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- 2016.09.01
7月クールで放映中の『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』、『ツキウタ。 THE ANIMATION』。そして10月クールに控える『ドリフェス!』、『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレジェンドスター』(すべてTOKYO MXほか)。これらのタイトルはすべて男性アイドルをモチーフにしたアニメ作品だ。今年に入ってからはこのほかにも、映画『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(通称・キンプリ)が、1月9日に上映を開始して以降、約8カ月にも及ぶ異例のロングランを記録したり、150万ダウンロードを突破したスマホ向けゲーム『あんさんぶるスターズ!』もアニメ化が発表されたりと、今、この界隈は異様な盛り上がりを見せている。
市場規模420億円と言われた『ラブライブ!』に、アイドルアニメ人気の火付け役となった『アイドルマスター』と、これまでどちらかと言えば男性向け(と女児向け)作品が幅を利かせていた印象もあるが、ここに来て様相は逆転。「男性向けが売れるなら女性向けだって!」という思惑ゆえかどうかは定かではないが、各社いよいよ本気で市場開拓に乗り出してきた感がある。
アイドルものというからには、やはり音楽は欠かせない要素。いくらビジュアルが良くてもここを疎かにしては売れるものも売れない。前述した4本のTVアニメに着目してみると、各作品、それぞれに違った音楽戦略を打ち出していることがわかる。
たとえば『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』は総合プロデュースにT.M.Revolution西川貴教を迎えたほか、企画・原作は志倉千代丸という鉄板の構え。現役アーティストと数多くの人気声優を手がける音楽プロデューサーのタッグで、もはや一分の隙もない。また、『ツキウタ。 THE ANIMATION』は、もともとが12カ月を擬人化したキャラクターたちのキャラソンCDシリーズがはじまりという音楽ありきの作品。マチゲリータ、ゆうゆ、蝶々Pといった気鋭のボカロPを起用し、ニコ動世代を取り込む狙いだ。続いて『ドリフェス!』はアミューズ所属の新人俳優グループ“DearDream”を、そのまま劇中のキャラクターにキャスティング。アニメの中のアイドルと実際のアイドルがリンクする斬新な仕掛けで他作品との差別化を図っている。そして、『うたの☆プリンスさまっ♪』は、女性向けアイドルアニメの草分け的存在で、最新作『マジLOVEレジェンドスター』で4クール目を数える人気タイトル。声優陣にこれ以上ない歌ウマメンバーが揃っているのはもちろんのこと、音楽家集団・Elements Gardenがアニメ化以前のゲーム時代より作品を支え、世界観を確立していることも支持の高さに一役買っている。
では、なぜこうも売り出し方の異なる作品が乱立するようになったのだろうか。
昨今のアイドル声優ブームを受けて、アイドルアニメ作品でも、“中の人”、いわゆる声優の人気が大きなカギを握る。当然アイドルものともなれば、その後のイベントなどメディアミックス時に本人登場となるわけで、人気声優を起用することが作品の明暗を分けると言っても過言ではない。そして『うたプリ』は女性向けアイドルアニメの先駆者として、この王道を極めた。しかし、こうもタイトルが拮抗してくるとそればかりに頼っていては、声優の取り合いに陥りがちだし、大事な音楽の要素を軽んじる結果ともなってしまう。そこで、いかに他作品とは異なる方向性を追求できるか頭を悩ませた結果が、この見事なまでの音楽戦略の違いに出たと言えよう。柳の下のドジョウを狙うがゆえ、かえってさまざまな方向から男性アイドルものの可能性が拓かれることになったのだ。
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