JP2000042320A

JP2000042320A - 機能性フィルター

Info

Publication number: JP2000042320A
Application number: JP10211300A
Authority: JP
Inventors: Motoyasu Nakanishi; 幹育中西; Akihiro Shinoda; 明宏篠田
Original assignee: Suzuki Sogyo Co Ltd
Current assignee: Suzuki Sogyo Co Ltd
Priority date: 1998-07-27
Filing date: 1998-07-27
Publication date: 2000-02-15

Abstract

(57)【要約】【課題】光触媒と被処理流体との接触が十分に確保さ
れ、かつ光触媒の光触媒活性が十分に発揮されて、優れ
た防汚機能、脱臭機能、抗菌機能、有害成分除去機能、
空気浄化機能等の諸機能を有する、光触媒をコーティン
グした機能性フィルターを提供すること。【解決手段】フィルターの基体としてウエブ状金属長
繊維集合体を用い、このウエブ状金属長繊維集合体に光
触媒をコーティングする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、優れた防汚機能、
脱臭機能、抗菌機能、有害成分除去機能等を有し、環境
アメニティーに優れた、光触媒をコーティングした機能
性フィルターに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、気体や液体の防汚、脱臭、抗
菌、有害成分除去等を目的とした機能性フィルターとし
て、活性炭を不織布や網体に包んだもの、活性炭を層状
に充填したもの等が知られており、例えば空調機等に脱
臭フィルターとしてかかる機能性フィルターが多用され
ている。かかる機能性フィルターの基体としては、紙、
不織布等の有機繊維や、金網等が一般的である。

【０００３】また、近年、光触媒を、汚れ分解、脱臭、
抗菌、有害成分分解、空気浄化等の諸機能付与に利用す
ることが種々提案されており、上記のような諸機能の付
与を目的として、フィルターに光触媒を利用する研究も
なされている。しかし、未だ、満足できる十分に優れた
上記のような諸機能の付与された、光触媒を利用したフ
ィルターは提案されていない。すなわち、光触媒は、い
うまでもなく、光照射を受けなければその光分解活性を
示し得ないのであるから、光触媒が光照射を受け易いよ
うにフィルターを二次元的な薄いものにすると、光触媒
と被処理流体との接触が不十分となって、フィルターに
上記のような諸機能が十分に付与されない。一方、フィ
ルターと被処理流体との接触を十分にするために、フィ
ルターを三次元的な厚みのあるものにすると、通常三次
元的厚み方向には光が到達し難く、光触媒の光触媒活性
が十分に発揮されず、やはりフィルターに上記のような
諸機能が十分に付与されない。光触媒のフィルターへの
利用においては、上記のように、被処理流体とフィルタ
ーの十分なる接触確保という問題と、光触媒に十分に光
照射してその光触媒活性を十分に発揮せるという問題と
は、二律背反の問題であって、この二律背反の問題が未
だ解決されていない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来の状況に鑑み、光触媒と被処理流体との接触が十分
になされ、かつ光触媒の光触媒活性が十分に発揮され
て、優れた防汚機能、脱臭機能、抗菌機能、有害成分除
去機能、空気浄化機能等の諸機能を有する、光触媒をコ
ーティングした機能性フィルターを提供することにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究した結果、フィルターの基体とし
てウェブ状金属長繊維集合体を用い、それに光触媒をコ
ーティングすれば、上記目的を達成できることを見出し
て本発明を完成した。すなわち、本発明に係る機能性フ
ィルターは、ウェブ状金属長繊維集合体に光触媒をコー
ティングしてなることを特徴とする。本発明において
は、フィルターの基体が、金属長繊維からなるウェブ状
の集合体であるため、基体が有機材料からなる場合と異
なり光触媒機能によって分解されることがなく、また不
燃性であるため、厨房等の火災の恐れが高い環境におい
ても使用することができる。さらに金属長繊維による光
の反射もあるので、フィルターが三次元的厚みのあるも
のとしても、光が三次元的厚み方向に到達することがで
き、光触媒と被処理流体との接触を十分確保し、かつ光
触媒の光触媒活性を十分発揮させることができる。

【０００６】

【発明の実施の形態】本発明の機能性フィルターの基体
は、ウェブ状金属長繊維集合体である。ここで、ウェブ
状金属長繊維集合体のウェブ状とは、繊維がマット状、
綿状、網状に寄せ集められ、あるいは織り上げられて布
状あるいはシート状になった状態をいう。このウェブ状
金属長繊維集合体の厚さは、必要に応じて適宜選択する
ことができるが、一般に１０〜１００ｍｍが適当であ
る。このウェブ状金属長繊維集合体を構成する金属長繊
維は、ステンレス鋼、黄銅、銅、アルミニウム、ニッケ
ル、チタン、タンタルその他の金属の細長い繊維であ
り、好ましくは直径が５０〜１００μｍである。また、
断面形状は矩形状、円形状、星形状等の種々のものを用
いることができるが、その中でも矩形状の断面を有する
繊維は、繊維の面同士や角同士が接触し合うため繊維同
士の結合が強く、また光触媒が平面上にコーティングさ
れるため光触媒をより担持しやすくなるという利点があ
る。金属長繊維の製法としては、引き抜きによる方法
等、従来知られた方法を用いることができるが、その中
でも、素材の金属の薄板をコイル状に巻き、その端面か
ら適当なバイトで薄く切削する方法は、矩形状断面を有
する繊維が得られ、安価に量産できるため好ましく用い
られる。かかる金属長繊維の例としてベキニット株式会
社製のベキニット（商品名）が挙げられる。

【０００７】本発明の機能性フィルターに用いる光触媒
は、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の
光を照射すると光触媒機能を発現する粒子である、酸化
チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、チタン
酸ストロンチウムなどの公知の金属化合物半導体の粒子
を、一種あるいは２種以上を組み合わせて用いることが
できる。特に、高い光触媒機能を有し、化学的に安定で
あり、かつ無害である酸化チタンが好ましく用いられ
る。さらに、上記のような光触媒の粒子の内部および／
またはその表面に、第二成分として、Ｖ，Ｆｅ，Ｃｏ，
Ｎｉ，Ｃｕ，Ｚｎ，Ｒｕ，Ｒｈ，Ｐｄ，Ａｇ，Ｐｔおよ
びＡｕから選ばれた少なくとも一種の金属および／また
は金属化合物を含有させると、一層高い光触媒機能が発
現されるため好ましい。この第二成分として用いる金属
化合物としては、例えば、酸化物、水酸化物、オキシ水
酸化物、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、さらに金属イ
オンなどが挙げられる。また、上記第二成分の含有量
は、用いた第二成分の種類等必要に応じて適宜選択する
ことができる。さらに上記の光触媒はアセトアルデヒド
やエチレンガス等の有害成分を除去することもできる。

【０００８】また、本発明で光触媒として好ましく用い
られる酸化チタンの製造方法の例を示せば次のとおりで
ある。すなわち、（イ）硫酸チタニル、塩化チタン、チ
タンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要に応じて
核形成用種子の存在下に、加熱加水分解する方法、
（ロ）必要に応じて核形成用種子の存在下に、硫酸チタ
ニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化
合物にアルカリを添加し、中和する方法、（ハ）塩化チ
タンやチタンアルコキシドなどを気相酸化する方法、
（ニ）上記（イ）あるいは（ロ）の方法で得られた酸化
チタンを焼成あるいは水熱処理する方法などの公知方法
が挙げられ、特に上記（イ）の方法で得られた酸化チタ
ンあるいは１００℃以上の温度で水熱処理して得られた
酸化チタンは、光触媒機能が高いため好ましい。また、
本発明で光触媒として用いる酸化チタンとしては、酸化
チタンのほか、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタ
チタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなどと一般に
呼ばれているものを含み、またその結晶型はアナターゼ
型あるいはルチル型のいずれでも差し支えないが、アナ
ターゼ型の方が光触媒機能が高いのでより好ましく用い
られる。さらにまた、光触媒粒子の内部および／または
その表面に上記のような第二成分の金属および／または
金属化合物を含有させるには、光触媒粒子を製造する際
に該金属および／または該金属化合物を添加し、吸着さ
せる方法、あるいは、光触媒粒子を製造した後に該金属
および／または該金属化合物を添加し、吸着させ、必要
に応じて加熱したりあるいは還元したりする方法を用い
ることができる。

【０００９】本発明の機能性フィルターを構成する方
法、すなわち上記のようなウェブ状金属長繊維集合体に
光触媒をコーティングする方法は、特に制限されるもの
ではなく、必要に応じて適宜選択することができる。例
えば、方法自体は従来から一般に基体に光触媒をコーテ
ィングする方法として公知の方法を利用して、（イ）光
触媒を含有するコーティング剤組成物をウェブ状金属長
繊維集合体に塗装し、該塗膜を硬化させる方法、（ロ）
コーティング剤組成物をウェブ状金属長繊維集合体に塗
装し、該塗膜上に光触媒を散布し、該塗膜を硬化させる
方法、（ハ）ウェブ状金属長繊維集合体に粘着剤液を塗
装し、硬化させ、該粘着剤液の塗膜上に光触媒を散布し
て付着させる方法等を適宜選択採用できる。

【００１０】また、本発明者らは、本発明の機能性フィ
ルターを構成する方法に関して、次の方法が本発明の機
能性フィルターを構成する方法として好適であることを
知見している。この好適なる一つの方法は、ウェブ状金
属長繊維集合体に、（ａ）オルガノポリシロキサンを主
剤とし、それに架橋剤として官能性側鎖を有するオルガ
ノシロキサンおよび硬化触媒が配合された組成物、
（ｂ）セラミックス粒子に高熱用溶媒が配合された組成
物、（ｃ）ペルヒドロポリシラザンの有機溶媒溶液、お
よび（ｄ）金属酸化物粉末の存在下に低分子量のグリシ
ジルエーテル型エポキシ樹脂を触媒を用いて反応させ、
調製されたプレポリマーから選ばれた特定の被膜形成性
成分に光触媒を配合したコーティング剤組成物を用い、
それを塗装し、その塗膜を硬化させる方法である。これ
ら特定の被膜形成性成分に光触媒を配合したコーティン
グ剤組成物は、本発明者らにより案出され、別途特許出
願（平成１０年７月１４日出願）された発明に係る新規
なコーティング剤組成物であって、これらのコーティン
グ剤組成物を用いれば光触媒の活性低下を抑制して光触
媒固有の触媒活性を高く維持して光触媒含有被膜を形成
し得て、かつ任意の厚さの堅牢な光触媒含有被膜を容易
に形成することができるという優れた効果が得られる。

【００１１】また、本発明の機能性フィルターを構成す
る別の方法として、上述の（ａ）〜（ｄ）から選ばれた
一のものを被膜形成性成分とするコーティング剤組成物
を、ウェブ状金属長繊維集合体に塗装し、該塗膜上に光
触媒を散布し、該塗膜を硬化させる方法を用いることも
できる。

【００１２】上記コーティング剤組成物で用いられる特
定の被膜形成性成分の一つは、上記の通り、オルガノポ
リシロキサンを主剤とし、それに架橋剤として官能性側
鎖を有するオルガノシロキサンおよび硬化触媒が配合さ
れた組成物（以下「オルガノポリシロキサン組成物」と
略称）である。このオルガノポリシロキサン組成物にお
いて、主剤のオルガノポリシロキサンは、メチル基ある
いはフェニル基を有するものが好ましい。架橋剤として
は、アルコキシ基、アシロキシ基、オキシム基等の官能
性側鎖を有するオルガノシロキサンが好ましい。硬化触
媒としては、Ｚｎ、Ａｌ、Ｃｏ、Ｓｎ等の金属を含有す
る有機化合物およびハロゲンが好ましい。また、このオ
ルガノポリシロキサン組成物は、珪素成分をＳｉＯ₂換
算で４０％以上含有していることが好ましく、また溶
剤、水もしくは水酸基を含有しないものである。また、
このオルガノポリシロキサン組成物は、低温加熱や常温
乾燥でも硬化して、硬質で密着性に優れたセラミックス
被膜を形成する。また、その硬化機構は、主剤のオリガ
ノポリシロキサンの官能基が、まず空気中の水分により
加水分解を受けて水酸基に変化し、次に該オリガノポリ
シロキサンの水酸基を架橋剤のオルガノシロキサンの官
能基がアタックし、硬化触媒の作用も受けて脱アルコー
ル反応を起こし、三次元構造の高分子化合物たるポリシ
ロキサン硬化体を形成すると考えられている。いわゆる
ゾル・ゲル法による金属アルコキシ縮合物となる。かか
るオルガノポリシロキサン組成物の例として、ホ−マー
テクノロジー株式会社販売のヒートレスガラス（ＨＥＡ
ＴＬＥＳＳＧＬＡＳＳ）（商品名）等が挙げられる。
上記オルガノポリシロキサン組成物には、必要に応じ
て、例えばシロキサン結合が三次元に伸びた網状構造
で、珪素原子に一個のメチル基が結合した無機と有機の
中間的な構造を有するシリコーン樹脂の微粒子などの他
の配合物も添加することができる。上記無機と有機の中
間的な構造を有するシリコーン樹脂の例として、東芝シ
リコーン株式会社販売のトスパール（商品名）等が挙げ
られる。

【００１３】被膜形成性成分の他の一つは、上記のとお
り、セラミックス粒子に高熱用溶媒が配合された組成物
である。この組成物における高熱用溶媒の例としては、
ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等
が挙げられる。また、セラミックス粒子の例としては、
アルミナ、アルミニウム、ジルコニア、溶融シリカ、パ
ーライト、ムライトなどのセラミックス粒子が挙げら
れ、その粒径は、必要に応じて適宜選択することができ
るが、一般に数〜数十μｍが適当である。高熱用溶媒
は、被膜形成生成分全体で比重が２〜３程度になるよう
に配合したものが好適に用いられる。このセラミックス
粒子に高熱用溶媒が配合された組成物の例として、株式
会社熱研製のレッドプルーフ（商品名）等が挙げられ
る。

【００１４】被膜形成性成分のさらに他の一つは、上記
のとおり、ペルヒドロポリシラザンの有機溶媒溶液であ
る。ペルヒドロポリシラザンは、構造式が〔ＳｉＨ_aＮ
Ｈ_b〕_n（式中、ａは１〜３、ｂは０または１であ
る。）で表されるセラミックス前駆体である。このペル
ヒドロポリシラザンは、例えば、ジクロロシランと溶媒
中のピリジンとの錯体生成を経由して合成することによ
り（ピリジン錯体法）、低分子量環状体の少ない、比較
的高分子量のオリゴマーを得ることができる。実際の分
子構造は複雑であるが、不規則な環状部を多く含む、数
平均分子量が数千のオリゴマーである。このペルヒドロ
ポリシラザンは、基体表面に塗装後焼成することにより
セラミックスに転化され、大気またはそれに準じた雰囲
気下で焼成した場合には、シリカガラス（ＳｉＯ₂）に
転化する。有機溶媒の例としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられ、中で
もキシレンは好ましく用いられる。有機溶媒溶液中のペ
ルヒドロポリシラザンの濃度は、必要に応じて適宜選択
できるが、高濃度であると水飴状となり作業性に劣るの
で、適当に粘性を有する範囲とする。かかるペルヒドロ
ポリシラザンの例として、東燃株式会社製の東燃ポリシ
ラザン（商品名）等が挙げられる。また、このペルヒド
ロポリシラザンの有機溶媒溶液には、必要に応じて、酸
化マグネシウム、炭化珪素等のフィラー等を配合するこ
とができる。

【００１５】被膜形成性成分のなおさらに他の一つは、
上記のとおり、金属酸化物粉末の存在下に低分子量のグ
リシジルエーテル型エポキシ樹脂を触媒を用いて反応さ
せ、調製されたプレポリマーである。このプレポリマー
は、例えば、国際公開番号Ｗ０９０／０８１６８号公報
の実施例１〜５の記載に従い、次の製造方法により得る
ことができる。まず、反応容器に低分子量のグリシジル
エーテル型エポキシ樹脂と触媒を投入し、加熱下におい
て反応させる。次に、反応容器に金属酸化物粉末を投入
し、攪拌しながら加熱を継続し、所要時間後に反応を終
了させ、プレポリマーを得る。このプレポリマーの製造
において用いる低分子量のグリシジルエーテル型エポキ
シ樹脂としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテ
ル、ビスフェノールＡのジグリシジルエーテル等を挙げ
ることができる。また、触媒としては、２−エチル−４
−メチルイミダゾール、２−メチルイミダゾール、４−
メチルイミダゾール等を挙げることができる。さらに、
金属酸化物粉末としては、特に制限はないが、シリカ粉
末、アルミナ粉末、マグネシア粉末が好ましく用いられ
る。また、このプレポリマーの例として、株式会社ニッ
ケーコー製のセラプロテックス（商品名）等を挙げるこ
とができる。

【００１６】上記特定の被膜形成性成分を含有するコー
ティング剤組成物に光触媒を配合して塗装する方法の場
合、光触媒の配合量は、用いる被膜形成性成分の種類等
により一概にはいえないが、一般に被膜形成性成分１０
０重量部に対して２３３〜１０重量部が適当である。そ
してコーティング剤組成物を調整する際には、上記各種
被膜形成性成分のいずれかと光触媒とを、ヘンシェルミ
キサー、オープンロールミキサー、バンバリー混合機等
の公知の混合手段を用いて適宜混合して行うことができ
る。この調製に際し、用いる被膜形成性成分の種類にも
よるが、必要に応じて、酸化チタン系分散剤等の添加剤
を添加することができる。

【００１７】また、上記特定の被膜形成性成分を含有す
るコーティング剤組成物を塗装し、該塗膜上に光触媒を
散布し、該塗膜を硬化させる方法の場合、光触媒の散布
量は必要に応じて適宜選択することができるが、一般に
全面にわたって光触媒が均一にふりかかっている状態で
あれば良い。

【００１８】コーティング剤組成物は、ディッピングコ
ート法、スプレイコート法、ロールコート法、ハケ塗り
コート法等の公知の塗装方法により、ウェブ状金属長繊
維集合体に所望の厚さに容易に塗装することができる。
また、ウェブ状金属長繊維集合体がもし光触媒に有害な
物質を滲出する危険があるような場合は、上記特定のコ
ーティング剤組成物を塗装するに先立ち予めバリヤーを
ウェブ状金属長繊維集合体に設けることが望ましい。こ
の予め設けるバリヤーとしては、例えば、いわゆるゾル
・ゲル法により形成されたシリカの被膜が挙げられる。
すなわち、無定形シリカの前駆体であるテトラアルコキ
シシランをアルコールで希釈し、それに水および加水分
解促進剤を加えて混合溶液を調製し、この混合溶液を基
体表面に塗装し、無定形シリカの被膜を形成させること
が挙げられる。この際に用いられるテトラアルコキシシ
ランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシ
シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラｎ−プロ
ポキシシラン等が挙げられ、アルコールとしては、メタ
ノール、エタノール、ｎ−プロパノール、イソプロパノ
ール等が挙げられ、加水分解促進剤としては、塩酸、硫
酸、硝酸、フッ酸、酢酸、シュウ酸等の無機および有機
酸、および、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アル
キルアミン等の無機および有機塩基が挙げられる。

【００１９】また、ウェブ状金属長繊維集合体に塗装さ
れた上記特定のコーティング剤組成物の塗膜を硬化させ
る条件は、用いる被膜形成性成分の種類等に応じて適宜
選択でき、被膜形成性成分が（ａ）および（ｂ）の場合
には常温〜１２０℃で１〜２４時間、（ｃ）の場合には
１００〜６００℃で１時間、（ｄ）の場合には８０℃で
４時間保持するのが適当であり、またこの硬化は従来か
ら知られた方法により行うことができる。硬化後の被膜
は一般に光をプレ照射して汚れなどを除去しておくのが
好ましい。その際の照射光量、照射時間については、汚
れなどを除去できる条件であれば良く特に限定されるも
のではない。このプレ照射によって、コーティング被膜
の表面の汚れなどが除去されると共に、被膜が微細に粗
されるため、特にコーティング剤組成物に予め光触媒を
配合して塗装する方法の場合は、光触媒が部分的に表出
して活性が高まるようになる。

【００２０】本発明の機能性フィルターを構成するに好
適である他の一つ方法は、ウェブ状金属長繊維集合体に
シリコーン粘着剤液を塗装し、硬化させ、該粘着剤液の
塗膜上に光触媒を散布して付着させる方法である。これ
らの方法によれば、表面に光触媒が存在するため触媒活
性が高く維持され、また粘着面にごみ等が付着して除去
され易いという優れた効果が得られる。

【００２１】上記の好適である他の一つ方法で用いられ
るシリコーン粘着剤液としては、付加反応型シリコーン
粘着剤、あるいは過酸化物硬化型シリコーン粘着剤など
公知のシリコーン粘着剤を用いることができる。付加反
応型シリコーン粘着剤の例としては、東レ・ダウ・コー
ニング・シリコーン株式会社製のＳＤ４５６０（商品
名）、信越化学株式会社製の信越シリコーンＸ−４０−
３０６８（商品名）等が挙げられる。また、過酸化物硬
化型シリコーン粘着剤の例としては、東レ・ダウ・コー
ニング・シリコーン株式会社製のＳＨ４２８０（商品
名）、信越化学株式会社製の信越シリコーンＫＲ−１０
１−１０（商品名）等が挙げられる。

【００２２】上記方法の内、予めシリコーン粘着剤液を
塗装し、その塗膜上に光触媒を散布して付着させる方法
における、光触媒の塗膜上への散布量は、必要に応じて
適宜選択することができるが、一般に全面にわたって光
触媒が均一にふりかかっている状態であれば良い。ま
た、シリコーン粘着剤液のウェブ状金属長繊維集合体へ
の塗装は上記特定のコーティング剤組成物を用いる方法
の場合と同様に、ディッピングコート法、スプレイコー
ト法、ロールコート法、ハケ塗りコート法等の公知の塗
布方法により行うことができる。また、光触媒の散布さ
れたシリコーン粘着剤液の塗膜、あるいはシリコーン粘
着剤液と光触媒の混合物の塗膜の硬化は、一般に８０〜
１２０℃に１〜５分保持するのが適当である。また、こ
れらの硬化は、従来から知られた方法により行うことが
できる。

【００２３】以上の方法で作製したフィルターは、優れ
た防汚機能、脱臭機能、抗菌機能、有害成分除去機能、
空気浄化機能等の諸機能を有する機能性フィルターとし
て用いられ、具体的な用途としては厨房の換気ダクト中
に設置するフィルターやエアコン用のフィルター等に好
適である。

【００２４】

【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
するが、本発明はこれらにより限定されるものではな
い。実施例１ヒートレスガラスＧＳ６００Ａ１（ホ−マーテクノロ
ジー（株）販売；商品名；オルガノポリシロキサンを主
剤とし、それに架橋剤として官能性側鎖を有するオルガ
ノシロキサンおよび硬化触媒が配合された組成物）１０
０重量部と、パウダー状酸化チタン光触媒（石原テクノ
（株）製ＳＴ−０１；Ｘ線粒径＝７ｎｍ）１００重量部
とをボールミルで混合してコーティング剤組成物を調製
した。このコーティング剤組成物を、ステンレスの厚さ
１２０μｍの薄板をコイル状に巻いたものを幅５００μ
ｍで切削して得られたステンレス長繊維からなる、縦２
４０ｍｍ、横１２０ｍｍ、厚さ１５ｍｍのウェブ状ステ
ンレス長繊維集合体（３ｇ／５００ｍｌ）に、ディッピ
ングコート法により膜厚２００μｍとなるように塗装
し、それを硬化炉により１２０℃に２時間保持して上記
コーティング剤組成物の塗膜を硬化させ、目的のフィル
ターを得た。

【００２５】得られたフィルターについてアンモニア分
解試験を行った。このアンモニア分解試験は次の方法に
より行った。すなわち、透明な密閉反応容器（内容積３
ｌ）内に試験試料を入れ、該反応容器内に、該反応容器
内の雰囲気が所定の測定対象ガス濃度になるように測定
対象ガスを仕込み、ブラックライト〔８Ｗ×２（０．５
ｍＷ／ｃｍ²）〕を照射し、同時に該反応容器内の雰囲
気を循環ポンプ（２ｌ／ｍｉｎ）により反応容器とパイ
プ状循環経路の間を循環せしめ、該循環経路に測定対象
ガスの検知器を設置し、循環雰囲気中の測定対象ガス濃
度の経時的変化を測定することにより行った。アンモニ
アガス濃度の測定結果をグラフにして図１に示した。図
１において、◆印プロットは光照射を行わなかった時の
アンモニアガス濃度のプロットであり、■印プロットは
光照射開始後のアンモニアガス濃度のプロットである。

【００２６】実施例２実施例１で用いたとものと同様のウェブ状ステンレス長
繊維集合体に、シリコーン粘着剤液（信越シリコーン
（株）製Ｘ−４０−３０６８）を、ディッピングコート
法により膜厚５０μｍとなるように塗装し、その塗膜に
光触媒をスプレーにより散布して３ｇ付着させ、それを
硬化炉により１２０℃に２分保持してシリコーン粘着剤
液の塗膜を硬化させ、目的のフィルターを得た。得られ
たフィルターについてアセトアルデヒド（煙草の臭い成
分）分解試験を行った。このアセトアルデヒド分解試験
は、測定対象ガスをアンモニアに代えてアセトアルデヒ
ドにしたこと以外は実施例１のアンモニア分解試験と同
様の方法によって行った。アセトアルデヒドガス濃度の
測定結果をグラフにして図２に示した。図２においてお
けるプロットの仕方も図１の場合と同様である。

【００２７】

【発明の効果】本発明によれば、フィルターの基体がウ
ェブ状の金属長繊維集合体であり、金属長繊維による光
の反射もあるので、フィルターが三次元的厚みのあるも
のとしても、光が三次元的厚み方向に到達することがで
き、したがって光触媒と被処理流体との接触を十分確保
し、かつ光触媒の光触媒活性を十分発揮させることがで
きる故、優れた防汚機能、脱臭機能、抗菌機能、有害成
分除去機能、空気浄化機能等の諸機能を有する、光触媒
をコーティングした機能性フィルターが提供される。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１におけるアンモニア分解試験結果を示
すグラフである。

【図２】実施例２におけるアセトアルデヒド分解試験結
果を示すグラフである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 4C080 AA07 BB02 BB04 BB05 BB08 CC02 CC08 HH05 JJ05 KK08 MM02 NN01 NN29 QQ11 QQ20 4D019 AA01 BA02 BA06 BB03 BB08 BC07 BC20 CB06 DA02 DA04 4G069 AA03 AA08 BA14B BA14C BA17 BA48A BA48C BB04A BB04B BB07A BC12A BC35A BC50A BC50B BC60A BC66A CA01 EA03X EA08 EA10 FA03 FB04 FB23 FB24 FB29 FB30 FC02 FC05

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ウェブ状金属長繊維集合体に光触媒をコ
ーティングしてなることを特徴とする機能性フィルタ
ー。
【請求項２】ウェブ状集合体を形成する金属長繊維
が、コイル状の金属薄板をその端面で切削することによ
り製造されたものである請求項１に記載の機能性フィル
ター。
【請求項３】光触媒が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化
タングステン、酸化鉄およびチタン酸ストロンチウムか
ら選ばれた少なくとも１種である請求項１又は２に記載
の機能性フィルター。
【請求項４】ウェブ状金属長繊維集合体への光触媒の
コーティングが、光触媒を含有するコーティング剤組成
物をウェブ状金属長繊維集合体に塗装し、該塗膜を硬化
させることによりなされた請求項１〜３のいずれか一つ
に記載の機能性フィルター。
【請求項５】ウェブ状金属長繊維集合体への光触媒の
コーティングが、コーティング剤組成物をウェブ状金属
長繊維集合体に塗装し、該塗膜上に光触媒を散布し、該
塗膜を硬化させることによりなされた請求項１〜３のい
ずれか一つに記載の機能性フィルター。
【請求項６】コーティング剤組成物の被膜形成性成分
が、下記（ａ）〜（ｄ）から選ばれた一のものである請
求項４又は５に記載の機能性フィルター。（ａ）オルガノポリシロキサンを主剤とし、それに架橋
剤として官能性側鎖を有するオルガノシロキサンおよび
硬化触媒が配合された組成物。（ｂ）セラミックス粒子に高熱用溶媒が配合された組成
物。（ｃ）ペルヒドロポリシラザンの有機溶媒溶液。（ｄ）金属酸化物粉末の存在下に低分子量のグリシジル
エーテル型エポキシ樹脂を触媒を用いて反応させ、調製
されたプレポリマー。
【請求項７】ウェブ状金属長繊維集合体への光触媒の
コーティングが、ウェブ状金属長繊維集合体に粘着剤液
を塗装し、硬化させ、該粘着剤液の塗膜上に光触媒を散
布して付着させることによりなされた請求項１〜３のい
ずれか一つに記載の機能性フィルター。
【請求項８】粘着剤液がシリコーン粘着剤液である請
求項７に記載の機能性フィルター。