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教育ルネサンス

部活激変(10)

顧問の激務 訴え切実

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部誌づくりに精を出す愛知県立幸田高文芸部。部活動は生徒と顧問が信頼関係を築く場でもある

 教師の家族から、部活指導の大変さを訴える投書が相次いだ。

 「涙が出るほど共感しています」

 サッカー部顧問として多忙な日々を送る福岡県の中学教師の記事(14日付)に対し、関東地方の中学教師の妻からはがきが届いた。

 子供が幼く、父親の存在が大切な時期だが、休日は月1度あるかないか。「仕事なのだから理解しようと思うが、手当はほとんどない。公務員の減給なんて言葉が上がると腹が立ちます。頑張る人とさぼる人の給料が同じでは学校がだめになる。やる気のある人が頑張れる学校にしてほしい」

 はがきを埋めた小さな文字から思いが伝わる。

 静岡県立高校の教員の妻も「同じ条件で働いているはずなのに、担任も部活も持たず、担当教科しか教えない方もいる。そんな矛盾にも改革のメスが入ってほしい」と訴える。

 「今年、部活のあまり盛んでない高校に異動するまで、休日は年平均10日ほどだった。長男が幼稚園の時、『風邪でお休みした日数はパパの休日と同じだね』と苦笑した」という妻も。

 香川県で中学校の教師をする女性の祖母は「孫には早く結婚してほしいが、相手を探す時間もない。中学時代の部活動が大事なのはわかるが、孫の体も心配。愛好家やボランティアに委ねることはできないのか」と問いかけた。

 部活動の遠征で自家用車を使うことに対して、「気の休まる暇がない。長距離だと疲れから事故を起こさないとも限らない」と心配する家族の声もあった。

 関西地方の中学校の教頭からは「休日の部活指導にかかわる手当が、事務職や管理職は対象外となっている事情にも注目を」というファクスが届いた。

 一方で、部活動への期待は高い。

 「顧問がいないという理由で部活がなくなったり、休眠状態になったりで、学校生活の中で居場所を見いだせない子が多いのは深刻だ」と東京都内の女性。

 都内の別の女性からは「中学1年生の息子はサッカー部のある市立中に転校したいと言っている」と電子メールが届いた。小学生の時は地域のサッカークラブに所属していたが、中学校は規模が小さく、未経験者の顧問が辞任すると、校長は事実上休部扱いに。「いくら好きなサッカーでも練習だけで、試合に参加できないのでは……」と息子の気持ちを代弁する。

 小学生の時に、地域のクラブチームが盛んでも、中学生になると、学校の部活動が対応し切れていないという悩みを抱える地域は広がっているようだ。

 大手企業が立地する東京都府中市からは、複数企業がいくつもの競技で中学校の部活指導に協力しているという情報が寄せられた。

 トヨタ自動車の男子バスケットボールチームは昨年から、市立中学のバスケ部員に年1回のペースで教室を開催するようになった。

 また、同市立府中第二中学校では今年、サントリーのラグビーチームのトレーナーらが、運動部員に、熱中症対策やねんざなどの応急処置法を講義した。同中では、NECの男子バレーボールチームにも、バレー部の指導を打診している。

 どこの地域でも出来ることではないが、こんな助けを借りるのも、少子化時代の知恵と言える。(茂)

 次週から「東京大学」をテーマにします。国立大学法人化という環境の変化とともに、変わりつつある東大の実像に迫ります。

(2006年9月23日  読売新聞)

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