Lym──心に残る生々しい人情と柔らかな囁き
数多くいるアーティストのなかから編集部がグッときたアーティストを取り上げる企画〈OTOTOY Search〉。ショートレヴューとインタヴューで若手アーティストをご紹介していきます。
第2回は、たかぎれお(Vo&Gt)、悠理(Gt)、ナガヤマタカキ(Ba)、玉野りんと(Dr)からなる4人組ロック・バンド、Lym(リーム)が登場。バンド名の由来や今年の6月から8月にかけてリリースした楽曲のこと、さらに9月19日に行った初ワンマン・ライヴ〈ROOM〉後の感想など様々な視点からバンドの魅力を探ります。
REVIEW : 温もりのある生々しい人間の感情
文 : 東原春菜
あなたの不安や不幸に寄り添える音楽を。
これは、Lymのプロフィールに書いてある言葉だ。
まさしくその言葉通り、Lymの楽曲は心に残るものが多い。彼らの音楽は聴くというよりも隣で囁きかけてくれるという表現がぴったりなのかもしれない。私は2年前に“菊花火”を聴いてLymの世界観に引きずり込まれた。淡いギターの音色、感情高まり切なさあふれる歌声、そしてそれをかき消すことない繊細かつ力強いリズム隊のバランスが上手くまとまっているため、聴いていて心地よい。また先述した隣で囁きかけてくれるという点で、ふと好きな人と一緒に過ごした日を思い出してしまう、あのリアルな恋人の生活感を鮮明に描けるのはLymの武器と言える。
さらに当たり前のことだが、耳だけでなく目で彼らの姿を追うと何十倍もLymの良さがわかる。彼らの演奏を観て楽しんでほしいのはもちろんのこと、たかぎれお(Vo&Gt)が歌っているときに歌詞の世界にスッと入っていきながら感情高ぶる姿にも注目してほしい。また現在公開されている全てのMVが歌詞とリンクするストーリー性になっているため、映像と相まってリアルな恋人の生活感がより鮮明に浮かんでくる。
そう考えると彼らの温かいメロディ、寄り添ってくれる歌詞、リアルな恋人を描いたMVすべてにおいて、温もりのある生々しい人間の感情を映し出しているという一貫性があるから心に残る楽曲が多いのだろう。