シーズンを折り返したJ2で、印象的な指揮官に出会った。カマタマーレ讃岐・北野誠監督である。
讃岐は22日の東京ヴェルディ戦に3-3で引き分けた。後半37分に勝ち越したが同41分に失点。連敗こそ5で止めたが、勝ち点3を目前で逃した。順位は降格圏の21位。勝ち点は最下位ザスパクサツ群馬と同じ14で、2勝は群馬の4勝を下回る全22チーム中最低の数字だ。
北野監督は、50歳の誕生日の17日に頭を丸めた。理由は一切、語らなかったというがスタッフも東京V戦への並々ならぬ思いを感じ取っていた。試合後に真意を聞くと「俺が逃げたらダメ。選手を鼓舞し続けるだけ。丸刈りにしても選手が気合入れなきゃ仕方ない。でも、まず俺がやらなきゃいけない」と答えた。
「こういう試合ばかり。あと1つ踏ん張れない」と悔やむが、3-4で敗れた8日のジェフユナイテッド千葉戦は、日本サッカー協会(JFA)審判委員会も認めた誤審によって敗れた。19日の「第4回JFAレフェリーブリーフィング」で、上川徹審判副委員長は、0-0の前半13分に千葉FWラリベイが決めた得点を「明らかにオフサイド」と断じた。後半33分に千葉が3-3に追いつくPKを与えた判定も、DF武田有祐がペナルティーエリア外でハンドを取られながら主審がエリア内とみなしたとし「明らかにペナルティーエリアの外。讃岐に申し訳ない」と謝罪した。
北野監督は千葉戦後「This is a football ビデオ判定の導入が待ち遠しい…逆もそうですけどね。だからこそサッカーって面白いと思う」と、ジョークを交えて審判の判定に疑問を呈しつつも批判は一切しなかった。
それが、東京V戦で龍谷大から新加入のDF長澤拓哉を初出場&先発に抜てきした意図を聞かれると「知ってもらわないといけない」と声を大にして訴えた。
監督 お前、負けてるからそんなこと言うだろうと思われるのは仕方ないけど言っていくしかない。うちはJ3と比べても断トツに小さいクラブ。皆さん、ご存じないでしょうが今週も毎日、グラウンドが違う。グラウンドがないので練習試合も出来ない。たまたまグラウンドが空いて組んだ試合で(長澤が)活躍した。練習試合がなかったら使わなかっただろう。選手は環境にも文句を言わず、しっかりやっている。次に頑張らなきゃいけないのはクラブ。俺の次に監督をやる人、力をつけてきているユースの選手のためにもクラブをつぶしちゃいけない。
10年に当時四国リーグの讃岐の監督に就任し、1年でJFLに昇格させ、13年に入れ替え戦を勝ち抜きJ2昇格に導いた。8年目の指揮は現役のJリーグ監督では最長で、日本協会の西野朗技術委員長がG大阪監督時代に記録したJリーグ記録10年に迫る。
首都・東京でのアウェー戦で、北野監督は記者を前に「就任8年目…施設が悪いとか今まで1回も言い訳がましいことは言ったことがない。与えられた環境でやると言ってきたけれど、変わらないから言わなきゃしょうがない」と環境面の改善を訴えた。その叫びからJ2と日本サッカーの現実を垣間見た思いだった。
香川にプロサッカーというレガシーを残すために、信念を曲げて“言い訳”を言った北野監督は、胸を張って、こうも言い放った。
監督 まだ降格が決まっているわけじゃない。J2の中でも全然、戦えるし、うちが弱いな、という人は多分、1人もいないと思う。これを続けていけば、強いチームになる。
北野監督の“おとこ気”に、会見場で胸が熱くなった。【村上幸将】