JP2004213990A - 透明導電性フィルムおよびタッチパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】タッチパネル作製工程での加熱や、該工程で使用される有機溶剤による劣化が抑制されており、さらに、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性も優れる透明導電性フィルムと、該透明導電性フィルムを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成された透明導電性フィルムであって、前記易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものであり、さらに透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さが特定範囲にあることを特徴とする透明導電性フィルムと、該透明導電性フィルムを用いたタッチパネルである。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成された透明導電性フィルムであって、前記易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものであり、さらに透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さが特定範囲にあることを特徴とする透明導電性フィルムと、該透明導電性フィルムを用いたタッチパネルである。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明プラスチックフィルム上に透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルム、および該透明導電性フィルムを用いてなるタッチパネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明プラスチックフィルムに、透明でかつ電気抵抗が小さな薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その透明性と導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極など、電気・電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、携帯情報端末やタッチパネル付きノートパソコンの普及により、従来以上に信頼性の優れたタッチパネルが要求されるようになってきた。
【0004】
上記の如き透明導電性フィルムには、例えば、次のような特性が要求されている。透明導電性フィルムをタッチパネルに加工する際には、銀ペーストなどを印刷するため、150℃程度の加熱が必要であり、この加熱に耐え得る耐熱性が必要となる。また、組立工程では種々の有機溶剤を含んだインクなどを用いるため、有機溶剤に対する耐性も要求される。さらに、タッチパネルは、指やペンからの繰り返し荷重を受けるため、これに用いる透明導電性フィルムには、透明導電性薄膜が劣化しないように、下地と透明導電性薄膜の付着力が十分高いことが求められている。
【0005】
例えば、従来の透明導電性フィルムとしては、透明導電性薄膜の下地層として、水性ポリウレタン樹脂(特許文献1)や熱可塑性ポリエステル系樹脂(特許文献2)を用いたものなどが提案されている。透明導電性フィルムの下地層に、これらの樹脂を用いた場合には、プラスチックフィルムに直接、透明導電性薄膜を形成する場合に比べて、透明導電性薄膜の付着力が向上する。
【0006】
しかしながら、上記の如き下地層は、十分な耐久性を有していない。また、150℃で60分程度の加熱を行うと、白化し、外観不良を生じる。これは、プラスチックフィルムから加熱によって発生するオリゴマーなどの析出に起因する。さらに、タッチパネル作製工程で使用する有機溶剤にも十分に耐え得るものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−319135号公報
【特許文献2】
特開平2−276106号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチパネル作製工程での加熱や、該工程で使用される有機溶剤による劣化が抑制されており、さらに、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性も優れる透明導電性フィルムと、該透明導電性フィルムを用いたタッチパネルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成された透明導電性フィルムであって、前記易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度(Tg)が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものであり、透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さ(Rms)が、1.0μm×1.0μmの領域において、0.3〜2nmであるところに要旨を有するものである。なお、本発明でいう「フィルム」は、所謂「シート」も含む概念である。
【0010】
上記透明導電性薄膜は、インジウム−スズ複合酸化物から形成されたものであることが推奨される。
【0011】
また、透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、ハードコート層が形成されている上記透明導電性フィルムも、本発明の好ましい実施態様である。上記ハードコート層としては、防眩性を有するものや、低反射処理が施されたものが好適である。
【0012】
また、透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、粘着剤を介して透明樹脂フィルムが積層された構成の上記透明導電性フィルムも、本発明の好ましい実施態様の一つである。
【0013】
さらに本発明には、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、スペーサーを介して透明導電性薄膜が対向するように配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が、上記の各透明導電性フィルムからなるタッチパネルも、本発明に包含される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、タッチパネルに好適な透明導電性フィルムを開発すべく、鋭意検討を重ねてきた。その結果、基材となる透明プラスチックフィルムと、導電性確保のための透明導電性薄膜との間に介在させる易接着層を、特定の樹脂および/またはその架橋体を主成分とするものとした場合には、透明プラスチックフィルムと透明導電性薄膜との密着性を高めると共に、タッチパネル作製工程の際の加熱に耐え得る耐熱性や、有機溶剤に対する耐性(耐薬品性)を確保し、さらには、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性をも高め得ることを見出した。また、上記透明導電性フィルムにおいては、透明導電性薄膜側表面の表面粗さが、該フィルムをタッチパネルに用いた際の耐久性に大きく影響することも見出した。本発明者等は、このような知見に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0015】
なお、本発明の透明導電性フィルムにおける「透明」とは、無色透明、有色透明を問わず、JIS K 7105に準じて測定される光線透過率が80%以上の場合を意味する。また、本発明の透明導電性フィルムの導電性は、その用途に適した導電性を有していればよいが、例えば、10kΩ/□以下であれば良好である。以下、本発明の透明導電性フィルム、および、タッチパネルの詳細について説明する。
【0016】
[透明プラスチックフィルム]
本発明の透明導電性フィルム(以下、単に「フィルム」という場合がある)に用い得る透明プラスチックフィルムとは、有機高分子を溶融押出、または溶液押出し、さらに必要に応じて長手方向および/または幅方向に延伸し、冷却・熱固定を施して得られるフィルムである。なお、上記透明プラスチックフィルムは、本発明の透明導電性フィルムに要求される透明性が確保可能な程度の透明性を有していればよく、無色透明であっても、有色透明であっても構わない。
【0017】
透明プラスチックフィルムに用い得る有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリアミドまたはポリイミド;ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0018】
上記の有機高分子の中でも、PET、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は、他の有機高分子の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0019】
透明プラスチックフィルムの厚みは、10μmを超え、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは70μm以上260μm以下である。透明プラスチックフィルムの厚みが上記範囲を下回ると、透明導電性フィルムの機械的強度が不足する傾向にあり、他方、上記範囲を超えると、例えば透明導電性フィルムをタッチパネルに用いた際に、該フィルムを変形させるためのペン荷重が大きくなる傾向にあり、好ましくない。
【0020】
上記透明プラスチックフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、コロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸またはアルカリを用いた化学薬品処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0021】
[易接着層]
本発明のフィルムに係る易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものである。なお、上記グラフトとは、幹ポリマーである疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に、これとは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。また、本発明でいう「ポリエステル系グラフト共重合体」とは、全ての疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に上述の酸無水物がグラフト共重合されている態様から、疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に該酸無水物がグラフトされてなるグラフト共重合分子と該酸無水物がグラフトされていない未反応の疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子との混合物の態様までを含む。また、「ポリエステル系グラフト共重合体」には、後述の他の重合性不飽和単量体を上述の酸無水物と共に用いた場合には、酸無水物がグラフトされておらず、他の重合性不飽和単量体のみがグラフトされた疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子が混合されている態様も含まれ、さらに、上述の酸無水物のみ、あるいは他の重合性不飽和単量体のみからなる重合物や、酸無水物と他の重合性不飽和単量体との共重合物が混合されている態様も包含される。
【0022】
上記ポリエステル系グラフト共重合体は、例えば、疎水性共重合性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解させた状態で、上述の二重結合を有する酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびラジカル開始剤の混合物を反応させることで得ることができる。
【0023】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂は、それ自身で水に分散または溶解しないものである。水に分散するか、または溶解するポリエステル樹脂に、二重結合を有する酸無水物をグラフトすると、透明プラスチックフィルムおよび透明導電性薄膜との接着性や、耐水性が低下する傾向にある。
【0024】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂は、公知のジカルボン酸(酸無水物を含む)などの酸成分と、公知のグリコールなどのアルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとするものである。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物などの脂環族ジカルボン酸;重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸などが挙げられる。重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和二重結合を有する脂環族ジカルボン酸;などが挙げられる。上記例示の重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸の中でも、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が、重合性の観点から推奨される。
【0026】
これらのジカルボン酸は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの親水基含有ジカルボン酸は、耐水性低下を引き起こすため、使用しない方が好ましい。
【0027】
また、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの多価カルボン酸を一部併用してもよい。
【0028】
上記グリコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールなどが挙げられる。
【0029】
炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられる。また、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0030】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物[例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなど]、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが例示できる。
【0031】
また、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールを一部併用してもよい。
【0032】
上記ポリエステル系樹脂の合成法は特に限定されず、上述のジカルボン酸やグリコールなどを、常法により溶融重合することで合成できる。なお、上記ポリエステル系樹脂においては、酸成分由来の成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸由来の成分が60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が0.5〜10モル%であることが好ましい。
【0033】
芳香族ジカルボン酸由来の成分が60モル%未満である場合や、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が40モル%を超える場合には、透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との接着強度が低下する傾向にある。また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が0.5モル%未満の場合には、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に対して、グラフト用の酸無水物の効率的なグラフト化反応が達成され難くなり、他方、10モル%を超えると、グラフト化反応の後期に粘度が上昇しすぎて反応の均一な進行が妨げられるので好ましくない。より好ましくは、酸成分由来の成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸由来の成分が70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が2〜70モル%である。
【0034】
また、上述の多価カルボン酸や多価アルコールを用いる場合には、全酸成分100モル%中、多価カルボン酸を5モル%以下(より好ましくは3モル%以下)、全アルコール成分中、多価アルコールを5モル%以下(より好ましくは3モル%以下)とすることが推奨される。多価カルボン酸、多価アルコールの量が上記範囲を超える場合には、ポリエステル樹脂の重合の際にゲル化が生じ易くなり、好ましくない。
【0035】
また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量で5000〜50000であることが望ましい。重量平均分子量が5000未満の場合には、接着強度が低下する傾向にあり、他方、50000を超える場合は、重合時のゲル化の問題が生じる傾向にある。
【0036】
上記ポリエステル系グラフト共重合体に用いられる「少なくとも1つの二重結合を有する酸無水物」としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸の無水物;2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和二重結合を有する脂環族ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。また、上記ポリエステル系グラフト共重合体には、上述の酸無水物以外にも、他の重合性不飽和単量体がグラフトされていても構わない。
【0037】
他の重合性不飽和単量体としては、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミドなどのマレイミドなど;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレンとその誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)などのアクリル系単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有アクリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N,N−ジメチロ−ルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル系単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル系単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル系単量体アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)などのカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル系単量体;などが例示できる。
【0038】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂のグラフト化反応を行う際には、該疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性モノマー(上述の酸無水物、および他の重合性不飽和単量体を意味する。以下同じ。)との使用比率(質量比)は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂/重合性モノマー=40/60〜95/5であることが好ましく、55/45〜93/7であることがより好ましく、60/40〜90/10であることがさらに好ましい。疎水性共重合性ポリエステル樹脂の使用比率が上記範囲を下回る場合には、優れた接着性を発揮することができない。他方、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の使用比率が上記範囲を超える場合には、ポリエステル樹脂の欠点であるブロッキングが生じ易くなる。
【0039】
また、上述の酸無水物と他の重合性不飽和単量体との使用比率(質量比)は、酸無水物100質量部に対して、他の重合性不飽和単量体を400質量部以下、とすることが好ましく、300質量部以下とすることがより好ましく、200質量部以下とすることがさらに好ましい。他の重合性不飽和単量体の使用量が上記下限値を超える場合には、上記酸無水物の使用量、延いては酸無水物のグラフト量が減少するため、本発明の効果が十分に確保できない場合がある。
【0040】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂のグラフト化反応に用い得るラジカル開始剤としては、公知の有機化酸化物類や有機アゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物類としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレートなどが、有機アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)などが例示できる。グラフト化反応を行うためのラジカル開始剤の使用量は、重合性モノマーに対して、少なくとも0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。
【0041】
ラジカル開始剤の他に、枝ポリマー(上述の酸無水物および他の重合性不飽和単量体から形成される側鎖部分)の鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して5質量%以下の範囲で添加されることが望ましい。なお、上記枝ポリマーの重量平均分子量は、500〜50000であることが望ましい。枝ポリマーの重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の側鎖(グラフト鎖)形成が十分に行なわれない傾向がある。また、易接着層は、ポリエステル系グラフト共重合体が平均的に分散した水分散体である易接着層形成用組成物を用いて形成することが好ましい(後述する)。この際、ポリエステル系グラフト共重合体の側鎖(上記枝ポリマー部分)は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには、上記枝ポリマーの重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また上記ポリエステル系グラフト共重合体の上記枝ポリマーの重量平均分子量の上限は、グラフト化反応を溶液系で行う際の反応性の点で50000が望ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、開始剤量、モノマー滴下時間、反応時間、反応溶媒、モノマー組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0042】
上記ポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト化反応溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、好ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を超えるものは、余りに蒸発速度がおそく、易接着層を高温焼付によって形成しても充分に取り除くことができないので不適当である。また沸点が50℃以下では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いル必要があるため、取扱上の危険が増大し、好ましくない。
【0043】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつ上述の酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびこれらの重合物を比較的よく溶解する第一群の水性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルカルビト−ル、エチルカルビト−ル、ブチルカルビト−ルなどのカルビトール類;エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール若しくはグリコールエーテルの低級エステル類;ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのN−置換アミド類などを例示することができる。
【0044】
また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないが、上記酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびこれらの重合物を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などを挙げることができる。また、有機溶媒ではないが、水も、第二群の水性有機溶媒に類するものとして例示できる(以下、水も第二群の溶媒に含めることとする)。上記ポリエステル系グラフト共重合体の合成に特に好ましいものは、炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0045】
グラフト化反応を単一溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選択すればよい。混合溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選択してもよく、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選び、それに第二群の水性有機溶媒のうちの少なくとも一種を加えてもよい。
【0046】
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒の夫々一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト化反応を行うことが可能である。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物(ポリエステル系グラフト共重合体)、およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒の夫々一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0047】
第一群の溶媒中では、疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子鎖は、広がりの大きな鎖の伸びた状態にあり、他方、第一群/第二群の混合溶媒中では、広がりの小さな糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中の疎水性共重合性ポリエステルの粘度測定により確認された。疎水性共重合性ポリエステルの溶解状態を調節し、グラフト化反応時の分子間架橋を起こり難くすることが、ゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は、後者の混合溶媒系において達成される。第一群/第二群の混合溶媒の質量比率は、好ましくは95/5〜10/90、より好ましくは90/10〜20/80、さらに好ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は、使用する疎水性共重合性ポリエステル樹脂の溶解性などに応じて適宜決定される。
【0048】
なお、上記ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上である。Tgが20℃未満の場合は、易接着層上に透明導電性薄膜を後述の方法で形成すると、該透明導電性薄膜の均一性が損なわれる傾向にある。より好ましいTgは40℃以上である。また、Tgの上限は、例えば後述のインラインコート法で易接着層を形成する場合における造膜性および接着性の点から、100℃であることが好ましく、80℃であることが特に好ましい。
【0049】
なお、本発明のフィルムに係る上記ポリエステル系グラフト共重合体のTgは、該共重合体を13.3Pa以下の減圧下、100℃で2時間乾燥して得られる固形分を、示差走査熱量計(DSC)(例えば、理学電機株式会社製「DSC−10A」)を用いて、JIS K 7121の9.3項の規定に準拠して測定する。
【0050】
また、上記ポリエステル系グラフト共重合体の酸価は600eq/106g以上であることが好ましい。より好ましい酸価は1200eq/106g以上である。酸価が600eq/106g未満である場合は、透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との接着性が不十分となる場合がある。
【0051】
易接着層は、上記の通り、水を含む溶媒中にポリエステル系グラフト共重合体が平均的に分散した水分散体である易接着層形成用組成物を用いて形成することが好ましい。この易接着層形成用組成物を透明プラスチックフィルムに塗布し、乾燥することで、易接着層を形成することができる。易接着層形成用組成物は、例えば、上記のグラフト化反応終了後の反応溶液に、必要に応じて水添加・有機溶媒の蒸発除去を行い、さらに必要に応じて他の添加物を加えて得ることができる。
【0052】
なお、易接着層形成用組成物中では、ポリエステル系グラフト共重合体は、レーザー光散乱法により測定される平均径が500nm以下の粒子であることが好ましく、その場合、該組成物は半透明ないし乳白色の外観を呈する。なお、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成や、その後のグラフト化反応の際の条件の調整により、多様な粒子径とすることができるが、この粒子径は10〜500nmがより好ましく、分散安定性の点では400nm以下がさらに好ましく、特に好ましくは300nm以下である。上記平均粒子径が500nmを超えると易接着層表面の光沢が低下する傾向にあり、透明導電性フィルムの透明性が損なわれる場合がある。また、平均粒子径が10nm未満の場合は、ポリエステル系グラフト共重合体の親水性が高いため、易接着層の耐水性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0053】
また、上記の易接着層形成用組成物中では、ポリエステル系グラフト共重合体は塩基性化合物で中和されていることが好ましい。この中和によって容易に水分散体とすることができる。塩基性化合物としては、易接着層形成時や、硬化剤を配合した場合(後述する)にあっては焼き付け硬化時に、揮散する化合物が好ましく、アンモニアや有機アミン類が好適である。好ましい有機アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。塩基性化合物は、ポリエステル系グラフト共重合体に含まれるカルボキシル基(加水分解前の酸無水物基を含む)量に応じて、少なくとも部分中和、あるいは完全中和によって、水分散体のpH値が5.0〜9.0となるように使用することが望ましい。また、沸点が100℃以下の塩基性化合物を用いた場合には、易接着層中の残留塩基性化合物量を少なくすることができ、透明導電性薄膜との接着性や、他の材料を積層した際の耐水性・耐熱水接着性が優れたものとなる。
【0054】
上記ポリエステル系グラフト共重合体は自己架橋性を有するため、易接着層は高度な耐有機溶剤性を発揮し得る。すなわち、上記ポリエステル系グラフト共重合体は、常温では架橋しないが、上述の易接着層形成用組成物を塗布後、乾燥する際の熱で、熱ラジカルによる水素引抜反応などの分子間反応を起こし、架橋剤を使用しなくても架橋構造を形成し得る。この架橋構造の形成により、本発明のフィルムに係る易接着層に要求される接着性、耐水性、耐有機溶剤性を発現する。
【0055】
易接着層の架橋の程度については、種々の方法で評価できるが、代表的なものとして、疎水性共重合性ポリエステル樹脂、および上述の酸無水物や他の重合性不飽和単量体から形成される重合物の双方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率を調べる方法が挙げられる。上述の易接着層形成用組成物では、該組成物の塗工膜を80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる形成被膜の不溶分率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であることが推奨される。上記形成被膜の不溶分率が50質量%未満の場合は、接着性、耐水性が不十分となる傾向にある他、ブロッキングも起こし易くなる。
【0056】
また、上記易接着層では、各種の架橋剤を用いて、易接着性をさらに向上させることができる。架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、イソシアネート系、アミン系、アミド系、アジリジン系などの各種化合物を挙げることができるが、架橋剤の種類および配合量は、上記ポリエステル系グラフト共重合体の種類や、該共重合体の有する官能基量などに応じて適宜決定すればよい。例えばメラミン系架橋剤を用いる場合、上記ポリエステル系グラフト共重合体100質量部に対し、2〜30質量部とすることが好ましい。
【0057】
上記ポリエステル系グラフト共重合体を含む水分散液(易接着層形成用組成物)を透明プラスチックフィルム表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を上げ、水分散液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を、適量添加して用いてもよい。
【0058】
本発明の易接着層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤などを添加しても良い。これらを易接着層中に導入するには、例えば易接着層形成用組成物に添加する方法が採用可能である。
【0059】
また、易接着層は、上記ポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体と共に、他のポリエステル樹脂を含有していてもよい。他のポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体といったジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンなどのグリコールなどから形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとするポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0060】
なお、上記他のポリエステル樹脂においても、易接着層形成用組成物中での水分散性を向上させるために、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5,(2,5−ジオキソテトラヒドロフリフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジョキソテトラヒドロフリフリル)−3−シクロヒキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6,−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビステリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
なお、上記他のポリエステル樹脂は、そのTgが20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。Tgが20℃未満の場合は、上記ポリエステル系グラフト共重合体のTgが20℃以上であっても、易接着層上に透明導電性薄膜を後述の方法で形成すると、該透明導電性薄膜の均一性が損なわれる場合がある。
【0062】
上記他のポリエステル樹脂を用いる場合には、上記易接着層形成用組成物において、上記ポリエステル系グラフト共重合体100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましく、80質量部以下とすることがさらに好ましい。上記他のポリエステル樹脂の混合比率が上記上限値を超える場合には、易接着層中のポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体の割合が減少するため、本発明の効果を十分に確保できない場合がある。
【0063】
上述の易接着層形成用組成物を用いて易接着層を形成する場合であって、透明プラスチックフィルムに二軸延伸フィルムを用いる場合では、易接着層形成用組成物を塗布する段階としては、透明プラスチックフィルムの延伸前、一軸延伸後二軸延伸前、二軸延伸後のいずれであってもよい。例えば、透明プラスチックフィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合では、該ポリエステルフィルムの配向が完了する前に上記易接着層形成用組成物を塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの配向を完了させるインラインコート法が、本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい。なお、上記易接着層形成用組成物の塗布の際には、公知の塗布方法、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法などが採用可能であり、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて行うことができる。
【0064】
以下、代表して、インラインコート法による易接着層の形成方法を説明する。未延伸または一軸延伸後の透明プラスチックフィルムに易接着層形成用組成物を塗布し、乾燥する。インラインコート法では、この乾燥工程の際に、水などの溶媒分のみを取り除き、且つ易接着層の架橋反応が進行しない温度および時間を選択する必要がある。
【0065】
具体的には、乾燥温度を70〜140℃とすることが好ましく、乾燥時間は、易接着層形成用組成物の内容やその塗布量に応じて調整するが、例えば、乾燥温度(℃)と乾燥時間(秒)の積を3000以下とすることが好ましいといった知見が、本発明者等の研究によって得られている。上記積が3000を超える場合には、延伸前に易接着層の架橋反応が始まり、該易接着層に割れなどが生じる傾向にあるため、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0066】
易接着層形成用組成物の塗布・乾燥後に、延伸を施す。この際の延伸条件は、透明プラスチックフィルムの素材に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
延伸後のフィルムには、通常、2〜10%程度の弛緩処理を施すが、本発明では、易接着層の歪が少ない状態、すなわち、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、例えば赤外線ヒーターによって易接着層を加熱することが好ましい。その際の加熱は、250〜260℃程度で、0.5〜1秒程度と短時間で行うことが望ましい。このような操作を行うことで、易接着層中のポリエステル系グラフト共重合体の架橋がより一層促進され、易接着層が一段と強固になり、該層と透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との密着性がさらに良好なものとなる。
【0068】
なお、上記弛緩処理の際の加熱温度または加熱時間が、上述の好適範囲を超える場合は、透明プラスチックフィルムの結晶化または溶融が生じ易くなり、好ましくない。他方、上記加熱温度または上記加熱時間が、上述の好適範囲を下回ると、易接着層の架橋が不十分となる場合があり、易接着層と透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との密着性が不十分となることがある。
【0069】
易接着層の厚みは特に限定されないが、本発明では、乾燥塗布厚みで0.02〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.07〜0.2μmである。
【0070】
[透明導電性薄膜]
本発明のフィルムで用い得る透明導電性薄膜としては、本発明のフィルムで要求される透明性と導電性が確保可能なものであれば特に限定されない。例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅および銅合金、金などの単層構造もしくは2層以上の積層構造のものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0071】
透明導電性薄膜の膜厚は4〜800nmであることが好ましく、特に好ましくは5〜500nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になり難く、良好な導電性を示し難い傾向がある。他方、800nmよりも厚い場合には、透明性が低下し易くなる。
【0072】
上記透明導電性薄膜を形成するに当たっては、上記例示の金属酸化物や金属を用い、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などの公知の成膜方法から、必要とする膜厚に応じた好適な方法を、適宜選択することができる。
【0073】
例えば、スパッタリング法の場合、金属酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法などが用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素などを導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシストなどの手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0074】
なお、本発明のフィルムでは、透明導電性薄膜側表面がある程度粗いことが好ましく、具体的には、該透明導電性薄膜側表面での自乗平均面粗さ(Rms)が、1.0μm×1.0μmの領域において、0.3〜2nm、より好ましくは0.4〜1.5nmとすることが重要である。これは、例えばタッチパネルに用いた際に、タッチペンなどにより荷重が付加された際に、ガラス基板などの隣接する部材との摩擦が生じる真の接触面積を小さくし、滑り性を良くすることで導電性薄膜表面にかかる負荷を低減するためである。
【0075】
透明導電性薄膜表面の狭領域における表面粗さを高めるためには、透明導電性薄膜を形成する際に、以下の2つの方法を採用することが有効である。
(1)フィルム基板の温度を高くする。
(2)透明導電性薄膜形成の際に、雰囲気中の水分や有機物などの不純物を除去する。
【0076】
透明導電性薄膜の表面粗さを高くするためには、基板となるフィルムの温度を高くすることが重要なポイントの1つである。これは、透明導電性薄膜の形成時において、蒸着粒子が堆積する際に基板(フィルム)表面でマイグレーションが生じるために、より大きな透明導電性薄膜素材のグレインが最表面において形成される。その結果、透明導電性薄膜素材のグレイン間の界面における溝深さが深くなり、表面粗さが向上する要因となる。
【0077】
例えば、スパッタリング法により巻き取り式装置を用いて、透明導電性薄膜をフィルム上に形成する場合には、フィルム背面(透明導電性薄膜形成面とは反対面)に接触するロール温度を高くすることで、基板となるフィルムの温度を高くすることが可能である。
【0078】
透明導電性薄膜を形成する際の温度は、10〜150℃とすることが好ましい。上記温度が150℃を越えると、透明プラスチックフィルム表面(あるいは易接着層表面)が柔らかくなり、真空チェンバー走行中に傷が発生し易くなる。また、10℃未満の温度では、表面粗さの大きな導電性薄膜を得ることが難しくなる。
【0079】
ロール温度を制御するには、ロール内に水路を設けて、この水路中に温度調整された熱媒を流せばよい。この熱媒としては、特に制限はないが、水やオイル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの単体およびこれらの混合物が好適である。
【0080】
また、フィルムの透明導電性薄膜表面において、表面粗さを高めるためには、透明導電性薄膜形成の際の雰囲気中の水や有機物などの不純物を、できるだけ除去することも重要なポイントである。
【0081】
例えば、透明導電性薄膜をスパッタリング法で形成する場合には、スパッタリングを行う前に真空チェンバー内の圧力を0.001Pa以下の真空度まで排気した後に、Arなどの不活性ガスと酸素などの反応性ガスを真空チェンバーに導入し、0.01〜10Paの圧力範囲において放電を発生させ、スパッタリングを行うことが好ましい。また、真空蒸着法、CVD法などの他の方法においても同様である。
【0082】
なお、スパッタリング法などの真空プロセスによって透明導電性薄膜を形成する場合には、基材となる透明プラスチックフィルムや易接着層中に揮発成分が存在すると、真空プロセスに悪影響を与える。
【0083】
透明プラスチックフィルムや易接着層中に揮発成分が存在すると、例えば、スパッタリング法でインジウム−スズ複合酸化物薄膜を形成する場合、スパッタリングされたインジウム原子と、透明プラスチックフィルムや易接着層から揮発したガスが気相中で衝突し、インジウム原子のエネルギーが低下する。この結果、形成される透明導電性薄膜の表面粗さは低下する。
【0084】
また、揮発したガス成分が透明導電性薄膜中に不純物として取り込まれると、膜組成の変動や膜構造の変化などにより、膜質の不良な透明導電性薄膜が形成され、表面粗さは低下する。
【0085】
このような表面が平滑であり、自乗平均面粗さ(Rms)の低い透明導電性薄膜が積層された透明導電性フィルムをタッチパネルに用いると、例えば、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験後に、透明導電性薄膜が摩耗劣化し好ましくない。このことは、透明導電性フィルムをタッチパネルに用いた際の繰り返し荷重に対する耐久性が、該タッチパネルの用途によっては、必ずしも十分ではないことを意味している。
【0086】
例えば、易接着層中に存在する揮発成分としては、上述の易接着層形成用組成物および該組成物からの副生成物などが挙げられる。
【0087】
上記の揮発成分を減少させるためには、易接着層を設けた透明プラスチックフィルムに加熱処理を施すのが好適である。このときの加熱処理温度は100〜200℃の範囲であることが好ましい。100℃未満では揮発成分を減少させる効果が不十分となり易く、200℃を越える温度では、フィルムの平面性を保つのが難しくなる傾向にある。
【0088】
また、スパッタリングなどを行う真空チェンバーの中で、易接着層を設けた透明プラスチックフィルムを真空暴露し、揮発成分を減少させることも有効な手段である。例えば、真空暴露の際にフィルムに接触するロール温度を高くしておいたり、赤外線ヒーターによるフィルム加熱を併用することで、揮発成分をより減少させることが可能となる。
【0089】
上記のように透明導電性薄膜形成の際の雰囲気中の水分や有機物などの不純物を、可能な限り除去することで、膜質に優れると共に、狭領域において、自乗平均面粗さを上記範囲で有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムが得られる。そのため、この透明導電性薄膜をタッチパネルに用いると、例えば、ポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)を用いて、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験を行った後でも透明導電性薄膜の劣化が見られない。
【0090】
また、透明導電性薄膜表面の狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)を高める観点からは、該薄膜形成後に加熱、紫外線照射などの手段でエネルギーを付与してもよい。これらのエネルギー付与手段のうち、酸素雰囲気下での加熱処理が好適である。
【0091】
上記の加熱処理を施す場合、温度は150〜200℃であることが好ましい。150℃未満の温度では、膜質改善の効果が不十分である。一方、200℃を超える温度ではフィルムの平面性を維持するのが難しくなり、さらに透明導電性薄膜の結晶化度が非常に高くなり、脆い透明導電性薄膜となってしまう。
【0092】
また、加熱処理時間としては0.2〜60分とすることが好適である。0.2分未満では、たとえ220℃程度の高温で加熱処理を行っても膜質改善の効果が不十分となり、好ましくない。他方、60分を超える加熱処理時間では工業的に不適である。
【0093】
また、上記の加熱処理を行う雰囲気は、予め0.2Pa以下の圧力まで排気した後に酸素で満たした空間で行うことが好ましい。酸素導入後の圧力は大気圧以下であることが好ましい。
【0094】
[透明導電性フィルムの積層構成]
本発明の透明導電性フィルムでは、上記透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜を形成した構成でも、また、透明プラスチックフィルムの両面に易接着層を形成し、該易接着層の少なくとも一方の表面に透明導電性薄膜を形成した構成でもよく、該透明導電性フィルムの用途に応じて適宜選択することができる。また、上述の、透明プラスチックフィルムの片面に易接着層を介して透明導電性薄膜を形成した構成の場合、透明導電性薄膜形成面の反対面に、ハードコート層を設けたり、透明樹脂フィルムを積層したりすることもできる。
【0095】
[ハードコート層]
本発明のフィルムに形成するハードコート層としては、鉛筆硬度で2H以上の硬度を有するものであることが好ましい。ハードコート層の鉛筆硬度が2H未満では、透明導電性フィルムの耐擦傷性向上の観点からは不十分である。また、上記ハードコート層の厚みは0.5〜10μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満では、耐擦傷性が不十分となり易く、10μmを超える場合は生産性の観点から好ましくない。
【0096】
ハードコート層の素材としては、公知の硬化型樹脂が用いられる。好ましくは、アクリレート系の官能基を有する樹脂である。このような硬化型樹脂の具体例としては、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコールなどの多官能化合物と(メタ)アクリレートなどとのオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。
【0097】
上記の硬化型樹脂は、一般に反応性希釈剤と共に用いられる。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能モノマーや、多官能モリマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
【0098】
なお、本発明のフィルムにおいては、硬化型樹脂として、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。ポリエステルアクリレートは、形成被膜が非常に硬くハードコート層として適している。しかしながら、ポリエステルアクリレート単独の被膜では、耐衝撃性が低く脆くなりやすいという問題がある。そこで、形成被膜に耐衝撃性および柔軟性を与えるために、ポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。すなわち、ポリエステルアクリレートにポリウレタンアクリレートを併用することで、形成被膜はハードコート層としての硬度を維持しながら、耐衝撃性および柔軟性を具備することができる。
【0099】
ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートを併用する場合、その配合割合は、ポリエステルアクリレート:100質量部に対し、ポリウレタンアクリレートを30質量部以下とするのが好ましい。ポリウレタンアクリレート樹脂の配合割合が30質量部を超えると、形成被膜が柔らかくなりすぎて耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0100】
また、本発明のフィルムで用いる上記反応性希釈剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好適である。
【0101】
ハードコート層は、上記例示の硬化型樹脂と反応性希釈剤を含む組成物を透明プラスチックフィルム表面や易接着層表面などに塗布し、硬化することで形成できる。硬化方法は特に限定されず、通常の硬化方法、例えば、加熱や、光(紫外線など)、電子線などを照射して硬化する方法を用いることができる。
【0102】
例えば、電子線硬化法の場合は、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線などが使用できる。
【0103】
また、光硬化法の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハイライドランプなどの光線から発する紫外線などが利用できる。なお、光硬化法を採用する場合は、硬化型樹脂と反応性希釈剤を含む組成物に、さらに光重合開始剤および光増感剤を含有させることが一般的である。例えば、光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラ−ベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などの公知の光重合開始剤が、光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどの公知の光増感剤が使用可能である。
【0104】
また、本発明のフィルムに適用するハードコート層は、防眩性を有するものであることが好ましい。防眩性を付与するには、上述の硬化型樹脂中にCaCO3やSiO2などの無機粒子を分散させたり、ハードコート層の表面に凹凸形状を形成させることが有効である。
【0105】
例えば、凹凸を形成するには、硬化型樹脂組成物塗液を塗工後、表面に凸形状を有する賦形フィルムをラミネートし、この賦形フィルム上から紫外線などを照射して硬化型樹脂を硬化させた後、賦形フィルムのみを剥離する方法が採用できる。
【0106】
上記賦型フィルムには、離型性を有するPETなどの基材フィルム上に所望の凸形状を設けたものや、PETなどの基材フィルム上に繊細な凸層を形成したものなどを用いることができる。この凸層の形成は、例えば、無機粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用いて上記基材フィルム上に塗工する方法などが採用可能である。
【0107】
上記バインダー樹脂は、例えば、ポリイソシアネートで架橋されたアクリルポリオールなどを、無機粒子としては、CaCO3やSiO2などを用いることができる。また、この他にPET製造時にSiO2などの無機粒子を練込んだマットタイプのPETも用いることができる。
【0108】
この賦型フィルムをハードコート形成用の硬化型樹脂組成物塗膜にラミネートした後紫外線を照射して該塗膜を硬化する場合であって、賦型フィルムがPETを基材としたフィルムの場合には、該フィルムに紫外線の短波長側が吸収され、硬化型樹脂組成物塗膜の硬化が不足するという欠点がある。したがって、紫外線硬化型樹脂組成物の塗膜にラミネートする賦型フィルムは、380nmの波長の光の透過率が20%以上のものを使用する必要がある。
【0109】
また、上記ハードコート層には低反射処理を施してもよく、この処理によって例えばフィルムをタッチパネルに使用した際に、可視光線透過率を高めることが可能となる。この低反射処理としては、ハードコート層とは異なる屈折率を有する材料から構成される低反射処理層をハードコート層表面に設ける処理が好ましい。
【0110】
上記の低反射処理を、上記低反射処理層を設けることで実施する場合であって、該低反射処理層が単層構造の場合には、該低反射処理層をハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料で形成することが好ましい。また、低反射処理層を2層以上の多層構造とする場合は、ハードコート層と隣接する層には、ハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用いることが推奨される。このような低反射処理層を構成する材料としては、上述の屈折率の関係を満足し得るものであれば、有機材料であっても無機材料であってもよく、特に限定されない。例えば、CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2O3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In2O3などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0111】
上記低反射処理層は、例えば上記例示の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などのドライコーティングプロセスや、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式などのウェットコーティングプロセスによって形成することができる。
【0112】
さらに上記低反射処理層の形成に先立って、コロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの公知の表面処理を、前処理としてハードコート層に施してもよい。
【0113】
[透明樹脂フィルム]
また、上記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜形成面の反対面に、粘着剤を介して透明樹脂フィルムを積層することで、タッチパネルの固定電極に用い得る透明導電性フィルムが得られる。すなわち、タッチパネルの固定電極の基板を、通常用いられているガラスから、透明樹脂フィルムに変更することで、軽量かつ割れにくいタッチパネルを作製することができる。
【0114】
上記粘着剤は、本発明の透明導電性フィルムに要求される透明性を維持し得るものであれば特に限定されず、透明性を有する公知の粘着剤が使用でき、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚みは特に限定されないが、通常は1〜100μmの範囲に設定することが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚みの場合は、実用上問題のない接着性を得るのが困難であり、100μmを超える厚みの場合は生産性の観点から好ましくない。
【0115】
この粘着剤を介して積層する透明樹脂フィルムは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚みは0.05〜5mmの範囲が好ましい。透明樹脂フィルムの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。他方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂フィルムとしては、先に透明プラスチックフィルムについて例示した各種有機高分子を素材とするフィルムを使用することができる。
【0116】
次に、本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルについて説明する。
【0117】
[タッチパネル]
本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を図8に示す。図8のタッチパネルは、透明導電性薄膜13,13を有する一対のパネル板を、該透明導電性薄膜13,13が対向するようにスペーサー20を介して配置してなるものであり、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムを使用したものである。
【0118】
このタッチパネルは、図8中上側の易接着層12側からペンなどにより文字を入力する際に、ペンなどの押圧により、スペーサー20を介して対向する透明不導電性薄膜13,13同士が接触して電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンなどの位置を検出することができる。このペンなどの位置を連続的且つ正確に検出することで、ペンなどの軌跡から文字などを認識することができる。この際、ペンなどの接触側の可動電極として、本発明の透明導電性フィルムを用いると、耐熱性や耐有機溶剤性に優れることからタッチパネル製造工程において外観不良の発生が極めて抑えられ、且つペン摺動耐久性に優れるため、長期間に亘って品質劣化の抑制された安定なタッチパネルとすることができる。
【0119】
なお、タッチパネルに用いるスペーサーとしては、図8に示すビーズ(エポキシビーズ、アクリルビーズ、シリカビーズなど)や、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などをスクリーン印刷したものなど、通常のタッチパネルで用いられている公知のスペーサーが挙げられる。
【0120】
また、ガラス基板を用いずに、透明樹脂フィルムを積層した本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を図9に示す。図9のタッチパネルは一対のパネル板のいずれもが本発明の透明導電性フィルムであり、ガラスを用いていないため、非常に軽量であり、且つ耐衝撃性に優れたものである。
【0121】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限り、質量基準である。また、実施例・比較例で得られた樹脂、透明導電性フィルムおよびタッチパネルの特性は、以下の方法で評価した。
【0122】
<ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度>
ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、該共重合体を13.3Pa以下の減圧下、100℃で2時間乾燥して得られる固形分を、DSC(理学電機株式会社製「DSC−10A」)を用いて、JIS K 7121の9.3項の規定に準拠して測定する。
【0123】
<光線透過率・ヘーズ>
日本電色工業株式会社製「NDH−1001DP」を用い、JIS K 7105に準じて光線透過率およびヘーズを測定する。
【0124】
<表面抵抗率>
測定装置に、三菱油化株式会社製「Lotest AMCP−T400」を用い、JIS K 7194に準じて4端子法により測定する。
【0125】
<耐熱性>
透明導電性フィルムを150±3℃に調温したオーブン内に60分保管し、続いて室温で30分放置した後に、上記方法で光線透過率、ヘーズおよび表面抵抗率を測定する。
【0126】
<耐有機溶剤性>
25±1℃に調温したアセトン中に、透明導電性フィルムを10分浸漬し、続いて10分風乾した後に、上記方法で光線透過率、ヘーズおよび表面抵抗率を測定する。
【0127】
<自乗平均面粗さ(Rms)測定>
原子間力顕微鏡(AFM)により測定する。装置には、Seiko Instruments社製の走査型プローブ顕微鏡「SPI3800/SPA300」を用い、スキャナーには同社製「FS−20A」を、カンチレバーにはシリコン製の「SI−DF20」(同社製)を用いる。観察モードはDFMモードとする。なお、観察に用いるカンチレバーは、探針汚染による分解能低下を回避するため、常に新品を使用する。また、観察の際の摩耗劣化を防ぐため、分解能を犠牲にしない範囲で、できる限り探針にかかる負荷が小さい条件で行うこととする。
【0128】
自乗平均面粗さ(Rms)測定は、上記AFMにより1.0μm×1.0μmの領域を、分解能250×250ピクセル以上で観察することで行う。走査速度は0.5Hz以上で行うこととする。フィルム表面を観察した後は、付属のソフトウェアによってデータの傾斜を補正し、その後、付属のソフトウェアにより自乗平均表面粗さ(Rms)を求める。フィルムの自乗平均面粗さ(Rms)は、ランダムに評価したAFM像10点以上の平均値とする。ただし、評価対象となるAFM像は、上記傾斜補正後の面内の最大高低差が12.5nm未満のものとし、12.5nm以上のものは評価対象外とする。これは透明プラスチックフィルム表面により誘起される凹凸を自乗平均面粗さの評価対象から除くための処理である。
【0129】
<付着力測定>
40μm厚のアイオノマーフィルムを、ポリエステル系接着剤を用いて厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにラミネートし、15mm幅に裁断して付着力測定用積層体を作製する。この付着力測定用積層体のアイオノマー面と15mm幅に裁断した透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面を対向させ、幅を揃えて重ねて130℃でヒートシールする。その後、付着力測定用積層体と透明導電性フィルムとを180度剥離法で剥離し、この剥離力を付着力とする。この時の剥離速度は1000mm/分とする。
【0130】
<タッチパネルのペン摺動耐久性試験>
ポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ、20万回(往復10万回)の直線摺動試験をタッチパネルに行う。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とする。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察する。また、この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.5Nで上記の摺動部にかかるように20mmφの記号○印を筆記し、タッチパネルがこれを正確に読みとれるかを評価する。さらに、上記摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.5Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗[可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値]を測定する。
【0131】
<タッチパネルの外観評価>
作製したタッチパネル50枚に対し、目視によって三波長蛍光灯下で観察し、白化などの外観不良部が存在したタッチパネルの枚数をカウントする。
【0132】
実施例1
[疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成]
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート:218部、ジメチルイソフタレート:194部、エチレングリコール:488部、ネオペンチルグリコール:200部およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマル酸:13部およびセバシン酸:51部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温してエステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1.5時間反応させて、淡黄色透明の疎水性共重合性ポリエステル樹脂を得た。
【0133】
[ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の合成]
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記疎水性共重合性ポリエステル:75部、メチルエチルケトン:56部およびイソプロピルアルコール:19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、この溶液に無水マレイン酸:15部を添加した。次いでこの溶液に、スチレン:10部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル:1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分の速度で滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5部添加した。次いで、水:300部とトリエチルアミン:15部を反応溶液に加え、1.5時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移温度は40℃であった。
【0134】
[易接着層形成用組成物の調製]
水とイソプロパノール60/40(質量比)の混合溶媒に、上記のポリエステル系グラフト共重合体の水分散体と、平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学製)を、固形分質量比で97/3となるように混合し、全固形分濃度が5%となるように調製して、易接着層形成用組成物とした。
【0135】
[透明プラスチックフィルムの作製および易接着層の形成]
原料に、実質的に不活性粒子を含有しておらず、固有粘度が0.62dl/gのPETペレットを用いた。このPETペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出し、表面温度を20℃に保った金属ロール上で静電密着法を用いて急冷固化して、厚みが1900μmの未延伸PETフィルムを得た。次にこの未延伸PETフィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムとした。
【0136】
次いで易接着層形成用組成物を、一軸配向PETフィルムの両面にリバースコート法で塗布した。続いて温度:65℃、相対湿度:60%、風速:15m/秒の条件で2秒間風乾し、その後温度:130℃、風速:20m/秒の条件で3秒間風乾して水分を除去し、その後、連続的に端部をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱処理を施した後、200℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み:188μmの両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを得た。最終的な易接着層の乾燥塗布量は、いずれの面とも0.1g/m2であった。
【0137】
[透明導電性薄膜の形成]
次に、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムの片面に、インジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成した。この際、スパッタリング前の圧力を0.0007Paとし、ターゲットとして酸化スズを5%含有した酸化インジウム(三井金属鉱業社製、密度7.1g/cm3)に用いて、2W/cm2のDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、酸素ガスを10sccmの流速で流し、圧力:0.4Paとして、DCマグネトロンスパッタリング法で透明導電性薄膜形成を行った。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製「RPG−100」を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は50℃とした。なお、雰囲気中の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(伯東社製「SPM200」)を用いて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計およびDC電源にフィートバックした。以上の操作・条件により、厚み:22nmのインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成して、透明導電性フィルムNo.1を得た。この透明導電性フィルムNo.1について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
[タッチパネルの作製]
透明導電性フィルムNo.1を一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物(酸化スズ含有量:10%)からなる透明導電性薄膜(日本曹達社製「S500」)を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径:30μmのエポキシビーズを介して配置し、タッチパネルNo.1を作製した。このタッチパネルNo.1について、上記の評価を行った。結果を表2および図1に示す。
【0139】
実施例2
ポリエステル系グラフト共重合体を下記のものに変更した他は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムNo.2、およびタッチパネルNo.2を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図2に示す。
【0140】
[疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成]
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、テレフタル酸:1245部、イソフタル酸:332部,フマル酸:58部,プロピレングリコール:1216部,エチレングリコール:248部、トリメチロールプロパン:8部を仕込み、160℃から220℃まで、3時間かけてエステル化反応を行った。次いで、テトラ−n−ブチルチタネート:0.7部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの圧力下で2.5時間反応させて疎水性共重合性ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合性ポリエステル樹脂は淡黄色透明であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は、15000であった。
【0141】
[ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の合成]
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記疎水性共重合性ポリエステル樹脂:75部、メチルエチルケトン:56部およびイソプロパノール:19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、この溶液に無水マレイン酸:15部を添加した。次いでこの溶液に、スチレン:10部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル:1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分の速度で滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール:5部を添加した。次いで、水:300部とトリエチルアミン:15部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去して、ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は淡黄色透明で、ガラス転移温度は80℃であった。
【0142】
実施例3
実施例1と同様にして、両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを作製した。このフィルムの一方の易接着面に、ハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製「EXG」)を、乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥した。その後、表面に微細な凸形状が形成されたPETフィルムのマット賦形フィルム(東レ社製「X」)を、マット面が紫外線硬化型樹脂と接するようにラミネートした。このマット賦形フィルムの表面形状は、平均表面粗さ:0.40μm、山の平均間隔:160μm、最大表面粗さ:25μmである。
【0143】
上記マット賦形フィルムのラミネート後、160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、上記紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、マット賦形フィルムを剥離して、表面に凹形状加工が施されており、防眩効果を有するハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0144】
上記防眩性ハードコート層形成後の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムの、ハードコート層形成側の反対側の易接着層上に、実施例1と同様にして透明導電性薄膜を形成し、透明導電性フィルムNo.3を得た。さらに、この透明導電性フィルムNo.3を一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.3を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図3に示す。
【0145】
実施例4
実施例3と同様にして、一方の易接着層上に防眩性ハードコート層を形成した両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを作製し、この防眩性ハードコート層上に、順次TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚15nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚29nm)、TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚109nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚87nm)を積層して低反射処理層を形成して透明導電性フィルムNo.4を得た。TiO2薄膜層の形成は、チタンをターゲットに用い、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Paとし、ガスとしてArガスを500sccm、酸素ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを冷却した。ターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0146】
SiO2薄膜の形成は、シリコンをターゲットに用い、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Pa、ガスとしてArガスを500sccm、酸素ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを冷却した。ターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0147】
さらに、この透明導電性フィルムNo.4を一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.4を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図4に示す。
【0148】
実施例5
実施例1と同様にして作製した透明導電性フィルムの透明導電性薄膜を形成していない側の易接着層上に、アクリル系粘着剤を介して、厚み:1.0mmのポリカーボネート製シートに貼り付けて、透明導電性フィルムNo.5を作製した。この透明導電性フィルムNo.5を固定電極として用い、実施例4の透明導電性フィルムNo.4を可動電極に用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.5を作製した。透明導電性フィルムNo.5およびタッチパネルNo.5の評価結果を表1、表2および図5に示す。
【0149】
比較例1
易接着層を設けない以外は実施例1と同様にして透明導電性フィルムNo.6およびタッチパネルNo.6を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図6に示す。
【0150】
比較例2
易接着層形成用組成物に、実施例1で合成した疎水性共重合性ポリエステル樹脂をグラフト化反応させずに用いた他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムNo.7およびタッチパネルNo.7を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図7に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1の光線透過率、ヘーズ、表面抵抗値の各欄において、「a」は透明導電性フィルムについて、耐熱性評価用の処理、および耐有機溶剤性評価用の処理を施さずに測定したもの、「b」は耐熱性評価用の処理(150℃で60分保管)を施した後に測定したもの、「c」は耐有機溶剤性評価用の処理(上記のアセトンへの浸漬処理)を施した後に測定したものである。
【0153】
【表2】
【0154】
表1および表2の結果より、透明導電性フィルムNo.1〜No.5は、加熱処理後、有機溶剤処理後共に、光線透過率、ヘーズ、および表面抵抗率が殆ど変化していないことが分かる。また、透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さ(Rms)も、好適な範囲となっていた。この透明導電性フィルムNo.1〜No.5を用いたタッチパネルNo.1〜No.5は、外観不良が極めて少なかった。また、ペン摺動耐久性試験後においても白化もなく、ON抵抗にも異常がなかった。また、図1〜図5は、夫々タッチパネルNo.1〜No.5のペン摺動耐久性試験後の、入力した記号○印の出力形状を表した図であるが、これらのタッチパネルでは正確に○印を認識していた。
他方、透明導電性フィルムNo.6,No.7は、耐熱性、耐有機溶剤性が十分でなかった。この透明導電性フィルムNo.6,No.7を用いたタッチパネルNo.6,No.7は外観不良が多く、また、ペン摺動耐久性試験後に白化が生じ、ON抵抗の異常も生じた。また、図6〜図7は、夫々タッチパネルNo.6〜No.7のペン摺動耐久性試験後の、入力した記号○印の出力形状を表した図であるが、いずれも○印が正確に認識されなかった。
【0155】
【発明の効果】
本発明の透明導電性フィルムは以上のように構成されており、タッチパネル作製工程での加熱や、該工程で使用される有機溶剤による劣化が抑制されている。また、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性も優れている。よって、本発明の透明導電性フィルムを用いた本発明のタッチパネルは、製造工程で発生する外観不良が少なく、また、ペンの押圧によって対向する透明導電性薄同士が接触しても、剥離、クラックなどの発生が抑制されているなど、ペン摺動耐久性が良好であり、かつ位置検出精度や表示品位にも優れている。したがって、ペン入力タッチパネルとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製したタッチパネルNo.1において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.1へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図2】実施例2で作製したタッチパネルNo.2において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.2へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図3】実施例3で作製したタッチパネルNo.3において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.3へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図4】実施例4で作製したタッチパネルNo.4において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.4へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図5】実施例5で作製したタッチパネルNo.5において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.5へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図6】比較例1で作製したタッチパネルNo.6において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.6へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図7】比較例7で作製したタッチパネルNo.7において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.7へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図8】本発明のタッチパネルの構成例を示す断面模式図である。
【図9】本発明のタッチパネルの構成例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 ペン摺動試験部
2 タッチパネル出力形状
10,40 透明導電性フィルム
11 透明プラスチックフィルム
12 易接着層
13 透明導電性薄膜
20 スペーサー(ビーズ)
30 ガラス板
41 粘着剤
42 透明樹脂フィルム
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明プラスチックフィルム上に透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルム、および該透明導電性フィルムを用いてなるタッチパネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
透明プラスチックフィルムに、透明でかつ電気抵抗が小さな薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その透明性と導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極など、電気・電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、携帯情報端末やタッチパネル付きノートパソコンの普及により、従来以上に信頼性の優れたタッチパネルが要求されるようになってきた。
【0004】
上記の如き透明導電性フィルムには、例えば、次のような特性が要求されている。透明導電性フィルムをタッチパネルに加工する際には、銀ペーストなどを印刷するため、150℃程度の加熱が必要であり、この加熱に耐え得る耐熱性が必要となる。また、組立工程では種々の有機溶剤を含んだインクなどを用いるため、有機溶剤に対する耐性も要求される。さらに、タッチパネルは、指やペンからの繰り返し荷重を受けるため、これに用いる透明導電性フィルムには、透明導電性薄膜が劣化しないように、下地と透明導電性薄膜の付着力が十分高いことが求められている。
【0005】
例えば、従来の透明導電性フィルムとしては、透明導電性薄膜の下地層として、水性ポリウレタン樹脂(特許文献1)や熱可塑性ポリエステル系樹脂(特許文献2)を用いたものなどが提案されている。透明導電性フィルムの下地層に、これらの樹脂を用いた場合には、プラスチックフィルムに直接、透明導電性薄膜を形成する場合に比べて、透明導電性薄膜の付着力が向上する。
【0006】
しかしながら、上記の如き下地層は、十分な耐久性を有していない。また、150℃で60分程度の加熱を行うと、白化し、外観不良を生じる。これは、プラスチックフィルムから加熱によって発生するオリゴマーなどの析出に起因する。さらに、タッチパネル作製工程で使用する有機溶剤にも十分に耐え得るものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−319135号公報
【特許文献2】
特開平2−276106号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチパネル作製工程での加熱や、該工程で使用される有機溶剤による劣化が抑制されており、さらに、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性も優れる透明導電性フィルムと、該透明導電性フィルムを用いたタッチパネルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成された透明導電性フィルムであって、前記易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度(Tg)が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものであり、透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さ(Rms)が、1.0μm×1.0μmの領域において、0.3〜2nmであるところに要旨を有するものである。なお、本発明でいう「フィルム」は、所謂「シート」も含む概念である。
【0010】
上記透明導電性薄膜は、インジウム−スズ複合酸化物から形成されたものであることが推奨される。
【0011】
また、透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、ハードコート層が形成されている上記透明導電性フィルムも、本発明の好ましい実施態様である。上記ハードコート層としては、防眩性を有するものや、低反射処理が施されたものが好適である。
【0012】
また、透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、粘着剤を介して透明樹脂フィルムが積層された構成の上記透明導電性フィルムも、本発明の好ましい実施態様の一つである。
【0013】
さらに本発明には、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、スペーサーを介して透明導電性薄膜が対向するように配置してなるタッチパネルであって、少なくとも一方のパネル板が、上記の各透明導電性フィルムからなるタッチパネルも、本発明に包含される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、タッチパネルに好適な透明導電性フィルムを開発すべく、鋭意検討を重ねてきた。その結果、基材となる透明プラスチックフィルムと、導電性確保のための透明導電性薄膜との間に介在させる易接着層を、特定の樹脂および/またはその架橋体を主成分とするものとした場合には、透明プラスチックフィルムと透明導電性薄膜との密着性を高めると共に、タッチパネル作製工程の際の加熱に耐え得る耐熱性や、有機溶剤に対する耐性(耐薬品性)を確保し、さらには、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性をも高め得ることを見出した。また、上記透明導電性フィルムにおいては、透明導電性薄膜側表面の表面粗さが、該フィルムをタッチパネルに用いた際の耐久性に大きく影響することも見出した。本発明者等は、このような知見に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0015】
なお、本発明の透明導電性フィルムにおける「透明」とは、無色透明、有色透明を問わず、JIS K 7105に準じて測定される光線透過率が80%以上の場合を意味する。また、本発明の透明導電性フィルムの導電性は、その用途に適した導電性を有していればよいが、例えば、10kΩ/□以下であれば良好である。以下、本発明の透明導電性フィルム、および、タッチパネルの詳細について説明する。
【0016】
[透明プラスチックフィルム]
本発明の透明導電性フィルム(以下、単に「フィルム」という場合がある)に用い得る透明プラスチックフィルムとは、有機高分子を溶融押出、または溶液押出し、さらに必要に応じて長手方向および/または幅方向に延伸し、冷却・熱固定を施して得られるフィルムである。なお、上記透明プラスチックフィルムは、本発明の透明導電性フィルムに要求される透明性が確保可能な程度の透明性を有していればよく、無色透明であっても、有色透明であっても構わない。
【0017】
透明プラスチックフィルムに用い得る有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリアミドまたはポリイミド;ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0018】
上記の有機高分子の中でも、PET、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は、他の有機高分子の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0019】
透明プラスチックフィルムの厚みは、10μmを超え、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは70μm以上260μm以下である。透明プラスチックフィルムの厚みが上記範囲を下回ると、透明導電性フィルムの機械的強度が不足する傾向にあり、他方、上記範囲を超えると、例えば透明導電性フィルムをタッチパネルに用いた際に、該フィルムを変形させるためのペン荷重が大きくなる傾向にあり、好ましくない。
【0020】
上記透明プラスチックフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、コロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸またはアルカリを用いた化学薬品処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0021】
[易接着層]
本発明のフィルムに係る易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものである。なお、上記グラフトとは、幹ポリマーである疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に、これとは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。また、本発明でいう「ポリエステル系グラフト共重合体」とは、全ての疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に上述の酸無水物がグラフト共重合されている態様から、疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子に該酸無水物がグラフトされてなるグラフト共重合分子と該酸無水物がグラフトされていない未反応の疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子との混合物の態様までを含む。また、「ポリエステル系グラフト共重合体」には、後述の他の重合性不飽和単量体を上述の酸無水物と共に用いた場合には、酸無水物がグラフトされておらず、他の重合性不飽和単量体のみがグラフトされた疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子が混合されている態様も含まれ、さらに、上述の酸無水物のみ、あるいは他の重合性不飽和単量体のみからなる重合物や、酸無水物と他の重合性不飽和単量体との共重合物が混合されている態様も包含される。
【0022】
上記ポリエステル系グラフト共重合体は、例えば、疎水性共重合性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解させた状態で、上述の二重結合を有する酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびラジカル開始剤の混合物を反応させることで得ることができる。
【0023】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂は、それ自身で水に分散または溶解しないものである。水に分散するか、または溶解するポリエステル樹脂に、二重結合を有する酸無水物をグラフトすると、透明プラスチックフィルムおよび透明導電性薄膜との接着性や、耐水性が低下する傾向にある。
【0024】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂は、公知のジカルボン酸(酸無水物を含む)などの酸成分と、公知のグリコールなどのアルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとするものである。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物などの脂環族ジカルボン酸;重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸などが挙げられる。重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸;2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和二重結合を有する脂環族ジカルボン酸;などが挙げられる。上記例示の重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸の中でも、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が、重合性の観点から推奨される。
【0026】
これらのジカルボン酸は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの親水基含有ジカルボン酸は、耐水性低下を引き起こすため、使用しない方が好ましい。
【0027】
また、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの多価カルボン酸を一部併用してもよい。
【0028】
上記グリコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールなどが挙げられる。
【0029】
炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられる。また、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0030】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物[例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなど]、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが例示できる。
【0031】
また、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールを一部併用してもよい。
【0032】
上記ポリエステル系樹脂の合成法は特に限定されず、上述のジカルボン酸やグリコールなどを、常法により溶融重合することで合成できる。なお、上記ポリエステル系樹脂においては、酸成分由来の成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸由来の成分が60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が0.5〜10モル%であることが好ましい。
【0033】
芳香族ジカルボン酸由来の成分が60モル%未満である場合や、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が40モル%を超える場合には、透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との接着強度が低下する傾向にある。また、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が0.5モル%未満の場合には、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に対して、グラフト用の酸無水物の効率的なグラフト化反応が達成され難くなり、他方、10モル%を超えると、グラフト化反応の後期に粘度が上昇しすぎて反応の均一な進行が妨げられるので好ましくない。より好ましくは、酸成分由来の成分100モル%中、芳香族ジカルボン酸由来の成分が70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸由来の成分および/または脂環族ジカルボン酸由来の成分が0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸由来の成分が2〜70モル%である。
【0034】
また、上述の多価カルボン酸や多価アルコールを用いる場合には、全酸成分100モル%中、多価カルボン酸を5モル%以下(より好ましくは3モル%以下)、全アルコール成分中、多価アルコールを5モル%以下(より好ましくは3モル%以下)とすることが推奨される。多価カルボン酸、多価アルコールの量が上記範囲を超える場合には、ポリエステル樹脂の重合の際にゲル化が生じ易くなり、好ましくない。
【0035】
また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量で5000〜50000であることが望ましい。重量平均分子量が5000未満の場合には、接着強度が低下する傾向にあり、他方、50000を超える場合は、重合時のゲル化の問題が生じる傾向にある。
【0036】
上記ポリエステル系グラフト共重合体に用いられる「少なくとも1つの二重結合を有する酸無水物」としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸の無水物;2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和二重結合を有する脂環族ジカルボン酸の無水物;などが挙げられる。また、上記ポリエステル系グラフト共重合体には、上述の酸無水物以外にも、他の重合性不飽和単量体がグラフトされていても構わない。
【0037】
他の重合性不飽和単量体としては、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミドなどのマレイミドなど;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレンとその誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)などのアクリル系単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有アクリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N,N−ジメチロ−ルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル系単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル系単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル系単量体アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)などのカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル系単量体;などが例示できる。
【0038】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂のグラフト化反応を行う際には、該疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性モノマー(上述の酸無水物、および他の重合性不飽和単量体を意味する。以下同じ。)との使用比率(質量比)は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂/重合性モノマー=40/60〜95/5であることが好ましく、55/45〜93/7であることがより好ましく、60/40〜90/10であることがさらに好ましい。疎水性共重合性ポリエステル樹脂の使用比率が上記範囲を下回る場合には、優れた接着性を発揮することができない。他方、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の使用比率が上記範囲を超える場合には、ポリエステル樹脂の欠点であるブロッキングが生じ易くなる。
【0039】
また、上述の酸無水物と他の重合性不飽和単量体との使用比率(質量比)は、酸無水物100質量部に対して、他の重合性不飽和単量体を400質量部以下、とすることが好ましく、300質量部以下とすることがより好ましく、200質量部以下とすることがさらに好ましい。他の重合性不飽和単量体の使用量が上記下限値を超える場合には、上記酸無水物の使用量、延いては酸無水物のグラフト量が減少するため、本発明の効果が十分に確保できない場合がある。
【0040】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂のグラフト化反応に用い得るラジカル開始剤としては、公知の有機化酸化物類や有機アゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物類としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレートなどが、有機アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)などが例示できる。グラフト化反応を行うためのラジカル開始剤の使用量は、重合性モノマーに対して、少なくとも0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。
【0041】
ラジカル開始剤の他に、枝ポリマー(上述の酸無水物および他の重合性不飽和単量体から形成される側鎖部分)の鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して5質量%以下の範囲で添加されることが望ましい。なお、上記枝ポリマーの重量平均分子量は、500〜50000であることが望ましい。枝ポリマーの重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の側鎖(グラフト鎖)形成が十分に行なわれない傾向がある。また、易接着層は、ポリエステル系グラフト共重合体が平均的に分散した水分散体である易接着層形成用組成物を用いて形成することが好ましい(後述する)。この際、ポリエステル系グラフト共重合体の側鎖(上記枝ポリマー部分)は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためには、上記枝ポリマーの重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また上記ポリエステル系グラフト共重合体の上記枝ポリマーの重量平均分子量の上限は、グラフト化反応を溶液系で行う際の反応性の点で50000が望ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、開始剤量、モノマー滴下時間、反応時間、反応溶媒、モノマー組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行うことができる。
【0042】
上記ポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト化反応溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、好ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を超えるものは、余りに蒸発速度がおそく、易接着層を高温焼付によって形成しても充分に取り除くことができないので不適当である。また沸点が50℃以下では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いル必要があるため、取扱上の危険が増大し、好ましくない。
【0043】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつ上述の酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびこれらの重合物を比較的よく溶解する第一群の水性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルカルビト−ル、エチルカルビト−ル、ブチルカルビト−ルなどのカルビトール類;エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール若しくはグリコールエーテルの低級エステル類;ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのN−置換アミド類などを例示することができる。
【0044】
また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないが、上記酸無水物や他の重合性不飽和単量体、およびこれらの重合物を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などを挙げることができる。また、有機溶媒ではないが、水も、第二群の水性有機溶媒に類するものとして例示できる(以下、水も第二群の溶媒に含めることとする)。上記ポリエステル系グラフト共重合体の合成に特に好ましいものは、炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0045】
グラフト化反応を単一溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選択すればよい。混合溶媒で行う場合は、第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選択してもよく、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選び、それに第二群の水性有機溶媒のうちの少なくとも一種を加えてもよい。
【0046】
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒の夫々一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト化反応を行うことが可能である。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物(ポリエステル系グラフト共重合体)、およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒の夫々一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0047】
第一群の溶媒中では、疎水性共重合性ポリエステル樹脂分子鎖は、広がりの大きな鎖の伸びた状態にあり、他方、第一群/第二群の混合溶媒中では、広がりの小さな糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中の疎水性共重合性ポリエステルの粘度測定により確認された。疎水性共重合性ポリエステルの溶解状態を調節し、グラフト化反応時の分子間架橋を起こり難くすることが、ゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は、後者の混合溶媒系において達成される。第一群/第二群の混合溶媒の質量比率は、好ましくは95/5〜10/90、より好ましくは90/10〜20/80、さらに好ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は、使用する疎水性共重合性ポリエステル樹脂の溶解性などに応じて適宜決定される。
【0048】
なお、上記ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上である。Tgが20℃未満の場合は、易接着層上に透明導電性薄膜を後述の方法で形成すると、該透明導電性薄膜の均一性が損なわれる傾向にある。より好ましいTgは40℃以上である。また、Tgの上限は、例えば後述のインラインコート法で易接着層を形成する場合における造膜性および接着性の点から、100℃であることが好ましく、80℃であることが特に好ましい。
【0049】
なお、本発明のフィルムに係る上記ポリエステル系グラフト共重合体のTgは、該共重合体を13.3Pa以下の減圧下、100℃で2時間乾燥して得られる固形分を、示差走査熱量計(DSC)(例えば、理学電機株式会社製「DSC−10A」)を用いて、JIS K 7121の9.3項の規定に準拠して測定する。
【0050】
また、上記ポリエステル系グラフト共重合体の酸価は600eq/106g以上であることが好ましい。より好ましい酸価は1200eq/106g以上である。酸価が600eq/106g未満である場合は、透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との接着性が不十分となる場合がある。
【0051】
易接着層は、上記の通り、水を含む溶媒中にポリエステル系グラフト共重合体が平均的に分散した水分散体である易接着層形成用組成物を用いて形成することが好ましい。この易接着層形成用組成物を透明プラスチックフィルムに塗布し、乾燥することで、易接着層を形成することができる。易接着層形成用組成物は、例えば、上記のグラフト化反応終了後の反応溶液に、必要に応じて水添加・有機溶媒の蒸発除去を行い、さらに必要に応じて他の添加物を加えて得ることができる。
【0052】
なお、易接着層形成用組成物中では、ポリエステル系グラフト共重合体は、レーザー光散乱法により測定される平均径が500nm以下の粒子であることが好ましく、その場合、該組成物は半透明ないし乳白色の外観を呈する。なお、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成や、その後のグラフト化反応の際の条件の調整により、多様な粒子径とすることができるが、この粒子径は10〜500nmがより好ましく、分散安定性の点では400nm以下がさらに好ましく、特に好ましくは300nm以下である。上記平均粒子径が500nmを超えると易接着層表面の光沢が低下する傾向にあり、透明導電性フィルムの透明性が損なわれる場合がある。また、平均粒子径が10nm未満の場合は、ポリエステル系グラフト共重合体の親水性が高いため、易接着層の耐水性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0053】
また、上記の易接着層形成用組成物中では、ポリエステル系グラフト共重合体は塩基性化合物で中和されていることが好ましい。この中和によって容易に水分散体とすることができる。塩基性化合物としては、易接着層形成時や、硬化剤を配合した場合(後述する)にあっては焼き付け硬化時に、揮散する化合物が好ましく、アンモニアや有機アミン類が好適である。好ましい有機アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。塩基性化合物は、ポリエステル系グラフト共重合体に含まれるカルボキシル基(加水分解前の酸無水物基を含む)量に応じて、少なくとも部分中和、あるいは完全中和によって、水分散体のpH値が5.0〜9.0となるように使用することが望ましい。また、沸点が100℃以下の塩基性化合物を用いた場合には、易接着層中の残留塩基性化合物量を少なくすることができ、透明導電性薄膜との接着性や、他の材料を積層した際の耐水性・耐熱水接着性が優れたものとなる。
【0054】
上記ポリエステル系グラフト共重合体は自己架橋性を有するため、易接着層は高度な耐有機溶剤性を発揮し得る。すなわち、上記ポリエステル系グラフト共重合体は、常温では架橋しないが、上述の易接着層形成用組成物を塗布後、乾燥する際の熱で、熱ラジカルによる水素引抜反応などの分子間反応を起こし、架橋剤を使用しなくても架橋構造を形成し得る。この架橋構造の形成により、本発明のフィルムに係る易接着層に要求される接着性、耐水性、耐有機溶剤性を発現する。
【0055】
易接着層の架橋の程度については、種々の方法で評価できるが、代表的なものとして、疎水性共重合性ポリエステル樹脂、および上述の酸無水物や他の重合性不飽和単量体から形成される重合物の双方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率を調べる方法が挙げられる。上述の易接着層形成用組成物では、該組成物の塗工膜を80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる形成被膜の不溶分率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であることが推奨される。上記形成被膜の不溶分率が50質量%未満の場合は、接着性、耐水性が不十分となる傾向にある他、ブロッキングも起こし易くなる。
【0056】
また、上記易接着層では、各種の架橋剤を用いて、易接着性をさらに向上させることができる。架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、イソシアネート系、アミン系、アミド系、アジリジン系などの各種化合物を挙げることができるが、架橋剤の種類および配合量は、上記ポリエステル系グラフト共重合体の種類や、該共重合体の有する官能基量などに応じて適宜決定すればよい。例えばメラミン系架橋剤を用いる場合、上記ポリエステル系グラフト共重合体100質量部に対し、2〜30質量部とすることが好ましい。
【0057】
上記ポリエステル系グラフト共重合体を含む水分散液(易接着層形成用組成物)を透明プラスチックフィルム表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を上げ、水分散液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を、適量添加して用いてもよい。
【0058】
本発明の易接着層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤などを添加しても良い。これらを易接着層中に導入するには、例えば易接着層形成用組成物に添加する方法が採用可能である。
【0059】
また、易接着層は、上記ポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体と共に、他のポリエステル樹脂を含有していてもよい。他のポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体といったジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンなどのグリコールなどから形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとするポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0060】
なお、上記他のポリエステル樹脂においても、易接着層形成用組成物中での水分散性を向上させるために、カルボン酸塩基を含む化合物や、スルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5,(2,5−ジオキソテトラヒドロフリフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジョキソテトラヒドロフリフリル)−3−シクロヒキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6,−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビステリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えばスルホルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
なお、上記他のポリエステル樹脂は、そのTgが20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。Tgが20℃未満の場合は、上記ポリエステル系グラフト共重合体のTgが20℃以上であっても、易接着層上に透明導電性薄膜を後述の方法で形成すると、該透明導電性薄膜の均一性が損なわれる場合がある。
【0062】
上記他のポリエステル樹脂を用いる場合には、上記易接着層形成用組成物において、上記ポリエステル系グラフト共重合体100質量部に対して、100質量部以下とすることが好ましく、80質量部以下とすることがさらに好ましい。上記他のポリエステル樹脂の混合比率が上記上限値を超える場合には、易接着層中のポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体の割合が減少するため、本発明の効果を十分に確保できない場合がある。
【0063】
上述の易接着層形成用組成物を用いて易接着層を形成する場合であって、透明プラスチックフィルムに二軸延伸フィルムを用いる場合では、易接着層形成用組成物を塗布する段階としては、透明プラスチックフィルムの延伸前、一軸延伸後二軸延伸前、二軸延伸後のいずれであってもよい。例えば、透明プラスチックフィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合では、該ポリエステルフィルムの配向が完了する前に上記易接着層形成用組成物を塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの配向を完了させるインラインコート法が、本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい。なお、上記易接着層形成用組成物の塗布の際には、公知の塗布方法、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法などが採用可能であり、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて行うことができる。
【0064】
以下、代表して、インラインコート法による易接着層の形成方法を説明する。未延伸または一軸延伸後の透明プラスチックフィルムに易接着層形成用組成物を塗布し、乾燥する。インラインコート法では、この乾燥工程の際に、水などの溶媒分のみを取り除き、且つ易接着層の架橋反応が進行しない温度および時間を選択する必要がある。
【0065】
具体的には、乾燥温度を70〜140℃とすることが好ましく、乾燥時間は、易接着層形成用組成物の内容やその塗布量に応じて調整するが、例えば、乾燥温度(℃)と乾燥時間(秒)の積を3000以下とすることが好ましいといった知見が、本発明者等の研究によって得られている。上記積が3000を超える場合には、延伸前に易接着層の架橋反応が始まり、該易接着層に割れなどが生じる傾向にあるため、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0066】
易接着層形成用組成物の塗布・乾燥後に、延伸を施す。この際の延伸条件は、透明プラスチックフィルムの素材に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
延伸後のフィルムには、通常、2〜10%程度の弛緩処理を施すが、本発明では、易接着層の歪が少ない状態、すなわち、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、例えば赤外線ヒーターによって易接着層を加熱することが好ましい。その際の加熱は、250〜260℃程度で、0.5〜1秒程度と短時間で行うことが望ましい。このような操作を行うことで、易接着層中のポリエステル系グラフト共重合体の架橋がより一層促進され、易接着層が一段と強固になり、該層と透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との密着性がさらに良好なものとなる。
【0068】
なお、上記弛緩処理の際の加熱温度または加熱時間が、上述の好適範囲を超える場合は、透明プラスチックフィルムの結晶化または溶融が生じ易くなり、好ましくない。他方、上記加熱温度または上記加熱時間が、上述の好適範囲を下回ると、易接着層の架橋が不十分となる場合があり、易接着層と透明プラスチックフィルムや透明導電性薄膜との密着性が不十分となることがある。
【0069】
易接着層の厚みは特に限定されないが、本発明では、乾燥塗布厚みで0.02〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.07〜0.2μmである。
【0070】
[透明導電性薄膜]
本発明のフィルムで用い得る透明導電性薄膜としては、本発明のフィルムで要求される透明性と導電性が確保可能なものであれば特に限定されない。例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅および銅合金、金などの単層構造もしくは2層以上の積層構造のものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0071】
透明導電性薄膜の膜厚は4〜800nmであることが好ましく、特に好ましくは5〜500nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になり難く、良好な導電性を示し難い傾向がある。他方、800nmよりも厚い場合には、透明性が低下し易くなる。
【0072】
上記透明導電性薄膜を形成するに当たっては、上記例示の金属酸化物や金属を用い、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などの公知の成膜方法から、必要とする膜厚に応じた好適な方法を、適宜選択することができる。
【0073】
例えば、スパッタリング法の場合、金属酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法などが用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素などを導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシストなどの手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0074】
なお、本発明のフィルムでは、透明導電性薄膜側表面がある程度粗いことが好ましく、具体的には、該透明導電性薄膜側表面での自乗平均面粗さ(Rms)が、1.0μm×1.0μmの領域において、0.3〜2nm、より好ましくは0.4〜1.5nmとすることが重要である。これは、例えばタッチパネルに用いた際に、タッチペンなどにより荷重が付加された際に、ガラス基板などの隣接する部材との摩擦が生じる真の接触面積を小さくし、滑り性を良くすることで導電性薄膜表面にかかる負荷を低減するためである。
【0075】
透明導電性薄膜表面の狭領域における表面粗さを高めるためには、透明導電性薄膜を形成する際に、以下の2つの方法を採用することが有効である。
(1)フィルム基板の温度を高くする。
(2)透明導電性薄膜形成の際に、雰囲気中の水分や有機物などの不純物を除去する。
【0076】
透明導電性薄膜の表面粗さを高くするためには、基板となるフィルムの温度を高くすることが重要なポイントの1つである。これは、透明導電性薄膜の形成時において、蒸着粒子が堆積する際に基板(フィルム)表面でマイグレーションが生じるために、より大きな透明導電性薄膜素材のグレインが最表面において形成される。その結果、透明導電性薄膜素材のグレイン間の界面における溝深さが深くなり、表面粗さが向上する要因となる。
【0077】
例えば、スパッタリング法により巻き取り式装置を用いて、透明導電性薄膜をフィルム上に形成する場合には、フィルム背面(透明導電性薄膜形成面とは反対面)に接触するロール温度を高くすることで、基板となるフィルムの温度を高くすることが可能である。
【0078】
透明導電性薄膜を形成する際の温度は、10〜150℃とすることが好ましい。上記温度が150℃を越えると、透明プラスチックフィルム表面(あるいは易接着層表面)が柔らかくなり、真空チェンバー走行中に傷が発生し易くなる。また、10℃未満の温度では、表面粗さの大きな導電性薄膜を得ることが難しくなる。
【0079】
ロール温度を制御するには、ロール内に水路を設けて、この水路中に温度調整された熱媒を流せばよい。この熱媒としては、特に制限はないが、水やオイル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの単体およびこれらの混合物が好適である。
【0080】
また、フィルムの透明導電性薄膜表面において、表面粗さを高めるためには、透明導電性薄膜形成の際の雰囲気中の水や有機物などの不純物を、できるだけ除去することも重要なポイントである。
【0081】
例えば、透明導電性薄膜をスパッタリング法で形成する場合には、スパッタリングを行う前に真空チェンバー内の圧力を0.001Pa以下の真空度まで排気した後に、Arなどの不活性ガスと酸素などの反応性ガスを真空チェンバーに導入し、0.01〜10Paの圧力範囲において放電を発生させ、スパッタリングを行うことが好ましい。また、真空蒸着法、CVD法などの他の方法においても同様である。
【0082】
なお、スパッタリング法などの真空プロセスによって透明導電性薄膜を形成する場合には、基材となる透明プラスチックフィルムや易接着層中に揮発成分が存在すると、真空プロセスに悪影響を与える。
【0083】
透明プラスチックフィルムや易接着層中に揮発成分が存在すると、例えば、スパッタリング法でインジウム−スズ複合酸化物薄膜を形成する場合、スパッタリングされたインジウム原子と、透明プラスチックフィルムや易接着層から揮発したガスが気相中で衝突し、インジウム原子のエネルギーが低下する。この結果、形成される透明導電性薄膜の表面粗さは低下する。
【0084】
また、揮発したガス成分が透明導電性薄膜中に不純物として取り込まれると、膜組成の変動や膜構造の変化などにより、膜質の不良な透明導電性薄膜が形成され、表面粗さは低下する。
【0085】
このような表面が平滑であり、自乗平均面粗さ(Rms)の低い透明導電性薄膜が積層された透明導電性フィルムをタッチパネルに用いると、例えば、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験後に、透明導電性薄膜が摩耗劣化し好ましくない。このことは、透明導電性フィルムをタッチパネルに用いた際の繰り返し荷重に対する耐久性が、該タッチパネルの用途によっては、必ずしも十分ではないことを意味している。
【0086】
例えば、易接着層中に存在する揮発成分としては、上述の易接着層形成用組成物および該組成物からの副生成物などが挙げられる。
【0087】
上記の揮発成分を減少させるためには、易接着層を設けた透明プラスチックフィルムに加熱処理を施すのが好適である。このときの加熱処理温度は100〜200℃の範囲であることが好ましい。100℃未満では揮発成分を減少させる効果が不十分となり易く、200℃を越える温度では、フィルムの平面性を保つのが難しくなる傾向にある。
【0088】
また、スパッタリングなどを行う真空チェンバーの中で、易接着層を設けた透明プラスチックフィルムを真空暴露し、揮発成分を減少させることも有効な手段である。例えば、真空暴露の際にフィルムに接触するロール温度を高くしておいたり、赤外線ヒーターによるフィルム加熱を併用することで、揮発成分をより減少させることが可能となる。
【0089】
上記のように透明導電性薄膜形成の際の雰囲気中の水分や有機物などの不純物を、可能な限り除去することで、膜質に優れると共に、狭領域において、自乗平均面粗さを上記範囲で有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムが得られる。そのため、この透明導電性薄膜をタッチパネルに用いると、例えば、ポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)を用いて、5.0Nの荷重で20万回の直線摺動試験を行った後でも透明導電性薄膜の劣化が見られない。
【0090】
また、透明導電性薄膜表面の狭領域における自乗平均面粗さ(Rms)を高める観点からは、該薄膜形成後に加熱、紫外線照射などの手段でエネルギーを付与してもよい。これらのエネルギー付与手段のうち、酸素雰囲気下での加熱処理が好適である。
【0091】
上記の加熱処理を施す場合、温度は150〜200℃であることが好ましい。150℃未満の温度では、膜質改善の効果が不十分である。一方、200℃を超える温度ではフィルムの平面性を維持するのが難しくなり、さらに透明導電性薄膜の結晶化度が非常に高くなり、脆い透明導電性薄膜となってしまう。
【0092】
また、加熱処理時間としては0.2〜60分とすることが好適である。0.2分未満では、たとえ220℃程度の高温で加熱処理を行っても膜質改善の効果が不十分となり、好ましくない。他方、60分を超える加熱処理時間では工業的に不適である。
【0093】
また、上記の加熱処理を行う雰囲気は、予め0.2Pa以下の圧力まで排気した後に酸素で満たした空間で行うことが好ましい。酸素導入後の圧力は大気圧以下であることが好ましい。
【0094】
[透明導電性フィルムの積層構成]
本発明の透明導電性フィルムでは、上記透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜を形成した構成でも、また、透明プラスチックフィルムの両面に易接着層を形成し、該易接着層の少なくとも一方の表面に透明導電性薄膜を形成した構成でもよく、該透明導電性フィルムの用途に応じて適宜選択することができる。また、上述の、透明プラスチックフィルムの片面に易接着層を介して透明導電性薄膜を形成した構成の場合、透明導電性薄膜形成面の反対面に、ハードコート層を設けたり、透明樹脂フィルムを積層したりすることもできる。
【0095】
[ハードコート層]
本発明のフィルムに形成するハードコート層としては、鉛筆硬度で2H以上の硬度を有するものであることが好ましい。ハードコート層の鉛筆硬度が2H未満では、透明導電性フィルムの耐擦傷性向上の観点からは不十分である。また、上記ハードコート層の厚みは0.5〜10μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満では、耐擦傷性が不十分となり易く、10μmを超える場合は生産性の観点から好ましくない。
【0096】
ハードコート層の素材としては、公知の硬化型樹脂が用いられる。好ましくは、アクリレート系の官能基を有する樹脂である。このような硬化型樹脂の具体例としては、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコールなどの多官能化合物と(メタ)アクリレートなどとのオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。
【0097】
上記の硬化型樹脂は、一般に反応性希釈剤と共に用いられる。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能モノマーや、多官能モリマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
【0098】
なお、本発明のフィルムにおいては、硬化型樹脂として、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。ポリエステルアクリレートは、形成被膜が非常に硬くハードコート層として適している。しかしながら、ポリエステルアクリレート単独の被膜では、耐衝撃性が低く脆くなりやすいという問題がある。そこで、形成被膜に耐衝撃性および柔軟性を与えるために、ポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。すなわち、ポリエステルアクリレートにポリウレタンアクリレートを併用することで、形成被膜はハードコート層としての硬度を維持しながら、耐衝撃性および柔軟性を具備することができる。
【0099】
ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートを併用する場合、その配合割合は、ポリエステルアクリレート:100質量部に対し、ポリウレタンアクリレートを30質量部以下とするのが好ましい。ポリウレタンアクリレート樹脂の配合割合が30質量部を超えると、形成被膜が柔らかくなりすぎて耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0100】
また、本発明のフィルムで用いる上記反応性希釈剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好適である。
【0101】
ハードコート層は、上記例示の硬化型樹脂と反応性希釈剤を含む組成物を透明プラスチックフィルム表面や易接着層表面などに塗布し、硬化することで形成できる。硬化方法は特に限定されず、通常の硬化方法、例えば、加熱や、光(紫外線など)、電子線などを照射して硬化する方法を用いることができる。
【0102】
例えば、電子線硬化法の場合は、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線などが使用できる。
【0103】
また、光硬化法の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハイライドランプなどの光線から発する紫外線などが利用できる。なお、光硬化法を採用する場合は、硬化型樹脂と反応性希釈剤を含む組成物に、さらに光重合開始剤および光増感剤を含有させることが一般的である。例えば、光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラ−ベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などの公知の光重合開始剤が、光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどの公知の光増感剤が使用可能である。
【0104】
また、本発明のフィルムに適用するハードコート層は、防眩性を有するものであることが好ましい。防眩性を付与するには、上述の硬化型樹脂中にCaCO3やSiO2などの無機粒子を分散させたり、ハードコート層の表面に凹凸形状を形成させることが有効である。
【0105】
例えば、凹凸を形成するには、硬化型樹脂組成物塗液を塗工後、表面に凸形状を有する賦形フィルムをラミネートし、この賦形フィルム上から紫外線などを照射して硬化型樹脂を硬化させた後、賦形フィルムのみを剥離する方法が採用できる。
【0106】
上記賦型フィルムには、離型性を有するPETなどの基材フィルム上に所望の凸形状を設けたものや、PETなどの基材フィルム上に繊細な凸層を形成したものなどを用いることができる。この凸層の形成は、例えば、無機粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用いて上記基材フィルム上に塗工する方法などが採用可能である。
【0107】
上記バインダー樹脂は、例えば、ポリイソシアネートで架橋されたアクリルポリオールなどを、無機粒子としては、CaCO3やSiO2などを用いることができる。また、この他にPET製造時にSiO2などの無機粒子を練込んだマットタイプのPETも用いることができる。
【0108】
この賦型フィルムをハードコート形成用の硬化型樹脂組成物塗膜にラミネートした後紫外線を照射して該塗膜を硬化する場合であって、賦型フィルムがPETを基材としたフィルムの場合には、該フィルムに紫外線の短波長側が吸収され、硬化型樹脂組成物塗膜の硬化が不足するという欠点がある。したがって、紫外線硬化型樹脂組成物の塗膜にラミネートする賦型フィルムは、380nmの波長の光の透過率が20%以上のものを使用する必要がある。
【0109】
また、上記ハードコート層には低反射処理を施してもよく、この処理によって例えばフィルムをタッチパネルに使用した際に、可視光線透過率を高めることが可能となる。この低反射処理としては、ハードコート層とは異なる屈折率を有する材料から構成される低反射処理層をハードコート層表面に設ける処理が好ましい。
【0110】
上記の低反射処理を、上記低反射処理層を設けることで実施する場合であって、該低反射処理層が単層構造の場合には、該低反射処理層をハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料で形成することが好ましい。また、低反射処理層を2層以上の多層構造とする場合は、ハードコート層と隣接する層には、ハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用いることが推奨される。このような低反射処理層を構成する材料としては、上述の屈折率の関係を満足し得るものであれば、有機材料であっても無機材料であってもよく、特に限定されない。例えば、CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2O3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In2O3などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0111】
上記低反射処理層は、例えば上記例示の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などのドライコーティングプロセスや、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式などのウェットコーティングプロセスによって形成することができる。
【0112】
さらに上記低反射処理層の形成に先立って、コロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの公知の表面処理を、前処理としてハードコート層に施してもよい。
【0113】
[透明樹脂フィルム]
また、上記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜形成面の反対面に、粘着剤を介して透明樹脂フィルムを積層することで、タッチパネルの固定電極に用い得る透明導電性フィルムが得られる。すなわち、タッチパネルの固定電極の基板を、通常用いられているガラスから、透明樹脂フィルムに変更することで、軽量かつ割れにくいタッチパネルを作製することができる。
【0114】
上記粘着剤は、本発明の透明導電性フィルムに要求される透明性を維持し得るものであれば特に限定されず、透明性を有する公知の粘着剤が使用でき、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚みは特に限定されないが、通常は1〜100μmの範囲に設定することが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚みの場合は、実用上問題のない接着性を得るのが困難であり、100μmを超える厚みの場合は生産性の観点から好ましくない。
【0115】
この粘着剤を介して積層する透明樹脂フィルムは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚みは0.05〜5mmの範囲が好ましい。透明樹脂フィルムの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。他方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂フィルムとしては、先に透明プラスチックフィルムについて例示した各種有機高分子を素材とするフィルムを使用することができる。
【0116】
次に、本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルについて説明する。
【0117】
[タッチパネル]
本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を図8に示す。図8のタッチパネルは、透明導電性薄膜13,13を有する一対のパネル板を、該透明導電性薄膜13,13が対向するようにスペーサー20を介して配置してなるものであり、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムを使用したものである。
【0118】
このタッチパネルは、図8中上側の易接着層12側からペンなどにより文字を入力する際に、ペンなどの押圧により、スペーサー20を介して対向する透明不導電性薄膜13,13同士が接触して電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンなどの位置を検出することができる。このペンなどの位置を連続的且つ正確に検出することで、ペンなどの軌跡から文字などを認識することができる。この際、ペンなどの接触側の可動電極として、本発明の透明導電性フィルムを用いると、耐熱性や耐有機溶剤性に優れることからタッチパネル製造工程において外観不良の発生が極めて抑えられ、且つペン摺動耐久性に優れるため、長期間に亘って品質劣化の抑制された安定なタッチパネルとすることができる。
【0119】
なお、タッチパネルに用いるスペーサーとしては、図8に示すビーズ(エポキシビーズ、アクリルビーズ、シリカビーズなど)や、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などをスクリーン印刷したものなど、通常のタッチパネルで用いられている公知のスペーサーが挙げられる。
【0120】
また、ガラス基板を用いずに、透明樹脂フィルムを積層した本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルの一例を図9に示す。図9のタッチパネルは一対のパネル板のいずれもが本発明の透明導電性フィルムであり、ガラスを用いていないため、非常に軽量であり、且つ耐衝撃性に優れたものである。
【0121】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限り、質量基準である。また、実施例・比較例で得られた樹脂、透明導電性フィルムおよびタッチパネルの特性は、以下の方法で評価した。
【0122】
<ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度>
ポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、該共重合体を13.3Pa以下の減圧下、100℃で2時間乾燥して得られる固形分を、DSC(理学電機株式会社製「DSC−10A」)を用いて、JIS K 7121の9.3項の規定に準拠して測定する。
【0123】
<光線透過率・ヘーズ>
日本電色工業株式会社製「NDH−1001DP」を用い、JIS K 7105に準じて光線透過率およびヘーズを測定する。
【0124】
<表面抵抗率>
測定装置に、三菱油化株式会社製「Lotest AMCP−T400」を用い、JIS K 7194に準じて4端子法により測定する。
【0125】
<耐熱性>
透明導電性フィルムを150±3℃に調温したオーブン内に60分保管し、続いて室温で30分放置した後に、上記方法で光線透過率、ヘーズおよび表面抵抗率を測定する。
【0126】
<耐有機溶剤性>
25±1℃に調温したアセトン中に、透明導電性フィルムを10分浸漬し、続いて10分風乾した後に、上記方法で光線透過率、ヘーズおよび表面抵抗率を測定する。
【0127】
<自乗平均面粗さ(Rms)測定>
原子間力顕微鏡(AFM)により測定する。装置には、Seiko Instruments社製の走査型プローブ顕微鏡「SPI3800/SPA300」を用い、スキャナーには同社製「FS−20A」を、カンチレバーにはシリコン製の「SI−DF20」(同社製)を用いる。観察モードはDFMモードとする。なお、観察に用いるカンチレバーは、探針汚染による分解能低下を回避するため、常に新品を使用する。また、観察の際の摩耗劣化を防ぐため、分解能を犠牲にしない範囲で、できる限り探針にかかる負荷が小さい条件で行うこととする。
【0128】
自乗平均面粗さ(Rms)測定は、上記AFMにより1.0μm×1.0μmの領域を、分解能250×250ピクセル以上で観察することで行う。走査速度は0.5Hz以上で行うこととする。フィルム表面を観察した後は、付属のソフトウェアによってデータの傾斜を補正し、その後、付属のソフトウェアにより自乗平均表面粗さ(Rms)を求める。フィルムの自乗平均面粗さ(Rms)は、ランダムに評価したAFM像10点以上の平均値とする。ただし、評価対象となるAFM像は、上記傾斜補正後の面内の最大高低差が12.5nm未満のものとし、12.5nm以上のものは評価対象外とする。これは透明プラスチックフィルム表面により誘起される凹凸を自乗平均面粗さの評価対象から除くための処理である。
【0129】
<付着力測定>
40μm厚のアイオノマーフィルムを、ポリエステル系接着剤を用いて厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにラミネートし、15mm幅に裁断して付着力測定用積層体を作製する。この付着力測定用積層体のアイオノマー面と15mm幅に裁断した透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面を対向させ、幅を揃えて重ねて130℃でヒートシールする。その後、付着力測定用積層体と透明導電性フィルムとを180度剥離法で剥離し、この剥離力を付着力とする。この時の剥離速度は1000mm/分とする。
【0130】
<タッチパネルのペン摺動耐久性試験>
ポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ、20万回(往復10万回)の直線摺動試験をタッチパネルに行う。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とする。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察する。また、この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.5Nで上記の摺動部にかかるように20mmφの記号○印を筆記し、タッチパネルがこれを正確に読みとれるかを評価する。さらに、上記摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.5Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗[可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値]を測定する。
【0131】
<タッチパネルの外観評価>
作製したタッチパネル50枚に対し、目視によって三波長蛍光灯下で観察し、白化などの外観不良部が存在したタッチパネルの枚数をカウントする。
【0132】
実施例1
[疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成]
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート:218部、ジメチルイソフタレート:194部、エチレングリコール:488部、ネオペンチルグリコール:200部およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマル酸:13部およびセバシン酸:51部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温してエステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1.5時間反応させて、淡黄色透明の疎水性共重合性ポリエステル樹脂を得た。
【0133】
[ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の合成]
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記疎水性共重合性ポリエステル:75部、メチルエチルケトン:56部およびイソプロピルアルコール:19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、この溶液に無水マレイン酸:15部を添加した。次いでこの溶液に、スチレン:10部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル:1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分の速度で滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5部添加した。次いで、水:300部とトリエチルアミン:15部を反応溶液に加え、1.5時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移温度は40℃であった。
【0134】
[易接着層形成用組成物の調製]
水とイソプロパノール60/40(質量比)の混合溶媒に、上記のポリエステル系グラフト共重合体の水分散体と、平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学製)を、固形分質量比で97/3となるように混合し、全固形分濃度が5%となるように調製して、易接着層形成用組成物とした。
【0135】
[透明プラスチックフィルムの作製および易接着層の形成]
原料に、実質的に不活性粒子を含有しておらず、固有粘度が0.62dl/gのPETペレットを用いた。このPETペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出し、表面温度を20℃に保った金属ロール上で静電密着法を用いて急冷固化して、厚みが1900μmの未延伸PETフィルムを得た。次にこの未延伸PETフィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムとした。
【0136】
次いで易接着層形成用組成物を、一軸配向PETフィルムの両面にリバースコート法で塗布した。続いて温度:65℃、相対湿度:60%、風速:15m/秒の条件で2秒間風乾し、その後温度:130℃、風速:20m/秒の条件で3秒間風乾して水分を除去し、その後、連続的に端部をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱処理を施した後、200℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み:188μmの両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを得た。最終的な易接着層の乾燥塗布量は、いずれの面とも0.1g/m2であった。
【0137】
[透明導電性薄膜の形成]
次に、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムの片面に、インジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成した。この際、スパッタリング前の圧力を0.0007Paとし、ターゲットとして酸化スズを5%含有した酸化インジウム(三井金属鉱業社製、密度7.1g/cm3)に用いて、2W/cm2のDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、酸素ガスを10sccmの流速で流し、圧力:0.4Paとして、DCマグネトロンスパッタリング法で透明導電性薄膜形成を行った。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製「RPG−100」を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は50℃とした。なお、雰囲気中の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(伯東社製「SPM200」)を用いて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計およびDC電源にフィートバックした。以上の操作・条件により、厚み:22nmのインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成して、透明導電性フィルムNo.1を得た。この透明導電性フィルムNo.1について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
[タッチパネルの作製]
透明導電性フィルムNo.1を一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物(酸化スズ含有量:10%)からなる透明導電性薄膜(日本曹達社製「S500」)を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径:30μmのエポキシビーズを介して配置し、タッチパネルNo.1を作製した。このタッチパネルNo.1について、上記の評価を行った。結果を表2および図1に示す。
【0139】
実施例2
ポリエステル系グラフト共重合体を下記のものに変更した他は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムNo.2、およびタッチパネルNo.2を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図2に示す。
【0140】
[疎水性共重合性ポリエステル樹脂の合成]
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、テレフタル酸:1245部、イソフタル酸:332部,フマル酸:58部,プロピレングリコール:1216部,エチレングリコール:248部、トリメチロールプロパン:8部を仕込み、160℃から220℃まで、3時間かけてエステル化反応を行った。次いで、テトラ−n−ブチルチタネート:0.7部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの圧力下で2.5時間反応させて疎水性共重合性ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合性ポリエステル樹脂は淡黄色透明であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は、15000であった。
【0141】
[ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の合成]
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記疎水性共重合性ポリエステル樹脂:75部、メチルエチルケトン:56部およびイソプロパノール:19部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、この溶液に無水マレイン酸:15部を添加した。次いでこの溶液に、スチレン:10部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル:1.5部を12部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分の速度で滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール:5部を添加した。次いで、水:300部とトリエチルアミン:15部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去して、ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は淡黄色透明で、ガラス転移温度は80℃であった。
【0142】
実施例3
実施例1と同様にして、両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを作製した。このフィルムの一方の易接着面に、ハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製「EXG」)を、乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥した。その後、表面に微細な凸形状が形成されたPETフィルムのマット賦形フィルム(東レ社製「X」)を、マット面が紫外線硬化型樹脂と接するようにラミネートした。このマット賦形フィルムの表面形状は、平均表面粗さ:0.40μm、山の平均間隔:160μm、最大表面粗さ:25μmである。
【0143】
上記マット賦形フィルムのラミネート後、160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、上記紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、マット賦形フィルムを剥離して、表面に凹形状加工が施されており、防眩効果を有するハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0144】
上記防眩性ハードコート層形成後の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムの、ハードコート層形成側の反対側の易接着層上に、実施例1と同様にして透明導電性薄膜を形成し、透明導電性フィルムNo.3を得た。さらに、この透明導電性フィルムNo.3を一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.3を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図3に示す。
【0145】
実施例4
実施例3と同様にして、一方の易接着層上に防眩性ハードコート層を形成した両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを作製し、この防眩性ハードコート層上に、順次TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚15nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚29nm)、TiO2薄膜層(屈折率:2.30、膜厚109nm)、SiO2薄膜層(屈折率:1.46、膜厚87nm)を積層して低反射処理層を形成して透明導電性フィルムNo.4を得た。TiO2薄膜層の形成は、チタンをターゲットに用い、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Paとし、ガスとしてArガスを500sccm、酸素ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを冷却した。ターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0146】
SiO2薄膜の形成は、シリコンをターゲットに用い、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Pa、ガスとしてArガスを500sccm、酸素ガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、上記の両面易接着層形成二軸延伸PETフィルムを冷却した。ターゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0147】
さらに、この透明導電性フィルムNo.4を一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.4を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図4に示す。
【0148】
実施例5
実施例1と同様にして作製した透明導電性フィルムの透明導電性薄膜を形成していない側の易接着層上に、アクリル系粘着剤を介して、厚み:1.0mmのポリカーボネート製シートに貼り付けて、透明導電性フィルムNo.5を作製した。この透明導電性フィルムNo.5を固定電極として用い、実施例4の透明導電性フィルムNo.4を可動電極に用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルNo.5を作製した。透明導電性フィルムNo.5およびタッチパネルNo.5の評価結果を表1、表2および図5に示す。
【0149】
比較例1
易接着層を設けない以外は実施例1と同様にして透明導電性フィルムNo.6およびタッチパネルNo.6を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図6に示す。
【0150】
比較例2
易接着層形成用組成物に、実施例1で合成した疎水性共重合性ポリエステル樹脂をグラフト化反応させずに用いた他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムNo.7およびタッチパネルNo.7を作製した。これらの評価結果を表1、表2および図7に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1の光線透過率、ヘーズ、表面抵抗値の各欄において、「a」は透明導電性フィルムについて、耐熱性評価用の処理、および耐有機溶剤性評価用の処理を施さずに測定したもの、「b」は耐熱性評価用の処理(150℃で60分保管)を施した後に測定したもの、「c」は耐有機溶剤性評価用の処理(上記のアセトンへの浸漬処理)を施した後に測定したものである。
【0153】
【表2】
【0154】
表1および表2の結果より、透明導電性フィルムNo.1〜No.5は、加熱処理後、有機溶剤処理後共に、光線透過率、ヘーズ、および表面抵抗率が殆ど変化していないことが分かる。また、透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さ(Rms)も、好適な範囲となっていた。この透明導電性フィルムNo.1〜No.5を用いたタッチパネルNo.1〜No.5は、外観不良が極めて少なかった。また、ペン摺動耐久性試験後においても白化もなく、ON抵抗にも異常がなかった。また、図1〜図5は、夫々タッチパネルNo.1〜No.5のペン摺動耐久性試験後の、入力した記号○印の出力形状を表した図であるが、これらのタッチパネルでは正確に○印を認識していた。
他方、透明導電性フィルムNo.6,No.7は、耐熱性、耐有機溶剤性が十分でなかった。この透明導電性フィルムNo.6,No.7を用いたタッチパネルNo.6,No.7は外観不良が多く、また、ペン摺動耐久性試験後に白化が生じ、ON抵抗の異常も生じた。また、図6〜図7は、夫々タッチパネルNo.6〜No.7のペン摺動耐久性試験後の、入力した記号○印の出力形状を表した図であるが、いずれも○印が正確に認識されなかった。
【0155】
【発明の効果】
本発明の透明導電性フィルムは以上のように構成されており、タッチパネル作製工程での加熱や、該工程で使用される有機溶剤による劣化が抑制されている。また、タッチパネルに用いた際に付与される繰り返し荷重に対する耐性も優れている。よって、本発明の透明導電性フィルムを用いた本発明のタッチパネルは、製造工程で発生する外観不良が少なく、また、ペンの押圧によって対向する透明導電性薄同士が接触しても、剥離、クラックなどの発生が抑制されているなど、ペン摺動耐久性が良好であり、かつ位置検出精度や表示品位にも優れている。したがって、ペン入力タッチパネルとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製したタッチパネルNo.1において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.1へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図2】実施例2で作製したタッチパネルNo.2において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.2へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図3】実施例3で作製したタッチパネルNo.3において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.3へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図4】実施例4で作製したタッチパネルNo.4において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.4へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図5】実施例5で作製したタッチパネルNo.5において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.5へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図6】比較例1で作製したタッチパネルNo.6において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.6へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図7】比較例7で作製したタッチパネルNo.7において、ペン耐久性試験後に該タッチパネルNo.7へ入力した記号○印の、出力形状を表した説明図である。
【図8】本発明のタッチパネルの構成例を示す断面模式図である。
【図9】本発明のタッチパネルの構成例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 ペン摺動試験部
2 タッチパネル出力形状
10,40 透明導電性フィルム
11 透明プラスチックフィルム
12 易接着層
13 透明導電性薄膜
20 スペーサー(ビーズ)
30 ガラス板
41 粘着剤
42 透明樹脂フィルム
Claims (7)
- 透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成された透明導電性フィルムであって、
前記易接着層は、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトしてなり、且つガラス転移温度が20℃以上であるポリエステル系グラフト共重合体および/またはその架橋体を主成分とするものであり、
透明導電性薄膜側表面の自乗平均面粗さ(Rms)が、1.0μm×1.0μmの領域において、0.3〜2nmであることを特徴とする透明導電性フィルム。 - 上記透明導電性薄膜が、インジウム−スズ複合酸化物から形成されたものである請求項1に記載の透明導電性フィルム。
- 透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、ハードコート層が形成されているものである請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
- 上記ハードコート層は、防眩性を有するものである請求項3に記載の透明導電性フィルム。
- 上記ハードコート層は、低反射処理が施されたものである請求項3または4に記載の透明導電性フィルム。
- 透明プラスチックフィルムの片面に、易接着層を介して透明導電性薄膜が形成されており、且つ該透明導電性薄膜形成面の反対側の面には、粘着剤を介して透明樹脂フィルムが積層されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
- 透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、スペーサーを介して透明導電性薄膜が対向するように配置してなるタッチパネルであって、
少なくとも一方のパネル板が、請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルムからなるものであることを特徴とするタッチパネル。
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