JP2004531271A - 染色体不均衡により引き起こされる疾患を検出する方法 - Google Patents

染色体不均衡により引き起こされる疾患を検出する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、増幅反応において内部対照としてパラロガスな遺伝子を使用することにより染色体異常の存在を検出する一般的な方法を提供する。上記方法は、迅速で、ハイスループットであり、かつ半自動解析しやすい。一態様では、上記方法は、PCRのような増幅反応で使用される条件下でパラロガスな遺伝子セットそれぞれに特異的にハイブリダイズすることができるプライマー対を供給することを含む。パラロガスな遺伝子は、好ましくは異なる染色体上に存在するが、同じ染色体上にも存在し得る(例えば、異なる染色体アームの損出または獲得を検出するため)。生成された増幅産物の量を比較することにより、各遺伝子の相対用量が確定され、遺伝子が位置する各染色体領域および/または各染色体の相対用量と相関され得る。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、染色体不均衡により引き起こされる疾患を検出する方法に関する。
【関連出願】
【0002】
本出願は、2001年6月22日に出願された米国特許出願第60/300,266号を基に優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
胎児における染色体異常は、典型的には染色体の誤整列(misalignment)および不分離(non-disjunction)により引き起こされる減数分裂中の異常染色体分離事象に起因する。性染色体不均衡は生存度(viability)を損なわず、思春期まで診断されない場合がある一方で、常染色体不均衡は胎児に壊滅的な影響を与え得る。例えば、常染色体モノソミーおよびたいていのトリソミーは妊娠初期に死をもたらす(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
いくつかのトリソミーには出産(term)まで生存するものもあるが、重度の発達障害を伴う。21トリソミーは、ダウン症候群に関連し(非特許文献2)、民族集団すべてにおける精神遅滞の最も一般的な原因であり、700人の出生児(live births)のうち1人が罹患している。ダウン症候群の子供の親は、一般に彼ら自体染色体異常を有していない一方で、母親年齢の顕著な影響が見られ、母親の年齢が進むにつれ危険性が増す(非特許文献3)。
【0005】
21トリソミーのような染色体不均衡の診断は、核型分析および染色体特異的プローブを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)技法の開発により可能となってきている。高精度ではあるが、これらの方法は、特に分析に十分な数の胎児細胞を獲得するために羊水穿刺が実施された後に数日の細胞培養を必要とする核型分析の場合に手間と時間を要する。さらに、胎児細胞から得られる分裂中期の染色体を検査するプロセスには、非常に熟練した技術者の主観的判断が必要となる。
【0006】
伝統的な核型分析およびFISH方法に取って代わる多くの方法が長年にわたって提唱されているが、広く使用されているものはない。これらは主に3つのカテゴリー:短いタンデム反復(STR)の使用による異数性の検出、合成競合相手鋳型(synthetic competitor template)を用いた染色体のPCRベースの定量、およびハイブリダイゼーションベースの方法に分類することができる。
【0007】
STRベースの方法は、当該染色体領域中のSTRの数の変化を検出して、余分の染色体または欠損染色体の存在を検出することに依拠する(例えば、特許文献1参照)。染色体損失または獲得は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてヘテロ接合性STRマーカーの比の変化を検出して、これらのマーカーを定量することにより観察され得る。例えば、あるSTRマーカーの別のSTRマーカーに対する2:1の比は、おそらく余分染色体の存在を示すのに対して、マーカーに関する0:1の比またはホモ接合性は、染色体損失の徴候を提供し得る。しかしながら、ある特定の個体はまた、第II減数分裂での組換え事象または不分離の結果としてホモ接合性となり、試験によりこれらの結果は区別されない。各STRマーカーが異なる数の反復を有し、したがって各マーカーの増幅効率が同じでないことから、STRベースの方法の定量的性質もまた疑わしい。さらに、STRマーカーは非常に多型性であるため、個体すべてに普遍的に適用可能な診断アッセイの創出は不可能である。
【0008】
競合相手核酸(competitor nucleic acids)はまた、PCRベースのアッセイで使用され、染色体存在量(dosage)の変化をモニタリングするための内部対照を提供する。このタイプのアッセイでは、標的(すなわち、染色体上のゲノム領域)と配列類似性を有する合成PCR鋳型(競合相手)が供給され、競合相手および標的核酸は同じプライマーを用いて同時増幅される(例えば、特許文献2〜5、および非特許文献3参照)。増幅された競合相手および標的核酸は、競合相手のサイズおよび/または配列の検出可能な差異を導入する操作制限部位または挿入配列のような修飾を競合相手に導入することにより区別され得る。同量の競合相手を試験試料および対照試料に添加することにより、標的ゲノムセグメントの存在量(dosage)は、増幅された競合相手核酸に対する増幅された標的の比を比較することによって確定され得る。しかしながら、競合相手核酸が試験される試料に添加されなくてはならないため、試料の取り扱いにおける変動から生じるアッセイにおける固有の変動性が存在する。かかる変動は、競合相手と標的鋳型との間のわずかな最初の差異を増幅し、かつアッセイの信頼性を小さくし得る増幅プロセスの指数関数的性質により増幅される傾向にある。
【0009】
幾つかのハイブリダイゼーションベースの方法は、標識染色体特異的プローブを用いることに依拠し、遺伝子および/または染色体存在量(dosage)における差異を検出する(例えば、非特許文献4、非特許文献5、特許文献6および特許文献7を参照)。比較ゲノムハイブリダイゼーション(comparative genome hybridization;CGH)のような他のハイブリダイゼーションベースの方法は、全ゲノムにわたる変化を評価する。例えば、CGH分析では、未知用量の標的ゲノム領域を含有する標識ゲノムDNAを含む試験試料、および既知用量の標的ゲノム領域を含有する標識ゲノムDNAを含む対照試料を固定化ゲノム鋳型に適用して、試験試料および対照試料により生じるハイブリダイゼーションシグナルを比較する。試験試料および対照試料で観察されるシグナル比は、ゲノムにおける標的のコピー数の尺度を提供する。CGHはハイスループット分析の可能性を付与するが、試験試料と対照試料との間の正規化が重要であり、この方法の感度は最適でないため、この方法は実行するのが困難である。
【0010】
21トリソミーを検出するため、ゲノムにおける2つの異なる標的配列へのハイブリダイゼーションに依存する方法が、非特許文献6により記載されている。この方法は、単一プライマー対を用いて、一方が21番染色体上(肝臓型ホスホフルクトキナーゼ遺伝子、PFKL−CH21)に、および一方が1番染色体上(ヒト筋肉型ホスホフルクトキナーゼ遺伝子、PFKM−CH1)に存在する2つの相同ホスホフルクトキナーゼ遺伝子を同時に増幅する。各遺伝子に相当する増幅産物はサイズで区別することができる。
しかしながら、Lee等(非特許文献6)は、トリソミー個体および二染色体(すなわち、正常)個体からの試料はこの方法を用いて区別可能であったと報告しているが、観察されたPFKM−CH1およびPFKL−CH21増幅の比は、予測した1/1.5ではなく1/3.3であり、2つの相同遺伝子が同じ効率で増幅されなかったことを示している。さらに、正常な個体およびトリソミー個体からの試料から得られる増幅値は、それらの両端(extremes)で部分的に重複しており、診断ツールとしてのこの試験の有用性を疑わしいものにした。
【特許文献1】
国際特許公開 WO 94/03638
【特許文献2】
国際特許公開 WO99/14376
【特許文献3】
国際特許公開 WO96/09407
【特許文献4】
国際特許公開 WO94/09156
【特許文献5】
国際特許公開 WO91/02187
【特許文献6】
国際特許公開 WO00/24925
【特許文献7】
国際特許公開 WO93/23566
【非特許文献1】
Epstein、1986、「染色体不均衡の帰結:原理、メカニズムおよびモデル」(The Consequences of Chromosome Imbalance: Principles, Mechanisms and Models)、Cambridge Univ. Press
【非特許文献2】
Lejeune et al., 1959, C. R. Acad. Sci. 248:1721-1722
【非特許文献3】
Yang et al., 1998, Fetal Diagn. Ther. 13(6):361-366
【非特許文献4】
Lapierre et al., 2000, Prenat. Diagn. 20(2): 123-131
【非特許文献5】
Bell et al., 2001, Fertil. Steril. 75(2):374-379
【非特許文献6】
Lee et al., 1997, Hum. Genet. 99(3):364-367
【発明の開示】
【0011】
本発明は、染色体異常を検出するハイスループット方法を提供する。上記方法は、出生前検査で、ならびに体細胞における染色体異常を検出するのに(例えば、癌の存在または進行を検出するためのアッセイで)使用され得る。上記方法は、トリソミー、モノソミー、および/または1つもしくは複数の遺伝子を含む染色体領域の重複(duplication)または欠失(deletion)のような多数の種々のタイプの染色体不均衡を検出するのに使用され得る。
【0012】
一態様では、本発明は、染色体不均衡の危険性を検出する方法を提供する。上記方法は、同時に、第1の染色体位置にある第1の配列を増幅し、それにより第1の増幅産物を生産し、第2の染色体位置にある第2の配列を増幅し、それにより第2の増幅産物を生産することを同時に含む。増幅産物の相対量が確定され、第1の増幅産物対第2の増幅産物の比が、1:1と異なる場合に、染色体不均衡の危険性を示している。好ましくは、第1および第2の配列は、異なる染色体上に位置されるパラロガスな配列(paralogous sequences)であり、幾つかの態様ではあるが、第1および第2の配列は同じ染色体上(例えば、例えば異なるアーム上)に位置される。第1および第2の増幅産物は、約80%を上回る配列同一性を含み、好ましくは実質的に同一長である。第1および第2の配列の増幅効率は、実質的に同じであるため、上記方法は非常に定量的であり、かつ信頼性が高い。
【0013】
増幅は好ましくは、単一のプライマー対を用いたPCRにより実施され、第1および第2の配列の両方を増幅する。一態様では、プライマーは、結合対の第2の成員(member)が結合されている固体支持体(solid support)に結合するための結合対の第1の成員と連結され、第2の成員は上記第1の成員に特異的に結合することが可能である。固体支持体を供給することにより、プライマーおよび増幅産物を支持体上に捕捉することが可能であり、シーケンシングのようなさらなる手順を容易にする。一態様では、プライマーは増幅前に支持体に結合される。別の態様では、プライマーは増幅後に支持体に結合される。
【0014】
第1および第2の増幅産物は、少なくとも1つのヌクレオチド位置に位置する第1の増幅産物と第2の増幅産物との間の少なくとも1つのヌクレオチド差異を有し、それにより第1および第2の増幅産物はこの配列差異に基づいて区別されることが可能となる。したがって、一態様では、上記方法は、(i)第1の増幅産物において記少なくとも1つのヌクレオチド位置にある第1のヌクレオチドを同定する工程、(iii)第2の増幅産物において少なくとも1つのヌクレオチド位置にある第2のヌクレオチドを同定する工程、および(iii)第1および第2のヌクレオチドの相対量を確定する工程をさらに含む。第1および第2のヌクレオチドの比は、試料中の第1および第2の配列の存在量(dose)に比例する。同定する工程および確定する工程はシーケンシングにより実施され得る。好ましい実施形態では、Pyrosequencing(登録商標)のシーケンシング方法が使用される。
【0015】
一態様では、本発明は、6番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列は、SIM1配列を含む一方で、上記第2の配列はSIM2配列を含む。増幅は、プライマーSIMAF(GCAGTGGCTACTTGAAGAT)およびSIMAR(TCTCGGTGATGGCACTGG)のような両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。約1:1.5の増幅SIM1とSIM2配列との比は、個体が21トリソミーまたはダウン症候群の危険性を有することを示す。
【0016】
別の態様では、本発明は、7番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はGABPA遺伝子パラログ(paralogue)配列を含む一方で、上記第2の配列はGABPA配列を含む。一態様では、第1の配列は、図3に示すGABPA遺伝子パラログ配列を含む。増幅は、プライマーGABPAF(CTTACTGATAAGGACGCTC)およびGABPAR(CTCATAGTTCATCGTAGGCT)のような両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。約1:1.5の増幅GABPA遺伝子パラログ配列とGABPAとの比は、個体が21トリソミーまたはダウン症候群の危険性を有することを示す。
【0017】
別の態様では、本発明は、1番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はCCT8遺伝子パラログ配列を含む一方で、上記第2の配列はCCT8配列を含む。一態様では、第1の配列は図4に示すCCT8遺伝子パラログ配列を含む。増幅は、プライマーCCT8F(ATGAGATTCTTCCTAATTTG)およびCCT8R(GGTAATGAAGTATTTCTGG)のような両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。約1:1.5の増幅CCT8遺伝子パラログとCCT8との比は、個体が21トリソミーまたはダウン症候群の危険性を有することを示す。
【0018】
別の態様では、本発明は、2番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はC21ORF19を含む。一態様では、第1の配列はC21ORF19遺伝子パラログ配列を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、2番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はDSCR3を含む。一態様では、第1の配列はDSCR3遺伝子パラログ配列を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、4番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はC21Orf6を含む。一態様では、第1の配列はC21Orf6遺伝子パラログ配列を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、12番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はWRB1を含む。一態様では、第1の配列はWRB1遺伝子パラログ配列を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、7番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はKIAA0958を含む。一態様では、第1の配列はKIAA0958遺伝子パラログ配列を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、X染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はTTC3を含む。一態様では、第1の配列はTTC3遺伝子パラログ配列を含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、5番染色体上の第1の配列および21番染色体上の第2の配列を供給することにより、21トリソミーの危険性および個体がダウン症候群を有する見込みを検出する方法を提供し、ここで第2の配列はITSN1を含む。一態様では、第1の配列はITSN1遺伝子パラログ配列を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、3番染色体上の第1の配列および13番染色体上の第2の配列を供給することにより、13トリソミーの危険性を検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はRAP2A遺伝子パラログ配列を含む一方で、第2の配列はPAP2A配列を含む。増幅は、両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。一態様では、RAP2A遺伝子パラログ配列は図5に示すRAP2A遺伝子パラログ配列を含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、2番染色体上の第1の配列および13番染色体上の第2の配列を供給することにより、13トリソミーの危険性を検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はCDK8遺伝子パラログ配列を含む一方で、第2の配列はCDK8配列を含む。増幅は、両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。一態様では、CDK8遺伝子パラログ配列は図7に示すCDK8遺伝子パラログ配列を含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、2番染色体上の第1の配列および18番染色体上の第2の配列を供給することにより、18トリソミーの危険性を検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はACAA2遺伝子パラログ配列を含む一方で、第2の配列はACAA2配列を含む。増幅は、両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。一態様では、ACAA2遺伝子パラログ配列は図8に示すACAA2遺伝子パラログ配列を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、9番染色体上の第1の配列および18番染色体上の第2の配列を供給することにより、18トリソミーの危険性を検出する方法を提供する。好ましい態様では、第1の配列はME2遺伝子パラログ配列を含む一方で、第2の配列はME2配列を含む。増幅は、両遺伝子における同一配列に特異的にハイブリダイズする単一のプライマー対を用いて実施される。一態様では、ME2遺伝子パラログ配列は図6に示すME2遺伝子パラログ配列を含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、染色体不均衡の危険性を検出する方法を提供し、ここで染色体不均衡は、21トリソミー、13トリソミー、18トリソミー、トリソミーX、XXYおよびXOからなる群から選択される。
【0030】
別の態様では、本発明は、染色体不均衡の危険性を検出する方法を提供し、ここで染色体不均衡は、ダウン症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、ウィリアムズ症候群、ランガー・ギーディオン症候群、プラーダー・ヴィリ症候群、アンゲルマン症候群、ルービンスタイン・テービ症候群、およびディ・ジョージ症候群からなる群から選択される疾患に関連する。
【0031】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照してよりよく理解され得る。
【0032】
本発明は、増幅反応において内部対照としてパラロガスな遺伝子を使用することにより染色体異常の存在を検出する方法を提供する。上記方法は、迅速で、ハイスループットであり、かつ半自動または全自動解析しやすい。一態様では、上記方法は、PCRのような増幅反応で使用される条件下でパラロガスな遺伝子セットそれぞれに特異的にハイブリダイズすることができるプライマー対を供給することを含む。パラロガスな遺伝子は、好ましくは異なる染色体上に存在するが、同じ染色体上にも存在し得る(例えば、異なる染色体アームの損失または獲得を検出するため)。生成された増幅産物の量を比較することにより、各遺伝子の相対存在量(dose)が確定され、遺伝子が位置する各染色体領域および/または各染色体の相対存在量(dose)と相関され得る。
【0033】
定義
以下の定義は、以下に記載する説明で使用される特定の用語に関して提供される。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「パラロガスな遺伝子」という用語は、共通の進化起源を有するが、ヒトゲノムにおいて時間をかけて重複された遺伝子を指す。パラロガスな遺伝子は、遺伝子構造(例えば、イントロンおよびエキソンの数ならびに相対位置、および好ましくは転写物長)ならびに配列を保存する。一態様では、パラロガスな遺伝子は、増幅可能な配列領域にわたって少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%同一性、少なくとも約90%同一性、または少なくとも約95%同一性を有する。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「増幅可能な領域」または「増幅可能な配列領域」という用語は、第1のプライマー結合部位によりその5’−末端(5'-most end)と、第2のプライマー結合部位に相補的な配列によりその3’−末端で規定され、かつ増幅可能な配列領域を含む二本鎖配列(double-stranded sequence)において第1および第2のプライマー結合部位に特異的に結合するプライマーの結合に基づく増幅条件下で増幅され得る一本鎖配列を指す。好ましくは、増幅可能な領域は、少なくとも約50ヌクレオチド長、少なくとも約75ヌクレオチド長、少なくとも約100ヌクレオチド長、少なくとも約150ヌクレオチド長、少なくとも約200ヌクレオチド長、少なくとも約300ヌクレオチド長、少なくとも約400ヌクレオチド長、または少なくとも約500ヌクレオチド長である。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「プライマー結合部位」は、増幅反応のプライマーアニーリング段階中にプライマーが結合部位に特異的にハイブリダイズするように、プライマーに実質的に相補的であるか、または完全に相補的である配列を指す。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「パラログセット」または「パラロガスな遺伝子セット」は、少なくとも2つのパラロガスな遺伝子またはパラログを指す。
【0038】
本明細書中で使用する場合、「染色体異常」または「染色体不均衡」は、1つもしくは複数の遺伝子を含む染色体全体または染色体領域の獲得あるいは損失である。染色体異常としては、モノソミー、トリソミー、ポリソミー、不均衡転座(unbalanced translocations)により引き起こされる欠失および重複を含む遺伝子の欠失および/または重複が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用する場合、「高度の配列類似性」なる用語は、増幅可能な領域にわたって少なくとも約80%の配列同一性を指す。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「実質的に等しい増幅効率」または「実質的に同じ増幅効率」は、等しい量で提供される第1および第2の配列の増幅であり、第1および第2の増幅産物の量において約10%未満の差異を生じる増幅を指す。
【0041】
本明細書中で使用する場合、「個体」は、胎児、新生児、子供または成体を指す。
【0042】
パラロガスな遺伝子の同定
パラロガスな遺伝子は、重複期間および選択的機能性制限(selective functional restraints)の両方に依存して高度の配列類似性を保持する重複遺伝子である。それらの高度の配列類似性のために、パラロガスな遺伝子は、これらの遺伝子が位置する染色体および/または染色体領域の相対存在量(dose)の確定を可能にする増幅反応用の理想的な鋳型を提供する。
【0043】
パラロガスな遺伝子は、共通の進化歴を有するが、重複事象またはレトロトランスポジション事象により時間をかけて複製された遺伝子である。重複事象は、一般に保存遺伝子構造を有する2つの遺伝子をもたらし、すなわちそれらはイントロン−エキソン接合部の類似パターンを有する。他方で、レトロトランスポジションにより生成されるパラロガスな遺伝子は、イントロンを含有せず、たいていの場合で進化により機能的に不活性化され、(発現されず)、したがって偽遺伝子として分類される。パラロガスな遺伝子の両方のカテゴリーに関して、高度の配列保存が存在するが、機能的制約に大いに依存する割合で突然変異により差異が蓄積される。
【0044】
一態様では、本発明は、上記方法で使用するための最適なパラロガスな遺伝子セットを同定することを含む。例えば、ヒトゲノムの完成したシーケンシングから利用可能な情報を用いて重複事象が起こったことが既知である染色体のある特定の区域を標的とすることができる(例えば、Venter et al., 2001, Science 291(5507): 1304-51、Lander et al., 2001, Nature 409 (6822): 860-921参照)。これは、所定の標的遺伝子を同定し、標的遺伝子が由来するのと同じ種からの配列のゲノム配列データベースまたは発現配列データベースを検索することによりコンピュータで実行され、増幅可能な配列領域にわたって少なくとも約80%同一性を含む配列を同定する。好ましくは、パラロガスな配列は、実質的に同一のGC含有量を含む(すなわち、配列は、GC含有量において約5%未満、好ましくは約1%未満の差異を有する)。配列検索プログラムは、当該技術分野で既知であり、BLAST(Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410を参照)、FASTA、およびSSAHA(例えば、Pearson, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(5): 2444-2448、Lung et al., 1991, J. Mol. Biol. 221(4): 1367-1378を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、配列アラインメントの有意性を確定する方法が当該技術分野で既知であり、Needleman and Wunsch, 1970, J. of Mol. Biol. 48: 444、Waterman et al., 1980, J. Moll. Biol. 147: 195-197、Karlin et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268、およびDembo et al., 1994, Ann. Prob. 22: 2022-2039に記載されている。一態様では、単一のクエリー配列がデータベースに対して検索される一方で、別の態様では、複数の配列がデータベースに対して検索される(例えば、NCBIからアクセス可能なMEGABLASTプログラムを用いて)。マルチプル配列アラインメントは、ClustalW 1.6(https://dot.imgen.bcm.tmc.edu:9331/multialign/multi-align.htmlで利用可能)のような当該技術分野で既知のプログラムを用いて単一回で実施され得る。
【0045】
好ましい実施形態では、検索されるゲノムまたは発現配列データベースはヒト配列を含む。ヒトゲノムプロジェクト(上述のVenter et al., 2001、上述のLander et al., 2001を参照)の完了により、ヒト配列データベースのコンピュータ検索により、多重染色体組合せに関するパラロガスなセットが同定される。多数のヒトゲノム配列データベースが存在し、NCBI GenBankデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Genome)、Celera Human Genomeデータベース(https://www.celera.com)、Genetic Information Research Institute(GIRI)データベース(https://www.girinst.org)、TIGR Gene Indices(https://www.tigr.org/tdb/tgi.shtml)等が挙げられるが、これらに限定されない。発現配列データベースとしては、NCBI ESTデータベース、LIFESEQ(登録商標)データベース(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto, Calif.)、Human Genome SciencesからのランダムcDNA配列データベース、およびEMEST8データベース(EMBL, Heidelberg, Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
一態様では、遺伝子または遺伝子セットは、パラロガスな遺伝子セットを同定するためクエリー配列としてランダムに選ばれる。別の態様では、文献中でパラロガスであると同定された遺伝子をクエリーとして使用して、データベースを検索して、最適な増幅可能な配列を提供するこれらの遺伝子の領域(すなわち、増幅可能な配列領域にわたって約80%を上回る同一性、および約1%〜5%未満のGC含有量の差異を有する遺伝子の領域)を同定する。好ましくは、パラロガスな遺伝子は保存遺伝子構造および保存配列を有し、すなわちエキソンおよびイントロンの数ならびに相対位置が保存され、好ましくはパラロガスな遺伝子から生成される転写物はサイズが実質的に同じである(すなわち、約200塩基対未満のサイズの差異、好ましくは約100塩基対未満のサイズの差異を有する)。表1は、本発明の方法により評価され得る非限定的な候補パラロガスな遺伝子セットの例を提供する。表1Aは、本発明の方法により評価され得る非限定的な候補パラロガスな遺伝子セットの例を提供し、ここでセットの一つの成員は21番染色体上に位置する。表1Bは、本発明の方法により評価され得るさらなる非限定的な候補パラロガスな遺伝子セットの例を提供する。
【0047】
【表1−1】
Figure 2004531271
【表1−2】
Figure 2004531271
【0048】
【表1A】
Figure 2004531271
【0049】
【表1B】
Figure 2004531271
【0050】
本発明による有用なパラロガスな遺伝子セットとしては、以下の:GABPA (アクセッション番号:NM_002040、NT−011512、XM009709、AP001694、X84366)およびGABPAパラログ(アクセッション番号:LOC154840);CCT8(アクセッション番号:NM_006585、NT_011512、AL163249、G09444)およびCCT8パラログ(アクセッション番号:LOC149003);RAP2A(アクセッション番号:NM_021033)およびRAP2Aパラログ(アクセッション番号:NM_002886);ME2(アクセッション番号:NM_002396)およびME2パラログ;CDK8(アクセッション番号:NM_001260)およびCDK8パラログ(アクセッション番号:LOC129359);ACAA2(アクセッション番号:NM_006111)およびACAA2パラログ;DSCR3(アクセッション番号:NT_011512、NM_006052、AP001728)およびDSCR3パラログ;C21orf19(アクセッション番号:NM_015955、NT_005367、AF363446、AP001725)およびC21orf19パラログ;KIAA0958(アクセッション番号:NT_011514、NM_015227、AL163301、AB023175)およびKIAA0958パラログ;TTC3(アクセッション番号:NM_003316、NT_011512、AP001727、AP001728)およびTTC3パラログ;ITSN1(アクセッション番号:NT_011512、NM_003024、XM_048621)およびITSN1パラログが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
クエリー配列として使用することができるさらなるパラロガスな遺伝子セットとしては、HOX遺伝子が挙げられる。関連HOX遺伝子およびそれらの染色体位置は、Popovici et al., 2001, FEBS Letters 491: 237-242に記載されている。1番、2番、7番、11番、12番、14番、17番および19番染色体中の遺伝子に関する候補パラログは、Lundin, 1993, Genomics 16: 1-19に記載されている。これらの参照文献の全体が本明細書に参照により援用される。
【0052】
さらに別の態様では、クエリー配列は、重複されるヒトゲノムの領域(例えば、完成ヒトゲノム配列の解析により確定されるような)を標的とすることにより同定され、これらの配列を用いてヒトゲノム配列のデータベース(複数可)を検索して、増幅可能な配列領域にわたって少なくとも80%同一の配列を同定する。
【0053】
さらなる態様では、クラスタリングプログラムを用いて、増幅可能な配列領域にわたって少なくとも約80%同一性を含むコンセンサス配列を共有するデータベースにおいて発現配列を類別して、適切なパラログを同定する。配列クラスタリングプログラムは、当該技術分野で既知である(例えば、Guan et al., 1998, Bioinformatics 14(9): 783-8、Miller et al., Comput. Appl. Biosci. 13(1): 81-7、およびParsons, 1995, Comput. Appl. Biosci. 11(6): 603-13参照、これらの全体が本明細書に参照により援用される)。
【0054】
適切なパラログセットを同定するコンピュータ的方法が好ましい一方で、有意な塩基対形成が可能である配列を検出する任意の方法を使用することができ、それらは本発明の範囲内に包含される。例えば、パラロガスな遺伝子セットは、ハイブリダイゼーションベースの方法およびコンピュータ的方法の組合せを用いて同定され得る。この態様では、標的染色体領域を同定することができ、その領域に相当する核酸プローブを選択して(例えば、BACライブラリー、YACライブラリー、コスミドライブラリー、cDNAライブラリー等から)、in situハイブリダイゼーションアッセイ(FISHまたはISHアッセイ)で使用されて、多重染色体(好ましくは約5未満)へハイブリダイズするプローブを同定することができる。ハイブリダイゼーションの特異性は、標的プローブを、パラロガスな遺伝子(複数可)を含有すると考えられるフローソーティングした染色体、染色体特異的ライブラリーおよび/または所定の試験染色体(複数可)を含む体細胞ハイブリッドへハイブリダイズすることにより確証され得る(例えば、Horvath, et al., 2000, Genome Research 10: 839-852)。引き続いてより小さなプローブ断片を用いて、パラロガスな遺伝子を含有すると考えられる所定の領域を絞り込むことができ、これらの断片をシーケンシングして、最適なパラロガスな遺伝子セットを同定することができる。
【0055】
一態様では、
パラロガスな遺伝子は本発明の方法において増幅鋳型として使用されるが、増幅可能な領域にわたって約20%未満のヌクレオチド差異を有する実質的に同一の増幅鋳型を提供するのに十分な配列同一性を含む任意のパラロガスな配列が使用される。例えば、偽遺伝子は、各セットにおける配列間に十分な同一性が存在する場合に、非発現配列としてパラログセットに包含され得る。
【0056】
核酸の供給源
一態様では、本発明の方法は、出生前検査で使用され、染色体異常を有して生まれた新生児の危険性を評価する。これらのタイプのアッセイに関して、DNA試料は、羊水穿刺(例えば、Barter, Am. J. Obstet. Gynecol. 99: 795-805、米国特許第5,048,530号)、絨毛膜絨毛試料採取(例えば、Imamura et al., 1996, Prenat. Diagn. 16(3): 259-61)のような手順により、あるいは母体の末梢血試料採取(例えば、Iverson et al., 1981, Prenat. Diagn. 9:31-48、米国特許第6,210,574号)により獲得される。胎児細胞もまた、臍帯穿刺または経皮臍帯血試料採取により獲得することができるが、この技法は技術的に困難であり、広く利用されていない(Erbe, 1994, Scientific American Medicine 2, section 9, chapter IV, Scientific American Press, New York, pp41-42を参照)。好ましくは、DNAは、当該技術分野で既知の技法を用いて胎児細胞試料から単離および精製される(例えば、Maniatis et al., In Molecular Cloning, Cold Spring Harbor, New York, 1982を参照)。
【0057】
しかしながら、別の態様では、細胞は成体または子供から(例えば、癌を有することが疑わしい患者から)獲得される。細胞は、血液試料から、あるいは癌成長部位(例えば、腫瘍または生検材料試料)から獲得され、上記のように(例えば、続く増幅)単離および精製され得る。
【0058】
増幅条件
存在量(dosage)が確定されるべき標的遺伝子を含むパラロガスな遺伝子セットおよび既知の存在量(dosage)を有する参照遺伝子を同定する場合、プライマー対は、サイズが類似しているか、または同一である各遺伝子から増幅産物を産生するように選択される。一態様では、各パラロガスな遺伝子から生成される増幅産物は、約0〜75ヌクレオチド以下だけ、好ましくは約0〜25ヌクレオチド以下だけ長さが異なる。増幅用のプライマーは、標準的な技法を用いて容易に合成される(例えば、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,415,732号、およびMolecular Protocols Online https://www.protocol-online.net/molbio/PCR/pcr_primer.htmを参照)。好ましくは、プライマーは約6〜50ヌクレオチド長であり、増幅産物は少なくとも約50ヌクレオチド長である。
【0059】
好ましい方法では、プライマーは未標識であるが、態様によっては、プライマーは例えば放射性標識、蛍光標識、高電子密度部分等の直接結合または間接結合により、当該技術分野で周知の方法を用いて標識されるものもある。プライマーはまた、固体支持体上に増幅産物を捕捉することが望ましい場合には、捕捉分子(例えば、結合対の成員)に連結され得る(例えば、国際特許公開 WO99/14376を参照)。
【0060】
パラロガスな遺伝子の増幅は、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて実施することができ、PCR(Innis et al., 1990, PCR Protocols. A Guide to Methods and Application, Academic Press, Inc. San Diego)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, 1989, Genomics 4: 560、Landegren ,et al., 1988, Science 241: 1077)、自己持続性配列複製(3SR:Self-Sustained Sequence Replication)(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)等が挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、好ましくは、遺伝子は、標準的な条件を用いたPCRにより増幅される(例えば、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,800,159号、米国特許第4,683,202号、および米国特許第4,889,818号に記載されるようなものを参照)。
【0061】
一態様では、増幅されたDNAは、続く定量化を容易にするために固定化される。例えば、結合対の第1の成員に連結されたプライマーを、第1の成員に特異的に結合することが可能な結合対の第2の成員が結合されている支持体に結合することができる。適切な結合対としては、アビジン:ビオチン、抗原:抗体対、化学基の反応性対等が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、プライマーは、増幅前に支持体に連結され、増幅産物の固定化は増幅プロセス自体の間に起こる。あるいは、増幅産物は増幅後に固定化することができる。固体支持体は、固相アッセイに関して当該技術分野で使用される任意の既知のものであり得る(例えば、粒子、ビーズ、磁気もしくは常磁性粒子またはビーズ、ディップスティック、キャピラリー、マイクロチップ、ガラススライド等)(例えば、米国特許第4,654,267号に記載されるようなものを参照)。好ましくは、固体支持体は、続く定量化工程の自動化を容易にするためにマイクロタイターウェル(例えば、96ウェルプレート)の形態である。
【0062】
遺伝子用量の定量化
個々のパラロガスな遺伝子の定量化は、単一のヌクレオチド差異を検出することができる当該技術分野で既知の任意の方法により実施することができる。適切なアッセイとしては、リアルタイムPCR(TAQMAN(登録商標))、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションベースのアッセイ(例えば、米国特許第6,207,373号を参照)、RFLP分析(例えば、ヌクレオチド差異が制限部位を創出または破壊する場合)、単一ヌクレオチドプライマー伸長ベースのアッセイ(例えば、米国特許第6,221,592号を参照)、シーケンシングベースのアッセイ(例えば、米国特許第6,221,592号を参照)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、定量化はPyrosequencing(登録商標)方法(例えば、米国特許第6,210,891号および米国特許第6,197,505号参照、これらの全体が参照により本明細書に援用される)を用いて実施される。この方法では、パラロガスな遺伝子の増幅産物は、一本鎖にされ、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン−5’−ホスホサルフェート(APS)およびルシフェリンの存在下で各パラロガスな遺伝子における同じ配列に特異的にハイブリダイズする配列を含むシーケンシングプライマーとともにインキュベートされる。適切なポリメラーゼとしては、T7ポリメラーゼ、(エクソ)クレノウポリメラーゼ、Sequenase(登録商標) Ver.2.0(USB U.S.A.)、Taq(登録商標)ポリメラーゼ等が挙げられるが、これらに限定されない。4つのデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)のうちの1つ目が添加され(dATPでなくデオキシアデノシンα−チオトリホスフェートが使用される)、プライマー伸長によりプライマーに組み込まれる場合、組み込まれたヌクレオチドの量と等モル量でピロリン酸(PPi)が放出される。続いて、PPiは、APSの存在下でATPスルフリラーゼによりATPに定量的に変換される。試料へのATPの放出により、ルシフェリンはATPの量に比例した量で光を発生する反応でルシフェラーゼによりオキシルシフェリンに変換される。放出された光は、電荷結合素子(CCD)により検出され、pyrogram(登録商標)ディスプレイ(例えば、Pyrosequencing(登録商標), Inc., Westborough, MA 01581から入手可能なPyrosequencing(登録商標) PSQ 96 DNA/SNPアナライザーにおいて)上にピークとして測定され得る。アピラーゼは、非組み込みdNTPを分解し、分解が完了すると(例えば、光がもはや検出されない場合とき)、別のdNTPを添加する。dNTPの添加は1つずつ行われ、ヌクレオチド配列はシグナルピークから確定される。同一ヌクレオチドを含む2つの連続塩基の存在は、比例的により大きなシグナルピークとして検出可能である。
【0064】
現在好ましい実施形態では、核酸試料中の染色体存在量(dosage)は、Pyrosequencing(登録商標)方法を使用することで評価され、少なくとも1つのヌクレオチド位置で異なるパラロガスな配列における配列差異の比を確定する。例えば、一態様では、それぞれ異なる染色体上の2つのパラロガスな遺伝子からの2つのパラロガスな配列が、シーケンシングされ、2つのパラログにおける配列差異の位置にある異なるヌクレオチド塩基の比が確定される。2つの配列が異なる位置での1:1の比の異なるヌクレオチド塩基は、1:1の比の染色体を示す。しかしながら、1:1の比からの差異は、試料中に染色体不均衡が存在することを示す。例えば、3:2の比はトリソミーの存在を示す。同じ染色体上のパラロガスな配列もまた、このようにして評価することができる(例えば、特定の染色体アームの損失または獲得を確定するために)。
【0065】
Pyrosequencing(登録商標) PSQ 96 DNA/SNPアナライザーを用いて、96個の試料を30分以内に同時に分析することができる。パラログそれぞれに特有のパラログ配列の一部に隣接してハイブリダイズするシーケンシングプライマーを使用することにより、1回または数回のみのdNTP組み込み(すなわち、ミニシーケンシングを実施)後にパラログ間を区別することが可能であり得る。Pyrosequencerからの出力が直接的な定量比を提供し、試料が得られた個体の遺伝子型、したがって表現型を使用者が推測することが可能となるため、分析にはゲル電気泳動も任意のさらなる試料プロセシングも必要とされない。天然内部対照としてパラロガスな遺伝子を使用することにより、試料の取り扱いによる変動性の量が低減される。さらに、放射活性も標識も必要とされない。
【0066】
診断用途
パラロガスな遺伝子セットの増幅は、染色体異常を有する個体の危険性を確定するのに使用され得る。所定の染色体領域由来の標的遺伝子および参照遺伝子(好ましくは異なる染色体上に存在)を含むパラロガスな遺伝子セットを用いて、上述のように遺伝子比が確定される。標的対参照遺伝子の1:1の比からの逸脱は、個体が染色体異常の危険性を有することを示す。本発明による方法を用いて評価することができる染色体異常の例を下記の表2に提示する。
【0067】
【表2−1】
Figure 2004531271
【表2−2】
Figure 2004531271
【0068】
概して、染色体存在量(dosage)の評価は、患者の症状の臨床的評価のような他の評価と併用して実施される。例えば、出生前評価は、親が自然流産歴を有する場合(誕生および新生児死亡にかかわらず)または母親の高齢、母親の異常血清の結果の場合、および染色体異常の家族歴を有する患者において特に適切である。出生後試験は、多発性先天性異常(multiple congenital abnormalities)、既知の染色体症候群と一致した臨床的徴候(clinical manifestations)、不明の精神遅滞、原発性および続発性無月経、不妊症等が見られる場合に適切であり得る。
【0069】
上記方法は、2つの染色体が同じ期間で用量を変更される見込みが無視し得る(すなわち、それぞれ試験パラロガスな配列および参照パラロガスな配列を含む試験染色体ならびに参照染色体が、同じ期間でモノソミーまたはトリソミーである可能性が低い)という仮定を前提としている。さらに、アッセイは、一般に、対照として染色体の正常な相補体を含む試料を用いて実施される。しかしながら、一態様では、それぞれのセットが異なる染色体対に由来するパラロガスな遺伝子の多重セットを用いて、アッセイの感度を増大する。別の態様では、例えば出生後試験では、X染色体用量は概して表現型により確証され得るため、常染色体のパラロガスな遺伝子セットの増幅は、X染色体配列の増幅と同じときに実施される。さらに別の態様では、階層的試験計画が使用され得る。例えば、本発明による方法を用いた21トリソミーに関する陽性の結果の後に、変更遺伝子用量を確認するための異なる試験を行うことができる(例えば、PKFL−CH21活性の増加およびM4型ホスホフルクトキナーゼ活性の欠如をアッセイすることによる等、例えば、Vora, 1981, Blood 57:724-731に記載されるようなものを参照)一方で、陰性の結果を示す試料は一般にはさらに分析されない。したがって、本発明による方法は、陽性の結果を確認するためのより低いスループットアッセイを補足することができる稀なケースの染色体異常を同定するためのハイスループットアッセイを提供する。
【0070】
同様に、パラロガスな遺伝子の損失または獲得が染色体対染色体アーム対染色体バンド対パラロガスな遺伝子自体のみの損失または獲得を反映するという仮定は、本発明による方法をさらなる試験で補足することにより、例えばそれぞれのセットが異なる染色体領域に相当する同じ染色体上のパラロガスな遺伝子の多重セットを用いることにより、立証され得る。
【0071】
ここで本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。以下の事項は単なる例の手段であり、本発明の範囲内で細目に対する変更がなされてもよいことが理解されよう。
【実施例1】
【0072】
以下の実施例は、単一のプライマー対(a single set of primers)とともに、異なる染色体に存在するパラロガスな遺伝子を同時増幅することにより、染色体不均衡、例えば21トリソミーを検出するPCRベースの方法を記載する。
【0073】
パラロガスな遺伝子を使用することに関する論理的根拠は、パラロガスな遺伝子がほとんど同一のサイズおよび配列組成を有するため、それらは単一のプライマー対を用いて等しい効率でPCR増幅することである。2つの配列間の単一ヌクレオチド差異が同定され、各対立遺伝子(そのそれぞれが染色体を表す)の相対量が、定量される(図9を参照)。Pyrosequencing方法は非常に定量的であるため、染色体間の比を正確にアッセイすることができる。
【0074】
21トリソミーの検出に関して、上記方法は以下の工程を包含する:a.同時増幅に適した候補物の同定(パラロガスな遺伝子)、b.ヒト21番染色体と他の染色体との間のパラロガスな配列の同時増幅に関する多重アッセイ(multiple assays)の設計、c.21トリソミーおよび対照DNA試料のパネルを用いたアッセイの試験、d.適切に大きな遡及的試料における上記方法の頑強さの試験
【0075】
類似の工程が、本発明により任意の染色体不均衡を検出するのに使用される。
【0076】
パラロガスな遺伝子の同定
21番染色体とゲノムの残部との間のパラロガスな配列を同定するために、21q22.1領域とテロメアとの間に位置するすべての21番遺伝子および偽遺伝子(cDNA配列)を、ダウン症候群と報告された個体すべてにおいて、この領域が3コピーで存在するため、非冗長ヒトゲノムデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/seq/HsBlast.html)に対して(と比較して)ブラストした(図4)。
【0077】
このことから、同時増幅用の適切な標的として作用し得る10個の潜在的候補対が同定された(表1A)。
【0078】
これらの対のほとんどが機能的遺伝子およびスプライシングされない偽遺伝子により形成され、これらのパラロガスなコピーの最も普通の起源は古代染色体重複ではなくレトロトランスポジションであることを示唆する。
【0079】
試料
2つの最適化した試験に関する遡及的立証研究を実施するために、400個のDNA試料(200個のDNAはトリソミー個体に由来、200個の対照DNA)を使用した。これらの試料は、インフォームドコンセントを行い、過去15年かけてジュネーヴ大学遺伝医学部(the Division of Medical Genetics, University of Geneva)で収集した。試料は推定上異なる方法で異なる期間に抽出されており、したがってこれらのDNAの品質は均一でないと予測される。
【0080】
診断方法の開発のためにこれらの試料を使用することに関して、この特定の使用に関して地元の倫理委員会により許可を受けた。
【0081】
本発明は、使用試料が調製されたばかりであるか、または例えば4℃で保管され、好ましくは少なくとも−20℃で凍結され、より好ましくは液体窒素中で凍結される方法を提供する。
【0082】
アッセイ設計
表1Aに取り纏めた結果を用いて、第1回のアッセイが設計され、実施された。
【0083】
アッセイの開発に関する重要な態様は、両方の遺伝子において同じエキソン内に含まれ(このことは両方のアンプリコンが等しいサイズであるために必要である)、かつ以下の条件を満たす非常に高度な配列保存(70〜95%、好ましくは85〜95%)の領域を選択することである:
1.適合性プライマーが設計され得る完璧な配列保存の長い伸長物が存在すること、
2.適切なシーケンシングプライマーが設計され得るように、完璧に相同配列(homologous sequence)により取り囲まれるアンプリマー内に1つまたは複数の単一ヌクレオチド差異が存在すること。
【0084】
これらの基準を用いて、GABPA遺伝子およびCCT8遺伝子に関してアッセイを開発した。
【実施例2】
【0085】
21トリソミーは、患者(例えば、胎児)からの少なくとも1つの細胞を含む試料を供給し、標準的な技法を用いて細胞(複数可)からDNAを抽出することにより検出される。この試料を、それぞれ21番染色体および6番染色体上に位置するパラロガスな遺伝子であるSIM2(GenBankアクセッション番号第U80456号、第U80457号、および第AB003185号)およびSIM1遺伝子(GenBankアクセッション番号第U70212号)の両方に特異的にアニーリングする単一のプライマー対とともに、PCRで使用される標準的なアニーリング条件下でインキュベートする。SIM2およびSIM1の部分配列のアラインメントを図1に示す。
【0086】
プライマー配列SIMAF(GCAGTGGCTACTTGAAGAT)およびSIMAR(TCTCGGTGATGGCACTGG)を用いて、試料をPCR条件に付した。例えば、増幅緩衝液5.0μl、200μM dNTP、3mM MgCl、DNA 50ng、およびTaqポリメラーゼ5ユニットを供給して、タッチダウンPCR(例えば、94℃を30秒、63〜58℃を30秒、および72℃を10秒)の35サイクルにより、2つのパラログ間の配列差異の続く検出のために適切な量の増幅産物が生成される。
【0087】
SIM1およびSIM2に相当する増幅産物の量は、2つの遺伝子を区別する単一ヌクレオチド差異に関してアッセイすることにより確定される(図1の丸を施した配列を参照)。好ましくは、これは、シーケンシングプライマーSIMAS(GTGGGGCTGGTGGCCGTG)を用いたPyrosequencing方法により実行される。Pyrosequencing(登録商標)反応から得られる予測配列は、GGCCA[C/G]TCGCTGCCであり、角括弧および太字による強調は、2つの配列間の配列差異の位置を示す。
【0088】
SIM2:SIM1の対立遺伝子の比は、ある塩基の比を、2つのパラログ間のヌクレオチド差異の部位にある別の塩基に対して比較することで確定される。図2から理解されるように、かかる塩基の比は、ダウン症候群の個体では1:1.5であり、正常な個体では1:1である。
【実施例3】
【0089】
以下の例は、本発明の方法により21トリソミーを検出する方法について記載しており、ここでパラロガスな遺伝子対の1つの成員はGABPAである。
【0090】
21トリソミーは、患者(例えば、胎児)からの少なくとも1つの細胞を含む試料を供給し、標準的な技法を用いて細胞(複数可)からDNAを抽出することにより検出される。パイロット実験の結果を図11に示す。パイロット実験の性能を受けて、上記アッセイは、より高い効率の増幅ならびにより小さな試料内および試料間の変動でプライマーセットを同定することによりさらに最適化された。21トリソミーの検出に関する最適化されたアッセイの詳細を以下に提供する。
【0091】
400個のDNA試料(200個はトリソミー試料、および200個は対照試料)を、それぞれ7番染色体および21番染色体上に位置するパラロガスな遺伝子であるGABPA遺伝子パラログ(GenBankアクセッション番号LOC154840)およびGABPA遺伝子(GenBankアクセッション番号NM002040)の両方に特異的にアニーリングする単一のプライマー対とともに、PCRで使用される標準的なアニーリング条件下でインキュベートした。GABPA遺伝子パラログおよびGABPAの配列のアラインメントを図3に示す。
【0092】
プライマー配列GABPAF(5ビオチンCTTACTGATAAGGACGCTC)およびGABPAR(CTCATAGTTCATCGTAGGCT)(図12)を用いて、試料をPCR条件に付した。例えば、増幅緩衝液5.0μl、200μM dNTP、3mM MgCl、DNA 50ng、およびTaqポリメラーゼ5ユニットを供給して、タッチダウンPCR(例えば、94℃を30秒、63〜58℃を30秒、および72℃を10秒)の35サイクルにより、2つのパラログ間の配列差異の続く検出のために適切な量の増幅産物が生成される。図12は、使用したプライマーを示す最適化アッセイを示す。図3および図7は、定量化に使用される位置(丸を施すか、または矢印で示す)を示す。
【0093】
GABPA遺伝子パラログおよびGABPAに相当する増幅産物の量は、2つの遺伝子を区別する単一ヌクレオチド差異に関してアッセイすることにより確定された(図12の丸を施した配列、または図3の矢印で印を付けた配列を参照)。好ましくは、これは、シーケンシングプライマーGABPAS(TCACCAACCCAAGAAA)を用いたPyrosequencing(登録商標)方法により実行される。
【0094】
試料はpyrosequencerを用いて分析した。単一のヌクレオチド組み込み当たり10ユニットの閾値は、DNAのための品質管理として設定し、それ以下では試料は分析から廃棄された。この手順に従って、169個の試料が廃棄され、残りが分析された。この閾値は非常に控えめであるが、より低いシグナル強度を有するアッセイは、信頼性がより低い定量化をもたらす。図13は分析した230個の試料に関するG値の分布を示す。G対立遺伝子は、21番染色体の相対比率を表す。対照DNAは、標準偏差1.3%で51.11%の平均G値を有していた。トリソミー個体は、標準偏差1.90%で59.54%の平均値を有していた。グラフからわかるように、2つの群は十分に分離される。しかしながら、53.0〜54.9の値を有する試料に関しては、明確な診断を付与することはできない。しかしながら、試料のたった5%がこの間隔の範疇にあり、したがって、得られたデータに従って95%の事例で明確な診断を付与することができる。
【0095】
さらに、誤った診断が付与された試料が4つ存在した。ミクロサテライトマーカーを用いたさらなる分析により、これらの個体のうち3個が誤って分類されており、したがってトリソミー個体でなく対照であることがわかった。第4の試料(DS0006−F5)はトリソミーであると確認され、したがって同じ試料がCCT8アッセイでは正しい結果を付与したことから、おそらく反応における混入に起因した誤りを表す。
【0096】
図14は、GABPAアッセイに関する典型的なプログラムを示す。矢印は染色体定量化に使用した位置を示す。
【実施例4】
【0097】
以下の例は、本発明の方法により21トリソミーを検出する方法について記載しており、ここでパラロガスな遺伝子対の1つの成員はCCT8である。
【0098】
21トリソミーは、患者(例えば、胎児)からの少なくとも1つの細胞を含む試料を供給し、標準的な技法を用いて該細胞(複数可)からDNAを抽出することにより検出される。
【0099】
DNA試料(トリソミー試料および対照試料)を、それぞれ21番染色体および1番染色体上に位置するパラロガスな遺伝子であるCCT8(GenBankアクセッション番号NM006585)およびCCT8遺伝子パラログ(GenBankアクセッション番号LOC149003)の両方に特異的にアニーリングする単一のプライマー対とともに、PCRで使用される標準的なアニーリング条件下でインキュベートした。CCT8パラログおよびCCT8の配列のアラインメントを図4に示す。
【0100】
プライマー配列CCT8F(ATGAGATTCTTCCTAATTTG)およびCCT8R(GGTAATGAAGTATTTCTGG)(図15)を用いて、試料をPCR条件に付した。例えば、増幅緩衝液5.0μl、200μM dNTP、3mM MgCl、DNA 50ng、およびTaqポリメラーゼ5ユニットを供給して、タッチダウンPCR(例えば、94℃を30秒、63〜58℃を30秒、および72℃を10秒)の35サイクルにより、2つのパラログ間の配列差異の続く検出のために適切な量の増幅産物が生成される。図15は、使用したプライマーを示す最適化アッセイを示す。図4および図15は、定量化に使用された位置(丸を施すか、または矢印で示す)を示す。
【0101】
CCT8遺伝子パラログおよびCCT8に相当する増幅産物の量は、2つの遺伝子を区別する単一ヌクレオチド差異に関してアッセイすることにより確定された(図4及び図15の丸を施した配列、または矢印で印を付けた配列を参照)。好ましくは、これは、シーケンシングプライマーCCT8S(AAACAATATGGTAATGAA)を用いたpyrosequencing(登録商標)方法により実行される。
【0102】
試料は、実施例3に記載するようにpyrosequencerを用いて分析した。この手順に従って、210個の試料が廃棄され、残りが分析された。
【0103】
図16は、分析した190個の試料に関するT値(HC21の比率)の分布を示す。T対立遺伝子は、21番染色体の相対比率を表す。グラフからわかるように、分布は、GABPAアッセイの分布と非常に類似しており、十分に分離されたメジアンおよび明確な診断がなされ得ない中央の領域を有している。この場合、48〜50の値を有する試料は、診断することができないが、実施例3と同様に、試料のたった5%がこの範囲の範疇にある。さらに、おそらく混入の結果として、誤った診断が付与された試料が2/190個存在した。図17は、CCT8アッセイに関する典型的なプログラムを示す。矢印は染色体定量化に使用した位置を示す。
【0104】
GABPAおよびCCT8試験に関する立証研究からのデータは、各アッセイを別個に使用して、出所不明である(混入により引き起こされる可能性が高い)1〜1.5%の誤り率を伴って、95%の試料を正確に診断することができることを示す。しかしながら、両方の試験を一緒に考慮すれば、98%の試料を正確に診断することができ、(一方で、残りの2%に関しては診断を付与することができず)、より重要なことには、両方のアッセイが正反対の結果を生じるように3つの誤りが容易に検出され得ることをデータは示す。このことは、並行して2つの試験を使用することを強く主張して、誤診の蓋然性を最低限に抑える。
【0105】
本明細書中に記載される事項の変形、変更および他の実施態様(implementations)は、特許請求するような本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、上述の例示的説明により規定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の精神および範囲により規定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】それぞれ6番染色体および21番染色体上に位置されるSIM1およびSIM2パラログの部分配列アラインメントを示す。
【図2】ダウン症候群の個体および正常な個体におけるSIM1およびSIM2パラログの対立遺伝子比を示す。
【図3】GABPA遺伝子およびGABPA遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は21番染色体に対応し、第2の配列は7番染色体に対応する。アッセイされたヌクレオチドには斜線を施し、矢印で示している。
【図4】CCT8遺伝子およびCCT8遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は21番染色体に対応し、第2の配列は1番染色体に対応する。アッセイされたヌクレオチドには斜線を施し、矢印で示している。
【図5】RAP2A遺伝子およびRAP2A遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は13番染色体に対応し、第2の配列は3番染色体に対応する。アッセイされたヌクレオチドには斜線を施し、矢印で示している。
【図6】ME2遺伝子およびME2遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は18番染色体に対応し、第2の配列は9番染色体に対応する。アッセイされたヌクレオチドには斜線を施し、矢印で示している。
【図7】CDK8遺伝子およびCDK8遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は13番染色体に対応し、第2の配列は2番染色体に対応する。
【図8】ACAA2遺伝子およびACAA2遺伝子パラログ配列の配列アラインメントを示す。第1の配列は18番染色体に対応し、第2の配列は2番染色体に対応する。
【図9】本発明の方法の原理を示す。
【図10】ゲノムビューとして示される21番染色体上のITSN1遺伝子および5番染色体上のそのパラログを示すブラスト結果の一例である。
【図11】GABPAパイロット実験の結果を示す。パネルAは、対照試料とトリソミー試料との間に明確な識別を伴うパイログラムの一例を示す。矢印で示される位置にあるピーク間の比を参照されたい。Gピークは21番染色体を表す。パネルBは、一連の24個の対照および罹患被験体DNAに関するGピーク値(21番染色体)のプロットを示す。パネルCはデータの概括である。
【図12】使用したプライマー、ならびにGABPA最適化アッセイにおける定量化に使用された位置(丸を施してある)を示す。
【図13】GABPAアッセイで分析された230個の試料に関するG値の分布を示す。G対立遺伝子は21番染色体の相対比率を表す。
【図14】GABPAアッセイに関する典型的なパイログラムプログラムを示す。矢印は、染色体定量化に使用された位置を示す。
【図15】使用したプライマー、ならびにCCT8最適化アッセイにおける定量化に使用された位置(丸を施してある)を示す。
【図16】CCT8アッセイの結果を示す。分析された190個の試料に関するT値の分布が示されている。T対立遺伝子は21番染色体の比率を表す。
【図17】CCT8アッセイに関する典型的なパイログラムプログラムを示す。矢印は、染色体定量化に使用された位置を示す。

Claims (43)

  1. 個体からの核酸試料を用意すること、
    第1の染色体位置にある第1の配列を増幅して、第1の増幅産物を生産すること、
    第2の染色体位置にある第2の配列を増幅して、第2の増幅産物を生産すること、
    なお、前記第1および第2の増幅産物は、約80%を上回る配列同一性を含み、かつ少なくとも1つのヌクレオチド位置で少なくとも1つのヌクレオチド差異を含み、かつ、
    前記第1および第2の増幅産物の比を確定すること、
    ここで1:1ではない比は染色体不均衡の危険性を示すこと
    を含む、
    染色体不均衡の危険性を検出する方法。
  2. 前記増幅はPCRを用いて実施される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1および第2の配列は単一のプライマー対を用いて増幅される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第1および第2の染色体位置は異なる染色体上に存在する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記第1および第2の配列はパラロガスな配列である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記第1および第2の増幅産物は同じヌクレオチド長数である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記第1の増幅産物において前記少なくとも1つのヌクレオチド位置にある第1のヌクレオチドを同定すること、および
    前記第2の増幅産物において前記少なくとも1つのヌクレオチド位置にある第2のヌクレオチドを同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記同定することは前記第1および第2の増幅産物をシーケンシングすることにより実施される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記シーケンシングが、Pyrosequencing(登録商標)である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記試料中の前記少なくとも1つのヌクレオチド位置にある前記第1および第2のヌクレオチドの量を確定することをさらに含み、前記第1および第2のヌクレオチドの比は前記試料中の前記第1および第2の配列の存在量(dose)に比例する、請求項7,8,9のいずれかに記載の方法。
  11. 同一ヌクレオチドを含む前記第1および前記第2の増幅産物においてヌクレオチド位置にあるヌクレオチドの量を確定する工程をさらに含む、請求項7,8,9のいずれかに記載の方法。
  12. 前記染色体不均衡はトリソミーである、請求項1に記載の方法。
  13. 前記トリソミーは21トリソミーである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記染色体不均衡はモノソミーである、請求項1に記載の方法。
  15. 前記染色体不均衡は重複である、請求項1に記載の方法。
  16. 前記染色体不均衡は欠失である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記プライマーは結合対の第2の成員が結合されている固体支持体に結合するための結合対の第1の成員と連結され、前記第2の成員は前記第1の成員に特異的に結合することが可能である、請求項3に記載の方法。
  18. 前記第2の成員を含む前記固体支持体を用意すること、および前記第1の成員を含む前記プライマーを前記支持体に結合することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記結合することが、前記増幅に先立って実施される、請求項17に記載の方法。
  20. 前記結合することが、前記増幅の後に実施される、請求項18に記載の方法。
  21. 前記第1の配列はSIM1の配列を含み、前記第2の配列はSIM2の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  22. 前記プライマー対はSIMAF(GCAGTGGCTACTTGAAGAT)およびSIMAR(TCTCGGTGATGGCACTGG)を含む、請求項3に記載の方法。
  23. 前記試料は少なくとも1つの胎児細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  24. 前記試料は体細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  25. 前記第1の配列はGABPAパラログの配列を含み、前記第2の配列はGABPAの配列を含む、請求項1に記載の方法。
  26. 前記GABPAパラログは図3に示す配列を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記プライマー対はGABPAF(CTTACTGATAAGGACGCTC)およびGABPAR(CTCATAGTTCATCGTAGGCT)を含む、請求項3に記載の方法。
  28. 前記第1の配列はCCT8パラログの配列を含み、前記第2の配列はCCT8の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  29. 前記CCT8パラログは図4に示す配列を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記プライマー対はCCT8F(ATGAGATTCTTCCTAATTTG)およびCCT8R(GGTAATGAAGTATTTCTGG)を含む、請求項3に記載の方法。
  31. 前記第2の配列はC210RF19の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  32. 前記第2の配列はDSCR3の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  33. 前記第2の配列はKIAA0958の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  34. 前記第2の配列はTTC3の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  35. 前記第2の配列はITSN1の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  36. 前記第1の配列はRAP2Aパラログの配列を含み、前記第2の配列はRAP2A配列の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  37. 前記RAP2Aパラログは図5に示す配列を含む、請求項36に記載の方法。
  38. 前記第1の配列はCDK8パラログの配列を含み、前記第2の配列はCDK8の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  39. 前記CDK8パラログは図7に示す配列を含む、請求項38に記載の方法。
  40. 前記第1の配列はACAA2パラログの配列を含み、前記第2の配列はACAA2の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  41. 前記ACAA2パラログは図8に示す配列を含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記第1の配列はME2パラログの配列を含み、前記第2の配列はME2の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  43. 前記ME2パラログは図6に示す配列を含む、請求項42に記載の方法。
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