第77回カンヌ国際映画祭(2024年)コンペティション部門22作品紹介
第77回カンヌ国際映画祭
5月14日~25日(現地時間)に開催される第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門22作品を紹介(コンペティション外を除く)。コンペティション部門の今年の審査委員長は、『バービー』の大ヒットも記憶に新しいグレタ・ガーウィグ監督。ラインナップには、デヴィッド・クローネンバーグ監督やパオロ・ソレンティーノ監督、ジャック・オーディアール監督といった常連に加え、久々となるフランシス・フォード・コッポラ監督、ポール・シュレイダー監督、そしてアカデミー賞を席巻したばかりのヨルゴス・ランティモス監督と、混戦が予想される注目作がそろった。果たして、本年度のパルムドールの栄冠に輝くのは!?(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)
<パルムドール(最高賞)>『アノーラ(原題) / Anora』
製作国:アメリカ
監督:ショーン・ベイカー
キャスト:マイキー・マディソン、ユーリー・ボリソフ
148分
【ここに注目】
ニューヨークとラスベガスを舞台に、あるセックスワーカーを描いたロマンティックなコメディードラマ。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』や『タンジェリン』で高く評価されたショーン・ベイカーが監督・脚本を手がけた。社会の片隅で生きる人、性的マイノリティーの人たちに寄り添いカメラを向けてきたベイカー監督にとって、今回は初めて富裕層に着目した作品とのことで、どのようなメッセージが込められているのか気になるところだ。主演は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『スクリーム』のマイキー・マディソンが務めている。
<グランプリ>『オール・ウィー・イマジン・アズ・ライト(原題) / All We Imagine as Light』
製作国:フランス、インド、オランダ、ルクセンブルク
監督:パヤル・カパディア
キャスト:カニ・クスルティ、ディヴィヤ・プラバー
114分
【ここに注目】
インドの女性監督、パヤル・カパディアの長編劇映画デビュー作で、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にインド映画として30年ぶりに選出されたドラマ。舞台はムンバイ。別居中の夫からの贈り物のせいでトラブルに巻き込まれた看護師の女性と、ボーイフレンドと2人きりになれる場所を見つけられないルームメイトが、旅で訪れた海辺の町で願いをかなえられる場所にたどり着く。カパディア監督は短編映画で評価され、第74回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映された『何も知らない夜』が最優秀ドキュメンタリー賞にあたるゴールデン・アイ賞を受賞している。
<審査員賞>/<女優賞>カーラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス『エミリア・ペレス(原題) / Emilia Perez』
製作国:フランス
監督:ジャック・オーディアール
キャスト:ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス
130分
【ここに注目】
現代のメキシコを舞台にしたミュージカルスリラー。弁護士が受けた思いがけない依頼……それはカルテルのボスを引退し、長年の夢だった女性に生まれ変わって裏社会と縁を切りたいというものだった。監督・脚本を務めたのは『ディーパンの闘い』が第68回カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したフランスの名匠ジャック・オーディアール。トランスジェンダーであることを公表している俳優のカーラ・ソフィア・ガスコン、『アバター』のゾーイ・サルダナ、「マーダーズ・イン・ビルディング」のセレーナ・ゴメス、「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」のエドガー・ラミレスが共演している。
<監督賞>ミゲル・ゴメス監督『グランド・ツアー(原題) / Grand Tour』
製作国:ポルトガル、イタリア、フランス
監督:ミゲル・ゴメス
キャスト:ゴンサーロ・ワヂントン、クリスタ・アルファイアチ
129分
【ここに注目】
1917年のビルマ(現ミャンマー)・ラングーンを舞台に、大英帝国の役人エドワードが婚約者のモリーから逃げ、アジア中を旅する姿を追ったロードムービー。監督を務めるのは『熱波』などのミゲル・ゴメス。監督・俳優・脚本家としても活動するゴンサーロ・ワヂントンが主人公を演じ、『熱波』でもゴメス監督と組んだテレサ・マドゥルガらが共演。千夜一夜物語をベースにした大作『アラビアン・ナイト 第1部 休息のない人々』が、第68回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されて以来、コンペティション部門初登場となる気鋭の監督の評価が試される。
<特別賞>モハマド・ラスロフ『ザ・シード・オブ・ザ・セイクリッド・フィグ(英題)/ The Seed of the Sacred Fig』
製作国:ドイツ、フランス、イラン
監督:モハマド・ラスロフ
キャスト:N/A
168分
【ここに注目】
『グッドバイ』『悪は存在せず』などで知られる、イランのモハマド・ラスロフ監督。その新作は、キャストを含めたその全貌がまだ明かされていない。だが、『悪は存在せず』が、第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金熊賞を受賞したものの、イランからの出国禁止によって映画祭に参加できなかったラスロフ監督。また、昨年の第76回カンヌ国際映画祭においても、「ある視点」部門の審査員として招待されたものの、イラン政府による渡航禁止措置により参加が叶わなかった。不屈の精神を讃える気質がある本映画祭だけに、そんな彼の復帰作となる本作への注目度は高い。
<男優賞>ジェシー・プレモンス『憐れみの3章』
製作国:アメリカ、イギリス
監督:ヨルゴス・ランティモス
キャスト:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス
165分
【ここに注目】
ヨルゴス・ランティモス監督が、『哀れなるものたち』で第96回アカデミー賞主演女優賞に輝いたエマ・ストーンと3度目のタッグを組んだ本作は、決められた人生からの脱却を試みる男性らの姿を追った、ストーリーやキャストが演じる役柄も全て異なる3部構成の寓話。『哀れなるものたち』に続きウィレム・デフォーとマーガレット・クアリーが出演するほか、『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたホン・チャウらが集結した。本映画祭ではこれまでに、「ある視点」部門の最優秀作品賞、コンペティション部門審査員賞、同脚本賞を受賞してきた大物監督だけに、その躍進に期待がかかる。
<脚本賞>コラリー・ファルジャ『ザ・サブスタンス(原題) / The Substance』
製作国:イギリス、アメリカ、フランス
監督:コラリー・ファルジャ
キャスト:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー
140分
【ここに注目】
『哀れなるものたち』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のマーガレット・クアリーのほか、デミ・ムーア、デニス・クエイドが共演。ストーリーの詳細は伏せられているが、フェミニズム要素が満載のボディホラー作品と言われており、撮影はパリで行われたようだ。監督・脚本を務めたコラリー・ファルジャは、過激&血みどろのバイオレンス描写で復しゅうに燃えるヒロインを描いた『REVENGE リベンジ』で長編初メガホンを取り、各国の映画祭で絶賛評を集めた。今回の新作も、気鋭の女性監督と話題作への出演が続くクアリー、ベテランのムーアとのコラボレートによる最高にアツい化学反応が期待できそう。
『ジ・アプレンティス(原題) / The Apprentice』
製作国:カナダ、デンマーク、アイルランド
監督:アリ・アッバシ
キャスト:セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング
120分
【ここに注目】
『アベンジャーズ』シリーズのセバスチャン・スタンが、若き日のドナルド・トランプを演じる伝記ドラマ。1970年代~80年代のニューヨークで、トランプが悪名高き弁護士ロイ・コーンの助けを得ながら、不動産業界で成り上がっていく姿を描く。コーンを演じるのは「メディア王 ~華麗なる一族~」のジェレミー・ストロング。また、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』でブレイクしたマリア・バカローヴァが、トランプの最初の妻イヴァナを演じている。監督のアリ・アッバシは『ボーダー 二つの世界』が第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞しており、話題性抜群の新作も躍進が期待される。
『モーテル・デスティノ(原題) / Motel Destino』
製作国:ブラジル、フランス、ドイツ
監督:カリン・アイヌーズ
キャスト:イアゴ・シャビエル、ナタリー・ローシャ
115分
【ここに注目】
『スエリーの青空』などのカリン・アイヌーズ監督が、監督自身の出身地であるブラジル・セアラー州を舞台に、ある男女の関係をサスペンスフルに描くラブストーリー。借金返済のために銀行強盗を試みるも失敗し、モーテルへと身を隠す青年ヘラルドが、既婚の女性ダヤナと出会う。500人以上が参加したオーディションの末、新人のイアゴ・シャビエルと、『ザ・ストレンジ・ケース・オブ・エセキセル(英題) / The Strange Case of Ezequiel』などのナタリー・ローシャが主役に抜てき。『見えざる人生』が、第72回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門グランプリを受賞したアイヌーズ監督が、コンペティション部門でパルムドールを狙う。
『バード(原題) / Bird』
製作国:イギリス
監督:アンドレア・アーノルド
キャスト:バリー・キオガン、フランツ・ロゴフスキ
119分
【ここに注目】
イギリス・ケント州北部の不法占拠した建物で2人の息子を育てる父。息子は父にかまってもらえず、寂しさを紛らわせようと他に目を向け始める……。『Saltburn』『イニシェリン島の精霊』のアイルランド人俳優バリー・キオガンが、タトゥーだらけのパンクな父親役で主演。『希望の灯り』『大いなる自由』のドイツ人俳優フランツ・ロゴフスキが共演した。監督・脚本を務めたのは、『アメリカン・ハニー』が第69回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞したアンドレア・アーノルド。キオガンは本作を優先するため『グラディエーター』続編を降板したと言われており、監督と作品への信頼度がうかがえる。
『メガロポリス(原題) / Megalopolis』
製作国:アメリカ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
キャスト:アダム・ドライヴァー、ダスティン・ホフマン
138分
【ここに注目】
『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』など映画史に残る傑作を手掛けてきた巨匠フランシス・フォード・コッポラの最新作は、災害後のニューヨークをユートピアとして再建することを目指す建築家の物語。コッポラ監督が1980年代前半に脚本を執筆した企画で、自身が所有するワイナリーの大半を売却して製作費を捻出、ようやく映画化を実現させた。主演のアダム・ドライヴァーほか、ダスティン・ホフマン、オーブリー・プラザ、ローレンス・フィッシュバーン、シャイア・ラブーフ、ジェイソン・シュワルツマン、ジョン・ヴォイトといった豪華キャストが共演。構想40年のコッポラ監督の入魂の一作が、カンヌでどう受け止められるのか注目が高まる。
『ザ・シュラウズ(原題) / The Shrouds』
製作国:フランス、カナダ
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト:ヴァンサン・カッセル、ダイアン・クルーガー
116分
【ここに注目】
『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』などのデヴィッド・クローネンバーグ監督が、自身にとって極めてパーソナルな作品と語る、自伝的な要素のあるSFドラマ。妻を亡くした50歳の実業家が、死体とコネクトできる斬新なシステムを開発する。しかし妻の墓が荒らされてしまったことから、彼は犯人捜しを開始する。実業家を演じるのは、クローネンバーグ監督作品では『イースタン・プロミス』と『危険なメソッド』に続く3度目の出演で初の主演を務めるヴァンサン・カッセル。レア・セドゥに代わってキャスティングされたダイアン・クルーガーが3役を演じ、ガイ・ピアースなどが共演する。
『マルチェロ・ミオ(原題) / Marcello Mio』
製作国:フランス
監督:クリストフ・オノレ
キャスト:キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ
120分
【ここに注目】
イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニのように生きようとする、彼とフランス人女優カトリーヌ・ドヌーヴの愛娘キアラ・マストロヤンニの姿を描いた異色のドラマ。人生に迷った女優のキアラが、父親のマルチェロのように生きようと自己暗示をかける。すると父になりきった彼女の様子に、周りの人物たちまでが彼女を「マルチェロ」と呼び始める。ドヌーヴに加え、キアラの元夫のバンジャマン・ビオレや友人メルヴィル・プポーなどが共演。監督はキアラとドヌーヴが共演した『愛のあしあと』でもメガホンを取ったクリストフ・オノレ。
『コート・バイ・ザ・タイズ(英題) / Caught by the Tides』
製作国:中国
監督:ジャ・ジャンクー
キャスト:チャオ・タオ、チュービン・リー
111分
【ここに注目】
『プラットホーム』以来タッグを組んできた、ジャ・ジャンクー監督と、彼の妻でもある俳優のチャオ・タオによる壮大なラブストーリー。2000年代初頭から現代までの中国を舞台に、別の場所でのチャンスに賭けて姿を消した恋人を捜す旅に出る女性の姿を、ここ数十年ほどの中国の急激な変化とともに、アーカイブ映像などを用いて映し出す。第63回ベネチア国際映画祭では『長江哀歌(エレジー)』が金獅子賞を受賞し、第66回カンヌ国際映画祭では『罪の手ざわり』で脚本賞を受賞、翌年の本映画祭では審査員も務めた。『山河ノスタルジア』『帰れない二人』など多くの作品をコンペティション部門に出品するも、未だ大きな賞とは無縁の実力派監督の動向に関心が集まる。
『ラムール・フー(原題) / L'Amour Ouf』
製作国:フランス
監督:ジル・ルルーシュ
キャスト:アデル・エグザルコプロス、フランソワ・シヴィル
166分
(ここに注目】
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』などのジル・ルルーシュ監督が、10代で出会った男女の20年におよぶ変遷を暴力や音楽などを交えて描いた壮大なラブストーリー。荒れた地域に暮らす少年が、勇敢で利発な少女と恋に落ちる。しかし少年はギャングと付き合い、告発されてしまう。数年が経ち、正反対の道を歩んでいた2人の人生が再び交錯する。ネヴィル・トンプソンによる小説を翻案した本作は、ルルーシュ監督が15年間温めてきた企画なのだとか。成長した男女を『ウルフズ・コール』などのフランソワ・シヴィルと『アデル、ブルーは熱い色』などのアデル・エグザルコプロスが演じる。
『ディアマン・ブリュット(原題) / Diamant Brut』
製作国:フランス
監督:アガット・リーダンジェール
キャスト:マロウ・ケビジ、イディル・アズーリ
103分
【ここに注目】
本作が長編デビュー作となるフランスの新鋭、アガット・リーダンジェール監督による青春ドラマ。南フランスの海辺の街で、母親と妹と共に暮らす19歳の少女が主人公。美しさに取り憑かれ、何者かになりたいという願望を持つ彼女の運命は、リアリティー番組に出演したことで大きく変化する。リーダンジェール監督はこれまで数本の短編映画を手掛けてきており、本作は『ジャタン・ジュピテール(原題) / J'attends Jupiter』を長編化したものとなっているようだ。この短編では「人生の甘さなどを暗示すると同時に、抑圧などを感じさせ、主人公の逃避願望を際立たせた」とリーダンジェール監督は語っている。
『オー、カナダ(原題) / Oh, Canada』
製作国:アメリカ
監督:ポール・シュレイダー
キャスト:リチャード・ギア、ジェイコブ・エローディ
95分
【ここに注目】
死期が迫ったドキュメンタリー作家のレオナルドが、ベトナム戦争時に兵役を拒否し、アメリカからカナダへ逃亡した過去と向き合い、これまで隠してきた自身の人生の真実を告白する。リチャード・ギアと人気急上昇中の若手俳優ジェイコブ・エローディが、現在と過去のレオナルド役で主演。『タクシードライバー』『レイジング・ブル』の脚本家で『カード・カウンター』の監督ポール・シュレイダーが、作家ラッセル・バンクスの小説「フォーゴーン(原題) / Foregone」を映画化した。シュレイダー監督が旧知の間柄であるギアのパワフルなパフォーマンスを引き出したという本作は、『アメリカン・ジゴロ』以来、2人の40年以上ぶりの再タッグとなる。
『リモノフ - ザ・バラッド(原題) / Limonov - The Ballad』
製作国:イタリア、フランス、スペイン
監督:キリル・セレブレニコフ
キャスト:ベン・ウィショー、ヴィクトリア・ミロシニチェンコ
138分
【ここに注目】
エマニュエル・キャレールの伝記小説「リモノフ」を原作に、ロシアの反体制作家であり政治家などさまざまな顔を持つエドワルド・リモノフの軌跡をたどる人間ドラマ。『LETO -レト-』『インフル病みのペトロフ家』『チャイコフスキーズ・ワイフ(英題) / Tchaikovsky's Wife』などが本映画祭コンペティション部門に選出されてきたロシア出身のキリル・セレブレニコフが監督を手掛ける。自身は否認するも、国家予算を不正流用した疑いで2020年6月に有罪判決を下され、現在はドイツで暮らす反骨精神あふれるセレブレニコフ監督。作家性の強い作品をチョイスする傾向があるカンヌ国際映画祭において、高ポイントを獲得する確率は高い。
『パルテノペ(原題) / Parthenope』
製作国:イタリア、フランス
監督:パオロ・ソレンティーノ
キャスト:ゲイリー・オールドマン、フランチェスカ・ロマーナ・ベルガモ
136分
【ここに注目】
『イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男-』が、本映画祭コンペティション部門審査員賞に輝いた名匠パオロ・ソレンティーノによる、ある女性の物語。ナポリ周辺を舞台に、パルテノペが生まれた1950年代から現代までの長い人生を映し出す。『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』などのオスカー俳優ゲイリー・オールドマン、『マリア・カラス 最後の恋』などのルイーザ・ラニエリ、『何もかも音楽のせい』などのステファニア・サンドレッリら実力派俳優たちが豪華共演。カンヌ国際映画祭常連のイタリアの名匠が、今回唯一ノミネートされたイタリア人監督のプライドにかけて受賞を狙う。
『ザ・ガール・ウィズ・ザ・ニードル(英題) / The Girl with the Needle』
製作国:デンマーク、ポーランド、スウェーデン
監督:マグヌス・フォン・ホーン
キャスト:ヴィクトリア・カルメン・ソンネ、トリーヌ・ディルホム
115分
【ここに注目】
20世紀初頭に起きた実話にインスパイアされた、デンマーク発のホラードラマ。第一次世界大戦後のコペンハーゲンで懸命に生きる若い女性が、工場での仕事を失い、妊娠していることに気付く。養子縁組斡旋所を闇で運営する女性と出会った彼女は、乳母として施設と関わりを持つようになるが、ある日、衝撃的な事実を知る。監督のマグヌス・フォン・ホーンは長編劇映画デビュー作の『波紋』が第68回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映、本作が長編3作目となる。主人公をヴィクトリア・カルメン・ソンネが、施設の運営者を『ザ・コミューン』で第66回ベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞したトリーヌ・ディルホムが演じる。
『ラ・プリュ・プレシャス・デ・マルシャンディーズ(原題) / La plus precieuse des marchandises』
製作国:フランス
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・ブラン
81分
【ここに注目】
アカデミー賞作品賞などを受賞した『アーティスト』や『キャメラを止めるな!』などのミシェル・アザナヴィシウス監督が手掛けたアニメーション映画。原作は日本語にも翻訳されている、ジャン=クロード・グランベールの小説「神さまの貨物」。第二次世界大戦下のポーランドの森。貧しいきこり夫婦の妻は子供がいないことを嘆いていた。ある日、アウシュヴィッツ強制収容所行きの列車に乗せられたユダヤ人夫婦が、最後にわずかな希望をたくして投げ落とした双子の赤ん坊の一人を、きこりの妻が拾う。ナレーターを務めた『男と女』などのジャン=ルイ・トランティニャンにとって最後の作品となった。
『スリー・キロメートルズ・トゥー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(英題)/ Three Kilometres to the End of the World』
製作国:ルーマニア
監督:エマニュエル・パーヴュ
キャスト:ローラ・ヴァシリウ、ボグダン・ドゥミトラケ
105分
【ここに注目】
俳優としても活動し、『マッチ棒くずし』などで監督も手掛けるエマニュエル・パーヴュが、 LGBTQを題材に新たな視点で描く人間ドラマ。手つかずの自然が残るドナウ・デルタの村出身の17歳の少年が夏休みに帰省し、ある青年と恋に落ちたことから、閉鎖的な村で暮らす両親や村人たちとのトラブルへと発展する。主人公を新人のチプリアン・キウジダが演じ、『私の、息子』などのボグダン・ドゥミトラケ、クリスティアン・ムンジウ監督の『4ヶ月、3週と2日』などのローラ・ヴァシリウらベテラン俳優がその両親を演じている。本映画祭の常連監督である同国のムンジウ監督同様、国際舞台で賞を手にしたいところだ。