JP2005325120A - バクチオール含有薬剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 女性の骨粗鬆症の予防または治療用の薬剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、骨粗鬆症の女性を予防または処置する際のバクチオールまたはバクチオールを含む抽出物の新規な使用を開示するものである。このような新規な使用の一実施態様としては、局所適用される、経口投与される、注射されるまたは徐放性の投与形態である、バクチオールまたはバクチオールを含む抽出物を含む薬剤組成物がある。
【選択図】 なし

Description

本発明は、女性の閉経後の骨粗鬆症の予防または治療を目的として有効成分としてバクチオールを含む薬剤組成物に関するものである。また、本発明は、骨粗鬆症の女性患者を予防または治療できるバクチオールを含む抽出物に関するものである。
ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)は、オランダビユ(Psoralea corylifolia)の完熟果実であり、従来、漢方薬では強壮剤として使用されている。ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)は、薬理効果を有する化学成分を多く含むことが文献などで報告されている。脂質に加えて、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)中に含まれる主な化学成分としては、ソラレン、イソソラレン及びバクチオールがある。これらの成分のうち、フェノールテルペン構造を有するバクチオールは、従来非常に注目を浴びていた。多くの文献から、バクチオールに以下のような薬理活性があることが分かっている:変異抑制効果(antimutation)、肝保護作用(hepatoprotection)、抗酸化作用、弱エストロゲン様効果、細胞毒性効果、DNAポリメラーゼ阻害作用、抗炎症作用、及び血糖上昇抑制効果。このため、従来、バクチオールは様々な分野で使用されている。
例えば、特許文献1には、バクチオールには、チロシナーゼ阻害効果があり、皮膚の美白効果を有する化粧品に使用できることが記載されている。また、特許文献2,3には、バクチオールには細菌発育阻止効果があり、口腔を殺菌するための薬剤、レジオネラ抑制剤、及び抗MRSA抑制剤として使用できることが記載されている。特許文献4には、バクチオールには細胞毒性があり、鶏眼治療剤として使用できることが開示されている。さらに、特許文献5には、ソラレアエ フルクタス中の脂質が骨の石灰化により骨強度を増強するのに有効であることが記載されている。
一方、近年の報告から、閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を治療する際にエストロゲンを使用すると、女性患者が乳癌になる可能性が増加することが示されている。このため、女性患者が乳癌になる危険性を増すことなく、閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を治療できる薬剤の開発に対する必要性が強く存在する。いうまでもなく、乳癌、さらには閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を治療できる薬剤もまた有益である。
特開平11−71231号公報 特開2000−327581号公報 特開2001−233707号公報 特開平3−20218号公報 特開平7−109225号公報
本発明の目的は、骨粗鬆症、特に閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症の予防または治療を目的とするバクチオールまたはバクチオールを含む抽出物の新規な使用を提供することである。このような新規な使用の一実施態様としては、骨粗鬆症の予防または治療を目的とする薬剤組成物がある。本発明による薬剤組成物は、骨粗鬆症の予防または治療にバクチオールまたはバクチオールを含む抽出物を使用するものであり、この際、薬剤組成物は、局所的に使用されても、経口投与されても、注射により投与されてもあるいは徐放性であっても、いずれの投与形態であってもよい。
本発明の他の目的は、乳癌の予防または治療におけるバクチオールまたはバクチオールを含む抽出物の使用を提供することである。このような使用の一実施態様としては、乳癌の予防または治療を目的とする薬剤組成物がある。本発明による薬剤組成物は、上記を目的としてバクチオールまたはバクチオールを含む抽出物を使用するものであり、この際、薬剤組成物は、局所的に使用されても、経口投与されても、注射により投与されてもまたは徐放性であっても、いずれの投与形態であってもよい。
本発明者らは、上記目的と達成するために鋭意検討を行なった結果、メスラットの卵巣を除去して、エストロゲン欠乏により引き起こされる骨粗鬆症を刺激した。その結果、バクチオールは、少ない投与量(5mg/kg)で、骨の再吸収を阻害することによる骨粗鬆症の治療効果があることを知得した。この知見は、ソラレアエ フルクタス中の脂質のみが骨の石灰化を促進し、骨重量の増加は示さないという、従来の特許文献7(特開平7−109225号公報)やPlanta med. 62, 150-153 (1996)に記載される知見とは、異なるものである。骨粗鬆症の最良の治療法は、薬剤が骨の形成を促進できるおよび/または骨の再吸収を阻害できることにある。バクチオールの機能は、骨の再吸収の予防及び治療にかかわりのあるエストロゲンの機能と似ており、この機能は、明らかに、脂質の骨石灰化機能より優れていると考察される。
さらに、本発明者らは、以下のような動物試験を行なった。即ち、in vitroでの細胞培養試験から、バクチオールは、低濃度でも、乳癌細胞の成長を阻害する効果を有することを知得した。また、上記試験において、下記で詳述するが、バクチオールのヒト乳癌細胞成長の阻害効果(細胞毒性効果)は、Korean scholarによる5種の異なるヒト癌細胞でのバクチオールの効果(細胞毒性効果)(IC50が、10〜15μg/cc)が相違する(Arch. Pharm. Res. 15, 356-359 (1992))ものであった。これから、Korean scholarによる知見では、これらの5種の癌細胞の平均阻害濃度は10〜15μg/ccと狭い範囲内にあることから、バクチオールの細胞毒性はこれらの5種の癌細胞に対しては選択的でないが、ヒト乳癌細胞ではその成長を選択的に阻害し、これによりバクチオールは乳癌の治療または予防剤としての使用に適することを知得した。なお、上記Korean scholarによる研究には、ヒト乳癌細胞は含まれていない。
他の視点では、閉経後の骨粗鬆症の治療にエストロゲンを使用することにより、乳癌の危険性が増加する。バクチオールは、骨粗鬆症を予防または治療する効果、さらには乳癌細胞への毒性効果を有する。ゆえに、バクチオールは、女性の乳癌/骨粗鬆症を予防または治療する薬剤として使用できる可能性がある。
従来の技術では、オランダビユ(Psoralea corylifolia)の抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって脂質及びバクチオールに分離できることが記載されている。これらの化学特性が異なるため、これらは薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いることによって容易に分離でき、さらに、脂質はUVランプ下では見えないがヨウ素蒸気によって検出でき、バクチオールはUVランプによって容易に検出できる。したがって、下記実施例1に詳述されるように、脂質および/またはバクチオールを分離・精製するのに、一種の溶出剤を使用するだけでよい。
すなわち、上記諸目的は、女性の骨粗鬆症を予防または治療するのに有効な量の、下記式(I):
Figure 2005325120
のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩、及び製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、女性の骨粗鬆症を予防または治療することを目的とする薬剤組成物によって達成される。
また、本発明の好ましい形態としては、下記があるが、本発明は以下に制限されるものではない。
(1)女性患者の骨粗鬆症、特に閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症の予防または治療、特に治療を目的とする薬剤の製造における、下記式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩の、活性成分としての使用。
Figure 2005325120
(2)上記薬剤としての式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩が、局所適用される、注射により投与される、経口投与される、または徐放性の投与形態である、上記(1)に記載の使用。
(3)該薬剤が経口投与される、上記(2)に記載の使用。
(4)女性の骨粗鬆症、特に閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を治療または予防する、特に治療するのに有効な量の、上記式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩(活性成分として)、及び製薬上許容できる担体または希釈剤を含み、バクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩の含量は薬剤組成物に対して5〜95重量%であり、かつソラレン及びイソソラレンを実質的に含まない、女性患者の骨粗鬆症、特に閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を治療または予防する、特に治療することを目的とする薬剤組成物。
(5)1回の投与当たり、1〜300mgのバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩を含む、上記(4)に記載の薬剤組成物。
(6)該薬剤組成物は、局所適用される、注射により投与される、経口投与される、または徐放性の投与形態である、上記(4)または(5)に記載の薬剤組成物。
(7)該式(I)のバクチオールは、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)から調製される、上記(4)〜(6)のいずれかに記載の薬剤組成物。
(8)該式(I)のバクチオールは、
(i)ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)を有機溶剤で抽出し;
(ii)上記(i)の抽出段階で得られた溶液を濃縮し;さらに
(iii)上記(ii)の段階で得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーで分離して、バクチオールは含むがソラレン及びイソソラレンを実質的に含まない抽出物を得る
段階によって得られる、上記(7)に記載の薬剤組成物。
(9)該薬剤組成物は、経口投与形態である、上記(9)に記載の薬剤組成物。
バクチオールは骨容積及び見かけの骨密度を増加させるため、本発明の薬剤組成物は、女性の骨粗鬆症の予防または治療に有用である。また、バクチオールはヒト乳癌細胞系の成長を選択的にかつ強力に阻害するため、本発明の薬剤組成物は、女性の乳癌の予防または治療にも有用であることが期待される。
本発明は、女性の骨粗鬆症を予防または治療するのに有効な量の、下記式(I):
Figure 2005325120
のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩、及び製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、女性の骨粗鬆症、特に閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を予防または治療する、特に治療することを目的とする薬剤組成物に関するものである。なお、本発明では、バクチオールは、バクチオールそのものであってもよいが、以下で述べるような、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)の抽出による、バクチオールを含む抽出物の形態であってもよい。
本発明において、式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩の含量は、骨容積及び見かけの骨密度を増加するような量であれば特に制限されないが、組成物に対して、5〜95重量%であることが好ましい。また、式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩は、1回の投与当たり、1〜300mgの量が投与されるよう、薬剤組成物中に含まれることが好ましい。
また、本発明では、バクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩に骨容積及び見かけの骨密度の増加効果があるため、本発明の薬剤組成物は、式(I)のバクチオールを純粋な形態で含むことが好ましく、例えば、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)の抽出による、バクチオールを含む抽出物の形態であるいはこの抽出物から精製された形態で使用する場合などでは、他の成分、特にソラレン及びイソソラレンを実質的に含まないことが好ましい。
本発明の薬剤組成物の投与経路は、経口または腸管外いずれの投与経路であってもよいが、好ましくは局所適用、経口投与、注射、または徐放性の投与形態である。
本発明によるバクチオールは、いずれの源より、公知の方法によって調製できるが、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)から調製されることが好ましく、特に、(i)ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)を有機溶剤で抽出し;(ii)上記(i)の抽出段階で得られた溶液を濃縮し;さらに(iii)上記(ii)の段階で得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーで分離して、バクチオールは含むがソラレン及びイソソラレンを実質的に含まない抽出物を得ることによって調製されることが好ましい。上記方法で使用されるバクチオールを含む薬剤組成物は経口投与形態であることが特に好ましい。
本発明の特に好ましい一実施態様によるバクチオールを含む抽出物の調製方法としては、下記段階(a)及び(b)を有する方法がある。
(a)n−ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、およびこれらの混合液からなる群より選ばれる、有機溶剤を用いて、粉砕によって粉末形態であるソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)を抽出する段階;
(b)上記(a)の抽出段階で得られる溶液を濃縮し、溶出剤としてn−ヘキサン及び酢酸エチルの混合溶液(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでこの濃縮液を分離して、(1)脂質を含む溶出液、及び(2)バクチオールを含む溶出液を順次得る、または(1)脂質及び(2)バクチオールを含む溶出液を集める段階。
上記段階(b)において、濃縮後は、溶出液は、バクチオールを含む抽出物、または(1)脂質及び(2)バクチオールを含む抽出物になる。
上記段階(b)で得られる溶出液は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって同定できる。この際、TLCの移動相としては、n−ヘキサン及び酢酸エチルの混合溶液(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1)を用い、溶出液を発色して、UVランプまたはヨウ素蒸気を用いて、脂質及びバクチオールが同定できる。脂質を含む溶出液に関するクロマトグラフィー値(R)は、0.29超(R>0.29)であり、バクチオールを含む溶出液に関するクロマトグラフィー値(R)は、0.29(R=0.29)である。
本発明をより理解するために、下記実施例を参照しながら本発明を説明するが、下記実施例は詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
300gのソラレアエ フルクタス粉末を、2.4リットルのアセトンで抽出し、この混合物を固相及び液相に分けた。上記抽出及び固体/液体の分離を、3回繰り返した。濾液を合わせて、溶剤を留去することにより、72.11gの油状抽出物を得た。22gの油状抽出物を、300gのシリカゲル(Merck Co., Silica gel 60, mesh 70-230)を充填したシリカゲルカラム(9.6×25cm)で分離した。n−ヘキサン/酢酸エチル(9:1)の混合液、アセトン、及びメタノールを、順次溶出液として用いて、カラムを溶出した。最初に、25本のn−ヘキサン/酢酸エチル(9:1)による溶出液の入った瓶をカラムから集めた。次に、アセトンによる溶出液の入った瓶10本(26〜35番目)をカラムから集めた後、メタノールによる溶出液の入った瓶10本(36〜45番目)をカラムから集めた。この際、300mlの溶出液ごとに(即ち、1本の瓶当たり、300ml)となるように、溶出液をそれぞれ集めた。この溶出液をシリカゲルの薄層クロマトグラフィー(TLC)で、UVランプまたはヨウ素蒸気を用いてn−ヘキサン/酢酸エチル(9:1)の混合液によって発色させて、同定した。TLCで分析して同様の成分であるとされた成分を含む溶出液の入っている瓶を合わせた。
1〜7番目の瓶に入った溶出液は、TLCプレートではUV吸収を示すスポットはないことから、この溶出液は脂質を含んでいたことが分かる。1〜7番目の瓶に入った溶出液を合わせて、濃縮して、6.116gの油状物質を得た。次に、8〜20番目の瓶に入った溶出液は、TLCプレートでUV吸収を示すスポットを1つだけ示した(R=0.29)。8〜20番目の瓶に入った溶出液を合わせて、濃縮して、4.543gの油状のバクチオールを得た。21〜45番目の瓶に入った溶出液は、バクチオールを含まず、これらを合わせて、濃縮して、11.04gの物質を得た。上記データから、以下のことが示される:1kgのオランダビユ(Psoralea corylifolia)当たり、トータル240.36gの抽出物が得られた、即ち、抽出効率は24.04%であった。この240.36gの抽出物には、66.82gの脂質(ソラレアエ フルクタスに対して、6.68重量%)、49.64gのバクチオール(ソラレアエ フルクタスに対して、4.96重量%)、及び123.9gの他のソラレアエ フルクタス成分(ソラレアエ フルクタスに対して、12.4%の抽出効率)が含まれていた。
バクチオールの構造は下記データのように同定された:
Figure 2005325120
Figure 2005325120
実施例2:バクチオールのin vitroでの細胞毒性試験
材料:DMEM(培地)、RPMI(培地)、L−グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン及びFBS(ウシ胎児血清)は、Gibco (NY, USA)から得た。培養用プラスチック製品は、Corning (MA, USA)から得た。タモキシフェンは、Sigma-Aldrich (MO, USA)から得、CCK−8(細胞計測キット、新しい水溶性テトラゾリウム塩)は、Dojindo Molecular Technologies (MD, USA)を得た。使用される他の全ての化学薬品は、試薬グレードであり、SigmaまたはE. Merck (Germany)から購入した。
細胞系及び細胞培養物:ヒト乳癌細胞系T47D及びMDA−MB231は、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。これらの2種の癌細胞のうち、T47Dはエストロゲンレセプター陽性であり、また、MDA−MB231はエストロゲンレセプター陰性である。細胞は、T47D細胞では、10%チャーコール−デキストラン処理済みウシ胎児血清(charcoal-dextran stripped fetal bovine serum)を含むRPMI培地で、およびMDA−MB231細胞では、10%チャーコール−デキストラン処理済みウシ胎児血清を含むDMEM培地で、5%COで37℃で培養した。細胞の増殖を、トリパンブルー排除(trypan blue exclusion)で生存細胞を計測することによって測定した。
細胞毒性アッセイ:96ウェルプレートに、細胞懸濁液198μl(1ウェル当たり、T47Dでは、20,000細胞、およびMDA−MB231では10,000細胞)を分注し、湿潤化した5%COで37℃でインキュベーター中で24時間予めプレートをインキュベートした。次に、様々な濃度のタモキシフェン、実施例1で得られたバクチオール及びDMSO(コントロール群)2μlを、プレートの培養液中に添加し、各濃度で6回ずつ上記操作を繰り返した。プレートをインキュベーターで48時間インキュベートした後、培養液を吸引により除去し、新鮮な培地(100μl)を添加して、さらに1時間インキュベートした。プレートの各ウェルに、5μlのCCK−8溶液を添加し、このプレートをインキュベーターで4時間インキュベートした。ELISAリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。様々な濃度での試験材料の細胞毒性を、コントロール群(試験材料を用いないもの、正味の成長率=100%)に対する、細胞の正味の成長率(%)として評価した。試験材料の用量−応答曲線を作成し、細胞の成長の50%を阻害する試験材料の濃度として、IC50値を算出した。バクチオールの細胞毒性の結果を下記表1に示す。
Figure 2005325120
表1に示されるように、ヒト乳癌細胞系T47D及びMDA−MB231に対するバクチオールのIC50濃度は、それぞれ、5.00及び0.62μg/ccである。ヒト乳癌細胞(T47D/MDA−MB231)に対するバクチオールのIC50濃度が上記したような値であるのに対して、5種の異なるヒト癌細胞、肺(A549)、卵巣(SK−OV−3)、皮膚(SK−MEL−2)、中枢神経系(XF498)、及び大腸(HCT)では、平均阻害濃度(IC50)が10〜15μg/ccのバクチオール(Arch. Pharm. Res. 15, 356-359 (1992))であることから、バクチオールは、ヒト乳癌細胞系の成長を選択的にかつ強力に阻害することが示される。さらに、バクチオールは、ヒト乳癌に対して臨床で使用されている薬剤である、タモキシフェンに比べて、ヒト乳癌に細胞系の成長をより有効に阻害していることもまた、表1から分かる。
実施例3
本実施例は、骨粗鬆症を治療する際のバクチオールの有効性を示すことを目的とする。この際、メスラットの卵巣は、エストロゲン欠乏によって生じる骨粗鬆症を刺激するために取り除いた。
動物実験
16週齢のメスのWistar系ラット(他の実験でも、特記しない限り、同様の動物を使用した)は、台湾タイペイ所在の動物の飼育センターである、National Scientific Councilから得た。ラットからの生理学的応答の変動を各群毎に平等に分類できるように、これらのラットを体重が同じになるようにグループ分けした。これらのラットを以下のような群に分けた。
薬剤を加えない飼料を与えた標準群(n=8);
薬剤を加えない飼料を与えた擬似手術群(Sham)(n=10);
薬剤を加えない飼料を与えた卵巣摘出術群(OVX)(n=8):
実施例1で得られたバクチオール(5mg/kg)を加えた飼料を与えた卵巣摘出術群(OVX+A)(n=9);
実施例1で得られたバクチオール(15mg/kg)を加えた飼料を与えた卵巣摘出術群(OVX+B)(n=9)。
卵巣摘出術(卵巣の切除の手術):卵巣摘出は、Wronski et al (Wronski et al, Endocrinology, 123(2), 681-86 (1988))に記載されるのと同様のプロトコルを用いて誘導された。
実験中、ラットを、12時間暗室になるようなサイクルで21℃で2群で懸垂型の格子ケージ(hanging grid cage)で飼育した。飼料(ラット−マウス用飼料III(Rat-mouse diet III)、1%のカルシウム含量及び1.2%のリン酸塩含量で十分、Purina, USA)を、実験群とコントロール群とで対に与えることによって投与した。対給餌(pair-feeding)を、Sham群の飼料の平均摂取量を算出することによって行なった。このようにして、次の日に同量の飼料をOVX、OVX+A(5mg/kg)、OVX+B(15mg/kg)群の動物に与えた。標準群は卵巣摘出術または擬似手術のまさにその日に殺す以外は、これらの動物に2ヶ月間給餌した。OVX+A及びOVX+B群のラットには、特定量のバクチオール(化合物A及びB)をそれぞれ加えた以外は一般的なフード・チャック(food chuck)を与えた。水はすべてのラットに自由に与えた。
試験薬剤の投与
5mg/kg及び15mg/kgの投与量になるように、試験薬剤(実施例1で得られたバクチオール)を秤量し、これを一般的なフード・チャック(food chuck)粉末中に加えて、10%デンプンペーストと混ぜた。十分混ぜた後、これらのチャック粉末を手で塊にして、空気循環式のオーブン(air flow oven)で乾燥した。薬剤が添加された飼料を単純盲検法によってラットに与えた。
in vivoでの骨の標識付け(bone labelling)方法及び骨の組織形態学的な評価
本標識付け及び骨の組織形態学的な評価は、骨の研究で標準的な方法(Lin et al, Calcif. Tissue Int., 67, 373-377 (2000))を基に行なった。試料を、ビリャヌエバ骨染料(Villanueva bone stain)で予め染色した後、脱灰し、ロンドンレジン(London resin)中に包埋した。7μm厚の脱灰しなかった切片を、Jung−Kミクロトーム(Jung-K microtome)(Leica Ltd, USA)を用いて切断し、ビリャヌエバ染料で処理して、光学顕微鏡下で観察した。7μm厚の未染色の切片を、蛍光顕微鏡用に調製し、オステオメジャープログラム(program Osteomeasure)(3.0 version, Atlanta, USA)で評価した。Lin et al. (Lin et al, Calcif. Tissue Int., 67, 373-377 (2000))に従って、骨容積(図1)及び浸食面パラメーター(図3)を得た。なお、本実験は、the Animal Center及びIAACU, National Defense Medical Center, National Defense University, Taipei, Taiwanの特別なプロジェクトライセンスの下で行なわれた。
見かけの骨密度の測定
剖検後、脛骨及び大腿骨全体から、付着している筋肉及び靭帯から剥離した。見かけの骨密度の測定は、デンシトメトリーフレーム(densitometry frame)を備えた電子秤でアルキメデスの浮力に関する原理(Archimedes floating principle)に基づいて行なった (Danielsen et al., Calcif. Tissue Int., 52, 26-33 (1993))。空気中で測定された骨の重量を、「W−air」と記載する。また、水中で同様にして秤量した骨の重量を、「W−water」と記載する。見かけの骨密度は、式:(W−air)/[(W−air)−(W−water)](gm/cm)として算出された(図2、脛骨の見かけの骨密度)。
データ分析
これらの結果は平均値及び標準偏差(S.D.)で表わされ、さらにデータを加工するために、SPSS 8.0の統計学的なパッケージ(statistical package of SPSS 8.0)(SPSS Inc, Chicago, USA)に移した。有意差があることが示された後、Bonferonni有意差法(Bonferonni significant difference method)を、一方向ANOVA(one-way ANOVA)での複数比較を試験するpostHocで使用した。
図1及び図2から、OVX群(薬剤を添加していないものを与えた群)に比べて、OVX+A群及びOVX+B群(バクチオール添加したものを与えた群)で測定した骨容積及び見かけの骨密度は、それぞれ、p<0.001及びp<0.05の統計学的な有意差をもって増加することが示される。したがって、バクチオールは、閉経後のエストロゲン欠乏によって生じる骨粗鬆症を治療するのに有効であると考えられる。骨粗鬆症の治療におけるバクチオールの有効性のメカニズムは、浸食面のパラメーターによって確認できる。図3に示されるように、OVX+A群及びOVX+B群(バクチオール添加したものを与えた群)のラットは、OVX群(薬剤を添加していないものを与えた群)のラットに比べて、p<0.001で破骨細胞による骨の浸食を阻害する(骨の再吸収を誘導する)ことが分かる。

本発明を上記したように説明してきたが、本発明の概念を逸脱しない限り、本発明の様々な変更や修飾が可能であり、この際、本発明の概念は特許請求の範囲で規定される。
近位脛骨(骨梁骨が主)の骨容積に関するバクチオールの効果を示す図である。この際、棒は平均値を示し、エラーバー(error bar)は平均値±1.0 S.D.を示す。 脛骨の見かけの骨密度に関するバクチオールの効果を示す図である。この際、棒は平均値を示し、エラーバー(error bar)は平均値±1.0 S.D.を示す。 近位脛骨の浸食面(ES/BS,%)に関するバクチオールの効果を示す図である。この際、棒は平均値を示し、エラーバー(error bar)は平均値±1.0 S.D.を示す。

Claims (8)

  1. 女性の骨粗鬆症を予防または治療するのに有効な量の、下記式(I):
    Figure 2005325120
    のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩、及び製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、女性の骨粗鬆症を予防または治療することを目的とする薬剤組成物。
  2. 該バクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩の含量は、該薬剤組成物に対して、5〜95重量%である、請求項1に記載の薬剤組成物。
  3. 該薬剤組成物はソラレン及びイソソラレンを実質的に含まない、請求項1または2に記載の薬剤組成物。
  4. 1回の投与当たり、1〜300mgの式(I)のバクチオールまたはその製薬上許容できるエステル若しくは塩を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  5. 該薬剤組成物は、局所適用、経口投与、注射、または徐放性の投与形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  6. 該式(I)のバクチオールは、ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)から調製される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
  7. 該式(I)のバクチオールは、
    (i)ソラレアエ フルクタス(Psoraleae fructus)を有機溶剤で抽出し;
    (ii)上記(i)の抽出段階で得られた溶液を濃縮し;さらに
    (iii)上記(ii)の段階で得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィーで分離して、バクチオールは含むがソラレン及びイソソラレンを実質的に含まない抽出物を得る
    段階によって得られる、請求項6に記載の薬剤組成物。
  8. 該薬剤組成物は、経口投与形態である、請求項6に記載の薬剤組成物。
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