zの娘イオンのイオン強度の最大値を該娘イオンの総イオンカウント数の相対数としてあらわした相対値、前記相対値が50%となるCIDエネルギー値、CIDエネルギー依存曲線の変曲点での傾き、から選ばれる少なくとも1つのパラメータであることを特徴とする、請求項4に記載のライブラリー。
- 参照糖鎖が3糖からなることを特徴とする請求項4または5に記載のライブラリー。
- (a)目的糖鎖について特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、(b)該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、得られた特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、(c)該CIDエネルギー依存曲線と、請求項2または3に記載のライブラリーに含まれる、上記フラグメントイオンと同一のm/zのフラグメントイオンをCID−MS/MS測定することにより得られた、上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線とを比較することを特徴とする糖鎖構造解析方法。
- 請求項1または7に記載の(c)の工程において、目的糖鎖の特定のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線の解裂イオンパラメータを作成し、該解裂イオンパラメータと、構造既知の参照糖鎖の上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線の解裂イオンパラメータとを比較することを特徴とする、請求項1または7に記載の方法。
- 解裂イオンパラメータが、特定のm/zの娘イオンのイオン強度の最大値を該娘イオンの総イオンカウント数の相対数としてあらわした相対値、前記相対値が50%となるCIDエネルギー値、CIDエネルギー依存曲線の変曲点での傾き、から選ばれる少なくとも1つのパラメータであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
- (a)目的糖鎖について特定のm/zのフラグメントイオンが得られるまでCID−MSn測定を行い、(b)該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、得られた特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数とCIDエネルギーとの関係を示すCIDエネルギー依存曲線を作成し、(c)該CIDエネルギー依存曲線の解裂イオンパラメータを作成し、(d)該解裂イオンパラメータと、請求項4〜6のいずれかに記載のライブラリーに含まれる、上記フラグメントイオンと同一のm/zのフラグメントイオンをCID−MS/MS測定することにより得られた、上記娘イオンと同一のm/zの娘イオンのCIDエネルギー依存曲線から作成された解裂イオンパラメータを比較することを特徴とする糖鎖構造解析方法。
- CIDエネルギー依存曲線の特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数が、特定のm/zの娘イオンの総イオンカウント数と、該娘イオンの総イオンカウント数と親イオンの総イオンカウント数の和の比であることを特徴とする請求項1または7〜10のいずれかに記載の方法。
- 目的糖鎖に含まれる異なる特定のm/zのフラグメントイオンについて請求項1もしくは7に記載の(a)〜(c)の工程または請求項10に記載の(a)〜(d)の工程を繰り返し、それらの結果を組み合わせることを特徴とする糖鎖構造解析方法。
- 少なくともCID−MSn測定装置、請求項2〜6のいずれかに記載のライブラリーをコンピューター読み取り可能なように記録した記録媒体、および目的糖鎖に含まれる異なる特定のフラグメントイオンについて請求項1もしくは7に記載の(b)および(c)の工程または請求項10に記載の(b)〜(d)の工程を行なうためのプログラムを記録した記録媒体を含む糖鎖構造解析システム。
- (a)糖鎖検体について特定のm/zのフラグメントイオンが消失しないような任意の電圧でCID−MSn測定を行い、(b)残存する該フラグメントイオンについてさらにCID−MS/MS測定を行い、(c)前記2工程で得られたマススペクトル、CIDエネルギー依存曲線または該曲線の解裂イオンパラメータを比較することを特徴とする、糖鎖構造異性体の混入検定方法。
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