学生向け老年医学
教科書
の問題点を明らかにするために, 医学
教科書
に対する医学生の意識を調査した. 老年医学を含む臨床系統講義の受講を終了し, 老年科臨床実習に参加した医学部5年生 (1998年度98名, 1999年度95名) に対し, 老年医学の
教科書
に対する意識についての調査を無記名アンケート方式で行った. 内科学の
教科書
をもっている者は両年度とも100%, 診断学の
教科書
をもっている者は98年度51.0%, 99年度42.1%であったのに対し, 老年医学の
教科書
をもっている者は98年度5.1%, 99年度2.1%であった. 老年医学の
教科書
をもっていない理由は,「どの
教科書
がよいかわからないから」が98年度61.2%, 99年度56.8%;「必要がないから」が98年度13.3%, 99年度18.2%;「適当な
教科書
がないから」が98年度4.1%, 99年度4.2%;「その他」の理由が98年度16.3%, 99年度18.9%であった.
教科書
を選ぶ基準で最も重視するのは,「自分で実際に見て決める」が98年度39.8%, 99年度55.8%;「先輩・友人からの情報」が98年度41.8%,99年度35.8%;「教官の推薦」が98年度14.3%, 98年度5.3%であった. 老年医学の
教科書は内科学や診断学の教科書
に比べると, 自分で所持している医学生の割合は極めて低かった. しかし, 所持していない理由は必要がないからではなく, どの
教科書
がよいかわからないからという者が最も多かった. また,
教科書
を選ぶ基準としては, 教官の推薦よりも自分自身の判断や先輩, 友人からの情報を重視する姿勢が伺われた. これらの結果から, 学生向けに期待される老年医学
教科書
の条件として, 1) 内科学との相違を強調した老年医学および老年学の独自性, 2) 難し過ぎない学生向きの内容, 3) 持ち運びしやすい大きさと重さ, 4) 手頃な値段, などが考えられた. また, 老年医学の独自性を強調した講義を行うことが重要と考えられた.
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