大企業の経営幹部たちが学び始め、ビジネスパーソンの間で注目が高まるリベラルアーツ(教養)。グローバル化やデジタル化が進み、変化のスピードと複雑性が増す世界で起こるさまざまな事柄に対処するために、歴史や哲学なども踏まえた本質的な判断がリーダーに必要とされている。
本連載では、『世界のエリートが学んでいる教養書 必読100冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)の著書があるマーケティング戦略コンサルタント、ビジネス書作家の永井孝尚氏が、西洋哲学からエンジニアリングまで幅広い分野の教養について、日々のビジネスと関連付けて解説する。
今回は、アメリカの作家ダレル・ハフが1954年に書いた『統計でウソをつく法』をテキストに、私たちを欺く統計のカラクリを学ぶ。ビジネスパーソンがぜひ身に付けておくべき統計リテラシーとは?
統計でだまされる人たち
私たちは「統計ではこうなっている」と言われるとつい信じてしまう。しかし、統計データはいくらでも捏造(ねつぞう)できる。
例えば「当社は少数精鋭。平均年収も1494万円です」と言われると、多くの人は心が動くだろう。しかし、実際にその会社に入社してみると、多くの社員が年収300万円で働いていたりする。「平均1494万円」にウソはないのだが、統計のトリックを知らないと、コロリとだまされるのだ。
「でも、自分は数学が苦手だし、統計というと何か難しそうで…」という人も多いかもしれない。確かに統計には難解な本が多いが、統計の本質を分かりやすく解説した名著もある。今回は、1954年に原著が刊行された『統計でウソをつく法』(ダレル・ハフ著、講談社)を参考図書として活用しながら、統計の初歩を学んでいこう。
本書の書名は一見ふざけているように見えるが、難解な統計学を「だます方法」という視点で分かりやすく紹介した歴史的名著である。統計分野での世界的ロングセラーであり、数多くの言語に訳され150万部売れている。