JP2006009129A - 耐食性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents
耐食性に優れた船舶用鋼材Info
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Abstract
【解決手段】 本発明の造船用耐食鋼は、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.005〜0.10%を夫々含有する他、Se:0.005〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。
Description
Cは、材料の強度確保のために必要な元素である。船舶の構造部材としての最低強度、即ち概ね400MPa程度(使用する鋼材の肉厚にもよるが)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。しかし、0.30%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。こうしたことから、C含有量の範囲は0.01〜0.30%とした。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.28%であり、より好ましくは0.26%以下とするのが良い。
Siは脱酸と強度確保のための必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。尚、Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上とするのが良い。また、Si含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
MnもSiと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とするのが良い。また、Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とするのが良い。
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸に効果がない。しかし、0.10%を超えて添加すると溶接性を害するため、Al添加量の範囲は0.005〜0.10%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とするのが良い。また、Al含有量の好ましい上限は0.040%であり、より好ましくは0.050%以下とするのが良い。
上述したように、Seは腐食の溶解反応が起こっているサイトのpH低下を抑制して腐食反応を抑制して耐食性を向上させる作用を発揮するものである。こうしたSeを含有させることによって、局部的なpH変化が起こりにくくなるため、腐食均一性が向上する作用がある。また、物質移動が制限されている局所的はpH低下が起こりやすい「すきま部」においては、上記した理由によってその効果(局部腐食抑制効果)が有効に発揮される。こうした環境で要求される耐食性を確保するためには、Seの含有量は0.005%以上とする必要がある。しかしながら、0.50%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性が劣化する。こうしたことからSe含有量は、0.005〜0.50%とした。尚、Se含有量の好ましい下限は0.006%であり、より好ましくは0.008%以上とするのが良い。また、Se含有量の好ましい上限は0.45%であり、より好ましくは0.40%以下とするのが良い。
Cu,Cr,Co,NiおよびTiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。このうちCu,CrおよびCoは、耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆被膜を形成するのに有効な元素である。またCoは、高塩分環境において有効な元素である。これらの元素による効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化することから、5.0%以下とすることが好ましい。Cu,CrおよびCoを含有させるときのより好ましい下限は0.05%であり、より好ましい上限は4.50%である。
これらの元素は、腐食によって溶解したFeイオンの加水分解によるpH低下を抑制する作用を有しており、またに必要によって含有されるCu等による錆緻密化を促進し、Seによる局所pH低下抑制作用を更に高める働きがある。こうした作用は、これらの元素の1種以上を0.0005%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、LaおよびCeについては、0.15%、CaおよびMgについては0.015%を超えて過剰に含有させると加工性と溶接性とを劣化させることになる。尚、La,Ceを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%であり、より好ましい上限は0.10%である。またCa,Mgを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%であり、より好ましい上限は0.010%である。
Moは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。特にCu,Cr,Co等と同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果を発揮させるためには、Moは0.01%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性が劣化することから、5.0%以下とすることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限は4.50%である。
これらの元素は、Cu等による錆緻密化作用やLa等によるpH低下作用を助長して耐食性を向上させる元素である。こうした作用を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましいは、過剰に含有させると加工性と溶接性が劣化することから、0.5%以下とすることが好ましい。これらの元素を含有させるときのより好ましい下限はいずれも0.02%であり、より好ましい上限は0.40%である。
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、これらの元素は強度向上に必要な元素である。このうちBは、0.0001%以上含有させることによって焼入性が向上して強度向上に有効であるが、0.010%を超えて過剰に勧誘させると母材靭性が劣化するため好ましくない。Vは、0.01%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになるので好ましくない。Nbは、0.003%以上含有させることによって強度向上に有効であるが、0.50%を超えて過剰に含有させると鋼材の靭性劣化を招くことになる。尚、これらの元素のより好ましい下限は、Bについては0.0003%、Vについては0.02%、Nbについては0.005%である。またより好ましい上限はBについては0.0090%、Vについては0.45%、Nbについては0.45%である。
下記表1、2に示す化学成分組成の鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造および熱間圧延により各種鋼板を製作した。得られた鋼板を切断および表面研削を行って、最終的に100×100×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片A)。試験片Aの外観形状を図1に示す。
まず海洋環境を模擬して、海水噴霧、乾燥および湿潤を順次繰り返しによる複合サイクル腐食試験を行った。海水噴霧試験では、水平から60°の角度で傾けて供試材(各試験片A〜C)を試験槽内に設置し、35℃の人工海水(塩水)を霧状に噴霧させた。塩水の噴霧は常時連続して行った。このとき試験槽内において、水平に設置した面積80cm2の円形皿に1時間当たりに1.5±0.3mLの人工海水が任意の位置で採取されるような噴霧量に予め調整した。乾燥過程では、試験槽内の温度を50℃、湿度を50%RTに保持した。湿潤過程では、試験槽内の温度を60℃、湿度を98%に保持した。海水噴霧過程:2時間、乾燥過程:3時間、湿潤過程:3時間を1サイクルとして、これらを繰り返し行って、供試材の腐食を促進させた。トータルの試験時間は6ヶ月間とした。この腐食試験[以下、「腐食試験I」とする]では、上記試験片Aおよび試験片Bを夫々5個ずつを用いて評価した。
(1)試験片Aについては、試験前後の重量変化を平均板厚減少量D-ave(mm)に換算し、試験片5個の平均値を算出して、各供試材の全面腐食性を評価した。また、触針式三次元形状測定装置を用いて試験片Aの最大侵食深さD-max(mm)を求め、平均板厚減少量[D-ave(mm)]で規格化して(即ち、D-max/D-aveを算出して)、腐食均一性を評価した。尚、試験後の重量測定および板厚測定は、クエン酸水素二アンモニウム水溶液中での陰極電解法[JIS K8284]により鉄錆等の腐食生成物を除去してから行った。
(2)試験片Bについては、すきま部(接触面)の目視観察を行ってすきま腐食発生の有無を調べ、すきま腐食が認められる場合には、上記陰極電解法により腐食生成物を除去し、触針式三次元形状測定装置を用いて最大すきま腐食深さD-crev(mm)を測定した。
(3)塗装処理を施した試験片C(カット傷付き)については、試験後にカット傷を形成した面における塗膜膨れ面積の比率(膨れ面積率)を測定した。膨れ面積率は格子点法(格子間隔1mm)によって求めた。即ち、膨れの認められた格子点の数を全格子点数で除したものを膨れ面積率と定義して、試験片5個の平均値を求めた。また、カット傷に垂直方向の塗膜膨れ幅をノギスで測定し、試験片5個の最大値を最大膨れ幅と定義した。
下記表6、7に示す化学成分組成の鋼材を転炉で溶製し、連続鋳造および熱間圧延により各種鋼板を製作した。得られた鋼板を切断および表面研削を行って、最終的に300×300×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片D)。試験片Dの外観形状を図4に示す。
作製した供試材(各試験片D〜F)を、VLCC原油タンカーの内面の底板、壁面および上甲板裏に取り付けて、5年間の通常運航の後、各供試材の腐食状況を調査した。底板および甲板裏には、試験片DおよびEを5個ずつ、壁面には試験片DおよびFを5個ずつ暴露した。
(1)試験片Dについては、試験前後の重量変化を平均板厚減少量D-ave(mm)に換算し、試験片5個の平均値を算出して、各供試材の全面腐食性を評価した。また、触針式三次元形状測定装置を用いて試験片Dの最大侵食深さD-max(mm)を求め、平均板厚減少量[D-ave(mm)]で規格化して(即ち、D-max/D-aveを算出して)、腐食均一性を評価した。
(2)試験片Eについては、触針式三次元形状測定装置を用いて大試験片側の最大すきま腐食深さD-crev(mm)を測定した。
(3)塗装処理を施した試験片F(カット傷付き)については、カット傷に垂直方向の塗膜膨れ幅(mm))をノギスで測定し、試験片5個の最大値を最大膨れ幅と定義した。
Claims (7)
- C:0.01〜0.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.005〜0.10%を夫々含有する他、Se:0.005〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性に優れた船舶用鋼材。
- 更に、Cu:0.01〜5.0%、Cr:0.01〜5.0%、Co:0.01〜5.0%、Ni:0.01〜5.0%およびTi:0.005〜0.20%よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の船舶用鋼材。
- 更に、La:0.0005〜0.15%、Ce:0.0005〜0.15%、Ca:0.0005〜0.015%およびMg:0.0005〜0.015%よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の船舶用鋼材。
- 更に、Mo:0.01〜5.0%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- Sb:0.01〜0.5%、As:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、Bi:0.01〜0.5%、Te:0.01〜0.5%、よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 更に、B:0.0001〜0.010%、V:0.01〜0.50%およびNb:0.003〜0.50%よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の船舶用鋼材。
- 石油系液体燃料タンクの素材として用いられるものである請求項1〜6のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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