JP2002322541A - 材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加工方法 - Google Patents
材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加工方法Info
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Abstract
最小限であり、工業的に実用可能な材質均一性に優れた
高成形性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加
工方法を提供すること。 【解決手段】 重量%で、C≦0.1%、Mo:0.0
5〜0.6%、Ti:0.02〜0.10%を含み、実
質的にフェライト組織に、原子比でTi/Mo≧0.1
を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出
してなる。
Description
に使用される部材に適した、材質均一性に優れた高成形
性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加工方法
に関する。
いて、燃費向上を目的に車体の軽量化が検討されてい
る。この車体軽量化の検討の一つとして、使用鋼板の高
強度化が推進されている。従来より、高強度鋼板とし
て、C,Mn,Siの固溶強化と、Ti,Nbの析出強
化を複合した製造コストの低い鋼板が用いられてきた
が、Cを0.12〜0.15%含有するため、鋼中にセ
メンタイトが多く析出し延性が乏しく、自動車用部材の
ような難加工材ではプレス割れを起こしていた。
高張力熱延鋼板として、特開平6−172924号公報
にはSiで炭化物析出を抑制するとともに、Cr添加量
制限で低温変態相生成を抑制し、組織をベイナイティッ
クフェライト単相とし、さらにNi,Moを固溶強化元
素として用いたTi添加高伸びフランジ加工性高張力熱
延鋼板が開示されている。しかしながら、この技術の根
幹をなすラス間に炭化物析出をともなわないラス状組織
であるベイニティックフェライト組織では、Ti添加量
を炭窒化物形成限界以下に制限していることから、Ti
と結合しないCをベイニティックフェライト中に過飽和
に固溶させなければならない。このため、炭化物析出駆
動力が高い状態であることから添加成分の微妙な増減や
熱延条件に対して炭化物析出の感受性が著しく強く、通
常起こりうる幅方向の温度変動に対しても炭化物が容易
に析出するようになり、幅方向で部分的に加工性が急激
に劣化するのが現状である。
Cと結合するTi,Nb量をCに対して原子比で0.5
以上添加し、固溶Ti,Nbで熱間圧延後のフェライト
核生成を抑制することで組織をアシキュラーフェライト
とし、さらにCr,Moの固溶強化で強度を調整した高
伸びフランジ性熱延鋼板が開示されている。しかしなが
ら、この技術におけるアシキュラーフェライト組織の熱
延鋼板は843MPaの強度で伸びが15%であり、伸
びが高いことが要求される張り出し成形に対しては延性
が未だ十分ではなく、このような特性の熱延鋼板に対し
実際に張り出し成形を行うと割れが生じてしまう。さら
に、ただ単に極低炭素鋼にTi、Nbを添加し、固溶T
i、Nb量を十分確保してもアシキュラーフェライト組
織は得られないように、Ti、Nbによる組織のアシキ
ュラー化効果は極めて小さく、この技術では多少の製造
条件の変動でアシキュラーフェライトが得られなくなっ
てしまう。
b,V,Moの微細化効果で実現する方法が特開平11
−152544号公報に開示されている。しかし、この
技術では粒径を2μm以下にすることから、伸びの劣化
は避けられずやはり張り出し成形で割れが生じてしま
う。また、粒径があまりにも微細なため、粒成長性が極
めて大きく、通常起こりうる幅方向の熱延条件の変動で
2μmを超える粒が部分的に生じて混粒組織となり、加
工性が急激に劣化するのが現状である。
は、ポリゴナルフェライトに対するパーライトや低温変
態相の面積比が15%以下でポリゴナルフェライト中に
TiCが分散した組織を有し、かつ、Moの固溶強化で
強度調整を行った伸びフランジ性が優れた高強度熱延鋼
板が開示されている。しかしながら、この鋼板では、T
iCの析出温度が狭範囲なため、幅方向センターでは加
工性が良好でも、エッジでは規定の強度を下回り、延性
が著しく劣化するのが現状である。
は、加工性に優れた高張力熱延鋼板が提案されているも
のの、コイル内の引張特性の変動が大きかったり、通常
起こりうる製造条件の変動で加工性が劣化してしまう
等、工業生産に適さないのは明らかである。
であって、コイル内材質変動、特に幅方向の材質変動が
最小限であり、工業的に実用可能な材質均一性に優れた
高成形性高張力熱延鋼板ならびにその製造方法および加
工方法を提供することを目的とする。
では解決されない熱延ランナウトテーブルからコイラに
かけてのセンターとエッジの冷却履歴の違いによる幅方
向の材質変化や圧延速度の変化で生じるランナウトテー
ブル上のストリップの冷却速度変化などが原因となるコ
イル内の長手方向の材質変動を小さくするために鋭意研
究を重ねた結果、上記従来技術に示すラス状組織でもベ
イニティックフェライトでも2μm以下の微細粒でもな
く、図1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で示すフェ
ライト単相組織をある範囲のTi/Mo原子比をもつ微
細析出物で強化した鋼により材質変動が低減されること
を見出した。また、このような組織とすることにより、
従来不可欠であったSiの添加を極力低減することが可
能となり、表面性状を悪化させるSiに起因する赤スケ
ールの生成も抑制することができることも見出した。
イトと呼称し、以下の説明におけるフェライトも図1に
示す組織を指すものとする。
たものであって、以下の(1)〜(7)を提供する。
0.05〜0.6%、Ti:0.02〜0.10%を含
み、実質的にフェライト組織に、原子比でTi/Mo≧
0.1を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分
散析出してなることを特徴とする材質均一性に優れた高
成形性高張力熱延鋼板。
0.5%、Mn:1〜2%、P≦0.06%、S≦0.
005%、Al≦0.1%、N≦0.006%、Cr:
0.04〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、T
i:0.02〜0.10%、Nb≦0.08%を含み、
残部が実質的にFeからなり、実質的にフェライト組織
に、原子比でTi/Mo≧0.1を満たす範囲でTiお
よびMoを含む炭化物が分散析出してなることを特徴と
する材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板。
0.5%を満たすことを特徴とする材質均一性に優れた
高成形性高張力熱延鋼板。
いて、C、Ti、Moを以下の(1)式を満足するよう
に含有することを特徴とする請求項1から請求項3のい
ずれか1項に記載の材質均一性に優れた高成形性高張力
熱延鋼板。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …( 1) ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の重
量%を表す。
いて、表面に溶融亜鉛系めっき皮膜を有することを特徴
とする材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板。
分組成を有する鋼をオーステナイト単相域の温度に加熱
後、熱間圧延を行うにあたり、880℃以上で仕上圧延
を完了し、550〜700℃で巻取ることを特徴とする
材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板の製造方
法。
鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材に
プレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工す
る第2の工程とを有する高成形性高張力熱延鋼板の加工
方法。
は、自動車用部品、特に自動車用足廻り部材である高成
形性高張力熱延鋼板の加工方法。
記載の鋼板により製造された自動車用部品。
図1のようなフェライト組織が形成され、セメンタイト
等の製造熱履歴で形態が変化する粗大Fe炭化物の析出
がないかもしくは最小限に抑制されること、および
(2)Moの作用によりランナウトテーブル上のγ→α
変態が遅延され、広い温度域で安定的に析出するTi、
Moを含む微細炭化物が巻取り時に進行するフェライト
変態とともに析出するようになることにより、ランナウ
トテーブル上の温度変化やコイル内変動が生じても組織
変動が抑えられ、材質均一性に優れた鋼板が得られる。
また、実質的にフェライト組織にTiとMoとを含む微
細な炭化物が分散析出するため、高成形性でかつ高強度
が実現される。
望の特性を得るために一定量以上必要であったSiを極
力低減することが可能となり、表面性状を劣化させるS
iに起因する赤スケールの生成を抑制することができ
る。
明する。本発明に係る熱延鋼板は、重量%で、C≦0.
1%、Mo:0.05〜0.6%、Ti:0.02〜
0.10%を含み、実質的にフェライト組織に、原子比
でTi/Mo≧0.1を満たす範囲でTiおよびMoを
含む炭化物が分散析出してなるものである。
したのは、複合組織では2種以上の組織形成を制御しな
ければならず、材質均一性を実現するのが困難であるの
に対し、フェライト単相では複数の組織を同時に制御す
る困難性を解消することができるからである。たとえ
ば、Fe炭化物はストリップやコイルの熱履歴により形
態が変化し、これが多量に含まれていると材質変動の原
因となる。
ていればよいのであって、完全に100%フェライトに
なっている必要はなく、具体的には断面組織観察などに
よる体積%で95%以上がフェライトとなっていればよ
い。好ましくは98%以上である。また、微細析出物以
外の粗大なFe炭化物は体積%で1%未満であれば本発
明の効果を損なうことがない。
常ランナウト冷却時に起こるγ→α変態を巻取りまで遅
延させる必要がある。そこで、本発明ではMoを添加
し、フェライト変態を遅延させる。Moは同時にパーラ
イト変態も遅延させ、したがって粗大なFe炭化物の析
出を抑制することができる。
る本発明の熱延鋼板では、微細析出物により強度を担保
する。一般にMoはMo2C炭化物を形成し、析出強化
に寄与するが、Mo2Cの析出速度は遅いため、Mo単
独では550MPa以上の高強度が実現しにくいうえ
に、巻取り後のコイル冷却時に析出するため、冷却速度
の速いコイル外周部と中央部とでは強度が変化してしま
う。そこで、巻取り前後までMo炭化物の析出を促進す
るため、Tiを添加するとともに、微細炭化物中に含ま
れるTiとMoとの比、Ti/Moを適切な範囲とする
ことにより、析出物の析出速度を適切な値に制御する。
これにより析出物の析出速度を制御することができる理
由は必ずしも明確ではないが、析出速度の速いTi炭化
物がMoを巻き込んで析出するためと思われる。微細炭
化物中のTi/Moの値が0.1未満では、拡散の遅い
Moの含有率が高く、微細炭化物析出速度が遅くなり、
材質変動を有効に低減することができない。したがっ
て、Ti/Moの値を0.1以上とした。
を担うのに必要不可欠な元素である。しかし、含有量が
0.1%を超えると粗大なFe炭化物の生成や、島状マ
ルテンサイトの生成により延性が劣化する。そのため、
C量の上限を0.1%とした。Fe炭化物の生成量を低
減する観点からは0.06%以下が望ましい。一方、5
40MPa以上の強度を維持するためには0.02%以
上含有させることが望ましい。
ェライト変態を抑制し、組織形成に対するランナウトテ
ーブル上の熱履歴の影響を低減し、同時にパーライト変
態も遅延させ、粗大なFe炭化物の析出を抑制する。ま
た、Tiとともに微細な炭化物を形成し、鋼の高強度化
に寄与する。一方では後述するように、Siと合わさり
表面性状に影響を与える。Moが0.05%未満では、
冷却中の粗大なFe炭化物の析出を抑制することができ
ず、また0.6%を超えるとベイナイト変態点やマルテ
ンサイト変態点が上昇し、マトリックスがフェライトか
ら低温変態相に変化してしまう。したがって、Mo含有
量を0.05〜0.6%とした。望ましくは0.5%以
下である。
化物を形成して鋼の強度を担う。しかし、0.02%未
満では微細析出物量が少なくなり、高強度を実現するこ
とができなくなり、一方、0.10%を超えると変態点
の著しい上昇を招くとともに、結晶粒微細化により粗大
なFe炭化物の析出を促進してしまう。したがって、T
i含有量を0.02〜0.10%とした。
いれば所望の効果を奏することができるが、より好まし
い成分組成は、重量%で、C≦0.06%、Si≦0.
5%、Mn:1〜2%、P≦0.06%、S≦0.00
5%、Al≦0.1%、N≦0.006%、Cr:0.
04〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:
0.02〜0.10%、Nb≦0.08%を含み、残部
が実質的にFeからなるものである。また、Si+Mo
≦0.5%を満たすことがより好ましい。以下に上記
C、Mo、Ti以外の成分について説明する。
ながら、Siは赤スケールを生成し、表面性状を劣化さ
せてしまう。したがって、Si量は0.5%以下が好ま
しい。また、本発明で添加されるMoによりスケール地
鉄界面にMoが濃化し、赤スケール部の鋼板表面の凹凸
が助長されるため、0.2%以下がより好ましい。
ルによる表面状態への影響との関係を実験結果に基づい
て説明する。重量%でC≒0.05%、P≒0.01
%、S≒0.002%、Al≒0.04%、N≒0.0
03%を含み、Si:0.05〜0.65%、Mo:
0.05〜0.65%まで変化させた鋼を溶製し、熱間
圧延を行った。仕上温度は890℃、巻取温度は600
℃とした。酸洗後の表面性状を目視で評価した結果を図
2に示す。表面に赤スケールに起因する圧延方向にのび
た模様が認められないものを◎、若干認められるが実用
上問題ないものを○、模様が著しく実用上問題となる場
合を×とした。Siが0.5%以下、Moが0.7%以
下およびSi+Mo≦0.7の領域で実用上問題がな
く、さらにSi+Moが0.5%以下のとき良好な表面
性状であることが分かる。また、Si量が0.2%以下
であれば、Mo量が上限の0.5%以下のときに実用上
問題ないことがわかる。以上より、表面性状を良好にす
る観点から、Si量が0.2%以下が好ましく、また、
Mo量との関係においてSi+Mo≦0.5とすること
が特に好ましい。
満では延性の劣化と材質変動をもたらすパーライトの生
成を抑制できず、また、540MPa以上の強度が得難
くなる。一方、2%を超えると硬質低延性の低温変態相
が生成する。したがって、Mn量は1〜2%が好まし
い。
れると粒界への著しい偏析を招き延性が劣化するので、
0.06%以下が好ましい。
質特性に有効に作用するMn、Ti量を低減させ、また
延性も低下させることから、0.005%以下が好まし
い。
量が0.1%を超えると鋼の延性低下を招くことから、
0.1%以下が好ましい。
超えると延性を低下させる粗大な窒化物形成の原因とな
ることから、0.006%以下が好ましい。
果が顕著となる。圧延後フェライト変態がランナウトテ
ーブル上で著しく進行した場合、ストリップの幅方向の
温度変動がそのままフェライト変態タイミング(ランナ
ウトテーブル上の位置)のずれを招き、変態後のフェラ
イト組織に影響を与える。すなわち、幅方向の中央部と
端部とでは異なる熱履歴をたどるため組織が変動してし
まう。CrはMoとともに添加されると、仕上圧延直後
の高温域において幅方向中央部のフェライト変態を遅延
させて、組織の均一化を促進させる働きがある。しかし
ながら、Cr量が0.04%未満ではこのような効果を
十分に発揮することができず、一方、0.5%を超えて
過剰に添加するとMnと同様に低延性の低温変態相が生
成してしまう。したがって、Cr含有量は0.04〜
0.5%が好ましい。
的で添加する。しかし、0.08%を超えると結晶粒の
極度の微細化をもたらし、均一伸びが低下する傾向があ
ることから0.08%以下が好ましい。
+(Mo/96)}≦1.5 鋼中のCと(Ti+Mo)との原子数比が0.5〜1.
5となるように、C、Ti、Moの含有量を制御する
と、TiとMoとを含む炭化物が微細に析出しやすくな
る。その結果、高成形性でかつ高強度の実現が容易とな
り、材質均一性も向上する。したがって、(C/12)
/{(Ti/48)+(Mo/96)}の値が以下の
(1)式を満たすことが望ましい。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …( 1) ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の重
量%を表す。上記(C/12)/{(Ti/48)+
(Mo/96)}の値は、0.8〜1.3を満たすこと
がより望ましい。
記以外の元素を微量に添加してもよく、また他の不可避
的な不純物元素が含有されていてもよい。
ましい製造条件について述べる。ここでは、上記成分組
成を有する鋼をオーステナイト単相域の温度に加熱後、
熱間圧延するにあたり、880℃以上で仕上圧延を完了
し、550〜700℃で巻取る。
℃未満では幅方向の温度変化で加工γの再結晶率が変化
してしまい、変態組織に変動が認められるようになるこ
とから、仕上圧延温度を880℃以上とした。
ンタイトの析出を抑制することから、巻取り温度をTi
とMoを含む炭化物の析出しやすい550〜700℃と
した。さらに望ましくは600〜660℃である。ま
た、本発明鋼では、Moによりフェライト変態が適度に
抑制されているため、コイル内の巻取温度変動によらず
フェライト変態が鋼板の幅方向で同時に起こり、巻取り
時のフェライト変態直後にTiとMoを含む炭化物が析
出する。このため、強度、延性ともに安定する。
亜鉛系めっき皮膜を形成し、溶融亜鉛系めっき鋼板とし
たものも含む。本発明の高張力熱延鋼板は良好な加工性
を有することから、溶融亜鉛系めっき皮膜を形成しても
良好な加工性を維持することができる。ここで、溶融亜
鉛系めっきとは、亜鉛および亜鉛を主体とした溶融めっ
きであり、亜鉛の他にAl、Cr等の合金元素を含んだ
ものを含む。このような溶融亜鉛系めっきを施した本発
明の高張力熱延鋼板は、めっきままでもめっき後合金化
処理を行ってもかまわない。めっき前焼鈍温度について
は、450℃未満ではめっきがつかず、750℃超えで
は強度低下が生じやすい。そのため、焼鈍温度は450
℃以上、750℃以下が好ましい。
酸洗材でもその特性に差違はない。調質圧延についても
通常行われているものであれば特に規定はない。また、
上記溶融亜鉛めっきは酸洗後でも黒皮ままでも問題はな
い。亜鉛めっきについては電気めっきも可能である。化
成処理についても特に問題はない。鋳造後直ちにもしく
は補熱を目的とした加熱を施した後にそのまま熱間圧延
を行う直送圧延を行っても本発明の効果に影響はない。
さらに、粗圧延後に仕上圧延前で、圧延材を加熱して
も、粗圧延後、圧延材を接合して行う連続圧延を行って
も、さらには圧延材の加熱と連続圧延を同時に行っても
本発明の効果は損なわれない。
れ、コイル内材質変動も少ないのでこれをプレス成形し
た場合、その特質が活かされ、自動車用部材、特にサス
ペンションアーム等の足廻り部材のようなプレス時の断
面形状が複雑な部材を良好な品質で製造することがで
き、特に、プレス成形品の軽量化に資することができ
る。以下に具体的に、本発明に係る熱延鋼板の加工方
法、換言すればプレス成形品の製造方法について説明す
る。
の作業フローの一例を示すフローチャートである。この
作業フローは、通常、本発明に係る鋼板を製造すること
またはその製造された鋼板を例えばコイルにして目的場
所に搬送することを前工程としており、まず、本発明に
係る熱延鋼板を準備することから始まる(S0、S
1)。この鋼板に対してプレス加工を施す前に、鋼板に
対して前処理的な加工を施すこともあれば(S2)、裁
断機により所定の寸法や形状に加工することもある(S
3)。前者のS2の工程では、例えば鋼板の幅方向の所
定箇所に切り込みや穿孔を行い、引き続くプレス加工を
終えた段階またはそのプレス加工の過程で、所定の寸法
および形状のプレス成形品または被プレス加工部材とし
て切り離すことができるようにしておく。後者のS3の
工程では、最終的なプレス成形品の寸法、形状等を予め
考慮して、所定の寸法および形状の鋼板部材に加工(し
たがって裁断)するようにしておく。その後、S2およ
びS3の工程を経由した部材には、プレス加工が施さ
れ、最終的に目的とする寸法・形状の所望のプレス成形
品が製造される(S4)。このプレス加工は、通常は多
段階で行われ、3段階以上7段階以下であることが多
い。
由した部材に対してさらに所定の寸法や形状に裁断する
工程を含む場合もある。この場合の「裁断」という作業
は、例えば、少なくともプレス加工の過程で、S2およ
びS3の工程を経由した部材の端部のような最終的なプ
レス成形品には不要部分を切り離す作業であっても構わ
ないし、また、S2の工程で設けられた鋼板の幅方向の
切り込みや穿孔に沿って被プレス加工部材を切り離す作
業であっても構わない。
部材、プレス成形品を、機械的にあるいは作業員による
搬送作業である場合がある。
に応じて次工程に送られる。次工程としては、例えば、
プレス成形品にさらに機械加工を施し、寸法や形状を調
整する工程、プレス成形品を所定場所に搬送し、格納す
る工程、プレス成形品に表面処理を施す工程、プレス成
形品を用いて自動車のような目的物を組み立てる組立工
程がある。
置と鋼板、部材、プレス成形品の流れとの関係を示すブ
ロック図である。この図においては、本発明に係る熱延
鋼板はコイル状で準備されており、プレス加工機により
プレス成形品が製造される。プレス加工機は多段プレス
を行う機種のものであるが、本件発明はこれに限定され
ない。
処理機械を設置する場合(図5の(a))もあれば、設
置しない場合(図5の(b))もある。裁断機が設置さ
れる場合には、コイルから供給される長尺の本発明に係
る鋼板から、必要な寸法又は形状の部材を裁断し、この
部材がプレス加工機においてプレス加工され、所定のプ
レス成形品となる。鋼板の幅方向に切り欠きや穿孔を施
す前処理機械が設置される場合には、プレス加工機にお
いてその切り欠きや穿孔に沿って裁断が行われても構わ
ない。前処理機械を設置しない場合には、プレス加工機
において鋼板がプレス加工される過程で、裁断が行わ
れ、最終的に所定の寸法、形状を有するプレス成形品が
製造される。なお、図5における「裁断」の意味は、図
4における裁断と同じである。
原材料として表面性状と延性に優れ、コイル内材質変動
も少ない本発明に係る鋼板を使用しているので、良好で
均一な品質を有するに至り、かかるプレス成型品の製造
歩留も高い。このような特長は、プレス成形品が自動車
用部材、特にサスペンションアーム等の足廻り部材であ
る場合に特に有用である。
を溶製し、加熱温度1250℃、仕上圧延温度約890
℃、巻取温度約650℃で熱間圧延を行い、板厚約3.
2mmの鋼板を作製した。得られた鋼板の長手方向中央
部よりJIS5号試験片を採取し、幅方向中央部と端部
から65mmの位置の引張特性およびその変化を調査し
た。引張特性として幅方向中央部の引張強度(TS)お
よび伸び(El)を求め、引張特性の変化については、
幅方向中央部と端部の材質差の絶対値で評価した。ま
た、表面性状については、長手方向に延びた赤スケール
起因の模様がほとんど認められないものを◎、多少認め
られるが実用上問題ないものを○、模様が著しく発生し
たものを×とし、目視判定した。さらに、鋼板から作製
した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)によって析出物
を観察するとともに析出物中のTi、Moの組成をTE
Mに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(ED
X)による分析から把握し、析出物のTi/Mo(原子
比)の値を求めた。これらの結果を表1に示す。表1
中、No.1〜No.5は主にMo量を変化させたも
の、No.6〜No.10は主にMo、Cr量を変化さ
せたもの、No.11〜No.15はTi量を変化させ
たもの、No.16〜No.20は主にMo量を変化さ
せたものである。また、表1のA値は、上記(1)式の
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}の
値を示す。
No.2〜No.4では良好な材質安定性および表面性
状を得ることができた。また、Si+Moが0.5以下
である本発明例のNo.2およびNo.3で極めて良好
な表面性状を得ることができた。なお、図3に、No.
3の鋼板の透過型電子顕微鏡写真を示す。この写真か
ら、微細なTiおよびMoを含む炭化物がフェライト単
相組織中に均一に分散していることがわかる。これに対
して、Moが無添加の比較例のNo.1は組成がフェラ
イト+パーライトであり、材質差がΔTSで30MPa
以上、ΔElで2%以上と大きく、材質変動が抑えられ
ていない。また、Mo添加量が多く、Ti/Moが0.
1未満の比較例のNo.5では材質変動は小さいが延性
低下が大きい。
のNo.7〜No.9では良好な材質安定性および極め
て良好な表面性状を得ることができた。これに対して、
Moが無添加の比較例のNo.6では組成がフェライト
+パーライトであり、材質差がΔTSで30MPa以
上、ΔElで2%以上と材質変動が大きいことがわか
る。Cr添加量が多い比較例のNo.10では低温変態
相の生成が抑制できなかったため、延性の低下が著し
い。なお、これらは全てSi+Moが0.5%以下であ
ることから表面性状が極めて良好であった。
量の増大とともに析出強化により強度が上昇しており、
本発明例のNo.12〜No.14では良好な材質安定
性および表面性状を得ることができた。これに対して、
Tiが無添加の比較例のNo.11ではパーライトおよ
び粒界のセメンタイトが析出し、低強度であるにも関わ
らず延性がNo.12と同程度であり、延性の低下が認
められ、かつ、材質変動も大きかった。Ti量が多い比
較例のNo.15では部分的に結晶粒が微細化し組織が
混粒であることから材質変動が大きい。
明例のNo.17〜No.19では良好な材質安定性お
よび表面性状を得ることができた。特にSi+Moが
0.5%以下であるNo.17では表面性状が極めて良
好であった。これに対して、Mo添加されていない比較
例のNo.16では材質変動が大きく、Mo添加量が多
い比較例のNo.20では延性が低下していた。
し、表2に示す条件で熱間圧延を行った。板厚は3.6
mmとした。得られた熱延板を酸洗し、長手方向中央部
よりJIS5号試験片を採取し、幅方向中央部と端部の
引張特性の変化を調査した。幅方向中央部と端部の引張
特性の差の絶対値を引張特性とともに表2に示す。ま
た、実施例1と同様にして把握した析出物のTi/Mo
(原子比)の値も表2に併記する。
5は仕上温度を変化させた例であるが、仕上温度が88
0℃以上で材質安定性が極めて良好になることが確認さ
れる。No.26〜No.30は巻取温度を変化させた
例であり、その中で巻取温度が550℃〜700℃の間
にあるNo.27〜No.29は極めて良好な材質安定
性を示し、伸びも大きかった。これに対して、巻き取り
温度が550〜700℃から外れるNo.26,30
は、No.27〜No.29より材質安定性が劣ってい
た。No.31〜No.35は仕上温度と巻取温度とを
変化させたものであるが、仕上温度が880℃以上、か
つ、巻取温度が550℃〜700℃であるNo.32〜
34で極めて良好な材質均一性を示していた。
/Moの値が0.1未満であり、その中でNo.36,
37では仕上温度が880℃以上かつ巻取温度が550
℃〜700℃であるにもかかわらず材質安定性に劣って
いた。また、No.38は巻取温度も500℃と低く、
組織がベイナイトとなり、材質安定性、特に強度の安定
性に劣っていた。
00℃、巻取温度650℃で熱間圧延を行い、板厚約
3.2mmの鋼板を作製した。得られた鋼板を酸洗後、
合金化溶融亜鉛めっきした。得られた鋼板から作製した
薄膜について透過型電子顕微鏡(TEM)によって析出
物を観察するとともに析出物中のTi、Moの組成をT
EMに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(ED
X)による分析から把握し、析出物のTi/Mo(原子
比)の値を求めた。また、マトリックスの組織観察を行
った。さらに、得られた鋼板の長手方向中央部よりJI
S5号試験片を採取し、幅方向中央部と端部から65m
mの位置の引張特性およびその変化を調査した。引張特
性として幅方向中央部の引張強度(TS)および伸び
(El)を求め、引張特性の変化については、幅方向中
央部と端部の材質差の絶対値で評価した。これらの結果
を表3に示す。
発明例であるNo.39は、溶融亜鉛系めっきを行って
も加工性は良好であり、幅方向の材質変動も小さいこと
が確認された。これに対し、比較例のNo.40は加工
性が低く、幅方向の材質変動が大きかった。
鋼の成分組成を適切に制御し、実質的にフェライト組織
に特定組成のTiおよびMoを含む炭化物を分散析出し
た構成としたので、セメンタイト等の製造熱履歴で形態
が変化する粗大Fe炭化物の析出を最小限に抑えること
ができ、またMoの作用によりランナウトテーブル上の
γ→α変態が遅延され、広い温度域で安定的に析出する
Ti、Moを含む微細炭化物が巻取り時に進行するフェ
ライト変態とともに析出するようになるので、ランナウ
トテーブル上の温度変化やコイル内変動が生じても組織
変動が抑えられ、材質均一性に優れた熱延鋼板を得るこ
とができる。また、実質的にフェライト組織にTiとM
oとを含む微細な炭化物が分散析出するため、高成形性
でかつ高強度の熱延鋼板を得ることができる。
電子顕微鏡(SEM)写真。
の関係を示すグラフ。
透過型電子顕微鏡写真。
の一例を示すフローチャート。
材、プレス成形品の流れとの関係を示すブロック図。
Claims (9)
- 【請求項1】 重量%で、C≦0.1%、Mo:0.0
5〜0.6%、Ti:0.02〜0.10%を含み、実
質的にフェライト組織に、原子比でTi/Mo≧0.1
を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出
してなることを特徴とする材質均一性に優れた高成形性
高張力熱延鋼板。 - 【請求項2】 重量%で、C≦0.06%、Si≦0.
5%、Mn:1〜2%、P≦0.06%、S≦0.00
5%、Al≦0.1%、N≦0.006%、Cr:0.
04〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:
0.02〜0.10%、Nb≦0.08%を含み、残部
が実質的にFeからなり、実質的にフェライト組織に、
原子比でTi/Mo≧0.1を満たす範囲でTiおよび
Moを含む炭化物が分散析出してなることを特徴とする
材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板。 - 【請求項3】 Si+Mo≦0.5%を満たすことを特
徴とする請求項2に記載の材質均一性に優れた高成形性
高張力熱延鋼板。 - 【請求項4】 C、Ti、Moを以下の(1)式を満足
するように含有することを特徴とする請求項1から請求
項3のいずれか1項に記載の材質均一性に優れた高成形
性高張力熱延鋼板。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …( 1) ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の重
量%を表す。 - 【請求項5】 表面に溶融亜鉛系めっき皮膜を有するこ
とを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に
記載の材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板。 - 【請求項6】 請求項1から請求項4のいずれかの成分
組成を有する鋼をオーステナイト単相域の温度に加熱
後、熱間圧延を行うにあたり、880℃以上で仕上圧延
を完了し、550〜700℃で巻取ることを特徴とする
材質均一性に優れた高成形性高張力熱延鋼板の製造方
法。 - 【請求項7】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
の鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材
にプレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工
する第2の工程とを有する高成形性高張力熱延鋼板の加
工方法。 - 【請求項8】 前記プレス成形品は、自動車用部品であ
る請求項7に記載の高成形性高張力熱延鋼板の加工方
法。 - 【請求項9】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
の鋼板により製造された自動車用部品。
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