JP2004010528A - α−オキソカルボン酸の製造法 - Google Patents

α−オキソカルボン酸の製造法 Download PDF

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吉田 裕
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中川 聡
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Abstract

【課題】α−オキソカルボン酸エステルの加水分解によるα−オキソカルボン酸の製造において、高収率で効率の良い、高品質なα−オキソカルボン酸の製造方法を提供する。
【解決手段】α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給し、蒸留塔の塔頂から混合原料中のアルコール及び副生するアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸を製造する方法であって、蒸留塔に供給する混合原料に含まれるアルコールの50質量%以上をガス状で蒸留塔へ供給する。また、蒸留塔に供給する前にα−オキソカルボン酸エステルの一部を予め加水分解させた後、蒸留塔へ供給する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オキソカルボン酸エステルを加水分解することによるα−オキソカルボン酸の製造方法に関する。α−オキソカルボン酸は、例えば、医薬中間体、化粧品、香料、農薬等の各種製品の中間原料として、工業的に有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
代表的なα−オキソカルボン酸であるグリオキシル酸を、グリオキシル酸エステルの加水分解により製造する方法としては、グリオキシル酸エステルヘミアセタールをカスケード型反応器中で向流的に水蒸気で処理する方法(特開平3−20239)、グリオキシル酸エステルを水の共存下で反応蒸留する方法(特開平11−335320)等が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、α−オキソカルボン酸エステルとアルコール類が混合している原料を用いた場合、α−オキソカルボン酸エステルの加水分解反応は平衡反応であるため、α−オキソカルボン酸エステルの転化率が低くなったり、用役費が大きくなるという問題があった。例えば、α−オキソアルデヒド、アルコール及び分子状酸素から、触媒の存在下、酸化的エステル化反応により製造されたα−オキソカルボン酸エステルを含む反応液を原料に用いたり、α−ヒドロキシカルボン酸エステル及び分子状酸素から、触媒の存在下、酸化的脱水素反応により製造されたα−オキソカルボン酸エステルを含む反応液を原料に用いた場合に、上記問題点が顕著になる。
【0004】
従って、アルコールが共存するα−オキソカルボン酸エステルを原料に用いた、効率のよい加水分解によるα−オキソカルボン酸の製造方法が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、蒸留塔に供給する混合原料に含まれるアルコールのうち、ある特定の割合以上をガス状で供給することによって、α−オキソカルボン酸エステルの転化率を高めることができ、また用役費も低減できることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち本発明は、α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給し、蒸留塔の塔頂から混合原料中のアルコール及び副生するアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸を製造する方法であって、蒸留塔に供給する混合原料に含まれるアルコールの50質量%以上をガス状で蒸留塔へ供給することを特徴とするα−オキソカルボン酸の製造法に関する。
【0007】
また本発明は、α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給し、蒸留塔の塔頂から混合原料中のアルコール及び副生するアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸を製造する方法であって、混合原料を蒸留塔に供給する前に、α−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解させる工程を設けることを特徴とするα−オキソカルボン酸の製造法に関する。
【0008】
さらに本発明は、混合原料中のアルコール/α−オキソカルボン酸エステルのモル比が1以上であることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるα−オキソカルボン酸の製造方法について詳細に説明する。α−オキソカルボン酸の原料であるα−オキソカルボン酸エステルは、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
Figure 2004010528
【0011】
(式中Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素基、アリール基またはアリールアルキル基を表し、Rはアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基またはアリールアルキル基を表す)で表される化合物が挙げられる。
【0012】
具体的にはグリオキシル酸エステル、ピルビン酸エステル、2−オキソ酪酸エステル、2−オキソ吉草酸エステル、2−オキソ−3−ブテン酸エステル、2−オキソ−3−ペンテン酸エステル、2−フェニル−2−オキソ酢酸エステル等が挙げられる。中でも、グリオキシル酸エステルが好ましい。
【0013】
は、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0014】
従って、本発明において好ましいα−オキソカルボン酸エステルは、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸ノルマルプロピル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸ノルマルブチル、グリオキシル酸セカンダリーブチル、グリオキシル酸イソブチル、グリオキシル酸ターシャリーブチルである。
【0015】
これらのα−オキソカルボン酸エステルを加水分解することで、下記一般式(2)
【0016】
【化2】
Figure 2004010528
【0017】
(式中Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素基、アリール基またはアリールアルキル基を表す)で表されるα−オキソカルボン酸が生成し、下記一般式(3)
【0018】
【化3】
Figure 2004010528
【0019】
(式中Rはアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基またはアリールアルキル基を表す)で表されるアルコールが副生する。
【0020】
混合原料中に含まれるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の工業的に入手可能な炭素数1〜18のアルキルアルコールが挙げられる。上記例示のうち、好ましくは、α−オキソカルボン酸エステルを加水分解したときに生成するアルコールである。
【0021】
代表的なα−オキソカルボン酸エステルであるグリオキシル酸エステルは、水と接触すると、容易にグリオキシル酸エステル水和物を形成し、安定に存在する。またアルコールと接触すると容易にグリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールを形成し、安定に存在する。またこれらの水和物化、アルキルヘミアセタール化は可逆反応であり、グリオキシル酸エステルとの共存物質によってはいずれの形態も取ることができ、また混合物として存在することもある。しかし、加水分解反応においては、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸エステル水和物、グリオキシル酸アルキルヘミアセタールは、同じような挙動を示し、同様に取り扱うことができる。
【0022】
従って本発明におけるグリオキシル酸エステルとは、遊離のグリオキシル酸エステル、グリオキシル酸エステル水和物、グリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールの全てを包含する。
【0023】
またグリオキシル酸エステルの加水分解により生成するグリオキシル酸は水と接触すると容易にグリオキシル酸水和物となる。またアルコールと接触すると容易にグリオキシル酸アルキルヘミアセタールとなる。
【0024】
この水和物化やアルキルヘミアセタール化は平衡反応であり、加水分解終了後に系中に水が存在する場合は、グリオキシル酸は平衡に従って一部または全部がグリオキシル酸水和物として存在する。また、系にアルコールが存在する場合は、グリオキシル酸は平衡に従って一部または全部がグリオキシル酸アルキルヘミアセタールとして存在する。
【0025】
従って、本発明におけるグリオキシル酸は、共存物質の組成や濃度によっては、遊離のグリオキシル酸の他にグリオキシル酸水和物やグリオキシル酸アルキルヘミアセタールの形態をとる場合がある。
【0026】
本発明におけるグリオキシル酸とは、遊離のグリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシル酸アルキルヘミアセタールの全てを包含する。
【0027】
α−オキソカルボン酸の原料であるα−オキソカルボン酸エステルは、特にその製法に限定されないが、α−オキソアルデヒド、アルコールと分子状酸素から、触媒の存在下、酸化的エステル化反応によって製造したものや、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと分子状酸素から、触媒の存在下、酸化的脱水素反応によって製造したものが好ましい。
【0028】
気相反応による酸化的エステル化反応としては例えば、1,2−ジオールを、金属銀等の触媒の存在下、分子状酸素含有ガスで気相酸化(酸化的脱水素)してガス状のα−オキソアルデヒドを得て(前段反応)、引き続き、これに気化室でガス状にしたアルコールを加えて前段反応器に連結された後段反応器に導入し、後段反応器中でリン含有触媒等の存在下、分子状酸素含有ガスで気相酸化(酸化的エステル化)することによって、α−オキソカルボン酸エステルを得る方法が挙げられる。生成した反応ガスは、冷却したり、溶剤に吸収させることで、酸化的エステル化反応液として取得することができる。
【0029】
また液相反応でも、α−オキソアルデヒドとアルコールを液相に保ち、金やパラジウム等を含有する触媒の存在下、分子状酸素を共存させることにより、酸化的エステル化反応を行いα−オキソカルボン酸エステルを得ることもできる。
【0030】
また、酸化的脱水素反応としては、例えば、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸塩、リン酸第2鉄、担持リン酸銅等の触媒の存在下、分子状酸素含有ガスで、気相酸化(酸化的脱水素)することで、α−オキソカルボン酸エステルを得ることができる。この際、反応中のα−オキソカルボン酸エステルの加水分解と、それに引き続く燃焼を抑制するために、アルコールを同伴させると効果的である。生成した反応ガスは、冷却したり、溶剤に吸収させることで、酸化的脱水素反応液として取得することができる。
【0031】
上記のようにして得られたα−オキソカルボン酸エステルを含む反応液を加水分解することによりα−オキソカルボン酸を製造することができる。
【0032】
上記のようなα−オキソカルボン酸エステルを含む反応液をそのまま用いて加水分解反応を行ってもよいが、反応液中に、着色の原因となるような重質な成分を含むときは、加水分解反応前に、反応液を蒸留し、重質な成分を除去してもよい。蒸留する場合は、液膜式蒸発を用いることで、反応液の熱履歴を小さくでき、不純物の少ない留出液を得ることができる。
【0033】
また上記のような反応液は、アルコールや水を多く含んでいる。これを精製し、純度の高いα−オキソカルボン酸エステルをを得て、これを用いて加水分解を行ってもよいが、工程が増え、設備費や用役費が増加するため、アルコールや水を含んだα−オキソカルボン酸エステルを用いて加水分解を行うことが好ましい。
【0034】
本発明のα−オキソカルボン酸の製造方法における、α−オキソカルボン酸エステルの加水分解は、α−オキソカルボン酸エステル、アルコール及び水を含む混合原料を用いることを特徴としている。混合原料に含まれるアルコールは、上記のようにα−オキソカルボン酸エステルを製造する際に必要なアルコール由来でもかまわないし、他の理由により含まれるアルコールでもかまわない。加水分解反応は平衡反応であり、反応液中にアルコールが多く含まれると、平衡は逆反応(エステル化反応)に有利になり、α−オキソカルボン酸の生成が抑制される。
【0035】
本発明は、アルコールを含んだα−オキソカルボン酸エステルを加水分解するに当たり、より効率的に加水分解反応を進行させる手段を提供するものである。
【0036】
本発明は、混合原料中に含まれるアルコール/α−オキソカルボン酸エステルのモル比が0.5以上の場合、効果的であり、1以上の場合より効果的である。この場合のアルコールとは、α−オキソカルボン酸エステルがグリオキシル酸エステルである場合、グリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールの形で存在するアルコールを含む。
【0037】
α−オキソカルボン酸エステルの加水分解は平衡反応であり、転化率を高めるためには、平衡を生成物側へ移動させる必要がある。そこで蒸留塔の塔頂からアルコールを抜き出しながら反応蒸留を行うことにより、転化率を向上させることができる。
【0038】
塔頂から抜き出すアルコールとは、混合原料中に含まれているアルコールと、加水分解により副生するアルコールの双方を指す。混合原料中に含まれているアルコールと、加水分解により副生するアルコールが同一のものであれば、これらは区別されない。分離、回収が容易であるため、混合原料中に含まれているアルコールと、加水分解により副生するアルコールが同一であることが好ましい。
【0039】
例えばα−オキソカルボン酸エステルが、前述の酸化的エステル化反応で得られたものである場合、混合原料中に含まれるアルコールが、酸化的エステル化反応の原料として使用されたアルコール由来(つまりは未反応のアルコール)であれば、混合原料中に含まれているアルコールと、加水分解により副生するアルコールは同一のものである。
【0040】
また、α−オキソカルボン酸エステルが、前述の酸化的脱水素反応で得られたものである場合、混合原料中に含まれるアルコールが、酸化的脱水素反応に同伴させたアルコールであり、そのアルコールが加水分解反応で生成するアルコールと同一の場合もありうる。
【0041】
反応蒸留によって加水分解を行い、アルコールを塔頂から抜き出しながら反応させる場合、アルコールがメタノールのように水よりも沸点が低い場合、蒸留によってメタノールを濃縮して留出させることができる。またアルコールがエタノール、プロパノール、ブタノール等、水と共沸するアルコールの場合、共沸組成で留出させることができるが、平衡を生成物側へ移動させるためには、塔底液中の水とアルコールの比を、共沸組成よりも水が多くなるように、原料組成を制御したり、水を添加する必要がある。
【0042】
本発明においては、蒸留塔に供給する混合原料中には、α−オキソカルボン酸エステル、水の他に、アルコールを含んでいるため、高い転化率を達成するためには、混合原料が蒸留塔に供給されるときに、混合原料中に含まれるアルコールのうち50質量%以上がガス状であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより一層好ましい。
【0043】
蒸留塔に供給されるアルコールのうちガス状である割合が50質量%以上の場合、液中のアルコール濃度が低下するため、加水分解速度が増加し、蒸留塔内の滞留時間を短縮できるため、得られるα−オキソカルボン酸の着色を低減したり、不純物の生成を抑制することができる。
【0044】
蒸留塔に供給されるアルコールのうちガス状である割合が50質量%未満の場合、α−オキソカルボン酸エステルの転化率が低下したり、アルコールを留出させるために、用役費が多く必要になる場合がある。
【0045】
本発明のα−オキソカルボン酸の製造法に使用される蒸留塔は特に限定されるものではない。好ましくは、塔頂(最上段)と塔底(最下段)とを除いた段数が1段以上の多段蒸留塔である。このような蒸留塔としては、例えば、ラシヒリング、ポールリング、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、スルーザーパッキング等の充填物が充填された充填塔;泡鐘トレイ、シーブトレイ、バルブトレイ等のトレイ(棚段)を使用した棚段塔等、一般に用いられている蒸留塔が使用できる。また、棚段と充填物層とを併せ持つ複合式の蒸留塔も用いることができる。さらに、複数の多段蒸留塔を組み合わせて用いてもよい。尚、上記の段数とは、棚段塔においては棚段の数を示し、充填塔においては理論段数を示す。
【0046】
混合原料を供給する段は特に限定されないが、本発明は塔底の気相部に供給したときに最大の効果を有する。
【0047】
また、混合原料は2つ以上の段に分けて供給してもよいし、混合原料とは別に、水を混合原料の供給段とは異なる段に供給してもよい。
【0048】
反応蒸留方式は、連続式、半回分式のいずれも採用できる。連続式の場合、混合原料を連続的に蒸留塔へ供給し、塔頂からアルコールを含む留分を連続的に抜き出し、塔底からα−オキソカルボン酸を含む缶出液を連続的に抜き出せばよい。半回分式の場合、予め塔底に混合原料の一部を仕込み、反応蒸留を開始した後、残りの混合原料を連続的にもしくは間欠的に蒸留塔へ供給しながら、塔頂からアルコールを含む留分を連続的に抜き出せばよい。
【0049】
加水分解を行う場合、α−オキソカルボン酸エステルの加水分解によって生成するα−オキソカルボン酸は、酸触媒として機能するため、別途酸触媒を添加しなくても加水分解は進行する。
【0050】
しかし、反応速度を早めたいときや、反応条件を緩和したいとき等には、酸触媒を別途添加してももかまわない。酸触媒としては、例えば具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、α−オキソカルボン酸、酸性イオン交換樹脂、ゼオライト、粘土等が挙げられる。
【0051】
均一系の酸触媒を用いる場合は、混合原料に触媒を溶解させて蒸留塔に供給してもよいし、別途、混合原料とは異なる段に供給してもよい。
【0052】
固体の不均一触媒を用いる場合、蒸留塔内や塔底に触媒を保持し、反応液を接触させればよい。
【0053】
水とα−オキソカルボン酸エステルとの割合は、α−オキソカルボン酸エステルの種類や反応条件によって異なるが、一般的には当モル〜200倍モルであり、好ましくは2倍モル〜100倍モルである。
【0054】
操作温度は、α−オキソカルボン酸エステルやアルコールの種類や反応条件によって異なるが、30℃〜300℃が適当であり、好ましくは50℃〜250℃である。反応圧力は大気圧、加圧、減圧のいずれであってもよいが、1mmHg〜100kg/cmの範囲が好ましく、5mmHg〜50kg/cmの範囲がより好ましい。
【0055】
蒸留塔に供給する混合原料は、α−オキソカルボン酸エステル、アルコール及び水を含んでいるため、蒸留塔へ供給する前に予め、α−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解する工程を設けることで、反応蒸留塔の負荷が低減し、より効率よく加水分解を進行させることができる。
【0056】
予め加水分解させるには、混合原料を反応器に入れて加熱し、加水分解を進行させておくか、蒸留塔への混合原料の供給ラインの途中に、流通式反応器を設けておいてもよい。また混合原料を蒸留塔に供給する際に、予熱してから供給する場合、予熱によって加水分解反応が進行する場合、予熱器は流通反応器を兼ねてもよい。
【0057】
予めα−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解する条件は、α−オキソカルボン酸エステルやアルコールの種類、触媒の有無、その量等にもよるが、反応温度は30℃〜300℃の範囲が好ましく、50〜250℃の範囲がより好ましい。反応時間は0.01時間〜20時間の範囲が好ましく、0.1時間〜10時間の範囲がより好ましい。
【0058】
予めα−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解する場合、反応は平衡に近くなるまで進行させることが望ましいが、そのためには長い反応時間が必要となる。反応蒸留も含めた加水分解反応を効率的に進行させるためには、反応蒸留前に予め加水分解を行ったときのα−オキソカルボン酸エステルの転化率が、用いた混合原料の組成及び反応温度における、α−オキソカルボン酸エステルの平衡転化率の20%以上の転化率まで反応を進行させておくことが好ましく、40%以上がより好ましく、60%以上がより一層好ましい。
【0059】
予めα−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解することで、反応蒸留塔での負荷が低減され、蒸留塔内での滞留時間を短縮することができ、その結果、得られるα−オキソカルボン酸の着色を低減したり、不純物の生成を抑制できると共に、用役費の低減を図ることができる。
【0060】
予めα−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解した場合、蒸留塔に供給される原料中には、混合原料に最初から含まれていたアルコールと、加水分解反応により副生したアルコールの双方が含まれている。この場合、これらのアルコールの合計に対して、50質量%以上をガス状で蒸留塔に供給することが好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより一層好ましい
連続式多段蒸留塔を用いたα−オキソカルボン酸の製造法について、図1を参照しながら説明する。尚、製造装置については、図1に示す構成にのみ限定されるものではない。
【0061】
図1に示すように、上記の製造装置は、多段式蒸留塔1、予熱器2、リボイラー3、凝縮器4等から構成されている。
【0062】
多段式蒸留塔1は、α−オキソカルボン酸エステルを水で加水分解させながら気液接触させる。多段式蒸留塔1は、原料供給管6を介して予熱器2と接続されている。また、多段式蒸留塔1の塔底は、導管7・8を介してリボイラー3と接続されている。さらに、多段式蒸留塔1の塔頂は、導管10を介して凝縮器4と接続されている。
【0063】
予熱器2は、α−オキソカルボン酸エステル、アルコール及び水を含む混合原料を予熱するようになっている。予熱器2は、原料導入管5を介して原料タンク(図示せず)と接続されており、原料供給管6を介して多段式蒸留塔1と接続されている。
【0064】
リボイラー3は、導管7・8を介して多段式蒸留塔1の塔底と接続されている。リボイラー3は、導管7を通じて抜き出した塔底液を加熱し、導管8を通じて塔底に戻す。つまり、リボイラー3は、塔底液を加熱して循環させる。そして、導管7は分枝しており、導管7と接続されている導管9を通じて塔底液の一部を缶出液として連続的に反応系外に抜き出すことができるようになっている。
凝縮器4は、多段式蒸留塔1の留出ガスを凝縮して液化する。凝縮器4は、導管10を介して多段式蒸留塔1の塔頂と接続されており、導管11・12を通じて留出液を多段式蒸留塔1に還流させるようになっている。さらに導管11は分枝しており、導管11と接続されている導管13を通じて、液化した留出液の一部を系外へ連続的に抜き出すことができるようになっている。
【0065】
また、凝縮器4には、圧力調整弁15を備えた調整管14が取り付けられている。
【0066】
次に、上記構成の製造装置を用いたα−オキソカルボン酸の製造法の一例について説明する。
【0067】
先ず原料タンクから、原料導入管5、予熱器2および原料供給管6を介して、α−オキソカルボン酸エステル、アルコール及び水を含む混合原料を多段式蒸留塔1に連続的に供給する。このとき、多段式蒸留塔1に供給されるアルコールのうち50質量%以上がガス状になるように、予熱器の温度を設定する。多段式蒸留塔1に供給されたα−オキソカルボン酸エステルは水により加水分解される。
【0068】
そして、生成するα−オキソカルボン酸を含む塔底液は、多段式蒸留塔1から連続的に抜き出される。上記塔底液の一部は、リボイラー3で加熱されて多段式蒸留塔1の塔底に戻され、残りの塔底液は、缶出液として連続的に反応系外に抜き出される。即ち、目的物であるα−オキソカルボン酸は、缶出液として連続的に反応系外に取り出される。
【0069】
一方、混合原料中に含まれていたアルコール及び副生するアルコールを含むガスは、凝縮器4で連続的に凝縮されて留出液となる。上記留出液の一部は、導管12を介して多段式蒸留塔1の塔頂に所定の還流比で戻され、残りの留出液は、連続的に反応系外に抜き出される。即ち、アルコールは留出液として連続的に反応系外に取り出される。
【0070】
以上の反応操作を行うことにより、効率的にα−オキソカルボン酸を製造することができる。
【0071】
尚、α−オキソカルボン酸の製造に用いられる製造装置は、図1に示す構成にのみ限定されるものではなく、種々の構成とすることができる。製造装置は、例えば、図2に示すように、混合原料中のα−オキソカルボン酸エステルの一部を予め加水分解させるために、流通式反応器21を備えた構成としてもよい。
【0072】
また、図3に示した、反応器32の上部に多段式蒸留塔31を接続したような、蒸留塔の塔底が大きい製造装置を用いてもよい。混合原料を流通式反応器33において、α−オキソカルボン酸エステルの加水分解を一部行い、予熱器2において、反応器32に供給される混合原料中のアルコールの50質量%以上がガス状で供給されるように、混合原料を加熱し、反応器32に供給してもよい。
【0073】
上記のようにして得られたα−オキソカルボン酸は、溶液のままでもよいし、濃縮して固体としてもよい。また、その後の貯蔵、移送方法や用途によって、必要であれば精製してもよい。精製は抽出や再結晶等の公知の方法で実施できる。
【0074】
本発明によって得られるα−オキソカルボン酸は、医薬中間体、化粧品、香料、農薬等の各種製品の中間原料として、工業的に有用な化合物である。
【0075】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0076】
実施例1
(酸化的エステル化反応)
粒径20〜30メッシュの金属銀(触媒)0.8gを充填した断熱型反応器に、予め気化させたエチレングリコール6容量%と、空気および窒素ガスを混合(酸素濃度7容量%)してなる原料ガスを反応温度440℃、空間速度(SV)830,000hr−1の条件で連続的に供給して気相酸化(酸化脱水素)することにより、グリオキサールを含む反応ガスを得た(エチレングリコール基準グリオキサール収率81モル%)。次に、リン酸第2鉄からなる触媒を充填した熱交換型反応器に、上記反応ガス(グリオキサール濃度4容量%)と、予め気化させたメタノール(20容量%)と、空気とを混合してなる混合ガス(酸素濃度5容量%)を反応温度250℃、空間速度(SV)2,000hr−1の条件で連続的に供給して気相酸化(酸化的エステル化)することにより、グリオキシル酸メチルを含む反応ガス(エチレングリコール基準グリオキシル酸メチル収率61モル%)を得た。上記両気相酸化は連続的に実施した。そして、該反応ガスを凝縮捕集することにより、酸化的エステル化反応液を得た。
【0077】
上記酸化的エステル化反応液を薄膜蒸発器(攪拌液膜型)を用いて蒸留操作を行った。酸化的エステル化反応液中の水/メタノールのモル比は0.99であった。圧力0.02MPa、熱媒温度170℃、回転数350rpm、フィード速度毎時300mlで操作を行い、メタノール、水及びグリオキシル酸メチルを含む留出液を得た。留出液中のグリオキシル酸メチルの濃度は23質量%、メタノール45質量%、水25質量%およびグリコール酸メチル2質量%であった。
【0078】
(加水分解反応)
水/グリオキシル酸メチルのモル比が9.8になるように上記留出液に水を加え、加水分解反応の混合原料を調製した。混合原料中のメタノール/グリオキシル酸メチルのモル比は5.4であった。
【0079】
ディクソンパッキングを充填した高さ80cmの蒸留装置を用いて、連続加水分解反応を行った。混合原料を94℃に加熱し、塔底の気相部に毎分4gの速度で連続的に供給した。94℃で供給した混合原料の液相部をサンプリングし分析したところ、メタノールは加熱前の10質量%しか存在しなかった。従って、混合原料中のメタノールの90質量%が、ガス状で供給されたことになる。
【0080】
還流比3で、塔頂からメタノールと水の混合物を毎分2.6gの速度で抜き出し、反応蒸留を行った。塔頂圧力は常圧であり、安定的に運転したときの塔頂温度は71〜72℃、塔底温度は103〜104℃であった。
【0081】
毎分1.4gの速度で抜き出された塔底液を分析したところ、グリオキシル酸が40質量%含まれていた。グリオキシル酸メチルの転化率は91モル%、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は90モル%であった。塔底液のハーゼン色数は150であった。
【0082】
比較例1
実施例1の加水分解反応で、蒸留塔に供給する混合原料の温度を80℃にした以外は、同様の操作を行った。40℃で供給した原料の液相部をサンプリングし分析したところ、メタノールは加熱前の100質量%が存在した。従って、混合原料中のメタノールは全量が液体で供給されたことになる。
【0083】
塔底液を分析したところ、グリオキシル酸メチルの転化率は81モル%、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は80モル%であった。
【0084】
実施例2
実施例1の加水分解反応で、混合原料を蒸留塔に供給する前に、図2に示すような流通式反応器で90℃で1時間加熱した後、毎分6gの速度で蒸留塔へ供給し、塔頂からの抜き出し速度を毎分3.9gとした以外は、同様の操作を行った。
【0085】
加熱によって加水分解反応が進行し、蒸留塔へ供給される時点でグリオキシル酸メチルの転化率は32モル%、グリオキシル酸の収率は32モル%であった。
【0086】
塔底液を分析したところ、グリオキシル酸が41質量%含まれていた。グリオキシル酸メチルの転化率は92モル%、グリオキシル酸メチル基準のグリオキシル酸の収率は91モル%であった。混合原料の供給速度を速めて、蒸留塔内での滞留時間を短くしたにも関わらず、グリオキシル酸の収率は実施例1と同程度であった。塔底液のハーゼン色数は100であった。滞留時間が短く、熱履歴が減少したことにより、着色の少ない高品質のグリオキシル酸が得られた。
【0087】
【発明の効果】
本発明のα−オキソカルボン酸の製造法によれば、α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給する際に、アルコールの50質量%以上をガス状で供給し、蒸留塔の塔頂からアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸エステルの転化率を向上させることができる。また該混合原料を蒸留塔に供給する前に、α−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解させる工程を設けることによって、蒸留塔の負荷を低減し、蒸留塔内の滞留時間を短くでき、高品質のα−オキソカルボン酸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるα−オキソカルボン酸の製造法に好適に用いられる反応装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例におけるα−オキソカルボン酸の製造法に好適に用いられる他の反応装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例におけるα−オキソカルボン酸の製造法に好適に用いられるさらに他の反応装置の概略の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1・31     多段式蒸留塔
2          予熱器
3          リボイラー
4          凝縮器
15         圧力調整弁
21・33    流通式反応器
32         反応器

Claims (3)

  1. α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給し、蒸留塔の塔頂から混合原料中のアルコール及び副生するアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸を製造する方法であって、蒸留塔に供給する混合原料に含まれるアルコールの50質量%以上をガス状で蒸留塔へ供給することを特徴とするα−オキソカルボン酸の製造法。
  2. α−オキソカルボン酸エステル、アルコールおよび水を含む混合原料を蒸留塔に供給し、蒸留塔の塔頂から混合原料中のアルコール及び副生するアルコールを抜き出しながら加水分解することによって、α−オキソカルボン酸を製造する方法であって、混合原料を蒸留塔に供給する前に、α−オキソカルボン酸エステルの一部を加水分解させる工程を設けることを特徴とするα−オキソカルボン酸の製造法。
  3. 混合原料中のアルコール/α−オキソカルボン酸エステルのモル比が0.5以上であることを特徴とする請求項1または2記載のα−オキソカルボン酸の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013090960A1 (de) 2011-12-20 2013-06-27 Isiqiri Interface Technolgies Gmbh Computeranlage und steuerungsverfahren dafür
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CN112898148A (zh) * 2021-04-14 2021-06-04 天津市新天进科技开发有限公司 乙醛酸精制的工艺方法和装置

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