JP2005337023A - エンジンの燃料供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液相状態の燃料における蒸気混入分を見込んでエンジンに対する燃料供給量を精度よく制御すること。
【解決手段】燃料供給装置は、燃料タンク1に液相状態で貯留されるLPGをデリバリパイプ6及び各インジェクタ4へ圧送し、各種センサ48〜51で検出される燃料状態に基づき各インジェクタ4からエンジン3へ供給される燃料噴射量を補正する。電子制御装置40は、タンク用燃料温度センサ48及びタンク用燃料圧力センサ49で検出されるタンク内燃料温度Tt及びタンク内燃料圧力Ptから燃料組成Fcを推定し、その燃料組成Fcとデリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Tdからデリバリパイプ6における燃料液密度及び蒸気混入割合を推定し、それら燃料液密度及び蒸気混入割合に応じてエンジン3に供給される燃料噴射量を補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料供給装置は、燃料タンク1に液相状態で貯留されるLPGをデリバリパイプ6及び各インジェクタ4へ圧送し、各種センサ48〜51で検出される燃料状態に基づき各インジェクタ4からエンジン3へ供給される燃料噴射量を補正する。電子制御装置40は、タンク用燃料温度センサ48及びタンク用燃料圧力センサ49で検出されるタンク内燃料温度Tt及びタンク内燃料圧力Ptから燃料組成Fcを推定し、その燃料組成Fcとデリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Tdからデリバリパイプ6における燃料液密度及び蒸気混入割合を推定し、それら燃料液密度及び蒸気混入割合に応じてエンジン3に供給される燃料噴射量を補正する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置に関する。詳しくは、液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)などの組成や性状が変化しやすい燃料を使用したエンジンの燃料供給装置に関する。
一般に、エンジンで燃料として使用されるLPGやLNGは、季節や地域などの違いにより、組成や性状が大きく変化する傾向がある。このため、LPGやLNGをエンジンで使用するには、組成や性状の違いに応じて燃料供給量を補正する必要がある。そこで、下記の特許文献1乃至3には、LPGの組成や性状の違いに応じてLPGをエンジンに供給するようにした燃料供給装置が記載されている。
特許文献1に記載の燃料供給装置は、LPGの蒸気圧力と温度を計測してその組成と液比重を算出し、燃料噴射弁の開弁時間を蒸気圧力と液比重及び組成により補正制御するようになっている。これにより、一定の空気過剰率になるように燃料流量を制御するようにしている。
特許文献2には、気相燃料と液相燃料とを選択的にエンジンに供給するようにした燃料供給装置が記載される。この燃料供給装置は、ボンベから液相燃料供給手段に供給される液化ガスの状態が液相である場合には、液相燃料供給手段を制御して液相燃料をエンジンに供給し、上記供給される液化ガスが気相である場合には、気相燃料供給手段を制御して気相燃料をエンジンに供給するようになっている。これにより、低温時におけるエンジン始動性と始動後のアイドリング安定性の確保を図り、制御性と応答性を確保するようにしている。
特許文献3に記載の燃料供給装置は、燃料の組成や状態が変化しても、それに見合ったより適切な燃料噴射を行うために、燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力と、燃料噴射機構(デリバリパイプと燃料噴射弁)の燃料温度及び燃料圧力とに基づいて燃料噴射機構での燃料状態を推定し、その推定した燃料状態に応じて燃料噴射量を制御するようになっている。詳しくは、燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力に基づき燃料組成を推定してその燃料の飽和蒸気特性を求める。また、その求められた飽和蒸気特性と、燃料噴射機構の燃料温度及び燃料圧力の一方とから燃料噴射機構での燃料の飽和蒸気圧及び飽和蒸気温度の一方を求める。そして、この求められた飽和蒸気圧と燃料噴射機構の燃料圧力との関係、飽和蒸気温度と燃料噴射機構における燃料温度との関係の一方に基づき燃料噴射機構での燃料状態を推定するようになっている。
ところで、特許文献1乃至3に記載の各燃料供給装置は、基本的には、燃料温度及び燃料圧力に基づき燃料の組成や性状を推定している。すなわち、燃料組成を推定し、その推定結果に応じて燃料が気相状態であるか液相状態であるかを推定する。そして、その燃料状態に応じてエンジンに対する燃料噴射量を制御するようにしている。従って、この燃料噴射量の制御では、燃料が液相状態であるか気相状態であるかを一義的に推定した上で、燃料温度と燃料圧力との関係で求められる飽和蒸気曲線に基づいて燃料噴射量を補正することになる。
しかし、出願人は、上記のような燃料供給制御を実験する中で、完全液相状態であるものと推定して燃料噴射量の制御が行われているにもかかわらず、しばしば燃料噴射量に誤差が生じてしまうことを確認した。これは、燃料噴射機構(デリバリパイプ及び燃料噴射弁)に存在する液相状態の燃料中に気泡状態の蒸気が混入して存在することで、完全液相状態であるものとして補正される燃料噴射量に、蒸気混入分だけの誤差が生じてしまうことによるものと考えられる。その原因として、例えば、デリバリパイプや燃料噴射弁の構成部品がエンジン本体から受ける熱が、その構成部品から液相状態の燃料に伝わり、液相状態の燃料の一部が蒸発することによるものと考えられる。上記した特許文献1乃至3に記載の燃料供給装置では、一義的に推定される燃料の状態、すなわち、液相状態又は気相状態の違い応じて燃料噴射量が補正されるだけで、上記のような蒸気混入分を見込んだ補正が何も行われていない。このため、蒸気混入分だけ燃料噴射量に誤差が生じ、エンジンにおける空燃比にバラツキが生じるおそれがあった。
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、液相状態の燃料における蒸気の混入分を見込んでエンジンに対する燃料供給量を精度よく制御することを可能としたエンジンの燃料供給装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料タンクに液相状態で貯留される燃料を燃料噴射用機器へ圧送し、検出手段により検出される燃料状態に基づき前記燃料噴射用機器からエンジンへ供給される燃料噴射量を補正するようにしたエンジンの燃料供給装置において、燃料噴射用機器にて検出手段により検出される燃料状態に基づき液相状態の燃料における蒸気の混入割合を推定し、その推定される混入割合に応じて燃料噴射用機器からの燃料噴射量を補正するための蒸気補正手段を備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、燃料タンクから燃料噴射用機器へ圧送される液相状態の燃料は、その燃料噴射用機器における燃料状態に応じて燃料噴射量が補正され、その補正後の燃料噴射量だけ燃料噴射用機器からエンジンに燃料が供給される。ここで、燃料噴射用機器がエンジンから受ける熱により、同機器における燃料が蒸発して液相状態の燃料の中に蒸気が混入することがある。この発明の構成によれば、蒸気補正手段が、燃料噴射用機器にて検出される燃料状態に基づき液相状態の燃料における蒸気の混入割合を推定し、その推定される混入割合に応じて、上記燃料噴射量を補正している。従って、液相状態の燃料に混入した蒸気分を加味した量の燃料がエンジンに供給される。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、検出手段は、燃料タンクにおける燃料温度を検出するための第1の燃料温度検出手段と、燃料タンクにおける燃料圧力を検出するための燃料圧力検出手段と、燃料噴射用機器における燃料温度を検出するための第2の燃料温度検出手段とを含み、蒸気補正手段は、検出される燃料タンクにおける燃料温度及び燃料圧力から燃料組成を推定し、その推定される燃料組成と検出される燃料噴射用機器における燃料温度から燃料噴射用機器における燃料液密度及び混入割合を推定し、それら推定される燃料液密度及び混入割合に応じて燃料噴射用機器からの燃料噴射量を補正することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に対し、蒸気補正手段は、燃料タンクにおける燃料温度及び燃料圧力から燃料組成を推定し、その推定される燃料組成と燃料噴射用機器における燃料温度とから燃料噴射用機器における燃料液密度及び混入割合を推定するので、液相状態の燃料における蒸気の混入割合が一層正確に推定される。また、推定される燃料液密度及び蒸気の混入割合に応じて燃料噴射量が補正されるので、より正確な量の燃料がエンジンに供給されることになる。
請求項1に記載の発明によれば、液相状態の燃料における蒸気混入分を見込んで、エンジンに対する燃料供給量を精度よく制御することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に対し、エンジンに対する燃料供給量の制御精度をより一層高めることができる。
以下、本発明におけるエンジンの燃料供給装置を液化燃料ガス(LPG)エンジンに具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1にこの実施形態のLPGエンジンシステムを概略構成図により示す。車両に搭載されたエンジンシステムは、液相状態のLPGを貯留する燃料タンク1を備える。燃料タンク1に内蔵された燃料ポンプ2は、同タンク1に貯留される液相状態のLPGを吐出する。この実施形態で、LPG用エンジン3は、4気筒のレシプロタイプであり、1番気筒#1、2番気筒#2、3番気筒#3及び4番気筒#4を備える。各気筒#1〜#4のそれぞれには、液相状態のLPGを噴射供給するためのインジェクタ4が設けられる。燃料ポンプ2から吐出される液相状態のLPGは、燃料ライン5及びデリバリパイプ6を通じて各インジェクタ4へ供給される。その供給された液相状態のLPGは、各インジェクタ4が動作することにより、吸気通路7に通じる各気筒#1〜#4の吸気ポートへ液相状態で噴射される。吸気通路7には、エアクリーナ8を通じて外部から空気が取り込まれる。吸気通路7に取り込まれた空気と、各インジェクタ4から噴射される液相状態のLPGは、可燃混合気として各気筒#1〜#4の燃焼室に吸入される。デリバリパイプ6で余った液相状態のLPGは、リターンライン9を通じて燃料タンク1へ戻される。この実施形態では、各インジェクタ4及びデリバリパイプ6により、本発明の燃料噴射用機器が構成される。
吸気通路7には、スロットルバルブ10が設けられる。このスロットルバルブ10は、運転席に設けられたアクセルペダル11の操作に連動して開閉される。この開閉により、吸気通路7から各気筒#1〜#4に吸入される空気量(吸気量)が調節される。
各気筒#1〜#4の燃焼室にそれぞれ設けられた点火プラグ12は、各気筒#1〜#4に配置されたイグナイタ内蔵のイグニションコイル14を介して出力される点火信号を受けて点火動作する。各点火プラグ12及び各イグニションコイル14は、各気筒#1〜#4の燃焼室に吸入される可燃混合気に点火する点火装置を構成する。各気筒#1〜#4において、吸気行程で燃焼室に吸入される可燃混合気は、圧縮行程で圧縮され、膨張行程で点火プラグ12がスパーク動作することにより爆発・燃焼して膨張する。燃焼後の排気ガスは、その後の排気行程で燃焼室から排気通路15を通じて外部へ排出される。そして、各気筒#1〜#4の燃焼室における可燃混合気の燃焼に伴い、ピストン(図示略)が動作してクランクシャフト16が回転することにより、エンジン3で車両を走行させる駆動力が得られる。エンジン3に設けられるスタータ17は、エンジン3の始動に際して、クランキングを行うために使用される。
燃料タンク1からデリバリパイプ6までの間の燃料ライン5には、第1遮断弁18、燃料フィルタ19及び第2遮断弁20が直列に設けられる。燃料フィルタ19は、液相状態のLPGの中に混じる異物を除去するために使用される。第1及び第2の遮断弁18,20は、エンジン3の燃料カット時や緊急時に燃料タンク1からデリバリパイプ6へのLPGの圧送を強制的に遮断するために閉じられる。
デリバリパイプ6から燃料タンク1までのリターンライン9には、第1レギュレータ21及び第2レギュレータ22が直列に設けられる。また、第2レギュレータ22を迂回するバイパス通路23には、第3遮断弁24が設けられる。第3遮断弁24は、通常は開いている。この常開状態で、デリバリパイプ6からリターンライン9を通じて燃料タンク1へ戻されるLPGは、第1レギュレータ21を通った後、第2レギュレータ22を通ることなくバイパス通路23を流れて燃料タンク1へ流れる。これにより、デリバリパイプ6の中のLPGの燃料圧力はレギュレータ一つ分の一定圧力に保たれる。一方、第3遮断弁24が閉じられることにより、デリバリパイプ6からリターンライン9を通じて燃料タンク1へ戻されるLPGは、第1レギュレータ21及び第2レギュレータ22を通って燃料タンク1へ流れる。これにより、デリバリパイプ6の中のLPGの燃料圧力がレギュレータ二つ分の一定圧力に保たれる。つまり、第3遮断弁24が閉じられることにより、デリバリパイプ6の中のLPGの燃料圧力が、通常状態よりも上昇することになる。リターンライン9の末端は、燃料タンク1の中に配置され、LPGの逆流を防止するために逆止弁25が設けられる。
上記した各インジェクタ4及びイグナイタ内蔵の各イグニションコイル14は、それぞれ電子制御装置(ECU)40に接続される。また、エンジン3などに設けられる各種センサ等41〜47は、エンジン3の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当し、それぞれECU40に接続される。すなわち、スロットルバルブ10に設けられるスロットルセンサ41は、スロットルバルブ10の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路7に設けられたエアフローメータ42は、吸気通路7を流れる空気流量Qaを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン3に設けられた水温センサ43は、エンジン3の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン3に設けられた回転速度センサ44は、クランクシャフト16の回転速度(エンジン回転速度)NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。排気通路15に設けられた酸素センサ45は、排気通路15へ排出される排気ガス中の酸素濃度(出力電圧)Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。運転席に設けられたイグニションスイッチ(IG・SW)46は、エンジン3の始動に際してオン操作され、バッテリ31からECU40へ電力を供給する。スタータ17に設けられたスタータスイッチ47は、スタータ17の起動に伴い、すなわちクランキング中にスタータ信号を出力する。
この実施形態で、ECU40は、前述した各種センサ等41〜47から出力される各種信号を入力する。ECU40は、これらの入力信号に基づき、LPG噴射制御及び点火時期制御等を実行するために、各インジェクタ4に噴射信号を出力するとともに、各イグニションコイル14のイグナイタに点火信号を出力する。
ここで、LPG噴射制御とは、各気筒#1〜#4に設けられるインジェクタ4によるLPG噴射量及びその噴射時期をエンジン3の運転状態に基づいて制御することである。従って、ECU40では、エンジン3の運転状態に応じたLPG噴射量が算出される。点火時期制御とは、エンジン3の運転状態に応じて各気筒#1〜#4におけるイグニションコイル14のイグナイタを制御することにより、各気筒#1〜#4の点火プラグ12による点火時期を制御することである。
ここで、LPGは、ガソリンに比べて温度や圧力に対する性状変化が大きいことから、各インジェクタ4から噴射される液相状態のLPGの燃料量を正確に算出するために、LPGの温度状態及び圧力状態に応じて噴射量を補正する必要がある。そこで、この実施形態では、液相状態のLPGの温度状態及び圧力状態を検出するために、燃料タンク1に、タンク用燃料温度センサ48及びタンク用燃料圧力センサ49が設けられる。タンク用燃料温度センサ48は、燃料タンク1に貯留される液相状態のLPGの温度(タンク内燃料温度)Ttを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。タンク用燃料温度センサ48は、本発明の第1の燃料温度検出手段に相当する。タンク用燃料圧力センサ49は、燃料タンク1に貯留される液相状態のLPGの圧力(タンク内燃料圧力)Ptを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。タンク用燃料圧力センサ49は、本発明の燃料圧力検出手段に相当する。また、デリバリパイプ6に、デリバリ用燃料温度センサ50及びデリバリ用燃料圧力センサ51が設けられる。デリバリ用燃料温度センサ50は、デリバリパイプ6における液相状態のLPGの温度(デリバリ内燃料温度)Tdを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。デリバリ用燃料圧力センサ51は、デリバリパイプ6における液相状態のLPGの圧力(デリバリ内燃料圧力)Pdを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。デリバリ用燃料温度センサ50は、本発明の第2の燃料温度検出手段に相当する。これらのセンサ48〜51は、ECU40にそれぞれ接続される。また、ECU40には、上記した燃料ポンプ2、第1乃至第3の遮断弁18,20,24がそれぞれ接続される。ECU40は、LPG噴射制御に際して、これらのセンサ48〜51から出力される各種信号に基づき、LPGの組成及び性状等に応じて燃料噴射量を補正する処理を実行する。特に、この実施形態で、ECU40は、燃料タンク1及びデリバリパイプ6に設けられた各センサ48〜51により検出される燃料状態に基づき液相状態のLPGにおける蒸気(ベーパ)の混入割合を推定し、その推定される混入割合に応じて燃料噴射用機器、すなわちデリバリパイプ6及び各インジェクタ4から噴射供給される燃料量を補正するようになっている。この補正を行うECU40は、本発明の蒸気補正手段に相当する。
ECU40は、それぞれ中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、バックアップRAM、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。ECU40は、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMと、外部入力回路及び外部出力回路等とをバスにより接続してなる論理演算回路を構成する。各ROMは、各種制御に関する所定の制御プログラムを予め記憶したものである。各RAMは、各CPUの演算結果を一時記憶するものである。各バックアップRAMは、予め記憶したデータを保存するものである。各CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等41〜51からの信号に基づき、所定の制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。
ここで、ECU40が実行するLPG燃料噴射制御について詳しく説明する。図2に、そのLPG燃料噴射制御の内容をフローチャートに示す。
先ず、ECU40は、ステップ100で、IG・SW46がオンになるのを待って、ステップ110で、スタータスイッチ47からのスタータ信号の有無に基づき、クランキング開始であるか否かを判断する。そして、クランキング開始でない場合、ECU40は、処理をステップ100へ戻す。クランキング開始である場合、ECU40は、処理をステップ120へ移行する。
ステップ120で、ECU40は、各センサ48,49で検出されるタンク内燃料圧力Pt及びタンク内燃料温度Ttより燃料組成Fcを推定する。ECU40は、予め実験的に得られた燃料組成マップ(図示略)を参照することにより、タンク内燃料圧力Pt及びタンク内燃料温度Ttの値に応じた燃料組成Fcを推定する。
次に、ステップ130で、ECU40は、デリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Td及び上記推定される燃料組成Fcより、デリバリパイプ6内における液相状態のLPGに係り、燃料液密度補正係数σdを算出する。この燃料液密度補正係数σdは、デリバリパイプ6における液相状態のLPGの燃料液密度を推定した値を反映している。
次に、ステップ140で、ECU40は、デリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Td及び上記推定される燃料組成Fcより、デリバリパイプ6内におけるベーパ補正係数Kvを算出する。この実施形態で、ECU40は、図3に示す補正マップを参照することにより、デリバリ内燃料温度Td及び燃料組成Fcの値に応じたベーパ補正係数Kvを算出する。図3の補正マップにおいて、多数の曲線は、燃料組成Fcの違いを表し、各曲線のうち上側に位置する曲線ほどプロパン率が大きくなる。また、各曲線で示す燃料組成Fcとも、デリバリ内燃料温度Tdが低くなるほどベーパ補正係数Kvは小さくなり、ベーパが発生し難くなることが分かる。従って、この補正マップから得られるベーパ補正係数Kvは、デリバリパイプ6における液相状態のLPGに係り、ベーパ混入割合の推定をほどよく反映している。
次に、ステップ150で、ECU40は、水温センサ43で検出される冷却水温THWより、冷却水温THWを反映した始動時基本噴射量Tsを算出する。ECU40は、予め実験的に得られた始動時基本噴射量マップ(図示略)を参照することにより、冷却水温THWの値に応じた始動時基本噴射量Tsを算出する。例えば、冷間始動時には、暖機の必要性から、多めの始動時基本噴射量が算出される。また、暖機後再始動時には、冷間始動時よりも少なめの始動時基本噴射量が算出される。
次に、ステップ160で、ECU40は、上記算出される始動時基本噴射量Ts、燃料液密度補正係数σd及びベーパ補正係数Kvを互いに乗算することにより始動時噴射量TAUsを算出する。すなわち、冷却水温THWに応じて求められた始動時基本噴射量Tsを、液密度補正係数σd及びベーパ補正係数Kvにより補正することにより、始動時噴射量TAUsを得るのである。
そして、ステップ170で、ECU40は、上記算出される始動時噴射量TAUsに基づき各インジェクタ4を制御することにより、エンジン3を始動させるために、各インジェクタ4からエンジン3の各気筒#1〜#4へ所要の燃料量を噴射供給する。
その後、ステップ180で、ECU40は、回転速度センサ44で検出されるエンジン回転速度NEが所定の基準回転速度NE1を超えたか否かを判断する。そして、この判断が否定の場合は、エンジン3の始動が完了していないものとして、ECU40は、処理をステップ110へ戻す。この判断結果が肯定の場合は、エンジン3の始動が完了したものとして、ECU40は、処理をステップ190へ移行する。
そして、ステップ190で、ECU40は、再び各センサ48,49で検出されるタンク内燃料圧力Pt及びタンク内燃料温度Ttより燃料組成Fcを推定する。
次に、ステップ200で、ECU40は、デリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Td及び上記推定される燃料組成Fcより、デリバリパイプ6内における液相状態のLPGに係り、燃料液密度補正係数σdを算出する。この燃料液密度補正係数σdも、デリバリパイプ6における液相状態のLPGの燃料液密度を推定した値を反映している。
次に、ステップ210で、ECU40は、デリバリ用燃料温度センサ50で検出されるデリバリ内燃料温度Td及び上記推定される燃料組成Fcより、デリバリパイプ6内におけるベーパ補正係数Kvを算出する。このベーパ補正係数Kvも、デリバリパイプ6における液相状態のLPGのベーパ混入割合を推定した値を反映している。
次に、ステップ220で、ECU40は、エアフローメータ42で検出される吸気量Qaより、その吸気量Qaに応じた始動後基本噴射量Tasを算出する。ECU40は、予め実験的に得られた始動後基本噴射量マップ(図示略)を参照することにより、吸気量Qaの値に応じた始動後基本噴射量Tasを算出する。例えば、吸気量Qaが多いときには、吸気量Qaが少ないときに比べて多めの始動後基本噴射量Tasが算出される。
次に、ステップ230で、ECU40は、上記算出される始動後基本噴射量Tas、燃料液密度補正係数σd及びベーパ補正係数Kvを互いに乗算することにより始動後噴射量TAUasを算出する。すなわち、吸気量Qaに応じて求められた始動後基本噴射量Tasを、液密度補正係数σd及びベーパ補正係数Kvにより補正することにより、始動後噴射量TAUsaを得るのである。
そして、ステップ240で、ECU40は、上記算出される始動後噴射量TAUasに基づき各インジェクタ4を制御することにより、始動後のエンジン3を運転するために、各インジェクタ4からエンジン3の各気筒#1〜#4へ所要の燃料量を噴射供給する。
その後、ECU40は、処理をステップ210へ戻して、ステップ190〜240の処理を繰り返す。
以上説明したこの実施形態におけるエンジンの燃料供給装置によれば、燃料タンク1からデリバリパイプ6及び各インジェクタ4へ圧送される液相状態のLPGは、そのデリバリパイプ6における燃料状態に応じて始動時基本噴射量Ts及び始動後基本噴射量Tasが補正され、その補正後の始動時噴射量TAUs及び始動後噴射量TAUasだけ各インジェクタ4からエンジン3に燃料が噴射供給される。
ここで、エンジン1の運転中には、デリバリパイプ6がエンジン3から受ける熱により、同パイプ6におけるLPGの一部が蒸発して液相状態のLPGの中にベーパが混入することがある。この実施形態の燃料供給装置によれば、ECU40が、デリバリパイプ6にて検出される燃料状態に基づき、液相状態のLPGにおけるベーパ混入割合を推定し、その推定されるベーパ混入割合に応じて、上記した始動時基本噴射量Ts及び始動後基本噴射量Tasを補正している。従って、液相状態のLPGに混入したベーパ分を加味した量(始動時燃料噴射量TAUs及び始動後燃料噴射量TAUas)の燃料がエンジン3に供給されることになる。このため、液相状態のLPGにおけるベーパ混入分を見込んで、エンジン3に対する燃料供給量を精度よく制御することができる。これにより、エンジン3における空燃比のバラツキを抑えることができる。これに対し、従来例の燃料供給装置では、上記のようなベーパ混入分を見込んだ補正は全く行われておらず、完全液相状態を前提に燃料噴射量の補正が行われていたので、ベーパ混入分だけ燃料噴射量に誤差が生じるのは避けられず、エンジン3における空燃比にバラツキが生じるのは避けられなかった。この実施形態の燃料供給装置では、その点を改善することができるのである。
特にこの実施形態で、ECU40は、タンク内燃料温度Tt及びタンク内燃料圧力Ptから燃料組成Fcを推定し、その推定される燃料組成Fcとデリバリ内燃料温度Tdとにより算出される燃料液密度補正係数σd及びベーパ補正係数Kvから、デリバリパイプ6における燃料液密度及びベーパ混入割合を推定しているので、液相状態のLPGにおけるベーパ混入割合が一層正確に推定されることになる。また、それら推定される燃料液密度及びベーパ混入割合に応じて始動時基本噴射量Ts及び始動後基本噴射量Tasが補正されるので、より正確な量の燃料がエンジン3に供給されることになる。この意味で、エンジン3に対する燃料供給量の制御精度を一層高めることができ、エンジン3における空燃比のバラツキを抑えることができる。
尚、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することができる。
(1)前記実施形態では、本発明を4気筒のエンジン3に具体化したが、4気筒以外の気筒数のエンジンにも具体化することができる。
(2)前記実施形態では、燃料としてLPGを用いたが、燃料としてLNGを用いることもできる。
1 燃料タンク
3 LPG用エンジン
4 インジェクタ(燃料噴射用機器)
6 デリバリパイプ(燃料噴射用機器)
40 ECU(蒸気補正手段)
48 タンク用燃料温度センサ(検出手段、第1の燃料温度検出手段)
49 タンク用燃料圧力センサ(検出手段、燃料圧力検出手段)
50 デリバリ用燃料温度センサ(検出手段、第2の燃料温度検出手段)
Tt タンク内燃料温度
Pt タンク内燃料圧力
Td デリバリ内燃料温度
Fc 燃料組成
Ts 始動時基本噴射量
TAUs 始動時噴射量
Tas 始動後基本噴射量
TAUas 始動後噴射量
3 LPG用エンジン
4 インジェクタ(燃料噴射用機器)
6 デリバリパイプ(燃料噴射用機器)
40 ECU(蒸気補正手段)
48 タンク用燃料温度センサ(検出手段、第1の燃料温度検出手段)
49 タンク用燃料圧力センサ(検出手段、燃料圧力検出手段)
50 デリバリ用燃料温度センサ(検出手段、第2の燃料温度検出手段)
Tt タンク内燃料温度
Pt タンク内燃料圧力
Td デリバリ内燃料温度
Fc 燃料組成
Ts 始動時基本噴射量
TAUs 始動時噴射量
Tas 始動後基本噴射量
TAUas 始動後噴射量
Claims (2)
- 燃料タンクに液相状態で貯留される燃料を燃料噴射用機器へ圧送し、検出手段により検出される燃料状態に基づき前記燃料噴射用機器からエンジンへ供給される燃料噴射量を補正するようにしたエンジンの燃料供給装置において、
前記燃料噴射用機器にて前記検出手段により検出される燃料状態に基づき液相状態の燃料における蒸気の混入割合を推定し、その推定される混入割合に応じて前記燃料噴射用機器からの燃料噴射量を補正するための蒸気補正手段を備えたことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。 - 前記検出手段は、前記燃料タンクにおける燃料温度を検出するための第1の燃料温度検出手段と、前記燃料タンクにおける燃料圧力を検出するための燃料圧力検出手段と、前記燃料噴射用機器における燃料温度を検出するための第2の燃料温度検出手段とを含み、
前記蒸気補正手段は、前記検出される燃料タンクにおける燃料温度及び燃料圧力から燃料組成を推定し、その推定される燃料組成と前記検出される燃料噴射用機器における燃料温度から前記燃料噴射用機器における燃料液密度及び前記混入割合を推定し、それら推定される燃料液密度及び前記混入割合に応じて前記燃料噴射用機器からの燃料噴射量を補正することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
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