HOME > レビュー > 10/25同時メジャーデビュー! アニソン・シンガーソングライターの新生、RIRIKO(リリコ)&rionos(リオノス)Wインタビュー
2017年10月25日/橋爪徹・Stereo Sound ONLINE 編集部
2017年10月より放送中のTVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』は、砂の海に浮かぶ巨大な漂白船「泥クジラ」で暮らす、超能力を持つ少年少女達の運命を描くファンタジー。注目はオープニング(OP)&エンディング(ED)主題歌の両方に新人シンガーソングライターの楽曲を起用していること。ストーリー重視のアニメ作品において、OP&ED主題歌は観る者を作品に引き込むための仕掛けのひとつであり、新人の楽曲を使うことは極めて異例だと言える。そんな、アニメ制作のプロ達をうならせた、OP曲「その未来(さき)へ」を担当したRIRIKO(リリコ)と、ED曲「ハシタイロ」を手掛けたrionos(リオノス)、今日10月25日にデビューする二人のシンガーソングライターにWインタビューを行なった。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』OP主題歌
RIRIKO(リリコ、写真左)
「その未来へ」
CD(ランティス LACM-14661)¥1,200+税
2017年10月25日発売
1.その未来へ
作詞・作曲:RIRIKO 編曲:原田アツシ(Dream Monster)
2.Take Off!!
作詞・作曲:RIRIKO 編曲:原田アツシ(Dream Monster)
3.時の砂
作詞・作曲:RIRIKO 編曲:原田アツシ(Dream Monster)
4.その未来へ(off vocal)
5.Take Off!!(off vocal)
6.時の砂(off vocal)
TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』ED主題歌
rionos(リオノス、写真右)
「ハシタイロ」
CD(ランティス LACM-14662)¥1,200+税
2017年10月25日発売
1.ハシタイロ
作詞:rionos 作曲・編曲:rionos
2.空を飛びたいと
作詞:rionos 作曲・編曲:rionos
3.ハシタイロ(Instrumental)
4.空を飛びたいと(Instrumental)
――この度はデビューおめでとうございます。これから多くの方にお二人のことを知っていただくべく、話しをお伺いいたします。まずは、おふたりが音楽と出会ったきっかけと、これまでの活動を教えてください。
RIRIKO 小学校の高学年でギターを始めて、中学生の頃には曲を作るようになっていました。その頃からオーディションに自分の曲を応募していて、有名なものですとオーディションで出演者が決まる10代限定ロックフェスの「閃光ライオット」にも送っていたんです。
高校へ進学すると演奏活動にも力を入れるようになって、高校生のバンドコンテスト「高校生バンドバトル」に出演しました。この大会で賞をもらったのはいい経験でしたね。ライブハウスでギターの弾き語りをし始めたのもこの時期からです。
現在は音楽大学でポップスの作詞作曲、DTMなどを本格的に学びながら、ライブ活動も続けています。高校まではソロ活動がメインでしたが、今は演奏専攻する学科にいる友人にお願いしてバンド形態でライブができるようになりました。
rionos 父がジャズドラマー、母がクラシックのマリンバ奏者という音楽一家に生まれました。だから、音楽のある生活が当たり前で、私自身も小さい頃からバイオリンやピアノを習っていました。触れる音楽はクラシックが多かったですが、押しつけられることもなかったので、好きな曲にジャンルを問わず親しんで来ました。
そんな環境だったこともあり、ずっと音楽が身近にあったので「音楽家になる」ことしか考えていなかったんです。だから、大学で作曲の勉強をして、DTMの教室にも通うなど、演奏家としてだけでなく、音楽家に求められる実践的なことも身につけていきました。
また、大学在学中から縁あって、EMIミュージック系列のアーティストさんを中心に楽曲の提供をさせて頂くようになって、作編曲やバンドのサポートなどをこなしていました。その時お世話になっていたディレクターさんとインディーズCD『readme. 』をリリースしました。その後の活動はシンガーソングライターよりも、作曲家としての比重が多かったですね。
――デビューに至ったきっかけを教えてください。
RIRIKO 演奏活動と平行して「仮歌」歌手をしていたんです。これは、アーティストが歌を覚えるのに使うデモテープ用に、曲に歌を吹き込むというお仕事で、そこでお世話になっていたのが、今日リリースのデビュー曲でもアレンジャーを担当してくれた原田アツシさんなんです。原田さんが今年の春に「こういう案件があるんだけど」って話しを持ってきてくれて、「やります!」って即答しちゃいました。
そうしたら、感慨にひたる間もなくトントンと話しが進みまして……。秋になって、10月8日の放送スタートに合わせて「クジラの子らは砂上に歌う」のテレビCMが流れだしてから、ようやく「デビューするんだ」って実感が沸いてきていて。デビューが決まってホッとしている気持ちはありますが、ここから新しいスタートラインだと思っています。今はワクワクでいっぱいです。
rionos 私は楽曲提供のお仕事をする中で、声優でアーティストの上田麗奈さんや、アニソンシンガーのChouCho(ちょうちょ)さんなどに曲を提供させていただいたんです。そのご縁で、「クジラの子らは砂上に歌う」の主題歌プレゼンに参加することになりました。それで、自分の歌が入ったワンコーラスを作って提出したら、「これとは違う曲でお願いしたいけど、デビューは決まりました」とお返事をいただけたんです。
『readme. 』を作ってから数年経過していて、自分は歌い手というより、作編曲家としてやっていくのだろうなと漠然と思っていました。というのも、他のアーティストへの楽曲提供の仕事が始まってから、自分のアーティスト性について迷っていた時期があったんです。自分の音楽性ってどんなだろうって。でも今回、『クジラの子らは砂上に歌う』というテーマをいただいたことで、自分の中にある音楽性と作品の世界観を合わせて表現できて、ひとつ壁を乗り越えられたという気持ちです。
――今回の楽曲について具体的に伺います。お二人とも歌唱だけでなく、作詞・作曲を担当されています。楽曲作成にあたり、「こうして欲しい」という具体的な注文はあったのでしょうか?
RIRIKO 実は「その未来へ」は、高校時代にバンド向けに作ったエレキギター中心の曲が原曲になっています。自分のデモ音源の中にその原曲も入れていて、事前に原田さんが関係者に渡してくれていたんです。それで、主題歌の話しをいただく際に「この原曲をベースに新しく作って欲しい」とオーダーをいただきました。さらに、原田さんのアレンジでエレキギターからアコースティックギター中心になり、より作品の世界観に合った曲に仕上がったと思います。楽曲は自分らしさを残しつつ、いろいろな人の手が加わって進化したと実感しました。
歌詞については「僕」や「私」といった一人称を使わずに、作品を俯瞰する神の目線でとの指定がありました。原作の『クジラの子らは砂上に歌う』は異世界ファンタジーではあるけれども、リアルな群像劇が印象的です。遠い世界のはずなのにスッと自分の心に入ってくるような。もう泣きながら何度も読み返して、そこからヒントをもらいながら、彼らが生きるはずだった未来、生きたかった未来を想像して書いていきましたね。本作は自身のメジャーデビュー作でもありますから、自分の音楽人生の未来も重ねて想いを込めました。
デビューに繋がった原曲はバンドをやってなければ生まれなかった訳ですし、今になっていろんなことに挑戦していてよかったと思います。
rionos 最初に作った曲は、今より明るい雰囲気だったんです。それで「最初のデモ曲より暗い雰囲気で、リコス目線で書いて欲しい」と話があって作ったこの曲「ハシタイロ」が採用されました。
本作ヒロインのリコスは、最初は無感情な女の子なのですが、物語が進む過程でだんだん人間らしくなっていきます。あまりネタバレはできませんが、様々な人物と出会う中で、心揺さぶられる瞬間があってちょっとずつ変わっていくんですね。それは、私自身のパーソナルな部分とリンクする面もあって、リコス目線でありつつも自分にも重ね合わせて作っていけました。だから、作品には合わせてはいるんだけど、自分らしい曲ができたという手応えがあります。
私もRIRIKOさんと同じく、原作は繰り返し読んでいます。物語の根底に流れるシリアスなトーンが、私の中にある世界観と近くて、グッと作品に入り込んですぐに虜になりました。そんな大好きな作品の主題歌でデビューできることを本当に嬉しく思います。
――お二人とも原作に惹き込まれているんですね。作品の世界観と楽曲との親和性を高めるために、工夫されたことはありますか。RIRIKOさんからお聞かせください。
RIRIKO 泥クジラで暮らす登場人物の生き生きとした部分を表現したくて、ギターの激しいストロークを使ったり、歌も声を張って力強く歌ったりしています。演奏面でも、例えばパーカッションは表面の皮の質感が、作品の中の「砂の世界」にも合っていると思います。他にもアレンジャーの原田さんが細部までこだわって作ってくださっていて、多種多様な楽器を使っています。何回も聴き込んで、それぞれの音を味わってくれたら嬉しいですね。
――フルバージョンの歌詞の中で、2番の中盤コーラスからの「uh…taitakatta(歌いたかった)」と続きます。メッセージが込められているようでとても印象的に残りました。このフレーズはどのように生まれたのでしょうか。
RIRIKO ありがとうございます! 高校時代に作った原曲では「う~う~、たったった」という意味のないフレーズだったのですが、今回の件で作り直す際に「uh…taitakatta(歌いたかった)」という歌詞を加えました。作品中でも歌がキーワードになっていますし、歌っている子どもたちをイメージしたんです。
――rionosさんはいかがですか?
rionos 私は以前から言葉が先にあった方が作曲しやすいタイプなので、今回も作詞から行なっています。デモ曲を聴いていただく際にも、歌が入った完成形をそのまま提出するので、イメージの共有がしやすく、やり取りもスムーズなんです。
曲に関しては、泥クジラの世界を表現するにあたって「無国籍な音楽」を意識しました。加えて漂泊船の泥クジラが閉ざされた世界なので、その中で暮らす厳しさをサビの力強さで表現しています。具体的には大きな船であるクジラが砂漠を動くのをイメージして、エレキギターを入れてもらっています。
先ほど「暗い雰囲気」にしてほしいとオーダーをもらったという話しをしましたが、私の作風としてはむしろその方が大得意なので作りやすかったですね。
――「ハシタイロ」はサポートミュージシャンがとても豪華ですよね。
rionos 私はシンガーソングライターの新居昭乃さんの作品が大好きで、その新居さんのレコーディングで活躍しているミュージシャンの方々にお願いしたいとお話しをしたんです。そうしたら、オケにガットギターを加えるという時に、新居さんの作品に欠かせないギタリスト堀越信泰さんに演奏いただけることになりました。そんな感じで憧れていたミュージシャンの方々に演奏をお願いできて本当に夢のようなお仕事でした。プロの技に圧倒されましたし、自分だけではできないような表現を形にできました。
――今回、楽曲はいずれもハイレゾで制作されています。RIRIKOさんの「その未来へ」は96kHz/24bitで作られたそうですが、ハイレゾ版を聴いていかがでしたか?
RIRIKO 最近、ハイレゾ対応のデジタルオーディオプレーヤーを手に入れまして、ハイレゾがやっと身近なものになりました。聴いてみると自分のブレスの感じがCDや圧縮音源とは全然違う。と同時に情報量が増えてライブ感が増した分、ごまかしが効かないな、と少し怖くなりました。でも、ファンの方がよりアーティストの作った音に近い高音質を求めている、ということが理解できましたし、届けられたらと思いますね。
――rionosさんの「ハシタイロ」は、さらにハイレートな192kHz/24bitで制作されたそうですね。ハイレゾが当たり前のアニソンでも、珍しいと思うのですが、作る過程で意識したことはありますか。
rionos ミックスまでは、これまでと同じ感覚で進めました。ハイレゾを強く意識したのはマスタリングの段階です。ハイレゾだと小さい音まで分かるんで、表現の幅が拡がるんです。その中で、音楽的にこう聴かせたいと少し音圧を上げたかった私の意見と、ハイレゾの音の良さを最大限に生かすために音圧を下げたいというプロデューサーと意見が分かれました。どっちも正しいんで、何がベストかは分からないのですが、最終的には、両方を踏まえてその中間を取ったような音源になっています。それでも、いわゆるJ-POPとかに比べると音圧は控えめだと思います。
――お二人とも初対面だそうですね。言いにくいとは思いますが、ぜひお互いの楽曲を聴いてどう思ったか教えてください。
RIRIKO 制作中から「EDは暗めの雰囲気です」とスタッフから伺っていたんですが、聴いてみたら、そんなことありませんでした(笑)。rionosさんの声がクリアーで、暗闇の中に光が差込んでいるようなイメージというか、むしろ明るく感じました。あと、声質が良くて、聴いていて心地よく、私の中にストンと入ってきました。正直、好きですね。
rionos 私はまず、歌唱力に圧倒されました。力強く張りのある声で、結構高いキーも使っているのに、キツさを感じさせない。本当に歌が上手い方だと思いました。疾走感のある曲で、異国の風合いもあってカッコよかったです!
――最後に、今日から新しい一歩を踏み出すお二人ですが、その道の先でどんな活動をしたいとお考えでしょうか。意気込みとともに教えてください。
RIRIKO 多くの方に私の歌を届けたいです。まずは、このデビュー曲を引っさげて、地方も含め、いろんな場所で歌っていきたいですね。そして、 “RIRIKO”という存在を皆さんに知っていただけるよう、もっと多くの曲を作り、リリースできるよう頑張ります。そして、この記事を読んでくださった方とライブやイベントなどでお会いできるように活動していきます。ぜひ楽しみにしていて下さい!
rionos これからはアーティストと作家、それぞれの活動をバランス良くやっていきたいと思います。私は人前が少し苦手なのですが、お話があればライブのようなステージも一つの挑戦としてやってみたいと今は思っています。インディーズでCDを作った頃から4年以上経っているので、紆余曲折ありながらも、進化をしてきたと自分でも実感しています。今までアーティストとしての活動が少なかった分、「ハシタイロ」は貯まっていた熱量が込められた楽曲に仕上がりました。歌詞もアレンジも細部まで聴いてもらえたら嬉しいです。今日はどうもありがとうございました!
【Information】
TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』
公式サイト
●放送
TOKYO MX/毎週日曜 23:00~
KBS京都/毎週日曜 23:30~
サンテレビ/毎週日曜 25:00~
BS11/毎週火曜 24:30~
●配信
Netflixにて
●RIRIKOライブ情報
TSUTAYA O-Crest 「HEART STATION」出演
開催日時:2017.11.1(水)18:30開場 19:00開演
場所:TSUTAYA O-Crest(渋谷区道玄坂2-14-8 5F)
チケット:オールスタンディング 前売り¥2,200 当日¥2,700※クリックでe+へ
●RIRIKO TV出演情報
「徳光和夫の名曲にっぽん」出演
日時:10月27日(金)20:00~
チャンネル:BSジャパン
番組公式サイト
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