難病韓国女性、国循で最新治療…ガンバ選手支援
肺の難病で余命わずかと診断された韓国人の女性が、国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)で新しい治療を受け、社会復帰した。女性は昨秋、インターネットでこの治療を知り、わらにもすがる思いで医師を頼った。慣れない日本での闘病生活は、異国での苦労を知るサッカーJ1・ガンバ大阪の韓国人選手も支えた。女性は「日本で命を救ってもらった」と話している。
女性は、ソウル近郊でデザイン関係の仕事をしているパク・ソヨンさん(36)。約5年前、肺動脈に血栓ができて全身に酸素が送れなくなる「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」と診断された。「ゾウにいつも胸を踏まれているよう」。10メートルも歩くと2~3時間動けない。日本でも難病指定され、患者は推定で約2000人いる。
韓国の病院で薬を使った治療を受けてきたが改善せず、「完治は難しい」と言われた。そんな時、「肺動脈バルーン拡張術(BPA)」と呼ばれる治療が日本で行われていることをインターネットで知った。
「私の病気を治せますか?」。昨秋、1通の英文メールに最後の望みを託した。送った先は国循肺循環科の医師、
パクさんは、BPAで200人以上の治療経験のある大郷さんに肺や心臓の画像などを見てもらい、「放置すれば余命は1年以下」と診断された。12月上旬に婚約者(31)と来日し、治療を受けることを決めた。
しかし、パクさんは英語はできるが、日本語は話せない。異国での入院生活は不安だった。「韓国語ができる人を紹介してもらえないか」。大郷さんは知り合いの焼き肉店長の男性に頼み込んだ。
手を挙げたのはサッカー韓国代表の経験もある、J1・ガンバ大阪の
呉さんは2013年からガンバでディフェンダーとしてプレーしており、日本語も堪能。入院手続きを通訳し、キムチなどの食材や、韓国の映画やドラマを入れたタブレット端末を差し入れた。
治療は週1回のペースで計5回行われた。入院時は肺動脈圧の平均値は健康な人の7~4倍あったが、1月中旬には下がり、ほぼ元通りの生活ができるようになって退院した。
退院後の1月下旬、パクさんは「元気になった姿を見てもらいたい」と婚約者とガンバのキャンプ地・沖縄を訪れた。二人とも当初は呉さんがサッカー選手だとは知らなかったという。「大郷先生にも呉さんにも言葉で表せないほど感謝している」と喜ぶ。
呉さんは「来日した当時の自分を思い出した。前向きに治療に取り組む二人から、自分も力をもらった」と話す。大郷さんは「呉さんの支援もあり、みんなが満足できる治療ができた」と語っている。