JP2005042013A - 水系インク用スタービング防止剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 プリンターによる印字開始直後にスタービングの発生を抑制しうる水系インク用スタービング防止剤、並びに該水系インク用スタービング防止剤が用いられた水分散体及び水系インクを提供すること。
【解決手段】 スルホネート基を1以上有する芳香族系スルホネートからなる水系インク用スタービング防止剤、前記水系インク用スタービング防止剤、着色剤及び水不溶性ポリマーを含有してなるインクジェット記録用水分散体、並びに前記水系インク用スタービング防止剤又は前記水分散体を含有してなるインクジェット記録用水系インク。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水系インク用スタービング防止剤に関する。更に詳しくは、水系インク用スタービング防止剤、並びに該水系インク用スタービング防止剤を含有する水分散体及び水系インクに関する。本発明の水系インクは、例えば、インクジェット記録用水系インクとして好適に使用しうるものである。
本明細書において、「スタービング」とは、プリンターによる印字開始直後にインクカートリッジからのインクの供給が追いつかず、インク切れを起こし、印字物にかすれを生じる現象をいう。この現象は、サーマル式のインクジェットプリンターにおいて生じやすく、本発明の水系インク用スタービング防止剤は、このようなプリンターに好適に用いることができる。なお、スタービングの評価方法は、本明細書の「実施例」に記載されている。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式には、使用する装置が低騒音で操作性がよく、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、近年広く用いられている。
インクジェットプリンタに用いられるインクには、耐水性や耐光性を向上させるため、近年、顔料系インクが使用されている。
顔料系インクをサーマルインクジェット印刷に用いる場合、顔料系インクの粘度が高いことから、プリンターヘッド部分へのインクの供給不足を生じたり、プリンターヘッドにコゲつきが生じることにより、吐出不良を起こすことがあるため、長期間の吐出信頼性に課題をもつことが多い。
また、顔料系インクにおいては、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホネート又はジスルホネートを添加することにより、ワイドフォーマット用として印刷信頼性を改善することが提案されているが(例えば、特許文献1及び2参照)、小型高速印字タイプのプリンターで生じるインクの供給不足という問題に関しては言及されていない。
特開2001−234100号公報 特開2001−234101号公報
本発明は、プリンターによる印字開始直後にスタービングの発生を抑制しうる水系インク用スタービング防止剤、並びに該水系インク用スタービング防止剤が用いられた水分散体及び水系インクを提供することを課題とする。
本発明は、
(1) スルホネート基を1以上有する芳香族系スルホネートからなる水系インク用スタービング防止剤、
(2) 前記水系インク用スタービング防止剤、着色剤及び水不溶性ポリマーを含有してなるインクジェット記録用水分散体、並びに
(3) 前記水系インク用スタービング防止剤又は前記水分散体を含有してなるインクジェット記録用水系インク
に関する。
本発明の水分散体及び水系インクは、本発明の水系インク用スタービング防止剤(以下、単にスタービング防止剤という)が用いられているので、プリンターによる印字開始直後にスタービングの発生を抑制するという優れた効果が奏される。
本発明のスタービング防止剤は、スルホネート基を1以上有する芳香族系スルホネートを含有する。スルホネート基を1以上有する芳香族系スルホネートは、ヒドロキシル基を有しないことが、水素結合によって水分散体中の水不溶性ポリマー粒子に吸着し、スタービングの防止効果が低減するのを抑制する観点から好ましい。
スルホネート基を1以上有する芳香族系スルホネートとしては、例えば、スルホネート基を1以上有する芳香族スルホネートが挙げられる。なお、本明細書において、「スルホネート基」とは、スルホン酸塩の基を意味する。
スルホネート基を1以上有する芳香族スルホネートにおいて、該芳香族スルホネートが有するスルホネート基の数は、1個又は2個であることが好ましい。
スルホネート基を1以上有する芳香族スルホネートの例としては、2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、β−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウム等のナフタレンスルホン酸塩;2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム等のナフタレンジスルホン酸塩;p−トルエンスルホン酸ナトリウム等のトルエンスルホン酸塩;Acid Red 82 等のアントラキノン系スルホン酸塩等が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
スルホネート基を1以上有する芳香族スルホネートの中では、スタービングの発生を抑制する観点から、β−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム等のナフタレンジスルホン酸ナトリウム塩、Acid Red 82 等のアントラキノン系スルホン酸塩等の縮合多環式骨格を有する化合物が好ましく、2,7−ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム及びAcid Red 82 が特に好ましい。
本発明の水分散体は、スタービング防止剤を含有するものである。水分散体におけるスタービング防止剤の含有量は、スタービングの防止効果を充分に発現させる観点から、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.03〜4重量%、更に好ましくは0.05〜3重量%である。
本発明の水系インクは、スタービング防止剤を含有するものである。水系インクにおけるスタービング防止剤の含有量は、水分散体と同様に、スタービングの防止効果を充分に発現させる観点から、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.03〜4重量%、更に好ましくは0.05〜3重量%である。
本発明の水分散体中の水不溶性ポリマー100重量部あたりのスタービング防止剤の使用量は、スタービングの防止効果を充分に発現させる観点から、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.3〜40重量部、更に好ましくは0.5〜30重量部である。
本発明の水系インク用水分散体の調製の際において、スタービング防止剤を添加する時期については、特に限定がない。例えば、(1) 着色剤を水不溶性ポリマーに含有させる際に、着色剤とともにスタービング防止剤を存在させて本発明の水分散体を調製することができる。具体的には、後述する着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造時に、有機溶媒、水不溶性ポリマー、着色剤、スタービング防止剤、水及び中和剤を加えて混合した後、必要に応じて水で希釈し、混練した後、有機溶媒を留去する方法が挙げられる。また、(2) あらかじめ調製しておいた着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体とスタービング防止剤を混合することにより、水系インク用水分散体を調製してもよい。
また、本発明の水系インクを調製する際において、スタービング防止剤を添加する時期については、特に限定がない。例えば、(3) スタービング防止剤を含む水系インク用水分散体を用いることで、更にスタービング防止剤を添加してもしなくてもよく、他の添加する成分を混合して本発明の水系インクを調製することができる。また、(4) スタービング防止剤を含まない水系インク用水分散体を用いる場合には、他の添加する成分とともに、スタービング防止剤を混合することにより、水系インクを調製することができる。
着色剤は、顔料であることが好ましい。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料とを併用することもできる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクでは、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
着色剤の量は、印字濃度及び水不溶性ポリマー粒子中への含有させやすさの観点から、後述する水不溶性ポリマーの樹脂固形分100重量部に対して好ましくは20〜400重量部、より好ましくは50〜300重量部である。
水不溶性ポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー〔以下、(a)成分という〕、(b)ポリオキシアルキレン基含有モノマー〔以下、(b)成分という〕、(c)片末端に重合性官能基を有するマクロマー〔以下、(c)成分という〕、及び(d)(a)成分〜(c)成分と共重合可能なモノマー〔以下、(d)成分という〕を含有するモノマー混合物(以下、モノマー混合物という)を共重合させることによって得られた水不溶性ポリマーが好ましい。
(a)成分としては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。(a)成分の例として、特開平9−286939号公報5頁7欄24行〜8欄29行に記載されているもの等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。カチオン性モノマーの中では、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」又は「メタクリ」を意味する。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。アニオン性モノマーの中では、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。
モノマー混合物における(a)成分の含量は、水不溶性ポリマー粒子の水分散体の保存安定性の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
(b)成分の代表例としては、式(I):
CH2 =C(R1 )COO(R2 O)r 3 (I)
(式中、R1 は水素原子又は低級アルキル基、R2 はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R3 は水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、rは1〜60の数を示す)
で表されるモノマーが挙げられる。このモノマーは、インクジェット記録用水分散体の吐出安定性を高めるという優れた効果を発現するものである。
式(I)において、R1 は、水素原子又はメチルであることが好ましい。R2 は、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。R3 は、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。r個のR2 Oは、同一でも異なっていてもよく、異なる場合には、ランダム付加、ブロック付加等のいずれであってもよい。
式(I)で表されるモノマーの中では、ポリエチレングリコール(2〜30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。なお、前記化合物において、括弧内の数字は、その化合物が有するオキシアルキレン(オキシエチレン又はオキシプロピレン)の付加モル数を意味する(以下においても同じ)。
水不溶性ポリマーにおけるポリエチレングリコール(2〜30)(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(2〜30)(メタ)アクリレートの合計含量は、水系インクの吐出安定性を高める観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物における(b)成分の含量は、水系インクの吐出安定性を高める観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
なお、水不溶性ポリマーにおける(a)成分と(b)成分との合計含量は、水不溶性ポリマー粒子の水分散体の分散安定性及び吐出安定性を高める観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。
(c)成分としては、片末端に重合性マクロマー官能基を有するスチレン単独重合マクロマー、スチレンと他のモノマーとの共重合マクロマー、シリコーンマクロマーが挙げられる。
スチレン系マクロマーとしては、片末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するスチレン単独重合マクロマーがより好ましい。他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
シリコーンマクロマーとしては、式(II):
X(Y)p Si(R4 3-q (Z)q (II)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Yは2価の結合基、R4 はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Zは500以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、pは0又は1、qは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが挙げられる。
(c)成分の中では、スチレン系マクロマーが好ましい。
モノマー混合物における(c)成分の含量は、着色剤が充分に水不溶性ポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
(d)成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」とは、「イソ」、「ターシャリー」又は「ノルマル」を意味する。
(d)成分は、印字濃度を高める観点から、スチレン系モノマーを含んでいることが好ましい。好ましいスチレン系モノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
モノマー混合物における(d)成分の含量は、印字濃度を高める観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって得られる。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒として水混和性有機溶媒を用いる場合、水混和性有機溶媒と水とを混合して用いることもできる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらのうちの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。好ましいラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、2,2’−ア ゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。また、ラジカル重合開始剤として、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
モノマー混合物に対する重合開始剤の量は、好ましくは0.001〜5モル%、より好ましくは0.01〜2モル%である。
なお、重合の際には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、さらに9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法によって水不溶性ポリマーを単離することができる。また、得られた水不溶性ポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
水不溶性ポリマーの重量平均分子量(後述する製造例1〜2に記載の方法で測定)は、吐出性、分散体の安定性の観点から、好ましくは20000〜200000、より好ましくは20000〜100000である。
着色剤及び水不溶性ポリマーを含む水分散体を得る方法としては、例えば、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解又は分散させた溶液に着色剤を添加し、予備混練し、次いで中和剤及び水を添加して混練し、分散処理を施すことによって水中油型の分散体を調製し、得られた混練物から有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
前記混錬し、分散処理を行う際には、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速撹拌型分散機等を用いることができる。これらの中では、無機不純物の混入量を少なくすることができる観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
なお、本明細書にいう「有機溶媒」は101kPaでの沸点が130℃未満である有機溶媒を意味する。
有機溶媒中では、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒として、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましい。また、必要により、前記有機溶媒と高沸点親水性有機溶媒とを併用してもよい。
本明細書にいう「高沸点親水性有機溶媒」は、101kPaでの沸点が130℃以上のものを意味する。
高沸点親水性有機溶媒の例としては、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
中和剤として、塩生成基の種類に応じて酸又は塩基を用いることができる。中和剤としては、揮発性中和剤及び/又は不揮発性中和剤が挙げられる。
揮発性中和剤として、例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸等の酸、及びアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン等の塩基が挙げられる。
不揮発性中和剤として、例えば、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基が挙げられる。
塩生成基を中和させた後の本発明に用いられる水不溶性ポリマーの25℃の水に対する溶解度は、水系インクの低粘度化の観点から、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の粒径は、ノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.50μm、より好ましくは0.02〜0.20μmである。
水系インクにおける水分散体の量は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、水性インクにおける着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の含有量(固形分量)が好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%となるように調整することが望ましい。
本発明のインクジェット記録用水系インクには、必要により、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を添加することもできる。水系インク中における水の含有量は、好ましくは40〜90重量%である。
製造例1〜2
反応容器内に、メチルエチルケトン10重量部、並びに表1の「初期仕込モノマー」欄に示すモノマー及び重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1の「滴下モノマー」欄に示すモノマー及び重合連鎖移動剤を仕込み、70重量部のメチルエチルケトン及び2.7重量部の2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら70℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から75℃で30分経過後、3.6重量部の2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)を110重量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を3時間かけて徐々に滴下した。更に80℃で1時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離し、標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
・ポリオキシプロピレンモノメタクリレート:日本油脂(株)製、商品名:PP-500(プロピレンオキサイド付加モル数=9、末端水素原子)
・スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6S( スチレンマクロマー)、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
・オクチルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート:日本油脂(株)製、商品名:ブレンマー50POEP−800B(エチレンオキサイド付加モル数 =8、プロピレンオキサイド付加モル数=6、末端2エチルヘキシル基)
Figure 2005042013
実施例1〜3
製造例1〜2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー8重量部を、表2の「混練条件」でメチルエチルケトンに溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水溶液)を表2に示す所定量で加えて塩生成基を中和し、更にジメチルキナクリドン系顔料〔C.I.ピグメント・レッド122、大日精化(株)製〕32重量部、及び実施例3ではAcid Red 82 〔山田化学工業(株)製〕(以下、化合物1という)を1.28重量部加え、3本ロールで1時間混練した。
得られた混練物に、イオン交換水270重量部を加え、攪拌した後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料含有水不溶性ポリマー粒子の水分散体28重量部(固形分5.6重量部)と表2の「配合条件」に示すジエチレングリコール、サーフィノール465(エアープロダクツ社製)、実施例1では2,7-ナフタレンジスルホン酸ナトリウム(以下、化合物2という)、実施例2では化合物1、及びイオン交換水を所定量加えて混合し、得られた混合液を0.5 μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、水系インクを得た。
比較例1〜2
製造例1〜2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー8重量部を、表2の「混錬条件」に示すメチルエチルケトンに溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水溶液)を表2に示す所定量で加えて塩生成基を中和し、更にジメチルキナクリドン系顔料〔C.I.ピグメント・レッド122、大日精化(株)製〕32重量部を加え、3本ロールで1時間混練した。
得られた混練物に、イオン交換水270重量部を加え、攪拌した後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料含有水不溶性ポリマー粒子の水分散体28重量部(固形分5.6重量部)と表2の「配合条件」に示すジエチレングリコール、サーフィノール465(エアープロダクツ社製)、及びイオン交換水を所定量加えて混合し、得られた混合液を0.5 μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、水系インクを得た。
次に得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表2示す。
<スタービング>
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた水系インクをヒューレット・パッカード(HEWLETT PACKARD)社製のバブルジェットプリンター(型番:HP5551)を用いて、ゼロックス(Xerox)社製4024用紙に10枚ベタ印字し、印字開始直後の印字品質を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいてスタービングを評価した。
なお、スタービングの評価については、この方法に限定されるものではない。
〔評価基準〕
◎:かすれなし
○:殆どかすれなし
△:少しかすれあり
×:かすれあり
Figure 2005042013
表2に示された結果から、各実施例で得られた水系インクは、いずれも、スタービングの抑止効果に優れていることがわかる。
本発明のスタービング防止剤を含有する水分散体及び水系インクは、インクジェット記録用水系インクとして好適に使用しうるものである。

Claims (5)

  1. スルホネート基を1以上有する芳香族スルホネートからなる水系インク用スタービング防止剤。
  2. 芳香族系スルホネートが縮合多環式骨格を有する化合物である請求項1記載の水系インク用スタービング防止剤。
  3. 請求項1又は2記載の水系インク用スタービング防止剤、着色剤及び水不溶性ポリマーを含有してなるインクジェット記録用水分散体。
  4. 請求項1記載の水系インク用スタービング防止剤又は請求項3記載の水分散体を含有してなるインクジェット記録用水系インク。
  5. 水系インク用スタービング防止剤の含有量が0.01〜5重量%である請求項4記載のインクジェット記録用水系インク。
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