激ロック×HMV&BOOKS online vol.136

GENRE：LOUDROCK
先導者たる面持ちで未来へと進み行こうとしているTRiDENT
美味しいところ全部盛りのベスト盤的な2ndフル・アルバム
ドラクロワの名画“民衆を導く自由の女神”の如く。TRiDENTは今、強き意思を音として掲げながら、先導者たる面持ちで未来へと進み行こうとしているようだ。彼女たちにとって2ndフル・アルバムとなる今作は、既発のミニ・アルバム『D-X』（2022年リリース）、『Dream Up』（2023年リリース）、『spice “X”』（2024年5月リリース）に収録されていた楽曲たちと、堀江晶太（PENGUIN RESEARCH／Ba）が制作に参加している新曲「Haha!」、AliAのEREN（Gt）が手掛けている新境地バラード「U」を加えたベスト盤的内容となっており、もはや代表曲となった「CRY OUT」もしっかりとインクルード。美味しいところが全部盛りの贅沢仕様なのだ。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：HEAVY ROCK
メロディック・グルーヴ・メタル・バンド SAISEIGA史上
最もダーク＆ヘヴィな最新アルバム
“SAISEIGA史上最もダーク＆ヘヴィなアルバム”をコンセプトに制作されたアルバム。結成4年、これまで様々な表現を模索し、積み重ねてきた自身の音楽を自ら塗りつぶし結合させたと語り、過去作とは明らかに異なる印象を与える。新たな始まりを告げる「STRANGE RAIN」から作品の世界の奥深くへ誘う「Catharsis」と続き、ダークながらキャッチーな「W.O.L.F」や、しっかり聴かせるバラード曲「Eclipse」といった、多彩且つ緻密に構築された楽曲が織りなす物語に浸っていると、ライヴの喧騒を想起させる「轟音爆散TORNADO」で激しく突き抜ける。彼女等の1つの答えであり、新たな代表作となるであろう渾身の作品を引っ提げたバンドの躍進に大いに期待したい。
フジジュン【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
多彩な音楽飲み込みラウドに轟かせる4人組ガールズ・バンド
デビュー・アルバム『SCØRE』で全方位を華麗に射抜く！
2023年4月結成の4人組ガールズ・バンドによるデビュー・アルバム。“古代”の意味を持つ“パレオ”と、“新世代”を表す“ネオ”を組み合わせた造語をバンド名に掲げていることもあり、爽快感のあるピコリーモな「アレグロ」や、センチメンタルと憂いに満ちた「凍蝶の哭」、重量感のあるリフと獰猛なシャウトを畳み掛ける「REM」に、シンフォニック・メロデスな「in Gloria Dei」、トレンドのビートも柔軟に取り込んだポップ・ナンバー「CRAZY & NOiSY & CUTiE MAGiC！」等、世代間もジャンルの壁も飛び越えていく実に多彩な全11曲を収録。どれもラウド且つ骨太なバンド・サウンドを軸にしていることもあり、ライヴ映えも抜群。期待のニューカマーだ。
山口 哲生【ライター推薦】

GENRE：ROCK, EMO
メジャー・デビュー10周年、結成20周年のブルエンが放つ
“変わる”勇気を奮い起こすドラマ“ウイングマン”OPテーマ
3作連続シングル・リリース中のBLUE ENCOUNTが、第2弾としてドラマ“ウイングマン”OPテーマを表題に据えた『chang[e]』を発表。今作の表題曲はヘヴィでアグレッシヴなイントロが印象的だ。特撮ヒーローの世界観との親和性も抜群で、ドラマにとことん寄り添いながら、“変わる”勇気を奮い起こす熱量MAXの歌詞でブルエンらしく焚きつける。過去MVと今作が繋がる、20周年イヤーに相応しいエモいMVにも注目。一方カップリングの「プロメテウス」は、軽妙なリズムで絡み合う楽器陣の遊び心が効いたダンサブルな演奏と、爽快に駆け抜けるサビの透明感溢れる歌声が気持ちいい。円熟味を帯びながら、変わらない信念と変わることを恐れない強さを感じさせる快作。
中尾 佳奈【ライター推薦】

GENRE：HARDCORE PUNK
現代の社会情勢をストレートに描写し、中指を突き立て、唾を吐き掛ける――
ハードコア・パンクの本質を体現するSLANGの約10年ぶりの8thフル・アルバム
札幌が世界に誇るハードコア・バンド、SLANGの約10年ぶり8枚目となるフル・アルバム。9曲で約13分のコンパクトな作品だが、一曲一曲のサウンドと歌詞は磨き抜かれた短刀のように鋭く強靭で強烈。子供と老人を搾取する社会構造、腐敗した政党、沖縄の基地問題、パレスチナで起きている虐殺、人種差別主義等現代の社会情勢をストレートに描写し、それへ中指を突き立て、唾を吐き掛ける姿勢はまさにハードコア・パンクの本質だ。KOの怒りの咆哮はもちろん、暴走するビートや、もがき苦しむようなギター・ソロも焦燥感と緊迫感に拍車を掛けている。再生時間こそ短いが、それ以上の時間をかけて内容と向き合い、思考を巡らせるべき1枚と言えるだろう。
菅谷 透【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
“説明に不要な存在が斬り落とされた”と言える
8周年迎えたRAZORのベスト盤第2弾
哲学の世界における“オッカムの剃刀”とは、つまり“説明に不要な存在を斬り落とすこと”を、剃刀になぞらえて表した1つの考え方なのだというが。2021年に発表された初のベスト・アルバム『五枚刃』に続く本作『残光』は、8周年を迎えてのベスト盤第2弾。内容としてはシングル表題曲が多く取りそろえられた印象であり、全曲リミックスを経たことによって本作はそれこそ“オッカムの剃刀”理論が実践されている、と言ってもいいように思われる。なお、冒頭を飾っている最新曲「AfterGlow」の切れ味も非常に鋭いが、激ロック読者には、「CRIES OF ART」の洗練された音像と大胆な曲展開にも注目していただきたいところ。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：ALTERNATIVE ROCK, LOUDROCK
令和に甦りし在りし日のヴィジュアル系の音色に乗せ
摩訶不思議な世界へ誘う2ndアルバム
tink（Vo）ことティンカーベル初野率いる、嘘から生まれた本物のヴィジュアル系バンド 色々な十字架の2ndアルバム。暴れ曲「耽美ヶ原小学校 校歌」、「かなり耽美(決定)」やミュージカル曲「GTO」等、ライヴ――否、白サバトを盛り上げてきた楽曲たちが音源化された他、次々と幼子がはぐれてしまうというあの場所を歌った「LOST CHILD」、異色作だらけの本作の中でも異彩を放つ「汗拭きシートで冬来けり」をはじめとした新曲たちが収録された。'90s〜'00sヴィジュアル系サウンドの再現度の高さを堪能しつつ、それに乗って耳に飛び込んでくる不条理な歌詞に困惑しているうちに、その奇々怪々な世界観の魅力に“とらわれしし者†”となっていることだろう。
内堀 文佳【ライター推薦】