JP2003105498A - 高強度ばねおよびその製造方法 - Google Patents
高強度ばねおよびその製造方法Info
- Publication number
- JP2003105498A JP2003105498A JP2001302329A JP2001302329A JP2003105498A JP 2003105498 A JP2003105498 A JP 2003105498A JP 2001302329 A JP2001302329 A JP 2001302329A JP 2001302329 A JP2001302329 A JP 2001302329A JP 2003105498 A JP2003105498 A JP 2003105498A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- spring
- strength
- mpa
- stress
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P10/00—Technologies related to metal processing
- Y02P10/20—Recycling
Landscapes
- Springs (AREA)
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 高強度と冷間での良好なばね成形性を両立で
きる高強度ばね用鋼線を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.55〜0.65%、
Si:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、P:0.015%以下、
S:0.015%以下に制限するとともに、必要に応じ
てMo:0.05〜2.0%、V:0.05〜0.3%
(ただしMn+Vが0.6%以下)の1種または2種を
含有し、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上であり、表面粗さRmaxが11以下で表面部
分の圧縮残留応力が600MPa以上であり、かつ平均
応力τm=600MPaで振幅応力τa=514MPa
の時に1x107回以上の耐久性をもつことを特徴とす
る高強度ばね。
きる高強度ばね用鋼線を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.55〜0.65%、
Si:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、P:0.015%以下、
S:0.015%以下に制限するとともに、必要に応じ
てMo:0.05〜2.0%、V:0.05〜0.3%
(ただしMn+Vが0.6%以下)の1種または2種を
含有し、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上であり、表面粗さRmaxが11以下で表面部
分の圧縮残留応力が600MPa以上であり、かつ平均
応力τm=600MPaで振幅応力τa=514MPa
の時に1x107回以上の耐久性をもつことを特徴とす
る高強度ばね。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度ばねとその
製造方法に関するものである。
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ばねは、高荷重を繰返し受けることが多
いため、高強度、耐へたり性、耐久性等が求められる。
特に、エンジン用バルブスプリング(弁ばね)などは、
高温下の厳しい環境で酷使されるため、ばねの性能とし
ての疲労強度とへたり特性が特に重要である。自動車エ
ンジンの弁ばねのように、高強度にも拘らず、線径が細
いものに関しては冷間コイリングが一般的で、最近では
懸架ばねのような太い線径のものに対しても冷間コイリ
ングが増加してきている。冷間コイルばねにはJIS
G 4801に示されるような、Si−Mn系やSi−
Cr系ばね鋼を用いたオイルテンパー線が用いられてい
た。またさらなる高強度化を図るため、特開平1−83
644号公報や特開平2−57637号公報のように上
述のベースとなるばね鋼にMo、Vなどの合金元素を添
加してオイルテンパー処理した鋼線が開発されてきた。
いため、高強度、耐へたり性、耐久性等が求められる。
特に、エンジン用バルブスプリング(弁ばね)などは、
高温下の厳しい環境で酷使されるため、ばねの性能とし
ての疲労強度とへたり特性が特に重要である。自動車エ
ンジンの弁ばねのように、高強度にも拘らず、線径が細
いものに関しては冷間コイリングが一般的で、最近では
懸架ばねのような太い線径のものに対しても冷間コイリ
ングが増加してきている。冷間コイルばねにはJIS
G 4801に示されるような、Si−Mn系やSi−
Cr系ばね鋼を用いたオイルテンパー線が用いられてい
た。またさらなる高強度化を図るため、特開平1−83
644号公報や特開平2−57637号公報のように上
述のベースとなるばね鋼にMo、Vなどの合金元素を添
加してオイルテンパー処理した鋼線が開発されてきた。
【0003】一般にばね素材の引張強さまたは硬度を高
くすれば耐疲労性および耐へたり特性は向上することが
知られている。しかし、引張強さが1960MPaを超
える高強度ばねでは非金属介在物を起点とした疲労破壊
や粒界破壊など従来用いられていた低強度の材料では見
られない破壊の出現頻度が高くなる。更に冷間成形を行
うばねでは素材となるオイルテンパー線の加工性(ばね
成形性)が重要な因子となる。すなわち、オイルテンパ
ー線を用いて冷間成形によりコイルばねとする場合、オ
イルテンパー線の引張強さが高くなると破壊ひずみが小
さいため、コイリング中に折損する。
くすれば耐疲労性および耐へたり特性は向上することが
知られている。しかし、引張強さが1960MPaを超
える高強度ばねでは非金属介在物を起点とした疲労破壊
や粒界破壊など従来用いられていた低強度の材料では見
られない破壊の出現頻度が高くなる。更に冷間成形を行
うばねでは素材となるオイルテンパー線の加工性(ばね
成形性)が重要な因子となる。すなわち、オイルテンパ
ー線を用いて冷間成形によりコイルばねとする場合、オ
イルテンパー線の引張強さが高くなると破壊ひずみが小
さいため、コイリング中に折損する。
【0004】高強度と良好なコイリング性を両立させる
ため、特開平4−247824号公報では温間における
コイリングが有効とされている。しかし、一般に用いら
れている冷間コイリング法と比較して生産性、作業性の
面で難があった。また、特開平3−162550号公報
では残留オーステナイトを利用し、コイリングによる加
工誘起変態によってひずみを開放し、折損を防止できる
と主張している。しかし、残留オーステナイト量の増加
に対して引張試験での伸び値は増加するが、ノッチ付き
試験片での曲げ試験における曲げ角度測定結果において
は残留オーステナイト量には影響しないか、むしろ低下
するなどの結果が示されており、その残留オーステナイ
ト量の影響は明確ではなかった。
ため、特開平4−247824号公報では温間における
コイリングが有効とされている。しかし、一般に用いら
れている冷間コイリング法と比較して生産性、作業性の
面で難があった。また、特開平3−162550号公報
では残留オーステナイトを利用し、コイリングによる加
工誘起変態によってひずみを開放し、折損を防止できる
と主張している。しかし、残留オーステナイト量の増加
に対して引張試験での伸び値は増加するが、ノッチ付き
試験片での曲げ試験における曲げ角度測定結果において
は残留オーステナイト量には影響しないか、むしろ低下
するなどの結果が示されており、その残留オーステナイ
ト量の影響は明確ではなかった。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものである。つまり、高強度で耐久性等に優れ、しか
も成形性にも優れた高強度ばね及びその製造方法を提供
することを目的とする。
たものである。つまり、高強度で耐久性等に優れ、しか
も成形性にも優れた高強度ばね及びその製造方法を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者はこの
課題を解決すべく鋭意研究し、疲労破壊の起点となる介
在物の大きさを小さくすると共に粒界を清浄化して粒界
強度を向上させる、疲労特性に影響するミクロ組織の旧
オーステナイト粒径を微細にする、等を総合的に満足す
るばね鋼を採用し、適切な加工を施すことにより優れた
特性のばねが得られることを見出し、本発明を完成させ
たものである。また、更に高い強度を得るためには、窒
化処理を採用すると共に、得られた窒化層の焼き戻し軟
化抵抗を高めるようにした。
課題を解決すべく鋭意研究し、疲労破壊の起点となる介
在物の大きさを小さくすると共に粒界を清浄化して粒界
強度を向上させる、疲労特性に影響するミクロ組織の旧
オーステナイト粒径を微細にする、等を総合的に満足す
るばね鋼を採用し、適切な加工を施すことにより優れた
特性のばねが得られることを見出し、本発明を完成させ
たものである。また、更に高い強度を得るためには、窒
化処理を採用すると共に、得られた窒化層の焼き戻し軟
化抵抗を高めるようにした。
【0007】すなわち、本発明の高強度ばねは、質量%
で、C:0.55〜0.65%、Si:1.2〜2.5
%、Mn:0.3〜0.6%、Cr:0.4〜2.0%
を含み、更にMo:0.05〜2.0%及びV:0.0
5〜0.3%の内の1種または2種を含み、かつMn+
Vが0.6%以下であり、P:0.015%以下、S:
0.015%以下に制限するとともに、残部鉄および不
可避的不純物を含み、非金属介在物の大きさが15μm
以下、引張強度が1960MPa以上を有し、降伏比
(σ0.2/σB)が0.8以上0.9以下、または降伏比
0.9超かつ残留オーステナイト量6%以下であり、更
に旧オーステナイト粒度番号が11番以上である鋼線で
形成され、表面粗さRmaxが11以下で、表面部分の
圧縮残留応力が600MPa以上であり、かつ疲労強度
が、平均応力τm=600MPaで振幅応力τa=51
4MPaの時に1x107回以上の耐久性をもつことを
特徴とする。本発明の高強度ばねは極めて高い疲労強度
をもつ。
で、C:0.55〜0.65%、Si:1.2〜2.5
%、Mn:0.3〜0.6%、Cr:0.4〜2.0%
を含み、更にMo:0.05〜2.0%及びV:0.0
5〜0.3%の内の1種または2種を含み、かつMn+
Vが0.6%以下であり、P:0.015%以下、S:
0.015%以下に制限するとともに、残部鉄および不
可避的不純物を含み、非金属介在物の大きさが15μm
以下、引張強度が1960MPa以上を有し、降伏比
(σ0.2/σB)が0.8以上0.9以下、または降伏比
0.9超かつ残留オーステナイト量6%以下であり、更
に旧オーステナイト粒度番号が11番以上である鋼線で
形成され、表面粗さRmaxが11以下で、表面部分の
圧縮残留応力が600MPa以上であり、かつ疲労強度
が、平均応力τm=600MPaで振幅応力τa=51
4MPaの時に1x107回以上の耐久性をもつことを
特徴とする。本発明の高強度ばねは極めて高い疲労強度
をもつ。
【0008】本発明の高強度ばねは、更に、その表面粗
さRmaxを8.3以下で、表面部分の圧縮残留応力が
1200MPa以上の窒化層をもつものとし、疲労強度
が、平均応力τm=700MPaで振幅応力τa=59
0MPaの時に1x106回以上の耐久性をもつものと
することができる。本発明の高強度ばねの製造方法は、
前記鋼線をコイリングした後、400〜500℃での低
温焼き鈍し、端面研削、ショットピーニング、低温焼き
鈍し、セッチングの処理を順次実施することを特徴とす
る。本発明の高強度ばねの製造方法において、端面研削
の後でかつショットピーニングの前に、デスケール及び
480℃以下でのガス窒化を実施するのが好ましい。
さRmaxを8.3以下で、表面部分の圧縮残留応力が
1200MPa以上の窒化層をもつものとし、疲労強度
が、平均応力τm=700MPaで振幅応力τa=59
0MPaの時に1x106回以上の耐久性をもつものと
することができる。本発明の高強度ばねの製造方法は、
前記鋼線をコイリングした後、400〜500℃での低
温焼き鈍し、端面研削、ショットピーニング、低温焼き
鈍し、セッチングの処理を順次実施することを特徴とす
る。本発明の高強度ばねの製造方法において、端面研削
の後でかつショットピーニングの前に、デスケール及び
480℃以下でのガス窒化を実施するのが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の高強度ばねに使用するば
ね鋼線は、質量%で、C:0.55〜0.65%、S
i:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、更にMo:0.05〜
2.0%及びV:0.05〜0.3%の内の1種または
2種を含み、かつMn+Vが0.6%以下であり、P:
0.015%以下、S:0.015%以下に制限すると
ともに、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上である鋼線である。
ね鋼線は、質量%で、C:0.55〜0.65%、S
i:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、更にMo:0.05〜
2.0%及びV:0.05〜0.3%の内の1種または
2種を含み、かつMn+Vが0.6%以下であり、P:
0.015%以下、S:0.015%以下に制限すると
ともに、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上である鋼線である。
【0010】Cはばね鋼線の基本強度に大きな影響を及
ぼす元素であり、十分な強度を得るために0.55〜
0.65%とした。0.55%未満では焼戻し温度が低
くなるめ、工業的大量生産の手法で高い引張強度を得る
のが困難になり、0.65%を超えると過共析に近くな
り、V、Mo等と結びついて炭化物を生成し易いので上
限を0.65%とした。
ぼす元素であり、十分な強度を得るために0.55〜
0.65%とした。0.55%未満では焼戻し温度が低
くなるめ、工業的大量生産の手法で高い引張強度を得る
のが困難になり、0.65%を超えると過共析に近くな
り、V、Mo等と結びついて炭化物を生成し易いので上
限を0.65%とした。
【0011】Siはばねの強度、硬度と耐へたり性を確
保するために必要な元素であり、少ない場合は必要な強
度、耐へたり性が不足するため、1.2%を下限とし
た。また多量に添加しすぎると、材料を硬化させるだけ
でなく、脆化する。特にオイルテンパー後のコイリング
において折損を生じ易くなる。そこで焼入れ焼戻し後の
脆化を防ぐために2.5%を上限とした。
保するために必要な元素であり、少ない場合は必要な強
度、耐へたり性が不足するため、1.2%を下限とし
た。また多量に添加しすぎると、材料を硬化させるだけ
でなく、脆化する。特にオイルテンパー後のコイリング
において折損を生じ易くなる。そこで焼入れ焼戻し後の
脆化を防ぐために2.5%を上限とした。
【0012】Mnは硬度を十分に得るため、また鋼中に
存在するSをMnSとして固定し、強度低下を抑制する
ために0.3%を下限とする。Mnの上限値を0.6%
としたのはMn量が多いと、伸線前の圧延時にも局部的
な過冷組織を生じ易くなるためである。通常、圧延は局
部的な過冷組織を生じないよう注意深く行われるが、M
nが多量に含まれるとミクロ偏析の影響で突発的に生じ
る可能性が高い。このような過冷組織は引き続き行われ
る伸線工程において断線の原因になる。またMnは伸線
前の皮むき工程(シェービングあるいはピーリング工
程)において加工熱による表層マルテンサイト生成を促
進する。更にMnは残留オーステナイトの残留量に大き
な影響を与える元素で、後述する製造方法で製造した場
合、オイルテンパー後に残留オーステナイトを6%以下
に抑制するために多くを添加できない。本発明において
はSを制限するため、Mn添加量を機械的性質を確保で
きる最低限に制限した。
存在するSをMnSとして固定し、強度低下を抑制する
ために0.3%を下限とする。Mnの上限値を0.6%
としたのはMn量が多いと、伸線前の圧延時にも局部的
な過冷組織を生じ易くなるためである。通常、圧延は局
部的な過冷組織を生じないよう注意深く行われるが、M
nが多量に含まれるとミクロ偏析の影響で突発的に生じ
る可能性が高い。このような過冷組織は引き続き行われ
る伸線工程において断線の原因になる。またMnは伸線
前の皮むき工程(シェービングあるいはピーリング工
程)において加工熱による表層マルテンサイト生成を促
進する。更にMnは残留オーステナイトの残留量に大き
な影響を与える元素で、後述する製造方法で製造した場
合、オイルテンパー後に残留オーステナイトを6%以下
に抑制するために多くを添加できない。本発明において
はSを制限するため、Mn添加量を機械的性質を確保で
きる最低限に制限した。
【0013】Crは焼入れ性を向上させるとともに焼戻
し軟化抵抗を付与する。また窒化を行う鋼の場合、Nと
結びついて窒化物を生成し、鋼を硬化させる。0.4%
未満ではその効果は顕著ではなく、2.0%を超えると
Cr系炭化物を生成し、破壊特性を低下させる。従って
0.4%を下限、2.0%を上限と規定した。Pは鋼を
硬化させるが、更に偏析を生じ、材料を脆化させる。特
に粒界強度を低下させ、衝撃値の低下や水素の侵入によ
り遅れ破壊などを引き起こす。そのため少ない方が良
い。そこで脆化傾向が顕著となる0.015%以下と制
限した。
し軟化抵抗を付与する。また窒化を行う鋼の場合、Nと
結びついて窒化物を生成し、鋼を硬化させる。0.4%
未満ではその効果は顕著ではなく、2.0%を超えると
Cr系炭化物を生成し、破壊特性を低下させる。従って
0.4%を下限、2.0%を上限と規定した。Pは鋼を
硬化させるが、更に偏析を生じ、材料を脆化させる。特
に粒界強度を低下させ、衝撃値の低下や水素の侵入によ
り遅れ破壊などを引き起こす。そのため少ない方が良
い。そこで脆化傾向が顕著となる0.015%以下と制
限した。
【0014】SもPと同様に鋼中に存在すると鋼を脆化
させる。Mnによって極力その影響を小さくできるが、
MnSも介在物の形態をとるため、破壊特性は低下す
る。またMn添加の弊害を極力小さくするためにもSの
含有量を制限し、Mn添加量を最低限に抑制することが
必要である。従って、Sも極力少なくすることが望まし
く、その悪影響が顕著となる0.015%を上限とし
た。
させる。Mnによって極力その影響を小さくできるが、
MnSも介在物の形態をとるため、破壊特性は低下す
る。またMn添加の弊害を極力小さくするためにもSの
含有量を制限し、Mn添加量を最低限に抑制することが
必要である。従って、Sも極力少なくすることが望まし
く、その悪影響が顕著となる0.015%を上限とし
た。
【0015】Vを添加すれば、軟化抵抗を高めることが
できる。特に最近高強度のばねを得る手法としてばねの
窒化処理がしばしば適用され、この場合の窒化温度は3
80〜580℃という高温が適用される。このような高
温熱処理を受けた際の硬さ低下を防ぐ元素としてVは有
効な元素である。しかしその効果はVについては0.0
5%未満では効果がほとんど認められず、0.3%超で
は粗大な未固溶介在物を生成し、靭性を低下させる。ま
たVもMnと同様に残留オーステナイト生成に影響する
元素である。従ってMnとVとの合計添加量が0.6%
を超えると、残留オーステナイト量を6%以下にできな
い。そこでMn+Vを0.6%以下に制限した。
できる。特に最近高強度のばねを得る手法としてばねの
窒化処理がしばしば適用され、この場合の窒化温度は3
80〜580℃という高温が適用される。このような高
温熱処理を受けた際の硬さ低下を防ぐ元素としてVは有
効な元素である。しかしその効果はVについては0.0
5%未満では効果がほとんど認められず、0.3%超で
は粗大な未固溶介在物を生成し、靭性を低下させる。ま
たVもMnと同様に残留オーステナイト生成に影響する
元素である。従ってMnとVとの合計添加量が0.6%
を超えると、残留オーステナイト量を6%以下にできな
い。そこでMn+Vを0.6%以下に制限した。
【0016】Moは焼入れ焼戻し後の軟化抵抗を与える
元素であり、窒化のような高温で処理された鋼の軟化を
抑制し、必要強度を与えることができる。Moが0.0
5%未満であればその効果が小さく、また2.0%超で
は鋼中で炭化物を生成し破壊特性を低下させることがあ
る。そのため、Mo含有量の下限を0.05%、上限を
2.0%とした。
元素であり、窒化のような高温で処理された鋼の軟化を
抑制し、必要強度を与えることができる。Moが0.0
5%未満であればその効果が小さく、また2.0%超で
は鋼中で炭化物を生成し破壊特性を低下させることがあ
る。そのため、Mo含有量の下限を0.05%、上限を
2.0%とした。
【0017】非金属介在物すなわち硬質な酸化物、窒化
物、硫化物については、その大きさが大きくなると疲労
強度に悪影響を及ぼす。本発明で対象とする1960M
Paの高強度では小さな介在物でも破壊起点となる。そ
のため、本発明の強度レベルで悪影響を及ぼさない非金
属介在物の大きさの上限は15μmであるので、これを
上限値として規定した。非金属介在物の測定方法は無作
為の位置から採取したばね鋼線の長手方向断面を光学顕
微鏡に取り付けた画像処理装置を用いて2000mm2
にわたって介在物を観察し、認められた最大の非金属介
在物の円相当径を本発明で規定する非金属介在物の大き
さとするものである。
物、硫化物については、その大きさが大きくなると疲労
強度に悪影響を及ぼす。本発明で対象とする1960M
Paの高強度では小さな介在物でも破壊起点となる。そ
のため、本発明の強度レベルで悪影響を及ぼさない非金
属介在物の大きさの上限は15μmであるので、これを
上限値として規定した。非金属介在物の測定方法は無作
為の位置から採取したばね鋼線の長手方向断面を光学顕
微鏡に取り付けた画像処理装置を用いて2000mm2
にわたって介在物を観察し、認められた最大の非金属介
在物の円相当径を本発明で規定する非金属介在物の大き
さとするものである。
【0018】ばね鋼線の強度であるが、高強度ばねに供
するにはばね鋼線の引張強さを1960MPa以上とし
なければならない。これ以下ではコイリング後のばねの
性能が従来のばね鋼線を用いたものと何ら変わりない性
能となる。ただし前述したとおり、コイリングにおける
ばね成形性の点からは降伏点に留意する必要がある。す
なわち冷間成形では室温付近での塑性変形によってばね
を成形するので、塑性変形の開始応力と破断応力が接近
した材料では破断寸前の応力負荷状態で成形しているこ
となる。このような状況では製造上のわずかな変動や、
打ちきずなどの要因により、破断する確率が非常に高く
なり、コイリング特性が悪くなる。
するにはばね鋼線の引張強さを1960MPa以上とし
なければならない。これ以下ではコイリング後のばねの
性能が従来のばね鋼線を用いたものと何ら変わりない性
能となる。ただし前述したとおり、コイリングにおける
ばね成形性の点からは降伏点に留意する必要がある。す
なわち冷間成形では室温付近での塑性変形によってばね
を成形するので、塑性変形の開始応力と破断応力が接近
した材料では破断寸前の応力負荷状態で成形しているこ
となる。このような状況では製造上のわずかな変動や、
打ちきずなどの要因により、破断する確率が非常に高く
なり、コイリング特性が悪くなる。
【0019】従って、塑性変形開始応力と破断応力の差
が大きい材料の方がコイリング特性が良いと考えられ
る。このような観点から、塑性変形開始応力と破断応力
の差を示す指標として降伏比を用い、引張強さが196
0MPaの場合、降伏比を0.9以下にすれば良いこと
を見出した。ここで降伏比とはばね鋼線のオフセット法
により測定した0.2%耐力(σ0.2)と引張試験にお
ける破断応力(σB)の比(σ0.2/σB)である。逆に
この降伏比が0.8未満になると十分なへたり特性を発
揮できない。そこでへたりの観点から降伏比を0.8以
上とした。ただしこの規定は残留オーステナイト量によ
っても変動するため残留オーステナイト量が6%以下で
は降伏比0.9超でも冷間コイリング可能である。
が大きい材料の方がコイリング特性が良いと考えられ
る。このような観点から、塑性変形開始応力と破断応力
の差を示す指標として降伏比を用い、引張強さが196
0MPaの場合、降伏比を0.9以下にすれば良いこと
を見出した。ここで降伏比とはばね鋼線のオフセット法
により測定した0.2%耐力(σ0.2)と引張試験にお
ける破断応力(σB)の比(σ0.2/σB)である。逆に
この降伏比が0.8未満になると十分なへたり特性を発
揮できない。そこでへたりの観点から降伏比を0.8以
上とした。ただしこの規定は残留オーステナイト量によ
っても変動するため残留オーステナイト量が6%以下で
は降伏比0.9超でも冷間コイリング可能である。
【0020】残留オーステナイト量6%以下とした理由
を述べる。残留オーステナイトは偏析部や旧オーステナ
イト粒界付近に残留することが多い。残留オーステナイ
トは加工誘起変態によってマルテンサイトとなるが、ば
ね成形時に誘起変態すると材料に局部的な高硬度部が生
成され、むしろばねとしてのコイリング特性を低下させ
ることを見出した。また最近のばねはショットピーニン
グやセッチングなど塑性変形による表面強化を行うが、
このように塑性変形を加える工程を複数含む製造工程を
有する場合、早い段階で生じた加工誘起マルテンサイト
が破壊ひずみを低下させ、加工性や使用中のばねの破壊
特性を低下させる。また打ちきず等の工業的に不可避の
変形が導入された場合にもコイリング中に容易に折損す
る。従って、残留オーステナイトを極力低減し、加工誘
起マルテンサイトの生成を抑制することで、加工性を向
上させる。
を述べる。残留オーステナイトは偏析部や旧オーステナ
イト粒界付近に残留することが多い。残留オーステナイ
トは加工誘起変態によってマルテンサイトとなるが、ば
ね成形時に誘起変態すると材料に局部的な高硬度部が生
成され、むしろばねとしてのコイリング特性を低下させ
ることを見出した。また最近のばねはショットピーニン
グやセッチングなど塑性変形による表面強化を行うが、
このように塑性変形を加える工程を複数含む製造工程を
有する場合、早い段階で生じた加工誘起マルテンサイト
が破壊ひずみを低下させ、加工性や使用中のばねの破壊
特性を低下させる。また打ちきず等の工業的に不可避の
変形が導入された場合にもコイリング中に容易に折損す
る。従って、残留オーステナイトを極力低減し、加工誘
起マルテンサイトの生成を抑制することで、加工性を向
上させる。
【0021】残留オーステナイト量を6%以下とするに
は焼入れ時の冷却媒体の温度が60℃以上に上昇しない
ように制御して、焼入れを徹底させることが必要である
が、化学成分の点でも注意する必要がある。
は焼入れ時の冷却媒体の温度が60℃以上に上昇しない
ように制御して、焼入れを徹底させることが必要である
が、化学成分の点でも注意する必要がある。
【0022】オイルテンパー線は伸線材からオーステナ
イト化までの加熱、焼入れ、焼戻しという三つの工程を
連続的に行うことによって製造されるが、残留オーステ
ナイトの発生は合金元素の固容量、焼入れ時の線の温
度、焼戻しの3条件によって左右される。すなわち、合
金元素のうちオーステナイト安定化元素である炭素、M
n、Ni、Moといった元素がオーステナイト中に固溶
すると残留オーステナイトが発生し易くなる。また、合
金元素が添加されるとマルテンサイト変態開始温度(M
s点)、マルテンサイト変態終了温度(Mf点)が低下
し、一般の焼入れ剤による焼入れ温度ではMf点以下に
ならなくなって完全にマルテンサイト化できず、残留オ
ーステナイトが発生し易くなる。
イト化までの加熱、焼入れ、焼戻しという三つの工程を
連続的に行うことによって製造されるが、残留オーステ
ナイトの発生は合金元素の固容量、焼入れ時の線の温
度、焼戻しの3条件によって左右される。すなわち、合
金元素のうちオーステナイト安定化元素である炭素、M
n、Ni、Moといった元素がオーステナイト中に固溶
すると残留オーステナイトが発生し易くなる。また、合
金元素が添加されるとマルテンサイト変態開始温度(M
s点)、マルテンサイト変態終了温度(Mf点)が低下
し、一般の焼入れ剤による焼入れ温度ではMf点以下に
ならなくなって完全にマルテンサイト化できず、残留オ
ーステナイトが発生し易くなる。
【0023】発生した残留オーステナイトはその後の焼
戻し工程で分解するが、高強度を得るために焼戻し温度
が低い場合や焼戻し時間が短い場合には分解が完了せ
ず、鋼線内に残留することになる。合金元素の添加が少
なければ残留オーステナイトの発生量を容易に減少でき
るが、請求項1または3に規定した添加元素は鋼の軟化
抵抗を高め、高強度を得る観点から必要不可欠である。
請求項1または3の化学成分の鋼をオイルテンパー処理
において残留オーステナイトを6%以下とするには焼入
れ温度をなるべく低くし、十分冷却することが重要であ
り、焼入れ時の線の温度を45℃以下とすることにより
良好な結果が得られる。
戻し工程で分解するが、高強度を得るために焼戻し温度
が低い場合や焼戻し時間が短い場合には分解が完了せ
ず、鋼線内に残留することになる。合金元素の添加が少
なければ残留オーステナイトの発生量を容易に減少でき
るが、請求項1または3に規定した添加元素は鋼の軟化
抵抗を高め、高強度を得る観点から必要不可欠である。
請求項1または3の化学成分の鋼をオイルテンパー処理
において残留オーステナイトを6%以下とするには焼入
れ温度をなるべく低くし、十分冷却することが重要であ
り、焼入れ時の線の温度を45℃以下とすることにより
良好な結果が得られる。
【0024】降伏比を適切にすれば残留オーステナイト
量が6%を超えてもコイリング可能であるが、残留オー
ステナイトはばねとして使用中に徐々に加工誘起マルテ
ンサイトとして分解が進行し、その全長を変化させるの
で、ばねのへたりの観点からは極力低い方が好ましい。
量が6%を超えてもコイリング可能であるが、残留オー
ステナイトはばねとして使用中に徐々に加工誘起マルテ
ンサイトとして分解が進行し、その全長を変化させるの
で、ばねのへたりの観点からは極力低い方が好ましい。
【0025】すでに述べたとおり、旧オーステナイト粒
径が小さいほどばねとしての加工性とばね疲労強度の点
で優れる。本発明の高強度ばねにおいては旧オーステナ
イト粒径の粒度番号が11番に達しないと疲労強度の点
で劣る。従って旧オーステナイト粒度番号11番以上の
細粒であることを規定に加えた。
径が小さいほどばねとしての加工性とばね疲労強度の点
で優れる。本発明の高強度ばねにおいては旧オーステナ
イト粒径の粒度番号が11番に達しないと疲労強度の点
で劣る。従って旧オーステナイト粒度番号11番以上の
細粒であることを規定に加えた。
【0026】本発明の高強度ばねは、その表面粗さRm
axが11以下で表面部分の圧縮残留応力が600MP
a以上であり、その疲労強度が、平均応力τm=600
MPaで振幅応力τa=514MPaの時に1x107
回以上の耐久性をもつ。かかる表面粗さ、残留圧縮応力
及び疲労強度は、本発明に係るばね鋼線をコイリングし
た後400〜500℃で低温焼き鈍しを行い、適切なシ
ョットピーニングを行うことにより得られる。
axが11以下で表面部分の圧縮残留応力が600MP
a以上であり、その疲労強度が、平均応力τm=600
MPaで振幅応力τa=514MPaの時に1x107
回以上の耐久性をもつ。かかる表面粗さ、残留圧縮応力
及び疲労強度は、本発明に係るばね鋼線をコイリングし
た後400〜500℃で低温焼き鈍しを行い、適切なシ
ョットピーニングを行うことにより得られる。
【0027】更に、表面粗さRmaxが8.3以下で表
面部分の圧縮残留応力が1200MPa以上の窒化層を
もち、その疲労強度が、平均応力τm=700MPaで
振幅応力τa=590MPaの時に1x106回以上の
耐久性をもつ高強度ばねは、本発明に係るばね鋼線をコ
イリングした後400〜500℃で低温焼き鈍しを行
い、その後480℃以下でガス窒化を実施して表面部を
窒化層とし、その後適切なショットピーニングを行うこ
とにより得られる。
面部分の圧縮残留応力が1200MPa以上の窒化層を
もち、その疲労強度が、平均応力τm=700MPaで
振幅応力τa=590MPaの時に1x106回以上の
耐久性をもつ高強度ばねは、本発明に係るばね鋼線をコ
イリングした後400〜500℃で低温焼き鈍しを行
い、その後480℃以下でガス窒化を実施して表面部を
窒化層とし、その後適切なショットピーニングを行うこ
とにより得られる。
【0028】本発明の高強度ばねの製造方法で実施する
ショットピーニングは、ばねの表面に圧縮残留応力を付
与するもので、これによりばねの耐疲労性(疲労強度)
が著しく向上する。ショットピーニングで使用するショ
ットは、カットワイヤ(CW)でもスチールボール(S
B)でも良く、また、投射方法も空気噴射方式でも遠心
式でも良い。さらに、ショットピーニング工程は多段で
も良い。つまり、大径のショットを用いた第1ショット
ピーニング後に小径のショットを用いた第2ショットピ
ーニングを行っても良い。
ショットピーニングは、ばねの表面に圧縮残留応力を付
与するもので、これによりばねの耐疲労性(疲労強度)
が著しく向上する。ショットピーニングで使用するショ
ットは、カットワイヤ(CW)でもスチールボール(S
B)でも良く、また、投射方法も空気噴射方式でも遠心
式でも良い。さらに、ショットピーニング工程は多段で
も良い。つまり、大径のショットを用いた第1ショット
ピーニング後に小径のショットを用いた第2ショットピ
ーニングを行っても良い。
【0029】本発明の高強度ばねの製造方法で実施する
窒化処理は、ばねの表面層の硬度を上げると共に、圧縮
残留応力が加わって、耐疲労性の向上に有効である。こ
の窒化処理は、例えば従来と同様にアンモニア雰囲気中
に500℃以下で1〜24時間で処理することにより所
定の窒化層を形成できる。得られる窒化層の表面付近の
硬度は、ビッカース硬さ700以上となる。
窒化処理は、ばねの表面層の硬度を上げると共に、圧縮
残留応力が加わって、耐疲労性の向上に有効である。こ
の窒化処理は、例えば従来と同様にアンモニア雰囲気中
に500℃以下で1〜24時間で処理することにより所
定の窒化層を形成できる。得られる窒化層の表面付近の
硬度は、ビッカース硬さ700以上となる。
【0030】荷重方向が一定のコイルばねには、ショッ
トピーニングの後にセッチングを行うのが好ましい。塑
性ひずみを与えることにより、弾性限(比例限)が著し
く向上するからである。更には、この後に低温焼きなま
しを行うことにより、弾性限を更に向上させることがで
きる。これはひずみ時効によるものであり、耐へたり性
を向上させるのに好ましい。通常、150〜300℃で
低温焼きなましを行う。また、200〜400℃の温間
セッチングを行うことにより、格別に耐へたり性を向上
させることができ、負荷される応力の大きい自動車の懸
架コイルばねやエンジン用バルブ・スプリングなどには
好ましい。
トピーニングの後にセッチングを行うのが好ましい。塑
性ひずみを与えることにより、弾性限(比例限)が著し
く向上するからである。更には、この後に低温焼きなま
しを行うことにより、弾性限を更に向上させることがで
きる。これはひずみ時効によるものであり、耐へたり性
を向上させるのに好ましい。通常、150〜300℃で
低温焼きなましを行う。また、200〜400℃の温間
セッチングを行うことにより、格別に耐へたり性を向上
させることができ、負荷される応力の大きい自動車の懸
架コイルばねやエンジン用バルブ・スプリングなどには
好ましい。
【0031】
【実施例】(ばね鋼)表1に本発明に係るばね鋼の化学
成分とともに比較例の化学成分を示す。本発明に係るば
ね鋼例および比較例は表1に示す化学成分に溶製され、
熱間圧延によりφ8mmの線材とした後、パテンチング
−皮剥き−伸線−焼鈍−オイルテンパーの各処理を施し
てφ3.2mmのオイルテンパー線を作成した。発明例
を含めて伸線過程で断線等の不具合は発生していない。
成分とともに比較例の化学成分を示す。本発明に係るば
ね鋼例および比較例は表1に示す化学成分に溶製され、
熱間圧延によりφ8mmの線材とした後、パテンチング
−皮剥き−伸線−焼鈍−オイルテンパーの各処理を施し
てφ3.2mmのオイルテンパー線を作成した。発明例
を含めて伸線過程で断線等の不具合は発生していない。
【0032】表2に発明に係るばね鋼および比較例のオ
イルテンパー線の熱処理条件および機械的性質等を示
す。発明に係るばね鋼のオイルテンパー線の強度は耐疲
労特性および耐へたり特性の観点から引張り強さを19
60MPa以上とした。比較例も一部を除き、基本的に
は同一強度としたが、化学成分等が本発明に係るばね鋼
の規定範囲外であったり、旧オーステナイト粒径などを
規定外とした。化学成分が規定範囲内のものであっても
熱処理条件の変更により旧オーステナイト粒度番号を変
化させた。
イルテンパー線の熱処理条件および機械的性質等を示
す。発明に係るばね鋼のオイルテンパー線の強度は耐疲
労特性および耐へたり特性の観点から引張り強さを19
60MPa以上とした。比較例も一部を除き、基本的に
は同一強度としたが、化学成分等が本発明に係るばね鋼
の規定範囲外であったり、旧オーステナイト粒径などを
規定外とした。化学成分が規定範囲内のものであっても
熱処理条件の変更により旧オーステナイト粒度番号を変
化させた。
【0033】本発明に係るばね鋼はV、Mo等の未固溶
炭化物を避けるため、従来より加熱温度を高めた。通常
未固溶炭化物は加熱温度を高めると減少するが、そのこ
とは同時にオーステナイト粒径を粗大化させることにも
なる。そこでオーステナイト粒径を微細にするためにそ
の加熱時間は短いレベルとし、未溶解炭化物を避けつ
つ、旧オーステナイト粒径を微細に維持するという、高
度な制御を行った。更に残留オーステナイト量を抑制す
るために焼入れ温度を45℃以下とした。更に、焼戻し
温度を高めることにより、発生した残留オーステナイト
の分解を促進し、その量を6%以下に制御した。また、
ばね成形にあたって折損を避けるため、降伏比も0.8
〜0.9程度に調整した。一方、比較例は化学成分が規
定外の鋼線に加え、化学成分が本発明に係るばね鋼の規
定範囲内であっても残留オーステナイト量や旧オーステ
ナイト粒径番号など鋼線のミクロ組織や強度の点で規定
範囲外の例である。
炭化物を避けるため、従来より加熱温度を高めた。通常
未固溶炭化物は加熱温度を高めると減少するが、そのこ
とは同時にオーステナイト粒径を粗大化させることにも
なる。そこでオーステナイト粒径を微細にするためにそ
の加熱時間は短いレベルとし、未溶解炭化物を避けつ
つ、旧オーステナイト粒径を微細に維持するという、高
度な制御を行った。更に残留オーステナイト量を抑制す
るために焼入れ温度を45℃以下とした。更に、焼戻し
温度を高めることにより、発生した残留オーステナイト
の分解を促進し、その量を6%以下に制御した。また、
ばね成形にあたって折損を避けるため、降伏比も0.8
〜0.9程度に調整した。一方、比較例は化学成分が規
定外の鋼線に加え、化学成分が本発明に係るばね鋼の規
定範囲内であっても残留オーステナイト量や旧オーステ
ナイト粒径番号など鋼線のミクロ組織や強度の点で規定
範囲外の例である。
【0034】オイルテンパー線は高強度になると、切り
欠き感受性が高まり、ばね成形加工時に微細なきずを起
点として折損を生じ易くなる。このばね成形性を評価す
る手法として、ばね成形前に先立ち、高合金製チップを
オイルテンパー線に押し付けて深さ25μmのノッチを
つけ、次にノッチに引張応力が負荷されるようにノッチ
の反対側に半径6.5mmのポンチで3点曲げ加工を与
え、折損までの曲げ角度を測定するノッチ曲げ試験を行
った。その概略は図1に示すとおりで、折損までの曲げ
角度θを測定した。
欠き感受性が高まり、ばね成形加工時に微細なきずを起
点として折損を生じ易くなる。このばね成形性を評価す
る手法として、ばね成形前に先立ち、高合金製チップを
オイルテンパー線に押し付けて深さ25μmのノッチを
つけ、次にノッチに引張応力が負荷されるようにノッチ
の反対側に半径6.5mmのポンチで3点曲げ加工を与
え、折損までの曲げ角度を測定するノッチ曲げ試験を行
った。その概略は図1に示すとおりで、折損までの曲げ
角度θを測定した。
【0035】残留オーステナイト量はX線回折装置を利
用し、そのピークの積分強度の大きさから定量した質量
%で示す。この方法では質量%で残留オーステナイト量
2%以上あれば精度良く測定できるとされている。旧オ
ーステナイト粒度番号はJISに準拠し、鏡面研磨した
鋼線断面を7視野において測定し、その平均を各実施例
の旧オーステナイト粒度番号とした。
用し、そのピークの積分強度の大きさから定量した質量
%で示す。この方法では質量%で残留オーステナイト量
2%以上あれば精度良く測定できるとされている。旧オ
ーステナイト粒度番号はJISに準拠し、鏡面研磨した
鋼線断面を7視野において測定し、その平均を各実施例
の旧オーステナイト粒度番号とした。
【0036】表2にはこれらの関係から各成分系におけ
るオイルテンパー処理条件、降伏比、残留オーステナイ
ト量、旧オーステナイト粒度番号、ばね成形性、疲労特
性および耐へたり性を示す。表2において成形性はばね
成形時の折損確率を表したもので、○:0.001%以
下、×:0.001%を超える場合である。更に疲労特
性は5×107回の繰り返し回数での平均負荷応力68
6MPaからの応力振幅でのばね折損の有無で表し、振
幅450MPa以上の場合、その評価を○:良、450
MPa以下の場合×:不良で示した。本発明に係るオイ
ルテンパー線は1960MPa以上の引張強さにもかか
わらず、前述のようなノッチ曲げ試験により優れた加工
性を有することがわかる。
るオイルテンパー処理条件、降伏比、残留オーステナイ
ト量、旧オーステナイト粒度番号、ばね成形性、疲労特
性および耐へたり性を示す。表2において成形性はばね
成形時の折損確率を表したもので、○:0.001%以
下、×:0.001%を超える場合である。更に疲労特
性は5×107回の繰り返し回数での平均負荷応力68
6MPaからの応力振幅でのばね折損の有無で表し、振
幅450MPa以上の場合、その評価を○:良、450
MPa以下の場合×:不良で示した。本発明に係るオイ
ルテンパー線は1960MPa以上の引張強さにもかか
わらず、前述のようなノッチ曲げ試験により優れた加工
性を有することがわかる。
【0037】また表3に評価に用いたばねの諸元を示
す。2種類のばねにより、ばね成形性の評価と耐疲労特
性および耐へたり特性を評価した。ばね仕様1は耐疲労
特性および耐へたり性の評価用であり、ばね仕様2は冷
間でのばね成形性評価用である。表2にその評価結果を
示す。ばね仕様1のばねは窒化処理とショットピーニン
グを施して試験に供した。従来鋼によるオイルテンパー
線はばね成形性に優れるものは疲労強度および耐へたり
性に劣るのに対し、本発明に係るばね鋼であるオイルテ
ンパー線はばね成形時の折損がなく、耐疲労特性、耐へ
たり特性の点においても比較鋼と同等以上であった。特
にオーステナイト粒径が微細なばねは容易にコイルばね
に加工できただけでなく、ばねとしての疲労強度に優れ
ていた。
す。2種類のばねにより、ばね成形性の評価と耐疲労特
性および耐へたり特性を評価した。ばね仕様1は耐疲労
特性および耐へたり性の評価用であり、ばね仕様2は冷
間でのばね成形性評価用である。表2にその評価結果を
示す。ばね仕様1のばねは窒化処理とショットピーニン
グを施して試験に供した。従来鋼によるオイルテンパー
線はばね成形性に優れるものは疲労強度および耐へたり
性に劣るのに対し、本発明に係るばね鋼であるオイルテ
ンパー線はばね成形時の折損がなく、耐疲労特性、耐へ
たり特性の点においても比較鋼と同等以上であった。特
にオーステナイト粒径が微細なばねは容易にコイルばね
に加工できただけでなく、ばねとしての疲労強度に優れ
ていた。
【0038】焼入れ温度を低くしてかなり工業的に無理
な方法で作成した鋼線や化学成分が本発明に係るばね鋼
の規定内であっても規定を超える大きさの非金属介在物
を含む鋼線や旧オーステナイト粒度番号が規定より小さ
く粒径が大きな鋼線を用いた場合、ばね加工は可能であ
ってもばねとしての疲労特性が劣った。
な方法で作成した鋼線や化学成分が本発明に係るばね鋼
の規定内であっても規定を超える大きさの非金属介在物
を含む鋼線や旧オーステナイト粒度番号が規定より小さ
く粒径が大きな鋼線を用いた場合、ばね加工は可能であ
ってもばねとしての疲労特性が劣った。
【0039】図2に旧オーステナイト粒度番号と疲労特
性評価試験において5×107回の時間強さにおける応
力振幅の関係を示した。実施例1〜6(発明例)と本発
明に係るばね鋼の規定された化学成分で旧オーステナイ
ト粒度を故意に大きくした実施例13〜15(比較例)
の疲労強度評価結果を示した。疲労強度に関して旧オー
ステナイト粒度番号は影響することがわかる。その粒度
番号が11番を超えるとほぼ同等の疲労強度となり、そ
の効果が飽和することがわかる。また降伏比や残留オー
ステナイト量が規定外の場合にはコイリング時の折損確
率が高く、工業的製造が不可能と判定された。
性評価試験において5×107回の時間強さにおける応
力振幅の関係を示した。実施例1〜6(発明例)と本発
明に係るばね鋼の規定された化学成分で旧オーステナイ
ト粒度を故意に大きくした実施例13〜15(比較例)
の疲労強度評価結果を示した。疲労強度に関して旧オー
ステナイト粒度番号は影響することがわかる。その粒度
番号が11番を超えるとほぼ同等の疲労強度となり、そ
の効果が飽和することがわかる。また降伏比や残留オー
ステナイト量が規定外の場合にはコイリング時の折損確
率が高く、工業的製造が不可能と判定された。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】(高強度ばね)本実施例では、発明鋼種と
して合金成分が中央値に近い値のもので、炭素0.64
質量%(以下、%は特に明記されていない限り質量%を
意味する。)、珪素2.02%、マンガン0.30%、
燐0.010%、硫黄0.005%、クロム0.86
%、モリブデン0.10%、バナジウム0.10%、残
部は実質的に鉄とからなる組成のものを用いた。このば
ね用鋼材を使用し、疵取加工、熱間圧延、皮むき、焼き
鈍しの各処理した後、冷間伸線し、オイルテンパー処理
を行って直径3.2mmの本発明に係るばね用鋼線を得
た。この本発明に係るばね用鋼線の引張強さσBは21
48MPaであった。
して合金成分が中央値に近い値のもので、炭素0.64
質量%(以下、%は特に明記されていない限り質量%を
意味する。)、珪素2.02%、マンガン0.30%、
燐0.010%、硫黄0.005%、クロム0.86
%、モリブデン0.10%、バナジウム0.10%、残
部は実質的に鉄とからなる組成のものを用いた。このば
ね用鋼材を使用し、疵取加工、熱間圧延、皮むき、焼き
鈍しの各処理した後、冷間伸線し、オイルテンパー処理
を行って直径3.2mmの本発明に係るばね用鋼線を得
た。この本発明に係るばね用鋼線の引張強さσBは21
48MPaであった。
【0044】なお、比較例のばね用鋼線として、炭素
0.64%、珪素1.46%、マンガン0.72%、燐
0.010%、硫黄0.006%、クロム0.63、バ
ナジウム0.12%、残部は実質的に鉄とからなる合金
鋼のばね用鋼材を使用した。そして、同様に、疵取加
工、熱間圧延、皮むき、焼き鈍しの各処理した後、冷間
伸線し、オイルテンパー処理を行って直径3.2mmの
比較例のばね用鋼線(オイルテンパー線(SWOSC−
VHV)を得た。この比較例のばね用鋼線の引張強さσ
Bは2144MPaであった。
0.64%、珪素1.46%、マンガン0.72%、燐
0.010%、硫黄0.006%、クロム0.63、バ
ナジウム0.12%、残部は実質的に鉄とからなる合金
鋼のばね用鋼材を使用した。そして、同様に、疵取加
工、熱間圧延、皮むき、焼き鈍しの各処理した後、冷間
伸線し、オイルテンパー処理を行って直径3.2mmの
比較例のばね用鋼線(オイルテンパー線(SWOSC−
VHV)を得た。この比較例のばね用鋼線の引張強さσ
Bは2144MPaであった。
【0045】次に、これら2種類のばね用鋼線を用い、
冷間コイリング成形を行い、線径φ3.2mm、コイル
中心径φ20.0mm(コイル外径φ23.2mm)、
総巻数6.0巻、有効巻数4.0巻のコイルばねを得
た。得られた2種類のコイルばねを表4に示す加工条件
で加工しNo.11〜No.17及びの7種類の本発明
の高強度ばねと、No.18の1種類の比較例のばねを
製造した。具体的には、まず表4に示す低温焼き鈍し条
件で、炉内で30分行った。その後、両座面を研削し、
自由長47.0mmのコイルばねとした。
冷間コイリング成形を行い、線径φ3.2mm、コイル
中心径φ20.0mm(コイル外径φ23.2mm)、
総巻数6.0巻、有効巻数4.0巻のコイルばねを得
た。得られた2種類のコイルばねを表4に示す加工条件
で加工しNo.11〜No.17及びの7種類の本発明
の高強度ばねと、No.18の1種類の比較例のばねを
製造した。具体的には、まず表4に示す低温焼き鈍し条
件で、炉内で30分行った。その後、両座面を研削し、
自由長47.0mmのコイルばねとした。
【0046】
【表4】
【0047】次に、No.11〜No.15の5種類の
本発明の高強度ばねではガス窒化処理を行った。窒化処
理はアンモニア雰囲気中で465℃あるいは475℃で
3時間処理した。これにより、ばね表面部分に窒化層を
形成した。なお、No.16及びNo.17の2種類の
本発明の高強度ばねと、No.18の比較例のばねにつ
いては窒化処理を行わなかった。その後、表4に示すシ
ョット及び処理時間でショットピーニング処理を行っ
た。ショットピーニング処理の後、225℃で15分以
上の均熱の低温焼き鈍し、225℃、1350MPa、
10秒間のセッチングを行い、No.11〜No.17
の7種類の本発明の高強度ばねと、No.18の1種類
の比較例のばねを製造した。
本発明の高強度ばねではガス窒化処理を行った。窒化処
理はアンモニア雰囲気中で465℃あるいは475℃で
3時間処理した。これにより、ばね表面部分に窒化層を
形成した。なお、No.16及びNo.17の2種類の
本発明の高強度ばねと、No.18の比較例のばねにつ
いては窒化処理を行わなかった。その後、表4に示すシ
ョット及び処理時間でショットピーニング処理を行っ
た。ショットピーニング処理の後、225℃で15分以
上の均熱の低温焼き鈍し、225℃、1350MPa、
10秒間のセッチングを行い、No.11〜No.17
の7種類の本発明の高強度ばねと、No.18の1種類
の比較例のばねを製造した。
【0048】得られた8種類の高強度ばねの評価を行っ
た。評価はばねの表面粗さの測定、表面部分の硬さの測
定、X線による残留応力の測定、及び疲労強度を測定し
た。表面粗さ、表面部分の硬さ及びX線による残留応力
の測定結果を表5に、疲労強度の測定条件と測定結果を
表6に示す。
た。評価はばねの表面粗さの測定、表面部分の硬さの測
定、X線による残留応力の測定、及び疲労強度を測定し
た。表面粗さ、表面部分の硬さ及びX線による残留応力
の測定結果を表5に、疲労強度の測定条件と測定結果を
表6に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】硬さの測定は試験に供したばねを切断し切
断面上での硬さをヴィカース硬度計で測定した。残留応
力はX線によるSIN2ψ−側傾法で測定した。疲労強
度はSN法で求めた。表5の疲労強度の700±590
の数値は、平均応力τmが700MPaで振幅応力τa
が590MPaであることを示し、106、107は圧縮
応力が作用した回数を示し、○印は8個の試験ばね全て
が破壊しなかった回数を示す。
断面上での硬さをヴィカース硬度計で測定した。残留応
力はX線によるSIN2ψ−側傾法で測定した。疲労強
度はSN法で求めた。表5の疲労強度の700±590
の数値は、平均応力τmが700MPaで振幅応力τa
が590MPaであることを示し、106、107は圧縮
応力が作用した回数を示し、○印は8個の試験ばね全て
が破壊しなかった回数を示す。
【0052】本発明の実施例となるNo.11〜No.
17の7種類のばねはNo.18の比較例のばねに比較
し、疲労強度が極めて高い。特にNo.11〜No.1
5の窒化処理を行ったばねは700±500MPaの繰
り返し荷重に対して107回近い回数に耐えることがで
きる。この高い疲労強度は窒化処理とショットブラスト
処理により表面粗さをRmaxで8.3以下に抑え、1
200MPaと高い圧縮残留応力を付与した結果である
と考えられる。
17の7種類のばねはNo.18の比較例のばねに比較
し、疲労強度が極めて高い。特にNo.11〜No.1
5の窒化処理を行ったばねは700±500MPaの繰
り返し荷重に対して107回近い回数に耐えることがで
きる。この高い疲労強度は窒化処理とショットブラスト
処理により表面粗さをRmaxで8.3以下に抑え、1
200MPaと高い圧縮残留応力を付与した結果である
と考えられる。
【0053】No.11のばねの疲労強度はNo.12
のばねの疲労強度に比較し極めて高い。この高い疲労強
度は高い最大圧縮残留応力に対応している。No.14
のばねの疲労強度から窒化処理温度が465℃とNo.
11のばねの窒化温度に対して10℃低い場合でも高い
疲労強度が得られることがわかる。
のばねの疲労強度に比較し極めて高い。この高い疲労強
度は高い最大圧縮残留応力に対応している。No.14
のばねの疲労強度から窒化処理温度が465℃とNo.
11のばねの窒化温度に対して10℃低い場合でも高い
疲労強度が得られることがわかる。
【0054】
【発明の効果】本発明の高強度ばねは疲労強度が極めて
高い。これは冷間成形ができる1960MPa以上の高
強度オイルテンパー線を用いていること、及びばねの表
面粗さRmaxが11以下で表面部分の圧縮残留応力が
600MPa以上であることによる。本発明の高強度ば
ねは、SN法による1x107回の疲労強度が、平均応
力τm=600MPaとしたときに、振幅応力τa≧5
10MPa以上となる。
高い。これは冷間成形ができる1960MPa以上の高
強度オイルテンパー線を用いていること、及びばねの表
面粗さRmaxが11以下で表面部分の圧縮残留応力が
600MPa以上であることによる。本発明の高強度ば
ねは、SN法による1x107回の疲労強度が、平均応
力τm=600MPaとしたときに、振幅応力τa≧5
10MPa以上となる。
【図1】ノッチ曲げ試験方法を示す図である。
【図2】疲労強度と旧オーステナイト粒度番号の関係を
示す図である。
示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
F16F 1/02 F16F 1/02 A
B
1/06 1/06 A
(72)発明者 近藤 覚
愛知県愛知郡東郷町大字春木字蛭池1番地
株式会社東郷製作所内
(72)発明者 森 元秀
愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動
車株式会社内
(72)発明者 河本 剛
愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動
車株式会社内
Fターム(参考) 3J059 AB11 AD05 BA01 BB01 BC02
EA08
4K032 AA06 AA11 AA12 AA16 AA19
AA20 AA27 AA29 AA32 AA36
BA02
4K042 AA01 BA01 BA05 CA06 CA08
CA13 DA03 DA06 DC02
Claims (4)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.55〜0.65%、
Si:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、更にMo:0.05〜
2.0%及びV:0.05〜0.3%の内の1種または
2種を含み、かつMn+Vが0.6%以下であり、P:
0.015%以下、S:0.015%以下に制限すると
ともに、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上である鋼線で形成され、表面粗さRmaxが1
1以下で、表面部分の圧縮残留応力が600MPa以上
であり、かつ疲労強度が、平均応力τm=600MPa
で振幅応力τa=514MPaの時に1x107回以上
の耐久性をもつことを特徴とする高強度ばね。 - 【請求項2】 前記表面粗さRmaxが8.3以下で表
面部分の圧縮残留応力が1200MPa以上の窒化層を
もち、かつ前記疲労強度が、平均応力τm=700MP
aで振幅応力τa=590MPaの時に1x106回以
上の耐久性をもつ請求項1記載の高強度ばね。 - 【請求項3】 質量%で、C:0.55〜0.65%、
Si:1.2〜2.5%、Mn:0.3〜0.6%、C
r:0.4〜2.0%を含み、更にMo:0.05〜
2.0%及びV:0.05〜0.3%の内の1種または
2種を含み、かつMn+Vが0.6%以下であり、P:
0.015%以下、S:0.015%以下に制限すると
ともに、残部鉄および不可避的不純物を含み、非金属介
在物の大きさが15μm以下、引張強度が1960MP
a以上を有し、降伏比(σ0.2/σB)が0.8以上0.
9以下、または降伏比0.9超かつ残留オーステナイト
量6%以下であり、更に旧オーステナイト粒度番号が1
1番以上である鋼線をコイリングした後、400〜50
0℃での低温焼き鈍し、端面研削、ショットピーニン
グ、低温焼き鈍し、セッチングの処理を順次実施するこ
とを特徴とする高強度ばねの製造方法。 - 【請求項4】前記端面研削の後でかつ前記ショットピー
ニングの前に、デスケール及び480℃以下でのガス窒
化を実施する請求項3に記載の高強度ばねの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001302329A JP2003105498A (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 高強度ばねおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001302329A JP2003105498A (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 高強度ばねおよびその製造方法 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004310031A Division JP2005120479A (ja) | 2004-10-25 | 2004-10-25 | 高強度ばねおよびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003105498A true JP2003105498A (ja) | 2003-04-09 |
Family
ID=19122591
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001302329A Pending JP2003105498A (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 高強度ばねおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003105498A (ja) |
Cited By (17)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004055226A1 (ja) * | 2002-12-13 | 2004-07-01 | Sumitomo (Sei) Steel Wire Corp. | ばね用鋼線 |
JP2004346424A (ja) * | 2003-04-28 | 2004-12-09 | Sintokogio Ltd | コイルばねの製造方法及びコイルばね |
JP2005344199A (ja) * | 2004-06-07 | 2005-12-15 | Kobe Steel Ltd | 冷間曲げ加工用鋼材 |
EP1712653A1 (en) * | 2005-04-11 | 2006-10-18 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho | Steel wire for cold-formed spring excellent in corrosion resistance and method for producing the same |
JP2006349080A (ja) * | 2005-06-17 | 2006-12-28 | Jtekt Corp | トーションバーの製造方法 |
JP2007254765A (ja) * | 2006-03-20 | 2007-10-04 | National Institute For Materials Science | 耐水素脆化特性および靭延性に優れた高強度構造用鋼とその製造方法 |
JP2010163689A (ja) * | 2005-08-05 | 2010-07-29 | Sumitomo Electric Ind Ltd | オイルテンパー線とその製造方法、及びばね |
JP2011149036A (ja) * | 2010-01-19 | 2011-08-04 | Chuo Spring Co Ltd | 自動車懸架用コイルばねの製造方法及び自動車懸架用コイルばね |
WO2012014672A1 (ja) * | 2010-07-26 | 2012-02-02 | 中央発條株式会社 | ばねの製造方法及び通電加熱装置 |
CN102426068A (zh) * | 2011-09-14 | 2012-04-25 | 华东理工大学 | 一种表面薄膜残余应力的预测方法 |
JP2012117092A (ja) * | 2010-11-29 | 2012-06-21 | Sumitomo Denko Steel Wire Kk | 耐へたり性と耐久性に優れたバネ及びその製造方法 |
JP2012526948A (ja) * | 2009-05-05 | 2012-11-01 | ジェオブルッグ・アーゲー | 運動体の運動エネルギーを吸収する装置 |
WO2013058138A1 (ja) * | 2011-10-20 | 2013-04-25 | ジャパンマテックス株式会社 | 緩衝機能付きハトメ金具及びその製造方法 |
US8789817B2 (en) | 2009-09-29 | 2014-07-29 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Spring steel and spring having superior corrosion fatigue strength |
US9068615B2 (en) | 2011-01-06 | 2015-06-30 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Spring having excellent corrosion fatigue strength |
CN112449654A (zh) * | 2019-07-01 | 2021-03-05 | 住友电气工业株式会社 | 钢线和弹簧 |
CN114651082A (zh) * | 2019-10-16 | 2022-06-21 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
-
2001
- 2001-09-28 JP JP2001302329A patent/JP2003105498A/ja active Pending
Cited By (26)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004055226A1 (ja) * | 2002-12-13 | 2004-07-01 | Sumitomo (Sei) Steel Wire Corp. | ばね用鋼線 |
JP4674843B2 (ja) * | 2003-04-28 | 2011-04-20 | 新東工業株式会社 | コイルばねの製造方法 |
JP2004346424A (ja) * | 2003-04-28 | 2004-12-09 | Sintokogio Ltd | コイルばねの製造方法及びコイルばね |
JP2005344199A (ja) * | 2004-06-07 | 2005-12-15 | Kobe Steel Ltd | 冷間曲げ加工用鋼材 |
JP4608242B2 (ja) * | 2004-06-07 | 2011-01-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 冷間曲げ加工用鋼材 |
EP1712653A1 (en) * | 2005-04-11 | 2006-10-18 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho | Steel wire for cold-formed spring excellent in corrosion resistance and method for producing the same |
US8043444B2 (en) | 2005-04-11 | 2011-10-25 | Kobe Steel, Ltd. | Steel wire for cold-formed spring excellent in corrosion resistance and method for producing the same |
CN1847438B (zh) * | 2005-04-11 | 2011-04-20 | 株式会社神户制钢所 | 耐腐蚀性优异的冷成形弹簧的钢丝和生产它的方法 |
JP2006349080A (ja) * | 2005-06-17 | 2006-12-28 | Jtekt Corp | トーションバーの製造方法 |
JP2010163689A (ja) * | 2005-08-05 | 2010-07-29 | Sumitomo Electric Ind Ltd | オイルテンパー線とその製造方法、及びばね |
JP2007254765A (ja) * | 2006-03-20 | 2007-10-04 | National Institute For Materials Science | 耐水素脆化特性および靭延性に優れた高強度構造用鋼とその製造方法 |
JP4657128B2 (ja) * | 2006-03-20 | 2011-03-23 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 耐水素脆化特性および靭延性に優れた高強度構造用鋼とその製造方法 |
JP2012526948A (ja) * | 2009-05-05 | 2012-11-01 | ジェオブルッグ・アーゲー | 運動体の運動エネルギーを吸収する装置 |
US8789817B2 (en) | 2009-09-29 | 2014-07-29 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Spring steel and spring having superior corrosion fatigue strength |
US8936236B2 (en) | 2009-09-29 | 2015-01-20 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Coil spring for automobile suspension and method of manufacturing the same |
JP2011149036A (ja) * | 2010-01-19 | 2011-08-04 | Chuo Spring Co Ltd | 自動車懸架用コイルばねの製造方法及び自動車懸架用コイルばね |
WO2012014672A1 (ja) * | 2010-07-26 | 2012-02-02 | 中央発條株式会社 | ばねの製造方法及び通電加熱装置 |
US9623475B2 (en) | 2010-07-26 | 2017-04-18 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Method for producing spring |
JP2012117092A (ja) * | 2010-11-29 | 2012-06-21 | Sumitomo Denko Steel Wire Kk | 耐へたり性と耐久性に優れたバネ及びその製造方法 |
US9068615B2 (en) | 2011-01-06 | 2015-06-30 | Chuo Hatsujo Kabushiki Kaisha | Spring having excellent corrosion fatigue strength |
CN102426068A (zh) * | 2011-09-14 | 2012-04-25 | 华东理工大学 | 一种表面薄膜残余应力的预测方法 |
WO2013058138A1 (ja) * | 2011-10-20 | 2013-04-25 | ジャパンマテックス株式会社 | 緩衝機能付きハトメ金具及びその製造方法 |
CN112449654A (zh) * | 2019-07-01 | 2021-03-05 | 住友电气工业株式会社 | 钢线和弹簧 |
CN112449654B (zh) * | 2019-07-01 | 2022-07-08 | 住友电气工业株式会社 | 钢线和弹簧 |
CN114651082A (zh) * | 2019-10-16 | 2022-06-21 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
CN114651082B (zh) * | 2019-10-16 | 2023-02-17 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100336339B1 (ko) | 고강도 스프링용 강선 및 그 제조 방법 | |
KR100839726B1 (ko) | 코일링성과 내수소취화 특성이 우수한 고강도 스프링 강선 | |
EP2374904B1 (en) | Steel wire material for spring and its producing method | |
JP5624503B2 (ja) | ばねおよびその製造方法 | |
KR100711370B1 (ko) | 가공성이 우수한 고강도 스프링용 강선 및 고강도 스프링 | |
JP4980496B2 (ja) | 高強度ばね用伸線熱処理鋼線および高強度ばね用伸線前鋼線 | |
EP2453033A1 (en) | Steel wire for high-strength spring | |
JP2003105498A (ja) | 高強度ばねおよびその製造方法 | |
EP1801255A1 (en) | Cold formable spring steel wire excellent in cold cutting capability and fatigue properties and manufacturing process thereof | |
JP2010163689A (ja) | オイルテンパー線とその製造方法、及びばね | |
KR20150126699A (ko) | 표면 경화용 강재와 표면 경화강 부품 | |
KR20150013325A (ko) | 고피로강도 판 스프링용 강철 및 판 스프링 부품 | |
JP2009052144A (ja) | 高強度ばね | |
JP4478072B2 (ja) | 高強度ばね用鋼 | |
JP2007063584A (ja) | オイルテンパー線およびその製造方法 | |
JP2004315968A (ja) | 加工性に優れた高強度ばね用鋼線および高強度ばね | |
JPH11246941A (ja) | 高強度弁ばね及びその製造方法 | |
JP5941439B2 (ja) | コイルばね、およびその製造方法 | |
JP5990428B2 (ja) | 転動疲労特性に優れた軸受用鋼材およびその製造方法 | |
JP2021167444A (ja) | 圧縮コイルばね | |
JP2003003241A (ja) | 高強度ばね用鋼線 | |
KR20100077250A (ko) | 고강도 스프링강 및 스프링강선 | |
JP2005120479A (ja) | 高強度ばねおよびその製造方法 | |
JP2003193197A (ja) | 高強度コイルばねおよびその製造方法 | |
JP3872364B2 (ja) | 冷間成形コイルばね用オイルテンパー線の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040805 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040827 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041026 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050107 |