JP2000327701A - 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び固形製剤 - Google Patents

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び固形製剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 濡れ性を改善することができ、従来同様の添
加量、配合組成においても固形製剤の崩壊時間を有意に
短縮することができる低置換度ヒドロキシプロピルセル
ロース及びこれを含む固形製剤を提供する。 【解決手段】 グルコースユニット当たりのヒドロキシ
プロポキシル基の平均置換モル数が、0.04〜0.1
である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びこれ
を含む固形製剤による。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、濡れ性を改善する
ことができ、従来同様の添加量、配合組成においても固
形製剤の崩壊時間を有意に短縮することができる低置換
度ヒドロキシプロピルセルロース及びこれを含む固形製
剤に関する。
【0002】
【従来の技術】低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
は、医薬品添加剤として多くの公定書に収載され、崩壊
剤として汎用されるものの一つである。これらの崩壊剤
は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの固形製剤の崩壊時
間を短縮させる目的で添加される。
【0003】錠剤の崩壊は、薬物のBioavailabilityを
規定する重要な因子の一つである。消化管からの薬物の
吸収は、錠剤の崩壊、薬物の消化管液への溶解に引き続
いて起こるとされている。近年、薬物の有効利用及び同
等性の評価の観点から、錠剤などの固形製剤の溶出試験
が見直されており、溶出の速い製剤は、有効性あるいは
同等性が担保されているとの考え方がとられている。従
って、錠剤に関して言えば、より速く崩壊するものが求
められている。
【0004】崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロ
ースカルシウム、架橋カルボキシメチルセルロースナト
リウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの
セルロース誘導体、カルボキシメチルスターチナトリウ
ム、部分α化デンプンなどのデンプン誘導体、架橋ポリ
ビニルピロピドンなどの合成高分子が広く使用されてい
る。これら崩壊剤の選択は、個々の崩壊剤の崩壊力(膨
潤力)、成型性、吸湿性、着色安定性及び適用する薬物
との配合適性により判断される。特に、低置換度ヒドロ
キシプロピルセルロースは、非イオン性で吸湿性が低
く、着色安定性に優れ、多くの薬剤に対して配合適性に
優れるなどの利点を有しているが、薬剤の種類、処方に
よっては、他の添加剤と比較して、崩壊時間が目的とす
る時間まで短縮できないケースもあり、その改善が求め
られてきた。
【0005】粉末粒子から構成されている錠剤の崩壊機
構は、消化管液などの液体(水)が錠剤内部へ毛細管を
通じて進入し、次いで水溶性物質が溶解したり、崩壊剤
などが水に濡れることで膨潤する粒子の効果により、構
成粒子が分散することで達成される。従って、錠剤内部
への水の進入が、錠剤の崩壊の第一段階となる。この錠
剤内部への水の進入速度は、下記のWashburn式に示され
るように、錠剤に関する要因(R)、試験液に関する要
因(γ、η)、両者に関する要因(θ)が複雑に関連し
ている(製剤設計法(1)、知人書館、P507、19
71)。 L2={(Rγcosθ)/(2η)}t (式中、Lは時間tで濡れた毛細管の長さ、Rは毛細管
の半径、γは液の表面張力、ηは液の粘度、θは固―液
界面の接触角を示す。)
【0006】錠剤の崩壊時間は、薬剤の種類、配合量な
どにより左右されるが、目的とする錠剤サイズ、薬剤配
合量などの制約下、目的とする崩壊時間を達成すること
が困難な製剤も少なくない。錠剤を速やかに崩壊させる
一般的手法としては、崩壊剤の添加量の増加、錠剤内部
の空隙率の増加などが考えられる。しかしながら、崩壊
剤の添加量を増やす方法は、錠剤が大きくなってしまう
ため改善効果に限りがある一方、空隙率を増やす方法
は、粉末を圧縮し錠剤に成形する時の成形圧を低下させ
ればよいが、錠剤硬度が低下してしまうなどの問題点が
ある。
【0007】錠剤の崩壊時間は、錠剤組成、崩壊剤の配
合量などが同一、即ち、錠剤内部の空隙(毛細管半径)
が同一で、その環境(試験液)が同一であれば、前述の
Washburn式より、濡れ性(固−液界面の接触角)に支配
されることがわかる。低置換度ヒドロキシプロピルセル
ロースは、Gissingerらの報告(Drug Dev. Ind. Phar
m,6(5), 511-536,1980)にみられるように他の添加剤
に比べて濡れ性が低い(接触角が高い)。例えば、低置
換度ヒドロキシプロピルセルロースでは50°であるの
に対して、錠剤などの成型性を高める目的で添加される
微結晶セルロースでは約20°、架橋カルボキシメチル
セルロースナトリウムでは0°、カルボキシメチルスタ
ーチナトリウムでは0°、部分α化デンプンでは0°、
架橋ポリビニルピロピドンでは34ーと濡れ性に劣って
いる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、濡れ性を改
善することができ、従来同様の添加量、配合組成におい
ても固形製剤の崩壊時間を有意に短縮することができる
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びこれを含む
固形製剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの
問題点を解決するために鋭意検討した結果、グルコース
ユニット当たりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換
モル数が、0.04〜0.1である低置換度ヒドロキシ
プロピルセルロース及びこれを含む固形製剤が、濡れ性
を改善することができ、従来同様の添加量、配合組成に
おいても固形性剤の崩壊時間を有意に短縮することがで
きることを見出し本発明をなすに至ったものである。
【0010】
【発明の実施形態】本発明の低置換度ヒドロキシプロピ
ルセルロースは、特開昭48−38858号公報、特開
昭57−53100号公報に開示されるような公知の方
法によって合成することができる。
【0011】一般に、ヒドロキシプロピルセルロースと
は、グルコースユニット(C6105)当たりヒドロキ
シプロポキシル基の平均置換モル数が2.0〜4.2の
ものをいい、平均置換モル数が0.11〜0.39のも
のは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースという。
一方、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
におけるヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数
は、グルコースユニット当たり0.04〜0.1の範囲
が好ましい。ヒドロキシプロポキシル基は濡れ性に対し
ては疎水性の効果を示し、ヒドロキシプロポキシル基の
置換量が低ければ低いほど、親水性となり濡れ性が改善
される反面、崩壊剤としての膨潤力が低下する。従っ
て、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数が、グ
ルコースユニット当たり0.04未満だと、膨潤力が大
きく低下してしまい好ましくなく、一方、0.1を超え
ると、既存の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと
同等の濡れ性となってしまう。なお、平均置換モル数の
制御は、アルカリセルロースと反応させるプロピレンオ
キサイド等のヒドロキシプロピル化剤の添加量を調節す
ることで容易に達成される。グルコースユニット当たり
の平均置換モル数は、日本薬局方の低置換度ヒドロキシ
プロピルセルロースの定量法に従い、ヒドロキシプロポ
キシル基の置換%を求め、これを換算することにより求
められる。
【0012】本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセル
ロースが適用される対象は、崩壊時間の短縮が求められ
ている固形製剤であれば、いずれのものでも適用され
る。例えば、錠剤の製造においては、打錠末の造粒時に
添加するか、造粒後の打錠末に混合することができる。
また、顆粒剤の製造においては、造粒組成に添加するこ
とが、カプセル剤の製造においては、カプセル充填末に
混合配合することができる。
【0013】固形製剤は、本発明の低置換度ヒドロキシ
プロピルセルロースのほか、例えば、主薬、ステアリン
酸マグネシウム等の滑沢剤、コーンスターチや乳糖等の
賦形剤、他の崩壊剤や結合剤などを含んでもよい。即
ち、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを
用いても、従来の配合組成を用いることができる。本発
明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、造粒用
の結合剤として用いる場合は、乾燥後の固形製剤に対し
て、3〜15重量%添加することが好ましく、造粒後の
打錠末またはカプセル充填末に混合する場合は、3〜1
0重量%添加することが好ましく、賦形剤として用いる
場合は、30重量%以上添加することが好ましい。即
ち、従来と同様の配合量の範囲で用いることができる。
【0014】以上のように製造された固形製剤は、製剤
学上許容される手法、例えば、フィルムコーティングあ
るいは腸溶コーティングなどを施すことができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例によって更
に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に
限定されるものではない。 実施例1 (湿潤時間の測定)蒸留水50mlを入れた100mlの
ビーカーに試料500mgを投入し、試料が水面で湿潤
するまでの時間を測定した。 (打錠末の調製)アセトアミノフェン(微粉、山本化学工
業社製) 400g、結合剤としてヒドロキシプロピルメ
チルセルロース(TC−5E、信越化学工業社製)20
gを精製水265gに溶解した水溶液を、小型流動層造
粒装置(Multiplex MP-01、パウレックス社製)を用いて
常法に従いスプレーすることで造粒末を調製した。
【0016】(低置換度化)低置換度ヒドロキシプロピル
セルロースの合成工程で、反応に用いるプロピレンオキ
サイドを削減し、以下、通常の条件で、洗浄、乾燥、粉
砕した。得られた粉末のヒドロキシプロポキシル基の平
均置換モル数は、グルコースユニット当たり0.1であ
った。また、粉体物性は、後述の比較例1で用いたLH
−11と同等であった。 (錠剤の調製)上記アセトアミノフェン造粒末285gと
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプ
ロポキシル基の平均置換モル数は0.1) 15gをよく
混合し、その後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウ
ム(SM−1000、堺化学工業社製)6gを混合して
打錠末とした。打錠は、ロータリー式打錠機(RT-S15K-
T35、菊水製作所製)で、直径9mm、12mmRの杵
を用い、打錠圧157MPaで、1錠306mgとなる
よう打錠した。
【0017】(物性の評価)得られた錠剤は、日本薬局方
の崩壊試験法に準じ、試験液として精製水を用い、ディ
スクを使用しない条件下、崩壊時間を測定した。低置換
度ヒドロキシプロピルセルロースの湿潤時間と錠剤の崩
壊時間を表1に示す。
【0018】比較例1 実施例1で調整したアセトアミノフェン造粒末と低置換
度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−11、信越化
学工業社製、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル
数は0.26)を用い、実施例1と同一の組成、条件で
打錠した。得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ースの湿潤時間と錠剤の崩壊時間を表1に示す。
【0019】実施例2 (低置換度化)実施例1と同様に合成して得られた粉末の
ヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数は、グルコ
ースユニット当たり0.05であった。また、粉体物性
は、比較例1で用いたLH−11と同等であった。 (錠剤の調製)実施例1で調製したアセトアミノフェン造
粒末を用い、実施例1と同一の組成、同一の打錠条件で
打錠した。得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ースの湿潤時間と錠剤の崩壊時間を表1に示す。
【0020】実施例3 (低置換度化)実施例1と同様に合成して得られた粉末の
ヒドロキシプロポキシル基の平均置換モル数は、グルコ
ースユニット当たり0.09であった。また、粉体物性
は、比較例1で用いたLH−11と同等であった。 (錠剤の調製)実施例1で調製したアセトアミノフェン造
粒末を用い、実施例1と同一の組成、同一の打錠条件で
打錠した。得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ースの湿潤時間と錠剤の崩壊時間を表1に示す。
【0021】比較例2 (低置換度化)実施例1と同様に合成し得られた粉末のヒ
ドロキシプロポキシル基の平均置換モル数は、グルコー
スユニット当たり0.03であった。また、粉体物性
は、比較例1で用いたLH−11と同等であった。 (錠剤の調製)実施例1で調製したアセトアミノフェン造
粒末を用い、実施例1と同一の組成、条件で打錠した。
得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの湿潤
時間と錠剤の崩壊時間を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】実施例4 (錠剤の調製)実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース90g とカッコン湯エキス末(カッコン湯乾
燥エキス末F、アルプス薬品工業社製)210gをよく
混合し、その後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウ
ム(SM−1000、堺化学工業社製)3gを混合し打
錠末とした。打錠は、ロータリー式打錠機(RT-S15K-T3
5、菊水製作所製)で、直径9mm、12mmRの杵を
用い、打錠圧142MPaで、1錠303mgとなるよ
う打錠した。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの
湿潤時間と錠剤の崩壊時間を表2に示す。
【0024】実施例5 実施例2の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用
いて、実施例4と同様に錠剤を調製し、崩壊時間を測定
した。結果を表2に示す。
【0025】実施例6 実施例3の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用
いて、実施例4と同様に錠剤を調製し、崩壊時間を測定
した。結果を表2に示す。
【0026】比較例3 比較例1で用いたLH−11を用いて、実施例4と同様
に錠剤を調製し、崩壊時間を測定した。結果を表2に示
す。
【0027】比較例4 比較例2で用いた低置換度ヒドロキシプロピルセルロー
スを用いて、実施例4と同様に錠剤を調製し、崩壊時間
を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】実施例で示されるように、本発明の低置換
度ヒドロキシプロピルセルロースは既存の製品(比較例
1)に比べて、有意に濡れ性が改善され、錠剤とした場
合の崩壊時間も有意に短縮された。ヒドロキシプロポキ
シル基の平均置換モル数が極端に低くなると(比較例
2、4)、濡れ性は改善されるものの、錠剤とした場合
の崩壊時間の短縮効果は大幅に減少するか、逆に延長し
た。これは、平均置換モル数を極端に低くくしたために
その膨潤力も大幅に減少した結果と考えられる。
【0030】
【発明の効果】本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース及びこれを含む固形製剤は、濡れ性を改善する
ことができ、従来同様の添加量、配合組成においても固
形製剤の崩壊時間を有意に短縮することができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4C076 AA32 AA36 AA37 BB04 CC01 EE32H FF06 GG09 GG12 4C090 AA02 AA09 BA28 BB52 BD03 CA36 DA09 DA23 4C206 AA01 AA02 GA31 MA02 MA05 MA55 MA61 MA72 NA11 ZA08

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グルコースユニット当たりのヒドロキシ
    プロポキシル基の平均置換モル数が、0.04〜0.1
    であることを特徴とする低置換度ヒドロキシプロピルセ
    ルロース。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の低置換度ヒドロキシプ
    ロピルセルロースを含むことを特徴とする固形製剤。
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