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名だたるVIP御用達! トヨタが誇る高級ミニバンの王者のすべて

【徹底解説】新型トヨタ・アルファード/ヴェルファイア 2023.10.14 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 強力なライバルを打ち倒し、今や高級ミニバン界の頂点に君臨しているトヨタの「アルファード/ヴェルファイア」。従来型から全面刷新された新型を、燃費や価格、装備、グレード構成、パワートレインの設定と、多角的な視点で徹底解剖する。
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ミニバンの地位を変えた立役者

国内最大級の高級LLサイズミニバンの元祖といえば、1997年に発売された初代「日産エルグランド」を思い浮かべる向きが多いだろう。ただ、時系列では1995年発売の「トヨタ・グランビア」のほうが早い(1999年には双子車「グランドハイエース」も追加)。どちらも同じFRレイアウトだったが、販売ではグランビアはエルグランドに圧倒された。

そして2002年5月、トヨタと日産がわずか1日ちがいの発売日(!)でLLミニバンを刷新。FRレイアウトを踏襲したエルグランドに対して、トヨタは従来とは別物のFFプラットフォームをベースとした初代アルファードを投入する。アルファードは、低床なFFパッケージならではの圧倒的な広さ、エルグランドに負けない押し出しの強いフェイス、V6エンジンのみだった日産に対して直4エンジンも用意するなど、多くの武器を投入して大成功。販売面ではエルグランドを大きく引き離し、LLミニバントップの地位を築いた。

2008年発売の2代目では、当時のネッツ店あつかいだった「アルファードV」にかえて、専用デザインの別車種としてヴェルファイアを設定。アルファードより“ちょいワル”な意匠を売りとしたヴェルファイアは、それまでミニバンに縁のなかった若者層も取り込んで、カリスマ的な人気を獲得する。さらに途中から(初代にも一時期あった)ハイブリッドをあらためて本格展開するなど、ライバルがつけいるスキのない盤石ぶりを見せつけた。

かつての宿敵エルグランドも、2010年にFFレイアウト化した3代目で反撃を試みるも、少なくとも販売面では最初からまるで歯が立たなかった。さらに、アルファード/ヴェルファイア(以下、アルヴェル)が「大空間高級サルーン」を開発テーマに掲げた3代目に進化した2015年には、もうひとつの競合車だった「ホンダ・エリシオン」が姿を消し、アルヴェルのひとり勝ち状態はさらに強まった。

そうこうしているうちに、アルヴェルは単なるミニバンではなく、政治家や著名人が運転手付きで乗るショーファードリブンカーとしても定着。いつしかミニバンの地位すら変えてしまった。それだけに、8年以上ぶりの刷新となる今回の新型では、開発に際して名だたるVIPたちの意見も参考にされたとか。

2023年6月に発売された新型「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」(写真はアルファード)。アルファードとしては4代目、ヴェルファイアとしては3代目のモデルとなる。(写真:山本佳吾)
2023年6月に発売された新型「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」(写真はアルファード)。アルファードとしては4代目、ヴェルファイアとしては3代目のモデルとなる。(写真:山本佳吾)拡大
インテリアの仕立ては、一般的なミニバンのイメージとは一線を画す上質なもの。装飾パネルや表皮など、各部の素材はモデルやグレードに応じて使い分けられている。(写真:峰 昌宏)
インテリアの仕立ては、一般的なミニバンのイメージとは一線を画す上質なもの。装飾パネルや表皮など、各部の素材はモデルやグレードに応じて使い分けられている。(写真:峰 昌宏)拡大
過去のモデルに照らし合わせると、現状における新型のラインナップは明らかに上級グレードのみに絞られている。それだけに機能・装備は充実しており、例えば前席には電動調整機構やシートヒーター/ベンチレーション機能などが、全車に標準装備される。(写真:峰 昌宏)
過去のモデルに照らし合わせると、現状における新型のラインナップは明らかに上級グレードのみに絞られている。それだけに機能・装備は充実しており、例えば前席には電動調整機構やシートヒーター/ベンチレーション機能などが、全車に標準装備される。(写真:峰 昌宏)拡大
「アルファード」と「ヴェルファイア」(写真)の2モデルが設定されるのは従来と同様。ただし「ただの“顔ちがい”」だったこれまでとは異なり、内外装の仕立てやシャシーチューニング、パワートレインの設定など、各所で差異化が図られるようになった。(写真:荒川正幸)
「アルファード」と「ヴェルファイア」(写真)の2モデルが設定されるのは従来と同様。ただし「ただの“顔ちがい”」だったこれまでとは異なり、内外装の仕立てやシャシーチューニング、パワートレインの設定など、各所で差異化が図られるようになった。(写真:荒川正幸)拡大
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【ラインナップ】
現状ではグレード数もボディーカラーも限定的

新型アルファードとヴェルファイアには、それぞれに2種類のパワートレインが設定されており、アルファードの福祉車両「ウェルキャブ」を除くと、トリム装備グレードも2種類ずつ用意される。アルヴェルともに上級グレードは「エグゼクティブラウンジ」で、その下の通常グレードが、アルファードでは「Z」、ヴェルファイアでは「Zプレミア」となる。

これらすべてのグレード、すべてのパワートレインに2WDと4WDがあるいっぽうで、「エグゼクティブラウンジが設定されるのはハイブリッド車のみ」といった規制(?)もあり、基本的な選択肢は各モデルで6種類となる。シートレイアウトはいずれもセカンドシートが独立式となる7人乗りで、車体色はアルファードが3色、ヴェルファイアが2色だ。

エグゼクティブラウンジとZ/Zプレミアの最大のちがいはセカンドシートだ。Z/Zプレミアでも固定式アームレストやパワーオットマン付きの「エグゼクティブパワーシート」が備わるが、上級仕様のエグゼクティブラウンジでは、さらに豪華な「エグゼクティブラウンジシート」が標準装備となる。

いずれにせよ、先代の最盛期にはパワートレインや駆動方式、シートアレンジだけで、アルヴェルそれぞれに30種類近くも選択肢があったことを考えると、新型のそれは激減したというほかない。車体色の選択肢も最低限に抑えられている。グレードや仕様数の削減は時代の流れでもあるが、今回の場合は納期が長期化している昨今の実情をかんがみて、スムーズな供給を実現するために選択肢を絞っている側面もある。

また、こうして現状のラインナップを整理してみると、アルファードよりヴェルファイアの価格帯が高いことに気づく。これはタイヤサイズや外観の加飾装備、シャシーメカニズム、パワートレインの設定のちがいによるものだ。こうして明確に差別化されるのも、企画段階から全販売店での併売を想定した新型ならではの特徴といえるだろう。

【主要諸元】

グレード名   アルファード
Z
アルファード
Z
アルファード
Z
アルファード
Z
アルファード
ロイヤルラウンジ
アルファード
ロイヤルラウンジ
ヴェルファイア
Zプレミア
ヴェルファイア
Zプレミア
ヴェルファイア
Zプレミア
ヴェルファイア
Zプレミア
ヴェルファイア
ロイヤルラウンジ
ヴェルファイア
ロイヤルラウンジ
基本情報 新車価格 540万円 559万8000円 620万円 642万円 850万円 872万円 655万円 674万8000円 690万円 712万円 870万円 892万円
駆動方式 FF 4WD FF 4WD FF 4WD FF 4WD FF 4WD FF 4WD
動力分類 エンジン エンジン ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド エンジン エンジン ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド
トランスミッション CVT CVT CVT CVT CVT CVT 8AT 8AT CVT CVT CVT CVT
乗車定員 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名 7名
WLTCモード燃費(km/リッター) 10.6 10.3 17.7 16.7 17.5 16.5 10.3 10.2 17.7 16.7 17.5 16.5
最小回転半径 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m 5.9m
エンジン 形式 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC
排気量 2493cc 2493cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2393cc 2393cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 134[182]/6000 134[182]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 205[279]/6000 205[279]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 235[24.0]/4100 235[24.0]/4100 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500 430[43.8]/1700-3600 430[43.8]/1700-3600 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500 236[24.1]/4300-4500
過給機 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー ハイオク ハイオク ハイオク レギュラー レギュラー レギュラー ハイオク
フロントモーター 最高出力 (kW[PS])     134[182] 134[182] 134[182] 134[182]     134[182] 134[182] 134[182] 134[182]
最高トルク (N・m[kgf・m])     270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5]     270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5]
リアモーター 最高出力 (kW[PS])       40[54]   40[54]       40[54]   40[54]
最高トルク (N・m[kgf・m])       121[12.3]   121[12.3]       121[12.3]   121[12.3]
寸法・重量 全長 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm 4995mm
全幅 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm 1850mm
全高 1935mm 1935mm 1935mm 1935mm 1935mm 1935mm 1945mm 1945mm 1945mm 1945mm 1945mm 1945mm
ホイールベース 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm 3000mm
車両重量 2060kg 2120kg 2160kg 2220kg 2230kg 2290kg 2180kg 2240kg 2190kg 2250kg 2250kg 2310kg
タイヤ 前輪サイズ 225/60R18 225/60R18 225/60R18 225/60R18 225/65R17 225/65R17 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19
後輪サイズ 225/60R18 225/60R18 225/60R18 225/60R18 225/65R17 225/65R17 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19 225/55R19

 

「アルファード」の上級グレード「エグゼクティブラウンジ」。外装では、17インチホイールやサイドマッドガードのメッキモールなどで「Z」と見分けられる。写真の車体色「プレシャスレオブロンド」は、現状では「アルファード」のみの専用色となる。
「アルファード」の上級グレード「エグゼクティブラウンジ」。外装では、17インチホイールやサイドマッドガードのメッキモールなどで「Z」と見分けられる。写真の車体色「プレシャスレオブロンド」は、現状では「アルファード」のみの専用色となる。拡大
「エグゼクティブラウンジ」は2列目に専用シートを備えたショーファードリブン仕様で、高遮音性ガラスやアクティブノイズコントロール機能により、車内の静粛性がより高められている。
「エグゼクティブラウンジ」は2列目に専用シートを備えたショーファードリブン仕様で、高遮音性ガラスやアクティブノイズコントロール機能により、車内の静粛性がより高められている。拡大
「エグゼクティブラウンジ」には左右独立ムーンルーフが標準で装備される。パワーシートやパワーウィンドウ、ルーフ/サイドサンシェード、パワースライドドア、後席用エアコン、オーディオ、リアエンターテインメントシステムなどの操作は、タッチパネル式コントローラー「リアマルチオペレーションパネル」や、アームレストおよび天井のコントロールパネルで操作する。
「エグゼクティブラウンジ」には左右独立ムーンルーフが標準で装備される。パワーシートやパワーウィンドウ、ルーフ/サイドサンシェード、パワースライドドア、後席用エアコン、オーディオ、リアエンターテインメントシステムなどの操作は、タッチパネル式コントローラー「リアマルチオペレーションパネル」や、アームレストおよび天井のコントロールパネルで操作する。拡大
「アルファード」の標準グレードである「Z」。姉妹車である「ヴェルファイア」のラインナップを含め、現状ではこのグレードがアルヴェルのエントリーモデルに位置している。
「アルファード」の標準グレードである「Z」。姉妹車である「ヴェルファイア」のラインナップを含め、現状ではこのグレードがアルヴェルのエントリーモデルに位置している。拡大
「エグゼクティブラウンジ」ではプレミアムナッパレザーだったシート表皮は、「Z」では合成皮革に。セカンドシートのスライドやサイドサンシェードの操作は手動式で、アームレストなどもやや簡素なものとなるが(それでも十分ゴージャスだが)、おかげで2・3列目間のウオークスルーが可能となっている。
「エグゼクティブラウンジ」ではプレミアムナッパレザーだったシート表皮は、「Z」では合成皮革に。セカンドシートのスライドやサイドサンシェードの操作は手動式で、アームレストなどもやや簡素なものとなるが(それでも十分ゴージャスだが)、おかげで2・3列目間のウオークスルーが可能となっている。拡大
現状のラインナップで、もっともオーナーカーとしての特色が濃い「ヴェルファイアZプレミア」。外装にも黒メッキの金属装飾が施され、より“ちょいワル”感を前面に押し出したものとなっている。
現状のラインナップで、もっともオーナーカーとしての特色が濃い「ヴェルファイアZプレミア」。外装にも黒メッキの金属装飾が施され、より“ちょいワル”感を前面に押し出したものとなっている。拡大
現状ではスタンダードグレードあつかいの「アルファードZ」と「ヴェルファイアZプレミア」だが、後者のシート表皮には「エグゼクティブラウンジ」と同じくプレミアムナッパレザーが用いられ、またサイドサンシェードの操作も電動式となる。
現状ではスタンダードグレードあつかいの「アルファードZ」と「ヴェルファイアZプレミア」だが、後者のシート表皮には「エグゼクティブラウンジ」と同じくプレミアムナッパレザーが用いられ、またサイドサンシェードの操作も電動式となる。拡大
「アルファード」には福祉車両の「サイドリフトアップチルトシート装着車」も設定。ベース車両のグレードは「G」とされており、合成皮革とファブリックのコンビシートが装備されている。
「アルファード」には福祉車両の「サイドリフトアップチルトシート装着車」も設定。ベース車両のグレードは「G」とされており、合成皮革とファブリックのコンビシートが装備されている。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
新世代のハイブリッドとターボエンジンを採用

久々の刷新となる新型アルヴェルだが、シートアレンジやドア形式などの基本パッケージレイアウトはこれまでと同様で、車体サイズにも大きな変化はない。ただし、基本骨格はすべて「TNGA」をうたう最新世代となり、メカニズムにおける先代との共通点はごくわずかだ。

より正確なドライビングフィールと、高速におけるセカンドシートの乗り心地や静粛性を改善するために、車体各部の“着力点剛性”を大幅に引き上げたとか。2.5リッターハイブリッドと2種類の純エンジンという、パワートレインの選択肢の数は先代と変わらないものの、2.5リッター自然吸気エンジン以外は先代とは別物の、最新の「TNGA」世代となる。また全パワートレインにFFと4WD(ハイブリッドは電動式E-Four)が用意される。

主力となるハイブリッドは、2.5リッターという基本的な排気量は変わりないが、エンジンもハイブリッドシステムも先代から刷新。システム最高出力は先代の197PSから250PSに引き上げられた。燃費はFFで17.5~17.7km/リッター、4WDで16.5~16.7km/リッター(WTLCモード、以下同じ)となっており、先代(設定は4WDのみで燃費は14.8km/リッター)からの進化のほどがわかる。

いっぽう、純エンジン車のパワートレインに目をやると、新型ではアルファード専用となる2.5リッター自然吸気エンジンは先代の改良型で、変速機も先代同様のCVT。182PS/235N・mという最高出力/最大トルクも変わらず、FFで10.6km/リッター、4WDで10.3km/リッターという燃費性能も大きくはちがわない印象だ。

これに対し、新型ではヴェルファイア専用とされたハイパワー仕様のエンジンは、従来の3.5リッターV6自然吸気から2.4リッター直4ターボに切り替えられた。いわゆるダウンサイジングエンジンで、279PSという最高出力は先代の301PSに一歩ゆずるが、430N・mという最大トルクは先代(361N・m)より2割も強力だ。変速機は最新の8段AT。FFで10.3 km/リッター、4WDで10.2km/リッターの燃費も、先代より若干の改善をみている。

パワートレインの設定以外にもアルヴェルにはちがいがあり、ドライバーズカーとされるヴェルファイアには車体のフロント部分に専用の補強を追加。新機軸の「周波数感応型ショックアブソーバー」は主に高速域でのブルブルとした振動を抑える効果があるといい、アルファードではエグゼクティブラウンジに、ヴェルファイアでは全車に装備されるものの、やはりチューニングはそれぞれで異なっている。

新型では「性能を世界基準に昇華させる」という開発テーマのもとに、プラットフォームを刷新。足まわりの設計変更や車両剛性の強化(従来比約50%増)などを通し、根本から制振性、静粛性、燃費性能、ドライバビリティーなどの改善が図られた。
新型では「性能を世界基準に昇華させる」という開発テーマのもとに、プラットフォームを刷新。足まわりの設計変更や車両剛性の強化(従来比約50%増)などを通し、根本から制振性、静粛性、燃費性能、ドライバビリティーなどの改善が図られた。拡大
ハイブリッド車のパワートレインはエンジンも電動システムも全面刷新。駆動方式は先代では4WDのみだったが、新型ではFFも選べるようになった。
ハイブリッド車のパワートレインはエンジンも電動システムも全面刷新。駆動方式は先代では4WDのみだったが、新型ではFFも選べるようになった。拡大
「アルファードZ」の純エンジン車に搭載される2.5リッター自然吸気ガソリンエンジン「2AR-FE」。先代から踏襲された唯一のパワーユニットで、CVTと組み合わされる。
「アルファードZ」の純エンジン車に搭載される2.5リッター自然吸気ガソリンエンジン「2AR-FE」。先代から踏襲された唯一のパワーユニットで、CVTと組み合わされる。拡大
「ヴェルファイアZプレミア」に設定される2.4リッター直4ガソリンターボエンジン「T24A-FTS」。従来型の3.5リッターV6エンジンを上回る低速域でのトルクの太さと、スポーティなサウンドチューニングが魅力とされている。
「ヴェルファイアZプレミア」に設定される2.4リッター直4ガソリンターボエンジン「T24A-FTS」。従来型の3.5リッターV6エンジンを上回る低速域でのトルクの太さと、スポーティなサウンドチューニングが魅力とされている。拡大
車両の操作応答性を高めるべく、「ヴェルファイア」には専用のボディー剛性部品として、ラジエーターサポートとサイドメンバーをつなぐブレースが追加されている。
車両の操作応答性を高めるべく、「ヴェルファイア」には専用のボディー剛性部品として、ラジエーターサポートとサイドメンバーをつなぐブレースが追加されている。拡大
サスペンションは、前が新開発のマクファーソンストラット式、後ろが従来型のものに改良を加えた、ダブルウイッシュボーン式だ。
サスペンションは、前が新開発のマクファーソンストラット式、後ろが従来型のものに改良を加えた、ダブルウイッシュボーン式だ。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
フロントマスクやホイールなどで差別化を図る

アルヴェルはもはやトヨタの定番中の定番といえる高級サルーンだけに、デザインやパッケージレイアウト、車体サイズはキープコンセプトである。全長が45mm増の4995mmとなった以外は、1850mmという全幅は先代とピタリ同寸、1935~1945mmという全高も先代と実質的に同じと考えていい。

エクステリアデザインは、歴代アルヴェルが培ってきた「重厚さと前進する勢い」を強化しつつ、わかりやすい豪華さと上質さを加味しているのがコンセプト。「闘牛のように大きな筋肉のカタマリ」を表現したというサイドビューは、テールに向けて明確に下降していく高級サルーンらしいベルトラインと、先代より明らかに強い抑揚が特徴だ。聞けば全幅はそのままながら、新型のサイドパネルの凹凸は最大44mmに達しており、これは先代のそれより20mmも増えているという。

フロントグリルもアルファードが“格子”、ヴェルファイアが“横桟”という基本意匠の伝統は踏襲。いっぽう、逆スラント気味のノーズ形状は高級車らしさとスピード感を、デイタイムランニングライトを融合させたグリルデザインは今っぽさを意図しているとか。

ホイールサイズは、アルファードでは最上級のエグゼクティブラウンジが17インチで、Zが18インチ、ヴェルファイアでは全車19インチが標準となる。これにより「アルファードは乗り心地重視で、なかでもエグゼクティブラウンジは別格のしなやかさ」、そして「ヴェルファイアはドライバーズサルーン」というキャラクターを明確化している。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4995×1850×1935~1945mmと、一般的な機械式駐車場に収まる寸法を維持。サイドビューでは後ろ下がりのベルトラインや、フロントフェンダーからフロントドアにかけての大胆な面構成が目を引く。(写真:山本佳吾)
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4995×1850×1935~1945mmと、一般的な機械式駐車場に収まる寸法を維持。サイドビューでは後ろ下がりのベルトラインや、フロントフェンダーからフロントドアにかけての大胆な面構成が目を引く。(写真:山本佳吾)拡大
グリルに破線状に配されたメッキ装飾が目を引く「アルファード」のフロントマスク。新型「アルヴェル」のフロントは、エンブレム部分が最先端となる逆傾斜の形状(逆スラント)となっている。(写真:山本佳吾)
グリルに破線状に配されたメッキ装飾が目を引く「アルファード」のフロントマスク。新型「アルヴェル」のフロントは、エンブレム部分が最先端となる逆傾斜の形状(逆スラント)となっている。(写真:山本佳吾)拡大
太い横桟のバーが特徴の「ヴェルファイア」のフロントマスク。グリルの意匠はグレードによって異なり、「エグゼクティブラウンジ」(写真)ではガンメタ塗装にスモークメッキのモールが組み合わされる。(写真:山本佳吾)
太い横桟のバーが特徴の「ヴェルファイア」のフロントマスク。グリルの意匠はグレードによって異なり、「エグゼクティブラウンジ」(写真)ではガンメタ塗装にスモークメッキのモールが組み合わされる。(写真:山本佳吾)拡大
フロントまわりやアルミホイールに加え、リアコンビランプのデザインも「アルファード」(上)と「ヴェルファイア」(下)で異なる。
フロントまわりやアルミホイールに加え、リアコンビランプのデザインも「アルファード」(上)と「ヴェルファイア」(下)で異なる。拡大

【インテリア/荷室/装備】
追って8人乗り仕様が設定される予定も

プラットフォームの刷新によってドライビングポジションはより自然なものとなり、スライドドアの開口幅も先代比で40mm増の820mmとしている。3000mmというホイールベースや1040mmのリアオーバーハングの値は変わりなく、ドラポジの改善でフロントシートのヒップポイントが後退しているものの、2~3列目もあわせて後退しているのが特徴だ。結果として、前後席間の距離はセカンドで5mm、サードで10mm拡大している。

先述のとおり、新型アルヴェルに用意されるシートレイアウトは、現時点ではセカンドが独立2座となる7人乗りのみ。ただ、開発陣によると先代でも4割ほどのシェアがあったセカンドベンチシートの8人乗りもすでに開発済みで、今後の需給状況などを見て、適切な時期に追加される予定という。

アルヴェルそれぞれで2種類ずつ用意されるトリム装備グレードだが、いずれも本来なら上級グレードにあたるもので、装備は充実している。14インチの大型ディスプレイオーディオや特徴的な大型ルーフコンソールも全車につく。いっぽうで、インテリアの加飾パネルは最上級のエグゼクティブラウンジが本木目の「UZURAMOKU」なのに対して、Z/Zプレミアはダークブラウンの木目調となる。

もっとも、最上級のエグゼクティブラウンジとその下のZ/Zプレミアの最大のちがいはセカンドシートで、前者では収納テーブル付きの大型アームレストや、パワースライド機能、低反発ウレタン表皮、そして脱着式の「リアマルチオペレーションパネル」などが備わる、豪華なエグゼクティブラウンジシートとなる。ルーフコンソールからつり下げられる「14インチリアシートエンターテインメント」もエグゼクティブラウンジの専用装備で、Z/Zプレミアにはオプションでも用意されていない。

「ヴェルファイアZプレミア」のインテリア。新型「アルヴェル」のシートレイアウトは、今のところ2列目キャプテンシートの7人乗りのみだが、2列目ベンチシートの8人乗りも設定される予定だ。
「ヴェルファイアZプレミア」のインテリア。新型「アルヴェル」のシートレイアウトは、今のところ2列目キャプテンシートの7人乗りのみだが、2列目ベンチシートの8人乗りも設定される予定だ。拡大
インテリアカラーは「ブラック」(中央)が基本で、「アルファード エグゼクティブラウンジ」には「ニュートラルベージュ」(上)も、「ヴェルファイアZプレミア/エグゼクティブラウンジ」には「サンセットブラウン」(下)も用意されている。
インテリアカラーは「ブラック」(中央)が基本で、「アルファード エグゼクティブラウンジ」には「ニュートラルベージュ」(上)も、「ヴェルファイアZプレミア/エグゼクティブラウンジ」には「サンセットブラウン」(下)も用意されている。拡大
「エグゼクティブラウンジ」に備わる、その名も「エグゼクティブラウンジシート」。シートそのものの構造としては、回転格納式テーブルや充実した収納が備わる大型のアームレスト、スライド機能付きの電動オットマンなどが、「Z/Zプレミア」のセカンドシートとの大きなちがいだ。
「エグゼクティブラウンジ」に備わる、その名も「エグゼクティブラウンジシート」。シートそのものの構造としては、回転格納式テーブルや充実した収納が備わる大型のアームレスト、スライド機能付きの電動オットマンなどが、「Z/Zプレミア」のセカンドシートとの大きなちがいだ。拡大
ラゲッジスペースはサードシートをスライドさせたり、跳ね上げたりすることで拡張が可能。「エグゼクティブラウンジ」なら、荷室側からもセカンドシートの電動スライド/リクライニング機構を操作できる。(写真:峰 昌宏)
ラゲッジスペースはサードシートをスライドさせたり、跳ね上げたりすることで拡張が可能。「エグゼクティブラウンジ」なら、荷室側からもセカンドシートの電動スライド/リクライニング機構を操作できる。(写真:峰 昌宏)拡大

【バイヤーズガイド】
オーナーカーとして選ぶなら「Z」か「Zプレミア」

先述のとおり、アルヴェルはもともと販売チャンネルで“すみ分け”していたフロントデザインちがいの双子車であり、メカニズムやグレード構成も事実上同じクルマだった。しかし、新型は2020年5月からの「全販売店で全車種取りあつかい」を前提に開発されており、デザインだけでなくメカニズムでも、アルファードとヴェルファイアで明確に差別化されている。

パワートレインも売れ筋の2.5リッターハイブリッドはアルヴェルで共通だが、純エンジンは2.5リッター自然吸気がアルファード専用、2.4リッターターボがヴェルファイア専用となる。また先述のとおり、ドライバーズカー的なキャラクターをより鮮明に打ち出すヴェルファイアは、アルファードに設定のない19インチタイヤが全車標準設定となる。

今やトヨタでも屈指の高級車となったアルヴェルゆえ、どうしても最上級の「エグゼクティブラウンジ」に目がいく。しかし、その専用装備は大半が2列目のエグゼクティブラウンジシート周辺に集中しており、あくまで“ショーファードリブン”を想定した仕立てであることには留意したい。

その2列目シートにしても、シート自体のサイズや形状、電動リクライニング機構などの椅子としての基本機能は、上級のエグゼクティブラウンジシートも、ZやZプレミアに備わるエグゼクティブパワーシートも共通である。つまり、2列目の快適性はグレードを問わずに世界屈指ということだ。また、今回から2カ所のスライド位置で跳ね上げできるようになったサードシートの居住性も、基本的にグレードによる差はない。

アルファードのエグゼクティブラウンジは唯一の17インチホイール装着車で、乗り心地も最上級とされるが、運転感覚にはちょっとクセがあり、ごく普通のドライバーが同乗者に優しい運転をしやすいのは18インチ、あるいは19インチのヴェルファイアのほうだ。

というわけで、オーナードライバーが自分用に購入するなら、アルファードならZ、ヴェルファイアはZプレミアが基本と考えるべきか。ZやZプレミアなら、パワートレインもそれぞれ2種類から選べるのもうれしい。後席へのサービス精神旺盛な向きはリアエンターテインメントシステムがエグゼクティブラウンジ専用装備なのが気になると思うが、後席モニターは販売店オプションでもいくつか用意されるのでご安心を。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典、山本佳吾、峰 昌宏、荒川正幸、webCG/編集=堀田剛資)

ホイールの種類はモデルやグレードによって分けられているものの、「『アルファード エグゼクティブラウンジ』に『ヴェルファイア エグゼクティブラウンジ』の19インチホイールを履かせる」といった芸当も可能。また仕様によっては、販売店オプションで“GR”印の20インチアルミホイールも選択できる。
ホイールの種類はモデルやグレードによって分けられているものの、「『アルファード エグゼクティブラウンジ』に『ヴェルファイア エグゼクティブラウンジ』の19インチホイールを履かせる」といった芸当も可能。また仕様によっては、販売店オプションで“GR”印の20インチアルミホイールも選択できる。拡大
「Z/Zプレミア」に備わる「エグゼクティブパワーシート」。前項の写真と比べるとわかりやすいが、じつはヘッドレストや座面、背もたれなどの形状は、「エグゼクティブラウンジシート」と一緒なのだ。
「Z/Zプレミア」に備わる「エグゼクティブパワーシート」。前項の写真と比べるとわかりやすいが、じつはヘッドレストや座面、背もたれなどの形状は、「エグゼクティブラウンジシート」と一緒なのだ。拡大
前後席間距離が10mm伸びるなど、快適性が向上したサードシート。3人乗車はさすがにきついが、2人で乗るぶんには広さは十分。格納式のセンターアームレストやUSBポート(左右のトレイに各1個)も備わっている。
前後席間距離が10mm伸びるなど、快適性が向上したサードシート。3人乗車はさすがにきついが、2人で乗るぶんには広さは十分。格納式のセンターアームレストやUSBポート(左右のトレイに各1個)も備わっている。拡大
14インチのリアエンターテインメントシステム(写真)や15スピーカー+12chオーディオアンプの「JBLプレミアムサウンドシステム」は、「エグゼクティブラウンジ」の専用装備となる。ただし、前者については販売店オプションの後席ディスプレイで、ある程度代用できる。(写真:峰 昌宏)
14インチのリアエンターテインメントシステム(写真)や15スピーカー+12chオーディオアンプの「JBLプレミアムサウンドシステム」は、「エグゼクティブラウンジ」の専用装備となる。ただし、前者については販売店オプションの後席ディスプレイで、ある程度代用できる。(写真:峰 昌宏)拡大
オーナーカーとして購入するなら、お薦めは「アルファードZ」か「ヴェルファイアZプレミア」。後は、パワートレインやシート表皮、そして、決して小さいとはいえない価格差(同じパワートレインのハイブリッド車同士で比べても、アルファードZよりヴェルファイアZプレミアのほうが70万円も高い!)などを考慮し、もっとも納得のいく仕様を選べばいいだろう。(写真:花村英典)
オーナーカーとして購入するなら、お薦めは「アルファードZ」か「ヴェルファイアZプレミア」。後は、パワートレインやシート表皮、そして、決して小さいとはいえない価格差(同じパワートレインのハイブリッド車同士で比べても、アルファードZよりヴェルファイアZプレミアのほうが70万円も高い!)などを考慮し、もっとも納得のいく仕様を選べばいいだろう。(写真:花村英典)拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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