商品開発へ挑むスタッフの熱意が
街の活気を呼び寄せる一手に
肉のプロと和食料理人の知恵と技術を集結
函館市内で飲食店を展開する「有限会社アップスタートカンパニー」は、建築業などさまざまな職業を経て独立した佐藤将道社長が2004年に法人化。函館市鍛治で経営していた居酒屋を本町へと移転し、11年に「牛タン日本一を目指す」がコンセプトの「焼肉物語 牛若」にリニューアルした。現在は姉妹店として本町に「はなれ」、若松町に「ユニゾ函館駅前店」の計3店舗を構える。15年には日本料理店「炭火割烹 菊川」を開店し、17年にグループ会社として「株式会社菊川」を設立した。牛若は国産黒毛和牛にこだわり、取引する全国各地の食肉会社14、5社から部位ごとに最高級肉を仕入れて提供。肉質の良さだけでなく丁寧な下処理や工夫を凝らした盛り付け、下味と付けダレに和の技法を融合するなど、肉に精通したスタッフと和食料理人の知識や技術をフルに生かす焼肉が評判を集め、有名店へと成長を遂げた。また、コロナ禍で外食産業が打撃を受ける中、「お店の肉を家でも食べたい」という客の要望に応え、20年に「牛若精肉部」を本店に併設し、精肉の直売もスタート。SNSと動画サイトで店の魅力を発信しファンを増やすとともに、人材育成にも重点を置きスタッフの自主性とアイデアを尊重するなど、柔軟な経営を続けている。
スタッフが自発的に商品ブランド化に取り組む
味付けジンギスカンと焼肉のタレを商品化したのを皮切りに始まった「牛若ブランド」の物販開発は、ほとんどが我孫子麻衣統括部長を筆頭にしたスタッフによる発案。佐藤社長は「肉やタレ、調味料をブランド化させる構想や動きは前からあったが、本格化したのはコロナ禍の時」と振り返る。看板商品である牛タンの精肉過程で発生するロス部分を、スープのダシなどに使用してきたが、コロナ禍では消費し切れず在庫を多数抱えることに。かねてから牛タンを通じ、知名度向上を目指していたスタッフが力を合わせ、「客足が完全には元に戻っていない街にかつての活気を呼び戻す一助になれば」と、昨年春頃に「食べる牛タン辣油」「牛タン肉味噌」の開発に着手。佐藤社長と和食料理人の助言を参考に、女性を販売ターゲットに、商品コンセプトを〝ご飯の友達〟と設定し、試作を重ね同年秋発売を開始した。「辣油」はフライドガーリック香る甘辛さ、「肉味噌」はショウガの風味が後を引く、濃い目の味付け。じっくりと炒めて旨味と肉々しい食感を引き出した粗挽きの牛タンに調味料を加えることで、良質な素材が持つ本来の味をより際立たせている。主役にも脇役にもなり、ご飯も酒も進むこと請け合いの仕上がりに。商品は公式オンラインショップと本店で購入可能。佐藤社長は「購入者からの評判も上々。今後どのように生産ラインを保つか課題は多々あるが、いずれはふるさと納税返礼品、海外展開も考えていきたい」と、確かな手応えを武器に先を見据えている。
有限会社
UP.START.COMPANY
函館市本町10‐9 藤ビル1F
☎0138‐56‐5454
※店舗で購入する場合は要電話連絡
ハコラク2024年3月号掲載