JP2004001252A - 延伸積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂層と、これらとの熱融着性、特に高温雰囲気下での熱融着性に優れる接着性重合体組成物層を含む積層体を延伸してなる延伸積層体を提供すること。
【解決手段】ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、ポリアミド樹脂又はエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍に延伸処理して得られる延伸積層体。
【解決手段】ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、ポリアミド樹脂又はエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍に延伸処理して得られる延伸積層体。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂層及びこれらとの熱融着性、特に高温雰囲気下での熱融着性に優れる接着性重合体組成物層からなる積層体を延伸してなる延伸積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド樹脂(以下「PA系樹脂」と記す)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」と記す)は、強靱性、耐熱性、耐摩耗性及びガスバリア性に優れることから、産業機器、家庭用品等に広く利用されている。このガスバリア性を活かした用途として、気体容器や気体用の配管等があるが、こうした成形体の接合部には、気密性の確保や取扱を容易にするために、パッキングやシール用の部品として弾性体を挟んだり、積層したりされている。また、ガスバリア性を活かして、密封性を必要とするような食品包装材料への展開がなされている。特に、飲料用ボトルや食品包装分野等に広く用いられ、耐熱性、耐薬品性、力学的特性及び意匠性(表面光沢、透明性)に優れるポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂(以下「PES系樹脂」と記す)とEVOHやPA系樹脂との積層化により、ガスバリヤ性を向上した炭酸飲料等の容器や生鮮食品等の長期保存可能な包装への応用が検討されている。
【0003】
さらにこれらの積層体は、延伸することにより機械的強度の向上、保香性、ガスバリア性の改良がなされ各種包装材の性能向上が図られている。また、延伸により、延伸積層体に加熱時の収縮性を付与することができ、シュリンクフィルムへの応用が可能となるなど、各種用途への展開が試みられている。
しかしながら、PA系樹脂及びEVOHは、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂系樹脂等との積層の際に熱融着しにくく、そのため、接着剤や接着性樹脂を介した積層化が提案されている。例えば、延伸積層フィルムおよびその製造方法(特開昭52−146487号公報)、熱収縮性多層フィルムおよびその包装体(特開昭57−205147号公報、58−8644号公報)、熱収縮性多層フィルムおよびその製造法(特開昭59−152853号公報)、熱可塑性ポリエステル組成物の二軸延伸成形体(特開昭60−76325号公報)、二軸延伸積層体の製造方法(特開昭60−82324号公報)、熱収縮包装フィルム(特開昭61−94753号公報)等に於いて、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体とスチレン変性非晶性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物を接着層として適用することが提案されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によると、何れかの手法を用いて積層し充分に接着している積層体でも、少なくとも1軸方向に面積比で1.5倍〜50倍に延伸処理して得られた延伸積層体は、接着強度が低下する。特に、食品用途における滅菌処理工程やレトルト調理等、高温での処理の際、接着強度の低下が大きく、その結果処理中や処理後に剥離しやすくなり、使用上問題点が多いことが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、EVOH、PA系樹脂等の熱可塑性樹脂層と、これらとの熱融着性、特に高温雰囲気下での熱融着性に優れる接着性重合体組成物層を含む積層体を延伸してなる延伸積層体を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラジカル発生剤の存在下、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを特定量含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物が、PA系樹脂、EVOH等の熱可塑性樹脂との熱融着性に優れ、特に延伸積層体としたときの耐熱接着性に優れることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の要旨は、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍の延伸処理して得られる延伸積層体に存している。
【0008】
本発明の別の要旨は、接着性重合体組成物のメルトフローレート(JIS K7210準拠、230℃、21.18N、以下「MFR」と記す)が1〜300(g/10分)である延伸積層体に存している。
本発明の他の要旨は、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる基材樹脂層と、ガスバリア性樹脂層とを、接着性重合体組成物層を介して積層したものである延伸積層体に存している。
【0009】
本発明の他の要旨は、上記変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量が、下記式
A1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、基準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
の値で0.01〜15である延伸積層体に存している。
【0010】
本発明のもう1つの要旨は、延伸倍率が縦及び横の二軸方向に面積比で1.5倍〜50倍の延伸処理を施したものである延伸積層体に存している。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1]接着性重合体組成物層
本発明の積層成形体を構成する接着性重合体組成物層は、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる。また、接着性重合体組成物は、JIS−D硬度(JIS K6253に従い、デュロメータ タイプDによる硬度)が10以上80以下、好ましくは15以上70以下、特に好ましくは20以上60以下の範囲のものが用いられる。JIS−D硬度が、上記の範囲未満では、耐熱性が劣る傾向となり、上記の範囲を超える場合には、ゴム弾性と接着性が劣る傾向となる。
【0012】
さらに、該接着性重合体組成物のMFRは、1〜300(g/10分)、好ましくは42〜150(g/10分)、さらに好ましくは、45〜100(g/10分)である。MFRが上記範囲を超える場合は、溶融張力が小さ過ぎて成形時にドローダウン等の問題がある。MFRが上記範囲未満では流動性が不足してやはり成形性が悪化する傾向となる。
【0013】
本発明における変性とは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性、末端変性及びエステル交換反応による変性、分解反応による変性等をいう。具体的に、不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合している部位としては、末端官能基やアルキル鎖部分が考えられ、特に末端カルボン酸、末端水酸基及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位やβ位の炭素が挙げられる。特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位に多く結合しているものと推定される。
(1)配合材料
成分(A):飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー
本発明で使用する成分(A)の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと芳香族ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体である。ソフトセグメントは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント又はこれを含有するセグメントであることが、接着性重合体組成物の物性、特に、接着性の発現上重要である。
【0014】
また、主鎖の炭素原子間に二重結合、又は三重結合を含む不飽和ポリエステル系エラストマーは、熱や光による着色が起こりやすい上、成形時にもゲルが発生しやすいことから、特に、フィルム状やシート状の複合積層体においては外観や機械強度に問題があり、不適である。
また、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー中のポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は、該ポリエステル系エラストマー中の58〜73重量%であることが必要であり、好ましくは60〜70重量%である。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が上記範囲未満では、生成する接着性重合体組成物がPA系樹脂及びEVOHに対して十分な接着性を発現しない上、積層成形体が低温衝撃性に劣るものとなる。また、上記範囲を超えると、生成する接着性重合体組成物が、PES系樹脂に対して十分な接着性を発現しない上、高温雰囲気下での積層成形体の強度が劣るものとなる。
【0015】
このソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。特に好ましいものは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。
【0016】
本発明において、ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が400〜6,000のものが通常使用されるが、600〜4,000のものが好ましく、特に1,000〜3,000のものが好適である。この数平均分子量が400未満では、不飽和カルボン酸又はその誘導体による変性効果が少なく、十分な接着性を発現できない。一方、6,000を超えると、系内での相分離が起きやすく、得られるポリマーの物性が低下する傾向となる。なお、ここでいう「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMER LABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用すればよい。
【0017】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステル、及びiii)数平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
【0018】
炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として通常用いられるものが使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは、一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
【0019】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。また、これらのジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
【0020】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸のアルキルエステルを用いる場合は、上記のジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレートである。
また、上記の成分以外に3官能性のトリオールやトリカルボン酸又はそれらのエステルを少量共重合させてもよく、さらにアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。
【0021】
ポリアルキレンエーテルグリコールの種類や好適な分子量範囲としては、上記の項で説明したものと同様なものが使用できる。
このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等が挙げられる。
成分(B):不飽和カルボン酸又はその誘導体
本発明で使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;例えば、コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等があげられる。この中では、不飽和カルボン酸無水物が好適である。
【0022】
これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。この不飽和結合を有する化合物は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
成分(C):ラジカル発生剤
本発明において、変性処理に際し、ラジカル反応を行うために用いられるラジカル発生剤としては、例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が例示できる。
【0023】
これらのラジカル発生剤は、変性処理に用いるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの種類や、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。このラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
【0024】
また、接着性をさらに向上させるために、成分(C)だけでなく、変性助剤として、不飽和結合を有する化合物(成分(D))を併用することもできる。
成分(D):不飽和結合を有する化合物
成分(D)の不飽和結合を有する化合物とは、前記成分(B)以外の炭素−炭素多重結合を有する化合物のことをいい、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン等のビニル芳香族単量体等が挙げられる。これらの配合により、変性効率の向上が期待できる。
(2)付加的配合材料(任意成分)
本発明の接着性重合体組成物層には、上記の成分(A)〜成分(D)以外にも、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、目的に応じて任意の成分を配合することができる。
【0025】
具体的には、樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を添加することができる。
【0026】
中でも、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の各種酸化防止剤の少なくとも一種を添加することが好ましい。
(3)配合比
本発明の接着性重合体組成物を構成する各成分の配合割合は、成分(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、成分(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜30重量部、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.1〜2重量部、特に好ましくは、0.1〜1重量部の配合比となるものであり、成分(C)ラジカル発生剤が0.001〜3重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、より好ましくは、0.01〜0.2重量部、特に好ましくは、0.01〜0.1重量部の配合比となるものである。
【0027】
成分(B)の配合量が上記範囲未満では、不飽和結合を有する化合物による変性が不十分で接着性を発現しない。また、上記範囲を超えると、生成する熱可塑性エラストマーの溶融時の粘度が低下して、成形困難となる。また、成分(C)の配合量が上記範囲未満では、不飽和結合を有する化合物による変性が不十分で接着性を発現しにくい傾向がある。また、上記範囲を超えると、生成する熱可塑性エラストマーの溶融時の粘度が低下して、成形性が悪化する傾向がある。
【0028】
変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量は、下記式
A1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、変性ポリエステル系エラストマーの厚さ20μmのフィルムについて測定された、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、規準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
の値で0.01〜15であることが望ましく、好ましくは、0.03〜2.5であり、より好ましくは、0.1〜2.0であり、特に好ましくは、0.2〜1.8である。
【0029】
変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量の値を求める方法は、次の通りである。すなわち、厚さ20μmのフィルム状の試料を100℃で15時間減圧乾燥し未反応物を除去し、赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、1786cm−1に現れる酸無水物由来のカルボニル基の伸縮振動による吸収ピーク(1750〜1820cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度A1786」とする。
【0030】
一方、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて、同様に赤外線吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、規準波数のピーク、例えばベンゼン環を含む芳香族ポリエステル系エラストマーの場合は、872cm−1に現れるベンゼン環のC−Hの面外変角による吸収ピーク(850〜900cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度Ast」とする。なお、この規準波数のピークについては、変性による影響を受けず、かつ、その近傍に重なり合うような吸収ピークのないものから選択すればよい。
【0031】
これら両ピーク強度から、前記式に従って赤外吸収スペクトル法による変性量を算出する。その際、rとしては、変性量を求める変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値を使用する。また、各試料のポリエステルセグメントのモル分率mrは、ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの重量分率(w1及びw2)と両セグメントを構成する単量体単位の分子量(e1及びe2)とから、次式によって求める。
【0032】
mr=(w1/e1)/[(w1/e1)+(w2/e2)]
(4)配合方法
成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要に応じて添加される成分(D)等の配合成分を用いて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得るための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
【0033】
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要であれば、成分(D)、前記付加的配合材料(任意成分)として挙げた、その他の配合剤を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
【0034】
各成分の溶融混練の温度は、100℃〜300℃の範囲、好ましくは120℃〜280℃の範囲、特に好ましくは150℃〜250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)、成分(B)及び成分(C)と、成分(D)等の付加的配合材料とを一括して混練する方法、成分(A)〜成分(D)の内の一部を混練した後、付加的な配合材料を含めた残りの成分を混練する方法でもよい。ただし、成分(C)を配合する場合は、これを成分(B)及び成分(D)と、同時に添加することが接着性向上の点から好ましい。
[2]延伸積層体
上述の接着性重合体組成物は、PA系樹脂、EVOHを始めとする多種の熱可塑性樹脂との熱融着性が優れているので、種々の熱可塑性樹脂との積層体を延伸して延伸積層体を製造することができる。この時熱可塑性樹脂としては、一種のみではなく、二種以上の樹脂との多層積層体を延伸積層体とすることも可能である。上述の接着性重合体組成物においては、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されており、特にアミノ基、水酸基、ウレタン結合を有する熱可塑性樹脂との接着性が優れている。
【0035】
延伸積層体としては、上述の接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍延伸処理したものが、本発明の基本的な態様である。特に、上述の接着性重合体組成物層を介して、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層、例えば、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる熱可塑性樹脂層との積層体を延伸した延伸積層体が本発明の接着性重合体組成物の優れた融着性を活かすことができる好ましい態様である。
【0036】
本発明の延伸積層体は、生活温度(0〜40℃)では、通常の人手によっては容易に剥離することができない上、100℃以上の高温雰囲気下でも良好な密着性を示し、剥離には相当な困難を伴う。
また、本発明の延伸積層体は、延伸することにより機械的強度の向上、保香性、ガスバリア性の改良がなされ各種包装材の性能向上が図られたものである。さらに、延伸により得られる、延伸積層体に収縮性を付与することができ、シュリンクフィルムへの応用ができるなど、各種用途への展開が可能となる。さらに、上述の接着性重合体組成物層を介して、ガスバリア性樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層からなる熱可塑性樹脂層との積層体を延伸した延伸積層体は、ラミネートフィルムの原反として、ガスバリア性樹脂層側に接着剤を介してポリオレフィン系樹脂層と積層し、ガスバリア性、水蒸気バリア性、保香性を有する包装袋として畜肉、スナック菓子、カイロ、たばこ等の包装に利用することができる。
(1)ガスバリア性樹脂層
ガスバリア性樹脂層は、通常、ガスバリア性(酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気、プロパン、ブタン、イソブタン等を遮蔽する性能)に優れ、基材樹脂層は、通常、剛性や耐熱性に優れることから、上記好ましい態様の積層成形体はこれらの性能を併せ持ったものとなる。
【0037】
ガスバリア性樹脂層を構成するガスバリア性樹脂は、PA系樹脂又はEVOHである。
PA系樹脂は、通常、下記式(1)
【0038】
【化1】
H2N−(CH2)X−NH2 (1)
(式中、Xは4〜12の整数である。)
で表される線状ジアミンと、下記式(2)
【0039】
【化2】
HO2C−(CH2)y−CO2H (2)
(式中、yは2〜12の整数である。)
で表される線状ジカルボン酸とを縮合することによって製造されるが、ラクタム類の開環重合によって得ることもできる。これらのPA系樹脂の具体例としては、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド4,6、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド11等が挙げられる。
【0040】
また、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,10、ポリアミド6/12、ポリアミド6/6,12、ポリアミド6/6,6/6,10、ポリアミド6/6,6/12等の共重合ポリアミド類も使用できる。
さらに、ポリアミド6/6,T(T:テレフタル酸成分)、ポリアミド6,T/6,I(I:イソフタル酸成分)、ポリアミドMXD6等の半芳香族ポリアミド類も使用できる。半芳香族ポリアミド類は、例えば、上記式(2)の線状ジカルボン酸をテレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸で置換する(その際、ジアミンも脂環式ジアミンで置換してもよい)か、上記式(1)の線状ジアミンをメタキシレンジアミンのような芳香族ジアミンで置換することによって製造される。もちろん、ジアミンの一部をジオールで置換したポリエステルアミド類も使用できる。特に好ましいPA系樹脂は、ポリアミド6、ポリアミドMXD6である。
【0041】
このようなPA系樹脂の市販品としては、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバミッド」、「レニー」等が挙げられる。
EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物である。このような共重合体の市販品としては、株式会社クラレ製「エバール」等が挙げられる。なお、PA系樹脂及びEVOHは、単独でも使用できるし、二種以上を併用することもできる。
(2)その他の熱可塑性樹脂層
また、変性ポリエステル系エラストマーのポリアルキレンエーテルグリコールセグメントやその他のブロック成分の相溶性を利用して、上記のガスバリア性樹脂以外にも様々な熱可塑性樹脂に接着することも可能である。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCT(ポリシクロヘキサンテレフタレート)、PETG(ポリエチレンテレフタレートとポリシクロへキサンテレフタレートの共重合体)等のポリエステル樹脂、GPPS(ホモポリマーからなるポリスチレン)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、HIPS変性PPE、ナイロン変性PPE等の変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらの中では、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる基材樹脂が好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂としては、一般にジカルボン酸又はその低級アルキルエステル、酸ハライド、無水物等の誘導体と、グリコールとを縮合させることにより製造された熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
このポリエステルを製造するのに適するジカルボン酸には、例えば、以下のような芳香族及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノ酢酸、p,p′−ジカルボキシジフェニル、p,p′−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフェノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシヘキサン酸、p,p′−ジカルボキシジフェニルメタン、p,p′−ジカルボキシジフェニルプロパン、p,p′−ジカルボキシジフェニルオクタン、3−アルキル−4−(β−カルボキシエトキシ)−安息香酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸及び2,7−ナフタリンジカルボン酸。これらのジカルボン酸の混合物も使用され得る。なかでもテレフタル酸が特に好ましい。
【0043】
前記ポリエステルを製造するのに適するグリコールは、2〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,10−デカメチレングリコール及び1,12−ドデカメチレングリコール等がある。これらの直鎖アルキレングリコールの一部又は全部を芳香族グリコールで置き換えてもよい。適当な芳香族グリコールには、p−キシリレングリコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、又はこれら化合物のアルキル置換誘導体がある。他の適当なグリコールは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコールである。より好ましいグリコールは、炭素原子数2〜4の直鎖アルキレングリコールである。
【0044】
好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートである。より好ましいポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートである。
このようなポリエステル樹脂の市販品としては、三菱化学(株)製「ノバペックス」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバドゥール」、ポリプラスチックス(株)製「ジュラネックス」、イーストマンケミカル(株)製「PET−G」等が挙げられる。
(3)配合
これら熱可塑性樹脂は、使用に際してゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、潤滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤等を必要に応じて配合することもできるが、特に、ガラス繊維のような補強剤やその他の充填剤を加えたものが好ましい。
[3]成型方法
(1)積層体の製造
本発明の積層体は、成形材料である前述の接着性重合体組成物及び上述の熱可塑性樹脂を、従来より公知の種々手法で製造することができる。例えば、(共)押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、回転成形法、プレス成形法、射出成形法(インサート射出成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法、インジェクションプレス成形法)等の各種成形法を用いることができる。中でも(共)押出成形法が、本発明の接着性重合体組成物の優れた熱融着性と加工性を活かすことができ、生産性を向上できるので好適である。
【0045】
成形に際しては、乾燥した材料を用いることが重要である。材料を予備乾燥するための温度としては40〜150℃、好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜120℃で、乾燥時間は1〜24時間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜6時間で行うのが好適である。さらに、乾燥を減圧下で行うとより効果的であり、これにより乾燥温度を低く、乾燥時間を短くすることが可能である。
【0046】
未乾燥の材料で成形した場合には、成形品表面に肌荒れが生じたり、物性の低下を招くことがある。
(2)延伸積層体の製造
本発明の延伸積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、上記(1)から得られた未延伸の(多層)積層体を冷却固化後、各成形品をインライン、またはオフラインで60〜160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグおよび圧縮空気等を用い一軸方向、あるいは二軸方向に少なくとも面積比で1.5倍以上延伸を行い、一軸または二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形体を得る方法が挙げられる。延伸倍率としては、面積比で通常1.5倍から50倍、好ましくは1.5倍から20倍である。延伸倍率が1.5倍未満では前述した延伸の効果は得られず、50倍を越えると成形時に破断が生じることがあるなど延伸積層体の強度が低下する傾向となる。インフレーションフィルムを製造する場合は、インフレ同時二軸延伸法、Tダイフィルムの場合はテンター同時二軸延伸法、ロールおよびテンターに因る逐次二軸延伸法等、カップの製造の場合は、金型内で圧縮空気等のみによる圧空成形、プラグと圧縮空気を併用するSPPF成形等、ボトル製造の場合は、積層パイプを縦に延伸後、金型内で圧縮空気等で横に延伸するパイプ延伸法、インジェクション成形により試験管状の有底パリソンを成形し、有底パリソンを金型内でロッドにより縦方向に延伸後、圧縮空気等により横方向に延伸する有底パリソン延伸法等が一般的に用いられる。
【0047】
また、本発明の延伸積層体は必要に応じて、延伸後再加熱、すなわちヒートセットを行うことにより更に耐熱性を向上する(収縮性はやや低下する)ことができる。また、本発明の延伸積層体と別途製造されたフィルムを積層して積層体とすることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例によって限定されるものではない。
[1]積層体、及び延伸フィルムの製造方法
(1)積層体の製造方法
評価用の積層体は、2種3層共押出水冷インフレーションフィルム成形法を用いて製造した。層構成は内層から外層に向かって、各種被着材/接着材/各種被着材とし、各層の厚さはいずれも100μmとした。押出機のダイス幅は内層から外層に向かって45mmφ/30mmφ/45mmφとし、成形速度は5m/分に設定した。以下に、共押出温度を用いた被着材別に示す。
【0049】
ポリエステル系樹脂:270℃
エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物:225℃
ポリアミド系樹脂:240℃
(2)延伸積層体の製造方法
テンター法を用い、下記の装置にて加熱温度70℃で、延伸倍率:3.5×3.5倍の延伸積層体を製造した。
【0050】
標準型二軸延伸機:T.M.Long社製
延伸最大倍率:7.2×7.2倍
延伸速度:7.6〜3000cm/分
加熱方式:熱風循環(室温〜350℃)
延伸ヘッド駆動:油圧シリンダー
延伸可能試料厚み:0.08〜2mm
[2]評価方法
実施例および比較例の評価は以下の方法にて実施した。
(1)接着強度
積層体及び延伸積層体の接着強度(g/10mm)は、JIS K6854に準拠して下記条件で測定した。
【0051】
剥離幅:10mm
剥離状態:Tピール剥離
剥離速度:50mm/分
温度:23℃および60℃
(2)接着耐熱強度
本発明の延伸積層体の耐熱接着性を評価するため、以下のボイル処理を実施し、その後接着強度を測定した。
【0052】
ボイル処理:ポリエチレン製の袋に延伸フィルムを入れて、ヒートシールにより密封し、90℃の熱水中で30分間処理した。その後、23℃の水中で冷却(約30分)しサンプルを得た。
(3)赤外吸収スペクトル法による変性量
接着性重合体組成物の変性量の評価は、以下に示す方法によって行った。
【0053】
得られたペレットをプレス成形(230℃)により、厚さ20μmのフィルム状に成形したサンプルを使用し、FT−IR装置(JASCO FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、本文記載の手順に従い、赤外吸収スペクトル法による変性量を算出した。なお、標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率は0.15、Astは0.144であった。
[3]実施例、及び比較例
(1)実施例1
ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとする、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、該共重合体中のポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%のポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率35.5MPa、密度1.09g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度185.0℃、JIS−D硬度34)100wt%に対して、不飽和カルボン酸無水物(和光純薬工業株式会社製「無水マレイン酸(試薬特級)」)を0.5重量部、ラジカル発生剤(2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)を0.05重量部の配合割合で配合し、株式会社日本製鋼所製TEX−44型混練機(径44mm、温度190〜220℃)中で溶融混練した後、ペレタイザーを通しペレット化して、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.22、MFR:48g/10分)を得た。
【0054】
接着性重合体組成物として得られたペレットを使用し、上述の積層体の製造方法を用い、被着材として▲1▼ポリエステル系樹脂:ダイヤナイトPA500(比重:1.34g/cm3、固有粘度:0.76dl/g、三菱レーヨン(株)製)、▲2▼エチレン:酢酸ビニル共重合体鹸化物―エバールEP−F101(密度:1.19g/cc、メルトインデックス:1.3、エチレン共重合含量:32モル%(株)クラレ製)、▲3▼ポリアミド系樹脂:ノバテック1020CA2(融点:224℃、三菱化学(株)製)の各々2種3層フィルムを製造した。得られたフィルムを冷却後、23℃、又は60℃の雰囲気下で、接着力を測定した。また上記フィルムを、前述の方法に従って、70℃雰囲気下で縦方向および横方向に3.5×3.5倍に延伸した延伸積層体を製造した。この延伸積層体の接着力、及び、ボイル処理後の接着強度(23℃雰囲気下)を測定した。結果を表1に示す。積層体が剥離せず、接着強度を測定出来なかったものは、表中「剥離不可」と記した。また、接着強度の単位は、g/10mmである。
(2)実施例2
不飽和カルボン酸無水物の配合部数を1重量部としたこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.53、MFR:50g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(3)実施例3
不飽和カルボン酸無水物の配合部数を3重量部としたこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:1.61、MFR:67g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(4)実施例4
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が72重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率22.6MPa、密度1.07g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度160.0℃、JIS−D硬度28)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.28、MFR:55g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(5)比較例1
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が55重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率55.3MPa、密度1.12g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度197.0℃、JIS−D硬度41)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.15、MFR:65g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(6)比較例2
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が25重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率267MPa、密度1.22g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度210.0℃、JIS−D硬度60)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.02、MFR:80g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(7)比較例3
無水マレイン酸グラフト変性スチレン−ブタジエン共重合体水添物(グラフト率:2重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):22g/10分、スチレン比:30%、水添率:98%)5重量%、粘着付与剤(脂環族系石油樹脂、数平均分子量:710、比重:0.998、軟化点115℃)10重量%、およびエチレン−ブタジエン共重合体(密度:0.860、融点:23℃、MFR(JIS K7210準拠、190℃、21.18N):1g/10分)85重量%の配合割合で事前に50リッターのV型ブレンダーで5分間混合し、二軸押出機PCM30(D=30mmφ、L/D=32、池貝鉄工(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数180rpm、押し出し量11kg/時で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、ペレットを得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(8)比較例4
無水マレイン酸グラフト変性スチレン−ブタジエン共重合体水添物(グラフト率:2重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):22g/10分、スチレン比:30%、水添率:98%)5重量%、粘着付与剤(脂環族系石油樹脂、数平均分子量:860、比重:0.999、軟化点140℃)60重量%、スチレン−ブタジエン共重合体水添物(スチレン比:20重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):0.3g/10分、水添率:97%)5重量%、エチレン−ブテン共重合体(密度:0.880、融点:72℃、MFR(JIS K7210準拠、190℃、21.18N):1g/10分)30重量%の配合割合で事前に50リッターのV型ブレンダーで5分間混合し、二軸押出機PCM30(D=30mmφ、L/D=32、池貝鉄工(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数180rpm、押し出し量11kg/時で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、ペレットを得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
「結果の評価」
(1)接着性重合体組成物として、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント含有率が本発明の範囲外(55重量%)のポリエステル系エラストマーを用いた比較例1においては、EVOH層との接着強度は延伸前、延伸後ともに劣っている。また、ポリアミド系樹脂層との接着性は延伸前、23℃雰囲気の接着強度は優れているものの、60℃雰囲気、及び延伸後の接着強度が劣っている。
(2)接着性重合体組成物として、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント含有率が本発明の範囲外(25重量%)のポリエステル系エラストマーを用いた比較例2においては、EVOH、ポリアミド系樹脂からなる樹脂層との接着強度が、延伸前、延伸後共に劣っている。
(3)接着性重合体組成物として、変性ポリエステルエラストマーを用いていない比較例3及び比較例4においては、PES系樹脂、EVOHからなる樹脂層との接着強度が、延伸前、延伸後共に劣っている。また、ポリアミド系樹脂層との接着性は延伸前、23℃雰囲気の接着強度は優れているものの、60℃雰囲気、及び延伸後の接着強度は劣っている。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを所定量含有するポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性処理することにより得られた、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層からなる積層体を延伸して得られる延伸積層体は接着強度、特に高温雰囲気下での接着強度が優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂層及びこれらとの熱融着性、特に高温雰囲気下での熱融着性に優れる接着性重合体組成物層からなる積層体を延伸してなる延伸積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド樹脂(以下「PA系樹脂」と記す)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」と記す)は、強靱性、耐熱性、耐摩耗性及びガスバリア性に優れることから、産業機器、家庭用品等に広く利用されている。このガスバリア性を活かした用途として、気体容器や気体用の配管等があるが、こうした成形体の接合部には、気密性の確保や取扱を容易にするために、パッキングやシール用の部品として弾性体を挟んだり、積層したりされている。また、ガスバリア性を活かして、密封性を必要とするような食品包装材料への展開がなされている。特に、飲料用ボトルや食品包装分野等に広く用いられ、耐熱性、耐薬品性、力学的特性及び意匠性(表面光沢、透明性)に優れるポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂(以下「PES系樹脂」と記す)とEVOHやPA系樹脂との積層化により、ガスバリヤ性を向上した炭酸飲料等の容器や生鮮食品等の長期保存可能な包装への応用が検討されている。
【0003】
さらにこれらの積層体は、延伸することにより機械的強度の向上、保香性、ガスバリア性の改良がなされ各種包装材の性能向上が図られている。また、延伸により、延伸積層体に加熱時の収縮性を付与することができ、シュリンクフィルムへの応用が可能となるなど、各種用途への展開が試みられている。
しかしながら、PA系樹脂及びEVOHは、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂系樹脂等との積層の際に熱融着しにくく、そのため、接着剤や接着性樹脂を介した積層化が提案されている。例えば、延伸積層フィルムおよびその製造方法(特開昭52−146487号公報)、熱収縮性多層フィルムおよびその包装体(特開昭57−205147号公報、58−8644号公報)、熱収縮性多層フィルムおよびその製造法(特開昭59−152853号公報)、熱可塑性ポリエステル組成物の二軸延伸成形体(特開昭60−76325号公報)、二軸延伸積層体の製造方法(特開昭60−82324号公報)、熱収縮包装フィルム(特開昭61−94753号公報)等に於いて、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体とスチレン変性非晶性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物を接着層として適用することが提案されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によると、何れかの手法を用いて積層し充分に接着している積層体でも、少なくとも1軸方向に面積比で1.5倍〜50倍に延伸処理して得られた延伸積層体は、接着強度が低下する。特に、食品用途における滅菌処理工程やレトルト調理等、高温での処理の際、接着強度の低下が大きく、その結果処理中や処理後に剥離しやすくなり、使用上問題点が多いことが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、EVOH、PA系樹脂等の熱可塑性樹脂層と、これらとの熱融着性、特に高温雰囲気下での熱融着性に優れる接着性重合体組成物層を含む積層体を延伸してなる延伸積層体を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラジカル発生剤の存在下、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを特定量含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物が、PA系樹脂、EVOH等の熱可塑性樹脂との熱融着性に優れ、特に延伸積層体としたときの耐熱接着性に優れることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の要旨は、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍の延伸処理して得られる延伸積層体に存している。
【0008】
本発明の別の要旨は、接着性重合体組成物のメルトフローレート(JIS K7210準拠、230℃、21.18N、以下「MFR」と記す)が1〜300(g/10分)である延伸積層体に存している。
本発明の他の要旨は、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる基材樹脂層と、ガスバリア性樹脂層とを、接着性重合体組成物層を介して積層したものである延伸積層体に存している。
【0009】
本発明の他の要旨は、上記変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量が、下記式
A1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、基準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
の値で0.01〜15である延伸積層体に存している。
【0010】
本発明のもう1つの要旨は、延伸倍率が縦及び横の二軸方向に面積比で1.5倍〜50倍の延伸処理を施したものである延伸積層体に存している。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1]接着性重合体組成物層
本発明の積層成形体を構成する接着性重合体組成物層は、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる。また、接着性重合体組成物は、JIS−D硬度(JIS K6253に従い、デュロメータ タイプDによる硬度)が10以上80以下、好ましくは15以上70以下、特に好ましくは20以上60以下の範囲のものが用いられる。JIS−D硬度が、上記の範囲未満では、耐熱性が劣る傾向となり、上記の範囲を超える場合には、ゴム弾性と接着性が劣る傾向となる。
【0012】
さらに、該接着性重合体組成物のMFRは、1〜300(g/10分)、好ましくは42〜150(g/10分)、さらに好ましくは、45〜100(g/10分)である。MFRが上記範囲を超える場合は、溶融張力が小さ過ぎて成形時にドローダウン等の問題がある。MFRが上記範囲未満では流動性が不足してやはり成形性が悪化する傾向となる。
【0013】
本発明における変性とは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性、末端変性及びエステル交換反応による変性、分解反応による変性等をいう。具体的に、不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合している部位としては、末端官能基やアルキル鎖部分が考えられ、特に末端カルボン酸、末端水酸基及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位やβ位の炭素が挙げられる。特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位に多く結合しているものと推定される。
(1)配合材料
成分(A):飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー
本発明で使用する成分(A)の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと芳香族ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体である。ソフトセグメントは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント又はこれを含有するセグメントであることが、接着性重合体組成物の物性、特に、接着性の発現上重要である。
【0014】
また、主鎖の炭素原子間に二重結合、又は三重結合を含む不飽和ポリエステル系エラストマーは、熱や光による着色が起こりやすい上、成形時にもゲルが発生しやすいことから、特に、フィルム状やシート状の複合積層体においては外観や機械強度に問題があり、不適である。
また、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー中のポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は、該ポリエステル系エラストマー中の58〜73重量%であることが必要であり、好ましくは60〜70重量%である。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が上記範囲未満では、生成する接着性重合体組成物がPA系樹脂及びEVOHに対して十分な接着性を発現しない上、積層成形体が低温衝撃性に劣るものとなる。また、上記範囲を超えると、生成する接着性重合体組成物が、PES系樹脂に対して十分な接着性を発現しない上、高温雰囲気下での積層成形体の強度が劣るものとなる。
【0015】
このソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。特に好ましいものは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。
【0016】
本発明において、ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が400〜6,000のものが通常使用されるが、600〜4,000のものが好ましく、特に1,000〜3,000のものが好適である。この数平均分子量が400未満では、不飽和カルボン酸又はその誘導体による変性効果が少なく、十分な接着性を発現できない。一方、6,000を超えると、系内での相分離が起きやすく、得られるポリマーの物性が低下する傾向となる。なお、ここでいう「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMER LABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用すればよい。
【0017】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステル、及びiii)数平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
【0018】
炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として通常用いられるものが使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは、一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
【0019】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。また、これらのジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
【0020】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸のアルキルエステルを用いる場合は、上記のジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレートである。
また、上記の成分以外に3官能性のトリオールやトリカルボン酸又はそれらのエステルを少量共重合させてもよく、さらにアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。
【0021】
ポリアルキレンエーテルグリコールの種類や好適な分子量範囲としては、上記の項で説明したものと同様なものが使用できる。
このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等が挙げられる。
成分(B):不飽和カルボン酸又はその誘導体
本発明で使用する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;例えば、コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等があげられる。この中では、不飽和カルボン酸無水物が好適である。
【0022】
これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。この不飽和結合を有する化合物は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
成分(C):ラジカル発生剤
本発明において、変性処理に際し、ラジカル反応を行うために用いられるラジカル発生剤としては、例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が例示できる。
【0023】
これらのラジカル発生剤は、変性処理に用いるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの種類や、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。このラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
【0024】
また、接着性をさらに向上させるために、成分(C)だけでなく、変性助剤として、不飽和結合を有する化合物(成分(D))を併用することもできる。
成分(D):不飽和結合を有する化合物
成分(D)の不飽和結合を有する化合物とは、前記成分(B)以外の炭素−炭素多重結合を有する化合物のことをいい、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン等のビニル芳香族単量体等が挙げられる。これらの配合により、変性効率の向上が期待できる。
(2)付加的配合材料(任意成分)
本発明の接着性重合体組成物層には、上記の成分(A)〜成分(D)以外にも、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、目的に応じて任意の成分を配合することができる。
【0025】
具体的には、樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を添加することができる。
【0026】
中でも、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の各種酸化防止剤の少なくとも一種を添加することが好ましい。
(3)配合比
本発明の接着性重合体組成物を構成する各成分の配合割合は、成分(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、成分(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜30重量部、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.1〜2重量部、特に好ましくは、0.1〜1重量部の配合比となるものであり、成分(C)ラジカル発生剤が0.001〜3重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、より好ましくは、0.01〜0.2重量部、特に好ましくは、0.01〜0.1重量部の配合比となるものである。
【0027】
成分(B)の配合量が上記範囲未満では、不飽和結合を有する化合物による変性が不十分で接着性を発現しない。また、上記範囲を超えると、生成する熱可塑性エラストマーの溶融時の粘度が低下して、成形困難となる。また、成分(C)の配合量が上記範囲未満では、不飽和結合を有する化合物による変性が不十分で接着性を発現しにくい傾向がある。また、上記範囲を超えると、生成する熱可塑性エラストマーの溶融時の粘度が低下して、成形性が悪化する傾向がある。
【0028】
変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量は、下記式
A1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、変性ポリエステル系エラストマーの厚さ20μmのフィルムについて測定された、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、規準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
の値で0.01〜15であることが望ましく、好ましくは、0.03〜2.5であり、より好ましくは、0.1〜2.0であり、特に好ましくは、0.2〜1.8である。
【0029】
変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量の値を求める方法は、次の通りである。すなわち、厚さ20μmのフィルム状の試料を100℃で15時間減圧乾燥し未反応物を除去し、赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、1786cm−1に現れる酸無水物由来のカルボニル基の伸縮振動による吸収ピーク(1750〜1820cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度A1786」とする。
【0030】
一方、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて、同様に赤外線吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、規準波数のピーク、例えばベンゼン環を含む芳香族ポリエステル系エラストマーの場合は、872cm−1に現れるベンゼン環のC−Hの面外変角による吸収ピーク(850〜900cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度Ast」とする。なお、この規準波数のピークについては、変性による影響を受けず、かつ、その近傍に重なり合うような吸収ピークのないものから選択すればよい。
【0031】
これら両ピーク強度から、前記式に従って赤外吸収スペクトル法による変性量を算出する。その際、rとしては、変性量を求める変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値を使用する。また、各試料のポリエステルセグメントのモル分率mrは、ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの重量分率(w1及びw2)と両セグメントを構成する単量体単位の分子量(e1及びe2)とから、次式によって求める。
【0032】
mr=(w1/e1)/[(w1/e1)+(w2/e2)]
(4)配合方法
成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要に応じて添加される成分(D)等の配合成分を用いて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得るための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
【0033】
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要であれば、成分(D)、前記付加的配合材料(任意成分)として挙げた、その他の配合剤を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
【0034】
各成分の溶融混練の温度は、100℃〜300℃の範囲、好ましくは120℃〜280℃の範囲、特に好ましくは150℃〜250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)、成分(B)及び成分(C)と、成分(D)等の付加的配合材料とを一括して混練する方法、成分(A)〜成分(D)の内の一部を混練した後、付加的な配合材料を含めた残りの成分を混練する方法でもよい。ただし、成分(C)を配合する場合は、これを成分(B)及び成分(D)と、同時に添加することが接着性向上の点から好ましい。
[2]延伸積層体
上述の接着性重合体組成物は、PA系樹脂、EVOHを始めとする多種の熱可塑性樹脂との熱融着性が優れているので、種々の熱可塑性樹脂との積層体を延伸して延伸積層体を製造することができる。この時熱可塑性樹脂としては、一種のみではなく、二種以上の樹脂との多層積層体を延伸積層体とすることも可能である。上述の接着性重合体組成物においては、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されており、特にアミノ基、水酸基、ウレタン結合を有する熱可塑性樹脂との接着性が優れている。
【0035】
延伸積層体としては、上述の接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5〜50倍延伸処理したものが、本発明の基本的な態様である。特に、上述の接着性重合体組成物層を介して、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層、例えば、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる熱可塑性樹脂層との積層体を延伸した延伸積層体が本発明の接着性重合体組成物の優れた融着性を活かすことができる好ましい態様である。
【0036】
本発明の延伸積層体は、生活温度(0〜40℃)では、通常の人手によっては容易に剥離することができない上、100℃以上の高温雰囲気下でも良好な密着性を示し、剥離には相当な困難を伴う。
また、本発明の延伸積層体は、延伸することにより機械的強度の向上、保香性、ガスバリア性の改良がなされ各種包装材の性能向上が図られたものである。さらに、延伸により得られる、延伸積層体に収縮性を付与することができ、シュリンクフィルムへの応用ができるなど、各種用途への展開が可能となる。さらに、上述の接着性重合体組成物層を介して、ガスバリア性樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層からなる熱可塑性樹脂層との積層体を延伸した延伸積層体は、ラミネートフィルムの原反として、ガスバリア性樹脂層側に接着剤を介してポリオレフィン系樹脂層と積層し、ガスバリア性、水蒸気バリア性、保香性を有する包装袋として畜肉、スナック菓子、カイロ、たばこ等の包装に利用することができる。
(1)ガスバリア性樹脂層
ガスバリア性樹脂層は、通常、ガスバリア性(酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気、プロパン、ブタン、イソブタン等を遮蔽する性能)に優れ、基材樹脂層は、通常、剛性や耐熱性に優れることから、上記好ましい態様の積層成形体はこれらの性能を併せ持ったものとなる。
【0037】
ガスバリア性樹脂層を構成するガスバリア性樹脂は、PA系樹脂又はEVOHである。
PA系樹脂は、通常、下記式(1)
【0038】
【化1】
H2N−(CH2)X−NH2 (1)
(式中、Xは4〜12の整数である。)
で表される線状ジアミンと、下記式(2)
【0039】
【化2】
HO2C−(CH2)y−CO2H (2)
(式中、yは2〜12の整数である。)
で表される線状ジカルボン酸とを縮合することによって製造されるが、ラクタム類の開環重合によって得ることもできる。これらのPA系樹脂の具体例としては、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド4,6、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド11等が挙げられる。
【0040】
また、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,10、ポリアミド6/12、ポリアミド6/6,12、ポリアミド6/6,6/6,10、ポリアミド6/6,6/12等の共重合ポリアミド類も使用できる。
さらに、ポリアミド6/6,T(T:テレフタル酸成分)、ポリアミド6,T/6,I(I:イソフタル酸成分)、ポリアミドMXD6等の半芳香族ポリアミド類も使用できる。半芳香族ポリアミド類は、例えば、上記式(2)の線状ジカルボン酸をテレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸で置換する(その際、ジアミンも脂環式ジアミンで置換してもよい)か、上記式(1)の線状ジアミンをメタキシレンジアミンのような芳香族ジアミンで置換することによって製造される。もちろん、ジアミンの一部をジオールで置換したポリエステルアミド類も使用できる。特に好ましいPA系樹脂は、ポリアミド6、ポリアミドMXD6である。
【0041】
このようなPA系樹脂の市販品としては、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバミッド」、「レニー」等が挙げられる。
EVOHは、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物である。このような共重合体の市販品としては、株式会社クラレ製「エバール」等が挙げられる。なお、PA系樹脂及びEVOHは、単独でも使用できるし、二種以上を併用することもできる。
(2)その他の熱可塑性樹脂層
また、変性ポリエステル系エラストマーのポリアルキレンエーテルグリコールセグメントやその他のブロック成分の相溶性を利用して、上記のガスバリア性樹脂以外にも様々な熱可塑性樹脂に接着することも可能である。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCT(ポリシクロヘキサンテレフタレート)、PETG(ポリエチレンテレフタレートとポリシクロへキサンテレフタレートの共重合体)等のポリエステル樹脂、GPPS(ホモポリマーからなるポリスチレン)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、HIPS変性PPE、ナイロン変性PPE等の変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらの中では、PES系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる基材樹脂が好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂としては、一般にジカルボン酸又はその低級アルキルエステル、酸ハライド、無水物等の誘導体と、グリコールとを縮合させることにより製造された熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
このポリエステルを製造するのに適するジカルボン酸には、例えば、以下のような芳香族及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノ酢酸、p,p′−ジカルボキシジフェニル、p,p′−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフェノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシヘキサン酸、p,p′−ジカルボキシジフェニルメタン、p,p′−ジカルボキシジフェニルプロパン、p,p′−ジカルボキシジフェニルオクタン、3−アルキル−4−(β−カルボキシエトキシ)−安息香酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸及び2,7−ナフタリンジカルボン酸。これらのジカルボン酸の混合物も使用され得る。なかでもテレフタル酸が特に好ましい。
【0043】
前記ポリエステルを製造するのに適するグリコールは、2〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,10−デカメチレングリコール及び1,12−ドデカメチレングリコール等がある。これらの直鎖アルキレングリコールの一部又は全部を芳香族グリコールで置き換えてもよい。適当な芳香族グリコールには、p−キシリレングリコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、又はこれら化合物のアルキル置換誘導体がある。他の適当なグリコールは、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコールである。より好ましいグリコールは、炭素原子数2〜4の直鎖アルキレングリコールである。
【0044】
好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートである。より好ましいポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートである。
このようなポリエステル樹脂の市販品としては、三菱化学(株)製「ノバペックス」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバドゥール」、ポリプラスチックス(株)製「ジュラネックス」、イーストマンケミカル(株)製「PET−G」等が挙げられる。
(3)配合
これら熱可塑性樹脂は、使用に際してゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、潤滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤等を必要に応じて配合することもできるが、特に、ガラス繊維のような補強剤やその他の充填剤を加えたものが好ましい。
[3]成型方法
(1)積層体の製造
本発明の積層体は、成形材料である前述の接着性重合体組成物及び上述の熱可塑性樹脂を、従来より公知の種々手法で製造することができる。例えば、(共)押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、回転成形法、プレス成形法、射出成形法(インサート射出成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法、インジェクションプレス成形法)等の各種成形法を用いることができる。中でも(共)押出成形法が、本発明の接着性重合体組成物の優れた熱融着性と加工性を活かすことができ、生産性を向上できるので好適である。
【0045】
成形に際しては、乾燥した材料を用いることが重要である。材料を予備乾燥するための温度としては40〜150℃、好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜120℃で、乾燥時間は1〜24時間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜6時間で行うのが好適である。さらに、乾燥を減圧下で行うとより効果的であり、これにより乾燥温度を低く、乾燥時間を短くすることが可能である。
【0046】
未乾燥の材料で成形した場合には、成形品表面に肌荒れが生じたり、物性の低下を招くことがある。
(2)延伸積層体の製造
本発明の延伸積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、上記(1)から得られた未延伸の(多層)積層体を冷却固化後、各成形品をインライン、またはオフラインで60〜160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグおよび圧縮空気等を用い一軸方向、あるいは二軸方向に少なくとも面積比で1.5倍以上延伸を行い、一軸または二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形体を得る方法が挙げられる。延伸倍率としては、面積比で通常1.5倍から50倍、好ましくは1.5倍から20倍である。延伸倍率が1.5倍未満では前述した延伸の効果は得られず、50倍を越えると成形時に破断が生じることがあるなど延伸積層体の強度が低下する傾向となる。インフレーションフィルムを製造する場合は、インフレ同時二軸延伸法、Tダイフィルムの場合はテンター同時二軸延伸法、ロールおよびテンターに因る逐次二軸延伸法等、カップの製造の場合は、金型内で圧縮空気等のみによる圧空成形、プラグと圧縮空気を併用するSPPF成形等、ボトル製造の場合は、積層パイプを縦に延伸後、金型内で圧縮空気等で横に延伸するパイプ延伸法、インジェクション成形により試験管状の有底パリソンを成形し、有底パリソンを金型内でロッドにより縦方向に延伸後、圧縮空気等により横方向に延伸する有底パリソン延伸法等が一般的に用いられる。
【0047】
また、本発明の延伸積層体は必要に応じて、延伸後再加熱、すなわちヒートセットを行うことにより更に耐熱性を向上する(収縮性はやや低下する)ことができる。また、本発明の延伸積層体と別途製造されたフィルムを積層して積層体とすることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例によって限定されるものではない。
[1]積層体、及び延伸フィルムの製造方法
(1)積層体の製造方法
評価用の積層体は、2種3層共押出水冷インフレーションフィルム成形法を用いて製造した。層構成は内層から外層に向かって、各種被着材/接着材/各種被着材とし、各層の厚さはいずれも100μmとした。押出機のダイス幅は内層から外層に向かって45mmφ/30mmφ/45mmφとし、成形速度は5m/分に設定した。以下に、共押出温度を用いた被着材別に示す。
【0049】
ポリエステル系樹脂:270℃
エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物:225℃
ポリアミド系樹脂:240℃
(2)延伸積層体の製造方法
テンター法を用い、下記の装置にて加熱温度70℃で、延伸倍率:3.5×3.5倍の延伸積層体を製造した。
【0050】
標準型二軸延伸機:T.M.Long社製
延伸最大倍率:7.2×7.2倍
延伸速度:7.6〜3000cm/分
加熱方式:熱風循環(室温〜350℃)
延伸ヘッド駆動:油圧シリンダー
延伸可能試料厚み:0.08〜2mm
[2]評価方法
実施例および比較例の評価は以下の方法にて実施した。
(1)接着強度
積層体及び延伸積層体の接着強度(g/10mm)は、JIS K6854に準拠して下記条件で測定した。
【0051】
剥離幅:10mm
剥離状態:Tピール剥離
剥離速度:50mm/分
温度:23℃および60℃
(2)接着耐熱強度
本発明の延伸積層体の耐熱接着性を評価するため、以下のボイル処理を実施し、その後接着強度を測定した。
【0052】
ボイル処理:ポリエチレン製の袋に延伸フィルムを入れて、ヒートシールにより密封し、90℃の熱水中で30分間処理した。その後、23℃の水中で冷却(約30分)しサンプルを得た。
(3)赤外吸収スペクトル法による変性量
接着性重合体組成物の変性量の評価は、以下に示す方法によって行った。
【0053】
得られたペレットをプレス成形(230℃)により、厚さ20μmのフィルム状に成形したサンプルを使用し、FT−IR装置(JASCO FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、本文記載の手順に従い、赤外吸収スペクトル法による変性量を算出した。なお、標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率は0.15、Astは0.144であった。
[3]実施例、及び比較例
(1)実施例1
ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールをソフトセグメントとする、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、該共重合体中のポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%のポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率35.5MPa、密度1.09g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度185.0℃、JIS−D硬度34)100wt%に対して、不飽和カルボン酸無水物(和光純薬工業株式会社製「無水マレイン酸(試薬特級)」)を0.5重量部、ラジカル発生剤(2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン)を0.05重量部の配合割合で配合し、株式会社日本製鋼所製TEX−44型混練機(径44mm、温度190〜220℃)中で溶融混練した後、ペレタイザーを通しペレット化して、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.22、MFR:48g/10分)を得た。
【0054】
接着性重合体組成物として得られたペレットを使用し、上述の積層体の製造方法を用い、被着材として▲1▼ポリエステル系樹脂:ダイヤナイトPA500(比重:1.34g/cm3、固有粘度:0.76dl/g、三菱レーヨン(株)製)、▲2▼エチレン:酢酸ビニル共重合体鹸化物―エバールEP−F101(密度:1.19g/cc、メルトインデックス:1.3、エチレン共重合含量:32モル%(株)クラレ製)、▲3▼ポリアミド系樹脂:ノバテック1020CA2(融点:224℃、三菱化学(株)製)の各々2種3層フィルムを製造した。得られたフィルムを冷却後、23℃、又は60℃の雰囲気下で、接着力を測定した。また上記フィルムを、前述の方法に従って、70℃雰囲気下で縦方向および横方向に3.5×3.5倍に延伸した延伸積層体を製造した。この延伸積層体の接着力、及び、ボイル処理後の接着強度(23℃雰囲気下)を測定した。結果を表1に示す。積層体が剥離せず、接着強度を測定出来なかったものは、表中「剥離不可」と記した。また、接着強度の単位は、g/10mmである。
(2)実施例2
不飽和カルボン酸無水物の配合部数を1重量部としたこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.53、MFR:50g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(3)実施例3
不飽和カルボン酸無水物の配合部数を3重量部としたこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:1.61、MFR:67g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(4)実施例4
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が72重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率22.6MPa、密度1.07g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度160.0℃、JIS−D硬度28)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.28、MFR:55g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(5)比較例1
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が55重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率55.3MPa、密度1.12g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度197.0℃、JIS−D硬度41)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.15、MFR:65g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(6)比較例2
ポリテトラメチレンエーテルグリコールセグメントの含有量が25重量%の飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率267MPa、密度1.22g/cm3、示差走査熱量計による融解ピーク温度210.0℃、JIS−D硬度60)を配合したこと以外は実施例1と同様に溶融混練、ペレット化し、接着性重合体組成物(赤外吸収スペクトル法による変性量:0.02、MFR:80g/10分)を得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(7)比較例3
無水マレイン酸グラフト変性スチレン−ブタジエン共重合体水添物(グラフト率:2重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):22g/10分、スチレン比:30%、水添率:98%)5重量%、粘着付与剤(脂環族系石油樹脂、数平均分子量:710、比重:0.998、軟化点115℃)10重量%、およびエチレン−ブタジエン共重合体(密度:0.860、融点:23℃、MFR(JIS K7210準拠、190℃、21.18N):1g/10分)85重量%の配合割合で事前に50リッターのV型ブレンダーで5分間混合し、二軸押出機PCM30(D=30mmφ、L/D=32、池貝鉄工(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数180rpm、押し出し量11kg/時で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、ペレットを得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
(8)比較例4
無水マレイン酸グラフト変性スチレン−ブタジエン共重合体水添物(グラフト率:2重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):22g/10分、スチレン比:30%、水添率:98%)5重量%、粘着付与剤(脂環族系石油樹脂、数平均分子量:860、比重:0.999、軟化点140℃)60重量%、スチレン−ブタジエン共重合体水添物(スチレン比:20重量%、MFR(JIS K7210準拠、200℃、5Kg):0.3g/10分、水添率:97%)5重量%、エチレン−ブテン共重合体(密度:0.880、融点:72℃、MFR(JIS K7210準拠、190℃、21.18N):1g/10分)30重量%の配合割合で事前に50リッターのV型ブレンダーで5分間混合し、二軸押出機PCM30(D=30mmφ、L/D=32、池貝鉄工(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数180rpm、押し出し量11kg/時で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、ペレットを得た。その後、実施例1と同様に積層体、及び延伸積層体を製造し、接着強度を評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
「結果の評価」
(1)接着性重合体組成物として、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント含有率が本発明の範囲外(55重量%)のポリエステル系エラストマーを用いた比較例1においては、EVOH層との接着強度は延伸前、延伸後ともに劣っている。また、ポリアミド系樹脂層との接着性は延伸前、23℃雰囲気の接着強度は優れているものの、60℃雰囲気、及び延伸後の接着強度が劣っている。
(2)接着性重合体組成物として、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント含有率が本発明の範囲外(25重量%)のポリエステル系エラストマーを用いた比較例2においては、EVOH、ポリアミド系樹脂からなる樹脂層との接着強度が、延伸前、延伸後共に劣っている。
(3)接着性重合体組成物として、変性ポリエステルエラストマーを用いていない比較例3及び比較例4においては、PES系樹脂、EVOHからなる樹脂層との接着強度が、延伸前、延伸後共に劣っている。また、ポリアミド系樹脂層との接着性は延伸前、23℃雰囲気の接着強度は優れているものの、60℃雰囲気、及び延伸後の接着強度は劣っている。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを所定量含有するポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性処理することにより得られた、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、PA系樹脂又はEVOHからなるガスバリア性樹脂層からなる積層体を延伸して得られる延伸積層体は接着強度、特に高温雰囲気下での接着強度が優れている。
Claims (5)
- ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、ポリアミド樹脂又はエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア性樹脂層との積層体を少なくとも1軸方向に面積比で1.5倍〜50倍に延伸処理して得られる延伸積層体。
- 接着性重合体組成物のメルトフローレート(MFR:JIS K7210準拠、230℃、21.18N)が1〜300(g/10分)である請求項1に記載の延伸積層体。
- 積層体がポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれた少なくとも一種からなる基材樹脂層と、ガスバリア性樹脂層とを、接着性重合体組成物層を介して積層したものである請求項1ないし2のいずれか1項に記載の延伸積層体。
- 変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量が、下記式
A1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、基準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
の値で0.01〜15である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の延伸積層体。 - 延伸倍率が、縦及び横の二軸方向に面積比で1.5倍〜50倍の延伸処理を施したものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の延伸積層体。
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