JP2005061330A - フリーピストン型スターリングエンジン - Google Patents

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【課題】 高価なフレクシャースプリングを使用せず安価でより高効率・高出力のフリーピストン型スターリングエンジン発電機を得る。
【解決手段】 パワーピストン2およびロッド4等の軸受け面にDLCコーティングによる表面硬化処理を施し、往復動摺動損失を減少させると共に軸受け精度を上げることで、高価なフレクシャースプリングを使用せず、安価なコイルスプリングを使用することが可能となり、更に、ディスプレーサロッド4a端に小型のモータ及び発電機として機能するディスプレーサコントローラ33を設けたことで、エンジンの始動が容易になるばかりでなく、いかなる運転状態においてもパワーピストン2とディスプレーサピストン3の位相を最適に保つ制御が可能となり、且つ安定運転時には前記小型発電機としてメインの発電出力に加えることが可能となり、エンジンの効率及び出力を高く維持することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フリーピストン型スターリングエンジン、特にフリーピストン型スターリングエンジンで一体的に駆動されるリニア型発電機として好適なフリーピストン型スターリングエンジンに関する。
従来フリーピストン型スターリングエンジンは、一般的には図3に示すように、高温空間40と低温空間41の作動ガスを複数個の熱交換器を介して周期的に移動せしめるディスプレーサピストン42、該ディスプレーサピストンに固定されて軸方向に伸びたロッド43、該ロッドと同心軸上に配置され、前記低温空間側の圧力を受けて軸方向に往復動するパワーピストン44、該パワーピストンに一体に結合され軸方向に往復動される可動部45からなり、フリーピストン型スターリングエンジン発電機の場合は、可動部に発電用永久磁石46を有し、固定部の内ヨーク47に発電用コイル48を設けてリニア発電部を構成している。このように構成されたフリーピストン型スターリングエンジン(以下、単にスターリングエンジンという)において、従来ロッド43とパワーピストン44の摺動部の一方、及び該パワーピストン44と内ヨーク47との摺動部の一方に、例えばテフロン(登録商標)等の無潤滑樹脂製軸受50を用いているが、磨耗が大きく半径方向のクリアランスが大きくなりがちで、半径方向の精度が維持できない欠点がある。このため、ディスプレーサピストンおよびパワーピストンのそれぞれのセンタリングを精度高く維持するために、センターリングと軸方向の往復動弾性荷重を与えることの可能な図3に示すようなフレクシャースプリングと言われる複数個の特殊円板状の板バネ51を各ピストンの片側(図3)または両側(図4)に配置しているのが一般的である。
しかも、このような無潤滑樹脂製軸受は、摩擦係数が0.2と大きく摩擦損失が大きくなり、発電効率と出力の低下を招くという欠点がある。また、前記フレクシャースプリングはさまざまな形状のものが提案されている(例えば特許文献1、2参照)が、殆どのものは変位が大きくなると応力が高くなるため、±10mm以下の低変位のものにしか対応できない、及び形状が複雑で必要精度が高いため製造が困難である等の問題点がある。また、複数のフレクシャースプリングの組みつけ精度も要求されるので、製造組み付けコストがかかるという欠点があった。
スターリングエンジンでは、エンジンの効率・出力を高く維持するために、ディスプレーサピストンとパワーピストンの軸方向の動きの位相差をある最適値に維持する必要がある。一般のスターリングエンジンでは、ディスプレーサピストンとパワーピストンが、カムやクランクなどによって機械的に接合されており、常に位相差は一定値に維持される。本件のような、ディスプレーサピストンとパワーピストンが機械的に連結されていないフリーピストンスターリングエンジンでは、両ピストンの位相差を一定に保つことは困難であり、位相差を維持するために、ロッド43とパワーピストン44間に特別なガススプリングを形成することが、一般に行われている。しかし、あるワンポイントの運転条件でのみしか、最適な位相差を維持できず、運転条件が少しでも変わると効率・出力を悪化させる方向に位相差が変化するのはやむを得ないことである。
特開平11-2470号公報 特開平11−2469号公報
本発明は、上記のようなフリーピストン型スターリングエンジンにおいて、パワーピストンとスリーブ間およびパワーピストンとロッド間の摺動に伴う機械損失を軽減し、フレクシャースプリングという複雑で精度の高い高価なスプリングを使用しないで、低コストでディスプレーサピストン及びパワーピストンのセンターリング精度を高く維持でき、かつどのような運転条件下でもディスプレーサピストンとパワーピストンの軸方向動きの位相差を最適に保ち、エンジンの効率及び出力を高く維持することができるフリーピストン型スターリングエンジン及びフリーピストン型スターリングエンジン発電機を提供することを目的とする。
上記課題を本発明のフリーピストン型スターリングエンジンは、高温空間と低温空間の作動ガスを複数個の熱交換器を介して周期的に移動せしめるディスプレーサピストン、該ディスプレーサピストンに固定されて軸方向に伸びたロッド、該ロッドと同心軸上に配置され前記低温空間側の圧力を受けて軸方向に往復動するパワーピストン、該パワーピストンに一体に結合され軸方向に往復動される可動部を有するスターリングエンジンにおいて、少なくとも前記ロッドと前記パワーピストンの摺動部の一方及び又は該パワーピストンとスリーブの摺動部の一方をDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング等の表面硬化処理し、かつ前記ロッドに一体に結合されたロッド可動部材と前記パワーピストンに一体に結合された可動部材および軸方向中間に位置しケースに固定された中間固定部材のそれぞれの間に、複数個のコイルスプリングを円周上に配置してなることを特徴とするものである。
前記スターリングエンジンは、前記パワーピストンに一体に結合され軸方向に往復動される可動部に発電用永久磁石を有し、かつ該発電用永久磁石と対向する固定部に配置された発電用コイルを有して該発電用コイルと前記発電用永久磁石によりリニア発電部を構成することによってスターリングエンジン発電機となる。そして、前記ロッドの延長軸端に一体にコントローラ用永久磁石を結合して設け、該コントローラ用永久磁石をカバーで密閉的に囲い、該カバーの外周部にコントローラ用コイルが配置されたヨークを嵌合して構成されてなるディスプレーサコントローラを有することによって、ディスプレーサを任意にコントロールでき、負荷によって変化する位相差、ストローク、出力をコントロールすることが可能となる。また、前記ディスプレーサコントローラは、前記パワーピストンが往復動する稼働中は、前記ロッドに一体のコントローラ用永久磁石の往復動により、前記コントローラ用コイルに電流が発生することで、前記リニア発電部に付加して電力を発生させることができ、より効率良く発電できる。
パワーピストンおよびロッド等の軸受け面にDLCコーティング等の表面硬化処理を施すことによって、往復動摺動損失が減少して効率向上につながると共に軸受け精度、耐磨耗性を上げることができ、高価なフレクシャースプリングを使用せず、安価なコイルスプリングを使用することが可能となる。更に、ディスプレーサロッド端に小型のモータ兼発電機となるディスプレーサコントローラを設けることで、エンジンの始動が容易になるばかりでなく、いかなる運転状態においてもパワーピストンとディスプレーサピストンの位相を最適に保つ制御が可能となり、且つ、安定運転時には小型発電機としてメインの発電出力に加えることが可能となる。これにより、安価で高効率・高出力フリーピストン型スターリングエンジン発電機を提供することが可能となった。
ディスプレーサピストンに固定されたロッドおよびパワーピストンの摺動部の一方ならびに該パワーピストンとスリーブの摺動部の一方をDLCコーティングのような表面硬化処理をすることで、精度が高く、摩擦損失の少ないセンターリングを確保することができる。これにより、フレクシャースプリングのようなセンターリング機能を有する高価なスプリングを使用せず、ロッドに一体に結合されたロッド可動部材とパワーピストンに一体に結合された可動部材および軸方向中間に位置し、ケースに固定された中間固定部材のそれぞれの間に複数個の単純なコイルスプリングを円周上に配置し、それぞれに可動部材が軸方向には往復動するが、円周方向に回転するのを防ぐスライドピンを配置するだけでエアーギャップの少ない高精度で、且つ、機械損失の少ないフリーピストンスターリング発電機を得ることができる。
また、前記ロッドの延長軸端に一体にコントローラ用永久磁石を結合して設け、該コントローラ用永久磁石をカバーで密閉的に囲い、該カバーの外周部にコントローラ用コイルが配置されたヨークを嵌合することによって、ディスプレーサコントローラを構成し、該コイルに電流を投入した時には前記ロッドおよび該ロッドに一体のディスプレーサピストンを軸方向に強制的に可動せしめ、該ディスプレーサピストンに対する前記パワーピストンの変位に最適な位相を与えスターリングエンジンの出力・効率を高めることができる。また、前記パワーピストンが往復動して安定して仕事をしている時には、前記ロッドおよび該ロッドに一体のディスプレーサピストンが、逆に、軸方向に駆動される。結果、前記ロッドに一体の永久磁石の往復動により、カバー外周のヨーク内のコイルに電流が発生することで、主のリニア発電にプラスで電力を発生させることができる高出力なスターリングエンジン発電機を得ることができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明のフリーピストン型スターリングエンジンをフリーピストン型スターリングエンジン発電機に適用した実施例を示す断面図である。
フリーピストン型スターリングエンジン発電機本体1はスターリングエンジン部とリニア型発電機部が一体に構成されたものである。スターリングエンジン部は、高温空間9と低温空間30に存在する作動ガス(一般的にはヘリュームガス等の熱伝導性が高く、流動損失が少ないガスが使用される)を、クーラ5と再生器6および加熱器7等の熱交換器を介して周期的に移動せしめるディスプレーサピストン3、該ディスプレーサピストン3に固定され軸方向に伸びたロッド4、該ロッド4と同心軸上に配置され、前記低温空間30側の圧力を受けて軸方向に往復動するパワーピストン2から構成されている。一方、リニア型発電機部は、パワーピストン2に一体に結合され軸方向に往復動する発電用永久磁石14を有する可動部15、発電用永久磁石14の外周位置に配置された外ヨーク16、発電用永久磁石14の内周側に配置され発電用コイル13を有する内ヨーク12とから構成され、パワーピストン2の往復動に伴う発電用永久磁石14の往復動で発電用コイル13に電流が流れて発電する。
パワーピストン2は、その外周に位置するスリーブ29に軸方向摺動可能に嵌合しており、どちらか一方の摺動面に例えばDLCコーティングによって表面硬化処理がなされている。また、パワーピストン2の軸心部にはロッド4が軸方向摺動可能に嵌合しており、どちらか一方の摺動面に同様にDLCコーティングにより表面硬化処理がなされている。それぞれの嵌合のクリアランスは径で数ミクロン〜数十ミクロン単位で精密に嵌合している。表面硬化処理は、表面硬度、耐磨耗性、低摩擦係数に優れているものであれば、DLCコーティングに限定されるものでなく任意の表面硬化処理方法が採用可能であるが、DLCコーティングを採用することによって、容易に表面硬度を2000Hv以上と高く維持し、耐磨耗性を向上させるだけでなく摺動摩擦係数を0.05まで極端に減少させる効果がある。従って、パワーピストン2およびロッド4に連結するディスプレーサピストン3を正確にセンターリングしながら摩擦損失の少ない状態で往復摺動させることができる。
このように本実施例によれば、パワーピストン2とロッド3のセンターリングが高精度でなされるため、前述のようにセンターリングの機能を有する高価なフレクシャースプリングを用いる必要がない。このため、本発明では、ロッド4に一体に結合された可動部材19、パワーピストン2に一体に結合された可動部材15、および軸方向中間に位置しケースに固定された中間固定部材17のそれぞれの間に複数個の単純なコイルスプリング21,22,23,24を円周上に複数個配置し、それぞれに可動部材15、19が軸方向には往復動するが、円周方向に回転するのを防ぐスライドピン20を配置するだけでエアーギャップの少ない高精度なリニア発電機が構成できる。
また、本発明では、負荷によって変化するディスプレーサピストンの位相差、ストローク、出力をコントロールする手段として、小型発電機、また電力を加えればリニアアクチュエータ(モータ)として働くディスプレーサコントローラ33を設けてある。該ディスプレーサコントローラ33は、ディスプレーサピストン3と一体に連結されたロッド4の延長軸端4aに一体にコントローラ用永久磁石28を結合して設け、該コントローラ用永久磁石28をガススプリング31を形成する磁性材料であるカバー25で密閉的に囲い、該カバー25の外周に内径側に配置されたコントローラ用コイル27が配置されたヨーク26を嵌合して構成されている。したがって、コントローラ用コイル27に電流を投入した時には、ロッド4および該ロッド4に一体のディスプレーサピストン3を軸方向に強制的に可動せしめるリニアアクチュエータとして作用し、該ディスプレーサピストン3に対する前記パワーピストン2の変位に最適な位相を与えるように作用する。また、安定作動時には、ロッド4の往復動により発電機として機能し、出力を取出すことができる。
また、ディスプレーサコントローラ33は、もともと発電機なので、外部から電流を加えなくても、コイルに電流が流れる。そのため、例えば図2に示すように、内部等価回路34に対して外部回路35として可変抵抗R、コイルLなどを取り付けてこれらの値を調整することにより、外部から入力を必要とせずにコントロールできる。その場合の運動方程式は、数1の通りとなる。
Figure 2005061330
但し、
:ディスプレーサ質量
:ディスプレーサ減衰係数
:ディスプレーサバネ定数
:ディスプレーサコントローラ推力定数
i: ディスプレーサコントローラの電流
:ディスプレーサコントローラ内部インダクタンス
:ディスプレーサコントローラ内部抵抗
dP:動作空間圧力変化 Pmax−Pmin
:ディスプレーサロッドの断面積
:外部インダクタンス
:外部抵抗
ここで、回転数が一定の場合を考えると、Cとkは数2の通りにおくことができる。
Figure 2005061330
よって、数1の運動方程式は、数3のとおりとなる。
Figure 2005061330
したがって、上記運動方程式より、外部抵抗Rや外部インダクタンスLの値を変えると、運動方程式中のバネ定数や減衰定数が変化し、ディスプレーサの共振周波数、外力からの位相遅れ、変位量などを変化させることができる。よって、外部から電流を入れることなく、ディスプレーサピストンの運転を制御できる。例えば、単純な例として、パワーピストンのリニア発電機が断線した場合、負荷が0となるため暴走する。そのとき、ディスプレーサコントローラをR=0、L=0、即ちショートさせると、ディスプレーサピストンの見かけ上のバネ定数が増加し、停止する。その結果エンジンが停止する。
本発明のフリーピストン型スターリングエンジンは、その出力形態により大型・小型を問わず種々の分野で利用可能であり、リニア型の発電機に限らず、圧縮機、その他の回転機関や直動機関として利用できる。また、宇宙での大要ネルギーを利用した場合、太陽電池よりも高効率の発電機として利用可能である。
本発明の実施例の一つでフリーピストン型スターリングエンジン発電機の断面である。フリーピストン型スターリングエンジン発電機の例を示す。 ディスプレーサコントローラの回路図の一例である。 従来のフリーピストン型スターリングエンジン発電機の断面図である。 従来のフリーピストン型スターリングエンジン発電機におけるフレクシャースプリングの形態を示す概略図である。
符号の説明
1 フリーピストン型スターリングエンジン発電機本体
2 パワーピストン 3 ディスプレーサピストン
4 ロッド 4a ロッド延長軸
5 クーラ 6 再生器
7 加熱器 9 高温空間
12 内ヨーク 13 発電用コイル
14 発電用永久磁石 15 可動部
17 中間固定部材 19 可動部材
20 スライドピン 21、22、23、24 コイルスプリング
25 カバー 27 コントローラ用コイル
28 コントローラ用永久磁石 29 スリーブ
30 低温空間 31 ガススプリング
33 ディスプレーサコントローラ 34 内部等価回路
35 外部回路

Claims (4)

  1. 高温空間と低温空間の作動ガスを複数個の熱交換器を介して周期的に移動せしめるディスプレーサピストン、該ディスプレーサピストンに固定されて軸方向に伸びたロッド、該ロッドと同心軸上に配置され前記低温空間側の圧力を受けて軸方向に往復動するパワーピストン、該パワーピストンに一体に結合され軸方向に往復動される可動部を有するスターリングエンジンにおいて、少なくとも前記ロッドと前記パワーピストンの摺動部の一方及び又は該パワーピストンとスリーブの摺動部の一方を表面硬化処理し、かつ前記ロッドに一体に結合されたロッド可動部材と前記パワーピストンに一体に結合された可動部材および軸方向中間に位置しケースに固定された中間固定部材のそれぞれの間に、複数個のコイルスプリングを円周上に配置してなることを特徴とするフリーピストン型スターリングエンジン。
  2. 前記フリーピストン型スターリングエンジンは、前記パワーピストンに一体に結合され軸方向に往復動される可動部に発電用永久磁石を有し、かつ該発電用永久磁石と対向する固定部に配置された発電用コイルを有して該発電用コイルと前記発電用永久磁石によりリニア発電部を構成するスターリングエンジン発電機である請求項1に記載のフリーピストン型スターリングエンジン。
  3. 前記ロッドの延長軸端に一体にコントローラ用永久磁石を結合して設け、該コントローラ用永久磁石をカバーで密閉的に囲い、該カバーの外周部にコントローラ用コイルが配置されたヨークを嵌合して構成されてなるディスプレーサコントローラを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフリーピストン型スターリングエンジン。
  4. 前記ディスプレーサコントローラは、前記パワーピストンが往復動する稼働中は、前記ロッドに一体のコントローラ用永久磁石の往復動により、前記コントローラ用コイルに電流が発生することで、前記リニア発電部に付加して電力を発生させることを特徴とする請求項2又は3に記載のフリーピストン型スターリングエンジン。
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