JP2004063406A - レーザー封口電池及びその製造方法及びこれに用いるレーザー照射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザー溶接速度を高くすることにより、レーザー封口電池のレーザー溶接に要する時間を短縮でき、且つ溶接熱の電池本体に対する悪影響を最小限に止める。
【解決手段】レーザー光として、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を用い、前記パルスレーザー光の照射スポット中心点を概ね外装缶と封口蓋との嵌合部上に位置させ、かつ前記照射スポット中心位置における嵌合部接線方向と前記照射スポットの長軸方向とが常に略一致するようにして、前記パルスレーザー光を嵌合部全周に照射する。
【選択図】 図1
【解決手段】レーザー光として、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を用い、前記パルスレーザー光の照射スポット中心点を概ね外装缶と封口蓋との嵌合部上に位置させ、かつ前記照射スポット中心位置における嵌合部接線方向と前記照射スポットの長軸方向とが常に略一致するようにして、前記パルスレーザー光を嵌合部全周に照射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパルスレーザー光を用いてシーム溶接するレーザー封口電池、その製造方法及びこの製造方法に用いる電池封口用レーザー溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー封口電池においては、電極体が収納された有底筒状の外装缶と、この外装缶の開口に配置された封口蓋との嵌合部、及び/又は、上記封口蓋に形成された電解液注入口とこの電解液注入口を塞ぐ注入口封止板との嵌合部をパルスレーザー光を用いてシーム溶接する方法が提案されている。
【0003】
この方法を、図面を用いて説明する。図8は従来の技術にかかるレーザー照射装置の概略図、図9(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接深度を表す説明図である。
図8に示すように、断面形状が円形の光ファイバー51から出射されるパルスレーザー光を、コリメートレンズ52で平行な光束に変え、集光レンズ52で集光させることにより、レーザースポット形状が円形のパルスレーザー光を被加工物54(例えば、外装缶と封口蓋との嵌合部)の表面に投射する。この方法においては、スポット形状が円形のパルスレーザー光の一部を重ね合わせながら被加工物上を走査することにより、被加工物の目的位部位全体を溶接することになるが、図9(a)(b)に示すように、レーザースポット55・55のスポット間距離L5 を長くすると、被加工物54に、パルスレーザー光による溶接深度が浅い部分57が生じ、溶接が不十分になる。このため、この方法においては、図10(a)(b)に示すように、レーザースポット55・56のスポット間距離L5 を短くし、隣接する二つのレーザースポット55・56のオーバーラップ率〔図10において、〈オーバーラップしている部分の長さL7 /レーザースポット径L6 〉×100(%)で算出〕を70%程度に規制することにより、溶接深度の浅い部分が生じるのを防止する方法がとられていた。
【0004】
しかしながら、レーザー照射装置には最大繰り返し数(時間当たり、パルスレーザー光を照射できる回数)に制約があるため、上記の技術のようにオーバーラップ率を大きくすると、レーザー溶接速度が遅くなり、作業効率が低下する。さらに、オーバーラップが大きいと、オーバーラップ部分での発熱量が過大になるため、電池性能を低下させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明者らは、特開2001−338622号公報において、パルスレーザー光の照射スポット形状を矩形や楕円形とする技術を提案した。この技術では、図12(a)(b)、図13(c)に示すように、スポットの長手方向と電池の長辺方向とを一致させて移動させる。従って、一回の照射によって溶接する部分が長くでき、しかも、オーバーラップ率を20%程度(長軸と短軸の長さの比が3.4:1の場合)としても溶接深度を均一にできる。従って、溶接作業効率が高まる。
【0006】
しかしながら、この技術では、図12(c)(d)、図13(c)に示すように、電池の短辺方向を溶接する際には、スポットの短手方向を短辺方向に沿って移動させることになる。従って、短辺方向においては、上記従来の技術と同様、オーバーラップ率を70%程度とする必要があり、未だ改善の余地を残していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、レーザー封口電池の溶接に伴う作業時間を短縮することができ、しかも溶接作業時に電池性能を低下させることのないレーザー封口電池を提供すること、その製造方法を提供すること及びこの方法に使用するレーザー照射装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部に封口蓋を嵌合し、前記開口部と封口蓋との嵌合部にレーザー光を照射して当該嵌合部を溶接し封口するレーザー封口電池の製造方法において、前記レーザー光として、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を用い、前記パルスレーザー光の照射スポット中心点を概ね前記嵌合部上に位置させ、かつ前記照射スポット中心位置における嵌合部接線方向と前記照射スポットの長軸方向とが常に略一致するようにして、前記パルスレーザー光を嵌合部全周に照射することを特徴とする。
【0009】
上記構成では、長軸を有する照射スポット形状(例えば楕円、矩形等)を用い、レーザーの長軸方向と照射スポット中心位置における嵌合部接線方向とを常に一致させるようにしてレーザーを照射するので、電池の短辺方向の溶接においても、長辺方向と同じ溶接速度を維持させることができる。従って、この方法によると電池封口作業における溶接時間を短縮でき、しかもオーバーラップ率を小さくできるので、過大な照射熱が発生しない。従って、溶接作業時に電池本体に悪影響を与えることがない。
【0010】
ここで、本明細書中で用いる照射スポット形状について説明する。本明細書中でいう照射スポット形状とは、レーザー光がレーザー光を被照射面に照射した場合における光形状のことをいい、長軸を有する形状とは、一般には楕円、矩形、丸角矩形を指す。そして、これらの形状の図形は、対称軸を2つ有するので、その長い方を長軸とし、両軸の交点をスポット中心とする。ただし、長軸を有する形状には、多角形や不定形も含まれる。多角形や不定形の場合においては、図14に示すように照射スポット形状19をもっとも幅の狭い平行な2直線21.21で挟み、この後、この平行な2直線21.21に対し垂直な平行な2直線22.22でスポット形状19を挟む。これにより線分21.21,22.22からなる矩形が形成されるが、この矩形の対称軸のうち長い方を照射スポット形状の長軸とみなし、長軸の中点を照射スポット形状の中心点とみなす。なお、丸角矩形とは角の部分が丸い矩形のことを意味する。また、レーザー溶接痕とは、レーザー光がレーザー光を被照射面に照射した後、被照射面に残存する照射スポット痕のことを意味する。
【0011】
また、照射スポット中心位置における嵌合部接線方向は、当該点における嵌合部の形状が直線である場合にはその直線方向を意味するものとし、当該点が角である場合にはどちらか一方の直線方向とする。
【0012】
また、本明細書中で使用する嵌合とは、両部材が隙間なく嵌め合わさったものだけでなく、滑り動くようにゆるく継ぎ合わされたものを含むものである。
【0013】
また、本発明に係るレーザー封口電池は、正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部と封口蓋とがレーザー溶接により封口されたレーザー封口電池において、当該溶接部に垂直な方向から見た場合、レーザー溶接痕が長軸を有する形状であり、前記溶接痕の中心点が外装缶の外周線から外装缶肉厚分内側で、且つ前記外周線と平行な内周線上に概ね位置し、且つ前記溶接痕の長軸方向と前記内周線の接線方向とが常に略一致していることを特徴とする。
【0014】
上記構成によると、従来の技術より少ないレーザー照射量で溶接されているため、電池封口作業における溶接時間を短縮でき、電池本体はほとんど悪影響を受けていない。
【0015】
次に、本発明にかかるレーザー照射装置について説明する。本発明の電池封口用レーザー照射装置は、正極と負極とを有する電極体が収納された外装缶の開口部と封口蓋との嵌合部がレーザースポット溶接されてなるレーザー封口電池の製造に使用する電池封口用レーザー照射装置であって、前記電池封口用レーザー照射装置は、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を射出する射出部と、前記射出部から射出した長軸を有するスポット形状光のスポット中心点が概ね前記嵌合部上に位置し、かつ照射スポットの長軸方向が前記照射スポット中心点位置における嵌合部接線方向と一致するように、長軸スポット形状光と外装缶開口部との相互の空間的位置関係を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
ここで、上記構成の装置における前記射出部は、スポット形状が円形のパルスレーザー光を長軸を有する長軸スポット形状光に変形する照射光変形レンズを備え、前記制御部は、少なくとも、スポット形状光のスポット中心点、長軸方向、長軸の長さ、および外装缶開口部の形状についての情報を電子的に格納する照射情報格納手段と、前記照射情報格納手段に格納された情報に基づいて、スポット予定点の位置と、前記スポット予定点の位置における嵌合部接線方向を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した情報に基づいて、パルスレーザー光のパルス間隔の間に、次のスポット予定点が前記射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と概ね一致するように前記射出部を移動させる射出部移動手段と、前記算出手段が算出した情報に基づいて、前記パルス間隔の間に、前記次のスポット予定点の嵌合部接線方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させるように前記照射光変形レンズを回動させる長軸方向回動手段とを備えたものとすることができる。
【0017】
この構成のレーザー照射装置であると、上記製造方法を一層効率よく実施することができるので好ましい。
【0018】
また、常にセンサー等でその時点での照射位置を基準として電池全体の位置を読みとり、前記算出手段が算出した次のスポット予定点における電位全体の位置と、センサー等で読みとったその時点での電池全体の位置にずれが生じている場合、制御部にフィードバックするの感知手段を付加することもできる。さらに、この感知手段は、次のスポット予定点での長軸方向と、センサー等で読みとったその時点での長軸方向とにずれが生じている場合、制御部にフィードバックする構成であってもよい。この構成によると、さらに確実に嵌合部の接線方向と長軸スポット光の長軸方向とを一致させることができる。
【0019】
なお、本発明に用いる制御部の算出手段は、主に各情報をソフト的に処理するコンピュータからなる。そして、上記スポット予定点は照射情報格納手段に格納された情報に基づいて、算出手段が算出した点をいう。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は第1の形態の製造方法により作製されたレーザー封口電池の斜視図、図2は図1のA−A線矢視部分断面図、図3は注入口封止板及びパッキングを取り除いた際のレーザー封口電池の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る角型のレーザー封口電池は、有底方形筒状の外装缶1を有しており、この外装缶1内には、LiCoO2 を主体とする正極と、黒鉛を主体とする負極と、これら両電極を離間するセパレータとから成る渦巻き状の電極体(図示せず)が収納されている。また、上記外装缶1内には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とが体積比で4:6の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6 が1M(モル/リットル)の割合で溶解された電解液が注入されている。
【0022】
ここで、上記外装缶1の開口部には、封口蓋2がレーザー溶接されており、これによって電池が封口される。また、上記封口蓋2には、図3に示すように、凹部7bと、凹部7bの中央付近に設けられた貫通孔7aとからなる電解液注入口7及び、正極端子3が設けられている。上記電解液注入口7の貫通孔7aには、図3に示すように、ゴム製のパッキング5が挿入されており、このパッキング5は注入口封止板4により電池内部方向(図2中B方向)に押圧されて、電解液が電池外に漏れるのを阻止している。上記注入口封止板4は上記凹部7aの上端にレーザー溶接されている。
【0023】
上記構造のレーザー封口電池を、以下のようにして作製した。
先ず、LiCoO2からなる正極活物質と、黒鉛からなる導電材と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して正極活物質スラリーとした。この活物質スラリーをアルミ箔製正極芯体の両面に塗布した後、圧延、乾燥することにより正極を作製した。
【0024】
黒煙からなる負極活物質と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して負極活物質スラリーとした。この活物質スラリーを銅箔製負極芯体の両面に塗布した後、圧延、乾燥することにより負極を作製した。
【0025】
次に、上記正極と負極とをポリエチレン製のセパレータを介して偏平渦巻き状に巻回することにより電極体を作製した。
【0026】
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とが体積比で4:6の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6 を1M(モル/リットル)の割合で溶解して電解液を作製した。
【0027】
次いで、外装缶1内に上記電極体を挿入した後、外装缶1の開口端に封口蓋2を嵌め込み、更に、外装缶1と封口蓋2とをレーザー溶接した(図1における太線部17・17)。この後、封口蓋2の電解液注入口7から電解液を注入した後、電解液注入口7の貫通孔7aにパッキング5を挿入した。しかる後、パッキング5を押圧しつつ、貫通孔7aと連通する凹部7bの上端に注入口封止板4を嵌め込み、注入口封止板4の周縁と封口蓋2とをレーザー溶接した(図1における太線部19・19)。これにより、レーザー封口電池が製造される。
【0028】
上記外装缶1と封口蓋2、及び、注入口封止板4の周縁と封口蓋2とのレーザー溶接は、図4に示すようなレーザー照射装置を用いた。このレーザー照射装置は、レーザー発振器(図示せず)と、制御部(図示せず)と、レーザー射出部10とを有している。このレーザー射出部10は、上記レーザー発振器からのパルスレーザー光を導く断面形状が円形の光ファイバー11と、この光ファイバー11から射出される、スポット形状が円形のパルスレーザー光12を矩形に変化させる照射光変形レンズ13と、レーザー光を平行な光束に変えるコリメートレンズ18とから成る。但し、コリメートレンズは必須の構成要素ではない。また、上記照射光変形レンズ13にはシリンドリカルレンズが用いられた構成であり、図5(a)に示すように、上記照射光変形レンズ13を通過したレーザー光のレーザースポット形状が丸角矩形(この場合、溶接位置でのスポットの大きさは約0.5×1.7mm)となる。
【0029】
また、制御部は、スポット形状光のスポット中心点、長軸方向及び長軸の長さ、外装缶開口部の形状、隣り合う二つのスポットのオーバーラップ率についての情報を電子的に格納した照射情報格納手段(図示せず)と、照射光変形レンズ13を回動可能とする長軸方向回動手段14(図4においては図示せず)と、射出部を固定し、移動させる射出部移動手段(図示せず)とを有している。なお、前記長軸方向回動手段14としては照射光変形レンズを回転させる回転テーブルを用い、前記射出部移動手段としては、XYテーブルを用いた。
【0030】
前記XYテーブルは、溶接開始点が定められ、この点を(0,0)、電池の長辺方向をX方向、電池の短辺方向をY方向としてすべての点のX、Y座標が定められており、この情報は照射情報格納手段に格納されている。これら格納された情報に基づき、制御部の算出手段が、すべての溶接予定点とその予定点における長軸スポット形状光の長軸の向き、溶接の順序を算出する。そして、上記算出手段は外装缶と封口蓋が嵌合してなる素電池100が電池テーブル15上の溶接開始点に配置、固定されると、上記で算出した情報を制御部の長軸方向変換手段および制御部の射出部移動手段に伝達し、一回目のパルスレーザー光を射出させる。次いで、パルスレーザー光のパルス間隔の間に、次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と一致するように射出部移動手段を移動させるとともに、その予定点での長軸方向と長軸スポット形状光の長軸方向と一致するように長軸方向変換手段を回動させる信号を発する。そして、上記移動及び回動の終了後、射出部から次のパルスレーザー光が射出されるように構成されている。
【0031】
本発明にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である図6を用いて、具体的なパルスレーザー光の射出の様子を説明する。図6(a)に示すように、角形電池の長辺部を溶接する時には、長軸方向を回動させることなく一定とし、射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と次のスポット予定点とが一致する位置となるように、射出部に接続されたXYテーブル(図示せず)をX方向(電池の長辺方向)に順次移動させ、パルスレーザー光を照射する。
【0032】
また、図6(b)に示すように、電池の溶接部位が長辺部から短辺部に移る場合には、次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と一致するようにXYテーブルをX方向及びY方向に移動させるとともに、スポット予定点での長軸方向と長軸スポット形状光の長軸方向と一致させるように回転テーブルを回動させ、パルスレーザー光を照射する。このようにして、短辺部においても、その短辺方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させてレーザー溶接する。このレーザー溶接のパルス間隔は、あらかじめある一定の間隔で照射されるように決められていてもよく、また上記移動及び回動の終了と同期してレーザー光が射出されるように制御する構成とすることもできる。
【0033】
また、注入口封止板と封口蓋との嵌合部においても同様に溶接する。
【0034】
このレーザー照射装置は、上記構成に加え、常にセンサー等でその時点での照射位置を基準として電池全体の位置を読みとり、前記算出手段が算出した次のスポット予定点における電位全体の位置と、センサー等で読みとったその時点での電池全体の位置にずれが生じている場合、制御部にフィードバックする感知手段を付加することもできる。さらに、この感知手段は、次のスポット予定点での長軸方向と、センサー等で読みとったその時点での長軸方向とにずれが生じている場合、制御部にフィードバックする構成であってもよい。この構成によると、さらに確実に嵌合部の接線方向と長軸スポット光の長軸方向とを一致させることができる。
【0035】
上述のレーザー溶接方法であると、図13(a)に示すように、レーザースポット形状の長軸方向が、レーザースポット中点における外装缶と封口蓋の嵌合部の接線方向と常に一致するので、オーバーラップ率を約20%とした場合においても、素電池100に溶接深度の小さい部分がほとんど生じず、良好な封止を行いうる。また、レーザー溶接速度が高まるので、短時間で完全な封止が完了する。
【0036】
尚、レーザースポット形状の長軸方向が、レーザースポット中点における外装缶と封口蓋の嵌合部の接線方向と常に一致させる方法としては、上記の構成に限定するものではなく、以下の(1)〜(3)に示すような構成とすることもできる。
【0037】
(1) 照射光変形レンズを用いずに、レーザー取り出し部の光ファイバーの形状を楕円、矩形等とすることにより、光ファイバーから直接、楕円、矩形のレーザースポットを射出する構成とすることができる。
【0038】
(2) また、嵌合部の次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点に概ね一致する位置にまで外装缶を移動させる外装缶移動手段と、次のスポット予定点の嵌合部接線方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させる長軸方向回動手段を備えた構成とすることができる。
【0039】
(3) また、長軸方向回動手段は用いずに、外装缶を移動させることによりレーザー射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点に次のスポット予定点を移動させ、且つ射出部から射出された長軸スポット光の長軸方向とスポット予定点の嵌合部接線方向とが一致するように外装缶を回動させる外装缶位置制御手段を備えた構成とすることができる。
【0040】
また、リチウムイオン電池は、上記の材料に限定されるものではなく、公知の材料を用いて作製することができる。さらに、本発明は上記リチウムイオン電池に限定するものではなく、例えばニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池等、レーザー照射装置にてシーム溶接することのできるすべての電池に適用することができる。
【0041】
(実施例1)
上記実施の形態に示す方法と同様の方法で実施例1にかかる電池を作製した。この電池のサイズは、短辺5.4×長辺33.75×高さ47.5mmである。また、溶接には200W、4J/pulse、50pulse/secの条件で、大きさが0.5×1.7mmの丸角矩形照射スポット形状を与えるレーザー照射装置を用い、図5に示すように、オーバーラップ率を約20%に設定した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池Aと称する。
【0042】
(比較例1)
電池の溶接には200W、1J/pulse、200pulse/secであり、レーザースポットの大きさが0.5×0.5mmの円形形状のレーザー照射装置を用いて電池を作製した。ここで、オーバーラップ率は図10に示すように約70%に設定した。
この他の条件は上記実施例1と同様にして比較例1にかかる電池を作製した。以下、この電池を比較電池Xと称する。
【0043】
(比較例2)
長軸方向回動手段を備えないこと以外は、実施例1と同様のレーザー照射装置を用いて電池を作製した。長軸方向回動手段を備えないので、電池の長辺方向を溶接する場合においては実施例1と同じくオーバーラップ率を約20%としたが、短辺方向を溶接する場合においては比較例1と同じくオーバーラップ率を約70%に設定した。
この他の条件は上記実施例1と同様にして比較例2にかかる電池を作製した。以下、この電池を比較電池Yと称する。
【0044】
〔実験〕
レーザー照射装置を用いて上記本発明電池A及び比較電池X、Yを作製する際の、1パルス当たりの加工エネルギー、レーザー溶接における溶接速度、電池一個あたりの封口蓋と開口部の嵌合部の溶接に要した時間とを測定した。その結果を、下記表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
比較電池Xでは、図13(b)に示すように70%オーバーラップさせて溶接したため、溶接速度は30mm/secとなり、溶接にかかる時間は2.61秒となった。
【0047】
また、比較電池Yでは、一回のパルスのエネルギー量が比較電位の四倍であるため、レーザー照射の繰り返し数は50pulse/secとなる。このとき、図13(c)に示すように、電池の長辺方向に溶接するときは長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致するため、オーバーラップ率を約20%としても良好に封止でき、溶接速度は67.5mm/secとなる。一方、電池の短辺方向に溶接するときは長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致しないため、オーバーラップ率を上記比較電池Xと同様に約70%とせねばならず、溶接速度は7.5mm/secと、比較電池Xよりも四倍遅くなる。この結果、溶接にかかる時間は2.44秒となった。
【0048】
これに対して、本発明電池Aでは、図13(a)に示すように、電池の長辺方向、短辺方向いずれの方向に溶接するときであっても、常に長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致するため、67.5mm/secの速さで溶接することができる。このため、溶接にかかる時間は1.16秒となった。
【0049】
以上のことから、上記表1に示す結果となったものと考えられる。本発明電池Aは、比較電池X、Yと比べて二倍以上速く溶接することができるため、電池の製造時間の短縮を図れるとともに、電極体に対する熱の影響を小さくすることができる。
【0050】
(実施例2)
図7に示すようなレーザー照射装置を用い、外装缶の角が丸くなっている外装缶、封口蓋を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2にかかる電池を作製した。このレーザー照射装置は、レーザー発振器(図示せず)と、制御装置(図示せず)と、射出部10と、射出部10に接続されたXYテーブル(図示せず)とを有している。このレーザー射出部10は、上記レーザー発振器からのパルスレーザー光を導く断面形状が円形の光ファイバー11と、この光ファイバー11から出射される円形のパルスレーザー光12を矩形、楕円形に変化させる照射光変形レンズ13とから成り、さらに集光レンズ17を有している。尚、この集光レンズは必須の構成要素ではない。
このようにして作製した電池を、以下本発明電池Bと称す。
【0051】
(結果)
電池Bの溶接に要した時間は、電池の長辺部溶接に0.89秒、コーナー部及び短辺部に0.22秒であり、合計時間は1.11秒であった。このことは、図7、図13(d)に示すように、コーナー部においても常に長軸スポット光の長軸方向と、嵌合部の接線方向とが一致しているため、常に67.5mm/secという高い速度で溶接できたからである。このため、電極体に対する熱の影響も小さくすることができた。
【0052】
尚、上記実施の形態では、変光レンズとしてシリンドリカルレンズを用いたが、これに限定されるものではなく、2焦点レンズの2つのスポットをオーバーラップさせる等、他のレンズを用いても本発明を実施しうるのはもちろんのことである。また、電池テーブルを用いずに、素電池をロボットアーム等で把持し、固定することも可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では角形、角の丸い角形の電池を用いたがこれに限定される必要はなく、レーザー溶接により封口する電池であれば、楕円、円等の形状の電池にも本発明を適用しうるのはもちろんのことである。
【0054】
また、上記実施の形態ではパルスと次のパルスをオーバーラップさせて照射したが、図15に示すように、k回目のパルスとk+1回目のパルスをオーバーラップさせずに照射した後、k回目のパルスとオーバーラップさせる方法であってもかまわない。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、時間当たりのレーザー溶接速度を高くできるとともに、レーザー溶接する際の電極体に対する熱の影響を最小限に止めることができる。従って、本発明によると、レーザー封口電池の製造時間を短縮でき、しかも電池性能の向上にも資するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の形態の製造方法により作製されたレーザー封口電池の斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視部分断面図である。
【図3】注入口封止板及びパッキングを取り除いた際のレーザー封口電池の斜視図である。
【図4】本発明にかかるレーザー照射装置の構造を示す説明図である。
【図5】同図(a)は本発明にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は本発明にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図6】本発明にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である。
【図7】本発明の変形例にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である。
【図8】従来の技術にかかる射出部の構造を示す説明図である。
【図9】同図(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図10】同図(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図11】従来の技術の変形例にかかるレーザー照射装置の構造を示す説明図である。
【図12】同図(a)は従来の技術の変形例にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は同図(a)の被加工物の溶接状態を示す説明図、同図(c)はパルスレーザー光の短軸方向に照射した場合の照射状態を示す説明図、同図(d)は同図(c)の被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図13】同図(a)は実施例電池Aの溶接の状態を示す説明図、同図(b)は比較電池Xの溶接の状態を示す説明図、同図(c)は比較電池Yの溶接の状態を示す説明図、同図(d)は実施例電池Bの溶接の状態を示す説明図である。
【図14】不定形のレーザー光の長軸、スポット中心を決定する方法を示す模式図である。
【図15】本発明のパルスを照射する順番を変形した例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:外装缶
2:封口蓋
4:注入口封止板
5:パッキング
7a:貫通孔
7b:凹部
7:電解液注入口
10:射出部
11:光ファイバー
12:レーザー光
13:変光レンズ
14:回転テーブル
15:電池テーブル
16:嵌合部
17:集光レンズ
18:コリメートレンズ
19:スポット形状(レーザー溶接痕)
100:素電池
【発明の属する技術分野】
本発明はパルスレーザー光を用いてシーム溶接するレーザー封口電池、その製造方法及びこの製造方法に用いる電池封口用レーザー溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー封口電池においては、電極体が収納された有底筒状の外装缶と、この外装缶の開口に配置された封口蓋との嵌合部、及び/又は、上記封口蓋に形成された電解液注入口とこの電解液注入口を塞ぐ注入口封止板との嵌合部をパルスレーザー光を用いてシーム溶接する方法が提案されている。
【0003】
この方法を、図面を用いて説明する。図8は従来の技術にかかるレーザー照射装置の概略図、図9(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接深度を表す説明図である。
図8に示すように、断面形状が円形の光ファイバー51から出射されるパルスレーザー光を、コリメートレンズ52で平行な光束に変え、集光レンズ52で集光させることにより、レーザースポット形状が円形のパルスレーザー光を被加工物54(例えば、外装缶と封口蓋との嵌合部)の表面に投射する。この方法においては、スポット形状が円形のパルスレーザー光の一部を重ね合わせながら被加工物上を走査することにより、被加工物の目的位部位全体を溶接することになるが、図9(a)(b)に示すように、レーザースポット55・55のスポット間距離L5 を長くすると、被加工物54に、パルスレーザー光による溶接深度が浅い部分57が生じ、溶接が不十分になる。このため、この方法においては、図10(a)(b)に示すように、レーザースポット55・56のスポット間距離L5 を短くし、隣接する二つのレーザースポット55・56のオーバーラップ率〔図10において、〈オーバーラップしている部分の長さL7 /レーザースポット径L6 〉×100(%)で算出〕を70%程度に規制することにより、溶接深度の浅い部分が生じるのを防止する方法がとられていた。
【0004】
しかしながら、レーザー照射装置には最大繰り返し数(時間当たり、パルスレーザー光を照射できる回数)に制約があるため、上記の技術のようにオーバーラップ率を大きくすると、レーザー溶接速度が遅くなり、作業効率が低下する。さらに、オーバーラップが大きいと、オーバーラップ部分での発熱量が過大になるため、電池性能を低下させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明者らは、特開2001−338622号公報において、パルスレーザー光の照射スポット形状を矩形や楕円形とする技術を提案した。この技術では、図12(a)(b)、図13(c)に示すように、スポットの長手方向と電池の長辺方向とを一致させて移動させる。従って、一回の照射によって溶接する部分が長くでき、しかも、オーバーラップ率を20%程度(長軸と短軸の長さの比が3.4:1の場合)としても溶接深度を均一にできる。従って、溶接作業効率が高まる。
【0006】
しかしながら、この技術では、図12(c)(d)、図13(c)に示すように、電池の短辺方向を溶接する際には、スポットの短手方向を短辺方向に沿って移動させることになる。従って、短辺方向においては、上記従来の技術と同様、オーバーラップ率を70%程度とする必要があり、未だ改善の余地を残していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、レーザー封口電池の溶接に伴う作業時間を短縮することができ、しかも溶接作業時に電池性能を低下させることのないレーザー封口電池を提供すること、その製造方法を提供すること及びこの方法に使用するレーザー照射装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部に封口蓋を嵌合し、前記開口部と封口蓋との嵌合部にレーザー光を照射して当該嵌合部を溶接し封口するレーザー封口電池の製造方法において、前記レーザー光として、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を用い、前記パルスレーザー光の照射スポット中心点を概ね前記嵌合部上に位置させ、かつ前記照射スポット中心位置における嵌合部接線方向と前記照射スポットの長軸方向とが常に略一致するようにして、前記パルスレーザー光を嵌合部全周に照射することを特徴とする。
【0009】
上記構成では、長軸を有する照射スポット形状(例えば楕円、矩形等)を用い、レーザーの長軸方向と照射スポット中心位置における嵌合部接線方向とを常に一致させるようにしてレーザーを照射するので、電池の短辺方向の溶接においても、長辺方向と同じ溶接速度を維持させることができる。従って、この方法によると電池封口作業における溶接時間を短縮でき、しかもオーバーラップ率を小さくできるので、過大な照射熱が発生しない。従って、溶接作業時に電池本体に悪影響を与えることがない。
【0010】
ここで、本明細書中で用いる照射スポット形状について説明する。本明細書中でいう照射スポット形状とは、レーザー光がレーザー光を被照射面に照射した場合における光形状のことをいい、長軸を有する形状とは、一般には楕円、矩形、丸角矩形を指す。そして、これらの形状の図形は、対称軸を2つ有するので、その長い方を長軸とし、両軸の交点をスポット中心とする。ただし、長軸を有する形状には、多角形や不定形も含まれる。多角形や不定形の場合においては、図14に示すように照射スポット形状19をもっとも幅の狭い平行な2直線21.21で挟み、この後、この平行な2直線21.21に対し垂直な平行な2直線22.22でスポット形状19を挟む。これにより線分21.21,22.22からなる矩形が形成されるが、この矩形の対称軸のうち長い方を照射スポット形状の長軸とみなし、長軸の中点を照射スポット形状の中心点とみなす。なお、丸角矩形とは角の部分が丸い矩形のことを意味する。また、レーザー溶接痕とは、レーザー光がレーザー光を被照射面に照射した後、被照射面に残存する照射スポット痕のことを意味する。
【0011】
また、照射スポット中心位置における嵌合部接線方向は、当該点における嵌合部の形状が直線である場合にはその直線方向を意味するものとし、当該点が角である場合にはどちらか一方の直線方向とする。
【0012】
また、本明細書中で使用する嵌合とは、両部材が隙間なく嵌め合わさったものだけでなく、滑り動くようにゆるく継ぎ合わされたものを含むものである。
【0013】
また、本発明に係るレーザー封口電池は、正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部と封口蓋とがレーザー溶接により封口されたレーザー封口電池において、当該溶接部に垂直な方向から見た場合、レーザー溶接痕が長軸を有する形状であり、前記溶接痕の中心点が外装缶の外周線から外装缶肉厚分内側で、且つ前記外周線と平行な内周線上に概ね位置し、且つ前記溶接痕の長軸方向と前記内周線の接線方向とが常に略一致していることを特徴とする。
【0014】
上記構成によると、従来の技術より少ないレーザー照射量で溶接されているため、電池封口作業における溶接時間を短縮でき、電池本体はほとんど悪影響を受けていない。
【0015】
次に、本発明にかかるレーザー照射装置について説明する。本発明の電池封口用レーザー照射装置は、正極と負極とを有する電極体が収納された外装缶の開口部と封口蓋との嵌合部がレーザースポット溶接されてなるレーザー封口電池の製造に使用する電池封口用レーザー照射装置であって、前記電池封口用レーザー照射装置は、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を射出する射出部と、前記射出部から射出した長軸を有するスポット形状光のスポット中心点が概ね前記嵌合部上に位置し、かつ照射スポットの長軸方向が前記照射スポット中心点位置における嵌合部接線方向と一致するように、長軸スポット形状光と外装缶開口部との相互の空間的位置関係を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
ここで、上記構成の装置における前記射出部は、スポット形状が円形のパルスレーザー光を長軸を有する長軸スポット形状光に変形する照射光変形レンズを備え、前記制御部は、少なくとも、スポット形状光のスポット中心点、長軸方向、長軸の長さ、および外装缶開口部の形状についての情報を電子的に格納する照射情報格納手段と、前記照射情報格納手段に格納された情報に基づいて、スポット予定点の位置と、前記スポット予定点の位置における嵌合部接線方向を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した情報に基づいて、パルスレーザー光のパルス間隔の間に、次のスポット予定点が前記射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と概ね一致するように前記射出部を移動させる射出部移動手段と、前記算出手段が算出した情報に基づいて、前記パルス間隔の間に、前記次のスポット予定点の嵌合部接線方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させるように前記照射光変形レンズを回動させる長軸方向回動手段とを備えたものとすることができる。
【0017】
この構成のレーザー照射装置であると、上記製造方法を一層効率よく実施することができるので好ましい。
【0018】
また、常にセンサー等でその時点での照射位置を基準として電池全体の位置を読みとり、前記算出手段が算出した次のスポット予定点における電位全体の位置と、センサー等で読みとったその時点での電池全体の位置にずれが生じている場合、制御部にフィードバックするの感知手段を付加することもできる。さらに、この感知手段は、次のスポット予定点での長軸方向と、センサー等で読みとったその時点での長軸方向とにずれが生じている場合、制御部にフィードバックする構成であってもよい。この構成によると、さらに確実に嵌合部の接線方向と長軸スポット光の長軸方向とを一致させることができる。
【0019】
なお、本発明に用いる制御部の算出手段は、主に各情報をソフト的に処理するコンピュータからなる。そして、上記スポット予定点は照射情報格納手段に格納された情報に基づいて、算出手段が算出した点をいう。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は第1の形態の製造方法により作製されたレーザー封口電池の斜視図、図2は図1のA−A線矢視部分断面図、図3は注入口封止板及びパッキングを取り除いた際のレーザー封口電池の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係る角型のレーザー封口電池は、有底方形筒状の外装缶1を有しており、この外装缶1内には、LiCoO2 を主体とする正極と、黒鉛を主体とする負極と、これら両電極を離間するセパレータとから成る渦巻き状の電極体(図示せず)が収納されている。また、上記外装缶1内には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とが体積比で4:6の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6 が1M(モル/リットル)の割合で溶解された電解液が注入されている。
【0022】
ここで、上記外装缶1の開口部には、封口蓋2がレーザー溶接されており、これによって電池が封口される。また、上記封口蓋2には、図3に示すように、凹部7bと、凹部7bの中央付近に設けられた貫通孔7aとからなる電解液注入口7及び、正極端子3が設けられている。上記電解液注入口7の貫通孔7aには、図3に示すように、ゴム製のパッキング5が挿入されており、このパッキング5は注入口封止板4により電池内部方向(図2中B方向)に押圧されて、電解液が電池外に漏れるのを阻止している。上記注入口封止板4は上記凹部7aの上端にレーザー溶接されている。
【0023】
上記構造のレーザー封口電池を、以下のようにして作製した。
先ず、LiCoO2からなる正極活物質と、黒鉛からなる導電材と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して正極活物質スラリーとした。この活物質スラリーをアルミ箔製正極芯体の両面に塗布した後、圧延、乾燥することにより正極を作製した。
【0024】
黒煙からなる負極活物質と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して負極活物質スラリーとした。この活物質スラリーを銅箔製負極芯体の両面に塗布した後、圧延、乾燥することにより負極を作製した。
【0025】
次に、上記正極と負極とをポリエチレン製のセパレータを介して偏平渦巻き状に巻回することにより電極体を作製した。
【0026】
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とが体積比で4:6の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6 を1M(モル/リットル)の割合で溶解して電解液を作製した。
【0027】
次いで、外装缶1内に上記電極体を挿入した後、外装缶1の開口端に封口蓋2を嵌め込み、更に、外装缶1と封口蓋2とをレーザー溶接した(図1における太線部17・17)。この後、封口蓋2の電解液注入口7から電解液を注入した後、電解液注入口7の貫通孔7aにパッキング5を挿入した。しかる後、パッキング5を押圧しつつ、貫通孔7aと連通する凹部7bの上端に注入口封止板4を嵌め込み、注入口封止板4の周縁と封口蓋2とをレーザー溶接した(図1における太線部19・19)。これにより、レーザー封口電池が製造される。
【0028】
上記外装缶1と封口蓋2、及び、注入口封止板4の周縁と封口蓋2とのレーザー溶接は、図4に示すようなレーザー照射装置を用いた。このレーザー照射装置は、レーザー発振器(図示せず)と、制御部(図示せず)と、レーザー射出部10とを有している。このレーザー射出部10は、上記レーザー発振器からのパルスレーザー光を導く断面形状が円形の光ファイバー11と、この光ファイバー11から射出される、スポット形状が円形のパルスレーザー光12を矩形に変化させる照射光変形レンズ13と、レーザー光を平行な光束に変えるコリメートレンズ18とから成る。但し、コリメートレンズは必須の構成要素ではない。また、上記照射光変形レンズ13にはシリンドリカルレンズが用いられた構成であり、図5(a)に示すように、上記照射光変形レンズ13を通過したレーザー光のレーザースポット形状が丸角矩形(この場合、溶接位置でのスポットの大きさは約0.5×1.7mm)となる。
【0029】
また、制御部は、スポット形状光のスポット中心点、長軸方向及び長軸の長さ、外装缶開口部の形状、隣り合う二つのスポットのオーバーラップ率についての情報を電子的に格納した照射情報格納手段(図示せず)と、照射光変形レンズ13を回動可能とする長軸方向回動手段14(図4においては図示せず)と、射出部を固定し、移動させる射出部移動手段(図示せず)とを有している。なお、前記長軸方向回動手段14としては照射光変形レンズを回転させる回転テーブルを用い、前記射出部移動手段としては、XYテーブルを用いた。
【0030】
前記XYテーブルは、溶接開始点が定められ、この点を(0,0)、電池の長辺方向をX方向、電池の短辺方向をY方向としてすべての点のX、Y座標が定められており、この情報は照射情報格納手段に格納されている。これら格納された情報に基づき、制御部の算出手段が、すべての溶接予定点とその予定点における長軸スポット形状光の長軸の向き、溶接の順序を算出する。そして、上記算出手段は外装缶と封口蓋が嵌合してなる素電池100が電池テーブル15上の溶接開始点に配置、固定されると、上記で算出した情報を制御部の長軸方向変換手段および制御部の射出部移動手段に伝達し、一回目のパルスレーザー光を射出させる。次いで、パルスレーザー光のパルス間隔の間に、次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と一致するように射出部移動手段を移動させるとともに、その予定点での長軸方向と長軸スポット形状光の長軸方向と一致するように長軸方向変換手段を回動させる信号を発する。そして、上記移動及び回動の終了後、射出部から次のパルスレーザー光が射出されるように構成されている。
【0031】
本発明にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である図6を用いて、具体的なパルスレーザー光の射出の様子を説明する。図6(a)に示すように、角形電池の長辺部を溶接する時には、長軸方向を回動させることなく一定とし、射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と次のスポット予定点とが一致する位置となるように、射出部に接続されたXYテーブル(図示せず)をX方向(電池の長辺方向)に順次移動させ、パルスレーザー光を照射する。
【0032】
また、図6(b)に示すように、電池の溶接部位が長辺部から短辺部に移る場合には、次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点と一致するようにXYテーブルをX方向及びY方向に移動させるとともに、スポット予定点での長軸方向と長軸スポット形状光の長軸方向と一致させるように回転テーブルを回動させ、パルスレーザー光を照射する。このようにして、短辺部においても、その短辺方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させてレーザー溶接する。このレーザー溶接のパルス間隔は、あらかじめある一定の間隔で照射されるように決められていてもよく、また上記移動及び回動の終了と同期してレーザー光が射出されるように制御する構成とすることもできる。
【0033】
また、注入口封止板と封口蓋との嵌合部においても同様に溶接する。
【0034】
このレーザー照射装置は、上記構成に加え、常にセンサー等でその時点での照射位置を基準として電池全体の位置を読みとり、前記算出手段が算出した次のスポット予定点における電位全体の位置と、センサー等で読みとったその時点での電池全体の位置にずれが生じている場合、制御部にフィードバックする感知手段を付加することもできる。さらに、この感知手段は、次のスポット予定点での長軸方向と、センサー等で読みとったその時点での長軸方向とにずれが生じている場合、制御部にフィードバックする構成であってもよい。この構成によると、さらに確実に嵌合部の接線方向と長軸スポット光の長軸方向とを一致させることができる。
【0035】
上述のレーザー溶接方法であると、図13(a)に示すように、レーザースポット形状の長軸方向が、レーザースポット中点における外装缶と封口蓋の嵌合部の接線方向と常に一致するので、オーバーラップ率を約20%とした場合においても、素電池100に溶接深度の小さい部分がほとんど生じず、良好な封止を行いうる。また、レーザー溶接速度が高まるので、短時間で完全な封止が完了する。
【0036】
尚、レーザースポット形状の長軸方向が、レーザースポット中点における外装缶と封口蓋の嵌合部の接線方向と常に一致させる方法としては、上記の構成に限定するものではなく、以下の(1)〜(3)に示すような構成とすることもできる。
【0037】
(1) 照射光変形レンズを用いずに、レーザー取り出し部の光ファイバーの形状を楕円、矩形等とすることにより、光ファイバーから直接、楕円、矩形のレーザースポットを射出する構成とすることができる。
【0038】
(2) また、嵌合部の次のスポット予定点が射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点に概ね一致する位置にまで外装缶を移動させる外装缶移動手段と、次のスポット予定点の嵌合部接線方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させる長軸方向回動手段を備えた構成とすることができる。
【0039】
(3) また、長軸方向回動手段は用いずに、外装缶を移動させることによりレーザー射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点に次のスポット予定点を移動させ、且つ射出部から射出された長軸スポット光の長軸方向とスポット予定点の嵌合部接線方向とが一致するように外装缶を回動させる外装缶位置制御手段を備えた構成とすることができる。
【0040】
また、リチウムイオン電池は、上記の材料に限定されるものではなく、公知の材料を用いて作製することができる。さらに、本発明は上記リチウムイオン電池に限定するものではなく、例えばニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池等、レーザー照射装置にてシーム溶接することのできるすべての電池に適用することができる。
【0041】
(実施例1)
上記実施の形態に示す方法と同様の方法で実施例1にかかる電池を作製した。この電池のサイズは、短辺5.4×長辺33.75×高さ47.5mmである。また、溶接には200W、4J/pulse、50pulse/secの条件で、大きさが0.5×1.7mmの丸角矩形照射スポット形状を与えるレーザー照射装置を用い、図5に示すように、オーバーラップ率を約20%に設定した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池Aと称する。
【0042】
(比較例1)
電池の溶接には200W、1J/pulse、200pulse/secであり、レーザースポットの大きさが0.5×0.5mmの円形形状のレーザー照射装置を用いて電池を作製した。ここで、オーバーラップ率は図10に示すように約70%に設定した。
この他の条件は上記実施例1と同様にして比較例1にかかる電池を作製した。以下、この電池を比較電池Xと称する。
【0043】
(比較例2)
長軸方向回動手段を備えないこと以外は、実施例1と同様のレーザー照射装置を用いて電池を作製した。長軸方向回動手段を備えないので、電池の長辺方向を溶接する場合においては実施例1と同じくオーバーラップ率を約20%としたが、短辺方向を溶接する場合においては比較例1と同じくオーバーラップ率を約70%に設定した。
この他の条件は上記実施例1と同様にして比較例2にかかる電池を作製した。以下、この電池を比較電池Yと称する。
【0044】
〔実験〕
レーザー照射装置を用いて上記本発明電池A及び比較電池X、Yを作製する際の、1パルス当たりの加工エネルギー、レーザー溶接における溶接速度、電池一個あたりの封口蓋と開口部の嵌合部の溶接に要した時間とを測定した。その結果を、下記表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
比較電池Xでは、図13(b)に示すように70%オーバーラップさせて溶接したため、溶接速度は30mm/secとなり、溶接にかかる時間は2.61秒となった。
【0047】
また、比較電池Yでは、一回のパルスのエネルギー量が比較電位の四倍であるため、レーザー照射の繰り返し数は50pulse/secとなる。このとき、図13(c)に示すように、電池の長辺方向に溶接するときは長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致するため、オーバーラップ率を約20%としても良好に封止でき、溶接速度は67.5mm/secとなる。一方、電池の短辺方向に溶接するときは長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致しないため、オーバーラップ率を上記比較電池Xと同様に約70%とせねばならず、溶接速度は7.5mm/secと、比較電池Xよりも四倍遅くなる。この結果、溶接にかかる時間は2.44秒となった。
【0048】
これに対して、本発明電池Aでは、図13(a)に示すように、電池の長辺方向、短辺方向いずれの方向に溶接するときであっても、常に長軸スポット光の長軸方向と嵌合部の接線方向とが一致するため、67.5mm/secの速さで溶接することができる。このため、溶接にかかる時間は1.16秒となった。
【0049】
以上のことから、上記表1に示す結果となったものと考えられる。本発明電池Aは、比較電池X、Yと比べて二倍以上速く溶接することができるため、電池の製造時間の短縮を図れるとともに、電極体に対する熱の影響を小さくすることができる。
【0050】
(実施例2)
図7に示すようなレーザー照射装置を用い、外装缶の角が丸くなっている外装缶、封口蓋を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2にかかる電池を作製した。このレーザー照射装置は、レーザー発振器(図示せず)と、制御装置(図示せず)と、射出部10と、射出部10に接続されたXYテーブル(図示せず)とを有している。このレーザー射出部10は、上記レーザー発振器からのパルスレーザー光を導く断面形状が円形の光ファイバー11と、この光ファイバー11から出射される円形のパルスレーザー光12を矩形、楕円形に変化させる照射光変形レンズ13とから成り、さらに集光レンズ17を有している。尚、この集光レンズは必須の構成要素ではない。
このようにして作製した電池を、以下本発明電池Bと称す。
【0051】
(結果)
電池Bの溶接に要した時間は、電池の長辺部溶接に0.89秒、コーナー部及び短辺部に0.22秒であり、合計時間は1.11秒であった。このことは、図7、図13(d)に示すように、コーナー部においても常に長軸スポット光の長軸方向と、嵌合部の接線方向とが一致しているため、常に67.5mm/secという高い速度で溶接できたからである。このため、電極体に対する熱の影響も小さくすることができた。
【0052】
尚、上記実施の形態では、変光レンズとしてシリンドリカルレンズを用いたが、これに限定されるものではなく、2焦点レンズの2つのスポットをオーバーラップさせる等、他のレンズを用いても本発明を実施しうるのはもちろんのことである。また、電池テーブルを用いずに、素電池をロボットアーム等で把持し、固定することも可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では角形、角の丸い角形の電池を用いたがこれに限定される必要はなく、レーザー溶接により封口する電池であれば、楕円、円等の形状の電池にも本発明を適用しうるのはもちろんのことである。
【0054】
また、上記実施の形態ではパルスと次のパルスをオーバーラップさせて照射したが、図15に示すように、k回目のパルスとk+1回目のパルスをオーバーラップさせずに照射した後、k回目のパルスとオーバーラップさせる方法であってもかまわない。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、時間当たりのレーザー溶接速度を高くできるとともに、レーザー溶接する際の電極体に対する熱の影響を最小限に止めることができる。従って、本発明によると、レーザー封口電池の製造時間を短縮でき、しかも電池性能の向上にも資するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の形態の製造方法により作製されたレーザー封口電池の斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視部分断面図である。
【図3】注入口封止板及びパッキングを取り除いた際のレーザー封口電池の斜視図である。
【図4】本発明にかかるレーザー照射装置の構造を示す説明図である。
【図5】同図(a)は本発明にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は本発明にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図6】本発明にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である。
【図7】本発明の変形例にかかるレーザー照射装置の動作概略斜視図である。
【図8】従来の技術にかかる射出部の構造を示す説明図である。
【図9】同図(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図10】同図(a)は従来の技術にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は従来の技術にかかる被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図11】従来の技術の変形例にかかるレーザー照射装置の構造を示す説明図である。
【図12】同図(a)は従来の技術の変形例にかかるパルスレーザー光の照射状態を示す説明図、同図(b)は同図(a)の被加工物の溶接状態を示す説明図、同図(c)はパルスレーザー光の短軸方向に照射した場合の照射状態を示す説明図、同図(d)は同図(c)の被加工物の溶接状態を示す説明図である。
【図13】同図(a)は実施例電池Aの溶接の状態を示す説明図、同図(b)は比較電池Xの溶接の状態を示す説明図、同図(c)は比較電池Yの溶接の状態を示す説明図、同図(d)は実施例電池Bの溶接の状態を示す説明図である。
【図14】不定形のレーザー光の長軸、スポット中心を決定する方法を示す模式図である。
【図15】本発明のパルスを照射する順番を変形した例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:外装缶
2:封口蓋
4:注入口封止板
5:パッキング
7a:貫通孔
7b:凹部
7:電解液注入口
10:射出部
11:光ファイバー
12:レーザー光
13:変光レンズ
14:回転テーブル
15:電池テーブル
16:嵌合部
17:集光レンズ
18:コリメートレンズ
19:スポット形状(レーザー溶接痕)
100:素電池
Claims (4)
- 正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部に封口蓋を嵌合し、前記開口部と封口蓋との嵌合部にレーザー光を照射して当該嵌合部を溶接し封口するレーザー封口電池の製造方法において、
前記レーザー光として、長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を用い、
前記パルスレーザー光の照射スポット中心点を概ね前記嵌合部上に位置させ、かつ前記照射スポット中心位置における嵌合部接線方向と前記照射スポットの長軸方向とが常に略一致するようにして、前記パルスレーザー光を嵌合部全周に照射することを特徴とするレーザー封口電池の製造方法。 - 正極と負極とを有する電極体を収容した外装缶の開口部と封口蓋とがレーザー溶接により封口されたレーザー封口電池において、
当該溶接部に垂直な方向から見た場合、レーザー溶接痕が長軸を有する形状であり、
前記溶接痕の中心点が、外装缶の外周線から外装缶肉厚分内側で、且つ前記外周線と平行な内周線上に概ね位置し、
且つ前記溶接痕の長軸方向と前記内周線の接線方向とが常に略一致していることを特徴とするレーザー封口電池。 - 正極と負極とを有する電極体が収納された外装缶の開口部と封口蓋との嵌合部がレーザースポット溶接されてなるレーザー封口電池の製造に使用する電池封口用レーザー照射装置であって、
前記電池封口用レーザー照射装置は、
長軸を有する照射スポット形状のパルスレーザー光を射出する射出部と、
前記射出部から射出した長軸を有するスポット形状光のスポット中心点が概ね前記嵌合部上に位置し、かつ照射スポットの長軸方向が前記照射スポット中心点位置における嵌合部接線方向と一致するように、長軸スポット形状光と外装缶開口部との相互の空間的位置関係を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電池封口用レーザー照射装置。 - 請求項2の電池封口用レーザー照射装置において、
前記射出部は、スポット形状が円形のパルスレーザー光を長軸を有する長軸スポット形状光に変形する照射光変形レンズを備え、
前記制御部は、少なくとも、スポット形状光のスポット中心点、長軸方向、長軸の長さ、および外装缶開口部の形状についての情報を電子的に格納する照射情報格納手段と、
前記照射情報格納手段に格納された情報に基づいて、外装缶と封口蓋の嵌合部のスポット予定点の位置と、前記スポット予定点の位置における嵌合部接線方向を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した情報に基づいて、パルスレーザー光のパルス間隔の間に、前記嵌合部の次のスポット予定点が前記射出部から射出される長軸スポット形状光のスポット中心点に概ね一致する位置にまで前記射出部を移動させる射出部移動手段と、
前記算出手段が算出した情報に基づいて、前記パルス間隔の間に、前記照射光変形レンズを回動させ、前記次のスポット予定点の嵌合部接線方向と長軸スポット形状光の長軸方向とを一致させる長軸方向回動手段と、
を備えたことを特徴とする電池封口用レーザー照射装置。
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