JPH0967223A - 歯科用組成物 - Google Patents

歯科用組成物

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JPH0967223A
JPH0967223A JP7223807A JP22380795A JPH0967223A JP H0967223 A JPH0967223 A JP H0967223A JP 7223807 A JP7223807 A JP 7223807A JP 22380795 A JP22380795 A JP 22380795A JP H0967223 A JPH0967223 A JP H0967223A
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里志 山口
Mizuho Maeda
瑞穂 前田
Kenichi Hino
憲一 日野
Hidekazu Masuhara
英一 増原
Naoto Masuhara
直人 増原
Jiro Tarumi
二郎 樽見
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SOGO SHIKA IRYO KENKYUSHO KK
Kuraray Co Ltd
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JAPAN INST ADVANCED DENTISTRY
SOGO SHIKA IRYO KENKYUSHO KK
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期安定的な力学的性質を有し、しかも口腔
内における耐汚染性にも優れる硬化物を与えることので
きる、口腔内における印象操作が可能なペースト性状を
有する組成物を提供すること。 【構成】 (a)芳香族ビニルモノマーからなる数平均
分子量が3,000以上の熱可塑性重合体ブロック
(A)と、エラストマー重合体ブロック(B)とをそれ
ぞれ1ブロック以上結合してなる熱可塑性エラストマ
ー、(b)(メタ)アクリレート系モノマーおよび
(c)重合開始剤を含み、13〜40の稠度を有するこ
とを特徴とする歯科用組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は歯科用組成物に関す
る。より詳しくは口腔内において印象操作が可能なペー
スト性状を有する歯科用組成物に関する。本発明の組成
物は、口腔内または石膏模型上での印象操作を伴う、義
歯床、矯正床、テンポラリークラウンなどの歯科用装着
物品の材料として使用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】現在歯科治療では、高齢などにより歯を
喪失した患者に対し、重合性床用樹脂組成物(以下レジ
ンということがある)で作製した義歯床を装着すること
が行われている。一般に、義歯床装着者は顎堤の吸収が
著しく、クッション性を担う粘膜の菲薄化、および骨吸
収などに伴う歯槽骨の陥没のために、精度よく作製され
た義歯床であっても、次第に口腔との適合性が低下する
ことが指摘されている。
【0003】義歯床と口腔との適合性が低下した場合、
一般的にはリベース(改床)と呼ばれる義歯床粘膜面の
再形成を行い、口腔との適合性を復元することが行われ
ている。リベースの手法は間接法と直接法の二種類に大
別することができる。間接法は、口腔内の形状を印象材
を用いて印象採得し、技工室にて口腔内と同じ形状の口
腔模型を再現し、その模型を使って古い義歯床の粘膜面
を形成する方法である。これに対して直接法は、義歯床
の粘膜面にリベース材を築盛し、口腔内で通常の印象採
得と同様にして印象操作を行い、得られた印象の形状を
保持したまま硬化させることによりリベースを行う方法
である。間接法は、上記のように技工室において行わ
れ、しかも多くの工程を必要とするため、リベースを行
うのに相当の期間を要し、その間患者の義歯床を預かる
ため、患者の日常生活に支障をきたす。また、リベース
に際し、数多くの印象操作を経る必要があるので、印象
時の誤差が生じやすく口腔との適合性の低下を招く恐れ
が直接法と比較して高い。これらのことから、現状では
広く直接法が受け入れられている。
【0004】リベース材は義歯床用レジンと同等の硬度
を有する硬質材料で行われるのが一般的である。しか
し、口腔粘膜の菲薄化により咬合痛がある場合などは、
口腔との適合性が回復しても、なお疼痛が残る場合があ
り、粘膜に代わるクッション性を付与するため、適度な
粘弾性を有する軟質材料を用いることがしばしば行われ
る。従来より、直接法による軟質リベース材として、ア
クリル樹脂に可塑剤を配合した軟質樹脂、シリコーン樹
脂系裏装材などが用いられてきた〔草刈ら、「歯界展
望」、第72巻、第6号(1988年)、第1267〜
1272頁参照〕。これらの軟質リベース材は、粉と
液、あるいは2つのペーストよりなるものであって、使
用直前にそれらを混練すると硬化するように調製された
ものである。
【0005】一方、特開昭52−503号公報には、
(a)スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、
(b)ポリブタジエンまたはブタジエン−スチレン共重
合体の液状プレポリマー、(c)光重合性モノマー、
(d)光重合開始剤および(e)所望により加えられる
熱重合禁止剤からなるフレキソ印刷版用感光性樹脂組成
物が開示されている。この組成物からはゴム弾性を有す
る成形体が得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した軟
質リベース材は、口腔内に挿入する際、原料のモノマー
による刺激や、硬化時の発熱による刺激が生じるなどの
問題点が指摘されている。またこれらの軟質リベース材
から得られる硬化物には、気泡の混入が多く、かつ吸水
率も高いことから、長期間にわたって口腔内で使用する
と、硬化物の理工学的性質が低下するのみならず、口腔
内細菌による汚染や臭気が強いという点も問題である。
また材質別に見てみると、アクリル樹脂に可塑剤を配合
した軟質樹脂の場合、可塑剤が口腔内で溶出し、樹脂自
体が徐々に硬質化することが問題点として挙げられる。
また、シリコーン系リベース材は、材料自体の性質のた
め口腔内で汚れやすいことや、義歯床との接着性が悪く
装着時に剥離しやすいことが問題点として挙げられる。
さらに、近年使用頻度の高まっている義歯安定剤やティ
ッシュコンディショナーなどは口腔内での安定性に欠け
分解や硬質化が起こるため、暫間的使用に限られてい
る。
【0007】一方、特開昭52−503号公報に開示さ
れている組成物では、ポリブタジエンまたはブタジエン
−スチレン共重合体の液状プレポリマーが、口腔粘膜に
対する粘着性を高め、印象操作を困難なものにする。
【0008】本発明は、上記の従来技術に鑑みてなされ
たものであって、口腔内で印象操作を行うのに適したペ
ースト性状を有し、しかも適度な粘弾性が口腔内で長期
間安定的に維持され、かつ口腔内での汚染性の少ない硬
化物を与える歯科用組成物を提供することを課題とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、(a)芳
香族ビニルモノマーからなる数平均分子量が3,000
以上の熱可塑性重合体ブロック(A)と、エラストマー
重合体ブロック(B)とをそれぞれ1ブロック以上有す
る熱可塑性エラストマー、(b)(メタ)アクリレート
系モノマーおよび(c)重合開始剤を含み、13〜40
の稠度を有することを特徴とする歯科用組成物によって
解決される。
【0010】本発明で用いられる熱可塑性エラストマー
(a)は、芳香族ビニルモノマーからなる熱可塑性重合
体ブロック(A)とエラストマー重合体ブロック(B)
とを含有している。熱可塑性エラストマー(a)中にブ
ロック(A)とブロック(B)がひとつずつ存在しても
よいが、それぞれ複数存在してもよい。
【0011】熱可塑性エラストマー(a)の構成成分で
ある熱可塑性重合体ブロック(A)は、芳香族ビニルモ
ノマー単位からなり、数平均分子量が3000以上であ
る。芳香族ビニルモノマー単位としては、例えば、スチ
レン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、
3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シク
ロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチ
ル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)ス
チレンなどが挙げられる。なかでもスチレンが好まし
い。これらのモノマー単位の結合様式については特に限
定はなく、これらのモノマー単位の1つが単独で重合し
た構造であってもよいし、あるいは2種以上のモノマー
単位が共重合した構造であってもよい。
【0012】該芳香族ビニルモノマー単位の熱可塑性重
合体ブロック(A)の数平均分子量は、3,000以上
であることが必要であり、3,000〜1,000,0
00が好ましい。該ブロックAの数平均分子量が3,0
00未満であると、印象性に優れたペーストを得ること
ができない。
【0013】熱可塑性エラストマー(a)中の熱可塑性
重合体ブロック(A)の含有率は、5〜70重量%の範
囲内であるのが好ましい。さらに好ましくは、5〜30
重量%である。熱可塑性重合体ブロック(A)の含有率
が、5〜70重量%であれば、後述する(メタ)アクレ
ート系モノマー(b)との相溶性もよく、望ましい性状
のペーストを得ることができる。
【0014】熱可塑性エラストマー(a)中のエラスト
マー重合体ブロック(B)は、公知の熱可塑性エラスト
マーを構成するモノマー単位から構成される。モノマー
単位の結合様式については特に限定はなく、モノマー単
位の1つが単独で重合した構造であってもよいし、ある
いは2種以上のモノマー単位が共重合した構造であって
もよい。
【0015】なかでもイソプレン、イソブチレン、ブタ
ジエンおよびブチルアクリレートから選ばれる少なくと
も1種のモノマー単位で構成される熱可塑性エラストマ
ー重合体、該重合体の水素添加物、および該重合体の不
飽和カルボン酸または該酸の誘導体の付加物が好まし
い。これらの重合体から構成されるブロック(B)は、
上記エラストマー重合体、その水素添加物およびその付
加物のうちのひとつを構成成分とするものであってもよ
いし、複数を構成成分とするものであってもよい。
【0016】さらに、ブロック(B)として、ポリイソ
プレンおよびイソプレン−ブタジエンコポリマーから選
ばれる少なくとも1種から構成され、40モル%以上の
ビニル結合含有量をもつ熱可塑性エラストマー重合体、
該重合体の水素添加物、および該重合体の不飽和カルボ
ン酸または該酸の誘導体の付加物も好ましい。これらも
上記同様、エラストマー重合体、その水素添加物および
その付加物のうちのひとつを構成成分とするものであっ
てもよいし、複数を構成成分とするものであってもよ
い。ここで、ビニル結合含有量とは、ポリイソプレンま
たはイソプレン−ブタジエンのエラストマー重合体ブロ
ック中に含まれる炭素−炭素二重結合全体のうち、下記
する結合様式により生ずる側鎖にあるエチレン性二重結
合の割合(モル%)である。
【0017】上記熱可塑性エラストマー重合体に付加す
る不飽和カルボン酸およびその誘導体として、無水マレ
イン酸、マレイン酸、フマール酸、アクリル酸、イタコ
ン酸、クロトン酸などが挙げられる。
【0018】イソプレン、ブタジエンモノマーを含有す
るエラストマー重合体ブロック(B)は、重合様式によ
り1,2結合または3,4結合を生じ、側鎖にエチレン
性二重結合を形成する。このエチレン性二重結合は1,
4結合により形成される主鎖の二重結合と比較して反応
性に富み、(メタ)アクリレート系モノマー(b)と共
重合が可能である。よって、該結合をもつ重合体ブロッ
クを有するエラストマー(a)は、重合硬化性に優れた
ペーストを与えるとともに、重合硬化物は化学的な架橋
形成のため、永久ひずみが少なく好適である。
【0019】エラストマー重合体ブロック(B)の熱可
塑性エラストマー(a)中の含有率は、30〜95重量
%の範囲が好ましく、さらに好ましくは70〜95重量
%である。
【0020】かかる熱可塑性エラストマー(a)として
は、例えば、ポリスチレンブロックを有するジブロッ
ク、トリブロック、マルチブロック、星型およびブロッ
クの境界がランダム共重合で徐々に組成が変化している
テーパ型のポリスチレン系のブロック共重合体を含有す
る熱可塑性エラストマーであるスチレン−イソプレン系
エラストマー、スチレン−ブタジエン系エラストマー、
スチレン−イソプレン−ブタジエン系エラストマー、ス
チレン−イソブチレン系エラストマー、スチレン−ブチ
ルアクリレート系エラストマーなどが挙げられる。
【0021】これらの中でも、特開平2−102212
号公報に開示された熱可塑性エラストマー、すなわち、
分子中に数平均分子量が3,000以上40,000以
下の芳香族ビニルモノマーのブロックを2個以上と、ビ
ニル結合含有量が40モル%以上であるイソプレンおよ
び/またはイソプレン−ブタジエンのブロックを1個以
上とを含有する、分子量が40,000以上300,0
00以下であるブロック共重合体は、上記特性に加え、
制振性能に優れるため、本発明の重合硬化物を口腔内に
装着し、咬合した際の違和感が少なく、特に好適であ
る。
【0022】エラストマーを含有したペーストは、一般
的にクリープ回復が起こりやすい。この現象は口腔内で
印象を行った後取り出すと、時間とともに印象前の形態
に戻りやすいことを示しており、印象性に適していない
ことを表している。しかし、芳香族ビニルモノマーから
なる熱可塑性エラストマーブロックを有することによ
り、クリープ回復が起こり難くなり印象性に優れた組成
物を得ることができる。
【0023】熱可塑性エラストマー(a)のゴム硬度に
ついては特に制限はないが、通常30〜90の範囲のも
のが好ましい。ここでゴム硬度とは、JIS K 62
53に従い、デュロメータA型を用いて測定した値であ
る。
【0024】(メタ)アクリレート系モノマー(b)と
しては、一官能性の(メタ)アクリル酸エステル、多官
能性の(メタ)アクリル酸エステルのいずれも使用する
ことができる。一官能性(メタ)アクリル酸エステルと
しては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル
(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、
ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル
(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリ
レートなどのアルキル(メタ)アクリレート(アルキル
基の炭素数1〜20)、メトキシエチル(メタ)アクリ
レート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート
(重合度2〜10)、テトラヒドロフルフリル(メタ)
アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウ
ンデセニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト(HEMA)、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリ
レートなどが挙げられる。
【0025】また、多官能性(メタ)アクリル酸エステ
ルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよ
び1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートな
どのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(ア
ルキレン基の炭素数1〜20)、ジエチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ
(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数2〜4、
かつ重合度2〜200)、グリセリンジ(メタ)アクリ
レート、2、2’−ビス〔p−(γ−メタクリオキシ−
β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bi
s−GMA)、ビスフェーノールAジメタクリレート、
2,2’−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェ
ニル)プロパン(1分子中のエトキシ基2〜10個)、
1,2−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプ
ロポキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メ
タ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなど
が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマ
ーは、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】これらの中で、アルキル(メタ)アクリレ
ートおよびアルキレングリコールジ(メタ)アクリレー
トは、本発明で使用される熱可塑性エラストマー(a)
と相溶性が特に高く好適である。これらのアルキル(メ
タ)アクリレートまたはアルキレングリコールジ(メ
タ)アクリレートは、(メタ)アクリレート系モノマー
(b)中40重量%以上含有されていることが望まし
い。
【0027】なお、(メタ)アクリレート系モノマー
(b)として、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n
−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メ
タ)アクリレートなど炭素数の多い(炭素数6以上)ア
ルキル基、アルケニル基を有する一官能性(メタ)アク
リレートを主に使用すると、軟質性の硬化物が得られ
る。一方、(メタ)アクリレート系モノマー(b)とし
て、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)
アクリレートなど炭素数が少ないアルキル基、アルケニ
ル基を有する一官能性(メタ)アクリレートや多官能性
(メタ)アクリレートを主に使用すると、比較的硬質性
の硬化物が得られる傾向にある。
【0028】本発明における重合開始剤(c)として
は、光重合開始剤、熱重合開始剤、常温重合開始剤があ
げられる。光重合開始剤としては、例えば、カンファー
キノン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、ベンジ
ル、アセナフテンキノンおよびフェナントラキノンなど
のα−ジケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジル
ジメチルケタール、ベンゾフェノン、2−エチルチオキ
サントンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、
適宜、第3級アミン、アルデヒド、メルカプタンなどの
還元剤と組み合わせた光重合開始剤系として使用され
る。かかる第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチル
アミノ安息香酸エチル、ビス−N,N−ジメチルアミノ
ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノベンズアルデ
ヒド、N−フェニルグリシン、モルホリノメタクリレー
ト、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールア
ミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキ
シエチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル
などを挙げることができる。アルデヒドとしては、例え
ば、シトロネラール、ラウリルアルデヒド、o−フタル
ジアルデヒド、p−オクチルオキシベンズアルデヒドな
どを挙げることができる。メルカプタンとしては、例え
ば、1−デカンチオール、チオサリチル酸、2−メルカ
プトベンゾキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾー
ル、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メルカプ
トアセトフェノン、4−t−ブチルチオフェノールなど
を挙げることができる。さらに、該光重合開始剤系に過
酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物を添加した系も好適
に用いられる。
【0029】熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイ
ルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよ
びクメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物、アゾ
ビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、テトラメ
チルチウラムジスルフィドなどの開始剤が使用できる。
【0030】さらに常温重合開始剤としては、有機過酸
化物/芳香族第3級アミン系、有機過酸化物/芳香族第
3級アミン/芳香族スルフィン酸系などのレドックス系
開始剤が使用される。
【0031】なお、重合開始剤(c)として酸化剤−還
元剤の組み合わせを含有する場合は、保存安定性の観点
から、これらが混合しないように分割包装形態とし、使
用直前に混合する形態とする必要がある。
【0032】本発明の歯科用組成物における熱可塑性エ
ラストマー(a)、(メタ)アクリレート系モノマー
(b)および重合開始剤(c)の配合量は、使用する熱
可塑性エラストマー(a)の種類および分子量、(メ
タ)アクリレート系モノマー(b)の種類などにより変
化するが、通常、熱可塑性エラストマー(a)、(メ
タ)アクリレート系モノマー(b)および重合触媒
(c)の合計に対して、熱可塑性エラストマー(a)が
40〜80重量%、(メタ)アクリレート系モノマー
(b)が60〜20重量%および重合触媒(c)が0.
05〜5重量%の範囲で、好ましくは(a)成分が50
〜60重量%、(b)成分が50〜40重量%、(c)
成分が0.1〜3重量%である。
【0033】本発明の組成物には、熱可塑性エラストマ
ー(a)、(メタ)アクリレートモノマー(b)および
重合開始剤(c)に加えて、分子中に数平均分子量が3
000以上である芳香族ビニルモノマー単位のブロック
を有しない重合体〔以下これを重合体(d)と略称す
る〕を、組成物のペースト性状の調整、硬化物特性の調
整のために、組成物に対して10重量%を超えない範囲
の量で添加することができる。
【0034】重合体(d)としては、公知のものが特に
制限なく使用され、例えば、イソプレンゴム、ブタジエ
ンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(ランダム共重合
体)、水素添加スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレ
ンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピ
レンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴ
ム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーン
ゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリオレフィン系熱
可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラスト
マー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミ
ド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系
熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑
性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマ
ーなどのエラストマーなどが挙げられる。ただし、ポリ
ブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエ
ン−アクリロニトリル共重合体、またはこれらの誘導体
から選ばれる比較的低分子量の液状プレポリマーは、本
発明の重合体(d)には含まれない。これらの液状プレ
ポリマーの添加は、口腔内粘膜への粘着性を著しく増大
し、口腔内での印象操作を困難にする。さらに、重合体
(d)として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩
化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、
ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレー
ト、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、ポ
リウレタン、ポリクロロプレン、ポリフッ化ビニル、ポ
リエチレンオキシド、ポリオキシメチレン、ポリアクリ
ロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリエステ
ル、ポリアミド、酢酸セルロースなど、従来公知のポリ
マーを使用することも可能である。
【0035】本発明の組成物には、重合禁止剤として必
要に応じ、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチル
エーテル、ブチルヒドロキシルトルエンなどを少量添加
してもよい。また、熱可塑性エラストマーの安定性を高
めるため、酸化防止剤や光安定剤などを少量加えること
もできる。さらに、ペーストおよび硬化物の性状をより
適したものに調整するため、各種の滑剤、界面活性剤、
無機充填材、可塑剤などを少量加えてもよく、また、本
組成物に歯肉色を与えるため顔料、染料、擬態血管のた
めの繊維を添加することもできる。
【0036】本発明の組成物は、熱可塑性エラストマー
(a)、(メタ)アクリレート系モノマー(b)、重合
開始剤(c)などを混合して、通常ペーストとして提供
される。各成分の混合方法として、公知の方法が特に制
限なく使用され、例えば、溶剤による混練、溶融混練な
どが挙げられる。具体的には、トルエンや塩化メチレン
などの溶剤に、熱可塑性エラストマー(a)、(メタ)
アクリレート系モノマー(b)、および重合開始剤
(c)を溶解し、均一に混合した後、溶剤を除去する方
法や、ラボプラストミル(東洋精機社製)などの混練機
を用いて混練する方法などがあり、それにより均一なペ
ーストを調製することができる。得られたペーストは、
脱泡処理を施すことが好ましい。
【0037】本発明の歯科用組成物は、稠度が13以上
40以下の範囲にあり、口腔内での印象操作に適したペ
ースト性状を有している。好ましい稠度は、15以上3
5以下の範囲である。本発明でいうペーストの稠度と
は、ISO4823(1992年版)に記載された方法
で測定された値のことをいい、ペーストの硬さを表し、
ペーストの流動性の指標となるものである。ペーストの
稠度が上記の範囲からはずれると口腔内での印象操作性
が損なわれるので望ましくない。
【0038】本発明の歯科用組成物は口腔内での印象採
取性が優れているのみならず、印象採取後の形状を保持
する性質においても優れている。かかる性質は、ペース
トに一定の負荷を与えて該ペーストを塑性変形させたと
きの応力緩和率(本発明では後述の実施例に記載した方
法で測定した値を応力緩和率とする)を指標として定量
的に示すことができる。
【0039】本発明の歯科用組成物は、応力緩和率が9
0%以上であり、ペーストを塑性変形させたとき、その
塑性変形を保持するために加える力が極わずかである。
このため、口腔内にて印象採取を行い、口腔内からとり
外した後そのままの状態で放置しても、得られた印象形
状を良好に保持する。なお、ペーストの応力緩和率が9
0%未満であれば、塑性変形したペーストに該変形を保
持するための力を加えておかないと、得られた印象形状
が時間の経過とともに変化してしまい、これを硬化して
得られるリベース材と口腔との適合性が損なわれるので
望ましくない。
【0040】本発明の組成物よりリベース材を形成する
手順は以下のとおりである。すなわち、義歯床の粘膜面
に本発明の組成物を築盛し、口腔内において印象採取を
行う。しかる後口腔内より取りはずし、採取後の印象を
保持したまま、光照射、常温重合などの手法により重合
硬化させることによって義歯床のリベースを行う。
【0041】本発明の組成物のリベース材は、特定の熱
可塑性エラストマー(a)を使用したことによって、適
度なゴム弾性を有する硬化物が得られ、そのゴム弾性は
長期にわたって維持される。さらに、(メタ)アクレー
ト系モノマー(b)を使用したことによって、得られた
硬化物の吸水率が低く、しかも長期間にわたって低い値
の吸水率が維持される。そのうえ、硬化物からの溶出物
の量も少なく、口腔内での汚染性が低く抑えられる。
【0042】本発明の組成物はリベース材に限らず、口
腔内での印象操作を伴う、義歯床、矯正床、テンポラリ
ークラウンなどの歯科用装着物品の材料として使用する
ことが可能である。さらに、口腔内での印象操作に限ら
ず、石膏模型上などでの歯科用装着用物品の材料として
も使用可能である。
【0043】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものでは
ない。
【0044】本実施例では、組成物のペースト性状、お
よび組成物から得られる硬化物の力学特性、吸水量は以
下の方法により測定した。
【0045】(1)組成物の稠度 ISO4823に記載の方法に従って測定した。すなわ
ち、25℃にて、組成物0.5mlを、直径10mmの
円柱状に成形し、ガラス板上に置く。円柱状の組成物の
上部に、別のガラス板と重り(総計1500g)を静か
に載せ、5秒後に該ガラス板2と重りを取り除く。ガラ
ス板上に広がった組成物の形状につき、平行切線間の最
大値と最小値の寸法を求め、その平均値を算出し、1m
mの単位で表す。この試験を3回繰り返し、稠度とす
る。
【0046】(2)組成物の応力緩和率 深さ7mm、直径30mmの容器に組成物を詰め、測定
用サンプルとする。レオメーター〔不動工業(株)製〕
を使用し、25℃の条件下で、サンプル中央部に直径2
0mmの球形治具を毎分50mmの速度で、球形治具に
加わる加重が500gfに達するまで押し込む。球形治
具に加わる負荷(f0 )が500gfに達したところで
クロスヘッドを停止し、60秒間維持する。60秒後の
治具にかかる負荷(f1 )を測定し、以下の式により応
力緩和率を求める。
【0047】
【数1】
【0048】(3)硬化物のゴム硬度 直径10mm、厚さ10mmの金型に組成物を充填し、
歯科用光照射器〔アルファーライト、(株)クラレ製〕
にて10分間光照射し重合硬化させ、得られた硬化物を
試験片とした。試験片を37℃、水中に1日漬浸した
後、JIS K6253に従い、デュロメータA型(古
里精機製作所製)を用いてゴム硬度を測定した。
【0049】(4)硬化物の疲労耐久性 直径10mm、厚さ10mmの金型に組成物を充填し、
歯科用光照射器〔アルファーライト、(株)クラレ製〕
にて10分間光照射し重合硬化させ、得られた硬化物を
試験片とし、37℃、水中における圧縮疲労試験を行っ
た。すなわち、試験片を37℃、水中に漬浸し、サーボ
パルサ−4880(島津製作所製)を用い、最大圧縮荷
重2kgf、最小圧縮荷重0.2kgfの正弦波(5H
z)を繰り返し100万回まで与え、変位の変化を観測
した。なお、変位が3mm(試験片の全長の30%)以
上に達した場合は、その時点で測定を中止した。
【0050】(5)硬化物の吸水量および溶解量 ISO1567に記載の方法に従って行った。すなわ
ち、直径20mm、厚さ1mmの金型に組成物を充填
し、アルファーライトにて10分間光照射し重合硬化さ
せ、得られた硬化物を試験片とした。試験片をデシケー
ターに入れ、37±2℃のオーブン中に23時間保持し
た後、23±2℃に保ったデシケーターに移し、1時間
経過後、試験片を該デシケーターより取り出し、試験片
の質量を0.2mgの精度で秤量する。試験片の質量の
秤量値が24時間につき0.2mg以内の範囲内の変動
に収まる恒量となるまでこの操作を繰り返して行い、こ
のときの秤量値を試験片の質量とする(W1 )。次に、
試験片を37±2℃の蒸留水に7日間漬浸した後、ピン
セットで取り出し、表面の水分を拭き取り、試験片の質
量を秤量する(W2 )。次いで、かかる操作後の試験片
を37±2℃に保ったデシケーターに入れ、37±2℃
のオーブン中に23時間保持した後、23±2℃に保っ
たデシケーターに移し、1時間経過後、試験片を該デシ
ケーターより取り出す。試験片の質量の秤量値が24時
間につき0.2mg以内の範囲内の変動に収まる恒量と
なるまでこの操作を繰り返して行う(このときの秤量
値:W3 )。試験片の体積をV(mm3 )とするとき、
吸水量(μg/mm3 )および溶出量(μg/mm3
を以下の式から求める。
【0051】
【数2】
【0052】
【数3】
【0053】実施例1 スチレン−イソプレン系熱可塑性エラストマー(SI
S)であり、スチレン含有量が20重量%であるハイブ
ラーVS−1〔(株)クラレ製〕60g、n−ラウリル
メタクリレート(共栄社化学社製、以下LMと略称す
る)38g、1,10−デカンジオールジメタクリレー
ト(共栄社化学社製、以下DDと略称する)2g、カン
ファーキノン(以下CQと略称する)0.5g、2−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート(以下DMAEMA
と略称する)0.5gおよびベンゾイルパーオキサイド
(以下BPOと略称する)0.5gを常温で溶解混合
し、ペースト化した。得られたペーストの性状、該ペー
ストから得られる硬化物の力学特性および吸水量などを
表1および表2に示す。
【0054】実施例2 スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SB
S)であり、スチレン含有量が23重量%であるJSR
−TR2825〔(株)日本合成ゴム社製〕60g、L
M38g、DD2g、CQ0.5g、DMAEMA0.
5gおよびBPO0.5gを常温で溶解混合し、ペース
ト化した。得られたペーストの性状、該ペーストから得
られる硬化物の力学特性および吸水量などを表1および
表2に示す。
【0055】実施例3 実施例1で使用したハイブラーVS−1を60g、イソ
デシルメタクリレート(共栄社化学社製、以下IDMと
略称する)38g、DD2g、CQ0.5g、DMAE
MA0.5gおよびBPO0.5gを常温で溶解混合
し、ペースト化した。得られたペーストの性状、該ペー
ストから得られる硬化物の力学特性および吸水量などを
表1および表2に示す。
【0056】実施例4 実施例1で使用したハイブラーVS−1を60g、トリ
デシルメタクリレート(共栄社化学社製、以下TDMと
略称する)38g、DD2g、CQ0.5g、DMAE
MA0.5gおよびBPO0.5gを塩化メチレン約1
00mlを添加して溶解混合し、溶剤を揮発除去してペ
ースト化した。得られたペーストの性状、該ペーストか
ら得られる硬化物の力学特性および吸水量などを表1お
よび表2に示す。
【0057】実施例5 スチレン−イソプレン系熱可塑性エラストマー(SI
S)であり、スチレン含量が20重量%であるハイブラ
ーVS−3(クラレ製)60g、LM38g、DD2
g、CQ0.5g、DMAEMA0.5g、BPO0.
5gを常温で溶解混合しペースト化した。得られたペー
ストの性状、該ペーストから得られる硬化物の力学特性
および吸水量などを表1および表2に示す。
【0058】実施例6 実施例1で使用したハイブラーVS−1を60g、LM
38g、DD2g、CQ0.5gおよびDMAEMA
0.5gを常温で溶解混合しペースト化した。得られた
ペーストの性状、該ペーストから得られる硬化物の力学
特性および吸水量などを表1に示す。
【0059】実施例7 実施例1で使用したハイブラーVS−1を54g、ニト
リルゴムであるN239SV(日本合成ゴム社製)6
g、LM38g、DD2g、CQ0.5g、DMAEM
A0.5gおよびBPO0.5gを常温で溶解混合し、
ペースト化した。得られたペーストの性状、該ペースト
から得られる硬化物の力学特性および吸水量などを表1
に示す。
【0060】実施例8 実施例1で使用したハイブラーVS−1を60g、1,
6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学社
製、以下HDと略称する)40g、CQ0.5g、DM
AEMA0.5gおよびBPO0.5gを常温で溶解混
合し、ペースト化した。得られたペーストの性状、該ペ
ーストから得られる硬化物の力学特性および吸水量など
を表1に示す。
【0061】実施例9 スチレン−イソプレン系熱可塑性エラストマー(SI
S)であるJSR−SIS5000(日本合成ゴム社
製)50g、無水マレイン酸2gをプラスチコーダー
(ブラベンダー社製)を使用し、150℃、80rpm
条件下で30分間反応させ、無水マレイン酸変性SIS
を得た。上記無水マレイン酸変性SIS20g、実施例
2で使用したJSR−TR2825を30g、LM38
g、DD2g、CQ0.5g、DMAEMA0.5gお
よびBPO0.5gを常温で溶解混合し、ペースト化し
た。得られたペーストの性状、該ペーストから得られる
硬化物の力学特性および吸水量などを表1に示す。
【0062】比較例1 ニトリルゴムであるN239SV70g、LM28.5
g、DD1.5g、CQ0.5g、DMAEMA0.5
gおよびBPO0.5gを常温で溶融混合し、ペースト
化した。得られたペーストの稠度は19、応力緩和率は
88%であった。このペーストは、応力緩和率測定後、
球形治具を取り除いて放置しておくと、球形治具により
与えられた変形が徐々に小さくなり、もとの形にもどろ
うとする現象が観察された。このことから、印象性に劣
るペーストであることが理解できる。
【0063】比較例2 義歯床軟質リベース材として市販されている、ティッシ
ュテンダー(亀水化学製)を、メーカー指示に従い粉剤
〔主としてポリエチルメタクリレート(PEMA)〕か
らなる〕と液剤〔(メタ)アクリレート系モノマーを主
成分とする〕を混和し、餅状化したものを所定の金型に
填入し、加熱重合させた。得られた硬化物の力学特性お
よび吸水量などを表1および2に示す。この材料は、時
間の経過とともにペーストが徐々に硬化した。また、硬
化物の耐疲労性が劣っていた。
【0064】比較例3 義歯床硬質リベース材として市販されている、トライア
ドVLC(デンツプライ社製)をペースト性状の比較の
ため使用した。この製品はペースト状組成物として提供
されており、無機微粒子を内部に含有する有機重合体粉
末を充填剤として含有している。ペーストの稠度は1
1、応力緩和率は88%であった。このペーストは硬い
ペーストであり、しかも応力緩和率も低いことから、口
腔内での印象操作性が劣っていた。
【0065】比較例4 実施例1で使用したハイブラーVS−1を55g、液状
ポリブタジエンであるニッソPB.B−2000(日本
曹達製)45g、CQ0.5g、DMAEMA0.5g
およびBPO0.5gを塩化メチレン300gに溶解
し、均一に溶解後、塩化メチレンを減圧下留去してペー
スト化した。本ペーストは粘着性が強く口腔内で印象操
作を行なう際、口腔粘膜に粘り着き、印象操作を行なう
ことができなかった。得られたペーストの性状、該ペー
ストから得られる硬化物の力学特性および吸水量などを
表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】表1、2から明らかなように、本願発明の
組成物は、口腔内における印象操作に適したペースト性
状を有している。また、得られた硬化物は、耐疲労性が
高く長期安定的な力学的性質を有し、しかも吸水量や溶
出物が少ないことから耐汚染性に優れている。
【0069】実施例10 PMMA製の義歯床の粘膜面を一層研削し、実施例1で
得られたペーストと同じものを築盛した。ペーストを築
盛した義歯床を口腔内に装着し印象を採取する。印象採
取後、義歯床を口腔外に取り出し、はみ出した不要部分
のペーストを除去する。義歯床を水中に浸し、酸素にで
きるだけ接しない状態として、歯科用光照射器(アルフ
ァーライト)にて5分間光照射し、重合硬化させた。こ
のようにしてリベ−スを行った義歯床は口腔内適合性が
良好であり、口腔内粘膜に痛みを与えることもなかっ
た。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、口腔内における印象操
作が可能なペースト性状を有する歯科用組成物が提供さ
れる。本発明の組成物より得られる硬化物は長期安定的
な力学的性質を有し、しかも口腔内における耐汚染性に
も優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 瑞穂 茨城県鹿島郡神栖町東和田36番地 株式会 社クラレ内 (72)発明者 日野 憲一 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 増原 英一 東京都文京区本駒込2−5−11 (72)発明者 増原 直人 東京都文京区本駒込2−5−11 (72)発明者 樽見 二郎 東京都昭島市つつじが丘2−6−21−510

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)芳香族ビニルモノマーからなる数
    平均分子量が3,000以上の熱可塑性重合体ブロック
    (A)と、エラストマー重合体ブロック(B)とをそれ
    ぞれ1ブロック以上有する熱可塑性エラストマー、
    (b)(メタ)アクリレート系モノマーおよび(c)重
    合開始剤を含み、13〜40の稠度を有することを特徴
    とする歯科用組成物。
  2. 【請求項2】 エラストマー重合体ブロック(B)が、
    イソプレン、イソブチレン、ブタジエンおよびブチルア
    クリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモ
    ノマーで構成される熱可塑性エラストマー重合体、該熱
    可塑性エラストマー重合体の水素添加物、および該熱可
    塑性エラストマー重合体の不飽和カルボン酸または該酸
    の誘導体の付加物から選ばれる少なくとも1つの重合体
    ブロックである請求項1記載の歯科用組成物。
  3. 【請求項3】 エラストマー重合体ブロック(B)が、
    ポリイソプレンおよびイソプレン−ブタジエンコポリマ
    ーから選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックであ
    り、40モル%以上のビニル結合含有量をもつ熱可塑性
    エラストマー重合体である請求項1記載の歯科用組成
    物。
  4. 【請求項4】 熱可塑性エラストマー重合体が、該熱可
    塑性エラストマー重合体の水素添加物および該熱可塑性
    エラストマー重合体の不飽和カルボン酸または該酸の誘
    導体の付加物から選ばれる少なくとも1種である請求項
    3記載の歯科用組成物。
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