地元漁師と手を携えてともに発展
時代に合わせ会社を変化させ続ける
噴火湾産の魚介を活用 全国展開を視野に商品開発
水産加工品を企画・販売する森町の「ジョウヤマイチ佐藤」は、ホタテやサクラマス、ヒラメ、ババガレイ、スケソウダラなど噴火湾(内浦湾)で水揚げされる豊富な資源の冷凍・保管、加工製造を手掛ける「渡島冷蔵」の関連会社として、2008年に創業。「渡島冷蔵」は函館市内で乾物商を営んでいた初代・佐藤善司さんが噴火湾の豊かな漁場に魅了され、第二次世界大戦後まもなく森町へ移住し1963年に創業した。商品の中心に据えたのは、昭和中期には水揚げ量が多く供給過多で商品価値が低いとされていたホッケ。市場向きではないとされてきたが、地元では味の良さに定評があった。ふっくらとした身に甘みのある脂を蓄えた噴火湾産のホッケのおいしさを広く知ってほしいと、善司さんは商品化に向けて試行錯誤を繰り返し、息子で2代目の篤司さんと現在陣頭に立つ孫で3代目社長兼ジョウヤマイチ佐藤の善高専務がその情熱を受け継ぎ、独自の冷凍保存技術によって全国へ流通可能な商品化に成功。このほか培った技術を活用し「?魚醤」や「?魚醤仕込み真ほっけ焼きほぐし」などさまざまな商品開発に着手している。
鮮度抜群の天然ブリ 品質の良さをそのまま生かす
「ぶりハム」の生産に着手したのは3年程前。物産展に出店していたところ、ブリの刺身を見た来場客から「ハムですか?」と問われたことがきっかけだという。善高専務は「もともと噴火湾では天然ブリが水揚げされていて加工品ができないか考えていた。ハムという活用法があるなら挑戦してみようということになった」と、公益財団法人北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)の道内食品の高付加価値化を図る「地域食品加工施設活用モデル事業」の支援を受け開発を開始。素材は森町内で定置網漁を営み、魚の扱いの丁寧さが評判の「イチマル澁谷豊富丸」が手掛ける天然ブリ。船上で1尾ずつ活締めし直後に海水氷でマイナス2度の温度を保ったまま工場に運ばれるため、抜群の鮮度を誇る。手作業でさばいて塩漬けにし熟成。程良い塩分が良質な天然ブリの旨味と甘味を引き出し、もちもちとした食感はご飯のおかずにも、酒の肴にもぴったりだという。飲食店・宿泊施設など向けの業務用と、一般客用の小売用があり、小売用は森町や鹿部町、木古内町の道の駅のほか、同社でも購入できる。
加工で付加価値を付け 地元漁師をサポート
近年、多くの水産加工場で主原料の確保には漁獲量が安定しない天然の水産資源より、ホタテなどリスクの少ない養殖の水産資源を選ぶ事業所が増えているが、ジョウヤマイチ佐藤では、天然資源にこだわり、生産者、加工者それぞれの目線や立場を考慮しながら、ともに発展していけるように手を尽くす。善高専務は「地元の漁師さんが命がけで獲ってきた魚が最上級であるからこそ、シンプルな加工でおいしい商品が作れる」と生産者への信用と信頼をベースに生み出される良質な商品は、食通たちの心を掴み、全国はもちろん海外へも販路を拡大し続けている。鮮度の良い魚をすぐに入手できる立地の良さ、少量生産で人の手を掛けて丁寧に作れる利点を生かし、地元宿泊施設などからの商品開発依頼にもフットワークを軽く対応。また、生産者との対話を大切にし、加工には不向きとされてきた魚も有効活用を探る。「加工することで商品価値を高め、生産者さんたちを支援できれば。いずれは魚だけでなく総合的に北海道の食の多面性を発信できるよう、会社のスタイルを常に変えていけるようにしたい」と、人との縁をつなぎ、長期的な未来を見据えた挑戦を続けている。
ジョウヤマイチ佐藤
森町港町6‐4
☎01374‐2‐7731
9:00~17:00
土曜9:00~12:00
日曜、祝日定休 P有り
ハコラク2022年11月号掲載