“ウニ屋”ならではの味を追求した商品を
函館観光の呼び水に
ミョウバン・塩水不使用 ウニ本来の味を提供
高い技術によるウニの流通を実現させ、豊洲市場をはじめ、全国各地の寿司店、料亭などからも厚い信頼を寄せられているウニ加工会社「村上商店」は、1954年創業。旧恵山町の漁協からウニを買い付け、自宅でむき身に加工して鮮魚店へ販売したのが始まりで、自社工場の規模拡大のため函館市宮前町、亀田港町を経て、98年に現在の場所へ移転した。99年に函館朝市に「うにむらかみ函館本店」をオープンしたのを契機に、小売業と飲食業へ参入。同時にミョウバンを使わない無添加ウニの製造を本格化させた。無添加ウニを主役に据えたメニューの提供、ウニ加工品の販売をスタートすると、目新しさや味の良さが話題を呼び、一躍、函館を代表する名店へと成長を遂げた。現在は函館駅前店、日本生命札幌ビル店(札幌市)を含めた3店舗を展開する。飲食事業を立ち上げた村上りえ子副社長、昨年3代目を継いだ娘の朋子社長を中心に、料理人たちと力を合わせて、和洋取り入れたメニューを打ち出し、飽きさせない工夫を凝らす。オンラインショップ、催事事業にも注力し、北海道の美味を全国の家庭へと届けている。
高品質な材料をぜいたくに使う 全国でも人気のウニ加工品
使用するウニは主に北海道産。旬のものを仕入れて保冷トラックで鮮度を保ったまま自社工場へ運ぶ。身がデリケートなこと、産地、種類によって固さが異なり機械作業ができないことから、殻割り、身むき、選別、折詰まで全て手作業。長年培った確かな技術で加工され市場に流通するウニは色や形も美しいが、加工の過程で色がやや見劣りするものやサイズが細かいものも出てくる。それらを活用して家庭用に製造していた塩漬けのウニを、瓶詰にして販売してみると人気商品となり、加工品も手掛けるようになったという。本格的に「ごはんのおかずシリーズ」として商品を展開していったのは小売業と飲食業に参入してから。村上社長は「ミョウバンを使わない無添加ウニの商品化は当時、革新的でした。手間もリスクもありましたが、ウニ本来の味を広く知ってほしかった」と話す。道産キタムラサキウニを原料にし、粒うに、あわび雲丹味噌和え、うに醤油漬、うにバターなどを開発。専門店ならではのアイデアが詰まった商品は、テレビや雑誌でも次々と取り上げられ、常に注目を集めている。
需要を掘り起こし商品開発 販路拡大で地元のPRも
「ごはんのおかずシリーズ」の中でも人気の「雲丹の佃煮」は、飲食店で提供していたメニュー。「お土産で買って帰りたい」と来店客からのリクエストを受けて15年ほど前に商品化へと踏み切った。食材は蒸して甘みが増したキタムラサキウニのみ、調味料はしょう油とみりんだけと、原材料はいたってシンプル。焦げ付かないように、身が崩れないようにと時折鍋をゆすりながら、じっくりと煮詰めていくだけで生まれる繊細な味わい、しっかりと口の中で感じられる粒感は、ウニが上質だからこそだという。パッケージにもこだわり、シリーズで並べたくなるような和テイストで優しい色使いのデザインに数年前一新した。常連客との距離が近い利点も生かし、市場調査だけでなく寄せられる意見をヒントにした商品開発にも意欲を燃やし、今後はシンガポールやタイへの販路拡大にも重点を置く。村上社長は「本州はもちろん海外でも商品や店の知名度を上げれば函館の宣伝にもなる。旅行客誘致のきっかけとなり、地元の発展の一助になれば」と広い視野で、しなやかに挑戦を続けていく。
株式会社 村上商店
北斗市七重浜1‐8‐10
☎0138‐48‐8311
https://www.uni-murakami.com/
ハコラク2023年7月号掲載