シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)の2025年春夏コレクションが、東京ファッションウィーク期間中の2024年9月2日(月)に、東京・国立競技場で発表された。テーマは「picturesque or die」。
ブランド設立10周年を迎えるシンヤコヅカ。デザイナーの小塚信哉は、10年のブランド運営の中で、“人と違ったことをしなきゃいけない、変わらなきゃいけない”という観念にとらわれて過ごしていた時期が長くあったと話す。
そんなバイアスを取り払うきっかけになったのが、「人は生まれた時から何も変わらない。変わるのはその人の背景だけ」という考え方だ。その思いが確実になったのは、彼が学生時代に描いた自作絵本「いろをわすれたまち」を読み返した時、描くモチーフや言っていること、言葉のテンポが今と全く“変わっていなかった”こと。
今回のコレクションは、学生時代に描いた「いろをわすれたまち」を、当時とは背景の違う“現在の小塚”が再解釈して描き直したリマスター版の絵本がインスピレーション源となる。キーカラーは、「いろをわすれたまち」の中でも象徴的に取り入れられている「青」。レッドカーペットならぬ“ブルーカーペット”の上を、絵本の中から飛び出してきたかのようなファンタジックな装いのモデルが闊歩した。
色のない世界に住む主人公が、色に魅了されていく…。そんな「いろをわすれたまち」のストーリーと呼応するように、最初はモノトーンのルックからスタート。シンヤ コヅカのアイコンアイテムであるバギーパンツを主役に、リラクシングな開襟シャツを合わせ、ベレー帽からショルダーバッグ、シューズまで全てブラックで統一した。
ショーの中盤に差し掛かると、次第に音楽が鳴り始め、物語は色のある世界へ。肌と一体化するようなシアートップスには、絵本のイラストをそのままプリントし、色鉛筆の温かな質感を残している。また、白のパンツやワンピースは、それらをキャンバスとして、色とりどりのペイントを施していたのも印象的だ。
ツイード素材のオールインワンも、よく見るとオレンジにグリーン、ブルー、イエロー、そしてラメと、思わず心踊るようなカラフルな糸で織り込まれている。背には鮮やかなバルーンを引っ提げ、シューズも虹色のドットで装飾。今季の“おとぎ話的世界観”を象徴する楽し気なルックに仕上げた。
また今季は、2023年春夏コレクションで話題を呼んだ“絵画を着る”ユニークなルックが再登場。小塚が100種類のブルーの中から選んだという、目が覚めるような青色のキャンバスが、まるでスカートのようにジャケットとドッキングしている。このほかにも、童話「裸の王様」を彷彿とさせる王冠を被ったルックや、シアーな総レース素材で“下着が透けている”オールインワンなど、過去のコレクションへのオマージュとも取れるスタイリングが視線を集めた。